説明

振出口付容器

【課題】内容物を取り出して喫食するまでの一連の動作が簡便で、見た目の喫食動作もスマートな食品容器を提供する。
【解決手段】振出口付容器のオーバーキャップ30に設けた開閉フラップ35は、振出口31を閉じる閉位置と、振出口を露出させた状態でオーバーキャップに係止される開位置との間で回動可能である。開位置において、開閉フラップ35は、オーバーキャップ上面よりも容器内側へ退避した凹所36に係止される。振出口31は、オーバーキャップの天壁面に拡がる天壁開口部31aと、周壁面に拡がる周壁開口部31bとからなり、周壁開口部を天壁開口部よりも幅狭にすることで振出量調整機構を構成している。オーバーキャップ30を回転させて、下方に位置するシート材20の適当な破り線に対して振出口31を位置合わせし、振出口31から指を挿入して、破り線を押圧破断する。これで、容器は喫食可能な状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレート菓子その他の食品等を収容する振出口付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を収容し、上部開口をシート状の蓋材で封止した容器は、従来から種々知られており、例えば、特許文献1にもその一例が開示されている。シート状蓋材にはハーフカットが形成されていて、内容物を喫食する際には、指でハーフカット部を押し破り、これにより形成される開口から内容物を取り出す。
【0003】
一方、喫食時における見た目の清潔感あるいはスマート感を考えるとき、シート状蓋を覆う樹脂製のオーバーキャップを設け、当該オーバーキャップに設けた振出口から内容物を取り出すことが考えられる。その場合、オーバーキャップの下方に位置するシート状蓋は、予め破り開けておく必要がある。
【0004】
このような振出口付きのオーバーキャップを備えた容器を提供する場合、これを購入した消費者が、喫食時に、オーバーキャップを一旦容器本体から取り外し、シート状蓋を破り開け、再度オーバーキャップを取り付けて喫食するのであれば、それら一連の作業は面倒であり、この種容器の手軽さが減殺される。
【0005】
【特許文献1】実開平6−3826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて創案されたものであり、その目的は、オーバーキャップを備えた食品容器であって、内容物を取り出して喫食するまでの一連の動作が簡便で、見た目の喫食動作もスマートな食品容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の振出口付容器は、次のような特徴を備える。すなわち、上部開口をシート材で封止してなる容器本体に、当該シート材を覆うオーバーキャップを取り付けてなり、シート材を破ってオーバーキャップの振出口から内容物を取り出す振出口付容器である。
オーバーキャップは、振出口と開閉フラップを備える。
開閉フラップは、「振出口を閉じる閉位置」と「振出口を露出させた状態でオーバーキャップに係止される開位置」との間で回動可能である。そして、開位置において、開閉フラップは、オーバーキャップ上面よりも容器内側へ退避した凹所に位置する。
振出口は、「オーバーキャップの天壁面に拡がる天壁開口部」と「周壁面に拡がる周壁開口部」とからなり、周壁開口部を天壁開口部よりも幅狭にすることで振出量調整機構を構成している。
シート材には、開封用の破り線が形成されている。この破り線は、「シート材の周縁に沿って延在する周縁部」と「周縁部の両端からS字状に蛇行して容器内方へ延在するS字部」と「互いに近づきながらさらに容器内方へと延在する内方延在部」とで構成されている。
上記開封用の破り線の本数は特に限定されない。例えば、1つだけ形成してもよいし、均等の角度間隔を置いて3つ形成してもよい。
【発明の効果】
【0008】
上記構成を備えた本発明の振出口付容器においては、オーバーキャップに設けた開閉フラップは、開位置において、オーバーキャップ上面よりも容器内側へ退避した凹所に位置する。これは、容器本体を手に持って、消費者が自らの口を振出口に当てがって喫食する際に好都合である。つまり、消費者の鼻頭の逃げ位置が確保され、喫食時に鼻頭をオーバーキャップ上面にぶつけることなく、快適に喫食できる。見た目にもスマートである。
