説明

指静脈認証装置に用いられる外光遮断カバー、および、指静脈認証装置

【課題】指静脈認証装置において、外乱光の撮像部への入射を遮断するとともに、撮像面上における指の姿勢の調整を行いやすくする技術を提供する。
【解決手段】指静脈認証装置100は、手の指Fを載置するための載置部10と、載置部10に載置された指Fの静脈パターンを撮像する撮像部30と、撮像部30によって撮像された静脈パターンを用いて認証処理を行う制御部40(認証処理部)と、載置部10に載置された指Fを覆って、撮像部30に入射する外光を遮断する外光遮断カバー50と、を備える。外光遮断カバー50は、外光遮断カバー50によって覆われた指Fを外光遮断カバー50の外部から視認するためのスリット52を備える。このスリット52は、指Fの可視角度を60度以下に制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指静脈認証装置に用いられる外光遮断カバー、および、指静脈認証装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金融機関のATM(Automated teller machine;現金自動預払機)もしくはCD(Cash Dispenser;現金自動支払機)や、入退室管理装置、鍵管理装置などに、個人を認証する手段として、生体認証装置の導入が進んでいる。生体認証装置は、生体固有の情報である生体情報を取得し、あらかじめ登録しておいた生体情報と照合して、その照合の度合いに基づいて認証を行う。このような生体認証装置としては、生体情報として、手の指の静脈パターンを用いる指静脈認証装置が知られている。
【0003】
ところで、指静脈認証装置では、指の静脈パターンを撮像するときに撮像部(カメラ)に入射する外乱光が、静脈パターンの撮像、および、認証の精度に悪影響を及ぼす。そこで、従来、指静脈認証装置では、手の指で撮像面全体を覆う、装置の一部をカバーとして撮像面全体を覆う、外乱光の撮像部への入射を遮断するための外光遮断カバーを設けるなど、外乱光の撮像部への入射を遮断して、外乱光の影響を抑制する工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−185335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、指静脈認証装置において、撮像面全体をカバーで覆う場合には、撮像面上に置かれた指を視認することができないため、利用者にとって心理的抵抗が大きいことや、利用者が適切な位置に指を置いたかどうか分からないなどの課題が生じていた。また、一般的な指静脈認証装置では、2次元的な静脈パターンが用いられ、撮像部によって撮像される静脈パターンは、撮像時の指の軸を中心としたロール方向の姿勢(以下、単に「姿勢」とも言う)によって変化する。しかし、撮像面全体をカバーで覆う場合には、撮像面上に置かれた指を視認することができないため、指の姿勢が静脈パターンの登録時の姿勢(静脈パターンの登録時の姿勢とみなすことができる姿勢)となるように調整することが難しかった。そして、この指の姿勢の調整についての課題は、上記特許文献1に記載された発明のように、外光遮断カバーに採光用のスリットを設けた場合でも生じていた。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、指静脈認証装置において、外乱光の撮像部への入射を遮断するとともに、撮像面上における指の姿勢の調整を行いやすくする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
手の指を載置するための載置部と、前記載置部に載置された指の静脈パターンを撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された前記静脈パターンを用いて認証処理を行う認証処理部と、を備える指静脈認証装置に用いられ、前記載置部に載置された前記指を覆って、前記撮像部に入射する外光を遮断する外光遮断カバーであって、
前記外光遮断カバーによって覆われた前記指を、前記外光遮断カバーの外部から視認するための窓部を備え、
前記窓部は、
前記載置部に載置された前記指の軸に対して垂直な平面上において、
前記外光遮断カバーの外面における前記窓部の第1のエッジ点を通り、前記指の輪郭線に接する第1の接線と、
前記外光遮断カバーの外面における前記窓部の前記第1のエッジ点と向かい合う第2のエッジ点を通り、前記指の輪郭線に接する第2の接線と、
のなす角度である前記指の可視角度を60度以下に制限する、
外光遮断カバー。
【0009】
本明細書において、「遮断する」とは、広義に、「妨げる」ことを意味する。
【0010】
適用例1の外光遮断カバーを指静脈認証装置に用いることによって、外乱光の撮像部への入射を遮断するとともに、外光遮断カバーの外部から窓部を通して指を目視しつつ、撮像面上における指の姿勢の調整を行いやすくすることができる。この結果、指静脈認証装置における認証精度の低下を抑制することができる。
