説明

振れ補正機能付き撮像装置

【課題】シフト方式を利用して振れ補正を行った場合でも、画像の周辺部での補正残差を小さくすることのできる振れ補正機能付き撮像装置を提供すること。
【解決手段】振れ補正機能付き撮像装置100は、撮像光学系1と、撮像光学系1の光軸L上に配置された撮像素子2と、撮像素子2での撮像データに基づいて画像データを生成する画像処理部3と、撮像領域を光軸Lに直交する方向にシフトさせて振れ補正を行う振れ補正手段4とを有している。撮像光学系1にはfθ光学系が用いられており、画像処理部3は、撮像領域の画像データとして、fθ系の画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話機等の振れ補正機能付き撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやカメラ付き携帯電話機等の撮像装置は、ユーザーの手振れ等の振れによる撮影画像の乱れを抑制するために、振れ補正機能を備えた振れ補正機能付き撮像装置として構成されている。より具体的には、振れ補正機能付き撮像装置では、振れの検出結果に基づいて、撮像光学系の光軸に直交する方向への移動、撮像素子の光軸に直交する方向への移動、画像処理部で生成する画像データの光軸に直交する方向への移動等を利用したシフト方式の振れの補正が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、撮像装置において、撮像光学系としては、撮像光学系の焦点距離をfとし、物体高さと撮像光学系の光軸とが成す角度をθw[ラジアン]とし、像高さをHとしたとき、像高さHが、f・tanθwとなるftanθ系の光学系が用いられている。かかるftanθ系の光学系によれば、被写体距離が同じ位置での物体においては、物体高さに比例した像高が得られる。このため、四角い升目を撮影すると、四角い升目を忠実に画像として再現できるので、撮像性能に優れているという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−64870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、振れは角度方向が変化するのに対して、シフト方式による振れ補正は、光軸に直交する方向へのシフトを利用したものであるため、振れ補正後の画像に歪が発生することを防止することができない。特に、撮像光学系としてftanθ系の光学系を用いた場合、画像の中心(レンズ光軸中心)の画像ズレを補正するようにシフトした結果、画像の周辺部(像高さが大の領域)では、画像のズレ量が中心付近と大きく異なるため、補正残差が大きく残るという問題点がある。
【0006】
より具体的には以下の通りである。まず、図4(a)に示すように、物体距離をS、物体高さy、物体高さと光軸とがなす角度をθw、像距離をS′、像高さをhとすると、下式の関係が成り立つ。
物体高さy=S・tanθw ・・式(1)
像高さh=S′・tanθw ・・式(2)
【0007】
ここで、図4(b)に示すように、手振れ角度がθの場合、中心物体の像位置hc1、および物体高さyに対応する像高さの位置hm1は、撮像素子の中心を基準にして、以下のように表される。
hc1=S′・tanθ ・・式(3)
hm1=S′・tan(θw+θ) ・・式(4)
【0008】
次に、図4(c)に示すように手振れ補正を行うと、手振れ補正による像のシフト量は、中心画像のフレ補正とするのでhc1そのものである。従って、手振れ補正後において、中心物体の像高さの位置hc2、および物体高さyに対応する像高さの位置hm2は、撮像素子の中心を基準にして、以下の式の通りとなる。
hc2=hc1−hc1=0 ・・式(5)
hm2=hm1−hc1=S′・tan(θw+θ)−S′・tanθ ・・式(6)
【0009】
それ故、手振れ補正後における物体高さyに対応する像高さの位置hm2は、手振れがないときの像高h=S′・tanθwと異なり、この差が補正残差となる。
【0010】
例えば、焦点距離fが4.00mm、開口径Dが1.43mm、開口半径Rは0.72mm、F値FNo(f/D)が2.8、NA(R/f)が0.18、θwが30°で、θが1°で算出すると、以下の結果となる。
h=−2.309mm
θw+θ=31.00°
hc1=−0.070mm
hm1=−2.403mm
シフト量=0.070mm
hc2=0
hm2=−2.334mm
振れ補正前後における像高さの変化率=1.049%
【0011】
