指静脈認証装置及び指静脈認証方法
【課題】小型化の達成及び認証精度を向上させることができる指静脈認証装置及び指静脈認証方法を提供する。
【解決手段】載置部12と、載置部12に載置された指の右側及び左側に各々配置された光源と、載置部12に載置された指100の腹側及び背側に各々配置された腹側撮像部16A及び背側撮像部と、腹側撮像部16Aで撮像された画像から抽出された抽出腹側指静脈パターンと、予め登録されている登録腹側指静脈パターンとを照合し且つ背側撮像部で撮像された画像から抽出された抽出背側指静脈パターンと、予め登録されている登録背側指静脈パターンとを照合する画像処理部と、画像処理部で得られた照合結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する判断部を備えた指静脈認証装置1である。
【解決手段】載置部12と、載置部12に載置された指の右側及び左側に各々配置された光源と、載置部12に載置された指100の腹側及び背側に各々配置された腹側撮像部16A及び背側撮像部と、腹側撮像部16Aで撮像された画像から抽出された抽出腹側指静脈パターンと、予め登録されている登録腹側指静脈パターンとを照合し且つ背側撮像部で撮像された画像から抽出された抽出背側指静脈パターンと、予め登録されている登録背側指静脈パターンとを照合する画像処理部と、画像処理部で得られた照合結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する判断部を備えた指静脈認証装置1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指静脈パターンを使用して個人認証を行う指静脈認証装置及び指静脈認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な方法で個人認証を行う装置が使用されている。そのなかでも、指静脈パターンを使用して個人認証を行う指静脈認証装置は、優れた認証精度を有していることに加え、身体内部の指静脈パターンを使用するため、偽造が困難であり、なりすましに対する高度なセキュリティーを実現することができる。
【0003】
近年では、電子商取引の普及や個人情報の取り扱いが重要となっており、指静脈認証装置には、さらなる認証精度の向上が望まれている。また、指静脈認証装置が搭載される機器の小型化から、指静脈認証装置のさらなる小型化も要求されている。
【0004】
指静脈認証装置としては、例えば、指に光を照射し、当該指から透過された光を受光して撮像する時の露出時間を変化させることで、大きな指や子供のような小さな指でも問題なく認証できるようにした装置が紹介されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、非接触に指静脈パターン画像を獲得する手段と、指の輪郭を用いて回転補正を行う手段と、指先を基準として指画像の位置を正規化する手段と、画像の任意の位置から任意の長さだけ輝度値の暗い部分をたどることを繰り返すことで統計的に全体の指静脈パターンを獲得する手段と、指静脈パターンに強い特徴が表れている部分だけを比較するマッチング手段と、画像を小領域に分割し、各小領域ごとに独立してマッチングを行い、マッチしたときの位置ずれ量を評価する手段と、を設けた個人認証装置も紹介されている。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−146533号公報
【特許文献2】特許第3558025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、指静脈認証装置を小型の機器に搭載するため、指静脈認証装置を小型化すると、指の撮像範囲も小さくなるため、撮像によって得られる指静脈の情報量が少なくなり、認証精度が低下したり、指静脈認証に対応できない指が増加する虞がある。
【0008】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、小型化を達成することができると共に、認証精度を向上させることができ、撮像によって得られる指静脈の情報量が少ない場合や、指静脈パターンが少ない指であっても、指静脈認証が可能な指静脈認証装置及び指静脈認証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明に係る指静脈認証装置は、指を載置させる載置部と、前記載置部に載置された指の右側及び左側に各々配置され、当該指を照射する光源と、前記載置部に載置された指の腹側に配置され、当該指の腹側から透過した光を撮像する腹側撮像部と、前記載置部に載置された指の背側に配置され、当該指の背側から透過した光を撮像する背側撮像部と、前記腹側撮像部により撮像された画像から抽出された抽出腹側指静脈パターンと、予め登録されている登録腹側指静脈パターンとを照合し、且つ、前記背側撮像部により撮像された画像から抽出された抽出背側指静脈パターンと、予め登録されている登録背側指静脈パターンとを照合する画像処理部と、前記画像処理部から得られた照合結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する判断部と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る指静脈認証方法は、指の右側及び左側の各々に光を照射する光照射工程と、前記指の腹側から透過した光を撮像し、撮像された画像から腹側指静脈パターンを抽出する腹側指静脈パターン抽出工程と、前記指の背側から透過した光を撮像し、撮像された画像から背側指静脈パターンを抽出する背側指静脈パターン抽出工程と、前記腹側指静脈パターン抽出工程で抽出された抽出腹側指静脈パターンと、予め登録されている登録腹側指静脈パターンとを照合する腹側指静脈パターン照合工程と、前記背側指静脈パターン抽出工程で抽出された抽出背側指静脈パターンと、予め登録されている登録背側指静脈パターンとを照合する背側指静脈パターン照合工程と、前記腹側指静脈パターン照合工程と背側指静脈パターン照合工程による照合結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する判断工程と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型化を達成することができると共に、認証精度を向上させることができ、撮像によって得られる指静脈の情報量が少ない場合や、指静脈パターンが少ない指であっても、正確な指静脈認証を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す指静脈認証装置の内部を模式的に示す正面図である。
【図3】図1に示す指静脈認証装置の内部を模式的に示す側面図である。
【図4】図1に示す指静脈認証装置の内部を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の一部を模式的に示す側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の個人認証を行うための機能ブロック図である。
【図7】本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の具体的動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係る指静脈認証装置において、予め登録されている指静脈パターン(指A)と、撮像により抽出された指静脈パターン(指B)を模式的に示す図である。
【図9】指に照射される光の形状が指の厚さ方向に拡がりを持つ場合を示す側面図である。
【図10】指に照射される光が指の背側に偏った位置に照射された場合を示す側面図である。
【図11】本発明の他の実施形態において、予め登録されている指静脈パターン(指B)と、予め登録されている別指(指C)の指静脈パターンを模式的に示す図である。
【図12】指Bの指静脈パターンから指Cの指静脈パターンを得るための変形シミュレーションを示すフローチャートである。
【図13】図11に示す予め登録されている指Bの指静脈パターンから指Cの指静脈パターンへの変形の途中過程と、撮像により抽出された指Cの指静脈パターンを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態に係る指静脈認証装置について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の全体構成を示す斜視図、図2は、図1に示す指静脈認証装置の内部を模式的に示す正面図、図3は、図1に示す指静脈認証装置の内部を模式的に示す側面図、図4は、図1に示す指静脈認証装置の内部を模式的に示す平面図、図5は、本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の一部を模式的に示す側面図、図6は、本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の個人認証を行うための機能ブロック図である。
【0015】
図1〜図4に示すように、本実施形態に係る指静脈認証装置1は、指100を挿入する挿入部11が形成された筐体10を備えている。この筐体10内には、挿入部11に挿入された指100を載置する載置部12と、載置部12に載置された指100の右側に配置され、指100に光を照射する光源4Rと、載置部12に載置された指100の左側に配置され、指100に光を照射する光源4Lと、光源4Rから放射された光を集光し、指100の右側の特定部位に誘導する右側光ガイド5Rと、光源4Lから放射された光を集光し、指100の左側の特定部位に誘導する左側光ガイド5Lと、を備えている。
【0016】
