説明

指紋照合装置および指紋照合方法

【課題】 全体指紋画像の再構成が不要で、比較演算量を少なくすることが可能な指紋照合装置を提供する。
【解決手段】 ユーザの指がセンサ2に対して相対的に移動すると、センサ2はその指の指紋から互いに異なる複数の部分を順番に読み取り、その読み取った部分に応じた互いに異なる複数の分割指紋画像を読み取った順番に出力する。抽出器3は、センサ2が出力した複数の分割指紋画像から互いの距離が所定値だけ離れた複数の特定部分指紋画像8を抽出し、その抽出した複数の特定部分指紋画像8を特定部分指紋画像メモリ41に格納する。比較器5は特定部分指紋画像メモリ41に格納された特定部分指紋画像8を登録指紋画像メモリ42に格納されている登録指紋画像9と照合する。判定器6は比較器5の照合結果に基づいて特定部分指紋画像8が登録指紋画像9と一致するか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋照合装置および指紋照合方法に関し、特には、部分的な指紋画像を用いて指紋照合を行う指紋照合装置および指紋照合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指よりも小さな検出領域を有するセンサによって連続的に採取された部分的な指紋画像(以下「分割指紋画像」と称する。)を用いて指紋の照合を行う指紋照合装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2003−248820号公報)には、センサによって連続的に採取された分割指紋画像から指紋照合用の全体指紋画像を再構成する画像連結装置が記載されている。再構成された全体指紋画像は予め登録されている登録指紋画像と比較され、指紋の照合が行われる。
【0004】
また、特許文献2(特開2003−51013号公報)には、センサによって連続的に採取された分割指紋画像のすべてのそれぞれを登録指紋画像の全体もしくはその一部分と比較して指紋認証を行う指紋認証システムが記載されている。
【特許文献1】特開2003−248820号公報
【特許文献2】特開2003−51013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、センサによって連続的に採取された分割指紋画像から指紋照合用の全体指紋画像を再構成するという複雑な処理を行う必要があった。また、特許文献1に記載の技術では、全体指紋画像を再構成するために、センサによって連続的に採取された分割指紋画像のすべてを一時的にメモリに保存しなければならず、分割指紋画像を一時的に保存するメモリとして、大きな記憶容量を有するメモリが必要であった。また、大容量のメモリが必要となるため、メモリを動作させるための電力が大きくなるという問題があった。
【0006】
特許文献2に記載の技術では、特許文献1に記載の技術のように全体指紋画像を再構成するという複雑な処理を行う必要はないが、センサによって連続的に採取された分割指紋画像のすべてが登録指紋画像と比較されるため、その比較演算の量が膨大となる。このため、長大な演算時間が必要となったり、または、演算部に高い演算能力が要求されたりした。
【0007】
本発明の目的は、全体指紋画像の再構成が不要で、比較演算量を少なくすることが可能な指紋照合装置および指紋照合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の指紋照合装置は、1つの指紋の互いに異なる一部分を複数読み取り、それらの画像を複数の部分指紋画像として出力するセンサと、前記センサが出力した複数の部分指紋画像から、互いの距離が所定値だけ離れた複数の特定部分指紋画像を抽出する抽出器と、前記抽出器が抽出した複数の特定部分指紋画像を格納する特定部分指紋画像メモリと、予め登録された登録指紋画像を格納する登録指紋画像メモリと、前記特定部分指紋画像メモリが格納した複数の特定部分指紋画像のそれぞれを前記登録指紋画像メモリが格納した登録指紋画像と照合する比較器と、前記比較器の照合結果に基づいて、前記センサが読み取った指紋が前記登録指紋画像と同一であるか否かを判定する判定器とを含む。
【0009】
