説明

指袋の編成方法および指袋

【課題】本発明は、操作性に優れた、静電容量式タッチパネルを操作できる指袋の編成方法およびその指袋を提供することを目的とする。
【解決手段】非導電糸を用いて筒状に編成した指袋2に、先端の掌側の編幅中心近傍に導電糸を用いてウェール方向に複数の編目列が連続して形成される突出編地部3を編成するため、導電糸を用いた給糸口7を用い、FBとBBを交互に編成して突出編地部3の編出しとする。突出編地部3の編出しに続き、袋編成を行い、球体に近いような形状を形成し、狭い領域のタッチ操作などにも優れた静電容量式タッチパネルを操作できる指袋を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式タッチパネルの操作用指袋の編成方法およびその指袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、静電容量式タッチパネルを用いた製品が多数存在し、手袋を着用したまま操作を行いたいとの要望があった。特許文献1では、静電容量式タッチパネルを操作できる手袋として、指先の先端にのみ導電糸を用いて手袋を形成することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実登3160211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手袋では、指先全体に導電性の糸を使用して指袋の先端部の広い範囲に通電性を有するため、狭い領域のタッチ操作などでは操作が難しくなってしまう。本発明では、非導電性指袋より突出した導電性の突出編地部を、狭い領域(点)へのタッチ操作が可能なように形成し、操作性に優れた静電容量式タッチパネルの操作用指袋の編成方法およびその指袋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも前後一対の針床を有する横編機を用い、指袋先端の少なくとも掌側に導電糸を用いた静電容量式タッチパネルの操作用指袋の編成方法において、指袋に対し、非導電糸を用いて前後の針床で筒状編成を行うステップと、前記指袋の掌側の編幅中心近傍の編目に対し、導電糸を用いてウェール方向の編目を非導電糸の指袋に加えて編成することで非導電糸の指袋より突出する突出編地部を形成するステップと、前記指袋の導電糸を用いた突出編地部の編目と、前後の針床に係止する突出編地部以外の編目に、非導電糸を用いて指袋の筒状編成を行うステップを備えることを特徴とする。
【0006】
また本発明では、前記突出編地部の形成にあたり、前記指袋の掌側の編幅中心近傍の編目を対向する針床の空針に移動させ、移動させた編目に新たな編目と、移動前に係止していた針床の空針に対して掛け目を交互に形成して突出編地部の編出しを行い、該編出しに用いた編針に係止する編目のうち、少なくとも編出しで形成した掛け目に突出編地部を編成し、移動させた前記指袋の掌側の編幅中心近傍の編目に続く新たな編目を、移動前の針床に戻して突出編地部の編目と重ねることを特徴とする。
【0007】
さらに本発明では、前記突出編地部の形成にあたり、前記指袋の掌側の編幅中心近傍の編目に導電糸を用いた新たな編目を形成して突出編地部の編出しを行い、該編出しに用いた編針に係止する編目に、突出編地部を形成することを特徴とする。
【0008】
さらに本発明では、前記突出編地部の編出しに用いた前後針床の編針で、袋状に編成して新たな編目を形成することを特徴とする。
【0009】
さらに本発明では、横編機を用いて編成された静電容量式タッチパネルの操作用指袋であって、指袋は非導電糸を用いて筒状に形成された筒編地部と、該筒編地部先端の掌側の編幅中心近傍に導電糸を用いてウェール方向に複数の編目列が連続して形成される突出編地部で構成され、該突出編地部は、前記筒編地部の編幅より狭い編幅で筒編地部の編目に繋がり筒編地部より突出していることを特徴とする。
【0010】