挿入部11の指挿入方向端には、挿入部11に挿入された指100の先端が当接する壁部13(図1参照)が形成されており、指100の先端を壁部13に当接させることで、指100の撮影の位置決めができるようになっている。また、挿入部11を画定する壁部の一部によって、載置部12が形成されている。
【0017】
光源4Rは、挿入部11に挿入された指100の長手方向(長さ方向)に沿って互いに間隔をおいた複数カ所(本実施形態では、指先側と指根元側の2カ所)に配設され、光源4Lも同様に、指100の長手方向に沿って互いに間隔をおいた複数カ所に配設されている。なお、光源4R及び4Lは、例えば、LED(Light-Emitting Diode)から構成されている。
【0018】
右側光ガイド5Rは、指100と所定の間隔をおいて配置され、光源4Rから放射された光を集光し、挿入部11に挿入された指100の右側の特定部位に誘導する。また、左側光ガイド5Lは、指100と所定の間隔をおいて配置され、光源4Lから放射された光を集光し、指100の左側の特定部位に誘導する。なお、本実施形態では、図3及び図4に示すように、指先側に配置された光源4R及び4Lから各々照射され、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lによって各々集光された光は、指100の厚さ方向略中央部且つ第一関節付近に集光し、指根元側に配置された光源4R及び4Lから各々照射され、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lによって各々集光された光は、指100の厚さ方向略中央部且つ第二関節付近に集光するように、光源4R及び光源4Lの位置、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lの位置及び形状を決定した。右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lによる集光により、指100に照射された光は、指100の長手方向に拡がるが、厚さ方向には拡がらず、図3に示すような長円形状14(図2及び図3参照)となる。
【0019】
右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lは、シリンドリカルレンズからなり、図5に示すように、光源4R及び光源4Lの発光点から出た光が、距離Dだけ離れた右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lに当たり、これらを透過する光はスネルの法則、
n1・sinθ1=n2・sinθ2
但し、n1は空気の屈折率、n2は光ガイドの屈折率
にしたがう。
【0020】
即ち、図5に示すように、入射角度θ1で照射された光は、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lの中をθ2の角度に屈折し、r面の界面でrの法線に対してθ3の角度となる。ここで再びスネルの法則によりrの法線に対してθ4の角度で右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lから指100へ放出される。
【0021】
一例として、図5では、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lの屈折率n2を一般的な透明なポリカーボネートの1.58とし、D(レンズ形状後ろ主点Pと見かけの発光点間の距離)=0.7mm、r=1.5mmとしている。この場合、θ1=20°、θ2=12.5°、θ3=22.27°、θ4=36.78°である。(但し、小数点以下3桁で四捨五入してある)。
【0022】
n2、D、rの値と、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lの光源4R及び光源4L側の形状(図5では平面で示されている)と、レンズ後ろ主点位置P(図5では半円筒形であるためrの中心)のパラメータを操作して右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lからの射出光の集光度合いを設計する。
【0023】
なお、指100に照射される光の形状が、図9に示すように指100の厚さ方向に拡がりを持つ場合、指100の腹側表面及び背側表面に光が直接当たり、指表面で反射した反射光が撮像に影響を及ぼすことになる。この反射光は、指100の内部を透過した透過光(即ち、指静脈情報を含む光)に比べ、非常に強い光であるため、透過光を撮像し難くなる、あるいは撮像したとしても撮像画像が不鮮明となる虞がある。また、図10に示すように、指100の背側や腹側に偏った位置に光が照射された場合も同様に、透過光を撮像し難くなる、あるいは撮像したとしても撮像画像が不鮮明となる虞がある。したがって、指100に照射される光は、指100の厚さ方向略中央部に集光することが好ましい。なお、指100に照射される光は、一点に集光する必要はない。
【0024】
また、筐体10内には、図1〜図3に示すように、載置部12に載置された指100の腹側に指100と所定の間隔をおいて配置され、指100の腹側から透過した光を撮像する腹側撮像部16Aと、載置部12に載置された指100の背側に指100と所定の間隔をおいて配置され、指100の背側から透過した光を撮像する背側撮像部16Bが配設されている。
【0025】
腹側撮像部16Aは、載置部12に載置された指100の第一関節と第二関節との中央部よりも第一関節側となる位置に配設されており、指100の腹側から放射された光を集光する腹側集光レンズ17と、腹側集光レンズ17から放射された光を撮像する腹側撮像センサ18とを備えている。即ち、腹側集光レンズ17は、指100の腹側から腹側集光レンズ17に入射する光の光軸中心71(図2及び図3参照)が、指100の第一関節と第二関節との中央部よりも第一関節側となるように配設されている。
【0026】
ここで、腹側の第一関節のくびれ部101(図3参照)は、一般的に、指表面と静脈2との距離が近いと共に、指根元側よりも指先側の静脈形状が複雑である。したがって、腹側撮像部16Aを前記位置に配設することで、より鮮明且つ静脈情報が多い画像を得ることができる。なお、撮像範囲が、腹側の第一関節及び腹側の第二関節を包括する広い範囲である場合は、腹側撮像部16Aを第一関節と第二関節の指100の長手方向略中央部に配設することができる。
【0027】
背側撮像部16Bは、載置部12に載置された指100の第一関節と第二関節との中央部近傍(略中央部)に配設されており、指100の背側から放射された光を集光する背側集光レンズ19と、背側集光レンズ19から放射された光を撮像する背側撮像センサ20とを備えている。即ち、背側集光レンズ19は、指100の背側から背側集光レンズ19に入射する光の光軸中心91(図2及び図3参照)が、指100の第一関節と第二関節との中央部近傍となるように配設されている。
【0028】
ここで、背側の第一関節の盛り上がり部103(図3参照)と、第二関節の盛り上がり部104(図3参照)は、一般的に、瘤状やひだ状となっており、指表面と静脈3との距離が遠いため、静脈情報が得られ難い、背側撮像部16Bを前記位置に配設することで、より鮮明且つ静脈情報が多い画像を得ることができる。
【0029】
このように、腹側撮像部16Aと背側撮像部16Bとを互いにオフセットされた位置に配置することで、個人認証精度を向上させることができる。
【0030】
また、本実施形態に係る指静脈認証装置1は、個人認証を行うための個人認証部50を備えている。個人認証部50は、図6に示すように、撮像された画像から指静脈パターンを抽出する指静脈パターン抽出部62と、指静脈パターン抽出部62で抽出された指静脈パターンと、記憶部66に予め登録(記憶)されている指静脈パターンとを照合する照合部64と、照合部64で得られた照合結果に基づいて各種演算を行う演算部68と、演算部68で得られた演算結果に基づいて個人認証を行うか否かを判断する判断部70と、を備えている。なお、指静脈パターン抽出部62、照合部64、記憶部66及び演算部68により画像処理部60が構成される。
【0031】
指静脈パターン抽出部62は、腹側撮像部16Aで撮像された画像から抽出腹側指静脈パターンを抽出し、背側撮像部16Bで撮像された画像から抽出背側指静脈パターンを抽出する。
【0032】
記憶部66には、個人認証すべきユーザの腹側指静脈パターン及び背側指静脈パターンが、登録腹側指静脈パターン及び登録背側指静脈パターンとして登録(記憶)されている。
【0033】
照合部64は、指静脈パターン抽出部62で抽出された抽出腹側指静脈パターンと記憶部66に予め登録されている登録腹側指静脈パターンとを照合し、且つ、指静脈パターン抽出部62で抽出された抽出背側指静脈パターンと記憶部66に予め登録されている登録背側指静脈パターンとを照合する。
【0034】
演算部68は、抽出腹側指静脈パターンの面積、抽出背側指静脈パターンの面積、抽出腹側指静脈パターンと抽出背側指静脈パターンの面積比、抽出腹側指静脈パターンと登録腹側指静脈パターンとの差異の数値化、抽出背側指静脈パターンと登録背側指静脈パターンとの差異の数値化、前記腹側の数値化された値に腹側の面積比を乗じた値と前記背側の数値化された値に背側の面積比を乗じた値とを加算した総合差異値を演算により求める。
【0035】
判断部70は、総合差異値と、予め設定されている所定の閾値とを比較し、当該比較結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する。
【0036】
次に、指静脈認証装置1の具体的動作について図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0037】