【0011】
なお、上記外光遮断カバーにおいて、上記窓部が制限する指の可視角度を60度以下とすることによって、上記窓部が制限する指の可視角度が60度より大きい場合よりも、利用者は、外光遮断カバーと、窓部から視認される指とのコントラストを明確に把握することが可能となり、指の姿勢の調整を行いやすくすることができる。
【0012】
[適用例2]
適用例1の外光遮断カバーであって、
前記窓部は、可視光を透過するとともに、前記可視光以外の波長を有する光であって、上記撮像部による静脈パターンの撮像に悪影響を及ぼす波長を有する光である外乱光を遮断するフィルタを備える、
外光遮断カバー。
【0013】
適用例2の外光遮断カバーによって、上記窓部からの指の視認性を確保しつつ、上記窓部から入射する外乱光を遮断することができる。
【0014】
[適用例3]
適用例2記載の外光遮断カバーであって、
前記フィルタは、前記外乱光として、赤外光を遮断する、
外光遮断カバー。
【0015】
適用例3の外光遮断カバーによって、上記静脈パターンの撮像に及ぼす影響が比較的大きい赤外光を遮断することができる。
【0016】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれかに記載の外光遮断カバーであって、
前記窓部は、前記載置部に載置された前記指の軸を中心としたロール方向に沿って、複数設けられている、
外光遮断カバー。
【0017】
適用例4の外光遮断カバーによって、複数の使用態様に対応することが可能となり、すなわち、外光遮断カバーの外部の複数の角度から、いずれかの窓部を通して指を目視することが可能となり、利便性を向上させることができる。
【0018】
[適用例5]
適用例4記載の外光遮断カバーであって、
前記複数の窓部として、
前記載置部に載置された右手の指を視認するための右指用窓部であって、前記指の付け根から先端に向かう方向を前方としたときに、前記指の中心を通り、前記載置部における載置面に対して垂直な軸に対して左側にずらした位置に配置された右指用窓部と、
前記載置部に載置された左手の指を視認するための左指用窓部であって、前記指の付け根から先端に向かう方向を前方としたときに、前記指の中心を通り、前記載置部における載置面に対して垂直な軸に対して右側にずらした位置に配置された左指用窓部と、
を備える外光遮断カバー。
【0019】
適用例5の外光遮断カバーによって、指静脈認証装置が、右手の指を置きやすい位置に配置される場合にも、左手の指を置きやすい位置に配置される場合にも対応することが可能となり、利便性を向上させることができる。
【0020】
なお、適用例4,5の外光遮断カバーにおいて、使用しない窓部を閉じる蓋部を設けるようにしてもよい。こうすることによって、使用していない窓部からの外乱光の入射を防止することができる。
【0021】
[適用例6]
指静脈認証装置であって、
手の指を載置するための載置部と、
前記載置部に載置された指の静脈パターンを撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記静脈パターンを用いて認証処理を行う認証処理部と、
適用例1ないし5のいずれかに記載の外光遮断カバーと、
を備える指静脈認証装置。
【0022】
適用例6の指静脈認証装置では、上記外光遮断カバーを備えるので、外乱光の撮像部への入射を遮断するとともに、外光遮断カバーの外部から窓部を通して指を目視しつつ、撮像面上における指の姿勢の調整を行いやすくすることができる。この結果、指静脈認証装置における認証精度の低下を抑制することができる。
【0023】
本発明は、上述の外光遮断カバー、指静脈認証装置としての構成の他、上述の指静脈認証装置を備える現金自動預払機(ATM)、現金自動支払機(CD)、入退室管理装置、鍵管理装置等の発明として構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例としての指静脈認証装置100の概略構成を示す説明図である。
【図2】制御部40の内部構成を示す説明図である。
【図3】外光遮断カバー50、および、外光遮断カバー50によって覆われた指Fを外光遮断カバー50の上面から見た説明図である。
【図4】赤外線カットフィルタ54の光透過特性を示す説明図である。
【図5】外光遮断カバー50におけるスリット52の設計について示す説明図である。
【図6】外光遮断カバー50におけるスリット52の設計例を示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施例としての指静脈認証装置100Aの概略構成を示す説明図である。
【図8】外光遮断カバー50Aにおけるスリット52Aの設計について示す説明図である。
【図9】外光遮断カバー50Aにおけるスリット52Aの設計例を示す説明図である。
【図10】変形例としての外光遮断カバー50Bを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
