説明

指静脈認証装置

【課題】指静脈パターンの登録時や認証時に、正しく指を置かせて良好な静脈パターンを取得することを可能とし、認証精度を向上させることを可能とする指静脈認証装置を提供する。
【解決手段】静脈画像から静脈パターンの情報を抽出して照合用テンプレートとしてメモリに登録する指情報登録部240と、前記静脈画像から静脈パターンの情報を抽出し、前記照合用テンプレートと照合して個人認証を行う指静脈認証部250とを有する指静脈認証装置であって、前記静脈画像から指の特徴データを抽出する指画像処理部210と、前記指の特徴データが所定の範囲にあるか否かによって、前記指の配置状態の良否を判定する指置き状態判定部230とを有し、指置き状態判定部230での判定結果が否である場合に、映像出力部および/または音声出力部によって前記利用者に前記指の置き直しを指示し、再度前記静脈画像を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報によって個人認証を行う生体認証技術に関し、特に、指の静脈パターンによって個人認証を行う指静脈認証装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、個人情報の安全な管理が重要になっており、生体情報による個人認証技術が様々なところで利用されるようになっている。例えば、指の静脈パターンを利用した生体認証技術は、生体内部の情報を利用するため、より安全で利用者にやさしい生体認証装置を実現することができる。指の静脈パターンを利用した生体認証装置は、他の生体情報を利用した生体認証装置に比べ小型化が容易で、様々なところに組み込むことが可能である。例えば、入退室のためのドアやロッカーの鍵として指静脈認証装置を組み込むことで、利用者が鍵を持たずに入退室したり貴重品を管理したりすることが可能となる。
【0003】
指静脈認証装置において認証を正確に行うためには、認証時に静脈パターンの登録時と同じ条件で撮像された静脈パターンを用いて照合することが重要であり、撮像時の指の置き方に関して、静脈パターンの登録時と認証時とで指の置き方が異なれば、認証率が低下してしまう。
【0004】
指の静脈パターンを利用した生体認証装置およびその精度を向上させる技術としては、例えば、特開2002−83298号公報(特許文献1)には、指を非接触で撮像して静脈パターンを獲得し、輪郭を用いた回転補正等を行ってマッチングする個人認証装置が開示されている。また、特開2003−30632号公報(特許文献2)には、撮像条件を均一化するために、指の位置が決まるように指を置く場所にガイドを設けた指認証装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−83298号公報
【特許文献2】特開2003−30632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術では、指を非接触で撮像するため撮像時に指が水平方向に回転する場合があり、その場合の補正方法を開示している。しかし、指は撮像平面に対して水平方向の回転だけではなく、指先や指元が浮いている場合など様々な置かれ方をすることが考えられる。このため、例えば、指を水平方向に回転した状態以外で撮像したものを静脈パターンとして登録すると、認証時に完全に補正することができない可能性があり、認証精度を向上させられない場合がある。
【0007】
また、特許文献2では、指先を置くべき位置にスイッチボタンを設け、指を置く位置にガイド溝を設けることにより、指を置く位置を安定させる方法を開示している。しかし、指先のスイッチボタンは、指先だけに限らず指の腹などでも押すことは可能であり、その結果指先や指元が浮いたりする可能性がある。
【0008】
また指を置く位置のガイド溝については、指の大きさや形状に個人差があるため、ガイド溝を個人の指の形状に合わせることは困難である。例えば、指が細い人が指を置いた場合、ガイド溝に対して指のゆとりが大きくなるため、指が水平方向に回転して置かれる可能性がある。指の置き方が良好ではない状態で指を撮像し、静脈パターンとして登録すると、認証時の撮像条件が登録時の撮像条件と異なってしまう場合があり、認証精度を向上させられない可能性がある。
【0009】
例えば、入退室の際のドアや車のドアなどに指静脈認証装置を組み込んで使用する場合は、静脈パターンを一度登録すると、その後は入退室する際や車のキーを開ける度に認証動作を行う。このように、認証動作に比べて登録動作を行う頻度が少ないような使用状況では、例えば、登録時に指導者を設けて、指の置き方を指導して良好な状態で静脈パターンを取得したり、マニュアルを見ながら利用者に丁寧に静脈パターンを登録してもらったりすることで、認証精度を安定させることができる。
【0010】
しかし、例えば、駅やフィットネスジムのロッカーなどに指静脈認証装置を組み込んで使用するような場合は、上記の使用状況とは異なり、不特定多数の利用者が静脈パターンの登録と認証を頻繁に行う状況が生ずる。このような使用状況では、例えば、指導者が指の置き方を指導するというような対応は難しく、また、利用者にマニュアル等を丁寧に読んでもらうということも期待できないため、良好な静脈パターンが登録されず、認証精度を向上させられない場合もあり得る。
【0011】
そこで本発明の目的は、指静脈パターンの登録時や認証時に、人が指の置き方を説明しなくても、正しく指を置かせて良好な静脈パターンを取得することを可能とし、認証精度を向上させることを可能とする指静脈認証装置を提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0013】
本発明の代表的な実施の形態による指静脈認証装置は、指の静脈パターンの撮像時に、撮像された画像から指の特徴データを抽出する指画像処理部と、抽出された特徴データに基づいて、指の浮きや回転など、指が適切に置かれているか否かを判定する指置き状態判定部を有し、指が適切に置かれていない場合には、映像出力部や音声出力部により指静脈認証装置がその場で利用者へ指の置き直しを指示することによって、安定して良好な静脈パターンを取得することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0015】