先ず、ステップS101では、指静脈認証装置1の挿入部11に指100が挿入され、載置部12に載置されたか否かを判断する。載置部12に指100が載置された(ステップS101:YES)場合は、ステップS102に進む。一方、載置部12に指100が載置されていない(ステップS101:NO)場合は、この状態のまま待機する。
【0038】
次に、ステップS102では、光源4R及び4Lから光を照射し、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lによって、光を指100の厚さ方向略中央部且つ第一関節付近と、指100の厚さ方向略中央部且つ第二関節付近に集光させる。このように指100に集光した光は、指100の内部を透過及び/または散乱し、指100から外部に放射される。次いで、この放射された光を、腹側集光レンズ17で集光し、腹側集光レンズ17から放射された光を腹側撮像センサ18により撮像し、且つ、背側集光レンズ19で集光し、背側集光レンズ19から放射された光を背側撮像センサ20により撮像する。このように、指100の腹側と背側の両方から放射された2つの異なる画像を撮像し、ステップS103に進む。
【0039】
ステップS103では、ステップS102で腹側撮像センサ18により撮像された画像から、指静脈パターン抽出部62が腹側指静脈パターン(抽出腹側指静脈パターン)を抽出し、且つ背側撮像センサ20により撮像された画像から背側指静脈パターン(抽出背側指静脈パターン)を抽出する。その後、ステップS104に進む。
【0040】
ステップS104では、ステップS103において抽出された抽出腹側指静脈パターンから、演算部68が抽出腹側指静脈パターンの面積を算出し、ステップS105に進む。
【0041】
ステップS105では、ステップS103において抽出された抽出背側指静脈パターンから、演算部68が抽出背側指静脈パターンの面積を算出し、ステップS106に進む。
【0042】
ステップS106では、演算部68が、ステップS104及びステップS105において各々算出された抽出腹側指静脈パターンの面積と抽出背側指静脈パターンの面積との面積比を算出する。この面積比が、抽出腹側指静脈パターンと背側指静脈パターンに重み付けを行うための係数(重み付け係数)となる。なお、本実施形態では、腹側指静脈パターンの重み付け係数をAXとし、背側指静脈パターンの重み付け係数をBXとする。その後、ステップS107に進む。
【0043】
ステップS107では、照合部64が、ステップS103において抽出された抽出腹側指静脈パターンと、予め記憶部66に登録されている登録腹側指静脈パターンとの照合を行い、且つ、ステップS103において抽出された抽出背側指静脈パターンと、予め記憶部66に登録されている登録背側指静脈パターンとの照合を行う。その後、ステップS108に進む。
【0044】
ステップS108では、ステップS107において得られた照合結果から、演算部68が、抽出腹側指静脈パターンと登録腹側指静脈パターンとの差異を数値化し、且つ抽出背側指静脈パターンと登録背側指静脈パターンとの差異を数値化する。なお、本実施形態では、腹側指静脈パターンの差異を数値化した値(ミスマッチ数)をA、背側指静脈パターンの差異を数値化した値(ミスマッチ数)をBとする。その後、ステップS109に進む。
【0045】
ステップS109では、ステップS106において得られた重み付け係数をAX及びBXと、ステップS108において得られたミスマッチ数A及びミスマッチ数Bから腹側指静脈パターンの差異と、背側指静脈パターンの差異とを総合した総合ミスマッチ数Y(総合差異値)を、以下の式(1)から算出し、ステップS110に進む。
Y=A・AX+B・BX 式(1)
【0046】
ここで、総合ミスマッチ数Yを算出する具体例について、図8を参照して説明する。図8において、符号2B1は、予め記憶部66に登録されている登録腹側指静脈パターン(指A)を示しており、符号3B1は、登録背側指静脈パターン(指A)を示している。また、符号2d1は、指静脈パターン抽出部62で抽出された抽出腹側指静脈パターン(指B)を示しており、符号3d1は、抽出背側指静脈パターン(指B)を示している。説明では、同一指であるか別指であるかをわかり易くするため、対応する指について、指A、指B、指Cなどと付記する。
【0047】
具体例として、ステップS106で算出された抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)と抽出背側指静脈パターン3d1(指B)との面積比が3:7であるとする。抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)と抽出背側指静脈パターン3d1(指B)との合計面積を1とすると、抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)と抽出背側指静脈パターン3d1(指B)との面積比は、0.3:0.7となり、この値を重み付け係数とする。即ち、AX=0.3、BX=-0.7となる。一方、腹側指静脈パターンのミスマッチ数Aを15000、背側指静脈パターンのミスマッチ数Bを30000とすると、上記式(1)から、
総合ミスマッチ数Y=15000×0.3+30000×0.7=25500
となる。
【0048】
なお、図8に示すように、登録腹側指静脈パターン2B1(指A)と抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)、及び登録背側指静脈パターン3B1(指A)と抽出背側指静脈パターン3d1(指B)は、非常に似通っているが、抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)及び抽出背側指静脈パターン3d1(指B)は、登録腹側指静脈パターン2B1(指A)及び登録背側指静脈パターン3B1(指A)とは別人の指のものである。
【0049】
次に、ステップS110では、判断部70が、ステップS109で算出した総合ミスマッチ数Yが、予め記憶部66に記憶されている所定の閾値(本実施形態では、20000)より大きいか否かを判断する。総合ミスマッチ数Yが閾値より大きい場合(ステップS110:YES)は、ステップ111に進み、載置部12に載置された指100が認証されるべき人物のものではないとして個人認証を行わない。一方、総合ミスマッチ数Yが閾値以下の場合(ステップS110:NO)は、ステップ112に進み、載置部12に載置された指100が認証されるべき人物のものであるとして、個人認証を行う。本例の場合、総合ミスマッチ数Yが25500であり、閾値が20000(即ち、ステップS110:YES)であることから、ステップ111に進み、個人認証がなされない。
【0050】
なお、従来の指静脈認証装置のように、登録腹側指静脈パターン2B1(指A)と抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)のみを比較した結果に基づいて個人認証するか否かを決定する場合は、載置部12に載置された指が別指であっても、登録腹側指静脈パターン2B1(指A)と抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)が酷似していると、ミスマッチ数が低い値となり、予め設定されている閾値を下り、誤判定する可能性が高くなる虞がある。
【0051】
本実施形態に係る指静脈認証装置1では、抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)及び抽出背側指静脈パターン3d1(指B)の両方について照合を行い、さらに指静脈パターンの面積に応じて重み付けを行うため、抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)または抽出背側指静脈パターン3d1(指B)のいずれか一方の指静脈パターンが予め登録されている指静脈パターンと酷似していても誤判定が生じる可能性を低くすることができ、高精度な個人認証を行うことができる。また、抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)及び抽出背側指静脈パターン3d1(指B)の両方の画像を撮像することができるため、撮像範囲が実際には狭くても、指の広範囲にわたって撮像が可能となる。したがって、指静脈のパターンの情報量を増加させることができるため、小型化することが可能となる。
【0052】
次に、本発明の有効性を示す別の具体例として、仮想的なある登録指(指C)において、腹側指静脈パターンの面積が少なく、個人認証時にさらにそのパターンが少なくなった場合の動作を図11、図12及び図13を参照して説明する。貧血気味などの理由により指静脈パターンの面積が少ない指については、被験者の体調などの条件により、指静脈パターンの面積が減少することが経験的な事実として判明している。図11は指Bと指Cについて、登録指静脈パターンの関係を示す図、図12は指Bの指静脈パターンから指Cの指静脈パターンを得るための変形シミュレーションを示すフローチャート、図13は指Bの登録指静脈パターンから指Cの登録指静脈パターンへの変形の途中過程と、撮像により抽出されるであろう指Cの指静脈パターンを模式的に示す説明図である。
【0053】
指Bについて指腹側と背側の指静脈パターンの面積比は3:7である。指Cについては、腹側の面積が少ない条件であるので、面積比は2:7とし、この面積比となる変形シミュレーションについて考える。図12により変形シミュレーションの手順について詳細に説明する。
【0054】
ステップS201(変形1)では、登録腹側指静脈パターン2B3(指B)を、指先側と指元側の中心線V(図13参照)を基準として反転し、反転登録腹側指静脈パターン2B4を得る。なお、この反転登録腹側指静脈パターン2B4の面積は、登録腹側指静脈パターン2B3(指B)の面積と同じである。その後、ステップS202に進む。