また、本発明の指紋照合方法は、指紋照合装置が行う指紋照合方法であって、1つの指紋の互いに異なる一部分を複数読み取る指紋読取ステップと、前記指紋読取ステップで読み取った複数の部分の画像を複数の部分指紋画像として出力する部分指紋画像出力ステップと、前記部分指紋画像出力ステップで出力した複数の部分指紋画像から、互いの距離が所定値だけ離れた複数の特定部分指紋画像を抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップで抽出した複数の特定部分指紋画像を特定部分指紋画像メモリに格納する格納ステップと、予め登録された登録指紋画像を格納する登録指紋画像メモリと、前記格納ステップで格納した複数の特定部分指紋画像のそれぞれを、登録指紋画像メモリに格納されている登録指紋画像と照合する照合ステップと、前記照合ステップの照合結果に基づいて、前記指紋読取ステップでが読み取った指紋が前記登録指紋画像と同一であるか否かを判定する判定ステップと、を含む。
【0010】
上記の発明によれば、センサが出力した部分指紋画像から特定部分指紋画像が抽出され、その特定部分指紋画像が登録指紋画像と照合される。このため、部分指紋画像から全体指紋画像を再構成するという複雑な処理を行う必要がなくなり、全体指紋画像を再構成するために必要となるメモリを不要にできる。また、部分指紋画像から抽出された特定部分指紋画像が登録指紋画像と照合されるため、センサによって出力されたすべての部分指紋画像が登録指紋画像と照合される場合に比べて、照合に伴う比較演算の量を少なくすることが可能となる。
【0011】
また、所定値を大きくすれば照合に伴う比較演算の量を少なくでき、また、所定値を短くすれば照合の精度を上げることが可能となる。このため、所定値が所望の値に設定されれば、必要とされる照合の精度または必要とされる比較演算の量に応じた指紋照合を行うことが可能となる。
【0012】
また、上記指紋照合装置において、前記センサは、前記部分指紋画像を1つずつ出力し、前記抽出器は、前記センサが部分指紋画像を1つ出力するごとに、該センサが出力した部分指紋画像が前記特定部分指紋画像であるか否かを判定し、該特定部分指紋画像であると判定した部分指紋画像のみを抽出することが望ましい。
【0013】
また、上記指紋照合方法において、前記部分指紋画像出力ステップは、前記部分指紋画像を1つずつ出力し、前記抽出ステップは、前記部分指紋画像出力ステップで部分指紋画像を1つ出力するごとに、該部分指紋画像が前記特定部分指紋画像であるか否かを判定し、該特定部分指紋画像であると判定した部分指紋画像のみを抽出することが望ましい。
【0014】
上記の発明によれば、センサが部分指紋画像を1つ出力するたびに、その出力した部分指紋画像が特定部分指紋画像であるか否か判定される。このため、指紋照合に必要となる特定部分指紋画像を随時抽出することが可能となる。
【0015】
また、上記指紋照合装置において、前記比較器は、前記複数の特定部分指紋画像の中の所定の1つを前記登録指紋画像と比較して該登録指紋画像から該所定の1つに対応する部分登録指紋画像を抽出し、該部分登録指紋画像および前記所定の距離とに基づいて、該登録指紋画像から該複数の特定部分指紋画像から該所定の1つを除いた残りのそれぞれに対応する部分登録指紋画像を抽出し、前記複数の特定部分指紋画像のそれぞれを、対応する部分登録指紋画像と照合することが望ましい。
【0016】
また、上記指紋照合方法において、前記照合ステップは、前記複数の特定部分指紋画像の中の所定の1つを前記登録指紋画像と比較して該登録指紋画像から該所定の1つに対応する部分登録指紋画像を抽出する第1抽出ステップと、前記第1抽出ステップで抽出した部分登録指紋画像と前記所定の距離とに基づいて、該登録指紋画像から該複数の特定部分指紋画像から該所定の1つを除いた残りのそれぞれに対応する部分登録指紋画像を抽出する第2抽出ステップと、前記複数の特定部分指紋画像のそれぞれを、前記第1および第2抽出ステップで抽出した、対応する部分登録指紋画像と照合する比較ステップと、を含むことが望ましい。
【0017】