さらに本発明では、前記指袋は手袋の人差し指用指袋であって、該手袋は先端部が導電糸を用いて筒状に編成された親指用指袋を備える手袋であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、非導電糸で編成された指袋先端の掌側の編幅中心近傍に、導電糸を用いて指袋より突出した狭い領域(点)によるタッチ操作が可能な突出編地部が形成されることで、通電性を有する突出編地部が小さいために確実にタッチ操作が行え、仮にタッチ操作がずれて周辺の編目が触れたとしても非導電糸のために誤って反応することもなく、安定した操作が可能となり静電容量式タッチパネルの操作性が向上する。
【0012】
また本発明では、突出編地部を繋げたい指袋の編目を対向する針床の空針に移動し、前後針床を用いて突出編地部の編出しを形成するので、編成に使用できる前後針床の編針を選択でき、突出編地部の厚みを調整できる。
【0013】
また本発明では、指袋の掌側の編幅中心近傍の編目の移動を必要とせず突出編地部の形成が出来るので、編成コース数を減らすことができる。
【0014】
また本発明では、突出編地部を袋状に形成できるので2層となりしっかりとした突出編地部を形成できる。
【0015】
また本発明の指袋は、非導電糸の筒編地部より突出した導電糸の突出編地部を備えた指袋として、通電性を有する突出編地部が小さいために確実にタッチ操作が行え、静電容量式タッチパネルの操作性が良い指袋である。
【0016】
また本発明の指袋は、手袋の人差し指用筒編地部であり、該手袋は、先端部が導電糸を用いて筒状に編成された親指用筒編地部を備えており、例えば、ズーム操作などを行う際に、円滑に操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1としての手袋1の掌側の概略図である。
【図2】本発明の実施例1としての手袋1における指袋2bの編成図である。
【図3】本発明の実施例2としての指袋2bの編成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例として、手袋1の説明を行う。編成に使用する横編機は、前後一対の針床を備えた2枚ベッド横編機であり、後針床BBが前針床FBに対してラッキング可能で、針床の上方に複数の給糸口を有するものである。編成図では、説明の便宜上、針数を実際の編成よりも少なくしている。
【実施例1】
【0019】
図1は、実施例1としての手袋1の掌側の概略図である。本実施例で編成される手袋1はすべて平編みで編成する。手袋1の編成は、各指袋2(2b、2c、2d、2e)を指先から順次編成し、4本胴、指袋2a、5本胴を順次編成する公知の方法で行う。そのため実施例1では、特に人差し指用指袋2bに、ウェール方向に編目を形成して他の領域に比べて編目数の差分で膨らみ、非導電糸の指袋より突出する導電糸による突出編地部3を形成する編成方法に絞って説明を行う。人差し指用指袋2bは非導電糸であり、突出編地部3のみが導電糸となる。手袋1では、突出編地部3が人差し指用指袋2bに形成され、親指用指袋2aは、導電糸を用いて指先先端で周回編成を行っている。
【0020】
図中、手袋1の内部には破線と一点鎖線が示されている。指袋2bが一点鎖線に囲まれている領域は、後述する指袋2を単独で使用できる指カバーを示す。また指袋2a、2bを含んで胴部が実線と破線に囲まれている領域は、後述する指カバー5を示す。いずれも優れた操作性を示し、また指紋等を付着させずにタッチパネルを操作することができる。
【0021】
図2は、本発明の実施例1に示す手袋1の指袋2bの編成図である。編成図では、図中左側の数字は編成ステップ(S)を示し、左右方向の矢印は編成方向を示し、FBは前針床を、BBは後針床を示す。大文字のA〜PはFBの編針を、小文字のa〜pはBBの編針を示す。また、○印はその編成ステップで形成される編目を、V印は掛け目を、◎は重ね目を示す。尚、その編成ステップでの編成に関係せず、編針に係止されたままの編目については図示を省略する。