【0055】
ステップS202(変形2)では、反転登録腹側指静脈パターン2B4の面積が2/3となるように、反転登録腹側指静脈パターン2B4の指先側と指元側を消去し、消去済み登録腹側指静脈パターン2B5(図13参照)を得る。なお、この方法は、指静脈パターンが見えにくい場合、撮像範囲が狭い場合、指静脈パターンが少ない場合等をシミュレートしている。その後、ステップS203に進む。
【0056】
ステップS203では、消去済み登録腹側指静脈パターン2B5を新たな登録腹側指静脈パターン2B6(指C)とし、記憶して、ステップS204に進む。
【0057】
ステップS204(変形3)では、登録背側指静脈パターン3B3(指B)を、指100の右側と左側の中心線H(図13参照)を基準として反転し、反転登録背側指静脈パターン3B4を得る。なお、この反転登録背側指静脈パターン3B4の面積は、登録背側指静脈パターン3B3(指B)の面積と同じである。その後、ステップS205に進む。
【0058】
ステップS205では、反転登録背側指静脈パターン3B4を新たな登録背側指静脈パターン3B6(指C)とし、記憶して、ステップS206に進む。
【0059】
ステップS206では、ステップS203で新たに登録された登録腹側指静脈パターン2B6(指C)と、ステップS205で新たに登録された登録された登録背側指静脈パターン3B6(指C)を指Cの登録静脈パターンとして出力する。以上の手順により、図11に示す仮想的な指Cの登録静脈パターンが得られる。
【0060】
この具体例の場合の重み付け係数AX及びBXを求める。個人認証時の撮像では、抽出腹側指静脈パターン2d3(指C)の面積が、登録腹側指静脈パターン2B6(指C)の面積の1/2であるが、抽出背側指静脈パターン3d3(指C)の面積は、登録背側指静脈パターン3B6(指C)の面積と同じであるため、抽出腹側指静脈パターン2d3(指C)と抽出背側指静脈パターン3d3(指C)との面積比は、1:7となる。抽出腹側指静脈パターン2d3(指C)と抽出背側指静脈パターン3d3(指C)との合計面積を1とすると、抽出腹側指静脈パターン2d3(指C)と抽出背側指静脈パターン3d3(指C)との面積比は、 0.1:0.7となり、この値を重み付け係数とする。即ち、AX=0.125、BX=-0.875となる。
【0061】
ここで、上記と同様の方法で、抽出腹側指静脈パターン2d3(指C)と登録腹側指静脈パターン2B6(指C)とのミスマッチ数Aと、抽出背側指静脈パターン3d3(指C)と登録背側指静脈パターン3B6(指C)とのミスマッチ数Bを算出する。例えば、ミスマッチ数Aが30000であり、ミスマッチ数Bが5000であり、閾値が20000であるとすると、上記式(1)から、
総合ミスマッチ数Y=30000×0.125+5000×0.875=8125
となり、閾値以下であるため、個人認証(同一指と判定)がなされる。
【0062】
なお、従来の指静脈認証装置のように、腹側の指静脈パターンを利用して個人認証を行う装置では、この具体例を計算すれば、腹側の指静脈パターンのミスマッチ数Aが30000の場合、閾値20000を超えているため、同一指であっても、別指であると判断され、個人認証がなされず、誤判定されることになる。
【0063】
本実施形態に係る指静脈認証装置1では、腹側または背側の指静脈情報が少なくても、指静脈情報の量に応じて重み付けすることで、誤判定が生じる可能性を低くすることができ、高精度な個人認証を行うことができる。また、載置部12に対し、間違った方向から指100を載置しても、登録されている指静脈パターンを上記方法で変更することで、誤判定が生じる可能性を低くすることができ、高精度な個人認証を行うことができる。
【0064】
なお、本実施形態では、光源4R及び右側光ガイド5R、光源4L及び左側光ガイド5Lを2カ所ずつ配設した場合について説明したが、これに限らず、光源4R及び右側光ガイド5Rと、光源4L及び左側光ガイド5Lは、左右一対以上あれば、配設数は任意に決定することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…指静脈認証装置、4R、4L…光源、5R…右側光ガイド、5L…左側光ガイド、10…筐体、12…載置部、16A…腹側撮像部、16B…背側撮像部、17…腹側集光レンズ、18…腹側撮像センサ、19…背側集光レンズ、20…背側撮像センサ、50…個人認証部、60…画像処理部、62…指静脈パターン抽出部、64…照合部、66…記憶部、68…演算部、70…判断部、100…指
【技術分野】
【0001】
本発明は、指静脈パターンを使用して個人認証を行う指静脈認証装置及び指静脈認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な方法で個人認証を行う装置が使用されている。そのなかでも、指静脈パターンを使用して個人認証を行う指静脈認証装置は、優れた認証精度を有していることに加え、身体内部の指静脈パターンを使用するため、偽造が困難であり、なりすましに対する高度なセキュリティーを実現することができる。
【0003】
近年では、電子商取引の普及や個人情報の取り扱いが重要となっており、指静脈認証装置には、さらなる認証精度の向上が望まれている。また、指静脈認証装置が搭載される機器の小型化から、指静脈認証装置のさらなる小型化も要求されている。
【0004】
指静脈認証装置としては、例えば、指に光を照射し、当該指から透過された光を受光して撮像する時の露出時間を変化させることで、大きな指や子供のような小さな指でも問題なく認証できるようにした装置が紹介されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、非接触に指静脈パターン画像を獲得する手段と、指の輪郭を用いて回転補正を行う手段と、指先を基準として指画像の位置を正規化する手段と、画像の任意の位置から任意の長さだけ輝度値の暗い部分をたどることを繰り返すことで統計的に全体の指静脈パターンを獲得する手段と、指静脈パターンに強い特徴が表れている部分だけを比較するマッチング手段と、画像を小領域に分割し、各小領域ごとに独立してマッチングを行い、マッチしたときの位置ずれ量を評価する手段と、を設けた個人認証装置も紹介されている。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−146533号公報
【特許文献2】特許第3558025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、指静脈認証装置を小型の機器に搭載するため、指静脈認証装置を小型化すると、指の撮像範囲も小さくなるため、撮像によって得られる指静脈の情報量が少なくなり、認証精度が低下したり、指静脈認証に対応できない指が増加する虞がある。
【0008】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、小型化を達成することができると共に、認証精度を向上させることができ、撮像によって得られる指静脈の情報量が少ない場合や、指静脈パターンが少ない指であっても、指静脈認証が可能な指静脈認証装置及び指静脈認証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明に係る指静脈認証装置は、指を載置させる載置部と、前記載置部に載置された指の右側及び左側に各々配置され、当該指を照射する光源と、前記載置部に載置された指の腹側に配置され、当該指の腹側から透過した光を撮像する腹側撮像部と、前記載置部に載置された指の背側に配置され、当該指の背側から透過した光を撮像する背側撮像部と、前記腹側撮像部により撮像された画像から抽出された抽出腹側指静脈パターンと、予め登録されている登録腹側指静脈パターンとを照合し、且つ、前記背側撮像部により撮像された画像から抽出された抽出背側指静脈パターンと、予め登録されている登録背側指静脈パターンとを照合する画像処理部と、前記画像処理部から得られた照合結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する判断部と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る指静脈認証方法は、指の右側及び左側の各々に光を照射する光照射工程と、前記指の腹側から透過した光を撮像し、撮像された画像から腹側指静脈パターンを抽出する腹側指静脈パターン抽出工程と、前記指の背側から透過した光を撮像し、撮像された画像から背側指静脈パターンを抽出する背側指静脈パターン抽出工程と、前記腹側指静脈パターン抽出工程で抽出された抽出腹側指静脈パターンと、予め登録されている登録腹側指静脈パターンとを照合する腹側指静脈パターン照合工程と、前記背側指静脈パターン抽出工程で抽出された抽出背側指静脈パターンと、予め登録されている登録背側指静脈パターンとを照合する背側指静脈パターン照合工程と、前記腹側指静脈パターン照合工程と背側指静脈パターン照合工程による照合結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する判断工程と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型化を達成することができると共に、認証精度を向上させることができ、撮像によって得られる指静脈の情報量が少ない場合や、指静脈パターンが少ない指であっても、正確な指静脈認証を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す指静脈認証装置の内部を模式的に示す正面図である。
【図3】図1に示す指静脈認証装置の内部を模式的に示す側面図である。