このように、シフト方式を利用して振れ補正を行った場合、画像の周辺部では補正残差が大きく残ってしまう。このため、シフト方式を採用した場合、周辺部分の補正残差の影響はやむを得ないとして受け入れるとの対応、周辺部分の補正残差の影響を低減するために手振れ補正量を小さくするとの対応(上式ではθを小さくするとの対応)、あるいは、周辺部分の補正残差の影響を低減するために最大画角を小さくするとの対応(上式ではθwを小さくするとの対応)等が必要であり、画角が大きい撮像装置で、大きな手振れ補正角度を有し、かつ、補正残差の発生しない手振れ補正機能付き撮像装置は実現できないことになる。
【0012】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、シフト方式を利用して振れ補正を行った場合でも、画像の周辺部での補正残差を小さくすることのできる振れ補正機能付き撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、撮像光学系と、該撮像光学系の光軸上に配置された撮像素子と、該撮像素子での撮像データに基づいて画像データを生成する画像処理部と、撮像領域を前記光軸に直交する方向にシフトさせて振れ補正を行う振れ補正手段と、を有する振れ補正機能付き撮像装置であって、前記画像処理部は、前記撮像領域の画像データとして、fθ系の画像データを生成することを特徴とする。
【0014】
本発明では、画像処理部において、前記撮像領域の画像データとして、fθ系の画像データを生成し、かかるfθ系の画像データでは、振れが発生した際、シフト方式を利用して画像の中心を補正したときに周辺部分も同時に補正される。従って、シフト方式を利用して振れ補正を行った場合でも、画像の周辺部での補正残差を小さくすることができる。それ故、画角が大きい撮像装置で、大きな手振れ補正角度を有し、かつ、補正残差が小さい手振れ補正機能付き撮像装置を実現することができる。
【0015】
本発明において、前記撮像光学系として、fθ系の光学系を用いた構成を採用することができる。かかる構成によれば、画像処理部は、撮像領域の画像データとして、fθ系の画像データを容易に生成することができる。
【0016】
本発明においては、前記撮像光学系として、完全なfθ系以外のfθ系の光学系を用い、前記画像処理部は、前記撮像データとしてfθ系の撮像データを取得した後、当該撮像データを座標変換して、前記撮像領域の画像データとして、fθ系の画像データを生成してもよい。かかる構成によれば、撮像光学系として、完全なfθ系の光学系を用いない場合でも、画像処理によって、完全なfθ系の光学系を用いた場合と同様な結果を得ることができる。
【0017】
本発明においては、前記撮像光学系として、fθ系以外の光学系を用い、前記画像処理部は、前記撮像データとして、fθ系以外の撮像データを取得した後、当該撮像データを座標変換して、前記撮像領域の画像データとして、fθ系の画像データを生成してもよい。かかる構成によれば、例えば、振れ補正を行わない場合には、画像データとして、ftanθ系の画像データを生成し、振れ補正を行うときのみ、画像データとして、fθ系の画像データを生成する等の構成を採用することができる。
【0018】
本発明において、前記画像処理部は、さらに、振れ補正の処理後、fθ系の画像データを座標変換してftanθ系の表示データを出力してもよい。かかる構成によれば、補正残差を解消しつつ、物体を忠実に画像として再現することができる。
【0019】
本発明において、前記振れ補正手段は、振れの検出結果に基づいて、前記撮像光学系の前記光軸に直交する方向への移動、前記撮像素子の前記光軸に直交する方向への移動、および前記画像処理部で生成する前記画像データの前記光軸に直交する方向への移動のうちの少なくとも1つの移動により、前記撮像領域を前記光軸に直交する方向にシフトさせる構成を採用することができる。かかる構成によれば、撮像光学系と撮像素子を揺動させて振れ補正を行うスイング方式に比して、構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、画像処理部において、前記撮像領域の画像データとして、fθ系の画像データを生成し、かかるfθ系の画像データでは、振れが発生した際、シフト方式を利用して画像の中心を補正した際、周辺部分も補正される。従って、シフト方式を利用して振れ補正を行った場合でも、画像の周辺部での補正残差を小さくすることができる。それ故、画角が大きい撮像装置で、大きな手振れ補正角度を有し、かつ、補正残差が小さい手振れ補正機能付き撮像装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付き撮像装置を搭載した機器の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付き撮像装置における手振れ補正の影響を示す説明図である。
