説明

指針装置

【課題】スイープ動作中の作動音を効果音によりマスクすることで、ドライバーの不快感を低減できる指針装置を提供する。
【解決手段】マイコンが、スイープ動作中において指針2の速度が最大速度Vmaxとなる指針角度α+Δα〜β−Δβの範囲で、スピーカから効果音を発生させて、この時生じる作動音をマスクする。また、マイコンは、スイープ動作中において指針2が反転する指針角度θmax−Δγ〜θmaxの範囲で、スピーカから効果音を発生させてこのとき生じる作動音をマスクする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指針装置に係り、特に、指針と、前記指針を駆動するステッピングモータと、所定のトリガで前記指針が零点から目標点まで移動し、その後前記零点まで戻るスイープ動作を行うように前記ステッピングモータの回転を制御するスイープ制御手段と、を備えた指針装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のイグニッションオンやドアロック解除などをトリガにして、指針がスイープ動作を行う指針装置が普及している(特許文献1、2)。スイープ動作において、指針は、図1に示すように、零点P0から矢印X方向に回転して最大点Pmax(目標点)まで移動し、その後矢印Y方向に反転して零点P0に戻る。
【0003】
上記スイープ動作において、指針を早い速度で回転させて、速やかに通常の計測値指示動作に移行させている。指針を駆動するステッピングモータは、その回転力をギアを介して指針に伝えている。このため、指針の回転が速くなると、ギア同士に摩擦が生じ、通常の計測値指示動作では発生しない作動音がドライバーに聞こえる、という問題があった。
【0004】
近年は、車室内の静寂性も向上し、特に、ハイブリッド車、EV車などはエンジンの始動音もないため、上記作動音がより一層大きく響き、ドライバーは不安に感じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4175861号公報
【特許文献2】特開2004−264196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、スイープ動作中の作動音を効果音によりマスクすることで、ドライバーの不快感を低減できる指針装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、指針と、前記指針を駆動するステッピングモータと、所定のトリガで前記指針が零点から目標点まで移動し、その後前記零点まで戻るスイープ動作を行うように前記ステッピングモータの回転を制御するスイープ制御手段と、を備えた指針装置において、効果音を発生する音響手段と、前記スイープ動作中において前記指針の速度が所定値以上の間に前記音響手段から前記効果音を発生させる音響制御手段と、を備えたことを特徴とする指針装置に存する。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記音響制御手段が、前記スイープ動作中において前記指針が反転する位置で前記音響手段から前記効果音を発生させることを特徴とする請求項1に記載の指針装置に存する。
【0009】
請求項3記載の発明は、入力手段により入力された前記ステッピングモータの数に応じて前記音響手段から発生する効果音の音量を調整する調整手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の指針装置に存する。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、音響制御手段が、スイープ動作中において指針の速度が所定値以上の間、音響手段から効果音を発生させるので、スイープ動作中の作動音を効果音によりマスクすることで、ドライバーの不快感を低減できる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、音響制御手段が、スイープ動作中において指針が反転する位置で音響手段から効果音を発生させるので、指針が反転するときの作動音を効果音によりマスクすることができ、ドライバーの不快感を低減すると共に、メータが最大目盛まで正常に作動することを目視及び音で報知することができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、調整手段が、入力手段により入力されたステッピングモータの数に応じて音響手段から発生する効果音の音量を調整するので、効果音をステッピングモータの数に応じた適切な音量に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の指針装置の正面図である。