【図4】図1に示す指静脈認証装置の内部を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の一部を模式的に示す側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の個人認証を行うための機能ブロック図である。
【図7】本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の具体的動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係る指静脈認証装置において、予め登録されている指静脈パターン(指A)と、撮像により抽出された指静脈パターン(指B)を模式的に示す図である。
【図9】指に照射される光の形状が指の厚さ方向に拡がりを持つ場合を示す側面図である。
【図10】指に照射される光が指の背側に偏った位置に照射された場合を示す側面図である。
【図11】本発明の他の実施形態において、予め登録されている指静脈パターン(指B)と、予め登録されている別指(指C)の指静脈パターンを模式的に示す図である。
【図12】指Bの指静脈パターンから指Cの指静脈パターンを得るための変形シミュレーションを示すフローチャートである。
【図13】図11に示す予め登録されている指Bの指静脈パターンから指Cの指静脈パターンへの変形の途中過程と、撮像により抽出された指Cの指静脈パターンを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態に係る指静脈認証装置について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の全体構成を示す斜視図、図2は、図1に示す指静脈認証装置の内部を模式的に示す正面図、図3は、図1に示す指静脈認証装置の内部を模式的に示す側面図、図4は、図1に示す指静脈認証装置の内部を模式的に示す平面図、図5は、本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の一部を模式的に示す側面図、図6は、本発明の実施形態に係る指静脈認証装置の個人認証を行うための機能ブロック図である。
【0015】
図1〜図4に示すように、本実施形態に係る指静脈認証装置1は、指100を挿入する挿入部11が形成された筐体10を備えている。この筐体10内には、挿入部11に挿入された指100を載置する載置部12と、載置部12に載置された指100の右側に配置され、指100に光を照射する光源4Rと、載置部12に載置された指100の左側に配置され、指100に光を照射する光源4Lと、光源4Rから放射された光を集光し、指100の右側の特定部位に誘導する右側光ガイド5Rと、光源4Lから放射された光を集光し、指100の左側の特定部位に誘導する左側光ガイド5Lと、を備えている。
【0016】
挿入部11の指挿入方向端には、挿入部11に挿入された指100の先端が当接する壁部13(図1参照)が形成されており、指100の先端を壁部13に当接させることで、指100の撮影の位置決めができるようになっている。また、挿入部11を画定する壁部の一部によって、載置部12が形成されている。
【0017】
光源4Rは、挿入部11に挿入された指100の長手方向(長さ方向)に沿って互いに間隔をおいた複数カ所(本実施形態では、指先側と指根元側の2カ所)に配設され、光源4Lも同様に、指100の長手方向に沿って互いに間隔をおいた複数カ所に配設されている。なお、光源4R及び4Lは、例えば、LED(Light-Emitting Diode)から構成されている。
【0018】
右側光ガイド5Rは、指100と所定の間隔をおいて配置され、光源4Rから放射された光を集光し、挿入部11に挿入された指100の右側の特定部位に誘導する。また、左側光ガイド5Lは、指100と所定の間隔をおいて配置され、光源4Lから放射された光を集光し、指100の左側の特定部位に誘導する。なお、本実施形態では、図3及び図4に示すように、指先側に配置された光源4R及び4Lから各々照射され、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lによって各々集光された光は、指100の厚さ方向略中央部且つ第一関節付近に集光し、指根元側に配置された光源4R及び4Lから各々照射され、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lによって各々集光された光は、指100の厚さ方向略中央部且つ第二関節付近に集光するように、光源4R及び光源4Lの位置、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lの位置及び形状を決定した。右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lによる集光により、指100に照射された光は、指100の長手方向に拡がるが、厚さ方向には拡がらず、図3に示すような長円形状14(図2及び図3参照)となる。
【0019】
右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lは、シリンドリカルレンズからなり、図5に示すように、光源4R及び光源4Lの発光点から出た光が、距離Dだけ離れた右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lに当たり、これらを透過する光はスネルの法則、
n1・sinθ1=n2・sinθ2
但し、n1は空気の屈折率、n2は光ガイドの屈折率
にしたがう。
【0020】
即ち、図5に示すように、入射角度θ1で照射された光は、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lの中をθ2の角度に屈折し、r面の界面でrの法線に対してθ3の角度となる。ここで再びスネルの法則によりrの法線に対してθ4の角度で右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lから指100へ放出される。
【0021】
一例として、図5では、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lの屈折率n2を一般的な透明なポリカーボネートの1.58とし、D(レンズ形状後ろ主点Pと見かけの発光点間の距離)=0.7mm、r=1.5mmとしている。この場合、θ1=20°、θ2=12.5°、θ3=22.27°、θ4=36.78°である。(但し、小数点以下3桁で四捨五入してある)。
【0022】
n2、D、rの値と、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lの光源4R及び光源4L側の形状(図5では平面で示されている)と、レンズ後ろ主点位置P(図5では半円筒形であるためrの中心)のパラメータを操作して右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lからの射出光の集光度合いを設計する。
【0023】
なお、指100に照射される光の形状が、図9に示すように指100の厚さ方向に拡がりを持つ場合、指100の腹側表面及び背側表面に光が直接当たり、指表面で反射した反射光が撮像に影響を及ぼすことになる。この反射光は、指100の内部を透過した透過光(即ち、指静脈情報を含む光)に比べ、非常に強い光であるため、透過光を撮像し難くなる、あるいは撮像したとしても撮像画像が不鮮明となる虞がある。また、図10に示すように、指100の背側や腹側に偏った位置に光が照射された場合も同様に、透過光を撮像し難くなる、あるいは撮像したとしても撮像画像が不鮮明となる虞がある。したがって、指100に照射される光は、指100の厚さ方向略中央部に集光することが好ましい。なお、指100に照射される光は、一点に集光する必要はない。
【0024】
また、筐体10内には、図1〜図3に示すように、載置部12に載置された指100の腹側に指100と所定の間隔をおいて配置され、指100の腹側から透過した光を撮像する腹側撮像部16Aと、載置部12に載置された指100の背側に指100と所定の間隔をおいて配置され、指100の背側から透過した光を撮像する背側撮像部16Bが配設されている。
【0025】
腹側撮像部16Aは、載置部12に載置された指100の第一関節と第二関節との中央部よりも第一関節側となる位置に配設されており、指100の腹側から放射された光を集光する腹側集光レンズ17と、腹側集光レンズ17から放射された光を撮像する腹側撮像センサ18とを備えている。即ち、腹側集光レンズ17は、指100の腹側から腹側集光レンズ17に入射する光の光軸中心71(図2及び図3参照)が、指100の第一関節と第二関節との中央部よりも第一関節側となるように配設されている。
【0026】
ここで、腹側の第一関節のくびれ部101(図3参照)は、一般的に、指表面と静脈2との距離が近いと共に、指根元側よりも指先側の静脈形状が複雑である。したがって、腹側撮像部16Aを前記位置に配設することで、より鮮明且つ静脈情報が多い画像を得ることができる。なお、撮像範囲が、腹側の第一関節及び腹側の第二関節を包括する広い範囲である場合は、腹側撮像部16Aを第一関節と第二関節の指100の長手方向略中央部に配設することができる。
【0027】
背側撮像部16Bは、載置部12に載置された指100の第一関節と第二関節との中央部近傍(略中央部)に配設されており、指100の背側から放射された光を集光する背側集光レンズ19と、背側集光レンズ19から放射された光を撮像する背側撮像センサ20とを備えている。即ち、背側集光レンズ19は、指100の背側から背側集光レンズ19に入射する光の光軸中心91(図2及び図3参照)が、指100の第一関節と第二関節との中央部近傍となるように配設されている。
【0028】