上記の発明によれば、複数の特定部分指紋画像の中の所定の1つと登録指紋画像とを比較してその所定の1つに対応する部分登録指紋画像を抽出すれば、他の特定部分指紋画像に対応する部分登録指紋画像は、その抽出した部分登録指紋画像と所定の距離とに基づいて抽出される。このため、部分登録指紋画像を容易に抽出することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、センサが出力した部分指紋画像から特定部分指紋画像が抽出され、その特定部分指紋画像が登録指紋画像と照合される。このため、部分指紋画像から全体指紋画像を再構成するという複雑な処理を行う必要がなくなり、全体指紋画像を再構成するために必要となるメモリを不要にできる。また、部分指紋画像から抽出された特定部分指紋画像が登録指紋画像と照合されるため、センサによって出力されたすべての部分指紋画像が登録指紋画像と照合される場合に比べて、照合に伴う比較演算の量を少なくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施例の指紋照合装置を示したブロック図である。図1において、指紋照合装置1は、センサ2と、抽出器3と、メモリ4と、比較器5と、判定器6とを含む。
【0021】
センサ2は、画像読取部であり、1つの指紋の互いに異なる部分を複数読み取り、その読み取った複数の部分の映像を複数の部分指紋画像(以下「分割指紋画像」と称する。)として出力する。
【0022】
例えば、センサ2は、ユーザがセンサ2の読取領域(不図示)に自分の指を押し付けながらその指をセンサ2の読取領域上で滑らせると、換言すると、ユーザの指がセンサ2に対して相対的に移動すると、その指の指紋から互いに異なる複数の部分を順番に読み取り、その読み取った複数の部分の映像を複数の分割指紋画像として読み取った順番に1つずつ出力する。
【0023】
センサ2は、分割指紋画像を抽出器3に出力する。なお、センサ2の読取領域の面積は、人間の1つの指の指紋の面積より小さい面積であることが望ましい。
【0024】
図2は、センサ2が出力する複数の分割指紋画像の一例を示した説明図である。図2において、分割指紋画像7aと分割指紋画像7bと分割指紋画像7cとは、センサ2が出力した分割指紋画像であり、例えば、センサ2は、分割指紋画像7a、分割指紋画像7b、分割指紋画像7cの順番で、連続的に1つずつ分割指紋画像を出力する。なお、センサ2が出力する分割指紋画像7の数は3つに限るものではなく適宜変更可能である。
【0025】
図1に戻って、抽出器3は、例えば距離算出器である。抽出器3は、センサ2が出力した複数の分割指紋画像から、互いの距離が所定値だけ離れた複数の特定部分指紋画像を抽出する。例えば、抽出器3は、センサ2から分割指紋画像が入力されるたびに、その入力された分割指紋画像が特定部分指紋画像であるか否かを判定し、特定部分指紋画像であると判定した部分指紋画像のみを抽出する。
【0026】
なお、所定値は、ユーザによって変更されることが望ましい。例えば、ユーザの入力を受け付ける入力部が抽出器に設けられ、ユーザがその入力部を操作して所定の距離を抽出器3に設定することが望ましい。所定値を大きくすれば照合に伴う比較演算の量を少なくでき、また、所定値を短くすれば照合の精度を上げることが可能となる。このため、ユーザが所定値を任意に変更すれば、必要とされる照合の精度または必要とされる比較演算の量に応じた指紋照合を行うことが可能となる。
【0027】
図3は、抽出器3が抽出した特定部分指紋画像8の一例を示した説明図である。図3において、特定部分指紋画像8は、特定部分指紋画像8aと特定部分指紋画像8bと特定部分指紋画像8cと特定部分指紋画像8dと特定部分指紋画像8eとを含む。特定部分指紋画像8aと特定部分指紋画像8bと特定部分指紋画像8cと特定部分指紋画像8dと特定部分指紋画像8eとは、隣り合う特定部分指紋画像との距離が所定値(一定)になっている。
【0028】
図1に戻って、メモリ4は、特定部分指紋画像メモリ41と登録指紋画像メモリ42とを含む。特定部分指紋画像メモリ41は、抽出器3が抽出した特定部分指紋画像(図3参照)を格納する。登録指紋画像メモリ42は、予め登録された登録指紋画像を格納する。
【0029】
図4は、登録指紋画像メモリ42に格納された登録指紋画像9の一例を示した説明図である。
【0030】
図1に戻って、比較器5は、特定部分指紋画像メモリ41に格納された特定部分指紋画像8(図3参照)を登録指紋画像メモリ42に格納されている登録指紋画像9(図4参照)と照合する。
【0031】