本発明の代表的な実施の形態によれば、静脈パターンの照合用テンプレートの登録時および静脈パターンによる個人認証時に、良好な指の置き方で静脈パターンを取得することができるため、指の置き方によって認証精度が低下することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1である指静脈認証装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるプロセッサで実行されるプログラムの機能ブロックの例を示す図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明の実施の形態1である指静脈認証装置の実装例を示す図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明の実施の形態1である指静脈認証装置の実装例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1である指静脈認証装置に指を置いて撮像した画像の例を模式的に表現した図である。
【図6】(a)、(b)は、本発明の実施の形態1である指静脈認証装置に指を置いて撮像した画像の例を模式的に表現した図である。
【図7】(a)〜(f)は、本発明の実施の形態1である指静脈認証装置に指を置いて撮像した画像の例を模式的に表現した図である。
【図8】従来技術による指静脈認証装置における静脈パターンの登録手順の例を示すフローチャートである。
【図9】従来技術による指静脈認証装置における認証手順の例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態1である指静脈認証装置における静脈パターンの登録手順の例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態1である指静脈認証装置における認証手順の例を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態1における、ロッカーに指静脈認証装置を組み込んだ場合の実装例を示す図である。
【図13】(a)、(b)は、本発明の実施の形態2である指静脈認証装置の実装例を示す図である。
【図14】(a)、(b)は、本発明の実施の形態2である指静脈認証装置の実装例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態2である指静脈認証装置における静脈パターンの登録手順の例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態2である指静脈認証装置における認証手順の例を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態3である指静脈認証装置に指を置いて撮像した画像を、指の輪郭と静脈を強調して模式的に表現した図である。
【図18】(a)、(b)は、本発明の実施の形態3である指静脈認証装置に指を置いて撮像した画像を、指の輪郭と静脈を強調して模式的に表現した図である。
【図19】(a)〜(f)は、本発明の実施の形態3である指静脈認証装置に指を置いて撮像した画像を、指の輪郭と静脈を強調して模式的に表現した図である。
【図20】本発明の実施の形態3である指静脈認証装置における静脈パターンの登録手順の例を示すフローチャートである。
【図21】本発明の実施の形態3である指静脈認証装置における認証手順の例を示すフローチャートである。
【図22】従来技術による指静脈認証装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下においては、本発明の特徴を分かり易くするために、従来の技術と比較して説明する。
【0018】
<概要>
図22は従来技術による指静脈認証装置の構成例を示すブロック図である。図22において、指静脈認証装置100は、指の静脈を撮像する撮像部101および赤外光発光部102と、プログラムを実行して認証処理等を行うプロセッサ110と、データやプログラムを保持するメモリ103と、データ等の入出力のための外部インタフェース(I/F)部104とを備えている。
【0019】
指静脈認証装置100に挿入された指が、赤外光発光部102から出力された赤外光を受けると、赤外光は指内部で散乱する。指から散乱した赤外光は、撮像部101へ入力される。静脈は指の他の部分と赤外光の吸収率が違うため、静脈パターンを撮像することができる。撮像された画像は、照合用テンプレートとしてメモリ103、もしくは外部I/F部104を介して外部機器に保存される。
【0020】
認証の際には、プロセッサ110によってメモリ103に保存されているプログラムを実行することによって、あるいは外部I/F部104を介して接続された外部機器によって、照合用テンプレートと認証用に撮像した認証用データとの照合を行い、照合結果から静脈パターンが一致しているか否かを判定する。
【0021】
従来は、例えば、外部I/F部104を介して指静脈認証装置100とパーソナルコンピュータ(PC)を接続し、指静脈認証装置100から静脈パターンのテンプレートデータをPCへ送信して、PC上に照合用テンプレートとして保存していた。また認証時は、照合用テンプレートと認証用データとの照合をPC上で行い、認証結果もPC上で確認するようにしていた。
【0022】
一方、図1は、本発明の一実施の形態である指静脈認証装置の構成例を示すブロック図である。図22に示す従来技術による指静脈認証装置100の構成に、音声出力部121、映像出力部122、タッチセンサー部123を加えた構成となっている。従来技術による指静脈認証装置100と同様に、指静脈認証装置100に挿入された指が赤外光発光部102から出力された光を受け、そのときの静脈部分の赤外光の吸収率の違いを利用して静脈パターンを撮像する。
【0023】
従来技術による指静脈認証装置100では、撮像された画像は、照合用テンプレートとして外部I/F部104経由でPCに保存していたが、本実施の形態の指静脈認証装置100では、照合用テンプレートを保存する前に、メモリ103に格納されているプログラムをプロセッサ110で実行することによって、撮像した指が正常な状態で置かれていたか否かを判定する。
【0024】
指の置かれていた状態が正常でなければ、正常でない原因と指の置き直しを音声出力部121と映像出力部122を通して利用者に通知し、修正を案内する。正常な状態で指が置かれていると判定した場合は、撮像した静脈パターンを照合用テンプレートとして登録する。認証時も同様に、撮像した指が正常な状態で置かれていたか否かを判定して、指の置き直しを音声出力部121と映像出力部122を通して利用者に通知し、修正を案内する。正常な状態で指が置かれていると判定した場合は、照合用テンプレートと認証用データとの照合を行い、照合結果から静脈パターンが一致しているか否かを判定する。
【0025】
図2は、本実施の形態の指静脈認証装置100において、プロセッサ110で実行されるプログラムの機能ブロックの例を示す図である。指情報登録部240では、指静脈パターンを照合用テンプレートとして保存する処理を行い、指静脈認証部250では、照合用テンプレートと認証用データとの照合処理を行う。指置き状態判定部230では、指静脈パターンの登録時および認証時に、撮像した指が正常な状態で置かれているか否かを判定する。このとき、タッチセンサー部123での検出結果を取得するセンサー検出部220や、撮像した指の画像についての特徴データを抽出する指画像処理部210からの情報を利用して判定を行う。制御部260は、指静脈認証装置100全体の制御を行う。
