説明

振動付与装置

【課題】生体の対象部位に対して多様な刺激を与えることのできる振動付与装置を提供する。
【解決手段】この振動付与装置は、生体の皮膚に接触する補助体22を含むシリンダ21と、振動を発生する出力部30とを備える振動付与部20を含む。そして、出力部30は、物質の表面粗さと関連付けられる25〜40Hzの正弦波を重畳した重畳波A、および物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの正弦波B、および物質のコンプライアンスと関連付けられる0.4〜7Hzの正弦波Cの振動を個別に対象部位に付与する。また、重畳波Aおよび正弦波Bおよび正弦波Cの少なくとも2つを重畳した振動を対象部位に付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の対象部位に振動を与える振動付与部を含む振動付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記振動付与装置としてマッサージ器が知られている。例えば、特許文献1に記載のマッサージ器は、生体の対象部位に衝打動作を繰り返すことにより刺激を付与し、血流の改善を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−111520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年ではマッサージ器に対して、生体の対象部位に多様な刺激を与えることが期待されている。しかし、特許文献1のマッサージ器は対象部位に対して衝打の繰り返しを行うものであるため、測定部位および被施術者に対して単純な押圧感を付与することしかできない。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、生体の対象部位に対して多様な刺激を与えることのできる振動付与装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段について記載する。
本発明は、生体の対象部位に振動を与える振動付与部を含む振動付与装置において、前記振動付与部は、対象部位に接触する接触部と、振動を発生する振動部とを含み、前記振動部は、物理的性質のパラメータとしての表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数の少なくとも1つに関連付けられる0.4〜250Hzの範囲内の周波数の振動を発生するものであり、物質の表面粗さと関連付けられる25〜40Hzの正弦波を重畳した重畳波A、および物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの正弦波B、および物質のコンプライアンスと関連付けられる0.4〜7Hzの正弦波Cの振動を個別に対象部位に付与するものであり、前記重畳波Aおよび前記正弦波Bおよび前記正弦波Cの少なくとも2つを重畳した振動を対象部位に付与するものであることを特徴としている。
【0007】
本発明は、前記振動付与部は、対象部位と前記振動部との間に空間を形成するものであり、前記振動部により発生させた振動を同空間の媒質の疎密の変化により前記接触部に伝えるものであることを特徴としている。
【0008】
本発明は、前記振動付与部は、物質の表面粗さと関連付けられる25〜40Hzの前記重畳波Aの強度を変化させることにより、対象部位が受ける表面粗さに関連する刺激の大きさを変更することを特徴としている。
【0009】
本発明は、前記振動付与部は、物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの前記正弦波Bの強度を変化させることにより、対象部位が受ける摩擦係数に関連する刺激の大きさを変更することを特徴としている。
【0010】
本発明は、前記振動付与部は、物質のコンプライアンスと関連付けられる0.4〜7Hzの前記正弦波Cの強度を変化させることにより、対象部位が受けるコンプライアンスに関連する刺激の大きさを変更することを特徴としている。
【0011】
本発明は、物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの前記正弦波Bは、時間経過にともない指数関数状または三角形状に強度が増加することを特徴としている。
本発明は、前記パラメータは、オノマトペおよび形容語を含む触感評価語に関連付けられることを特徴としている。
【0012】
本発明は、前記接触部の表面粗さが対象部位に付与する表面粗さに関連する刺激は、物質の表面粗さと関連付けられる25〜40Hzの前記重畳波Aが対象部位に付与する表面粗さに関連する刺激よりも小さく、前記接触部の摩擦係数が対象部位に付与する摩擦係数に関連する刺激は、物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの前記正弦波Bが対象部位に付与する摩擦係数に関連する刺激よりも小さく、前記接触部のコンプライアンスが対象部位に付与するコンプライアンスに関連する刺激は、物質のコンプライアンスと関連付けられる0.4〜7Hzの前記正弦波Cが対象部位に付与するコンプライアンスに関連する刺激よりも小さいことを特徴としている。
【0013】
本発明は、前記接触部は、前記振動部を収容する接触部本体と、同本体の先端面に設けられて生体に接触する補助体とを含むものであり、前記補助体は、物質の表面粗さおよび摩擦係数の少なくとも一方が前記接触部の表面粗さおよび摩擦係数よりも小さいことを特徴としている。
【0014】
本発明は、前記接触部は、生体の対象部位を加熱または冷却する素子をさらに含むことを特徴としている。
本発明は、複数の前記振動付与部を含み、各振動付与部の動作を互いに異なるものとすることにより生体の対象部位に錯触を与えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、生体の対象部位に対して多様な刺激を与えることのできる振動付与装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の振動付与装置をマッサージ器として具体化した第1実施形態について、その構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態のマッサージ器について、(a)はその正面構造を示す正面図、(b)はその側面構造を示す側面図。
【図3】同実施形態のマッサージ器について、(a)はスピーカの断面構造を示す断面図、(b)は補助体を取り除いた状態のスピーカの平面構造を示す平面図。
【図4】同実施形態のマッサージ器について、(a)は振動付与部が皮膚を押圧した状態を示す模式図、(b)は振動付与部が皮膚を吸引した状態を示す模式図。
【図5】同実施形態のスピーカから出力される波形の一例を示す波形図。
【図6】同実施形態のマッサージのモードとして設定されるオノマトペの触感評価語と物理的性質のパラメータとの関係の例を示すテーブル。
【図7】本発明の振動付与装置をマッサージ器として具体化した第2実施形態について、(a)はその正面構造を示す正面図、(b)はその側面構造を示す側面図。
【図8】同実施形態のマッサージ器について、(a)はスピーカから出力される波形の一例を示す波形図、(b)は錯触の態様の一例を模式図。
【図9】本発明の振動付与装置をマッサージ器として具体化した第3実施形態について、(a)はその断面構造を示す断面図、(b)は補助体を取り除いた状態の正面構造を示す正面図。
【図10】本発明の振動付与装置をマッサージ器として具体化した第4実施形態について、その断面構造を示す断面図。
【図11】本発明の振動付与装置をマッサージ器として具体化した第5実施形態について、(a)はその断面構造を示す断面図、(b)は補助体を取り除いた状態の平面構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図1〜図6を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示されるように、刺激付与装置としてのマッサージ器1は、使用者がマッサージを行うときの持ち手となる本体10と、空気を振動させる出力部30と、出力部30の動作を制御する制御部70と、波形信号のデータが予め記録されたメモリ部60と、使用者が電源の入切などの操作を行うための操作部50とを含む。
【0018】
出力部30は、制御部70の形成する波形信号に応じて振動するスピーカ40と、制御部70からの波形信号に基づいてスピーカ40を振動させるための電気信号を発生する信号発生器31と、信号発生器31が発生した電気信号を増幅してスピーカ40に出力する増幅器32とを含む。