判定器6は、比較器5の照合結果に基づいて、センサ2が読み取った指紋(具体的には、特定部分指紋画像8)が登録指紋画像9と一致するか否かを判定する。
【0032】
次に、動作の概要を説明する。
【0033】
ユーザの指がセンサ2に対して相対的に移動すると、センサ2は、その指の指紋から互いに異なる複数の部分を順番に読み取り、その読み取った部分に応じた互いに異なる複数の分割指紋画像を読み取った順番で1つずつ出力する。抽出器3は、センサ2が出力した複数の分割指紋画像から、互いの距離が所定値だけ離れた複数の特定部分指紋画像8を抽出し、その抽出した複数の特定部分指紋画像8を特定部分指紋画像メモリ41に格納する。
【0034】
比較器5は、特定部分指紋画像メモリ41に格納された特定部分指紋画像8を、登録指紋画像メモリ42に格納されている登録指紋画像9と照合する。判定器6は、比較器5の照合結果に基づいて、特定部分指紋画像8が登録指紋画像9と一致するか否かを判定する。
【0035】
本実施例によれば、センサ2によって連続的に採取された分割指紋画像から全体指紋画像を再構成する必要がなく、特定部分指紋画像メモリ41に保存する分割指紋画像は、連続的に採取されたすべての分割指紋画像から所定値に基づいて抽出された複数の特定部分指紋画像になるため、分割指紋画像を一時的に保存するための記憶容量を小さくすることができる。
【0036】
また、照合に使用する分割指紋画像が、連続的に採取されたすべての分割指紋画像から所定値に基づいて抽出された分割指紋画像となるので、連続的に採取されたすべての分割指紋画像が登録指紋画像と照合される場合に比べて、照合に伴う比較演算の量を少なくでき、照合に必要となる時間を短縮することができる。
【0037】
次に、動作を具体的に説明する。
【0038】
図5は、指紋照合装置1の動作を説明するためのフローチャートである。以下、図5を参照して指紋照合装置1の動作を説明する。
【0039】
ステップ51では、例えば、モードスイッチ(不図示)の操作により指紋入力動作が開始されると、センサ2は、ステップ52を実行する。
【0040】
ステップ52では、センサ2は、センサ2の読取領域上に存在する物体を読み取り、その読み取った物体の映像を取得する。センサ2は、映像を取得すると、ステップ53を実行する。
【0041】
ステップ53では、センサ2は、センサ2の読取領域上に指が置かれているか否か、換言すると、指紋入力中であるか否かを判断する。
【0042】
具体的には、センサ2は、ステップ52で取得した画像を、ステップ52で取得した画像の直前に取得した画像と比較し、それら2つの画像が異なるものであれば、指がセンサ2の読取領域上に置かれていると判断し、ステップ52で取得した画像を分割指紋画像7(図2参照)として抽出器3に出力する。抽出器3は、センサ2から分割指紋画像7を受け付けると、ステップ54を実行する。なお、センサ2は、比較した2つの画像が同じであると、ステップ52を実行する。
【0043】
ステップ54では、抽出器3は、センサ2から入力した分割指紋画像7を抽出器3内のメモリ(不図示)に格納し、その格納した分割指紋画像7が連続した分割指紋画像であるかどうかを判断する。なお、抽出部3内のメモリは、2つの分割指紋画像7を格納することが可能であり、ステップ54では、抽出器3は、センサ2から入力した分割指紋画像7を空いている抽出部3内のメモリの領域に格納する。
【0044】
ステップ54を具体的に説明すると、抽出器3は、抽出器3内のメモリに格納したセンサ2から入力した分割指紋画像と、同じく抽出器3内のメモリに格納されているその分割指紋画像の直前にセンサ2から入力した分割指紋画像とを、相対的に移動しながら重複する領域を検索する。例えば、抽出器3は、図2の割指紋画像7bがセンサ2から入力すると、その直前にセンサ2から入力した図2の分割指紋画像7aとその分割指紋画像7bとを相対的に移動して、分割指紋画像7aと分割指紋画像7bとが重複する領域を検索する。
【0045】
抽出器3は、重複する領域を検索すると、2つの分割指紋画像は連続した分割指紋画像であると判断してステップ55を実行し、また、重複する領域を検索できないと、指紋入力が終了したと判断してステップ60を実行する。
【0046】