【0026】
<実施の形態1>
以下、本発明の実施の形態1である指静脈認証装置100について説明する。本実施の形態の指静脈認証装置100は、以下で説明する処理を行うことにより、指静脈認証装置100単体で、照合用テンプレートの登録から認証、および、指の挿入の有無のチェック、音声や映像による利用者への装置の使用方法や注意事項の提示・説明などを行う。なお、音声出力部121と映像出力部122を通して、装置の使用方法の説明や指の置かれている映像等を動画として利用者へ提供することについては、公知の技術等を用いた種々の方法で実現することが可能であり詳細は説明しないが、本発明の特徴であることはいうまでもない。
【0027】
図3、図4は、それぞれ本実施の形態の指静脈認証装置100の実装例を示す図である。図3(a)、(b)は、上方から赤外光を照射する方式の指静脈認証装置100の例である。図3(a)は、指静脈認証装置100の外観を示す斜視図であり、図3(b)は、その断面図である。指310が置かれる位置の上方の対応する位置に赤外光発光部102を設け、この赤外光発光部102から出力された近赤外光が指310に照射され、撮像窓301を介して撮像部101で撮像される。
【0028】
図4(a)、(b)は、下方から赤外光を照射する方式の指静脈認証装置100の例である。指310が置かれる位置の下方の対応する位置に赤外光発光部102を設け、この赤外光発光部102から出力された近赤外光が指310に照射され、撮像窓301とミラー401を介して撮像部101で撮像される。
【0029】
指静脈認証装置100は、血管(血液)と他の組織との赤外光吸収率の差を利用して静脈パターンを撮像するため、赤外光域の分光感度が高いカメラを撮像部101として使用したり、撮像窓301に赤外光が透過しやすいようにするためフィルタを設けたりして、図17に示すような静脈パターンを撮像する。指に赤外光を照射すると、赤外光の吸収量が少ない部分や赤外光を透過する部分は白く(明るく)表現される。逆に、赤外光の吸収量が多い静脈部や赤外光が届きにくい指の周囲部は、赤外光の光量が少ないので黒く(暗く)撮像される。これにより、指の輪郭1701と指内部の静脈1711を認識することができる。
【0030】
図5〜図7は、指静脈認証装置100に指を置いて撮像した画像の例を模式的に表現した図である。実際に撮像した画像では、赤外光の光量分布が撮像画像の白黒で表現されるため、図17に示すように静脈も撮像されるが、ここでは指の輪郭に関する処理を説明するため静脈については表記を省略し、指の輪郭だけを示している。さらに、撮像した指の領域は指の第一関節から第二関節近辺としており、図5〜図7で表記した皺は実際に撮像した場合は映らないものであるが、画像の対象が指であることを分かりやすくするために表記している。
【0031】
図5は、図3、図4の指静脈認証装置100において、正常に指が置かれている場合に撮像された画像の例を示す図である。前述したように、赤外光の光量分布により撮像した画像が白黒で表現されるので、画像から輪郭501の形状、位置を検出することができる。一方、図6、図7は、指静脈認証装置100に様々なパターンで指が置かれた場合に撮像された画像の例を示す図である。
【0032】
図6(a)、(b)は、指が撮像窓301に対して水平方向に回転した状態で置かれている場合に撮像された画像の例を示す図である。図6(a)は、図5の指の置き方に比べて、指が矢印で示す方向に回転した状態で撮像された画像の例を示す図である。図5の輪郭501に比べて、図6(a)の輪郭601の傾きは反時計周り方向に回転している。従って、輪郭の傾きを比較することにより、実際に置かれている指が水平方向(矢印の方向)に回転した状態で置かれていることを判定することができる。
【0033】
図6(b)は、図6(a)とは逆の方向(矢印の方向)に回転した状態で指が置かれている場合に撮像された画像の例を示す図である。図6(a)と同様に、輪郭501と輪郭602の傾きを比較することにより、指が水平方向(矢印の方向)に回転した状態で置かれていることを判定することができる。
【0034】
図7(a)、(b)は、指先または指元が浮いている状態で指が置かれている場合に撮像された画像の例を示す図である。図7(a)は、図5の指の置き方に比べて、指先が浮いた状態で撮像された画像の例を示す図である。図5の輪郭501に比べて、図7(a)の輪郭701は、指先の部分(画像上方)の間隔が狭くなっている。これは、図7(a)の画像が撮像された時の指先の位置が、図5の画像が撮像された時の指先の位置に比べて撮像部101から遠ざかっている(浮いている)ためである。このように、指元の輪郭幅は変わらないが指先の輪郭幅が狭くなっていることにより、指先が浮いている状態で指が置かれていることを判定することができる。
【0035】
図7(b)は、図5の指の置き方に比べて、指元が浮いている状態で指が置かれている場合に撮像された画像の例を示す図である。図5の輪郭501に比べて、図7(b)の輪郭702は、指元(画像下方)の部分の間隔が狭くなっている。これは、図7(b)の画像が撮像された時の指元の位置が、図5の画像が撮像された時の指元の位置に比べて撮像部101から遠ざかっているためである。このように、指先の輪郭幅は変わらないが指元の輪郭幅が狭くなっていることにより、指元が浮いている状態で指が置かれていることを判定することができる。
【0036】
図7(c)、(d)は、指を曲げた状態と指を反った状態で指が置かれている場合に撮像された画像の例を示す図である。図7(c)は、図5の指の置き方に比べて、指を曲げた状態で撮像された画像の例を示す図である。図5の輪郭501に比べて、図7(c)の輪郭703は、指の関節部に相当する部分の輪郭幅が狭くなっている。これは、図7(c)の画像が撮像された時の関節の位置が、図5の画像が撮像された時の関節の位置に比べて撮像部101から遠ざかっているためである。このように、指先と指元の輪郭幅は変わらないが、関節部の輪郭幅が狭くなっていることにより、指を曲げた状態で指が置かれていることを判定することができる。
【0037】
図7(d)は、図5の指の置き方に比べて、指を反った状態で撮像された画像の例を示す図である。図5の輪郭501に比べて、図7(d)の輪郭704は、指の関節部に相当する部分の輪郭幅が広くなっている。これは、図7(d)の画像が撮像された時の指先と指元の位置が、図5の画像が撮像された時の指先と指元の位置に比べて撮像部101から遠ざかっているためである。このように、指先と指元の輪郭幅は変わらないが、関節部の輪郭幅が広くなっていることにより、指を反った状態で指が置かれていることを判定することができる。