【0019】
操作部50は、マッサージ器1の電源のオンおよびオフを切り替える電源ボタンと、マッサージのモードを切り替える各種のモード切替ボタンとを含む。マッサージのモードとしては、物質に触れたときの触感に類似した刺激を皮膚に与えるための複数のモードが用意されている。
【0020】
制御部70は、正弦波の信号に各種処理を施すことにより0.4〜250Hzの範囲内の周波数の波形信号を形成し、この波形信号に応じた電気信号を信号発生器31に発生させる。また、操作部50のモード切替ボタンの操作状態に応じた波形信号を形成することにより、使用者に対するマッサージの態様を変更する。上記の各種処理としては、正弦波を重畳する処理、正弦波および重畳波の強度を変化させる処理等が挙げられる。
【0021】
図2を参照して、マッサージ器1の具体的な構造について説明する。
マッサージ器1の本体10は、出力部30を内蔵する頭部11と、使用者が皮膚をマッサージするときに手に持つための手持部12とを含む。頭部11には、皮膚にマッサージ感を与えるための振動付与部20が設けられている。手持部12には、操作部50および電源80が設けられている。
【0022】
振動付与部20は、シリコン樹脂製のシリンダ21と出力部30とを含む。
シリンダ21は、頭部11の側面から突出して設けられている。シリンダ21の基端部21Hは、頭部11に固定されている。シリンダ21の先端部21Tには、薄膜状の補助体22が貼り付けられている。シリンダ21の中心軸は本体10の長手方向に対して直交している。シリンダ21内の空間(以下、「シリンダ室25」)には、出力部30のスピーカ40が設けられている。
【0023】
図3を参照して、振動付与部20の詳細な構造について説明する。なお以降では、シリンダ21の中心軸に沿う方向を「前後方向」とし、前後方向において頭部11側からシリンダ21の先端部21T側に向かう方向を「前方向」とし、これとは反対の方向すなわちシリンダ21の基端部21H側に向かう方向を「後方向」とする。なお、図3(b)はシリンダ21の先端部21Tから補助体22が取り外された状態のシリンダ21の平面構造を示している。
【0024】
スピーカ40は、電流が供給されるボイスコイル41と、ボイスコイル41への通電にともない直線運動するボビン44と、ボビン44と一体的に移動する板状のコーン紙42と、コーン紙42の周縁とシリンダ21の内壁とを接続するゴム43とを含む。ボビン44は、その中心軸が前後方向に沿うようにシリンダ21内に設けられている。
【0025】
シリンダ室25は、コーン紙42およびゴム43により2つの空間、すなわちシリンダ21の先端部21T側の空間(以下、「前室26」)と、シリンダ21の基端部21H側の空間(以下、「後室27」)とに区画されている。ゴム43の周縁は、前室26と後室27との間での空気が移動しないようにシリコン樹脂によりシリンダ21の内周面に密着されている。
【0026】
補助体22は、ポリエチレン膜23およびサテンシルク24により構成されている。サテンシルク24は、ポリエチレン膜23の外側の面、すなわち生体側の面に貼り付けられている。ポリエチレン膜23としては、一例として厚さ150μmのものが用いられている。サテンシルク24としては、一例として厚さ5μmのものが用いられている。補助体22の厚さHB、すなわちポリエチレン膜23の厚さとサテンシルク24の厚さとを合わせた厚さHBは、スピーカ40の振動が生体に十分に伝達されるようにシリンダ21の厚さHAよりも小さいものに設定されている。
【0027】
スピーカ40の動作について説明する。
制御部70は、波形信号を含む制御指令を信号発生器31に出力する。信号発生器31は、制御部70からの制御指令を受けたとき、波形信号に応じた電気信号を出力する。増幅器32は、信号発生器31からの電気信号を増幅してボイスコイル41に出力する。ボビン44は、ボイスコイル41への通電により前後方向に直線運動する。このとき、ボビン44の移動にともないゴム43が変形する。
【0028】
コーン紙42が前方向への移動および後方向への移動を繰り返すことにより、前室26の空気にはコーン紙42の前後方向の振動に応じた波が生じる。この波による前室26内の空気の疎密変化により補助体22が振動する。コーン紙42は、最大限まで前方向に移動した最大前位置P1と最大限まで後方向に移動した最大後位置P2との間で移動することができる。
【0029】
図4を参照して、マッサージ器1による皮膚Sのマッサージの態様について説明する。
マッサージは補助体22が皮膚Sに当接した状態で行われる。制御部70が生成する波形信号に基づいてスピーカ40が振動することにより、補助体22を介して振動刺激が皮膚Sに付与される。使用者は、皮膚Sに刺激が付与されることによりマッサージ感を覚える。具体的には、次のように皮膚Sに刺激が付与される。
【0030】
図4(a)に示されるように、スピーカ40の振動にともない前室26の空気が密になるとき、補助体22が前方向に押圧されて皮膚Sを押す。図4(b)に示されるように、スピーカ40の振動にともない前室26の空気が疎になるとき、補助体22が後方向に吸引されて皮膚Sを吸引する。
【0031】
使用者は、次の手順で皮膚Sのマッサージを行う。
(手順1):片手にマッサージ器1の手持部12を持つ。
(手順2):補助体22をマッサージする部位の皮膚Sに接触させる。
(手順3):電源スイッチをオンにしてマッサージ器1を駆動する。
(手順4):マッサージ器1が駆動した状態において、マッサージの態様を変更したいときには操作部50を操作して触感評価語と対応したモードを選択する。
(手順5):マッサージする部位を変更したいときにはマッサージ器1を移動させ、次にマッサージする部位にシリンダ21の補助体22を接触させる。
(手順6):マッサージを終了するときには電源スイッチをオフにする。
【0032】
図5を参照して、制御部70によるスピーカ40の制御について説明する。
制御部70は、重畳波および正弦波を含む以下の3種類の波形を基本の波形とし、それぞれの波形の強度を変化させる処理、および基本の波形の少なくとも2つを重畳する処理を行うことにより、各種の波形信号を形成する。
・図5(a)に示される25〜40Hzの正弦波を重畳した重畳波A。
・図5(b)に示される時間経過に対して強度が指数関数状または三角形状に増加する200〜250Hzの正弦波B。
・図5(c)に示される0.4〜7Hzの正弦波C。
【0033】
重畳波Aは、物質の表面粗さと関連付けられている。このため、重畳波Aの振動が皮膚に与えられたとき、皮膚中に存在するマイスナー小体やパチニ小体に代表される各種の触覚受容体は、物質の表面粗さに関連する刺激を受けたときの反応と類似の反応を示す。したがって、マッサージ器1から使用者に重畳波Aの振動が与えられたとき、使用者は重畳波Aの強度に応じた表面粗さの物質が皮膚に触れているときの触感に類似した触感を覚える。また、重畳波Aの強度が大きいほど生体が受ける表面粗さに関連する触感も大きくなる。すなわち、生体は付与される振動の重畳波Aの強度が大きいほど、より粗い物質に触れている触感を覚える。
【0034】
正弦波Bは、物質の摩擦係数と関連付けられている。このため、正弦波Bの振動が皮膚に与えられたとき、皮膚中に存在するマイスナー小体やパチニ小体に代表される各種の触覚受容体は、物質の摩擦に関連する刺激を受けたときの反応と類似の反応を示す。したがって、マッサージ器1から使用者に正弦波Bの振動が与えられたとき、使用者は正弦波Bの強度に応じた摩擦係数の物質が皮膚に触れているときの触感に類似した触感を覚える。また、正弦波Bの強度が大きいほど生体が受ける摩擦係数に関連する触感も大きくなる。すなわち、生体は付与される振動の正弦波Bの強度が大きいほど、より摩擦の大きな物質に触れている触感を覚える。
【0035】
正弦波Cは、物質のコンプライアンス(弾性係数の逆数)と関連付けられている。このため、正弦波Cの振動が皮膚Sに与えられたとき、皮膚中に存在するマイスナー小体やパチニ小体に代表される各種の触覚受容体は、物質のコンプライアンスに関連する刺激を受けたときの反応と類似の反応を示す。したがって、マッサージ器1から使用者に正弦波Cの振動が与えられたとき、使用者は正弦波Cの強度に応じたコンプライアンスの物質が皮膚に触れているときの触感に類似した触感を覚える。また、正弦波Cの強度が大きいほど生体が受けるコンプライアンスに関連する触感も大きくなる。すなわち、生体は付与される振動の正弦波Cの強度が大きいほど、より弾性のある物質に触れている触感を覚える。
【0036】