【図3】本発明において、fθ系として定義した範囲内における物体高さと像高さとの関係を示す説明図である。
【図4】従来の振れ補正機能付き撮像装置における手振れ補正の影響を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、互いに直交する3方向を各々X軸、Y軸、Z軸とし、光軸に沿う方向をZ軸とする。また、以下の説明では、各方向の振れのうち、X軸周りの回転は、いわゆるピッチング(縦揺れ)に相当し、Y軸周りの回転は、いわゆるヨーイング(横揺れ)に相当し、Z軸周りの回転は、いわゆるローリングに相当する。また、X軸の一方側には+Xを付し、他方側には−Xを付し、Y軸の一方側には+Yを付し、他方側には−Yを付し、Z軸の一方側(被写体側とは反対側)には+Zを付し、他方側(被写体側)には−Zを付してある。
【0023】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付き撮像装置を搭載した機器の説明図であり、図1(a)、(b)は、手振れの説明図、および手振れをシフト方式で補正する様子を示す説明図である。
【0024】
図1に示す振れ補正機能付き撮像装置100は、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話機等の光学機器1000に搭載される。かかる光学機器1000において、振れ補正機能付き撮像装置100は、撮像光学系1と、撮像光学系の光軸L上に配置された撮像素子2と、撮像素子2での撮像データに基づいて画像データを生成する画像処理部3とを有しており、画像処理部3は、生成した画像データを画像データとして、光学機器1000に設けられた記録装置等に出力する。
【0025】
また、光学機器1000において、撮影時にピッチングやヨーイング等の手振れ等の振れが発生すると、撮像画像に乱れが発生する。そこで、本形態の振れ補正機能付き撮像装置100では、ジャイロスコープ等の振れ検出センサによる検出結果、あるいは画像処理部3での画像変化の監視結果等に基づいて、シフト方式による振れ補正を行う振れ補正手段4が設けられている。本形態において、振れ補正手段4は、振れの検出結果に基づいて、撮像光学系1の光軸Lに直交する方向への移動(図1(b)の実線S1参照)、撮像素子2の光軸Lに直交する方向への移動(図1(b)の一点鎖線S2参照)、および画像処理部3で生成する画像データの光軸Lに直交する方向への移動(図1(b)の二点鎖線S3参照)のうちの少なくとも1つの移動を行わせることにより、撮像対象領域を光軸Lに直交する方向にシフトさせ、画像データに対する振れの影響を防止する。その際のシフト量については、フィードバック制御あるいはオープン制御のいずれであっても本発明を適用することができる。
【0026】
以下、振れ補正手段4が、振れの検出結果に基づいて、撮像光学系1を光軸Lに直交する方向に移動させる場合を例に本形態の特徴等を説明するが、振れ補正手段4が、撮像素子2の光軸Lに直交する方向に移動させる構成や、画像処理部3で生成する画像データを光軸Lに直交する方向に移動させる構成を採用した場合でも、本発明を適用することができる。
【0027】
(fθ系の定義)
図2は、本発明の実施の形態1に係る振れ補正機能付き撮像装置における手振れ補正の影響を示す説明図であり、図2(a)、(b)、(c)は、手振れが発生する前の状態を示す説明図、手振れが発生した状態を示す説明図、手振れを補正した後の状態を示す説明図である。図3は、本発明においてfθ系として定義した範囲内における物体高さと像高さとの関係を示す説明図である。
【0028】
本形態において、画像処理部3は、振れ補正後の画像データとして、fθ系の画像データを生成する。より具体的には、本形態では、撮像光学系1として、fθ系の光学系を用いる。ここで、fθ系の光学系としては、完全なfθ系でなくても、以下に定義において、ftanθ系からみてfθ系に近いものであればよい。すなわち、完全なfθ系の場合、下式を満たす。
H=f・θw
f=撮像光学系の焦点距離
H=像高さ
θw=物体高さと光軸とが成す角度[ラジアン]
但し、本形態では、以下の式を満たす場合も、fθ系と定義する。
abs(H−(f・θw))≦abs(H−(f・tanθw)) ・・式(7)
abs=絶対値の演算
【0029】
さらに厳密には、完全なfθ系を用いた場合に対して、完全なfθ系の条件と完全なftanθ系の条件との差の±1/2に相当する範囲にある構成をfθ系と定義する。かかる条件は、以下の式で示すことができる。
