説明

挟み防止具

【課題】 重量物を人力によって運搬し、又は解体する際に、バランスを崩す等によって重量物を手の指で保持したまま床や台等に接触しても、重量物と台等との間に手の指を挟む虞のない挟み防止具を提供する。
【解決手段】 重量物10を手20で持って運搬し、又は手で支えて解体する際に、重量物10と床や台15等との間に手20の指を挟むのを防止するための挟み防止具1であって、内側に手20の指を挿入可能な空間7を有する保護部2を備え、該保護部2は、前記重量物10による荷重を受けても、前記空間7を初期形状に保つ強度を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挟み防止具に関し、特に、重量物を人力によって運搬したり、重量物である機器の解体作業時に重量物を手で支えるような場合等に、重量物と台等との間に手の指を挟むのを防止する機能を備えた挟み防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
床や台等の上部に載置されている重量物を人力によって運搬して他の位置に移動させるような場合、重量物の周囲に複数の作業者を配置し、各作業者が重量物に手の指を引っ掛けて重量物を持ち上げ、この状態で複数の作業者が他の位置まで移動することにより、重量物を他の位置に移動させている。また、重量物である機器の解体作業時に重量物を手で支えるような場合には、各作業者が重量物である機器を手で支えながら解体を行っている。
【0003】
このような人力によって重量物を運搬して他の位置に移動させたり、重量物である機器を手で支えながら解体を行うような場合、バランスを崩す等によって重量物を手の指で保持したまま重量物が床や台等に接触すると、重量物と床や台等との間に指を挟んでしまう虞がある。このため、最大の注意を払って重量物を運搬したり、重量物を支えながら解体を行わなければならない。また、重量物が精密機器の場合には、バランスを崩す等によって重量物が床や台等に接触した場合に、その衝撃によって精度に狂いが生じる虞がある。
【0004】
重量物を運搬する際に、指にかかる荷重を軽減させるように構成した指ガードが特許文献1に記載されている。この指ガードは、伸縮性を有する材質からなる環状をなすものであって、この指ガードの内側に手の指を挿入し、この状態で手の指で重量物を持つことにより、手の指に加わる重量物による荷重を緩和させることができ、手の指に痛みが発生するのを防止することができるというものである。
【特許文献1】実開平7−21717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような構成の指ガードにあっては、手の指に作用する重量物による荷重を緩和させることはできるものの、バランスを崩す等によって重量物が床や台等に接触した場合に、床や台等と重量物との間に手の指を挟んでしまう虞がある。また、重量物が精密機器の場合には、バランスを崩す等によって重量物が床や台等に接触した場合に、精度に狂いが生じる虞がある。
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、重量物を人力によって他の位置に運搬して移動させたり、重量物である機器を手で支えながら解体するような場合に、バランスを崩す等によって重量物が床や台等に接触しても、重量物と台等との間に手の指を挟む虞がなく、また、重量物が精密機器の場合に、バランスを崩す等によって重量物が床や台等に接触しても、精度に狂いが生じる虞がない、挟み防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、重量物を手で持って運搬し、又は重量物を手で支えて解体する際に、重量物と床や台等との間に手の指を挟むのを防止するための挟み防止具であって、 内側に手の指を挿入可能な空間を有する保護部を備え、該保護部は、前記重量物による荷重を受けても、前記空間を初期形状に保つ強度を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明の挟み防止具によれば、保護部の空間内に手の指を挿入し、この状態で保護具を介して重量物に手の指を引っ掛けることにより、重量物を人力によって運搬して移動させ、又は重量物を手で支えて解体することができる。
この場合、バランスを崩す等によって重量物が床や台等に接触しても、手の指は保護部によって保護され、しかも、保護部は重量物による荷重を受けても空間の初期形状を保つ強度を有しているので、手の指が重量物と床や台等との間で挟まれるようなことはなく、重量物の運搬時及び解体時の安全性を確保することができる。
【0009】
また、本発明は、前記保護部の表面には、弾性体からなる緩衝部が設けられていることを特徴とすることとしてもよい。
【0010】
本発明の挟み防止具によれば、バランスを崩す等によって重量物が床や台等に接触した場合に、保護部の緩衝部によって重量物に加わる衝撃が緩衝されることになるので、重量物が精密機器である場合に、精度に狂いが生じるのを防止できる。
【0011】
さらに、本発明は、前記保護部の前記重量物側の面又は前記重量物と反対側の面の少なくとも何れか一方には、コロが設けられていることを特徴とすることとしてもよい。
【0012】
本発明の挟み防止具によれば、重量物を運搬して他の位置に移動させ、又は重量物を解体する場合に、保護部の重量物側の面又は重量物と反対側の面の少なくとも何れか一方に設けられているコロにより、重量物を所定の位置に容易に位置決めすることが可能となる。
【0013】
さらに、本発明は、前記保護部は、手の各指を一緒に挿入し、親指を別個に挿入する手袋状、又は手の各指を個別に挿入する手袋状に形成されていることを特徴とすることとしてもよい。
【0014】