【0009】
振出口を構成する周壁開口部を天壁開口部よりも幅狭にすることで振出量調整機構を構成しているので、消費者は、喫食時の振出量を調整して、快適に喫食できる。また、振り出される内容物が大きく飛び跳ねるのを抑止できるので、誤燕(すなわち、飛び跳ねた内容物を誤って喉に詰めること)を有効に防止することもできる。
【0010】
また、オーバーキャップの開閉フラップを開けて現れる振出口から、指を押し込む等して、シート材上の破り線を押し破ることができる。破り線が等間隔で3つ形成されている場合には、適宜の破り線を1つ選択して、これを押し破ればよい。つまり、オーバーキャップを取り外すことなく回転スライドさせて、破り線を1つ適宜選択し、簡単にシート材を破断開封できる(なお、オーバーキャップを取り外して、シート材上の破り線を押し破ることも勿論可能である)。
しかも、シート材に形成した各破り線は、「周縁部」と「S字部」と「内方延在部」とで構成しているので、容器が不用意に落下した場合における耐破断性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0012】
≪容器の全体構成≫
図1は、本発明の一実施形態に係る振出口付容器を示す分解斜視図である。振出口付容器は、上部の開口をシート材20で封止してなる容器本体10と、シート材20を覆うようにして容器本体10に取り付けられるオーバーキャップ30とから構成される。
容器本体10内に、チョコレートその他の食品類が収容されていて、シート材20には破断開封用の破り線21、22、23が形成されている。詳しくは後述するようにして、オーバーキャップの振出口31から内容物を取り出し喫食する。
【0013】
≪オーバーキャップの構成≫
オーバーキャップ30は、振出口31と開閉フラップ35を備える。図2(a)〜(c)に示したように、開閉フラップ35は、振出口を閉じる閉位置と、振出口を露出させた状態でオーバーキャップに係止される開位置との間で回動可能である。
図2(a)は、オーバーキャップ35が閉位置にある状態を、図2(c)は、オーバーキャップ35が開位置にある状態を、それぞれ示している。図2(b)は、その中間状態を示している。
図2(c)の開位置において、開閉フラップ35は、オーバーキャップ上面よりも容器内側へ退避した凹所36に位置する。凹所を規定する壁面に係止リブ37が形成されている。係止リブ37は図中には1つしか現れないが、対向壁面にも同様の係止リブが形成されていて、2つの係止リブ37間に挟持されて、開閉フラップ35は、図2(c)の開位置に係止される。
なお、図示していないが、同様の機構を利用して、開閉フラップ35は、図2(a)の閉位置に係止される。
【0014】
≪振出量調整機構による誤燕防止≫
図2(b)に部分的に拡大して示したように、振出口31は、天壁開口部31aと周壁開口部31bとで構成されている。すなわち、天壁開口部31aは、オーバーキャップ30の天壁面30aに拡がる部分で、周壁開口部31bはオーバーキャップ30の周壁面30bに拡がる部分である。両者が一体となって、1つの振出口31を構成する。
そして、周壁開口部31bの全幅(Wb)を、天壁開口部31aの全幅(Wa)よりも小さく構成するとともに、天壁開口部31aとの連結部に天壁面30aを残した形状としている(図2(b)中に30a'で示した部分)。その結果、周壁開口部31bは、周壁面30bを部分的に切り欠いた如き構成となり、これにより消費者は、喫食時の振出量を調整することができる。また、振り出される内容物が大きく飛び跳ねるのを抑止できるので、誤燕(すなわち、飛び跳ねた内容物を誤って喉に詰めること)を有効に防止できる。
【0015】
≪シート材に形成した破り線≫
図3は、シート材に形成した破断開封用の破り線21、22、23を示している。均等の角度間隔を置いて、3つの破り線が形成されている(なお、破り線は、必ずしも複数設ける必要はなく、例えば、破り線を1本だけ形成して、この1本の破り線にオーバーキャップの振出口を回転位置合わせさせるような構成としてもよい)。