【0022】
図2で示す編成ステップS1〜S11について説明する。S1は、指袋2bの全幅の編成を示し、非導電糸を給糸する給糸口6はキャリッジ(不図示)により左方向に移動され、FBの編針O〜Aで1本置きに編目を形成する。S2では、右方向に編針b〜pで1本置きに編目を形成する。S1とS2により、図1で示す指袋2bの1コースが筒状に完成する。更にS1、S2の編成を適宜繰り返し、S3以降の突出編地部3の編成を行う。S3では、指袋2bの掌側の複数の編目列となるFBの編針Gと編針Iの編目を、甲側となるBBの編針gと編針iに目移しする。
【0023】
S4では、突出編地部3を編成するため、左方向に向けて導電糸を給糸する給糸口7を新たに用いてFBとBBを交互に編成する。移動した掌側の編目を係止するBBでは編針i,gに新たな編目を、その編針i,gに対向するFBでは編針J,H,Fに掛け目を形成し、突出編地部3の編出しとしている。前後の編目が形成できることで、突出編地部3の厚みを調整でき、しっかりとしたものや厚みが少ない突出編地部3などが形成できる。S5では、右方向にBBの編針g,iで編目を形成する。S6では、左方向にFBの編針J,H,Fで編目を形成する。S5とS6では、S4で行った突出編地部3の編出しに続き袋編成を行い、複数の編目列を編成している。また、S5に替えてS6と同様の編成を繰り返し、前記編出しの掛け目のみを使用して突出編地部3を形成しても良い。
【0024】
S7では、右方向にBBの編針g,iで編目を形成する。突出編地部3の大きさ(膨らみ)は、図2で示すAのステップ(S5とS6)の繰返し回数で調整する。実施例1の場合には2〜6回程度の繰返しが好ましい。指袋2bより突出編地部3が適度に突出するからである。太めの導電糸を使えば、適度な膨らみがあり、さらに球体に近いような形状も可能となる。突出編地部3は、指袋2bの非導電糸の中にある導電糸の突出部分となって狭い領域(点)によるタッチ操作が可能であれば良い。
【0025】
S8では、FBの編針J,H,Fに係止する編目をFBの編針G,I,Kに目移しする。FBの編針Kでは指袋2bの掌側の編目との重ね目となる。S9では、BBの編針g,iの編目が、FBの編針G,Iに目移しされ、指袋2bの掌側の編目との重ね目となる。
【0026】
S10では、指袋2bの全幅の編成を示し、再び給糸口6を用いて左方向にFBの編針O〜Aで1本置きに編目を形成する。S11では、右方向に編針b〜pで1本置きに編目を形成する。S10とS11により、指袋2bの1コースが完成する。指袋2bは、S3〜S9の間、給糸口6での編成が行われなかった為に編地の増加が無く、指袋2bの編成の再開時には、導電糸よる突出編地部3は、ウェール方向の編目列の形成による編目数の差分で膨らみ、非導電糸の指袋2bより突出する。なお、コース方向は2目の狭い編目列となっており、小さな球体が突出しているようになっている。
【実施例2】
【0027】
図3は、本発明の実施例2に示す指袋2bの編成図である。図2において示したS1,S2とS10,S11は、図3のS1,S2とS5,S6と同様の編成であり、説明を省略する。S3では、左方向に向けて導電糸を給糸する給糸口17を新たに用いて、指袋2bのFBの編針I,Gに新たな編目を形成し、突出編地部3の編出しとしている。S4では、折り返してFBの編針G,Iに新たな編目を形成する。本実施例2では、編出しを前後の針床に形成するのではなく、片側の針床で行い、適宜その編成を繰り返すBのステップ(S3とS4)で突出編地部3を形成する。該突出編地部3の形成では、目移しが不要となり編成も容易で編成コース数を減らすことができる。S5,S6で、給糸口16を用いて非導電糸での編成を筒状に行い、指袋2bより突出する突出編地部3を完成する。
【0028】