本発明の挟み防止具によれば、手袋状の保護部の空間内に手の各指を一緒に挿入し、又は、手袋状の保護部の空間内に手の各指を挿入することにより、手の指が保護部によって保護され、重量物と床や台等との間で手の指が挟まれるのを防止でき、重量物の運搬時及び解体時の安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように、本発明の挟み防止具によれば、保護部の空間内に手の指を挿入し、この状態で保護部を介して重量物に手の指を引っ掛けることにより、重量物を人力によって運搬して他の位置に移動させ、又は重量物を手で支えながら解体することができる。
この場合、バランスを崩す等によって重量物を手の指で保持したまま床や台等に接触しても、手の指は保護部によって保護されており、しかも、保護部は、重量物による荷重を受けても空間の初期形状を保つ強度を有しているので、手の指が重量物と床や台等との間で挟まれるようなことはなく、重量物の運搬時及び解体時の安全性を確保することができる。
また、バランスを崩す等によって重量物を手の指で保持したまま床や台等に接触しても、保護部の緩衝部によって重量物に加わる衝撃を緩和させることができるので、重量物が精密機器である場合に、精度に狂いが生じるのを防止できる。
さらに、保護部は、手の各指を一緒に挿入する手袋状、又は手の各指を個別に挿入する手袋状に形成されているので、保護部を手の各指へ容易に装着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1には、本発明による挟み防止具の第1の実施の形態が示されていて、この挟み防止具1は、重量物10を人力によって運搬して他の位置に移動させ、又は重量物10である機器を解体する場合に、バランスを崩す等によって重量物10を手の指で保持したまま床や台15等に接触しても、重量物10と床や台15等との間に手20の指を挟むのを防止することができる機能を備えたものであって、手20の各指を保護する保護部2を備えている。
【0017】
保護部2は、所定の厚みの上板3と、上板3の下方に所定の間隔をおいて平行に設けられる所定の厚みの下板4と、上板3と下板4との間の両側端を鉛直方向に連結する所定の厚みの互いに平行をなす一対の側板5、6とからなる角環状をなすものであって、内側に四角形断面の空間7が設けられている。
【0018】
保護部2の空間7は、掌を上方に向けた状態で手20の各指(親指、人差し指、中指、薬指、及び小指)を挿入可能、かつ手20の各指(親指、人差し指、中指、薬指、及び小指)の全体を覆う大きさ(長さ、幅、高さ)に形成され、この保護部2の空間7内に手20の各指を挿入することにより、手20の各指に挟み防止具1が取り付けられる。
この場合、保護部2の先端は、閉塞してもよいし、開放させてもよい(本実施の形態においては、保護部2の先端を閉塞している)。
なお、空間7内に、親指は必ずしも挿入する必要はなく、必要に応じて挿入すればよい。
【0019】
保護部2は、重量物10と重量物10が載置される床や台15等との間に介装させたときに、重量物10からの荷重を受けても、空間7の初期形状を保ち続けることができる強度を有している。このような強度を保護部2が有していることにより、重量物10を手20で持って運搬し、又は重量物10を手20で支えながら解体する場合に、バランスを崩す等によって重量物10を手20の指で保持したまま床や台15等に接触しても、手20の各指は保護部2によって保護されることになるので、重量物10と床や台15等との間に手20の各指が挟まれるのを防止できる。
【0020】
保護部2に所定の強度を付与するには、保護部2を構成する上板3、下板4、両側板5、6を鉄板等の金属材で形成する、上板3、下板4、両側板5、6の厚みを所定の寸法に設定する等の方法が挙げられる。
【0021】
保護部2の上板3の表面3a、下板4の表面4aには、周知のゴム等の弾性体からなる所定の厚みの緩衝部8がそれぞれ設けられ、バランスを崩す等によって重量物10を手20の指で保持したまま床や台15等に接触したときに、この緩衝部8によって重量物10に加わる衝撃を緩衝させることができ、この保護部2の緩衝部8により、重量物10が精密機器である場合に、精度に狂いが生じるのを防止できる。
なお、緩衝部8に複数の空隙(図示せず)を設けて、緩衝機能を更に高めるように構成してもよい。
【0022】
挟み防止具1の保護部2の上板3の表面3aの緩衝部8は、重量物10に作用する衝撃を緩衝させる緩衝機能を有するとともに、挟み防止具1を手20の指に装着して重量物10を持ち上げる場合に、重量物10との間に滑りが生じるのを防止する滑り止め機能も兼ね備えている。
【0023】
保護部2の上板3の表面3a又は下板4の表面4aの少なくとも何れか一方に、丸棒状又は円筒状の複数のコロ(図示せず)を回転可能に設けてもよい。このようなコロを設けることにより、重量物10を初期の位置から他の位置に移動させ、又は重量物10を解体する場合に、重量物10を他の位置の所定の位置に容易に位置決めすることができる。
【0024】
重量物10が磁性体からなる場合には、保護部2の上板3及び下板4の一部に磁石(図示せず)を設け、この磁石を介して保護部2を重量物10の下面に磁着させるように構成してもよい。
【0025】
そして、上記のように構成した挟み防止具1を用いて重量物10を手20で持って運搬して、初期の位置から他の位置に移動させ、又は重量物10を手20で支えながら解体する場合、重量物10を囲むように複数の作業者を配置し、各作業者の手20に挟み防止具1を装着し、挟み防止具1の保護部2の空間7内に各作業者の手20の各指を挿入する。
【0026】
そして、この状態で各作業者が手20の各指を挟み防止具1を介して重量物10の下部に引っ掛けて重量物10を持ち上げ、この状態で各作業者が他の位置まで移動することにより、重量物10を初期の位置から他の位置に運搬して移動させることができる。又は、重量物10を手20で支えながら解体することができる。
【0027】