【図2】図1に示す指針装置の電気構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す指針装置の部分分解斜視図である。
【図4】(A)はイグニッションスイッチのオンオフ、(B)はイグニッションスイッチがスタートポジションにあるか否か、(C)は指針の指示位置、(D)は指針の回転速度、(E)効果音の出力をそれぞれ示すタイムチャートである。
【図5】図1に示す指針装置の動作を説明するための説明図である。
【図6】図2に示す指針装置を構成するマイコンの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の指針装置の正面図である。図2は、図1に示す指針装置の電気構成を示すブロック図である。図3は、図1に示す指針装置の部分分解斜視図である。
【0015】
図2に示すように、指針装置1は、複数の指針2(図1、図3参照)と、これら指針2をそれぞれ駆動する複数のステッピングモータ3と、これらステッピングモータ3の回転を制御するマイクロコンピュータ4(以下マイコン4)と、効果音を発生する音響手段としてのスピーカ5と、各種データを格納する不揮発性のメモリ手段であるEEPROM6と、を備えている。
【0016】
上記指針2は、図1や図3に示すように、速度センサやエンジン回転数センサなどのセンサの計測値を示す目盛りが設けられた文字板上に設けられている。上記ステッピングモータ3は各々、図2に示すように、A相、B相励磁コイル31a、31bと、これらA相、B相励磁コイル31a、31bの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータ32と、マグネットロータ32の駆動力を指針2に伝えるギア33a〜33c(ギア33b、33cについては図3参照)と、これらを収容するケース(図3参照)と、を備えている。
【0017】
図2に示すように、A相、B相励磁コイル31a、31bは、軸方向が90度で交差するようにケース内に収容されている。マグネットロータ32は、円盤状に設けられ、その外周に沿ってN極S極が交互に3極づつ着磁されている。ギア33aは、マグネットロータ32の回転軸に固定されている。ギア33bは、図3に示すように、指針2の回転軸に固定されている。ギア33cは、図3に示すように、マグネットロータ32に固定されたギア33aと、指針3に固定されたギア33bと、の双方に噛み合うように設けられている。これにより、マグネットロータ32が回転するとギア33a〜33cを介して指針2も回転する。
【0018】
また、上記ステッピングモータ3は、図3に示すように、マグネットロータ32の回転に連動する被駆動部材としての片34と、片34と当接してステッピングモータ3の回転を機械的に停止させるストッパ35と、を有している。片34は、上述したギア33bに固定された円盤部36に突設されている。ストッパ35は、ケースに突設されている。上述した片34とストッパ35とが当接したときに指針2が文字板に設けた目盛り上の零点P0(図1参照)を指示するように、指針2がステッピングモータ3の回転軸に打ち込まれている。
【0019】
上記マイコン4は、図2に示すように、電源IC7からの電源供給を受けて動作する。電源IC7は、車載バッテリBからマイコン4に対する供給電圧を生成する。また、上記マイコン4には、イグニッションスイッチIGがインタフェース(I/F)8を介して接続されている。上記マイコン4は、駆動回路41として機能し、ステッピングモータ3のA相励磁コイル31a、B相励磁コイル31bに対して駆動電圧を出力している。なお、本実施形態では、マイコン4を駆動回路41として機能させていたが、マイコン4とは別に駆動回路41を設けても良い。
【0020】
次に、上述した構成の指針装置1の動作について図4及び図5を参照して説明する。イグニッションスイッチIGのオンした後、イグニッションスイッチIGがスタートポジションになりエンジンがスタートすると、マイコン4は、スイープ制御手段として働きスイープ動作を開始する。スイープ動作において、マイコン4は、図4(C)に示すように、指針2を矢印X方向(図5参照)に回転させて零点P0から所定の目標点である最大点Pmaxまで移動し、その後矢印Y方向(図5参照)に回転させて零点P0まで戻るようにステッピングモータ3の回転を制御する。
【0021】
このとき、マイコン4は、図4(D)に示すように、零点P0から最大点Pmaxに向かって徐々に指針2の回転速度が速くなるようにステッピングモータ3の回転を制御する。マイコン4は、指針2の回転速度が速くなり、予め定めた最大速度Vmaxに達するとその速度をしばらく維持し、その後徐々に回転速度を遅くして最大点Pmaxに達すると回転速度が0となり停止するようにステッピングモータ3の回転を制御する。
【0022】