上記のように、生体が受ける触感の大きさは、重畳波Aおよび正弦波Bおよび正弦波Cの振動の強度に応じて変化するため、振動が付与される前の表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスのそれぞれに関連する触感は小さいほうが好ましい。すなわち、振動が付与される前の触感と、付与される振動の強度に対応した触感との差が小さいときには、生体が振動に基づいて覚える触感も小さくなるため、スピーカ40の振動の強度が同一の条件のもとでは、振動が付与される前の皮膚の触感が大きいときほどスピーカ40により付与することのできる触感の範囲が狭くなる。
【0037】
そこでマッサージ器1では、表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数のいずれも小さいサテンシルク24をポリエチレン膜23の外側の面に貼り付けた構造を採用している。サテンシルク24の表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数は、スピーカ40の振動により生体が受ける表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数に関連する感覚よりも十分に小さい。
【0038】
スピーカ40から生じる波形に関連した表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスの最小値は、サテンシルク24の表面粗さおよび摩擦係数および補助体22のコンプライアンスのいずれよりも大きくなるように制御される。
【0039】
図6を参照して、物理的性質を示すパラメータとしての「表面粗さ」、「摩擦係数」および「コンプライアンス」と触感評価語との関係について説明する。なお、ここでは触感評価語として特にオノマトペの触感評価語を取りあげている。またオノマトペの触感評価語として、「つるつる」、「ふわふわ」、「ねばねば」、「さらさら」、「ごつごつ」、「ざらざら」、「かさかさ」、「ぬるぬる」、「じゃりじゃり」、「ぼこぼこ」、「ぐにゃぐにゃ」、「ごわごわ」、「どろどろ」および「すべすべ」の14語を例にして説明する。
【0040】
図6では、各パラメータと各触感評価語との相関が強いもの「+」で示し、各パラメータと各触感評価語との相関が弱いものを「−」で示している。
(A)「さらさら」は、表面粗さとの相関が強く、かつコンプライアンスおよび摩擦係数のそれぞれとの相関が弱い。
(B)「すべすべ」は、表面粗さとの相関が強く、かつコンプライアンスおよび摩擦係数のそれぞれとの相関が弱い。
(C)「ごわごわ」は、表面粗さとの相関が強く、かつコンプライアンスおよび摩擦係数のそれぞれとの相関が弱い。また、「ごわごわ」と相関する表面粗さは、「さらさら」および「すべすべ」のそれぞれと相関する表面粗さよりも大きい。
(D)「ぬるぬる」は、摩擦係数との相関が強く、かつ表面粗さおよびコンプライアンスのそれぞれとの相関が弱い。
(E)「ねばねば」は、摩擦係数との相関が強く、かつ表面粗さおよびコンプライアンスのそれぞれとの相関が弱い。また、「ねばねば」と相関する摩擦係数は、「ぬるぬる」と相関する摩擦係数よりも大きい。
(F)「ふわふわ」は、コンプライアンスとの相関が強く、かつ表面粗さおよび摩擦係数のそれぞれとの相関が弱い。
(G)「ぐにゃぐにゃ」は、コンプライアンスとの相関が強く、かつ表面粗さおよび摩擦係数のそれぞれとの相関が弱い。
(H)「つるつる」は、表面粗さおよび摩擦係数のそれぞれのとの相関が強く、かつコンプライアンスとの相関が弱い。
(I)「どろどろ」は、表面粗さおよび摩擦係数のそれぞれとの相関が強く、かつコンプライアンスとの相関が弱い。また、「どろどろ」と相関する表面粗さは、「つるつる」と相関する表面粗さよりも大きい。また、「どろどろ」と相関する摩擦係数は、「つるつる」と相関する摩擦係数よりも大きい。
(J)「じゃりじゃり」は、表面粗さおよび摩擦係数のそれぞれとの相関が強く、かつ摩擦係数との相関が弱い。
(K)「ごつごつ」は、表面粗さおよびコンプライアンスのそれぞれとの相関が強く、かつ摩擦係数との相関が弱い。
(L)「ざらざら」は、表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスのそれぞれとの相関が強い。
(M)「かさかさ」は、表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスのそれぞれとの相関が強い。
【0041】
上記の関係から確認できるように、表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスのそれぞれと関連付けられた振動のうち、特定の触感評価語と相関の強い振動を皮膚Sに与えられたとき、生体は同評価語で表現される物質が皮膚Sに触れているときの触感に類似した触感を覚える。
【0042】
マッサージ器1によるマッサージ態様の詳細について説明する。
マッサージ器1には、上記の触感評価語のそれぞれに対応した(モードA)〜(モードM)が用意されている。制御部70は、操作部50の操作によりいずれかのモードが選択されたときに以下のようにスピーカ40を制御する。
【0043】
(モードA)制御部70は、「さらさら」の触感を皮膚Sに与えるためのモードAが選択されたとき、重畳波Aの波形信号として、「さらさら」の触感に対応した強度を有する波形信号を出力する。これにより、スピーカ40が重畳波Aの波形に応じて前後方向に振動し、「さらさら」という触感評価語で表現される物質に触れたときの触感に類似した刺激が皮膚Sに与えられる。
【0044】
(モードB)制御部70は、「すべすべ」の触感を皮膚Sに与えるためのモードBが選択されたとき、重畳波Aの波形信号として、「すべすべ」の触感に対応した強度を有する波形信号を出力する。これにより、スピーカ40が重畳波Aの波形に応じて前後方向に振動し、「すべすべ」という触感評価語で表現される物質に触れたときの触感に類似した刺激が皮膚Sに与えられる。
【0045】
(モードC)制御部70は、「ごわごわ」の触感を皮膚Sに与えるためのモードCが選択されたとき、重畳波Aの波形信号として、「ごわごわ」の触感に対応した強度を有し、かつ「さらさら」および「すべすべ」の触感に対応した強度よりも大きい強度を有する波形信号を出力する。これにより、スピーカ40が重畳波Aの波形に応じて前後方向に振動し、「ごわごわ」という触感評価語で表現される物質に触れたときの触感に類似した刺激が皮膚Sに与えられる。
【0046】
(モードD)制御部70は、「ぬるぬる」の触感を皮膚Sに与えるためのモードDが選択されたとき、正弦波Bの波形信号として、「ぬるぬる」の触感に対応した強度を有する波形信号を出力する。これにより、スピーカ40が正弦波Bの波形に応じて前後方向に振動し、「ぬるぬる」という触感評価語で表現される物質に触れたときの触感に類似した刺激が皮膚Sに与えられる。
【0047】
(モードE)制御部70は、「ねばねば」の触感を皮膚Sに与えるためのモードEが選択されたとき、正弦波Bの波形信号として、「ねばねば」の触感に対応した強度を有し、かつ「ぬるぬる」の触感に対応した強度よりも大きい強度を有する波形信号を出力する。これにより、スピーカ40が正弦波Bの波形に応じて前後方向に振動し、「ねばねば」という触感評価語で表現される物質に触れたときの触感に類似した刺激が皮膚Sに与えられる。
【0048】
(モードF)制御部70は、「ふわふわ」の触感を皮膚Sに与えるためのモードFが選択されたとき、正弦波Cの波形信号として、「ふわふわ」の触感に対応した強度を有する波形信号を出力する。これにより、スピーカ40が正弦波Cの波形に応じて前後方向に振動し、「ふわふわ」という触感評価語で表現される物質に触れたときの触感に類似した刺激が皮膚Sに与えられる。
【0049】
(モードG)制御部70は、「ぐにゃぐにゃ」の触感を皮膚Sに与えるためのモードGが選択されたとき、正弦波Cの波形信号として、「ぐにゃぐにゃ」の触感に対応した強度を有する波形信号を出力する。これにより、スピーカ40が正弦波Cの波形に応じて前後方向に振動し、「ぐにゃぐにゃ」という触感評価語で表現される物質に触れたときの触感に類似した刺激が皮膚Sに与えられる。
【0050】
(モードH)制御部70は、「つるつる」の触感を皮膚Sに与えるためのモードHが選択されたとき、重畳波Aおよび正弦波Bを重畳した波形信号として、「つるつる」の触感に対応した強度を有する波形信号を出力する。これにより、スピーカ40が重畳波Aおよび正弦波Bの重畳波の波形に応じて前後方向に振動し、「つるつる」という触感評価語で表現される物質に触れたときの触感に類似した刺激が皮膚Sに与えられる。
【0051】