【0038】
図7(e)、(f)は、指が正常撮像位置まで到達していない状態と指が正常撮像位置を越えた状態で撮像された画像の例を示す図である。図7(e)は、図5の指の置き方に比べて、指が正常撮像位置まで到達していない状態で撮像された画像の例を示す図である。図5の輪郭501に比べて、図7(e)の輪郭705は、指先の輪郭705が撮像されている。これは、図7(e)の画像が撮像された時の指の位置が、図5の画像が撮像された時の指の位置に比べて、正常撮像位置まで到達していないためである。このように、図5の画像では存在しない指先の輪郭705が撮像されていることにより、指が正常撮像位置まで到達していない状態で置かれていることを判定することができる。
【0039】
図7(f)は、図5の指の置き方に比べて、指が正常撮像位置を越えた状態で撮像された画像の例を示す図である。図5の輪郭501に比べて、図7(f)の輪郭706は、指元(指の股部)の輪郭706が撮像されているのがわかる。これは、図7(f)の画像が撮像された時の指の位置が、図5の画像が撮像された時の指の位置に比べて、正常撮像位置を越えているためである。このように、図5では存在しない指元の輪郭706が撮像されていることにより、指が正常撮像位置を越えた状態で置かれていることを判定することができる。
【0040】
図7(a)〜(f)で説明したように、正常に指が置かれた場合の輪郭の傾きや幅と、撮像された指の輪郭の傾きや幅を比較することによって、指がどのように置かれているかを判定することができる。
【0041】
以下、本実施の形態の指静脈認証装置100における静脈パターンの登録手順および認証手順ついて説明する。まず、図8、図9を用いて、従来技術による指静脈認証装置100における静脈パターンの登録手順および認証手順について説明する。
【0042】
図8は、従来技術による指静脈認証装置100における静脈パターンの登録手順の例を示すフローチャートである。登録手順を開始すると(ステップS801)、指静脈認証装置100本体の電源が入り(ステップS802)、赤外光発光部102が点灯する(ステップS803)。次に、撮像窓301から撮像部101に赤外光が入力され、静脈を撮像する(ステップS804)。
【0043】
次に、静脈が撮像できているか否かを判定する(ステップS805)。撮像できていない場合は、赤外光発光部102を調光し(ステップS806)、ステップS804に戻って再度撮像し、静脈が撮像できるまで赤外光発光部102を調光する。指には太さや厚さなど個人差があるので、静脈が一番良好な状態で撮像できるまで赤外光発光部102を調光する。
【0044】
ステップS805で、静脈が撮像できた場合は、撮像されたものが指であるか否かを判定する(ステップS807)。指でない場合は、外部機器等を介して利用者に再登録を指示する(ステップS808)。指である場合は、撮像された画像から静脈パターンの特徴を抽出し(ステップS809)、抽出したデータを照合用テンプレートとしてメモリ103や外部機器等に保存し(ステップS810)、外部機器等を介して利用者に登録完了を知らせて(ステップS811)、静脈パターンの登録手順を完了する(ステップS812)。
【0045】
図9は、従来技術による指静脈認証装置100における認証手順の例を示すフローチャートである。認証手順を開始すると(ステップS901)、ステップS902〜S908までは、図8のステップS802〜S808と同様に、静脈が撮像できるまで赤外光発光部102を調光し、撮像されたものが指であるか否かを判定し、指であれば静脈パターンの特徴を抽出する(ステップS909)。
【0046】
次に、図8のステップS810でメモリ103等に保存した照合用テンプレートと、ステップS909で抽出した静脈パターンの特徴とを照合し(ステップS910)、認証結果の判定を行う(ステップS911)。正しく認証できなかった場合は、外部機器等を介して利用者に認証失敗を知らせ(ステップS914)、認証手順を終了する(ステップS915)。正しく認証できた場合は、外部機器等を介して利用者に認証完了を知らせて(ステップS912)、認証手順を完了する(ステップS913)。
【0047】
次に、図10、図11を用いて、本実施の形態の指静脈認証装置100における静脈パターンの登録手順および認証手順について説明する。図10は、本実施の形態の指静脈認証装置100における静脈パターンの登録手順の例を示すフローチャートであり、図11は、本実施の形態の指静脈認証装置100における認証手順の例を示すフローチャートである。
【0048】
これらは、図8、図9に示した従来技術による指静脈認証装置100における登録手順、認証手順のフローチャートに対して、それぞれ、指の輪郭を抽出するステップS1001と、指の輪郭データから指置き状態を判定するステップS1002と、指置き状態を案内して指の置き直しを指示するステップS1003とが追加されたものとなっている。その他のステップについては、図8、図9のフローチャートと同様であるため説明を省略し、以下では追加されたステップについて説明する。
【0049】
図10の静脈パターンの登録手順のフローチャートにおいて、ステップS807にて撮像されたものが指であると判定された場合に、指画像処理部210の輪郭抽出部201によって、撮像画像から特徴データとして指の輪郭を抽出する(ステップS1001)。次に、抽出した指の輪郭データに基づいて、指置き状態判定部230によって、正常に指を置いた場合の輪郭の傾きや輪郭幅と、撮像画像の指の輪郭の傾きや輪郭幅とを比較して、指の水平方向の回転や、指先または指元の浮き、関節の曲がりなどの有無を調べ、指が正常に置かれているか否かの判定を行う(ステップS1002)。
【0050】
図5〜図7にて説明したように、指の置き方が正常かどうかの判定方法は様々あるが、例えば、あらかじめ正常に指が置かれた場合の輪郭の傾きや輪郭幅等の範囲を設定しておき、この範囲内に入っているか否かで、登録手順や認証手順において撮像する際の指置き状態を判定することが可能である。また、正常に指が置かれた状態で取得した静脈パターンを照合用テンプレートとして登録する際に、指置き状態の判定において取得した輪郭の傾きや輪郭幅等の情報についてもメモリ103等に登録しておき、これらの情報と比較することで、認証時に撮像する際の指置き状態を判定することも可能である。
【0051】
指置き状態が正常でない場合は、音声出力部121や映像出力部122を介して、音声や動画等を用いて利用者に指置き状態を案内し、指の置き直しを指示する(ステップS1003)。指置き状態が正常である場合は、静脈パターンの特徴抽出(ステップS809)以降の処理を行う。上記の追加されたステップは、図11の認証手順においても同様であるため、再度の説明は省略する。