そして、マイコン4は、最大点Pmaxに達すると指針2の回転をしばらく停止させ、その後最大点Pmaxから零点P0に向かって徐々に指針2の回転速度が速くなるようにステッピングモータ3の回転を制御する。マイコン4は、指針2の回転速度が速くなり、最大速度Vmaxに達するとその速度をしばらく維持し、その後徐々に回転速度を遅くして零点P0に達すると回転速度が0となり停止するようにステッピングモータ3の回転を制御する。
【0023】
上記マイコン4は、音響制御手段として働き、上記スイープ動作中において、図4(E)や図5に示すように、指針2が所定値としての最大速度Vmaxの間にスピーカ5から効果音を発生させると共に、指針2が最大点Pmaxで反転する位置でスピーカ5から効果音を発生させる。
【0024】
なお、上記効果音の音量としては、メータ動作中に吹鳴させる警報音などの音量以下(50%〜70%程度)に設定し、作動音が分かり難くなる程度の音量を使用している。また、マイコン4には指針装置1に備えられたステッピングモータ3の数を入力するための入力手段としての入力器(図示せず)が接続可能になっている。マイコン4は、調整手段として働き、この入力器により入力されたステッピング3の数に応じて効果音の音量を調整している。
【0025】
次に、上記概略で説明した指針装置1の動作の詳細を図6を参照して説明する。上記マイコン4は、イグニッションスイッチIGがオンした後、イグニッションスイッチIGがスタートポジションになりエンジンがスタートすると条件が成立したと判定して(ステップS1でY)、上述した指針2のスイープ動作を開始させる(ステップS2)。その後、マイコン4は、指針2が矢印X方向に回転しているか否かを判定する(ステップS3)。
【0026】
指針2が矢印X方向に回転していれば(ステップS3でY)、次にマイコン4は、指針角度が(α+Δα)に達しているか否かを判定する(ステップS4)。ここでα+Δαは、図4及び図5に示すように、スイープ動作中において指針2が矢印X方向に移動しているときに最大速度Vmaxに達する指針角度αよりもΔαだけ最大点Pmax側の指針角度であり、EEPROM6などのメモリに予め格納されている。
【0027】
指針角度が(α+Δα)に達していれば(ステップS4でY)、マイコン4は、指針2が最大速度Vmaxで回転していると判定し、このときの作動音をマスクするためにスピーカ5から一定時間Tだけ効果音を吹鳴させた後(ステップS5)、ステップS6に進む。一定時間Tだけ効果音を吹鳴させると、指針2の速度を低下させ始める指針角度βよりもΔβだけ零点P0側の指針角度(β−Δβ)に達したときに効果音の鳴動が終了する。
【0028】
一方、指針角度が(α+Δα)に達していなければ(ステップS4でN)、次にマイコン4は、指針角度が(θmax−Δγ)に達しているか否かを判定する(ステップS7)。ここでθmax−Δγは、図4及び図5に示すように、スイープ動作中において最大点PmaxよりもΔγだけ零点P0側の指針角度であり、EEPROM6などのメモリに予め格納されている。なお、θmaxは、最大点Pmaxでの指針角度である。
【0029】
指針角度が(θmax−Δγ)に達していれば(ステップS7でY)、マイコン4は、指針2が反転する位置にあると判定し、このときの作動音をマスクするためにスピーカ5から一定時間Tだけ効果音を吹鳴させた後(ステップS5)、ステップS6に進む。一定時間Tだけ効果音を吹鳴させると、指針2が最大点Pmaxで反転し、再び最大点PmaxからΔγだけ零点P0側の指針角度(θmax−Δγ)に戻ったときに効果音の鳴動が終了する。
【0030】
一方、指針角度が(θmax−Δγ)でなければ(ステップS7でN)、マイコン4はステップS5に進まないで効果音を発生させることなく、直ちにステップS6に進む。ステップS6ではマイコン4は、スイープ動作が終了したか否かを判定する。スイープ動作が終了していなければ(ステップS6でN)、マイコン4は再びステップS3に戻る。
【0031】
そして、ステップS3で指針2がX方向に回転していないと判定すると(ステップS3でN)、マイコン4は、Y方向に回転していると判定して指針角度が(β−Δβ)に達したか否かを判定する(ステップS8)。ここで(β−Δβ)は、スイープ動作中において指針2が矢印Y方向に移動しているときに指針2が最大速度Vmaxに達する指針角度βよりもΔβだけ零点P0側の指針角度であり、EEPROM6などのメモリに予め格納されている。
【0032】
指針角度が(β−Δβ)に達していれば(ステップS8でY)、マイコン4は指針2が最大速度Vmaxで回転していると判定し、このときの作動音をマスクするためにスピーカ5から一定時間Tだけ効果音を吹鳴させた後(ステップS5)、ステップS6に進む。一定時間Tだけ効果音を吹鳴させると、指針2の速度を低下させ始める指針角度αよりもΔαだけ最大点Pmax側の指針角度(α+Δα)に達したときに効果音の鳴動が終了する。その後のステップS6においてスイープ動作が終了していると判定すると、マイコン4は演出処理を終了する。