A.第1実施例:
A1.指静脈認証装置:
図1は、本発明の第1実施例としての指静脈認証装置100の概略構成を示す説明図である。この指静脈認証装置100は、手の指の静脈パターンを用いた生体認証を行う装置である。図示するように、指静脈認証装置100は、手の指Fを載置するための載置部10と、載置部10に載置された指Fを覆って、撮像部30に入射する外光を遮断する外光遮断カバー50と、載置部10に載置された指Fに光を照射する光源部20と、載置部10に載置された指Fの静脈パターンを撮像する撮像部30と、認証処理を含む指静脈認証装置100の制御を行う制御部40と、を備える。
【0026】
外光遮断カバー50は、この外光遮断カバー50によって覆われた指Fを外光遮断カバー50の外部から視認するためのスリット52を備える。このスリット52は、外光遮断カバー50の外部からの指Fの可視角度を60度以下に制限する。指Fの可視角度については、後から説明する。また、スリット52には、可視光を透過し、外乱光としての赤外光の入射を遮断する赤外線カットフィルタ54が設けられている。なお、本実施例では、外光遮断カバー50において、指Fの軸方向から見たときの、スリット52が形成されている部位(上面)の断面は、載置部10の表面に対して平行であるものとした。
【0027】
光源部20としては、例えば、近赤外光を発光する発光ダイオードを用いることができる。また、撮像部30としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラを用いることができる。
【0028】
図2は、制御部40の内部構成を示す説明図である。図示するように、制御部40は、CPU410と、主記憶部420と、光源制御部430と、カメラ制御部440と、通信制御部450と、を備えている。
【0029】
CPU410は、主記憶部420に記憶された所定のコンピュータプログラムを実行することによって、指静脈認証装置100全体の動作を制御する。また、CPU410は、主記憶部420に記憶された認証プログラム422を実行することによって、認証処理を行う認証処理部412として機能する。光源制御部430は、光源部20の動作を制御する。カメラ制御部440は、撮像部30の動作を制御する。通信制御部450は、指静脈認証装置100への命令の受信や、指静脈認証装置100における異常の通知等、他の装置との情報のやり取りを行う。
【0030】
A2.外光遮断カバー:
図3は、外光遮断カバー50、および、外光遮断カバー50によって覆われた指Fを、外光遮断カバー50の上面から見た説明図である。図示するように、本実施例では、外光遮断カバー50には、指Fの長さ方向が長手方向となる、矩形形状を有するスリット52が設けられている。そして、このスリット52からは、指Fの第一関節から第二間接付近まで視認することができる。そして、指静脈認証装置100の利用者は、外光遮断カバー50におけるスリット52から指Fを視認しつつ、指Fの位置やスリット52に対する角度や姿勢を調整する。
【0031】
図4は、赤外線カットフィルタ54の光透過特性を示す説明図である。図示するように、赤外線カットフィルタ54は、波長が約750(nm)以上の赤外光、および、波長が約380(nm)以下の紫外光の透過をカットし、波長が約380〜750(nm)の可視光を透過する。
【0032】
A3.スリット:
図5は、外光遮断カバー50におけるスリット52の設計について示す説明図である。図5(a)に示したように、指Fの軸方向から見たときの指Fの断面形状(輪郭線)は、半径がbの円であるものとする。また、指Fの軸方向から見たときの、載置部10における載置面に対して垂直な方向をX軸方向とし、載置部10における載置面に対して平行な方向をY軸方向とする。そして、図示した指Fの中心を原点O(0,0)とする。また、外光遮断カバー50において、スリット52は、X軸上に形成されているものとする。そして、指Fの中心から外光遮断カバー50の内面のスリット52までの距離をaとする。また、外光遮断カバー50において、スリット52が形成されている部位の厚さをxとする。また、スリット52の幅を2yとする。指Fの可視角度2θは、外光遮断カバー50の外部からスリット52を通して指Fを視認できる角度であり、載置部10に載置された指Fの軸に対して垂直な平面上において、外光遮断カバー50の外面におけるスリット52のエッジ点e1(a+x,y)を通り、指Fの輪郭線に接する接線L1と、外光遮断カバー50の外面におけるスリット52のエッジ点e1と向かい合うエッジ点e2(a+x,−y)を通り、指Fの輪郭線に接する接線L2とのなす角度である。θは、X軸と接線L1とのなす角度である。また、接線L1と円との接点は、点C1(x0,y0)であるものとする。
【0033】
この場合、接線L1は、エッジ点e1、および、点C1を通ることから、以下に示す式(1),(2)が成り立つ。
【0034】
【数1】