各破り線の構成は同一なので、破り線21についてのみ説明する。
破り線21は、「シート材20の周縁に沿って延在する周縁部21a」と「周縁部21aの両端からS字状に蛇行して容器内方へ延在するS字部21b」と「互いに近づきながらさらに容器内方へと延在する内方延在部21c」とで構成されている。
【0016】
1つの破り線21を、異なる3つの部分「周縁部21a」「S字部21b」「内方延在部21c」で構成しているのは、以下に説明する通り、不用意な落下時における耐破断性を高める(強度を高める)意味がある。
(a)周縁部21a
周縁部21aは、シート材20の周縁に沿って延在している。したがって、容器が落下して床面から上方へと容器フランジ部に衝撃が加わる場合、周縁部21aには、圧縮力が作用する(矢印a)。つまり、周縁部21aを引き裂く方向に大きな力が作用することはない。
このように、周縁部21aは、破断が生じにくい箇所であるため、緩やかにカーブするほぼ直線状のミシン目状とし、ミシン目間の刃止メの幅を比較的大きくすることで破断が生じ難くなる工夫をしている。
(b)S字部21b
容器の落下時に、S字部21bに対しては、両外側へと引き裂くように力が作用する(矢印b)。この部分を直線状に構成すると、ここで破断が生じ易くなる。これを防止するため、S字状に蛇行するミシン目とし、破断が生じ難くなる工夫をしている。
(c)内方延在部21c
内方延在部21cは、S字部21bから破断の進行を、容器中心側へと導く案内線の役割を果たす。
【0017】
≪破り線の構成例≫
破り線は、シート材20を上方から指等で押圧した場合に、これに沿ってシート材20を破断開封させるための線である。破り線の具体的構成は問わないが、他の部分に比べて強度が弱くなっており、押圧下で、当該線に沿って破断が進むものであればよい。
内容物の性質に応じて、ハーフカット、ミシン目等を採用することができる。内容物が湿気を嫌い、したがって密封する必要のある場合は、貫通孔の存在しないハーフカットを採用する。
【0018】
例えば、シート材として、外表面から「基材層」「アルミ層」「ヒートシール層」の3層を積層構造として有する場合、最も外側の「基材層」のみを貫通するハーフカットを形成する。これにより、シート材全体としては密封性を損なわずに、破り線が構成される。
密封性が必要ない場合には、シート材全体を貫通する貫通切目を断続的に形成してなるミシン目を、破り線として採用してもよい。
【0019】
≪使用態様≫
次に、本発明の振出口付容器の喫食時における使用態様を説明する。
(1)まず、開閉フラップ35を開ける。そこに現れた振出口31から、内部のシート材表面を見ながら、オーバーキャップ30を回転させて、適当な破り線21、22、23(3つのうちの適当な1つ)に対して振出口31を位置合わせする。
(2)振出口31から指を挿入して、破り線を押圧破断し、シート材20に破断開口部を形成する。このため、各破り線21、22、23は、振出口31の輪郭にほぼ等しい形状をもって形成しておくことが好ましい。
(3)内容物を振出口31から取り出して食べる。このとき、開閉フラップ35は、必ずしも凹所36内に固定する必要はないが、容器本体10を手で持ち振出口31を口に当てがい喫食する場合には、凹所36内に退避固定しておくことが好ましい。
【0020】
≪喫食時のスマートさと清潔感≫
本発明の振出口付容器で喫食する場合、オーバーキャップを取り外し、シート材上の破り線を押し破って喫食することや、あるいは、振出口31から掌に内容物を振り出して、これを口へと運ぶことも可能である。しかし、本発明では、容器本体10を手で持って振出口31を口に当てがって喫食するスタイルを主眼において、振出口付容器を構成している。
例えば、パソコン操作をしながらチョコレート菓子を食べる場合、チョコで手を汚すと作業が中断されるので、容器本体を手で持って内容物を直接口内に振り出す方が好都合である。しかも、見た目においても、まるでドリンクを飲んでいるかのようなスマートなスタイルで喫食できる。手が汚れないので、清潔である。
【0021】
≪凹所36の利点≫