なお、ステップ54では、抽出器3は、センサ2が指紋入力中であると判断した後に初めて分割指紋画像が入力されると、例えば、センサ2が指紋入力中であると判断した後に分割指紋画像7aが入力されると、分割指紋画像7aを抽出器3内のメモリ(不図示)に格納し、ステップ55を実行する。
【0047】
ステップ55では、抽出器3は、センサ2から入力した分割指紋画像が、その分割指紋画像の直前にセンサ2から入力した分割指紋画像の位置から移動した距離を算出する。
【0048】
具体的には、抽出器3は、抽出器3のメモリに格納した、時間的に前後する2つの分割指紋画像を相対的に移動しながら、重複する領域での特徴形状の相関演算により共通領域を探索して画像間の相対的な移動量を算出する。抽出器3は、移動量を算出すると、ステップ56を実行する。
【0049】
なお、ステップ55では、抽出器3は、センサ2が指紋入力中であると判断した後にはじめて分割指紋画像が入力されると、例えば、センサ2が指紋入力中であると判断した後に分割指紋画像7aが入力されると、ステップ56を実行する。
【0050】
ステップ56では、抽出器3は、センサ2から入力した分割指紋画像が、センサ2が指紋入力中であると判断した後に最初に入力された分割指紋画像(例えば、図2の分割指紋画像7a)であるか判断する。
【0051】
抽出器3は、センサ2から入力した分割指紋画像が、センサ2が指紋入力中であると判断した後に最初に入力された分割指紋画像であれば、ステップ57を実行し、センサ2から入力した分割指紋画像が、センサ2が指紋入力中であると判断した後に最初に入力された分割指紋画像でなければ、ステップ58を実行する。
【0052】
ステップ57では、抽出器3は、センサ2から入力した分割指紋画像を特定部分指紋画像8として特定部分指紋画像メモリ41に格納する。抽出器3のステップ57の動作によって、センサ2が指紋入力中であると判断した後に最初に入力された分割指紋画像(例えば、図2に示した分割指紋画像7a)は、特定部分指紋画像(例えば、図3に示した特定部分指紋画像8a)として特定部分指紋画像メモリ41に格納される。抽出器3は、ステップ57が終了すると、ステップ59を実行する。
【0053】
ステップ58では、抽出器3は、センサ2から入力した分割指紋画像が、特定部分指紋画像メモリ41に最も新しく格納された特定部分指紋画像に対して一定距離(所定値)移動しているか判断する。
【0054】
抽出器3は、センサ2から入力した分割指紋画像が特定部分指紋画像メモリ41に最も新しく格納された特定部分指紋画像に対して一定距離(所定値)移動していると、ステップ57を実行し、センサ2から入力した分割指紋画像が特定部分指紋画像メモリ41に最も新しく格納された特定部分指紋画像に対して一定距離(所定値)移動していないと、センサ2から入力した分割指紋画像を特定部分指紋画像メモリ41に格納することなくステップ59を実行する。
【0055】
ステップ59では、抽出器3は、抽出器3のメモリに格納されている分割指紋画像の中で最新のものでないものを抽出器3のメモリから削除し、続いて、センサ2から入力される次の分割指紋画像を受け付け、ステップ54を実行する。
【0056】
抽出器3がステップ54からステップ59を繰り返し実行することにより、特定部分指紋画像メモリ41には、互いの距離が所定値(一定距離)だけ離れた複数の特定部分指紋画像8が格納される。
【0057】
ステップ60では、抽出器3は、比較器5に指紋入力終了信号を出力する。比較器5は、指紋入力終了信号を受け付けると、ステップ61を実行する。
【0058】
ステップ61では、比較器5は、特定部分指紋画像メモリ41に格納された複数の特定部分指紋画像の中の所定の1つに対応する登録指紋画像上の部分登録指紋画像を特定する。具体的には、比較器5は、登録指紋画像から、所定の1つに最も近い指紋を有する領域を、所定の1つに対応する部分登録指紋画像として特定する。
【0059】
例えば、比較器5は、図3に示した特定部分指紋画像8aに対応する部分登録指紋画像を登録指紋画像9から検出する。この場合、比較器5は、特定部分指紋画像8aと登録指紋画像9とを比較して、図3に示した特定部分指紋画像8aに対応する部分登録指紋画像を登録指紋画像9から検出する。比較器5は、部分登録指紋画像を特定すると、ステップ62を実行する。
【0060】