この場合、バランスを崩す等によって重量物10を手20の指で保持したまま床や台15等に接触しても、各作業者の手20には挟み防止具1が装着されており、この挟み防止具1の保護部2が重量物10と床や台15等との間に介在し、しかも、この保護部2は、重量物10からの荷重を受けても内側の空間7の初期形状を保持し続けることができる強度を有しているので、重量物10と床や台15等との間に各作業者の手20の各指が挟まれるようなことはなく、重量物10の運搬時及び解体時の安全性を確保することができる。
【0028】
また、保護部2の上板3の表面3a及び下板4の表面4aには、ゴム等の弾性体からなる緩衝部8がそれぞれ設けられているので、バランスを崩す等によって重量物10を手20の指で保持したまま床や台15等に接触しても、この緩衝部8によって重量物10に加わる衝撃を緩衝させることができるので、重量物10が精密機器であっても、精度に狂いが生じるようなことはない。
【0029】
さらに、重量物10を他の位置に移動させ、又は重量物10を解体する場合に、保護部2の上板3の表面3a及び下板4の表面4aの何れか一方に複数のコロを回転可能に設けておくことにより、重量物10を所定の位置に容易に位置決めすることができる。
【0030】
図2には、本発明による挟み防止具の第2の実施の形態が示されていて、この挟み防止具1は、保護部2を、手20の各指を個別に挿入する手袋状に形成したものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと同様である。
【0031】
そして、本実施の形態による挟み防止具1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様に、重量物10の運搬時及び解体時に、バランスを崩す等によって重量物10を手の指で保持したまま床や台15等に接触しても、各作業者の手20には挟み防止具1が装着されており、この挟み防止具1の保護部2が重量物10と床や台15等との間に介在し、しかも、この保護部2は、重量物10からの荷重を受けても内側の空間7の初期形状を保持し続けることができる強度を有しているので、重量物10と床や台15等との間に各作業者の手20の各指が挟まれるようなことはなく、重量物10の運搬時及び解体時の安全性を確保することができる。
【0032】
また、保護部2の上板3の表面3a及び下板4の表面4aには、ゴム等の弾性体からなる緩衝部8がそれぞれ設けられているので、バランスを崩す等によって重量物10を手の指で保持したまま床や台15等に接触しても、この緩衝部8によって重量物10に加わる衝撃を緩衝させることができるので、重量物10が精密機器であっても、精度に狂いが生じるようなことはない。
【0033】
なお、図示はしないが、保護部2を、手20の4本の指(人差し指、中指、薬指、及び小指)を一緒に挿入し、かつ、親指を別個に挿入する手袋状に形成してもよいものであり、その場合にも、第2の実施の形態に示すものと同様の作用効果を奏するのは勿論のことである。
【0034】
なお、前記各実施の形態においては、重量物10を複数の作業者によって運搬及び解体する場合について説明したが、一人の作業者によって重量物10を運搬及び解体する場合であっても、同様の作用効果を奏することは勿論のことである。
【0035】
また、前記各実施の形態においては、保護部2の空間7内に手の指を挿入したときに、手の指の全周が保護部2によって囲まれるように構成したが、所定の強度を確保できる場合には、保護部を側面が開口するU形状に形成してもよい。
【0036】
さらに、前記各実施の形態においては、重量物10を運搬及び解体する場合について説明したが、運搬及び解体に限らず、重量物10を手で支える周知の各種の態様に本発明を適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による挟み防止具の第1の実施の形態を示した概略図である。
【図2】本発明による挟み防止具の第2の実施の形態を示した概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1 挟み防止具
2 保護部
3 上板
3a 表面
4 下板
4a 表面
5 側板
6 側板
7 空間
8 緩衝部
10 重量物
15 床や台
20 手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を手で持って運搬し、又は重量物を手で支えて解体する際に、重量物と床や台等との間に手の指を挟むのを防止するための挟み防止具であって、
内側に手の指を挿入可能な空間を有する保護部を備え、該保護部は、前記重量物による荷重を受けても、前記空間を初期形状に保つ強度を有していることを特徴とする挟み防止具。
【請求項2】
前記保護部の表面には、弾性体からなる緩衝部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の挟み防止具。
【請求項3】
前記保護部の前記重量物側の面又は前記重量物と反対側の面の少なくとも何れか一方には、コロが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の挟み防止具。
【請求項4】
前記保護部は、手の各指を一緒に挿入し、親指を別個に挿入する手袋状、又は手の各指を個別に挿入する手袋状に形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の挟み防止具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−53475(P2010−53475A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218640(P2008−218640)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】