【0052】
以上のように、本実施の形態の指静脈認証装置100によれば、図10、図11のフローチャートに示す処理を行うことによって、登録時、認証時に指置き状態を判定して、利用者に適切に指の置き方の指導を行うことを可能とする指静脈認証装置100を実現することができる。
【0053】
図12は、フィットネスジムなどのロッカーに指静脈認証装置100を組み込んだ場合の実装例を示す図である。図12の例では、指静脈認証装置100は、上方から赤外光を照射する方式の指静脈認証装置100としており、図3と図4に示す指静脈認証装置100を組み合わせたような構成としている。ロッカー120自体に指静脈認証装置100を組み込むことで、外光が入射しにくくなるようにしている。
【0054】
本実施の形態の指静脈認証装置100は、照合用テンプレートの登録から認証、および、指の挿入の有無や指置き状態の判定、音声や映像による利用者への装置の使用方法や注意事項の提示・説明などを指静脈認証装置100単体で行うため、図12に示すようなロッカー120などに単体で組み込んで使用することが可能である。
【0055】
入退室の際のドアや車のドアなどで指静脈認証装置を用いる場合は、通常は、一度静脈パターンの登録を行ったらその後は認証のみ行うという場合が多いため、登録時に使用方法などを含めて指の置き方を指導することで登録を行っていた。
【0056】
一方、ロッカー1201などの場合は、不特定多数の利用者が登録と認証を繰り返し行う利用方法の場合が多い。ロッカー1201などで指静脈認証装置100を利用する場合は、利用者一人について登録行い、認証を行う。さらに、当該利用者の利用終了後、別の利用者が新たに登録を行い、認証を行うというように、従来とは異なる使用方法となる。さらに図12に示すように、指静脈認証装置100をロッカー1201に組み込むと、利用者からは指が見えにくいため、指が正しく置かれているか否かを確認しづらくなる。これらにより、指が適切に置かれていない状態で静脈パターンが撮像される可能性が高くなる。
【0057】
本実施の形態の指静脈認証装置100は、このような、不特定多数の利用者によって登録、認証手順が繰り返されるような使用方法において特に効果的である。フィットネスジムなどのロッカーなどで問題となる、利用者に指を正しい状態で置かせて静脈パターンを取得するという点において、登録時、認証時に指置き状態を判定して、利用者に指の置き直しの指示を行うことができるということは非常に重要である。
【0058】
<実施の形態2>
実施の形態1の指静脈認証装置100では、指の輪郭を利用して指置き状態を判定している。しかし、指の大きさや形状など、指の輪郭には個人差があるため、指の輪郭情報のみを用いて指置き状態を判定した場合、適切に判定できない場合もあり得る。そこで、本発明の実施の形態2である指静脈認証装置100は、さらにタッチセンサーを用いて指置き状態を判定する。
【0059】
図13、図14は、それぞれ本実施の形態の指静脈認証装置100の実装例を示す図である。図13(a)、(b)は、実施の形態1の図3に示す指静脈認証装置100にタッチセンサー1301を追加した指静脈認証装置100の例である。図13(a)は、指静脈認証装置100の外観を示す斜視図であり、図13(b)は、その断面図である。
【0060】
タッチセンサー1301は、指が装置に置かれたかどうかを検出するもので、どのような方式のセンサーを用いるかは特に限定しない。本実施の形態では、静電容量式のタッチセンサー1301を例として説明する。このタッチセンサー1301は、指が接触すると静電容量が変化すること利用して指の有無を検出するものである。指310が指静脈認証装置100に置かれると、指310がタッチセンサー1301に接触し、静電容量が変化するため指が置かれたことを正確に検出できる。
【0061】
本実施の形態の指静脈認証装置100では、このタッチセンサー1301を2つ設置する。1つは指先の部分に対応する位置に設置し、もう1つは指元の部分に対応する位置に設置する。人間の指には個人差があるが、一般的に指はほぼ直線状である。よって、指先部分および指元部分のタッチセンサー1301がそれぞれ指310が接触したことを検出すれば、指置き状態を一意的に判別することができる。なお、本実施の形態ではタッチセンサー1301を指先の部分と指元の部分の2箇所に設置しているが、精度を向上させるためにさらに他の部分に設置してもよく、設置する数に特に制限はない。
【0062】
タッチセンサー1301が一方しか指310が接触したことを検出しなかった場合は、指先または指元が浮いているか、または指が水平方向に回転して置かれていることが推測できる。このように、2つのタッチセンサー1301の検出結果の情報を用いることで、指先や指元が浮いていたり、指が回転して置かれていたりといった指置き状態を判定することができる。
【0063】
図14(a)、(b)は、図4に示す指静脈認証装置100にタッチセンサー1301を追加した指静脈認証装置の例である。図13に示す指静脈認証装置100と同様に、2つのタッチセンサー1301の検出結果から指置き状態を判定することができる。
【0064】
以下、本実施の形態の指静脈認証装置100における静脈パターンの登録手順および認証手順ついて図15、図16を用いて説明する。図15は、本実施の形態の指静脈認証装置100における静脈パターンの登録手順の例を示すフローチャートである。また、図16は、本実施の形態の指静脈認証装置100における認証手順の例を示すフローチャートである。
【0065】
図15、図16のフローチャートは、それぞれ、実施の形態1における図10、図11のフローチャートにタッチセンサー1301による指置き検出を行うステップS1501を追加し、また、指の輪郭から指置き状態を判定するステップS1002に替えて指の輪郭とタッチセンサー1301による検出結果とから指置き状態を判定するステップS1502を追加したものとなっている。他のステップについては、図10、図11のフローチャートと同じであるため、再度の説明は省略する。
【0066】
図15の登録時のフローチャートにおいて、ステップS1001にて指の輪郭を抽出した後、ステップS1501で、タッチセンサー1301およびセンサー検出部220によって指が置かれているか否かを検出する。前述のように、本実施の形態の指静脈認証装置100では、タッチセンター1301を指先の部分と指元の部分の2箇所に設置することによって、指が水平方向に回転している場合や、指が浮いている場合などを検出することができる。次に、ステップS1502にて、指置き状態判定部230によって、輪郭の傾きと、タッチセンサー1301およびセンサー検出部220の検出結果から指置き状態の判定を行う。なお、これらの追加された処理は、図16の認証時のフローチャートにおいても同様なので説明は省略する。
【0067】