ステップ62では、比較器5は、特定部分指紋画像メモリ41に格納された複数の特定部分指紋画像の中で、対応する部分登録指紋画像を特定していない特定部分指紋画像が存在しているか判断する。比較器5は、対応する部分登録指紋画像を特定していない特定部分指紋画像が存在していると、ステップ61を実行し、対応する部分登録指紋画像を特定していない特定部分指紋画像が存在していると、ステップ63を実行する。
【0061】
比較器5は、ステップ62を介してステップ61を実行する場合、既に、ステップ62を実行する前のステップ61で、特定部分指紋画像8aに対応する部分登録指紋画像9aの位置を決定しているため、残りの特定部分指紋画像8b、8c、8d、8eに対応する部分登録指紋画像を特定する際には、部分登録指紋画像9aと一定距離(所定値)とに基づいて、残りの特定部分指紋画像8b、8c、8d、8eに対応する部分登録指紋画像を自動的にそれぞれ決定する。
【0062】
具体的には、比較器5は、部分登録指紋画像9aから所定値だけ離れた部分登録指紋画像9bを特定し、その後、部分登録指紋画像9bから所定値だけ離れた部分登録指紋画像9cを特定し、その後、部分登録指紋画像9cから所定値だけ離れた部分登録指紋画像9dを特定し、その後、部分登録指紋画像9dから所定値だけ離れた部分登録指紋画像9eを特定する。
【0063】
ステップ63では、比較器5は、特定部分指紋画像メモリ41が格納した複数の特定部分指紋画像のそれぞれを、対応する部分登録指紋画像と照合する。
【0064】
ステップ63で比較器5が行う照合方法は、特定部分指紋画像の特徴量を、その特定部分指紋画像に対応する部分登録指紋画像の特徴量と比較する方法でもよいし、特定部分指紋画像を、その特定部分指紋画像に対応する部分登録指紋画像と比較する方法でもよい。
【0065】
なお、特徴量を抽出して照合を行う方法の場合、特定部分指紋画像および部分登録指紋画像の両方に特徴量が含まれていない可能性がある。その場合、比較器5は、その部分の指紋画像を比較して照合を行い、その照合結果を判定器6に送る。
【0066】
判定器6は、比較器5から送られてきた、個々の特定部分指紋画像とそれらに対応する部分登録指紋画像の照合結果の平均値を求め、その平均値と所定の閾値とを比較する。判定器6は、その平均値が所定の閾値よりも大きいか否かに応じて、特定部分指紋画像8(具体的には、センサ2が読み取った指紋)が登録指紋画像9と同じか否かの判定を行う。
【0067】
本実施例によれば、以下のような効果を奏する。
【0068】
第1の効果は、装置全体を小型化できる。その理由は、1つの指紋から互いに異なる複数の部分を読み取るセンサを用いるので、指紋全体を一度に読み取るセンサを不要にできるためである。
【0069】
第2の効果は、装置全体を省電力化できる。その理由は、指紋照合用に一時的に保存する分割指紋画像が、センサ2が出力する分割指紋画像から所定値に基づいて抽出された特定部分指紋画像になるため、すべての分割指紋画像を保存する場合に比べて、分割指紋画像を保存するために必要となるメモリの記憶容量が小さくなるためである。このため、メモリの省電力化を図ることが可能になる。
【0070】
第3の効果は、照合時間の短縮ができる。その理由は、登録指紋画像と比較する分割指紋画像が、センサ2が出力する分割指紋画像から所定値に基づいて抽出された特定部分指紋画像になるため、すべての分割指紋画像を登録指紋画像と比較する場合に比べて、比較演算量が少なくなるためである。
【0071】
以上説明した実施例において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施例の指紋照合装置を示したブロック図である。
【図2】分割指紋画像の一例を示した説明図である。
【図3】特定部分指紋画像の一例を示した説明図である。
【図4】登録指紋画像の一例を示した説明図である。
【図5】指紋照合装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 指紋照合装置
2 センサ
3 抽出器
4 メモリ
41 特定部分指紋画像メモリ
42 登録指紋画像メモリ
5 比較器
6 判定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの指紋の互いに異なる一部分を複数読み取り、それらの画像を複数の部分指紋画像として出力するセンサと、