【0035】
そして、上記式(1),(2)からなる連立方程式の解は、以下に示す式(3),(4)となる。
【0036】
【数2】

【0037】
この解から、接線L1の傾きαは、以下に示す式(5)、または、式(6)となる。
【0038】
【数3】

【0039】
ここで、接線L1の傾きαは正であり、また、スリット52の幅2yは十分に小さいことから、上記式(5)が接線L1の傾きとなる。
【0040】
したがって、指Fの可視角度2θの1/2であるθは、以下に示す式(7)で表すことができる。
【0041】
【数4】

【0042】
本実施例では、指Fの可視角度2θは、60度以下に制限されるから、スリット52は、上記式(7)において、θが30度以下となるように、各値を設定すればよい。
【0043】
なお、スリット52は、指Fの軸を中心としてロール方向に傾いた方向から、外光遮断カバー50の内部が見えるように設計される必要がある。したがって、図5(b)に示した、外光遮断カバー50の外面におけるスリット52のエッジ点e1と、外光遮断カバー50の内面におけるスリット52のエッジ点e3と、を通る直線Lと、X軸と、のなす角度をθnとすると、x(外光遮断カバー50において、スリット52が形成されている部位の厚さ)、および、y(スリット52の幅の1/2)は、以下に示す式(8)を満たす必要がある。
【0044】
【数5】