本実施の形態では、タッチセンサー1301およびセンサー検出部220の検出結果を指置き状態の判定のために用いているが、タッチセンサー1301およびセンサー検出部220によって指が置かれたこと自体を検出できるため、これをトリガとして図15、図16のフローチャートに示す一連の処理を開始するようにしてもよい。
【0068】
以上のように、本実施の形態の指静脈認証装置100によれば、指置き状態の判定の際に、輪郭の傾きの情報にタッチセンター1301の検出結果の情報を加えて判断することにより、より正確な指置き状態の判定を行うことができる。なお、本実施の形態の指静脈認証装置100についても、実施の形態1の図12と同様に、フィットネスジムなどのロッカー1201に組み込んで実装することができる。
【0069】
<実施の形態3>
実施の形態2の指静脈認証装置100では、指の輪郭に加えてタッチセンサー1301の検出結果の情報を利用することにより、指の大きさや形状などに個人差がある場合でも適切に指置き状態を判定できるようにしている。しかし、この場合、指静脈認証装置100にタッチセンサー1301などの部品をさらに追加する必要がある。そこで、本発明の実施の形態3である指静脈認証装置100は、タッチセンサー1301などの指の検出のための部品を必要とせず、指の輪郭に加えて指の静脈の濃淡情報を利用して指置き状態を判定する。
【0070】
図17〜図19は、指静脈認証装置100に指を置いて撮像した画像を、指の輪郭と静脈を強調して模式的に表現した図である。図5〜図7と同様に、撮像した指の領域は指の第一関節から第二関節近辺としており、また、図中に表記した皺は、実際に撮像した場合は映らないものであるが、画像の対象が指であることを分かりやすくするために表記している。
【0071】
図17は、図3、図4の指静脈認証装置100において、正常に指が置かれている場合に撮像された画像の例を示す図である。前述したように、赤外光の光量分布により撮像した画像が白黒で表現されるので、画像から輪郭1701の形状、位置、さらに静脈1711の形状、位置、濃淡などを検出することができる。一方、図18、図19は、指静脈認証装置100に様々なパターンで指が置かれた場合に撮像された画像の例を示す図である。
【0072】
図18(a)、(b)は、指が撮像窓301に対して水平方向に回転した状態で置かれている場合に撮像された画像の例を示す図である。図18(a)は、図17の指の置き方に比べて、指が矢印で示す方向に回転した状態で撮像された画像の例を示す図である。図17の静脈1711に比べて、図18(a)の静脈1811の傾きは反時計周り方向に回転している。従って、静脈の傾きを比較することにより、実際に置かれている指が水平方向(矢印の方向)に回転した状態で置かれていることを判定することができる。
【0073】
図18(b)は、図18(a)とは逆の方向(矢印の方向)に回転した状態で指が置かれている場合に撮像された画像の例を示す図である。図18(a)と同様に、静脈1711と静脈1812の傾きを比較することにより、指が水平方向(矢印の方向)に回転した状態で置かれていることを判定することができる。
【0074】
図19(a)、(b)は、指先または指元が浮いている状態で指が置かれている場合に撮像された画像の例を示す図である。図19(a)は、図17の指の置き方に比べて、指先が浮いた状態で撮像された画像の例を示す図である。図17の静脈1711に比べて、図19(a)の静脈1911は、指先の部分(画像上方)に向かって静脈の濃淡が薄くなっている。これは、図19(a)の画像が撮像された時の指先の位置が、図17の画像が撮像された時の指先の位置に比べて撮像部101から遠ざかっている(浮いている)ためである。このように、指元の静脈の濃淡は変わらないが指先の静脈の濃淡が薄くなっていることにより、指先が浮いている状態で指が置かれていることを判定することができる。
【0075】
図19(b)は、図17の指の置き方に比べて、指元が浮いた状態で撮像された画像の例を示す図である。図17の静脈1711に比べて、図19(b)の静脈1912は、指元の部分(画像下方)に向かって静脈の濃淡が薄くなっている。これは、図19(b)の画像が撮像された時の指元の位置が、図17の画像が撮像された時の指元の位置に比べて撮像部101から遠ざかっているためである。このように、指先の静脈の濃淡は変わらないが指元の静脈の濃淡が薄くなっていることにより、指元が浮いている状態で指が置かれていることを判定することができる。
【0076】
図19(c)、(d)は、指を曲げた状態と指を反った状態で指が置かれている場合に撮像された画像の例を示す図である。図19(c)は、図17の指の置き方に比べて、指を曲げた状態で撮像された画像の例を示す図である。図17の静脈1711に比べて、図19(c)の静脈1913は、指の関節部に相当する部分の静脈の濃淡が薄くなっている。これは、図19(c)の画像が撮像された時の関節の位置が、図17の画像が撮像された時の関節の位置に比べて撮像部101から遠ざかっているためである。このように、指先と指元の静脈の濃淡は変わらないが、関節部の静脈の濃淡が薄くなっていることにより、指を曲げた状態で指が置かれていることを判定することができる。
【0077】
図19(d)は、図17の指の置き方に比べて、指を反った状態で撮像された画像の例を示す図である。図17の静脈1711に比べて、図19(d)の静脈1914は、指先と指元の部分の静脈の濃淡が薄くなっている。これは、図19(d)の画像が撮像された時の指先と指元の位置が、図17の画像が撮像された時の指先と指元の位置に比べて撮像部101から遠ざかっているためである。このように、指の関節部に相当する部分の静脈の濃淡は変わらないが、指先と指元の部分の静脈の濃淡が薄くなっていることにより、指を反った状態で指が置かれていることを判定することができる。
【0078】
図19(e)、(f)は、指が正常撮像位置まで到達していない状態と指が正常撮像位置を越えた状態で撮像された画像の例を示す図である。図19(e)は、図17の指の置き方に比べて、指が正常撮像位置まで到達していない状態で撮像された画像の例を示す図である。図17の静脈1711に比べて、図19(e)の静脈1915は、指先の部分の静脈が画像の途中位置までしか撮像されていない。これは、図19(e)の画像が撮像された時の指の位置が、図17の画像が撮像された時の指の位置に比べて、正常撮像位置まで到達していないためである。このように、指先の部分の静脈が画像の途中位置までしか撮像されていないことにより、指が正常撮像位置まで到達していない状態で置かれていることを判定することができる。
【0079】