このような喫食スタイルを考えると、図2(c)に示した開位置にあるとき、開閉フラップ35がオーバーキャップ上面よりも容器内側へ退避した凹所36内に固定されることは有利である。これにより、消費者の鼻頭の逃げ位置が確保され、喫食時に鼻頭をオーバーキャップ上面にぶつけることなく、快適に喫食できる。
開閉フラップ35が開位置に固定されている場合に露出する内面は、これをフラット面35aとして構成することが好ましい。これにより、当該内面に鼻頭が接触した場合でも不快感を与えることがない。また、図示の例では、フラット面35aの端縁を肉厚にして補強リブ38を構成し、強度を高めている。
【0022】
≪邪魔板≫
オーバーキャップ30の内面には、振り出される内容物の停滞を防止する邪魔板を設けることが好ましい。この邪魔板は、天壁開口部31aを囲む壁状体であって、オーバーキャップ内面からシート材20の表面近傍にまで突出する。
このような邪魔板を設けることで、振出口31から出た内容物が「シート材20」と「オーバーキャップ30」との間の空間に入り込んで停滞するのを防止でき、これにより、喫食動作がよりスマートなものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る振出口付容器を示す分解斜視図。
【図2】図1の振出口付容器に取り付けるオーバーキャップの動作を説明する図。
【図3】図1の振出口付容器に使用するシート材を説明する平面図。
【符号の説明】
【0024】
10 容器本体
20 シート材
21、22、23 破り線
21a 周縁部
21b S字部
21c 内方延在部
30 オーバーキャップ
30a 天壁面
30b 周壁面
31 振出口
31a 天壁開口部
31b 周壁開口部
35 開閉フラップ
36 凹所
37 係止リブ
38 補強リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口をシート材(20)で封止してなる容器本体(10)に、当該シート材を覆うオーバーキャップ(30)を取り付けてなり、シート材を破ってオーバーキャップの振出口(31)から内容物を取り出す振出口付容器であって、
オーバーキャップ(30)は、振出口(31)と開閉フラップ(35)を備え、
開閉フラップ(35)は、振出口を閉じる閉位置と、振出口を露出させた状態でオーバーキャップに係止される開位置との間で回動可能であって、開位置において、開閉フラップ(35)は、オーバーキャップ上面よりも容器内側へ退避した凹所(36)に位置し、
振出口(31)は、オーバーキャップの天壁面に拡がる天壁開口部(31a)と、周壁面に拡がる周壁開口部(31b)とからなり、周壁開口部を天壁開口部よりも幅狭にすることで振出量調整機構を構成しており、
シート材(20)には、開封用の破り線が形成されていて、当該破り線は、シート材の周縁に沿って延在する周縁部(21a)と、周縁部の両端からS字状に蛇行して容器内方へ延在するS字部(21b)と、互いに近づきながらさらに容器内方へと延在する内方延在部(21c)と、で構成されたことを特徴とする、振出口付容器。
【請求項2】
上記開封用の破り線(21、22、23)は、均等の角度間隔を置いて3つ形成されていることを特徴とする、請求項1記載の振出口付容器。
【請求項3】
上記オーバーキャップ(30)の内面において、天壁開口部(31a)を囲み、シート材(20)の表面近傍にまで突出する邪魔板を形成したことを特徴とする、請求項1または2記載の振出口付容器。
【請求項4】
上記開閉フラップ(35)は、開位置において露出する内面がフラット面(35a)で構成されていて、当該フラット面の端縁に補強リブ(38)を設けたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の振出口付容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−154939(P2009−154939A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336991(P2007−336991)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】