ここで、背側の第一関節の盛り上がり部103(図3参照)と、第二関節の盛り上がり部104(図3参照)は、一般的に、瘤状やひだ状となっており、指表面と静脈3との距離が遠いため、静脈情報が得られ難い、背側撮像部16Bを前記位置に配設することで、より鮮明且つ静脈情報が多い画像を得ることができる。
【0029】
このように、腹側撮像部16Aと背側撮像部16Bとを互いにオフセットされた位置に配置することで、個人認証精度を向上させることができる。
【0030】
また、本実施形態に係る指静脈認証装置1は、個人認証を行うための個人認証部50を備えている。個人認証部50は、図6に示すように、撮像された画像から指静脈パターンを抽出する指静脈パターン抽出部62と、指静脈パターン抽出部62で抽出された指静脈パターンと、記憶部66に予め登録(記憶)されている指静脈パターンとを照合する照合部64と、照合部64で得られた照合結果に基づいて各種演算を行う演算部68と、演算部68で得られた演算結果に基づいて個人認証を行うか否かを判断する判断部70と、を備えている。なお、指静脈パターン抽出部62、照合部64、記憶部66及び演算部68により画像処理部60が構成される。
【0031】
指静脈パターン抽出部62は、腹側撮像部16Aで撮像された画像から抽出腹側指静脈パターンを抽出し、背側撮像部16Bで撮像された画像から抽出背側指静脈パターンを抽出する。
【0032】
記憶部66には、個人認証すべきユーザの腹側指静脈パターン及び背側指静脈パターンが、登録腹側指静脈パターン及び登録背側指静脈パターンとして登録(記憶)されている。
【0033】
照合部64は、指静脈パターン抽出部62で抽出された抽出腹側指静脈パターンと記憶部66に予め登録されている登録腹側指静脈パターンとを照合し、且つ、指静脈パターン抽出部62で抽出された抽出背側指静脈パターンと記憶部66に予め登録されている登録背側指静脈パターンとを照合する。
【0034】
演算部68は、抽出腹側指静脈パターンの面積、抽出背側指静脈パターンの面積、抽出腹側指静脈パターンと抽出背側指静脈パターンの面積比、抽出腹側指静脈パターンと登録腹側指静脈パターンとの差異の数値化、抽出背側指静脈パターンと登録背側指静脈パターンとの差異の数値化、前記腹側の数値化された値に腹側の面積比を乗じた値と前記背側の数値化された値に背側の面積比を乗じた値とを加算した総合差異値を演算により求める。
【0035】
判断部70は、総合差異値と、予め設定されている所定の閾値とを比較し、当該比較結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する。
【0036】
次に、指静脈認証装置1の具体的動作について図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0037】
先ず、ステップS101では、指静脈認証装置1の挿入部11に指100が挿入され、載置部12に載置されたか否かを判断する。載置部12に指100が載置された(ステップS101:YES)場合は、ステップS102に進む。一方、載置部12に指100が載置されていない(ステップS101:NO)場合は、この状態のまま待機する。
【0038】
次に、ステップS102では、光源4R及び4Lから光を照射し、右側光ガイド5R及び左側光ガイド5Lによって、光を指100の厚さ方向略中央部且つ第一関節付近と、指100の厚さ方向略中央部且つ第二関節付近に集光させる。このように指100に集光した光は、指100の内部を透過及び/または散乱し、指100から外部に放射される。次いで、この放射された光を、腹側集光レンズ17で集光し、腹側集光レンズ17から放射された光を腹側撮像センサ18により撮像し、且つ、背側集光レンズ19で集光し、背側集光レンズ19から放射された光を背側撮像センサ20により撮像する。このように、指100の腹側と背側の両方から放射された2つの異なる画像を撮像し、ステップS103に進む。
【0039】
ステップS103では、ステップS102で腹側撮像センサ18により撮像された画像から、指静脈パターン抽出部62が腹側指静脈パターン(抽出腹側指静脈パターン)を抽出し、且つ背側撮像センサ20により撮像された画像から背側指静脈パターン(抽出背側指静脈パターン)を抽出する。その後、ステップS104に進む。
【0040】
ステップS104では、ステップS103において抽出された抽出腹側指静脈パターンから、演算部68が抽出腹側指静脈パターンの面積を算出し、ステップS105に進む。
【0041】
ステップS105では、ステップS103において抽出された抽出背側指静脈パターンから、演算部68が抽出背側指静脈パターンの面積を算出し、ステップS106に進む。
【0042】
ステップS106では、演算部68が、ステップS104及びステップS105において各々算出された抽出腹側指静脈パターンの面積と抽出背側指静脈パターンの面積との面積比を算出する。この面積比が、抽出腹側指静脈パターンと背側指静脈パターンに重み付けを行うための係数(重み付け係数)となる。なお、本実施形態では、腹側指静脈パターンの重み付け係数をAXとし、背側指静脈パターンの重み付け係数をBXとする。その後、ステップS107に進む。
【0043】
ステップS107では、照合部64が、ステップS103において抽出された抽出腹側指静脈パターンと、予め記憶部66に登録されている登録腹側指静脈パターンとの照合を行い、且つ、ステップS103において抽出された抽出背側指静脈パターンと、予め記憶部66に登録されている登録背側指静脈パターンとの照合を行う。その後、ステップS108に進む。
【0044】
ステップS108では、ステップS107において得られた照合結果から、演算部68が、抽出腹側指静脈パターンと登録腹側指静脈パターンとの差異を数値化し、且つ抽出背側指静脈パターンと登録背側指静脈パターンとの差異を数値化する。なお、本実施形態では、腹側指静脈パターンの差異を数値化した値(ミスマッチ数)をA、背側指静脈パターンの差異を数値化した値(ミスマッチ数)をBとする。その後、ステップS109に進む。
【0045】
ステップS109では、ステップS106において得られた重み付け係数をAX及びBXと、ステップS108において得られたミスマッチ数A及びミスマッチ数Bから腹側指静脈パターンの差異と、背側指静脈パターンの差異とを総合した総合ミスマッチ数Y(総合差異値)を、以下の式(1)から算出し、ステップS110に進む。
Y=A・AX+B・BX 式(1)
【0046】
ここで、総合ミスマッチ数Yを算出する具体例について、図8を参照して説明する。図8において、符号2B1は、予め記憶部66に登録されている登録腹側指静脈パターン(指A)を示しており、符号3B1は、登録背側指静脈パターン(指A)を示している。また、符号2d1は、指静脈パターン抽出部62で抽出された抽出腹側指静脈パターン(指B)を示しており、符号3d1は、抽出背側指静脈パターン(指B)を示している。説明では、同一指であるか別指であるかをわかり易くするため、対応する指について、指A、指B、指Cなどと付記する。
【0047】
具体例として、ステップS106で算出された抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)と抽出背側指静脈パターン3d1(指B)との面積比が3:7であるとする。抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)と抽出背側指静脈パターン3d1(指B)との合計面積を1とすると、抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)と抽出背側指静脈パターン3d1(指B)との面積比は、0.3:0.7となり、この値を重み付け係数とする。即ち、AX=0.3、BX=-0.7となる。一方、腹側指静脈パターンのミスマッチ数Aを15000、背側指静脈パターンのミスマッチ数Bを30000とすると、上記式(1)から、
総合ミスマッチ数Y=15000×0.3+30000×0.7=25500
となる。
【0048】
なお、図8に示すように、登録腹側指静脈パターン2B1(指A)と抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)、及び登録背側指静脈パターン3B1(指A)と抽出背側指静脈パターン3d1(指B)は、非常に似通っているが、抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)及び抽出背側指静脈パターン3d1(指B)は、登録腹側指静脈パターン2B1(指A)及び登録背側指静脈パターン3B1(指A)とは別人の指のものである。
【0049】
次に、ステップS110では、判断部70が、ステップS109で算出した総合ミスマッチ数Yが、予め記憶部66に記憶されている所定の閾値(本実施形態では、20000)より大きいか否かを判断する。総合ミスマッチ数Yが閾値より大きい場合(ステップS110:YES)は、ステップ111に進み、載置部12に載置された指100が認証されるべき人物のものではないとして個人認証を行わない。一方、総合ミスマッチ数Yが閾値以下の場合(ステップS110:NO)は、ステップ112に進み、載置部12に載置された指100が認証されるべき人物のものであるとして、個人認証を行う。本例の場合、総合ミスマッチ数Yが25500であり、閾値が20000(即ち、ステップS110:YES)であることから、ステップ111に進み、個人認証がなされない。
【0050】
なお、従来の指静脈認証装置のように、登録腹側指静脈パターン2B1(指A)と抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)のみを比較した結果に基づいて個人認証するか否かを決定する場合は、載置部12に載置された指が別指であっても、登録腹側指静脈パターン2B1(指A)と抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)が酷似していると、ミスマッチ数が低い値となり、予め設定されている閾値を下り、誤判定する可能性が高くなる虞がある。
