説明

振動ナイフを有するミクロトームのナイフホルダ

【課題】簡単な方法で異なる種類のナイフを保持すること、ナイフの交換を簡単に実行すること、及びナイフの交換の際の怪我の危険を簡単な操作で最小化することが可能な、振動ナイフを有するミクロトームのナイフホルダの提供。
【解決手段】振動ナイフを有するミクロトームのナイフホルダであって、支持要素と、該支持要素に対し運動可能に構成された挟扼要素とを含んで構成されると共に、前記支持要素が前記ナイフのための支持面を有し、かつ前記挟扼要素が挟扼面を有するよう構成され、前記支持面と前記挟扼面が互いに対し平行に配向されるよう構成されたナイフホルダにおいて、前記支持面(2a)と前記挟扼面(4a)は、前記ナイフ(3)を挟扼するために所定距離で互いに対し位置調整可能に構成されかつ使用されるナイフの厚さに適合可能に構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、振動ナイフを有するミクロトームのナイフホルダに関し、とりわけ、支持要素と、該支持要素に対し運動可能に構成された挟扼要素とを含んで構成されると共に、前記支持要素が前記ナイフのための支持面を有し、かつ前記挟扼要素が挟扼面を有するよう構成され、前記支持面と前記挟扼面が互いに対し平行に配向されるよう構成されたナイフホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
MICROM社は、その価格表67頁に、種々の刃(ナイフ)のための4つの異なるアダプタを記載している。しかしながら、利用者は、使用される刃(ナイフ)に応じて、異なるアダプタを購入しなければならない。更に、異なるナイフホルダを組み立てる場合、ミクロトームの調整を要することもあり得る。
【0003】
Vibratome社は、その使用説明書に、両刃の剃刀刃を2つに割り、それらを、細長片状使い捨て刃(ナイフ)として、同じホルダに固定する必要があることに関して詳細に記載している(第9頁左欄;第1節参照)。
【0004】
【非特許文献1】MICROM; Preisliste 2003/2004、67頁
【非特許文献2】VIBRATOME; operating Instructions Vibratome Series 3000 Plus- Tissue Sectioning System; Rev. Nov. 2001; 9頁左欄第1パラグラフ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
振動ナイフを有するミクロトームには、種々異なるナイフが使用される。これらのナイフは、多くの場合、大きさと厚さが夫々異なる。例えば、使い捨て剃刀刃の厚さは凡そ0.1mmであり、サファイアナイフ(Saphirmesser)の厚さは凡そ1.2mmである。剃刀刃の厚さは薄いので、切断力が生成する際にナイフの刃先(切断部)を安定化する(安定的ないし強固に保持する)ために、挟扼装置は、該ナイフの刃先(切断部)のできるだけ近くに到達していなければならない。従来は、ナイフホルダを交換することで、これに対処してきた。しかしながら、この方法の欠点は、既に、上記背景技術の欄において記載したとおりである。この方法には、対向する2つの刃を有する剃刀刃を使用する場合、剃刀刃をその中央部で2つに割らなければならないというの更なる欠点もある。
【0006】
それゆえ、本発明の課題は、簡単な方法で異なる種類のナイフを保持すること、ナイフの交換を簡単に実行すること、及びナイフの交換の際の怪我の危険を簡単な操作で最小化することが可能な、振動ナイフを有するミクロトームのナイフホルダを創製することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一視点により、支持要素と、該支持要素に対し運動可能に構成された挟扼要素とを含んで構成されると共に、前記支持要素が前記ナイフのための支持面を有し、かつ前記挟扼要素が挟扼面を有するよう構成され、前記支持面と前記挟扼面が互いに対し平行に配向されるよう構成されたナイフホルダが提供される。このナイフホルダにおいて、前記支持面と前記挟扼面は、前記ナイフを挟扼するために所定距離において互いに対し位置調整可能に構成されかつ使用されるナイフの厚さに適合可能に構成されることを特徴とする(形態1・基本構成)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の独立請求項1により、上記課題に対応した効果が達成される。即ち、本発明のナイフホルダは、簡単な方法で異なる種類のナイフを保持すること、ナイフの交換を簡単に実行すること、及びナイフの交換の際の怪我の危険を簡単な操作で最小化することを可能にする。
更に、各従属請求項により、付加的な効果が夫々達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を示す。なお、形態2〜8は従属請求項の対象でもある。
(形態1) 上掲基本構成参照。
(形態2) 上記形態1のナイフホルダにおいて、互いに対し位置調整可能な前記所定距離は、0.1mm〜1.5mmであることが好ましい。
(形態3) 上記形態1のナイフホルダにおいて、前記支持要素は、前記ミクロトームに固定的に結合されること、及び前記挟扼要素は、前記支持要素に対して運動可能に構成されることが好ましい。