【0045】
図6は、外光遮断カバー50におけるスリット52の設計例を示す説明図である。図5に示した各パラメータにおいて、制限する指Fの可視角度2θの1/2であるθを30度、指の太さ2bを17(mm)、載置部10の表面から外光遮断カバー50におけるスリット52までの距離h=a+bを28(mm)とする。なお、図示した例では、指の太さ2bは、一般的な成人男性の手の指の太さを基準として設定されている。この場合、上記式(7),(8)を満たすスリット52の形状の有効範囲は、図6において、ハッチングを付した範囲になる。
【0046】
以上説明した第1実施例の指静脈認証装置100によれば、外光遮断カバー50が備えるスリット52が、指Fの可視角度2θを60度以下に制限するので、指静脈認証装置100の利用者は、指Fの可視角度2θが60度より大きい場合よりも、外光遮断カバー50と、スリット52から視認される指Fとのコントラストを明確に把握することができる。したがって、外乱光の撮像部30への入射を遮断するとともに、外光遮断カバー50の外部からスリット52を通して指Fを目視しつつ、撮像面上における指Fの姿勢の調整を行いやすくすることができる。
【0047】
また、外光遮断カバー50において、スリット52には、赤外線カットフィルタ54が設けられているので、スリット52から入射する外乱光であって、静脈パターンの撮像に与える影響が比較的大きい赤外光を遮断することができる。
【0048】
この結果、指静脈認証装置100における認証精度の低下を抑制することができる。
【0049】
B.第2実施例:
B1.指静脈認証装置:
図7は、本発明の第2実施例としての指静脈認証装置100Aの概略構成を示す説明図である。指静脈認証装置100Aは、第1実施例の指静脈認証装置100における外光遮断カバー50の代わりに、外光遮断カバー50Aを備えている。そして、外光遮断カバー50Aは、第1実施例における外光遮断カバー50と同様に、この外光遮断カバー50Aによって覆われた指Fを外光遮断カバー50Aの外部から視認するためのスリット52Aを備えている。なお、指静脈認証装置100Aにおける外光遮断カバー50Aと、指静脈認証装置100における外光遮断カバー50とは、例えば、図7と図1との比較から分かるように、上面の形状、および、スリット52,52Aの形成位置が異なっている。
【0050】
外光遮断カバー50Aにおけるスリット52Aは、外光遮断カバー50におけるスリット52と同様に、矩形形状を有しており、指Fの可視角度を60度以下に制限する。また、スリット52Aには、スリット52と同様に、可視光を透過し、外乱光としての赤外光の入射を遮断する赤外線カットフィルタ54が設けられている。なお、本実施例では、外光遮断カバー50Aにおいて、指Fの軸方向から見たときの、スリット52Aが形成されている部位(上面)の断面は、外光遮断カバー50と異なり、円弧形状であるものとした。
【0051】
B2.スリット:
図8は、外光遮断カバー50Aにおけるスリット52Aの設計について示す説明図である。図8に示したように、指Fの軸方向から見たときの指Fの断面形状(輪郭線)は、半径がbの円であるものとする。また、指Fの軸方向から見たときの、載置部10における載置面に対して垂直な方向をX軸方向とし、載置部10における載置面に対して平行な方向をY軸方向とする。そして、図示した指Fの中心を原点O(0,0)とする。また、外光遮断カバー50Aの上面(外面)の曲率半径をR1とする。そして、この半径がR1の円は、X軸上に中心点を持つ。また、指Fの中心から外光遮断カバー50Aの内側の頂点までの距離をaとする。また、外光遮断カバー50Aにおいて、スリット52Aが形成されている部位の厚さをxとする。また、外光遮断カバー50Aにおいて、スリット52Aは、X軸から角度φずれた位置に設けられるものとする。また、スリット52Aの幅を2yとする。指Fの可視角度2θは、外光遮断カバー50Aの外部からスリット52Aを通して指Fを視認できる角度であり、θは、指Fの中心とスリット52Aの中心とを通る直線L0と、接線L1とのなす角度である。接線L1は、外光遮断カバー50Aの外面におけるスリット52Aのエッジ点γ(Xγ,Yγ)を通る円の接線である。なお、接線L1と円との接点は、点C1(x0,y0)であるものとする。また、エッジ点γ(Xγ,Yγ)と向かい合うエッジ点とエッジ点γ(Xγ,Yγ)との高さの差は無視できるものとする。
【0052】
この場合、曲率半径がR1である円弧の中心点は、(−(R1−(a+x)),0)となり、この円の方程式は、以下に示す式(9)となる。
【0053】
【数6】

【0054】
また、図8において、直線L0は、X軸から角度φ回転し、スリット幅の半分であるyだけ水平移動させたものであるから、以下に示す式(10)となる。
【0055】
【数7】

【0056】
そして、外光遮断カバー50Aの外面におけるスリット52Aのエッジ点γ(Xγ,Yγ)は、上記式(9)と上記式(10)との交点であり、これらからなる連立方程式の解は、以下に示す式(11),(12)となる。
【0057】
【数8】