図19(f)は、図17の指の置き方に比べて、指が正常撮像位置を越えた状態で撮像された画像の例を示す図である。図17の静脈1711に比べて、図19(f)の静脈1916は、指元の部分の静脈が撮像されているのがわかる。これは、図19(f)の画像が撮像された時の指の位置が、図17の画像が撮像された時の指の位置に比べて、正常撮像位置を越えているためである、このように、図17では存在しない指元の部分の静脈が撮像されていることにより、指が正常撮像位置を越えた状態で置かれていることを判定することができる。
【0080】
図19(a)〜(f)で説明したように、正常に指が置かれた場合の静脈の濃淡や位置と、撮像された指の静脈の濃淡や位置を比較することによって、指がどのように置かれているかを判定することができる。
【0081】
指静脈認証装置100上で指を置く位置は、静脈が良好に撮像できる位置とし、さらに静脈が良好に撮像できる位置に撮像部101を設ける。図17〜図19で説明したように、指を置く位置が撮像部101に対して最適であれば、静脈の濃淡は濃く撮像される。指先が浮いたり、指元が浮いたりすると撮像部101と指の距離が遠くなるので、指が浮いている部分の静脈の濃淡は薄く撮像される。よって、実施の形態2では指先と指元の浮きをタッチセンサー1301で検出する例について説明したが、指先と指元の静脈の濃淡が濃くなるか薄くなるかによって、実施の形態2と同様に指先と指元の浮きを判定することができる。
【0082】
さらに、静脈の濃淡を用いると、タッチセンサー1301では検出しづらかった指の側面の浮きも検出しやすい。例えば、指の右側が浮いている場合、タッチセンサー1301では、指の左側がセンサー部に触れていれば指が置かれていると判定する。しかし、指の側面が浮いた状態で静脈の登録を行うと、認証時に同じ指の置き方で撮像できるとは限らないため認証精度が低下する可能性がある。そこで、指の側面の静脈の濃淡について注目する。例えば、指の右側が浮いている場合、右側の静脈の濃淡は薄くなる。逆に、指の左側の静脈は良好な濃さで撮像されるため、指の右側が浮いた状態で指が置かれているということを判定することができる。
【0083】
以下、本実施の形態の指静脈認証装置100における静脈パターンの登録手順および認証手順ついて図20、図21を用いて説明する。図20は、本実施の形態の指静脈認証装置100における静脈パターンの登録手順の例を示すフローチャートである。また、図21は、本実施の形態の指静脈認証装置100における認証手順の例を示すフローチャートである。
【0084】
図20、図21のフローチャートは、それぞれ、実施の形態1における図10、図11のフローチャートに指の静脈の濃淡を抽出するステップS2001を追加し、また、指の輪郭から指置き状態を判定するステップS1002に替えて指の輪郭と静脈の濃淡とから指置き状態を判定するステップS2002を追加したものとなっている。他のステップについては、図10、図11のフローチャートと同じであるため、再度の説明は省略する。
【0085】
図20の登録時のフローチャートにおいて、ステップS1001にて指の輪郭を抽出した後、ステップS2001で、指の撮像画像から、指画像処理部210の静脈濃淡抽出部202によって静脈の濃淡を抽出する。次に、ステップS2002にて、指置き状態判定部230によって輪郭の傾きと静脈の濃淡とから指置き状態の判定を行う。なお、これらの追加された処理は、図21の認証時のフローチャートにおいても同様なので説明は省略する。
【0086】
静脈の濃淡についての判断方法も、前述した輪郭についての判断方法と同様に、例えば、あらかじめ正常に指が置かれた場合の静脈の濃淡の範囲を設定しておき、この範囲と比較することで、指置き状態を判定することが可能である。
【0087】
なお、本実施の形態では、指の輪郭に加えて静脈の濃淡の情報を利用して指の置き方を判断しているが、図18、図19で説明したように、静脈の位置や傾きによっても指の置き方を判定することができる。また、例えば、静脈の密度などによっても指の置き方を判定することができる。正常に指が置かれた状態と比べて、例えば、指先や指元が浮いた状態で指が置かれると、指が撮像部101から遠ざかった(浮いている)部分では指が縮小された状態で撮像される。この部分の画像では静脈の密度は大きくなることから、指が浮いた状態で置かれていることを判定することができる。このように、静脈の位置や傾き、密度の情報を利用して指置き状態を判定するために、図2に示すように、指画像処理部210に静脈位置抽出部203、静脈密度抽出部204を有する構成とすることができる。
【0088】
以上のように、本実施の形態の指静脈認証装置100によれば、指置き状態の判定の際に、輪郭の傾きの情報に静脈の濃淡の情報を加えて判断することにより、タッチセンサー1301などの部品を設けることなく、より正確な指置き状態の判定を行うことができる。なお、本実施の形態の指静脈認証装置100についても、実施の形態1の図12と同様に、フィットネスジムなどのロッカー1201に組み込んで実装することができる。
【0089】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0090】
例えば、実施の形態1では輪郭の情報に基づいて指置き状態を判定し、実施の形態2では、輪郭の情報とタッチセンサーの情報とに基づいて指置き状態を判定し、実施の形態3では、輪郭の情報と静脈の濃淡の情報とに基づいて指置き状態を判定しているが、指置き状態を判定するための情報の組み合わせはこれらに限らず、静脈の傾きや位置、密度などの情報も含めて適宜組み合わせて用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、指の静脈パターンによって個人認証を行う指静脈認証装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0092】
100…指静脈認証装置、101…撮像部、102…赤外光発光部、103…メモリ、104…外部I/F部、110…プロセッサ、121…音声出力部、122…映像出力部、123…タッチセンサー部、
201…輪郭抽出部、202…静脈濃淡抽出部、203…静脈位置抽出部、204…静脈密度抽出部、210…指画像処理部、220…センサー検出部、230…指置き状態判定部、240…指情報登録部、250…指静脈認証部、260…制御部、
301…撮像窓、310…指、
401…ミラー、
501、601、602、701〜706…輪郭、
1201…ロッカー、
1301…タッチセンサー、
1701、1801、1802、1901〜1906…輪郭、
1711、1811、1812、1911〜1916…静脈。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が配置した指に赤外光を照射する赤外光発光部と、
前記赤外光発光部により前記指に照射された赤外光に基づいて前記指の静脈画像を取得する撮像部と、