(モードI)制御部70は、「どろどろ」の触感を皮膚Sに与えるためのモードHが選択されたとき、重畳波Aおよび正弦波Bを重畳した波形信号として、「どろどろ」の触感に対応した強度を有し、かつ「つるつる」の触感に対応した強度よりも大きい強度を有する波形信号を出力する。これにより、スピーカ40が重畳波Aおよび正弦波Bの重畳波の波形に応じて前後方向に振動し、「どろどろ」という触感評価語で表現される物質に触れたときの触感に類似した刺激が皮膚Sに与えられる。
【0052】
(モードJ)制御部70は、「じゃりじゃり」の触感を皮膚Sに与えるためのモードJが選択されたとき、重畳波Aおよび正弦波Cを重畳した波形信号として、「じゃりじゃり」の触感に対応した強度を有する波形信号を出力する。これにより、スピーカ40が重畳波Aおよび正弦波Cの重畳波の波形に応じて前後方向に振動し、「じゃりじゃり」という触感評価語で表現される物質に触れたときの触感に類似した刺激が皮膚Sに与えられる。
【0053】
(モードK)制御部70は、「ごつごつ」の触感を皮膚Sに与えるためのモードKが選択されたとき、重畳波Aおよび正弦波Cを重畳した波形信号として、「ごつごつ」の触感に対応した強度を有する波形信号を出力する。これにより、スピーカ40が重畳波Aおよび正弦波Cの重畳波の波形に応じて前後方向に振動し、「ごつごつ」という触感評価語で表現される物質に触れたときの触感に類似した刺激が皮膚Sに与えられる。
【0054】
(モードL)制御部70は、「ざらざら」の触感を皮膚Sに与えるためのモードLが選択されたとき、重畳波Aおよび正弦波Bおよび正弦波Cを重畳した波形信号として、「ざらざら」の触感に対応した強度を有する波形信号を出力する。これにより、スピーカ40が重畳波Aおよび正弦波Bおよび正弦波Cの重畳波の波形に応じて前後方向に振動し、「ざらざら」という触感評価語で表現される物質に触れたときの触感に類似した刺激が皮膚Sに与えられる。
【0055】
(モードM)制御部70は、「かさかさ」の触感を皮膚Sに与えるためのモードLが選択されたとき、重畳波Aおよび正弦波Bおよび正弦波Cを重畳した波形信号として、「かさかさ」の触感に対応した強度を有する波形信号を出力する。これにより、スピーカ40が重畳波Aおよび正弦波Bおよび正弦波Cの重畳波の波形に応じて前後方向に振動し、「かさかさ」という触感評価語で表現される物質に触れたときの触感に類似した刺激が皮膚Sに与えられる。
【0056】
本実施形態によれば以下に示す効果が得られる。
(1)物質の表面粗さと関連付けられる重畳波Aを含む振動が生体に付与されたとき、生体は表面粗さに関連する刺激が付与された感覚を覚える。また、物質の摩擦係数と関連付けられる正弦波Bを含む振動が生体に付与されたとき、生体は摩擦係数に関連する刺激が付与された感覚を覚える。また、物質のコンプライアンスと関連付けられる正弦波Cを含む振動が生体に付与されたとき、生体はコンプライアンスに関連する刺激が付与された感覚を覚える。一方、生体が覚える感覚は、生体に付与される振動の波形や強度に応じて異なる。
【0057】
本実施形態では、振動付与部20は、内部に前室26が設けられて皮膚Sに接触する振動付与部20と、前室26の空気の粗密を変化させて物理的性質のパラメータに関連付けられる0.4〜250Hzの範囲内の周波数の振動を発生するスピーカ40とを含んでいる。スピーカ40は、物質の表面粗さと関連付けられる25〜40Hzの正弦波を重畳した重畳波A、および物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの正弦波B、および物質のコンプライアンスと関連付けられる0.4〜7Hzの正弦波Cのそれぞれの振動を個別に皮膚Sに付与すること、および重畳波Aおよび正弦波Bおよび正弦波Cの少なくとも2つを重畳した振動を皮膚Sに付与することができる。また、重畳波Aの強度を変化させることにより、皮膚Sが受ける表面粗さに関連する刺激の大きさを変更することができる。また、正弦波Bの強度を変化させることにより、皮膚Sが受ける摩擦係数に関連する刺激の大きさを変更することができる。また、正弦波Cの強度を変化させることにより、皮膚Sが受けるコンプライアンスに関連する刺激の大きさを変更することができる。すなわち、スピーカ40の振動態様を変更することにより、皮膚Sに対して多様な刺激を与えることができる。
【0058】
(2)物質の摩擦係数と関連付けられる正弦波Bとして、時間経過にともない指数関数状または三角形状に強度が増加する正弦波を皮膚Sに付与したとき、正弦波Bとしての他の形状の正弦波を付与したときと比較して、皮膚Sが受ける摩擦係数に関連する刺激は大きくなる。本実施形態では、物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの正弦波Bは、時間経過にともない指数関数状または三角形状に強度が増加するものとしている。このため、皮膚Sに対して摩擦係数に関連する刺激が付与された感覚を与えるとともに、その度合をより大きなものとすることができる。
【0059】
(3)触感評価語により表現される触感は、表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数のパラメータのうちの1つまたはこれらの複数を組み合わせたものと高い相関を有する。本実施形態では、触感評価語に関連付けられた表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数をそれぞれ重畳波Aおよび正弦波Bおよび正弦波Cに関連付けているため、生体の皮膚Sに対して触感評価語により表現される刺激を与えることができる。また、触感評価語で表現される触感を生じさせることができるため、マッサージ器1の使用者は自身がマッサージ器1から受けた感覚を他者に対して触感評価語により伝えることができる。
【0060】
(4)サテンシルク24の表面粗さが皮膚Sに付与する表面粗さに関連する刺激は、物質の表面粗さと関連付けられる25〜40Hzの重畳波Aが皮膚Sに付与する表面粗さに関連する刺激よりも小さい。サテンシルク24の摩擦係数が皮膚Sに付与する摩擦係数に関連する刺激は、物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの正弦波Bが皮膚Sに付与する摩擦係数に関連する刺激よりも小さい。補助体22のコンプライアンスが皮膚Sに付与するコンプライアンスに関連する刺激は、物質のコンプライアンスと関連付けられる0.4〜7Hzの正弦波Cが皮膚Sに付与するコンプライアンスに関連する刺激よりも小さい。
【0061】
本実施形態では、表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数の小さいサテンシルク24をポリエチレン膜23の外側の面に貼り付けた構造を採用している。このため、スピーカ40により付与することのできる触感の範囲が狭くなることを抑制することができる。
【0062】
(5)本実施形態では、表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスの小さいサテンシルク24を補助体22の先端部21Tに設けている。これにより、補助体22を皮膚Sに接触させただけの状態においては、皮膚Sが補助体22(サテンシルク24)から受ける表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスに関連する触感が小さい。このため、スピーカ40の振動により皮膚Sに与えることのできる表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスに関連する触感の範囲が大きくなる。
【0063】
(6)生体は、皮膚等に触感刺激を受けたときにその触感刺激に基づく心理的な影響を受ける。例えば、表面粗さが粗く且つコンプライアンスの小さな(すなわち硬い)物質に触れたとき、「男らしい」と感じたときの感覚と類似の感覚を覚える。また、摩擦係数が小さく平坦な物質に触れたとき、「単純」と感じたときの感覚と類似の感覚を覚える。また、表面粗さが粗くコンプライアンスの大きな(すなわち軟らかい)物質に触れたとき、「明るい」と感じたときの感覚と類似の感覚を覚える。また、摩擦係数が小さくコンプライアンスの大きな(すなわち軟らかい)物質に触れたとき、「生き生きした」と感じたときの感覚と類似の感覚を覚える。
【0064】
本実施形態では、表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数と関連付けられた重畳波Aおよび正弦波Bおよび正弦波Cを組み合わせた振動を皮膚Sに与えることができるため、「男らしい」、「単純」、「明るい」および「生き生きとした」といった感覚と類似の感覚を使用者に生じさせることができる。すなわち、物理的な効果に加えて心理的な効果を使用者に与えるマッサージを行うことができる。
【0065】
(第2実施形態)