【0058】
ここで、(Xγ,Yγ)>0であるから、(Xγ,Yγ)は、それぞれ、以下に示す式(13),(14)となる。
【0059】
【数9】

【0060】
また、接線L1は、指Fを表す円の接線であり、点γ、および、点C1を通ることから、以下に示す式(15),(16)が成り立つ。
【0061】
【数10】

【0062】
そして、上記式(15),(16)からなる連立方程式の解は、以下に示す式(17),(18)となる。
【0063】
【数11】

【0064】
そして、この解から、第1実施例と同様に、接線L1の傾きαを求めることができる。接線L1の傾きαは、以下に示す式(19)となる。
【0065】
【数12】

【0066】
そして、接線L1の傾きα=φ+θであるから、指Fの可視角度2θの1/2であるθは、以下に示す式(20)で表すことができる。
【0067】
【数13】

【0068】
本実施例においても、第1実施例と同様に、指Fの可視角度2θは、60度以下に制限されるから、スリット52Aは、上記式(20)において、θが30度以下となるように、各値を設定すればよい。また、x(外光遮断カバー50Aにおいて、スリット52Aが形成されている部位の厚さ)、および、y(スリット52Aの幅の1/2)は、第1実施例と同様に、先に示した式(8)を満たす必要がある。
【0069】
図9は、外光遮断カバー50Aにおけるスリット52Aの設計例を示す説明図である。図8に示した各パラメータにおいて、曲率半径R1を30(mm)、スリット52AをX軸に対して傾ける角度φを30度とする。また、指Fの可視角度2θの1/2であるθを30度、指の太さ2bを17(mm)、載置部10の表面から外光遮断カバー50Aの内側の頂点までの距離h=a+bを28(mm)とする。この場合、上記式(20),(8)を満たすスリット52Aの形状の有効範囲は、図9において、ハッチングを付した範囲になる。
【0070】
以上説明した第2実施例の指静脈認証装置100Aによっても、第1実施例の指静脈認証装置100と同様に、外光遮断カバー50Aが備えるスリット52Aが、指Fの可視角度2θを60度以下に制限するので、指静脈認証装置100Aの利用者は、指Fの可視角度2θが60度より大きい場合よりも、外光遮断カバー50Aと、スリット52Aから視認される指Fとのコントラストを明確に把握することができる。したがって、外乱光の撮像部30への入射を遮断するとともに、外光遮断カバー50Aの外部からスリット52Aを通して指Fを目視しつつ、撮像面上における指Fの姿勢の調整を行いやすくすることができる。
【0071】
C.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形が可能である。
【0072】
C1.変形例1:
上記実施例では、例えば、外光遮断カバー50は、1つのスリット52を備えるものとしたが、本発明は、これに限られない。外光遮断カバー50において、スリットは、載置部10に載置された指Fの軸を中心としたロール方向に沿って、複数設けられているようにしてもよい。こうすることによって、複数の使用態様に対応することが可能となり、すなわち、外光遮断カバー50の外部の複数の角度から、いずれかのスリットを通して指を目視することが可能となり、利便性を向上させることができる。
【0073】
図10は、変形例としての外光遮断カバー50Bを示す説明図である。図10(a)に、外光遮断カバー50B、および、外光遮断カバー50Bによって覆われた指Fを、外光遮断カバー50Bの上面から見た様子を示した。また、図10(b)に、指Fの軸方向から見たときの外光遮断カバー50Bの断面図を示した。図示するように、外光遮断カバー50Bは、その上面の両脇に、すなわち、指Fの付け根から指先に向かう方向を前方としたときに、指Fの中心を通り、載置部10における載置面に対して垂直な軸に対して、それぞれ左右にずらして配置されたスリット52R、および、スリット52Lを備えている。スリット52Rは、載置部10に載置された右手の指Fを視認するための右指用のスリットである。スリット52Lは、載置部10に載置された右手の指Fを視認するための左指用のスリットである。そして、スリット52R,53Lには、それぞれ、赤外線カットフィルタ54R,54Lが備えられている。この外光遮断カバー50Bによって、指静脈認証装置が、右手の指を置きやすい位置に配置される場合にも、左手の指を置きやすい位置に配置される場合にも対応することが可能となり、利便性を向上させることができる。