(形態4) 上記形態3のナイフホルダにおいて、前記挟扼要素を前記支持要素に沿って運動可能にする偏心機構を有すること、及び前記偏心機構は、前記挟扼面を前記支持面に向って押圧することにより前記ナイフを挟扼するよう構成されることが好ましい。
(形態5) 上記形態1〜4のナイフホルダにおいて、前記ナイフは、一方の側部にただ1つの刃先(切断部)を有するように(片刃ナイフとして)構成されることが好ましい。
(形態6) 上記形態1〜4のナイフホルダにおいて、前記ナイフは、両方の側部に夫々1つの刃先(切断部)を有するよう(両刃ナイフとして)構成されることが好ましい。
(形態7) 上記形態6のナイフホルダにおいて、前記ナイフは、前記2つの刃先の間に形成される切欠部を有する剃刀刃であることが好ましい。
(形態8) 上記形態7のナイフホルダにおいて、前記支持面は、前記剃刀刃の前記切欠部に適合するよう構成された受容部を有し、前記剃刀刃は、ナイフホルダが開放されているとき、前記受容部が前記切欠部を介して(嵌入ないし貫通して)係合(係止)するよう嵌合可能に構成されることが好ましい。
【0010】
本発明は、支持面と挟扼面が、ナイフを挟扼するために、互いに対し例えば0.1mm〜1.5mmの距離で位置調整可能に構成されているので、異なった厚さのナイフに適応できるという利点を有する。
【0011】
支持要素はミクロトームに固定的に結合され、かつ挟扼要素は支持要素に対し運動可能に構成される。
【0012】
ナイフホルダは、挟扼要素を支持要素に沿って運動可能にすると共に、挟扼面を支持面に向って押圧することによりナイフを挟扼するよう構成された偏心機構(Exzenter)を有する。
【0013】
以下に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。なお、以下の実施例は発明の理解の容易化のためのものであり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加・置換等の適用を排除することは意図していない。また、特許請求の範囲に付した図面参照符号も発明の理解の容易化のためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。これらの点に関しては補正・訂正後においても同様である。
【実施例】
【0014】
図1は、両側に刃先(切断部)3a及び3bを有するナイフ(両刃ナイフ)3が挟扼(締付保持)されている状態にあるナイフホルダ1の一例の断面図である。ナイフホルダ1は、支持要素2と、該支持要素2に対し相対的に運動可能に構成された挟扼要素4とを含んで構成される。支持要素2は、ミクロトームの振動機構10に結合されている。長穴5aに遊嵌するよう挿通され、挟扼要素4に螺合するネジ5によって、支持要素2と挟扼要素4は、(相対的に運動可能に)互いに(一体的に)結合されている。挟扼要素4は、支持要素2に対し二重矢印A−Aの方向に運動可能に構成されている。ナイフ3は、(処理(切断)対象物の)水平(面)12に対し所定角度11をなして傾斜されるように、ナイフホルダ1に固定されている。
【0015】
挟扼要素4は、支持要素2に対し平行に摺動可能に構成されている(二重矢印A−Aの方向)。この摺動は、偏心機構(Exzenter)6によって実行することができる。偏心機構6は偏心カム6aと偏心軸6bを有し、偏心軸6bは支持要素2の受け孔に回転可能に嵌合されており、偏心カム6aは挟扼要素4の対応カム受け面6cに係合されている。なお、この偏心機構6の代わりに、該偏心機構6と同等の作用効果を有する例えばクサビ形調整機構ないしスクリュウ等の任意の部材ないし機構を使用することも可能である。
【0016】
図2は、両刃ナイフ3のための挟扼が解除されている(挟扼機構が開放されている)状態にあるナイフホルダ1の一例の断面図である。上述のとおり、ナイフホルダ1は、支持要素2と、該支持要素2に対し運動可能に構成された挟扼要素4とを含んで構成される。支持要素2はナイフ3のための支持面2aを有し、挟扼要素4は挟扼面4aを有する。支持面2aと挟扼面4aは、互いに対し平行に配向されるように形成されている。ナイフ厚は、この装置では、クリティカルではない(即ち、調整可能であり、特定の厚さに限定されない)。偏心機構6は、例えば凡そ1.5mmまでの厚さを有するナイフを挟扼することができるように構成されている。ネジ5は、支持要素2と挟扼要素4とを(相対的に運動可能に)互いに(一体的に)結合し、偏心機構6が工具(不図示)によって回転(操作)されたとき、(互いに対する)平行な摺動を保証するよう、ねじ5の頭部の裏面が摺動面として構成されている。支持面2aと挟扼面4aは、ナイフ3の挟扼のために、例えば0.1mm〜1.5mmの間の所定距離で互いに対し位置調整可能に構成されている。図2に示したようなナイフホルダ1が開放されている状態では、例えば剃刀刃のような2つの刃先(切断部)を有するナイフ3は、支持要素2の受容部32(図3参照)に嵌合される。使用されるナイフは、通常、厚さ0.1mm〜1.5mmであるが、本発明のナイフホルダは、この範囲の厚さ以外の厚さを有するナイフを挟扼することが可能なように構成されることができ、かつ特許請求の範囲の保護範囲に含まれている。