前記センサが出力した複数の部分指紋画像から、互いの距離が所定値だけ離れた複数の特定部分指紋画像を抽出する抽出器と、
前記抽出器が抽出した複数の特定部分指紋画像を格納する特定部分指紋画像メモリと、
予め登録された登録指紋画像を格納する登録指紋画像メモリと、
前記特定部分指紋画像メモリが格納した複数の特定部分指紋画像のそれぞれを前記登録指紋画像メモリが格納した登録指紋画像と照合する比較器と、
前記比較器の照合結果に基づいて、前記センサが読み取った指紋が前記登録指紋画像と同一であるか否かを判定する判定器と、を含む指紋照合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の指紋照合装置において、
前記センサは、前記部分指紋画像を1つずつ出力し、
前記抽出器は、前記センサが部分指紋画像を1つ出力するごとに、該センサが出力した部分指紋画像が前記特定部分指紋画像であるか否かを判定し、該特定部分指紋画像であると判定した部分指紋画像のみを抽出する、指紋照合装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の指紋照合装置において、
前記比較器は、前記複数の特定部分指紋画像の中の所定の1つを前記登録指紋画像と比較して該登録指紋画像から該所定の1つに対応する部分登録指紋画像を抽出し、該部分登録指紋画像および前記所定の距離とに基づいて、該登録指紋画像から該複数の特定部分指紋画像から該所定の1つを除いた残りのそれぞれに対応する部分登録指紋画像を抽出し、前記複数の特定部分指紋画像のそれぞれを、対応する部分登録指紋画像と照合する、指紋照合装置。
【請求項4】
指紋照合装置が行う指紋照合方法であって、
1つの指紋の互いに異なる一部分を複数読み取る指紋読取ステップと、
前記指紋読取ステップで読み取った複数の部分の画像を複数の部分指紋画像として出力する部分指紋画像出力ステップと、
前記部分指紋画像出力ステップで出力した複数の部分指紋画像から、互いの距離が所定値だけ離れた複数の特定部分指紋画像を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出した複数の特定部分指紋画像を特定部分指紋画像メモリに格納する格納ステップと、
予め登録された登録指紋画像を格納する登録指紋画像メモリと、
前記格納ステップで格納した複数の特定部分指紋画像のそれぞれを、登録指紋画像メモリに格納されている登録指紋画像と照合する照合ステップと、
前記照合ステップの照合結果に基づいて、前記指紋読取ステップでが読み取った指紋が前記登録指紋画像と同一であるか否かを判定する判定ステップと、を含む指紋照合方法。
【請求項5】
請求項4に記載の指紋照合方法において、
前記部分指紋画像出力ステップは、前記部分指紋画像を1つずつ出力し、
前記抽出ステップは、前記部分指紋画像出力ステップで部分指紋画像を1つ出力するごとに、該部分指紋画像が前記特定部分指紋画像であるか否かを判定し、該特定部分指紋画像であると判定した部分指紋画像のみを抽出する、指紋照合方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の指紋照合方法において、
前記照合ステップは、
前記複数の特定部分指紋画像の中の所定の1つを前記登録指紋画像と比較して該登録指紋画像から該所定の1つに対応する部分登録指紋画像を抽出する第1抽出ステップと、
前記第1抽出ステップで抽出した部分登録指紋画像と前記所定の距離とに基づいて、該登録指紋画像から該複数の特定部分指紋画像から該所定の1つを除いた残りのそれぞれに対応する部分登録指紋画像を抽出する第2抽出ステップと、
前記複数の特定部分指紋画像のそれぞれを、前記第1および第2抽出ステップで抽出した、対応する部分登録指紋画像と照合する比較ステップと、を含む指紋照合方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−12031(P2006−12031A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191394(P2004−191394)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】