【0051】
本実施形態に係る指静脈認証装置1では、抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)及び抽出背側指静脈パターン3d1(指B)の両方について照合を行い、さらに指静脈パターンの面積に応じて重み付けを行うため、抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)または抽出背側指静脈パターン3d1(指B)のいずれか一方の指静脈パターンが予め登録されている指静脈パターンと酷似していても誤判定が生じる可能性を低くすることができ、高精度な個人認証を行うことができる。また、抽出腹側指静脈パターン2d1(指B)及び抽出背側指静脈パターン3d1(指B)の両方の画像を撮像することができるため、撮像範囲が実際には狭くても、指の広範囲にわたって撮像が可能となる。したがって、指静脈のパターンの情報量を増加させることができるため、小型化することが可能となる。
【0052】
次に、本発明の有効性を示す別の具体例として、仮想的なある登録指(指C)において、腹側指静脈パターンの面積が少なく、個人認証時にさらにそのパターンが少なくなった場合の動作を図11、図12及び図13を参照して説明する。貧血気味などの理由により指静脈パターンの面積が少ない指については、被験者の体調などの条件により、指静脈パターンの面積が減少することが経験的な事実として判明している。図11は指Bと指Cについて、登録指静脈パターンの関係を示す図、図12は指Bの指静脈パターンから指Cの指静脈パターンを得るための変形シミュレーションを示すフローチャート、図13は指Bの登録指静脈パターンから指Cの登録指静脈パターンへの変形の途中過程と、撮像により抽出されるであろう指Cの指静脈パターンを模式的に示す説明図である。
【0053】
指Bについて指腹側と背側の指静脈パターンの面積比は3:7である。指Cについては、腹側の面積が少ない条件であるので、面積比は2:7とし、この面積比となる変形シミュレーションについて考える。図12により変形シミュレーションの手順について詳細に説明する。
【0054】
ステップS201(変形1)では、登録腹側指静脈パターン2B3(指B)を、指先側と指元側の中心線V(図13参照)を基準として反転し、反転登録腹側指静脈パターン2B4を得る。なお、この反転登録腹側指静脈パターン2B4の面積は、登録腹側指静脈パターン2B3(指B)の面積と同じである。その後、ステップS202に進む。
【0055】
ステップS202(変形2)では、反転登録腹側指静脈パターン2B4の面積が2/3となるように、反転登録腹側指静脈パターン2B4の指先側と指元側を消去し、消去済み登録腹側指静脈パターン2B5(図13参照)を得る。なお、この方法は、指静脈パターンが見えにくい場合、撮像範囲が狭い場合、指静脈パターンが少ない場合等をシミュレートしている。その後、ステップS203に進む。
【0056】
ステップS203では、消去済み登録腹側指静脈パターン2B5を新たな登録腹側指静脈パターン2B6(指C)とし、記憶して、ステップS204に進む。
【0057】
ステップS204(変形3)では、登録背側指静脈パターン3B3(指B)を、指100の右側と左側の中心線H(図13参照)を基準として反転し、反転登録背側指静脈パターン3B4を得る。なお、この反転登録背側指静脈パターン3B4の面積は、登録背側指静脈パターン3B3(指B)の面積と同じである。その後、ステップS205に進む。
【0058】
ステップS205では、反転登録背側指静脈パターン3B4を新たな登録背側指静脈パターン3B6(指C)とし、記憶して、ステップS206に進む。
【0059】
ステップS206では、ステップS203で新たに登録された登録腹側指静脈パターン2B6(指C)と、ステップS205で新たに登録された登録された登録背側指静脈パターン3B6(指C)を指Cの登録静脈パターンとして出力する。以上の手順により、図11に示す仮想的な指Cの登録静脈パターンが得られる。
【0060】
この具体例の場合の重み付け係数AX及びBXを求める。個人認証時の撮像では、抽出腹側指静脈パターン2d3(指C)の面積が、登録腹側指静脈パターン2B6(指C)の面積の1/2であるが、抽出背側指静脈パターン3d3(指C)の面積は、登録背側指静脈パターン3B6(指C)の面積と同じであるため、抽出腹側指静脈パターン2d3(指C)と抽出背側指静脈パターン3d3(指C)との面積比は、1:7となる。抽出腹側指静脈パターン2d3(指C)と抽出背側指静脈パターン3d3(指C)との合計面積を1とすると、抽出腹側指静脈パターン2d3(指C)と抽出背側指静脈パターン3d3(指C)との面積比は、 0.1:0.7となり、この値を重み付け係数とする。即ち、AX=0.125、BX=-0.875となる。
【0061】
ここで、上記と同様の方法で、抽出腹側指静脈パターン2d3(指C)と登録腹側指静脈パターン2B6(指C)とのミスマッチ数Aと、抽出背側指静脈パターン3d3(指C)と登録背側指静脈パターン3B6(指C)とのミスマッチ数Bを算出する。例えば、ミスマッチ数Aが30000であり、ミスマッチ数Bが5000であり、閾値が20000であるとすると、上記式(1)から、
総合ミスマッチ数Y=30000×0.125+5000×0.875=8125
となり、閾値以下であるため、個人認証(同一指と判定)がなされる。
【0062】
なお、従来の指静脈認証装置のように、腹側の指静脈パターンを利用して個人認証を行う装置では、この具体例を計算すれば、腹側の指静脈パターンのミスマッチ数Aが30000の場合、閾値20000を超えているため、同一指であっても、別指であると判断され、個人認証がなされず、誤判定されることになる。
【0063】
本実施形態に係る指静脈認証装置1では、腹側または背側の指静脈情報が少なくても、指静脈情報の量に応じて重み付けすることで、誤判定が生じる可能性を低くすることができ、高精度な個人認証を行うことができる。また、載置部12に対し、間違った方向から指100を載置しても、登録されている指静脈パターンを上記方法で変更することで、誤判定が生じる可能性を低くすることができ、高精度な個人認証を行うことができる。
【0064】
なお、本実施形態では、光源4R及び右側光ガイド5R、光源4L及び左側光ガイド5Lを2カ所ずつ配設した場合について説明したが、これに限らず、光源4R及び右側光ガイド5Rと、光源4L及び左側光ガイド5Lは、左右一対以上あれば、配設数は任意に決定することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…指静脈認証装置、4R、4L…光源、5R…右側光ガイド、5L…左側光ガイド、10…筐体、12…載置部、16A…腹側撮像部、16B…背側撮像部、17…腹側集光レンズ、18…腹側撮像センサ、19…背側集光レンズ、20…背側撮像センサ、50…個人認証部、60…画像処理部、62…指静脈パターン抽出部、64…照合部、66…記憶部、68…演算部、70…判断部、100…指
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指を載置させる載置部と、
前記載置部に載置された指の右側及び左側に各々配置され、当該指を照射する光源と、
前記載置部に載置された指の腹側に配置され、当該指の腹側から透過した光を撮像する腹側撮像部と、
前記載置部に載置された指の背側に配置され、当該指の背側から透過した光を撮像する背側撮像部と、
前記腹側撮像部により撮像された画像から抽出された抽出腹側指静脈パターンと、予め登録されている登録腹側指静脈パターンとを照合し、且つ、前記背側撮像部により撮像された画像から抽出された抽出背側指静脈パターンと、予め登録されている登録背側指静脈パターンとを照合する画像処理部と、
前記画像処理部から得られた照合結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する判断部と、
を備えた指静脈認証装置。
【請求項2】
前記指の右側に配置された光源から放射された光を集光し、前記指の右側の特定部位に誘導する右側光ガイドと、
前記指の左側に配置された光源から放射された光を集光し、前記指の左側の特定部位に誘導する左側光ガイドと、
をさらに備えた請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項3】
前記特定部位が、前記指の厚さ方向略中央部である請求項2記載の指静脈認証装置。
【請求項4】
前記腹側撮像部は、指の腹側から放射された光を集光する腹側集光レンズと、当該腹側集光レンズから放射された光を撮像する腹側撮像センサと、を有し、
前記背側撮像部は、指の背側から放射された光を集光する背側集光レンズと、当該背側集光レンズから放射された光を撮像する背側撮像センサと、を有し、
前記腹側集光レンズは、指の腹側から当該腹側集光レンズに入射する光の光軸中心が前記指の第一関節と第二関節との中央部よりも第一関節側となる位置に配設され、
前記背側集光レンズは、指の背側から当該背側集光レンズに入射する光の光軸中心が前記指の第一関節と第二関節との中央部近傍に配設されている、
請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記抽出腹側指静脈パターンの面積と、前記抽出背側指静脈パターンの面積との比率に応じて、当該抽出腹側指静脈パターンと抽出背側指静脈パターンに重み付けを行う請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、