【0030】
完全なftanθ系の場合、図4を参照して説明したように、物体距離をS、物体高さをy、物体高さと光軸とがなす角度をθw、像距離をS′、像高さをhとすると、以下の関係にある。
物体高さy=S・tanθw ・・式(8)
像高さh=S′・tanθw ・・式(9)
式(8)、式(9)より、
h=(S′/S)・y ・・式(10)
【0031】
これに対して、完全なfθ系の場合、図2に示すように、物体距離をS、物体高さをY、物体高さと光軸とがなす角度をθw、像距離をS′、像高さをHとすると、以下の関係にある。
物体高さY=S・tanθw ・・式(11)
像高さH=S′・θw ・・式(12)
式(11)、式(12)より、
H=S′・tan-1(Y/S)・・式(13)
【0032】
なお、物体高さのyとYは同じものである。
従って、
式(10)、式(13)で計算されるh、Hを用いて表すと、本発明では、H±((h−H)/2)に相当する範囲をfθ系とする。
【0033】
このような範囲を設定した場合において、物体高さと像高さとは、図3に示すように表わされる。図3において、実線L0は、完全なftanθ系の場合の物体高さと像高さとの関係を示し、実線L1は、完全なfθ系の場合の物体高さと像高さとの関係を示し、実線L11は、fθ系の上限における物体高さと像高さとの関係を示し、実線L12は、fθ系の下限における物体高さと像高さとの関係を示している。
【0034】
それ故、本発明における「fθ系」とは、実線L11と実線L12とに挟まれた条件範囲を満たす構成そ意味する。また、「完全なfθ系」とは、実線L1で示す条件を満たす構成を意味する。従って、「完全なfθ系以外のfθ系」とは、実線L11と実線L12とに挟まれた条件範囲を満たす構成のうち、実線L11で示す条件を満たす構成を除く構成を意味する。一方、「fθ系以外」とは、実線L11と実線L12とに挟まれた条件範囲うを満たさない構成を意味する。
【0035】
(手振れ補正時の補正残差)
本形態の振れ補正機能付き撮像装置100においては、撮像光学系1として、fθ系の光学系を用いたため、いかに説明するように、手振れ補正の際、シフト方向を利用して画像の中心を補正したとき画像の周辺部も同時に補正される。従って、シフト方式を利用でして振れ補正を行った場合でも、画像の周辺部での補正残差を小さくすることができる。
なお、以下の説明では、原理がわかりやすいように、図3に実線L1で示した完全なfθ系の光学系を用いた場合を説明する。
【0036】
まず、本形態では、撮像光学系1として、fθ系の光学系を用いたため、図2(a)にしめすように、物体距離をS、物体高さをY、物体高さと光軸とがなす角度をθw、像距離をS′、像高さをHとすると、以下の関係となる。
物体高さY=S・tanθw ・・式(14)
像高さH=S′・θw ・・式(15)
【0037】
かかるfθ系の光学系においては、周辺部分では中心部に比して画像の歪み(歪曲収差、ディストーション)がftanθ系の光学系を用いた場合より大きく、例えば、物体高さと光軸とがなす角度θwが35°である場合、像高さの歪みは−13%程度となる。
【0038】
ここで、図2(b)に示すように、手振れ角度がθの場合、中心物体の像位置Hc1、および物体高さyに対応する像高さの位置Hm1は、撮像素子2の中心を基準にして、以下の式の通りとなる。
Hc1=S′・θ ・・式(16)
Hm1=S′・(θw+θ) ・・式(17)
【0039】
次に、図2(c)に示すように手振れ補正を行うと、手振れ補正による像のシフト量は、中心画像のフレ補正とするのでHc1そのものである。従って、手振れ補正後において、中心物体の象高さの位置Hc2、および物体高さYに対応する像高さの位置Hm2は、撮像素子の中心を基準にして、以下の式の通りとなる。
Hc2=Hc1−Hc1=0 ・・式(18)
Hm2=Hm1−Hc1=S′・(θw+θ)−S′・θ=S′・θw ・・式(19)
それ故、手振れ補正後における物体高さYに対応する像高さの位置Hm2は、手振れがないときの像高さH=S′・θwと等しく、補正残差が発生しない。
【0040】
例えば、焦点距離fが4.00mm、開口径Dが1.43mm、開口半径Rは0.72mm、F値FNo(f/D)が2.8、NA(R/f)が0.18、θwが30°で、θが1°で算出すると、以下の結果となり、シフト方式を利用して振れ補正を行った場合でも、画像の周辺部では補正残差が残らない。
H=−2.094mm
θw+θ=31.00°
Hc1=−0.070mm
Hm1=−2.164
シフト量=0.070mm
Hc2=0
Hm2=−2.094
振れ補正前後における像高さの変化率=0%
【0041】
なお、θwが30°以外の角度であっても、振れ補正前後における像高さの変化率は0%である。また、図3に実線L1で示した完全なfθ系の光学系に代えて、図3に実線L11、L12で示した完全なfθ系以外のfθ系の光学系を用いた場合には、シフト方式を利用して振れ補正を行った場合でも、画像の周辺部では補正残差が小さい。
【0042】
(本形態の主な効果)
このように本形態では、シフト方式による振れ補正を採用する一方、撮像光学系1としてfθ系の光学系を用いているため、ftanθ系の光学系を用いた場合と違って、画像の周辺部では補正残差が残らないか、補正残差が極めて小さい。従って、本形態によれば、周辺部分の補正残差の影響はやむを得ないとして受け入れる必要がなく、周辺部分の補正残差の影響を低減するために手振れ補正量を小さくするとの対応(上式ではθを小さくするとの対応)や、周辺部分の補正残差の影響を低減するために最大画角を小さくするとの対応(上式ではθwを小さくするとの対応)等も不要である。それ故、画角が大きい撮像装置で、大きな手振れ補正角度を有し、かつ、補正残差が小さい手振れ補正機能付き撮像装置100を実現することができる。
【0043】
また、本形態では、撮像光学系1としてfθ系の光学系を用いたため、画像処理部3において、座標変換等の処理を行なわなくても、撮像領域の画像データとして、fθ系の画像データを生成することができ、画像の周辺部では補正残差が残らないか、補正残差が極めて小さい。
【0044】
[実施の形態2]
上記実施の形態1では、撮像光学系1としてfθ系の光学系を用いたが、撮像光学系1としてfθ系以外の光学系を用いた場合、例えば、撮像光学系1としてftanθ系の光学系を用いた場合、画像処理部3において、撮像素子2から撮像データとしてftanθ系の撮像データを取得した後、撮像データを座標変換して、撮像領域の画像データとして、fθ系の画像データを生成してもよい。
【0045】
この場合、画像データとして、常時、fθ系の画像データを生成してもよいし、振れ補正を行わない場合には、画像データとして、ftanθ系の画像データを生成し、振れ補正を行うときのみ、画像データとして、fθ系の画像データを生成する等の構成を採用してもよい。
【0046】
[実施の形態3]
上記実施形態の1では、撮像光学系1としてfθ系の光学系を用い、画像処理部3において、座標変換を行なわずに、fθ系の画像データを生成したが、撮像光学系1として、完全なfθ系ではないfθ系の光学系を用い、さらに、画像処理部3において、撮像素子2から出力された撮像データを座標変換して、撮像領域の画像データとして、fθ系の画像データを生成してもよい。かかる構成によれば、図3に実線L1で示した完全なfθ系の光学系に代えて、図3に実線L11、L12で示した完全なfθ系以外のfθ系の光学系を用いた場合でも、画像の周辺部では補正残差が残らない構成とすることができる。
【0047】
[実施の形態4]
上記実施の形態1〜3では、画像処理部3において生成したfθ系の画像データで振れ補正を行い、fθ系の画像データを表示データとして用いる構成であったが、画像処理部3において、振れ補正を行った後に、fθ系の画像データを座標変換してftanθ系の表示データを生成し、かかるftanθ系の表示データを出力してもよい。かかる構成によれば、θ系の画像データで振れ補正を行った際に像の周辺部での補正残差が残らない状態、あるいは補正残差が小さい状態にある。このため、振れ補正を行った後に、fθ系の画像データを座標変換してftanθ系の表示データを生成すれば、fθ系の画像では、周辺部分が中心付近に対して歪曲し、見栄えがよくないという欠点を解消しつつ、画像の周辺部での補正残差が残らない構成、あるいは補正残差が小さい構成とすることができる。また、撮像対象や撮像条件等によって、画像処理部3において生成したfθ系の画像データを表示データとして用いるか、fθ系の画像データを座標変換して得たftanθ系の表示データを用いるかを切り替え可能なように構成してもよい。
【0048】
[他の実施の形態]
本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニット100は、携帯電話機やデジタルカメラ等の他、冷蔵庫等、一定間隔で振動を有する装置内に固定し、遠隔操作可能にしておくことで、外出先、たとえば買い物の際に、冷蔵庫内部の情報を得ることができるサービスに用いることもできる。かかるサービスでは、姿勢安定化装置付きのカメラシステムであるため、冷蔵庫の振動があっても安定な画像を送信可能である。また、本装置を児童、学生のカバン、ランドセルあるいは帽子等の、通学時に装着するデバイスに固定してもよい。この場合、一定間隔で、周囲の様子を撮影し、あらかじめ定めたサーバへ画像を転送すると、この画像を保護者等が、遠隔地において観察することで、子供の安全を確保することができる。かかる用途では、カメラを意識することなく移動時の振動があっても鮮明な画像を撮影することができる。また、カメラモジュールのほかにGPSを搭載すれば、対象者の位置を同時に取得することも可能となり、万が一の事故の発生時には、場所と状況の確認が瞬時に行える。さらに、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニット100を自動車において前方が撮影可能な位置に搭載すれば、ドライブレコーダーとして用いることができる。また、本発明を適用した振れ補正機能付きの撮像装置100を自動車において前方が撮影可能な位置に搭載して、一定間隔で自動的に周辺の画像を撮影し、決められたサーバに自動転送してもよい。また、カーナビゲーションの道路交通情報通信システム等の渋滞情報と連動させて、この画像を配信することで、渋滞の状況をより詳細に提供することができる。かかるサービスによれば、自動車搭載のドライブレコーダーと同様に事故発生時等の状況を、意図せずに通りがかった第三者が記録し状況の検分に役立てることもできる。また、自動車の振動に影響されることなく鮮明な画像を取得できる。かかる用途の場合、電源をオンにすると、制御部に指令信号が出力され、かかる指令信号に基づいて、振れ制御が開始される。
【符号の説明】
【0049】
1 撮像光学系
2 撮像素子
3 画像処理部
4 振れ補正手段
100 振れ補正機能付撮像装置
1000 光学機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系と、該撮像光学系の光軸上に配置された撮像素子と、該撮像素子での撮像データに基づいて画像データを生成する画像処理部と、撮像領域を前記光軸に直交する方向にシフトさせて振れ補正を行う振れ補正手段と、を有する振れ補正機能付き撮像装置であって、
前記画像処理部は、前記撮像領域の画像データとして、fθ系の画像データを生成することを特徴とする振れ補正機能付き撮像装置。
【請求項2】
前記撮像光学系として、fθ系の光学系を用いることを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き撮像装置。
【請求項3】
前記撮像光学系として、完全なfθ系以外のfθ系の光学系を用い、
前記画像処理部は、前記撮像データとしてfθ系の撮像データを取得した後、当該撮像データを座標変換して、前記撮像領域の画像データとして、fθ系の画像データを生成することを特徴とする請求項1または2に記載の振れ補正機能付き撮像装置。
【請求項4】
前記撮像光学系として、fθ系以外の光学系を用い、
前記画像処理部は、前記撮像データとしてfθ系以外の撮像データを取得した後、当該撮像データを座標変換して、前記撮像領域の画像データとして、fθ系の画像データを生成することを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き撮像装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、さらに、振れ補正の処理後、fθ系の画像データを座標変換してftanθ系の表示データを出力することを特徴とする特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の振れ補正機能付き撮像装置。
【請求項6】
前記振れ補正手段は、振れの検出結果に基づいて、前記撮像光学系の前記光軸に直交する方向への移動、前記撮像素子の前記光軸に直交する方向への移動、および前記画像処理部で生成する前記画像データの前記光軸に直交する方向への移動のうちの少なくとも1つの移動により、前記撮像領域を前記光軸に直交する方向にシフトさせることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の振れ補正機能付き撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113962(P2013−113962A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258686(P2011−258686)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】