【0074】
C2.変形例2:
上記実施例では、例えば、スリット52には、赤外線カットフィルタ54が備えられるものとしたが、赤外線カットフィルタ54を省略するようにしてもよい。
【0075】
C3.変形例3:
上記実施例では、例えば、外光遮断カバー50は、矩形形状を有するスリット52を備えるものとしたが、本発明は、これに限られない。外光遮断カバーは、一般に、外光遮断カバーによって覆われた指を外光遮断カバーの外部から視認するための窓部であって、指の可視角度を60度以下に制限する窓部を備えるようにすればよい。
【符号の説明】
【0076】
100,100A…指静脈認証装置
10…載置部
20…光源部
30…撮像部
40…制御部
410…CPU
412…認証処理部
420…主記憶部
422…認証プログラム
430…光源制御部
440…カメラ制御部
450…通信制御部
50,50A,50B…外光遮断カバー
52,52A,52L,52R…スリット
54,54L,54R…赤外線カットフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手の指を載置するための載置部と、前記載置部に載置された指の静脈パターンを撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された前記静脈パターンを用いて認証処理を行う認証処理部と、を備える指静脈認証装置に用いられ、前記載置部に載置された前記指を覆って、前記撮像部に入射する外光を遮断する外光遮断カバーであって、
前記外光遮断カバーによって覆われた前記指を、前記外光遮断カバーの外部から視認するための窓部を備え、
前記窓部は、
前記載置部に載置された前記指の軸に対して垂直な平面上において、
前記外光遮断カバーの外面における前記窓部の第1のエッジ点を通り、前記指の輪郭線に接する第1の接線と、
前記外光遮断カバーの外面における前記窓部の前記第1のエッジ点と向かい合う第2のエッジ部を通り、前記指の輪郭線に接する第2の接線と、
のなす角度である前記指の可視角度を60度以下に制限する、
外光遮断カバー。
【請求項2】
請求項1の外光遮断カバーであって、
前記窓部は、可視光を透過するとともに、前記可視光以外の波長を有する光であって、上記撮像部による静脈パターンの撮像に悪影響を及ぼす波長を有する光である外乱光を遮断するフィルタを備える、
外光遮断カバー。
【請求項3】
請求項2記載の外光遮断カバーであって、
前記フィルタは、前記外乱光として、赤外光を遮断する、
外光遮断カバー。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の外光遮断カバーであって、
前記窓部は、前記載置部に載置された前記指の軸を中心としたロール方向に沿って、複数設けられている、
外光遮断カバー。
【請求項5】
請求項4記載の外光遮断カバーであって、
前記複数の窓部として、
前記載置部に載置された右手の指を視認するための右指用窓部であって、前記指の付け根から先端に向かう方向を前方としたときに、前記指の中心を通り、前記載置部における載置面に対して垂直な軸に対して左側にずらした位置に配置された右指用窓部と、
前記載置部に載置された左手の指を視認するための左指用窓部であって、前記指の付け根から先端に向かう方向を前方としたときに、前記指の中心を通り、前記載置部における載置面に対して垂直な軸に対して右側にずらした位置に配置された左指用窓部と、
を備える外光遮断カバー。
【請求項6】
指静脈認証装置であって、
手の指を載置するための載置部と、
前記載置部に載置された指の静脈パターンを撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記静脈パターンを用いて認証処理を行う認証処理部と、
請求項1ないし5のいずれかに記載の外光遮断カバーと、
を備える指静脈認証装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−173938(P2012−173938A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34619(P2011−34619)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】