記憶部と、
前記腹側撮像部及び背側撮像部で撮像された画像から指静脈パターンを抽出する指静脈パターン抽出部と、
前記指静脈パターン抽出部で抽出された指静脈パターンと、前記記憶部に予め登録されている指静脈パターンとを照合する照合部と、
前記照合部で得られた照合結果に基づいて演算を行う演算部と、
を備え、
前記判断部は、前記演算部で得られた演算結果に基づいて個人認証を行うか否かを判断する請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項7】
指の右側及び左側の各々に光を照射する光照射工程と、
前記指の腹側から透過した光を撮像し、撮像された画像から腹側指静脈パターンを抽出する腹側指静脈パターン抽出工程と、
前記指の背側から透過した光を撮像し、撮像された画像から背側指静脈パターンを抽出する背側指静脈パターン抽出工程と、
前記腹側指静脈パターン抽出工程で抽出された抽出腹側指静脈パターンと、予め登録されている登録腹側指静脈パターンとを照合する腹側指静脈パターン照合工程と、
前記背側指静脈パターン抽出工程で抽出された抽出背側指静脈パターンと、予め登録されている登録背側指静脈パターンとを照合する背側指静脈パターン照合工程と、
前記腹側指静脈パターン照合工程と背側指静脈パターン照合工程による照合結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する判断工程と、
を備えた指静脈認証方法。
【請求項8】
前記光照射工程は、
前記指の右側に照射される光を集光し、当該指の右側の特定部位に誘導する右側光誘導工程と、
前記指の左側に照射される光を集光し、当該指の左側の特定部位に誘導する左側光誘導工程と、
をさらに備えた請求項7記載の指静脈認証方法。
【請求項9】
前記右側光誘導工程及び左側光誘導工程は、前記指の厚さ方向略中央部に前記光を誘導する請求項8記載の指静脈認証方法。
【請求項10】
前記腹側指静脈パターン抽出工程は、前記指の腹側から透過した光の光軸中心が、当該指の第一関節と第二関節との中央部よりも第一関節側となる位置であり、
前記背側指静脈パターン抽出工程は、前記指の背側から透過した光の光軸中心が、当該指の第一関節と第二関節との中央部近傍となる位置である、
請求項7記載の指静脈認証方法。
【請求項11】
前記抽出腹側指静脈パターンの面積を算出する腹側面積算出工程と、
前記抽出背側指静脈パターンの面積を算出する背側面積算出工程と、
前記腹側面積算出工程で算出した面積と、前記背側面積算出工程で算出した面積との比率を算出し、重み付け係数を算出するする重み付け係数算出工程と、
前記抽出腹側指静脈パターンと登録腹側指静脈パターンとの差異を数値化する腹側差異数値化工程と、
前記抽出背側指静脈パターンと登録背側指静脈パターンとの差異を数値化する背側差異数値化工程と、
前記腹側差異数値化工程で得られた値に、前記比率算出工程で算出した抽出腹側指静脈パターンの比率を乗じた値と、前記背側差異数値化工程で得られた値に、前記比率算出工程で算出した抽出背側指静脈パターンの比率を乗じた値と、を加算して総合差異値を算出する総合差異値算出工程と、
をさらに有し、
前記判断工程は、前記総合差異値算出工程で算出した総合差異値と、予め設定されている所定の閾値とを比較し、当該比較結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する、
請求項7記載の指静脈認証方法。
【請求項1】
指を載置させる載置部と、
前記載置部に載置された指の右側及び左側に各々配置され、当該指を照射する光源と、
前記載置部に載置された指の腹側に配置され、当該指の腹側から透過した光を撮像する腹側撮像部と、
前記載置部に載置された指の背側に配置され、当該指の背側から透過した光を撮像する背側撮像部と、
前記腹側撮像部により撮像された画像から抽出された抽出腹側指静脈パターンと、予め登録されている登録腹側指静脈パターンとを照合し、且つ、前記背側撮像部により撮像された画像から抽出された抽出背側指静脈パターンと、予め登録されている登録背側指静脈パターンとを照合する画像処理部と、
前記画像処理部から得られた照合結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する判断部と、
を備えた指静脈認証装置。
【請求項2】
前記指の右側に配置された光源から放射された光を集光し、前記指の右側の特定部位に誘導する右側光ガイドと、
前記指の左側に配置された光源から放射された光を集光し、前記指の左側の特定部位に誘導する左側光ガイドと、
をさらに備えた請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項3】
前記特定部位が、前記指の厚さ方向略中央部である請求項2記載の指静脈認証装置。
【請求項4】
前記腹側撮像部は、指の腹側から放射された光を集光する腹側集光レンズと、当該腹側集光レンズから放射された光を撮像する腹側撮像センサと、を有し、
前記背側撮像部は、指の背側から放射された光を集光する背側集光レンズと、当該背側集光レンズから放射された光を撮像する背側撮像センサと、を有し、
前記腹側集光レンズは、指の腹側から当該腹側集光レンズに入射する光の光軸中心が前記指の第一関節と第二関節との中央部よりも第一関節側となる位置に配設され、
前記背側集光レンズは、指の背側から当該背側集光レンズに入射する光の光軸中心が前記指の第一関節と第二関節との中央部近傍に配設されている、
請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記抽出腹側指静脈パターンの面積と、前記抽出背側指静脈パターンの面積との比率に応じて、当該抽出腹側指静脈パターンと抽出背側指静脈パターンに重み付けを行う請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、
記憶部と、
前記腹側撮像部及び背側撮像部で撮像された画像から指静脈パターンを抽出する指静脈パターン抽出部と、
前記指静脈パターン抽出部で抽出された指静脈パターンと、前記記憶部に予め登録されている指静脈パターンとを照合する照合部と、
前記照合部で得られた照合結果に基づいて演算を行う演算部と、
を備え、
前記判断部は、前記演算部で得られた演算結果に基づいて個人認証を行うか否かを判断する請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項7】
指の右側及び左側の各々に光を照射する光照射工程と、
前記指の腹側から透過した光を撮像し、撮像された画像から腹側指静脈パターンを抽出する腹側指静脈パターン抽出工程と、
前記指の背側から透過した光を撮像し、撮像された画像から背側指静脈パターンを抽出する背側指静脈パターン抽出工程と、
前記腹側指静脈パターン抽出工程で抽出された抽出腹側指静脈パターンと、予め登録されている登録腹側指静脈パターンとを照合する腹側指静脈パターン照合工程と、
前記背側指静脈パターン抽出工程で抽出された抽出背側指静脈パターンと、予め登録されている登録背側指静脈パターンとを照合する背側指静脈パターン照合工程と、
前記腹側指静脈パターン照合工程と背側指静脈パターン照合工程による照合結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する判断工程と、
を備えた指静脈認証方法。
【請求項8】
前記光照射工程は、
前記指の右側に照射される光を集光し、当該指の右側の特定部位に誘導する右側光誘導工程と、
前記指の左側に照射される光を集光し、当該指の左側の特定部位に誘導する左側光誘導工程と、
をさらに備えた請求項7記載の指静脈認証方法。
【請求項9】
前記右側光誘導工程及び左側光誘導工程は、前記指の厚さ方向略中央部に前記光を誘導する請求項8記載の指静脈認証方法。
【請求項10】
前記腹側指静脈パターン抽出工程は、前記指の腹側から透過した光の光軸中心が、当該指の第一関節と第二関節との中央部よりも第一関節側となる位置であり、
前記背側指静脈パターン抽出工程は、前記指の背側から透過した光の光軸中心が、当該指の第一関節と第二関節との中央部近傍となる位置である、
請求項7記載の指静脈認証方法。
【請求項11】
前記抽出腹側指静脈パターンの面積を算出する腹側面積算出工程と、
前記抽出背側指静脈パターンの面積を算出する背側面積算出工程と、
前記腹側面積算出工程で算出した面積と、前記背側面積算出工程で算出した面積との比率を算出し、重み付け係数を算出するする重み付け係数算出工程と、
前記抽出腹側指静脈パターンと登録腹側指静脈パターンとの差異を数値化する腹側差異数値化工程と、
前記抽出背側指静脈パターンと登録背側指静脈パターンとの差異を数値化する背側差異数値化工程と、
前記腹側差異数値化工程で得られた値に、前記比率算出工程で算出した抽出腹側指静脈パターンの比率を乗じた値と、前記背側差異数値化工程で得られた値に、前記比率算出工程で算出した抽出背側指静脈パターンの比率を乗じた値と、を加算して総合差異値を算出する総合差異値算出工程と、
をさらに有し、
前記判断工程は、前記総合差異値算出工程で算出した総合差異値と、予め設定されている所定の閾値とを比較し、当該比較結果に応じて個人認証を行うか否かを判断する、
請求項7記載の指静脈認証方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−252607(P2012−252607A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125847(P2011−125847)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
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