【0033】
以上の動作によれば、図5に示すように、スイープ動作中において、指針2が最大速度Vmaxになっている指針角度(α+Δα)〜(β−Δβ)の範囲で効果音を吹鳴させて作動音をマスクすることができる。また、指針2が反転する位置である指針角度(θmax−Δγ)〜θmaxの範囲で効果音を吹鳴させて作動音をマスクすることができ、ドライバーの不快感を低減できると共に、メータが最大目盛まで正常に作動することを目視及び音で報知することができる。
【0034】
上述した指針装置1によれば、マイコン4が、スイープ動作中において指針2の速度が最大速度Vmaxの間にスピーカ5から効果音を発生させるので、スイープ動作中の作動音を効果音によりマスクすることで、ドライバーの不快感を低減できる。
【0035】
また、上述した指針装置1によれば、マイコン4が、スイープ動作中において指針2が反転する位置である最大点Pmaxでスピーカ5から効果音を発生させるので、指針2が反転するときの作動音を効果音によりマスクすることができ、ドライバーの不快感を低減できる。
【0036】
また、上述した指針装置1によれば、マイコン4が、スイープ動作中において間欠的に効果音を吹鳴し、指針2が最大速度Vmax未満や反転位置にないときには効果音を発していないので、オーディオを使用しているときに聞きたい音楽や放送が聞き取り難いということがなくなる。
【0037】
また、上述した指針装置1によれば、マイコン4が、図示しない入力器により入力されたステッピングモータ3の数に応じてスピーカ5から発生する効果音の音量を調整するので、効果音をステッピングモータ3の数に応じた適切な音量に設定できる。
【0038】
なお、上述した実施形態としては、最大速度Vmaxを所定値としていたが、本発明はこれに限ったものではない。最大速度Vmaxよりも低い値を所定値としてもよい。
【0039】
また、上述した実施形態では、指針角度によって指針2の速度が最大速度Vmaxであるか否かを判定していたが、本発明はこれに限ったものではない。スイープ動作開始から指針角度α+Δα、β−Δβ、θmax−Δγに達する時間は予め分かるので、スイープ動作開始からの時間によって指針2の速度が最大速度Vmaxであるか否かを判定するようにしてもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、最大点Pmaxを目標点としていたが、本発明はこれに限ったものではない。最大点Pmaxよりも零点P0よりを目標点としてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態では、イグニッションスイッチIGがオンした後に、エンジンがスタートしたことをトリガとしてスイープ動作を開始していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、ドアロック解除をトリガにしてスイープ動作を開始してもよい。
【0042】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
2 指針
3 ステッピングモータ
4 マイコン(スイープ制御手段、音響制御手段、調整手段)
5 スピーカ(音響手段)
0 零点
max 最大点(目標点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指針と、前記指針を駆動するステッピングモータと、所定のトリガで前記指針が零点から目標点まで移動し、その後前記零点まで戻るスイープ動作を行うように前記ステッピングモータの回転を制御するスイープ制御手段と、を備えた指針装置において、
効果音を発生する音響手段と、
前記スイープ動作中において前記指針の速度が所定値以上の間に前記音響手段から前記効果音を発生させる音響制御手段と、
を備えたことを特徴とする指針装置。
【請求項2】
前記音響制御手段が、前記スイープ動作中において前記指針が反転する位置で前記音響手段から前記効果音を発生させる
ことを特徴とする請求項1に記載の指針装置。
【請求項3】
入力手段により入力された前記ステッピングモータの数に応じて前記音響手段から発生する効果音の音量を調整する調整手段を
さらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の指針装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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