なお、図2において挟扼面4aは、受容部32の片側にのみ片持ち式に延び先細に楔状に延在するアーム状受け部2bを有する。アーム状受け部2bの基部は曲面2cとして形成され、ナイフ3の切欠部31を片側から挿通可能なよう構成されている。片持ち式アーム状受け部は、刃の取付が容易である。
【0017】
図3は、本発明のナイフホルダにおいて使用可能な剃刀刃30の一例の平面図を、受容部32の上面と共に示す。剃刀刃30は、両側に刃先3a及び3bを有する。更に、剃刀刃30は、工具における固定又は組立に利用される中央(中央部に形成された)切欠部31を有する。本発明のこの実施例では、支持要素2は、剃刀刃30の位置固定に利用される受容部32を有する。受容部32は、ナイフの厚さの最大値に対応する高さの突起状を成す。本実施例では支持面2aは、図2の場合とは異なり、受容部32の両側に延在して形成されている。なお、この場合、支持面2aは、ナイフの切欠部を受容部32に挿通の後、図示外の係止具(クランプ具等)により支持要素2本体に固定される。
【0018】
図4は、完成されたナイフホルダ1の一例の3次元図(斜視図)である。ナイフホルダ1には、剃刀刃30が支持及び挟扼されている。なお、符号33は、完成されたナイフホルダ1をミクロトームに固定するための固定用ホールを示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】両刃ナイフを(挟扼)保持している本発明のナイフホルダの一例の断面図。
【図2】両刃ナイフのための挟扼が解除されている様子を示している本発明のナイフホルダの一例の断面図。
【図3】本発明のナイフホルダにおいて使用可能な剃刀刃の一例の平面図。
【図4】剃刀刃を挟扼している様子を示している本発明のナイフホルダの一例の斜視図。
【符号の説明】
【0020】
1 ナイフホルダ
2 支持要素
2a 支持面(両刃用支持面)
3 ナイフ
3a 刃先(切断部)
3b 刃先(切断部)
4 挟扼要素
4a 挟扼面
5 ネジ
6 偏心機構
6a 偏心カム
6b 偏心軸
6c カム受け面
10 振動機構
11 所定角度
12 水平(面)
30 剃刀刃
31 切欠部
32 受容部
33 固定用ホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動ナイフを有するミクロトームのナイフホルダであって、
支持要素と、該支持要素に対し運動可能に構成された挟扼要素とを含んで構成されると共に、
前記支持要素が前記ナイフのための支持面を有し、かつ前記挟扼要素が挟扼面を有するよう構成され、前記支持面と前記挟扼面が互いに対し平行に配向されるよう構成されたナイフホルダにおいて、
前記支持面(2a)と前記挟扼面(4a)は、前記ナイフ(3)を挟扼するために所定距離で互いに対し位置調整可能に構成されかつ使用されるナイフの厚さに適合可能に構成されること
を特徴とするナイフホルダ。
【請求項2】
互いに対し位置調整可能な前記所定距離は、0.1mm〜1.5mmであること
を特徴とする請求項1に記載のナイフホルダ。
【請求項3】
前記支持要素(2)は、前記ミクロトームに固定的に結合されること、及び
前記挟扼要素(4)は、前記支持要素(2)に対して運動可能に構成されること
を特徴とする請求項1に記載のナイフホルダ。
【請求項4】
前記挟扼要素(4)を前記支持要素(2)に沿って運動可能にする偏心機構(6)を有すること、及び
前記偏心機構(6)は、前記挟扼面(4a)を前記支持面(2a)に向って押圧することにより前記ナイフ(3)を挟扼するよう構成されること
を特徴とする請求項3に記載のナイフホルダ。
【請求項5】
前記ナイフ(3)は、一方の側部にただ1つの刃先を有するように構成されること
を特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のナイフホルダ。
【請求項6】
前記ナイフ(3)は、両方の側部に夫々1つの刃先(3a、3b)を有するよう構成されること
を特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のナイフホルダ。
【請求項7】
前記ナイフ(3)は、前記2つの刃先(3a、3b)の間に形成される切欠部(31)を有する剃刀刃(30)であること
を特徴とする請求項6に記載のナイフホルダ。
【請求項8】
前記支持面(2a)は、前記剃刀刃(30)の前記切欠部(31)に適合するよう構成された受容部(32)を有し、前記剃刀刃(30)は、ナイフホルダが開放されているとき、前記受容部(32)が前記切欠部(31)を介して係合するよう嵌合可能に構成されること
を特徴とする請求項7に記載のナイフホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−127641(P2007−127641A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295214(P2006−295214)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(501129941)ライカ ミクロジュステーメ ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】