前記撮像部によって取得された前記静脈画像から静脈パターンの情報を抽出して照合用テンプレートとしてメモリに登録する指情報登録部と、
前記撮像部によって取得された前記静脈画像から静脈パターンの情報を抽出し、前記照合用テンプレートと照合して個人認証を行う指静脈認証部とを有する指静脈認証装置であって、
前記撮像部によって取得された前記静脈画像から前記指の特徴データを抽出する指画像処理部と、
前記指画像処理部によって抽出された前記指の特徴データに基づいて、前記撮像部で前記静脈画像を取得した際の前記指の配置状態の良否を判定する指置き状態判定部と、を有し、
前記指画像処理部は、前記撮像部によって取得された前記静脈画像から前記指の静脈の密度の情報を前記指の特徴データとして抽出する静脈密度抽出部を有し、
前記指置き状態判定部は、前記静脈密度抽出部によって抽出された前記指の静脈の密度に基づいて、前記撮像部で前記静脈画像を取得した際の前記指の配置状態の良否を判定することを特徴とする指静脈認証装置。
【請求項2】
請求項1に記載の指静脈認証装置において、
前記指画像処理部は、前記撮像部によって取得された前記静脈画像から前記指の輪郭を検出し、検出した前記輪郭の傾きおよび形状の情報を前記指の特徴データとして抽出する輪郭抽出部を有し、
前記指置き状態判定部は、前記静脈密度抽出部によって抽出された前記指の静脈の密度および前記輪郭抽出部によって抽出された前記輪郭の傾きおよび形状に基づいて、前記撮像部で前記静脈画像を取得した際の前記指の配置状態の良否を判定することを特徴とする指静脈認証装置。
【請求項3】
請求項1に記載の指静脈認証装置において、
前記指が配置される位置の指先部分と指元部分とを含む2箇所以上に設けられたタッチセンサー部と、
前記各タッチセンサー部に前記指が接触していることを検出するセンサー検出部とを有し、
前記指置き状態判定部は、前記静脈密度抽出部によって抽出された前記指の静脈の密度および前記センサー検出部の検出結果に基づいて、前記撮像部で前記静脈画像を取得した際の前記指の配置状態の良否を判定することを特徴とする指静脈認証装置。
【請求項4】
請求項1に記載の指静脈認証装置において、
前記指画像処理部は、前記撮像部によって取得された前記静脈画像から前記指の静脈の濃淡の情報を前記指の特徴データとして抽出する静脈濃淡抽出部を有し、
前記指置き状態判定部は、前記静脈密度抽出部によって抽出された前記指の静脈の密度および前記静脈濃淡抽出部によって抽出された前記指の静脈の濃淡に基づいて、前記撮像部で前記静脈画像を取得した際の前記指の配置状態の良否を判定することを特徴とする指静脈認証装置。
【請求項5】
請求項1に記載の指静脈認証装置において、
前記指画像処理部は、前記撮像部によって取得された前記静脈画像から前記指の静脈の傾きおよび位置の情報を前記指の特徴データとして抽出する静脈位置抽出部を有し、
前記指置き状態判定部は、前記静脈密度抽出部によって抽出された前記指の静脈の密度および前記静脈位置抽出部によって抽出された前記指の静脈の傾きおよび位置に基づいて、前記撮像部で前記静脈画像を取得した際の前記指の配置状態の良否を判定することを特徴とする指静脈認証装置。
【請求項6】
請求項1に記載の指静脈認証装置において、
前記指画像処理部は、
前記撮像部によって取得された前記静脈画像から前記指の輪郭を検出し、検出した前記輪郭の傾きおよび形状の情報を前記指の特徴データとして抽出する輪郭抽出部と、
前記撮像部によって取得された前記静脈画像から前記指の静脈の濃淡の情報を前記指の特徴データとして抽出する静脈濃淡抽出部と、
前記撮像部によって取得された前記静脈画像から前記指の静脈の傾きおよび位置の情報を前記指の特徴データとして抽出する静脈位置抽出部と、
前記静脈密度抽出部とのうち、少なくとも前記静脈密度抽出部を含むいずれか1つ以上の抽出部を有し、
前記指置き状態判定部は、前記各抽出部によって抽出された前記指の特徴データに基づいて、前記撮像部で前記静脈画像を取得した際の前記指の配置状態の良否を判定することを特徴とする指静脈認証装置。
【請求項7】
請求項1に記載の指静脈認証装置において、
前記各タッチセンサー部の全てに前記指が接触したことを前記センサー検出部にて検出したことをトリガとして、前記指の静脈パターンの情報を登録する一連の処理もしくは前記指の静脈パターンによる個人認証を行う一連の処理を開始することを特徴とする指静脈認証装置。
【請求項8】
請求項1に記載の指静脈認証装置において、
前記指情報登録部が、前記撮像部によって取得された前記静脈画像から抽出した前記静脈パターンの情報を前記照合用テンプレートとして登録する際に、
前記指置き状態判定部は、前記指の配置状態の良否を判定するために前記指画像処理部にて抽出された前記指の特徴データを前記メモリに記憶しておき、
前記指静脈認証部が、前記撮像部によって取得された前記静脈画像から静脈パターンの情報を抽出し、前記照合用テンプレートと照合して個人認証を行う際に、
前記指置き状態判定部は、前記メモリに記憶しておいた前記指の特徴データと、前記指画像処理部にて抽出された情報とを比較して、前記撮像部で前記静脈画像を取得した際の前記指の配置状態の良否を判定することを特徴とする指静脈認証装置。
【請求項9】
請求項1に記載の指静脈認証装置において、
前記利用者が前記指を配置する際に、前記指を配置した状態の映像を前記利用者に提示する映像出力部を有することを特徴とする指静脈認証装置。
【請求項10】
請求項1に記載の指静脈認証装置において、
前記利用者が前記指を配置する際に、前記指の置き方、該指静脈認証装置の使用方法、注意事項のうちいずれか1つ以上を前記利用者に提示する映像出力部および/または音声出力部を有することを特徴とする指静脈認証装置。
【請求項11】
請求項1に記載の指静脈認証装置において、
前記指置き状態判定部での判定結果が否である場合に、前記映像出力部および/または前記音声出力部によって前記利用者に前記指の置き直しを指示することを特徴とする指静脈認証装置。
【請求項12】
請求項11に記載の指静脈認証装置において、
前記映像出力部および/または前記音声出力部によって前記利用者に前記指の置き直しを指示し、さらに前記撮像部により再度前記静脈画像を取得することを特徴とする指静脈認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−252714(P2012−252714A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−168239(P2012−168239)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2008−168826(P2008−168826)の分割
【原出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】