図7および図8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態のマッサージ器1は、第1実施形態のマッサージ器1に対して次の変更を加えたものとして構成されている。すなわち第1実施形態のマッサージ器1には、本体10に1つの振動付与部20が設けられている。これに対して本実施形態のマッサージ器1には、本体10に4つの振動付与部20、すなわち第1振動付与部20Aおよび第2振動付与部20Bおよび第3振動付与部20Cおよび第4振動付与部20Dが設けられている。以下にこの変更された部分についての詳細を示す。なお、その他の点については第1実施形態と同様の構成が採用されているため、共通する構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
図7に示されるように、各振動付与部20はそれぞれ四角形の頂点に位置する態様、かつ各シリンダ21の頂部が頭部11から突出する態様で設けられている。隣り合うシリンダ21の間隔は、各シリンダ21を皮膚Sに接触せたときに各シリンダ21の弁別が可能となる間隔に設定されている。すなわち、第1シリンダ21Aおよび第2シリンダ21Bおよび第3シリンダ21Cおよび第4シリンダ21Dのうち、いずれの2つのシリンダ21についても、シリンダ21同士の間隔が2つのシリンダ21の弁別ができる間隔になるように設定されている。
【0067】
マッサージ器1には、触感評価語に対応した触感を皮膚に与えるための第1実施形態の(モードA)〜(モードM)に加えて、錯触を皮膚Sに与えるための(モードX)および(モードY)が用意されている。制御部70は、操作部50の操作によりいずれかのモードが選択されたときに以下のようにスピーカ40を制御する。
【0068】
(モードX)制御部70は、錯触モードとしてのモードXが選択されたとき、各信号発生器31に対して位相をずらして波形信号を出力する。すなわち、第1振動付与部20Aの信号発生器31に対して波形信号を出力し、その後に所定の位相をおいて第2振動付与部20Bの信号発生器31に対して波形信号を出力し、その後に所定の位相をおいて第3振動付与部20Cの信号発生器31に対して波形信号を出力し、その後に所定の位相をおいて第4振動付与部20Dの信号発生器31に対して波形信号を出力し、以降はこれを繰り返す。一例として、それぞれの位相のずれは数十〜数百ミリ程度とすることができる。
【0069】
上記の波形信号に基づく各スピーカ40の振動により、一定の周期毎に皮膚Sに対して刺激が付与される。すなわち、第1シリンダ21Aおよび第2シリンダ21Bおよび第3シリンダ21Cおよび第4シリンダ21Dの順に皮膚Sに対して刺激が与えられるため、使用者はマッサージ感の与えられる部位がこの順に移動しているように感じる。すなわち、仮現運動現象をともなうマッサージが行われる。
【0070】
(モードY)制御部70は、ファントムモードとしてのモードYが選択されたとき、各振動付与部20に互いに異なる波形信号を出力する。この波形信号に基づくスピーカ40の振動により、使用者は各シリンダ21が接触していない部位においてマッサージ感を覚える。すなわち、ファントムセンセーションをともなうマッサージが行われる。
【0071】
図8(a)に例示されるように、モードYにおいて各振動付与部20の振動の周波数および振幅の少なくとも一方を変更することにより、使用者がマッサージ感を覚える部分を変化させることができる。使用者がマッサージ感を覚える部分は、例えば図8(b)の実線の矢印で示されるように各シリンダ21により囲まれる領域内で変化する。また、さらに異なる波形を各スピーカ40に与えることで図8(b)の破線の矢印で示されるように変化させることもできる。
【0072】
操作部50により、触感評価語に対応するモードと錯触のためのモードとが同時に選択されているとき、制御部70は選択されている各モードの波形信号の形成を組み合わせて実行する。これにより、触感評価語に対応する触感が錯触を通じて皮膚Sに付与される。
【0073】
本実施形態によれば、第1実施形態の(1)の効果、すなわち皮膚Sに対して多様な刺激を与えることができる旨の効果、ならびに第1実施形態の(2)〜(6)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
【0074】
(7)本実施形態では、4つの振動付与部20の動作を互いに異ならせることにより皮膚Sに錯触を与えている。このため、振動付与部20を生体に対して移動させなくとも、振動付与部20に対応する皮膚Sとは別の部位に対して刺激が付与された感覚を与えることができる。なお、生体に対して錯触を与える現象には、ファントムセンセーションおよび仮現運動現象などが含まれる。
【0075】
(第3実施形態)
図9を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態のマッサージ器1は、第1実施形態のマッサージ器1に対して次の変更を加えたものとして構成されている。すなわち第1実施形態のマッサージ器1には、本体10にシリンダ21が設けられている。これに対して本実施形態のマッサージ器1には、本体10にエアバッグ122が設けられている。以下にこの変更された部分についての詳細を示す。なお、その他の点については第1実施形態と同様の構成が採用されているため、共通する構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0076】
図9に示されるように、マッサージ器1の本体10は、出力部30を内蔵する本体部111を備えている。本体部111には、皮膚Sにマッサージ感を与えるための振動付与部120が設けられている。
【0077】
振動付与部120は、マッサージ部121および出力部30を含む。
マッサージ部121は、本体部111から突出して設けられている。マッサージ部121の本体部111側の部分を支持部123とし、皮膚Sに押し当てられる部位をエアバッグ122とする。支持部123は、円盤形状をなすとともに本体部111から突出して形成されている。マッサージ部121内の空間(以下、「マッサージ室125」)には、出力部30のスピーカ40が設けられている。このスピーカ40により、マッサージ室125は、前方向側の前室126と後方向側の後室127とに区画されている。支持部123には、前室126と外部との間で空気を流通させるための連通孔124が設けられている。エアバッグ122の素材としては、本体部111よりも厚さが薄くて表面粗さの小さいナイロン素材が採用されている。エアバッグ122の表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数は、スピーカ40の振動により生体が受ける表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数に関連する感覚よりも十分に小さい。スピーカ40から生じる波形に関連した表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスの最小値は、エアバッグ122の表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスのいずれよりも大きくなるように制御される。
【0078】
使用者は、マッサージを行うときにエアバッグ122の外側表面を皮膚Sに押し当てる。この状態でスピーカ40から振動が発生したとき、前室126内の空気が疎と密との間で変化し、エアバッグ122がこの疎密変化に基づいて振動することにより、皮膚Sに振動刺激が付与される。
【0079】
本実施形態によれば、第1実施形態の(1)の効果、すなわち皮膚Sに対して多様な刺激を与えることができる旨の効果、ならびに第1実施形態の(2)、(3)および(6)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
【0080】
(8)ナイロン素材の表面粗さが皮膚Sに付与する表面粗さに関連する刺激は、物質の表面粗さと関連付けられる25〜40Hzの重畳波Aが皮膚Sに付与する表面粗さに関連する刺激よりも小さい。ナイロン素材の摩擦係数が皮膚Sに付与する摩擦係数に関連する刺激は、物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの正弦波Bが皮膚Sに付与する摩擦係数に関連する刺激よりも小さい。ナイロン素材のコンプライアンスが皮膚Sに付与するナイロン素材に関連する刺激は、物質のコンプライアンスと関連付けられる0.4〜7Hzの正弦波Cが皮膚Sに付与するコンプライアンスに関連する刺激よりも小さい。
【0081】
本実施形態では、表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数の小さいナイロン素材によりエアバッグ122を形成しているため、スピーカ40により付与することのできる触感の範囲が狭くなることを抑制することができる。
【0082】
(9)本実施形態では、ナイロン素材のエアバッグ122により皮膚Sに刺激を付与している。エアバッグ122はシリンダと比較して形状が変形容易であるため、凹凸の大きな接触部位に対しても好適に密着させることができる。
【0083】
(第4実施形態)
図10を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態のマッサージ器1は、第3実施形態のマッサージ器1に対して次の変更を加えたものとして構成されている。すなわち第3実施形態のマッサージ器1には、本体10に1つの振動付与部120が設けられている。これに対して本実施形態のマッサージ器1には、6つの振動付与部120、すなわち第1振動付与部120Aおよび第2振動付与部120Bおよび第3振動付与部120Cおよび第4振動付与部120Dおよび第5振動付与部120Eおよび第6振動付与部120Fが設けられている。以下にこの変更された部分についての詳細を示す。なお、その他の点については第3実施形態と同様の構成が採用されているため、共通する構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0084】
図10に示されるように、第1振動付与部120Aおよび第2振動付与部120Bおよび第3振動付与部120Cは一列に配置されている。また、第4振動付与部120Dおよび第5振動付与部120Eおよび第6振動付与部120Fは、第1振動付与部120Aおよび第2振動付与部120Bおよび第3振動付与部120Cと対向する位置に一列に配置されている。
【0085】
マッサージ器1には、触感評価語に対応した触感を皮膚に与えるための第1実施形態の(モードA)〜(モードM)に加えて、錯触を皮膚Sに与えるための(モードZ)および(モードW)が用意されている。制御部70は、操作部50の操作によりいずれかのモードが選択されたときに以下のようにスピーカ40を制御する。
【0086】
(モードZ)制御部70は、錯触モードとしてのモードZが選択されたとき、各信号発生器31に対して位相をずらして波形信号を出力する。すなわち、第1振動付与部120Aの信号発生器31に対して波形信号を出力し、その後に所定の位相をおいて第2振動付与部120Bの信号発生器31に対して波形信号を出力し、その後に所定の位相をおいて第3振動付与部120Cの信号発生器31に対して波形信号を出力し、以降はこれを繰り返す。また、これと同時に第4振動付与部120Dの信号発生器31に対して波形信号を出力し、その後に所定の位相をおいて第5振動付与部120Eの信号発生器31に対して波形信号を出力し、その後に所定の位相をおいて第6振動付与部120Fの信号発生器31に対して波形信号を出力し、以降はこれを繰り返す。一例として、それぞれの位相のずれは数十〜数百ミリ程度とすることができる。
【0087】
このとき、各振動付与部120において信号発生器31からスピーカ40には、互いに異なる位相で電気信号が出力され、各スピーカ40は中立位置と同中立位置よりも前方側の所定位置との間で位相差をもって振動する。これにより、各振動付与部120により一定の周期毎に皮膚Sに対して刺激が付与される。また、第1エアバッグ122Aおよび第2エアバッグ122Bおよび第3エアバッグ122Cの順、および第4エアバッグ122Dおよび第5エアバッグ122Eおよび第6エアバッグ122Fの順に皮膚Sに対して刺激、すなわちマッサージ感が与えられるため、使用者はマッサージ感の与えられる部位がこの順に移動しているように感じる。すなわち、仮現運動現象を生じさせるマッサージが行われる。
【0088】
(モードW)制御部70は、ファントムモードとしてのモードWが選択されたとき、各振動付与部120に互いに異なる波形信号を出力する。この波形信号に基づくスピーカ40の振動により、使用者は各エアバッグ122が接触していない部位においてマッサージ感を覚える。すなわち、ファントムセンセーションをともなうマッサージが行われる。
【0089】
モードYにおいて各振動付与部120の振動の周波数および振幅の少なくとも一方を変更することにより、使用者がマッサージ感を覚える部分を変化させることができる。使用者がマッサージ感を覚える部分は各エアバッグ122により囲まれる領域内で変化する。
【0090】
操作部50により、触感評価語に対応するモードと錯触のためのモードとが同時に選択されているとき、制御部70は選択されている各モードの波形信号の形成を組み合わせて実行する。これにより、触感評価語に対応する触感が錯触を通じて皮膚Sに付与される。
【0091】
本実施形態によれば、第1実施形態の(1)の効果、すなわち皮膚Sに対して多様な刺激を与えることができる旨の効果、第1実施形態の(2)、(3)および(6)の効果、第2実施形態の(7)の効果、ならびに第3実施形態の(8)および(9)の効果が得られる。
【0092】
(第5実施形態)
図11を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。
本実施形態のマッサージ器1は、第1実施形態のマッサージ器1に対して次の変更を加えたものとして構成されている。すなわち本実施形態のマッサージ器1には、皮膚Sに補助体22を介して接触して皮膚Sを冷却および加熱する冷熱器34が振動付与部20に追加されている。以下にこの変更された部分についての詳細を示す。なお、その他の点については第1実施形態と同様の構成が採用されているため、共通する構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0093】
図11(a)に振動付与部20の断面構造を示す。また、図11(b)に、補助体22を取り外した状態の振動付与部20の正面構造を示す。
シリンダ21内には、スピーカ40から補助体22側に突出する状態で冷熱器34が設けられている。冷熱器34の一端である支持部34Aは、スピーカ40に挿入されている。冷熱器34の他端である円盤形状の接触部34Bは、補助体22のポリエチレン膜23の内側に接触して設けられている。
【0094】
支持部34Aには、制御部70により通電制御される2本の導線34Cが巻きつけられている。導線34Cの先端はいずれも接触部34Bに接続されている。接触部34Bは冷却および加温する冷熱素子としてのペルチェ素子により構成されている。
【0095】
導線34Cを介して接触部34Bに通電したとき、接触部34Bは通電の方向に応じて冷却または加温される。すなわち、使用時においてシリンダ21の先端部21Tを皮膚Sに当てた状態においては、接触部34Bが補助体22を介して皮膚Sに接触しているため、シリンダ室25の空気の疎密状態の変更によるマッサージ感の付与に加えて冷熱器34による冷却または加温が皮膚Sに対して行われる。
【0096】
本実施形態によれば、第1実施形態の(1)の効果、すなわち皮膚Sに対して多様な刺激を与えることができる旨の効果、ならびに第1実施形態の(2)〜(6)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
【0097】
(10)本実施形態では、生体の皮膚Sを加熱または冷却する素子が設けられている。従って、媒質の粗密の変化により皮膚Sに刺激を付与しつつ同部位を加熱または冷却することができる。すなわち、表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数と対応する触感に加えて、温覚や冷覚にかかる皮膚感覚を刺激することができるため、皮膚Sへの刺激の付与をより多様なものとすることができる。
【0098】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示す形態に変更することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0099】
・上記第2実施形態では、各シリンダ21の弁別ができるようにシリンダ21同士の間隔を設定しているが、各シリンダ21の弁別ができないようにシリンダ21同士の間隔を同実施形態よりも小さくすることもできる。この場合、皮膚Sは各シリンダ21と接触している部位だけではなく、各シリンダ21に囲まれた部分においても刺激が付与された感覚を覚える。
【0100】
・上記第2実施形態では、4つの振動付与部20を設けるとともにこれら振動付与部20の動作を互いに異なるものとすることにより、皮膚Sに錯触を与えるようにしたが、振動付与部20の数を2または3または5以上のいずれかに変更しても皮膚Sに錯触を与えることができる。
【0101】
・上記第2実施形態では、4つの振動付与部20がそれぞれ四角形の頂点に位置するように各振動付与部20を配置したが、各振動付与部20の配置態様はこれに限られるものではない。例えば、4つの振動付与部20を一列に配置することもできる。
【0102】
・上記第2実施形態では、モードXが選択されたときには、第1スピーカ40Aおよび第2スピーカ40Bおよび第3スピーカ40Cおよび第4スピーカ40Dの順に波形信号を出力するようにしたが、各スピーカ40に波形信号を出力する順序をこれとは反対にすることもできる。
【0103】
・上記第4実施形態では、一列に配置された各エアバッグ122について、その弁別ができるようにエアバッグ122同士の間隔を設定しているが、各エアバッグ122の弁別ができないようにエアバッグ122同士の間隔を同実施形態よりも小さくすることもできる。この場合、皮膚Sは各エアバッグ122と接触している部位だけではなく、各エアバッグ122に囲まれた部分においても刺激が付与された感覚を覚える。
【0104】
・上記第4実施形態では、6つの振動付与部120を設けるとともにこれら振動付与部120の動作を互いに異なるものとすることにより、皮膚Sに錯触を与えるようにしたが、振動付与部120の数を2〜5のいずれかまたは7以上のいずれかに変更しても皮膚Sに錯触を与えることができる。
【0105】
・上記第4実施形態では、3つの振動付与部120を直線状に配置し、これと対向する位置に3つの振動付与部120を配置するようにしたが、6つの振動付与部120を一列に配置することもできる。または、6つの振動付与部120を円形状に配置することもできる。
【0106】
・上記第4実施形態では、第1スピーカ40Aおよび第2スピーカ40Bおよび第3スピーカ40Cの順に波形信号を出力するようにしたが、各スピーカ40に波形信号を出力する順序をこれとは反対にすることもできる。第4スピーカ40Dおよび第5スピーカ40Eおよび第6スピーカ40Fについても同様に、これらスピーカ40D,40E,40Fの振動順を変更することができる。
【0107】
・上記第2および第4実施形態では、全てのスピーカについて同一のモードを設定するようにしたが、スピーカ毎に個別にモード設定することもできる。
・上記第5実施形態では、皮膚Sの加温および冷却を行うことのできる接触部34Bを採用したが、いずれか一方のみを行うことができるものに変更することもできる。
【0108】
・上記第5実施形態では、接触部34Bを補助体22の内側に設けたが、補助体22の外側に設けて接触部34Bを皮膚Sに接触させることもできる。
・上記第1および第2および第5実施形態では、補助体22のサテンシルク24と皮膚Sとが接触する構成を採用したが、補助体22を省略して空気の振動を直接的に皮膚Sに伝えることもできる。
【0109】
・上記第3および第4実施形態では、エアバッグ122と皮膚Sとが接触する構成を採用したが、エアバッグ122の一部を開放して空気の振動を直接的に皮膚Sに伝えることもできる。
【0110】
・上記第3および第4実施形態では、エアバッグ122に連通孔124を設けているが、連通孔124を省略してマッサージ室125を密閉することもできる。
・上記第1および第2および第5実施形態では、補助体22(サテンシルク24)の表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数は、スピーカ40の振動により生体が受ける表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数に関連する感覚よりも十分に小さいものとした。また、第3および第4実施形態では、エアバッグ122のナイロン素材の表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数は、スピーカ40の振動により生体が受ける表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数に関連する感覚よりも十分に小さいものとした。しかし、補助体22(サテンシルク24)およびエアバッグ122のナイロン素材としてはこれに限らず、素材の表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスの少なくとも1つが、スピーカ40から生じる波形に関連した表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスの最大値よりも小さいものに代えることができる。
【0111】
・上記第1および第2および第5実施形態では、スピーカ40から生じる波形に関連した表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスの最小値を、補助体22およびサテンシルク24の表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスのいずれよりも大きいものとした。また、第3および第4実施形態では、スピーカ40から生じる波形に関連した表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスの最小値を、補助体22およびエアバッグ122のナイロン素材の表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスのいずれよりも大きいものとした。しかし、スピーカ40から生じる波形に関連した表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスを「0」から補助体22およびナイロン素材の表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスの最大値までの範囲とすることもできる。
【0112】
・上記第1および第2および第5実施形態では皮膚Sと接触する部分にサテンシルク24を、また上記第3および第4実施形態では皮膚Sと接触する部分にナイロン素材のエアバッグ122を設けたが、皮膚Sと接触する部分の材質これに限らない。すなわち、表面粗さおよび摩擦係数およびコンプライアンスが小さな素材であればよく、例えば紙が挙げられる。
【0113】
・上記各実施形態では、皮膚Sに直接振動を付与するようにしたが、振動が皮膚Sに伝わる態様であれば衣服や体毛等の上から振動を付与する使用形態としてもよい。
・上記各実施形態では、使用者が本体10を把持した状態でマッサージを行う構成を採用したが、例えば本体10にベルトを設けることにより、マッサージ器1を生体に固定した状態でマッサージを行う構成に変更することもできる。
【0114】
・上記各実施形態では、物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの正弦波Bとして、時間経過にともない指数関数状または三角形状に強度が増加する波形を採用したが、これ以外の波形を正弦波Bとして採用することもできる。
【0115】
・上記各実施形態では、オノマトペの触感評価語と対応したモードを設けたが、形容詞および形容動詞を含む形容語の触感評価語と対応したモードを設けることもできる。形容語の例としては、「ざらりとした」、「平坦な」、「すべらかな」、「ねっとりした」「硬い」、「軟らかい」、「角ばった」および「丸い」等が挙げられる。
【0116】
・上記各実施形態では、1つの触感評価語と対応したモードを設けたが、使用者の好みや使用目的等に応じて複数の触感評価語に対応したモードを設けることもできる。また、使用者の好みや使用目的等に応じて時間経過にともない対応する触感評価語が変更されるモードを設けることもできる。
【0117】
・上記各実施形態では、触感評価語と対応したモードを設けたが、これに代えてまたは追加して心理的効果を表現する言葉と対応したモードを設けることもできる。心理的効果を表現する言葉としては、「男らしい」、「明るい」、「単純」および「生き生きとした」等が挙げられる。
【0118】
・上記各実施形態では、日本語の触感評価語と対応したモードを設けたが、これに代えてまたは追加して他の言語の触感評価語に対応したモードを設けることもできる。なお、言語および民族および居住地域等の違いにより同じ触感評価語から受ける感覚に差異があるため、使用者の生活背景を考慮して各モードの内容を設定することが望ましい。
【0119】
・上記各実施形態では、波形信号のデータをメモリ部60に予め記憶しているが、メモリカードやUSBの外部メモリをメモリ部60に挿入し、この外部メモリから波形信号のデータを取り込むこともできる。
【0120】
・上記各実施形態では、本体10に電源80を内蔵しているが、本体10とは別に電源を設けることもできる。
・上記各実施形態では、スピーカ40のコーン紙42として板状のものを採用したが、コーン紙42の材質および形状はこれに限られるものではない。その他の材質の一例としては、高分子や金属が挙げられる。また、その他の形状の一例としては、円錐形が挙げられる。
【0121】
・上記各実施形態では、スピーカ40で空気の疎密を変更したが、スピーカ以外のアクチュエータに変更することもできる。例えば、ソレノイドコイル等の直動アクチュエータや、クランクピストン構造や、ダイヤフラムポンプ等の作動流体アクチュエータが挙げられる。
【0122】
・上記各実施形態では、使用者が操作部50を操作してマッサージモードを切り替える構成を採用したが、操作部50の操作に基づくことなく制御部70によりマッサージのモードを切り替えられる構成を採用することもできる。
【0123】
・上記各実施形態では、刺激を付与する対象部位を皮膚Sとしたが、触感受容体を含む生体の他の部位を対象とすることもできる。例えば、口腔内の粘膜または舌に刺激を付与するための口腔マッサージ器として本発明を実施することもできる。また、口腔マッサージ器に限らず他の医療機器として実施することもできる。
【0124】
・上記各実施形態では、媒質としての空気を介してスピーカ40の振動を皮膚Sに付与する構成を採用したが、空気に代えて他の流体を媒質として用いることもできる。例えば、媒質として水を採用した場合には、風呂等の水中でマッサージを行うことができる。
【0125】
・また、媒質を介してスピーカ40の振動を付与する構成に代えて、スピーカ40を皮膚Sに接触させて振動を直接的に付与する構成に変更することもできる。この場合、スピーカ40の生体側の面にサテンシルク24を貼り付けることもできる。
【0126】
・上記各実施形態では、皮膚にマッサージ感を付与するための装置として振動付与装置を構成したが、皮膚に疑似触感を与えることに特化した触感呈示装置として振動付与装置を構成することもできる。
【符号の説明】
【0127】
1…マッサージ器、10…本体、11…頭部、12…手持部、20…振動付与部、20A…第1振動付与部、20B…第2振動付与部、20C…第3振動付与部、20D…第4振動付与部、21…シリンダ(接触部本体)、21A…第1シリンダ、21B…第2シリンダ、21C…第3シリンダ、21D…第4シリンダ、21H…基端部、21T…先端部、22…補助体、23…ポリエチレン膜、24…サテンシルク、25…シリンダ室、26…前室、27…後室、111…本体部、120…振動付与部、120A…第1振動付与部、120B…第2振動付与部、120C…第3振動付与部、120D…第4振動付与部、120E…第5振動付与部、120F…第6振動付与部、121…マッサージ部(接触部本体)、122…エアバッグ、122A…第1エアバッグ、122B…第2エアバッグ、122C…第3エアバッグ、122D…第4エアバッグ、122E…第5エアバッグ、122F…第6エアバッグ、123…支持部、124…連通穴、125…マッサージ室、126…前室、127…後室、30…出力部(振動部)、31…信号発生器、32…増幅器、34…冷熱器、34A…支持部、34B…接触部、34C…導線、40…スピーカ、40A…第1スピーカ、40B…第2スピーカ、40C…第3スピーカ、40D…第4スピーカ、40E…第5スピーカ、40F…第6スピーカ、41…ボイスコイル、42…コーン紙、43…ゴム、44…ボビン、50…操作部、60…メモリ部、70…制御部、80…電源、S…皮膚。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の対象部位に振動を与える振動付与部を含む振動付与装置において、
前記振動付与部は、対象部位に接触する接触部と、振動を発生する振動部とを含み、
前記振動部は、物理的性質のパラメータとしての表面粗さおよびコンプライアンスおよび摩擦係数の少なくとも1つに関連付けられる0.4〜250Hzの範囲内の周波数の振動を発生するものであり、物質の表面粗さと関連付けられる25〜40Hzの正弦波を重畳した重畳波A、および物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの正弦波B、および物質のコンプライアンスと関連付けられる0.4〜7Hzの正弦波Cの振動を個別に対象部位に付与するものであり、前記重畳波Aおよび前記正弦波Bおよび前記正弦波Cの少なくとも2つを重畳した振動を対象部位に付与するものである
ことを特徴とする振動付与装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動付与装置において、
前記振動付与部は、対象部位と前記振動部との間に空間を形成するものであり、前記振動部により発生させた振動を同空間の媒質の疎密の変化により前記接触部に伝えるものである
ことを特徴とする振動付与装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の振動付与装置において、
前記振動付与部は、物質の表面粗さと関連付けられる25〜40Hzの前記重畳波Aの強度を変化させることにより、対象部位が受ける表面粗さに関連する刺激の大きさを変更する
ことを特徴とする振動付与装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の振動付与装置において、
前記振動付与部は、物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの前記正弦波Bの強度を変化させることにより、対象部位が受ける摩擦係数に関連する刺激の大きさを変更する
ことを特徴とする振動付与装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の振動付与装置において、
前記振動付与部は、物質のコンプライアンスと関連付けられる0.4〜7Hzの前記正弦波Cの強度を変化させることにより、対象部位が受けるコンプライアンスに関連する刺激の大きさを変更する
ことを特徴とする振動付与装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の振動付与装置において、
物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの前記正弦波Bは、時間経過にともない指数関数状または三角形状に強度が増加する
ことを特徴とする振動付与装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の振動付与装置において、
前記パラメータは、オノマトペおよび形容語を含む触感評価語に関連付けられる
ことを特徴とする振動付与装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の振動付与装置において、
前記接触部の表面粗さが対象部位に付与する表面粗さに関連する刺激は、物質の表面粗さと関連付けられる25〜40Hzの前記重畳波Aが対象部位に付与する表面粗さに関連する刺激よりも小さく、
前記接触部の摩擦係数が対象部位に付与する摩擦係数に関連する刺激は、物質の摩擦係数と関連付けられる200〜250Hzの前記正弦波Bが対象部位に付与する摩擦係数に関連する刺激よりも小さく、
前記接触部のコンプライアンスが対象部位に付与するコンプライアンスに関連する刺激は、物質のコンプライアンスと関連付けられる0.4〜7Hzの前記正弦波Cが対象部位に付与するコンプライアンスに関連する刺激よりも小さい
ことを特徴とする振動付与装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の振動付与装置において、
前記接触部は、前記振動部を収容する接触部本体と、同本体の先端面に設けられて生体に接触する補助体とを含むものであり、
前記補助体は、物質の表面粗さおよび摩擦係数の少なくとも一方が前記接触部の表面粗さおよび摩擦係数よりも小さい
ことを特徴とする振動付与装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の振動付与装置において、
前記接触部は、生体の対象部位を加熱または冷却する素子をさらに含む
ことを特徴とする振動付与装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の振動付与装置において、
複数の前記振動付与部を含み、
各振動付与部の動作を互いに異なるものとすることにより生体の対象部位に錯触を与える
ことを特徴とする振動付与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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