なお、本実施例1,2では、手袋1の指袋2bに対して突出編地部3の形成を行ったが、他の指袋(2a、2c、2d、2e)に形成しても良い。また、手袋1としては、親指用指袋2aの指先部4に導電糸を用いて指先全体に周回編成を行うようにした手袋が好適である。導電糸を用いて指袋より突出した狭い領域(点)によるタッチ操作が可能な突出編地部3が形成される指袋2(2b、2c、2d、2e)と、指を滑らしたりする動きが多い親指が指先全体で反応することで操作性が良い。更に図1で、親指用指袋2aと人差し指用指袋2bを含み、実線と破線に囲まれている領域は、指カバー5を示している。指カバー5は、中指、薬指、小指に装着する各指袋2c、2d、2eがない胴部が備わっているが、2本の指を用いた操作性は良い。また指袋2a、2bのみが繋がったものでも、同様に優れた操作性が得られる。
【0029】
また、一点鎖線で区切られた指袋2bにおいても、突出編地部3を備えた指カバーとして単独で使用することができる。この使用の場合は、一点鎖線の位置に装着がずれないようにする為、伸縮性の高いリブ組織の形成や弾性糸を用いて筒状に編成すればよい。なお、本発明は、上述した実施例に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 手袋
2a,2b,2c,2d,2e 指袋
3 突出編地部
5 指カバー
6,7,16,17 給糸口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前後一対の針床を有する横編機を用い、指袋先端の少なくとも掌側に導電糸を用いた静電容量式タッチパネルの操作用指袋の編成方法において、
指袋に対し、非導電糸を用いて前後の針床で筒状編成を行うステップと、
前記指袋の掌側の編幅中心近傍の編目に対し、導電糸を用いてウェール方向の編目を非導電糸の指袋に加えて編成することで非導電糸の指袋より突出する突出編地部を形成するステップと、
前記指袋の導電糸を用いた突出編地部の編目と、前後の針床に係止する突出編地部以外の編目に、非導電糸を用いて指袋の筒状編成を行うステップとを備えることを特徴とする静電容量式タッチパネルの操作用指袋の編成方法。
【請求項2】
前記突出編地部の形成にあたり、前記指袋の掌側の編幅中心近傍の編目を対向する針床の空針に移動させ、移動させた編目に新たな編目と、移動前に係止していた針床の空針に対して掛け目を交互に形成して突出編地部の編出しを行い、該編出しに用いた編針に係止する編目のうち、少なくとも編出しで形成した掛け目に突出編地部を編成し、移動させた前記指袋の掌側の編幅中心近傍の編目に続く新たな編目を、移動前の針床に戻して突出編地部の編目と重ねることを特徴とする請求項1記載の静電容量式タッチパネルの操作用指袋の編成方法。
【請求項3】
前記突出編地部の形成にあたり、前記指袋の掌側の編幅中心近傍の編目に導電糸を用いた新たな編目を形成して突出編地部の編出しを行い、該編出しに用いた編針に係止する編目に、突出編地部を形成することを特徴とする請求項1記載の静電容量式タッチパネルの操作用指袋の編成方法。
【請求項4】
前記突出編地部の編出しに用いた前後針床の編針で、袋状に編成して新たな編目を形成することを特徴とする請求項2記載の静電容量式タッチパネルの操作用指袋の編成方法。
【請求項5】
横編機を用いて編成された静電容量式タッチパネルの操作用指袋であって、指袋は非導電糸を用いて筒状に形成された筒編地部と、該筒編地部先端の掌側の編幅中心近傍に導電糸を用いてウェール方向に複数の編目列が連続して形成される突出編地部で構成され、該突出編地部は、前記筒編地部の編幅より狭い編幅で筒編地部の編目に繋がり筒編地部より突出していることを特徴とする静電容量式タッチパネルの操作用指袋。
【請求項6】
前記指袋は手袋の人差し指用指袋であって、該手袋は先端部が導電糸を用いて筒状に編成された親指用指袋を備える手袋であることを特徴とする請求項5記載の静電容量式タッチパネルの操作用指袋。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate