振動低減装置
【課題】ダンパ部の寸法を大きくすることなく、より効果的に減衰機能を発揮し、圧延機等の機械に容易に付設することを可能ならしめる振動抑制装置を提供する。
【解決手段】振動抑制装置1を、振動を発生する機械に付設される固定治具2と、この固定治具2に立設された複数のねじロッド4と、これらねじロッド4で貫通支持される重錘6と、これらねじロッド4に嵌着され、前記重錘6の上部および下部を弾性支持する弾性体5,5と、前記重錘6の全体の四方を囲む壁部材3と、前記固定治具2と前記壁部材3とで形成される空間8に充填される粘弾性体または粘性体9とから構成する。
【解決手段】振動抑制装置1を、振動を発生する機械に付設される固定治具2と、この固定治具2に立設された複数のねじロッド4と、これらねじロッド4で貫通支持される重錘6と、これらねじロッド4に嵌着され、前記重錘6の上部および下部を弾性支持する弾性体5,5と、前記重錘6の全体の四方を囲む壁部材3と、前記固定治具2と前記壁部材3とで形成される空間8に充填される粘弾性体または粘性体9とから構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動低減装置の改善に係り、より詳しくは、機械に付設され、この機械が発生する振動の振幅を減衰させる振動低減装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動を発生する機械、例えば圧延機では、周知のとおり、一対のワークロールの間に被圧延材を挟圧して通過させることによって圧延が行われている。これら一対のワークロールに対しては、各ワークロールの背後に設けられたバックアップロールを介して大きな圧下力が加えられる。このような構成になる圧延機において、被圧延材の圧延速度がある程度速くなると、チャタリングと称される数10〜数100Hzの異常振動が発生し、被圧延材に板厚不良が生じることがある。そこで、チャタリングが生じた場合、圧延速度を低下させることなく振動を抑制するために、圧延機に振動低減装置を付設することにより振動を低減させるようにしている。圧延機の振動を低減させる振動低減装置としては、例えば後述するような2つの典型例がある。
【0003】
先ず、第1従来例に係る圧延機の振動を低減させる振動低減装置は、下記のような構成になるものである。即ち、圧延機のハウジングに縦振動の振動周波数領域に合致させたばね定数を有する振動低減装置を配置することによって、圧延機のハウジングの縦振動を低減させる。このハウジングの振動低減によってワークロールの縦振動も低減され、被圧延材を高速で圧延しても圧延不良を起こすようなことがなくなる。なお、前記振動低減装置は、縦振動の振動周波数に合致させたばね定数を有するばねと、このばねの上端に固着された錘とから構成されている。また、ダンパを併用した構成のものも開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
次に、第2従来例に係る圧延機の振動を低減させる振動低減装置は、下記のような構成になるものである。即ち、振動低減装置は、錘が圧延機のバックアップロールの2つのチョックの間または2つの圧力台の間に設けられ、粘性流体を利用したダンパにより減衰を付与する構造、または梁の間に高減衰ゴムが積層されてなる構造の梁状のばねを用いる構造、またはバックアップロールの圧力台の周囲に設けられた錘で構成された構造になっており、圧延機の振動をコンパクトな錘(付加質量)により、効果的に低減し得る効果を期待することができる(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平5−104117号公報
【特許文献2】特開平9−267110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例1,2に係る振動低減装置は、何れも圧延機の振動を低減することができるので、それなりに有用であると考えられる。しかしながら、従来例に係るこれら振動低減装置は、それぞれ下記のような問題点を持っている。
【0006】
先ず、上記従来例1(特許文献1)に係る振動低減装置の場合には、振動吸収装置を圧延機のハウジングに設置する構成になっており、圧延ロールの振動を抑制しなければならないにもかかわらず、圧延機のハウジングを介して、圧延ロールの振動を抑制する構成となっている。従って、錘を重くしなければ十分な振動低減効果が得られないという問題がある。また、圧延機の圧下荷重等が変化した場合に、十分な振動低減効果が得られないという問題もある。
【0007】
次に、上記従来例2(特許文献2)の、錘が圧延機のバックアップロールのチョックの間または圧力台の間に設けられ、粘性流体を利用したダンパにより減衰を付与する構造の振動低減装置の場合には、バックアップロールとハウジングとの間の空間が狭いため、既存の圧延機に付設することが困難である。また、粘性流体を利用したダンパの場合、大きな減衰を得るためには、ダンパ部の寸法を大きくしなければならず、同様に既存の圧延機に付設することが困難である。さらに、梁の間に高減衰ゴムが積層された構造の梁状のばねを用いる構造の振動低減装置の場合には、梁状のばねの間に積層された高減衰ゴムは粘性流体を利用したダンパに比較して小さな減衰しか得ることができないため、振動を効果的に減衰させることが困難である。また、バックアップロールの圧力台の周囲に設けられた錘により構成された構造の振動低減装置の場合には、振動を効果的に減衰させることが困難である。
【0008】
従って、本発明の目的は、重錘とばねとダンパで構成すると共に、ダンパ部の寸法を大きくすることなく、より効果的に減衰機能を発揮し、圧延機等の機械に容易に付設することを可能ならしめる振動低減装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、従って上記課題を解決するために本発明の請求項1に係る振動低減装置が採用した手段は、振動する機械に付設される固定治具と、この固定治具に立設された支持部材と、この支持部材で貫通支持される重錘と、この支持部材に嵌着され、前記重錘の上部および下部を弾性支持する弾性体と、前記重錘の一部または全体の四方を囲む壁部材と、前記固定治具と前記壁部材とで形成される空間に充填される粘弾性体または粘性体とからなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項1に記載の振動低減装置において、前記重錘は、複数の平板状の重錘片を積層したものであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項1または2のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置において、前記重錘の下面側に孔を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項4に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置において、前記孔は、前記重錘の最下面側から最上面側に貫通する貫通孔であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項5に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項3に記載の振動低減装置において、前記孔の上端開口部は、前記粘弾性体または粘性体の上面より高い位置にあることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項6に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項1乃至5のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置において、前記粘弾性体または粘性体は、液体であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項7に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項1乃至6のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置において、前記粘弾性体または粘性体の温度を調節する温度調節手段を設けたことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項8に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項7に記載の振動低減装置において、前記粘弾性体または粘性体の温度を検出する温度検出センサを設け、この温度検出センサにより検出される前記粘弾性体または粘性体の温度が所定の温度範囲になるよう、前記温度調節手段を制御するコントローラを設けたことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項9に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項1乃至8のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置において、前記重錘の側面に相対する前記壁部材の内面または前記壁部材の内面に相対する前記重錘の側面のうちの何れか一方に、先端に前記重錘の側面または壁部材の内面のうちのいずれか一方に摺接する低摩擦部材が付設され、前記重錘と前記壁部材との間の間隔を保持する間隔保持部材を突設したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1乃至9に係る振動低減装置では、振動する機械に付設される固定治具と、この固定治具に立設された支持部材と、この支持部材で貫通支持される重錘と、この支持部材に嵌着され、前記重錘の上部および下部を弾性支持する弾性体と、前記重錘の一部または全体の四方を囲む壁部材と、前記固定治具と前記壁部材とで形成される空間に充填される粘弾性体または粘性体とからなる構成になっている。
【0019】
従って、本発明の請求項1乃至9に係る振動低減装置によれば、粘弾性体または粘性体のばね特性により減衰作用を発揮させることができる。加えて、重錘の振動により固定治具と壁部材と重錘との間の空間が収縮し、そして粘弾性体または粘性体が固定治具と壁部材と重錘との間に流出入する際に圧力損失が発生するため、さらなる減衰作用を発揮させることができる。さらに、粘弾性体または粘性体のずり変形により減衰作用を発揮させることができる。上記のような複数の減衰作用によって大きな減衰効果が得られ、従来例に係る振動低減装置で用いられているようなダンパを用いる必要がないから、振動低減装置をコンパクトな構造にすることができる。
【0020】
本発明の請求項2に係る振動低減装置では、重錘は、複数の平板状の重錘片が積層されている。従って、本発明の請求項2に係る振動低減装置によれば、重錘片の積層枚数を調整することにより、振動低減装置の吸収し得る振動の周波数を機械が発生する振動の周波数に合わせることができる。
【0021】
本発明の請求項3乃至6に係る振動低減装置では、重錘に、粘弾性体または粘性体が介在し得る孔が設けられている。従って、本発明の請求項3乃至6に係る振動低減装置によれば、重錘の振動により固定治具と壁部材と重錘との間の空間が収縮する際に、粘弾性体または粘性体が流入する空間の容積が多く、流入時における圧力損失が増大するから、より優れた減衰能力を発揮することができる。
【0022】
本発明の請求項7または8に係る振動低減装置では、温度変化により粘弾性体または粘性体の動的特性(剪断弾性率や損失係数)が変化しても、加熱器に供給する電力を制御することにより、粘弾性体または粘性体の温度を一定に保持することができる。従って、本発明の請求項7または8に係る振動低減装置によれば、振動低減装置の減衰性能の安定化を図ることができる。
【0023】
本発明の請求項9に係る振動低減装置では、重錘の側面に相対する壁部材の内面または壁部材の内面に相対する重錘の側面のうちの何れか一方に、先端に重錘の側面または壁部材の内面のうちのいずれか一方に摺接する低摩擦部材が付設され、重錘と壁部材との間の間隔を保持する間隔保持部材が突設されている。従って、本発明の請求項9に係る振動低減装置によれば、振動低減装置に衝撃等の外乱が作用しても、間隔保持部材により重錘と壁部材との間の間隔が保持されるので、間隔の変化に起因する粘弾性体または粘性体の動的特性の変動を回避することができる。また、間隔保持部材の先端に低摩擦部材が付設されているため、通常時に摺動抵抗が大きくなる等の支障が生じるようなことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態1乃至4に係る振動低減装置を、添付図面の図1乃至12を順次参照しながら、振動低減装置を圧延機に適用した場合を例として説明する。
【0025】
先ず、本発明の実施の形態1に係る振動低減装置を、添付図面の図1乃至3を順次参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る振動低減装置を付設した圧延機の模式的側面構成説明図、図2は本発明の実施の形態1に係る振動低減装置の平面図、図3は本発明の実施の形態1に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。
【0026】
先ず、図1は本発明の実施の形態1に係る振動低減装置を付設した圧延機の概要を、図1を参照しながら説明する。図に示す符号20は圧延機であって、この圧延機10は幅方向の両側の開口部にロールの端部を支えるチョックが設けられたハウジング21を備えている。このハウジング21の内側には、上側から順に上部バックアップロール22、上部圧延ロール23、この上部圧延ロール23との間で被圧延材Wを圧延する下部圧延ロール24、および下部バックアップロール25が設けられている。前記各ロール22,23,24,25それぞれの端部は、何れもハウジング21の幅方向の両側の開口部21aに設けられたチョックにより支持されている。また、前記下部バックアップロール25の下部に、下部バックアップロール25を介して前記下部圧延ロール24に上向きの力を付与する圧下装置26が設けられている。
【0027】
そして、このような構成の圧延機20の上部バックアップロール22の端部を回転可能に支持するバックアップロール用チョック22aの上に、後述する構成になる振動低減装置1が配設されている。この実施の形態1の場合にあっては、振動低減装置1が上部バックアップロール用チョック22aの上に配設されている。しかしながら、配設位置はこれに限らず、例えば上部圧延ロール用チョック23a、下部圧延ロール用チョック24a、下部バックアップロール用チョック25aの上であってもよく、またハウジング21や圧下装置26の何れの上に配設されていてもよいものである。
【0028】
前記振動低減装置1は、振動低減装置1を図示しない取付けボルトにより上部バックアップロール用チョック22aの上に取付けるためのベース盤である、平面視矩形状の固定治具(図3参照)2を備えている。この固定治具2の4個所のコーナ付近に、支持部材であるねじロッド4がねじ部を上側に向けて立設されている。これらねじロッド4は、ブロック状の重錘6に設けられたロッド挿通孔6hに挿通されており、そしてこの重錘6の上面と下面とがこれらねじロッド4に嵌着された、弾性体であるばね5,5より挟圧されて固定治具2に弾性支持されている。ところで、この実施の形態1においては、ねじロッド4を用いているが、このねじロッド4を周知の構成になる植込みボルトに置換することができる。
【0029】
前記重錘6に対する挟圧力は、ねじロッド4の上端の雄ねじに螺着されてなるナット7のねじ込み力がワッシャ7aを介して上部のばね5に伝達されることにより確保されるように構成されている。そして、前記重錘6と、この重錘6の底面6bと固定治具2の間、およびこの重錘6の外側面6aと固定治具2の4端面に固着されて立設され、この重錘6を四方から囲む壁部材3の内側との間の空間8内には、重錘6の上面よりも低位の液面を有する粘弾性体または粘性体9、より具体的には、シリコンオイル(液体)が入れられている。ところで、本実施の形態1においては、粘弾性体または粘性体9として、上記のとおり、シリコンオイル(液体)を用いた。しかしながら、これ以外に、例えば油、水ガラス、電気粘性流体、磁気粘性流体等も用いることができるから、特にシリコンオイルに限定されるものではなく、固液混合体でよいので、特に液体と限定されるものでもない。
【0030】
前記ばね5,5は、図3に示すように、細径部と、この細径部の基端部に連なり、前記細径部の外径よりも大径の平面円板部と、この平面円板部の端縁に連なって反細径部側に伸びる円環部とから構成されている。つまり、これらばね5,5は、何れも平面円板部の弾性変形によって重錘6に対する挟圧力が発生するように構成されている。なお、これらばね5,5を、例えば周知の構成になる皿ばねに置換することができる。
【0031】
以下、上記構成になる本発明の実施の形態1に係る振動低減装置1の作用態様について説明する。即ち、本発明の実施の形態1に係る振動低減装置1によれば、粘弾性体または粘性体9のばね特性により振動の振幅を減衰させる減衰作用を発揮させることができる。
これに加えて、重錘6の振動により空間8が収縮し、そして粘弾性体または粘性体9が固定治具2と壁部材3と重錘6との間に流出入する際に圧力損失が発生するため、さらなる減衰作用を発揮させることができる。さらに、粘弾性体または粘性体9のずり変形により減衰作用を発揮させることができる。本発明の実施の形態1に係る振動低減装置1によれば、上記のような複数の減衰作用によって大きな減衰効果が得られ、そして従来例に係る振動低減装置で用いられているようなダンパを用いる必要がないから、振動低減装置1をコンパクトな構造にすることができる。
【0032】
ところで、本発明の実施の形態1に係る振動低減装置1の場合においては、上記のとおり、前記重錘6と前記壁部材3との間の空間8に、粘弾性体または粘性体9が介在しているだけの構成になっている。しかしながら、本発明の実施の形態1′に係る、その平面図の図4、およびその一部断面視側面図の図5において示すように、重錘6の側面に相対する壁部材3の内面に、先端に重錘6の側面に摺接する低摩擦部材が付設され、これら重錘6と壁部材3との間の空間8の間隔を保持する複数の間隔保持部材9′を突設することができる。なお、低摩擦部材としては、例えばテフロン(商品名)と呼ばれる四フッ化エチレン樹脂を採用することができる。
【0033】
このように、壁部材3の内面に、複数の間隔保持部材9′を突設することにより、後述するとおりの効果を得ることができる。即ち、振動低減装置1に対して衝撃等の外乱が作用したとしても、これら複数の間隔保持部材9′により重錘6と壁部材3との間の間隔が保持されるので、間隔の変化に起因する粘弾性体または粘性体9の動的特性の変動を回避することができる。また、これら間隔保持部材9′の先端に低摩擦部材が付設され手いるため、通常時に摺動抵抗が大きくなる等の支障が生じるようなことがない。ところで、本実施の形態1′の場合には、間隔保持部材9′は壁部材6の内面に突設されているが、重錘6の側面に突設しても同等の効果を得ることができる。
【0034】
本発明の実施の形態2に係る振動低減装置を、図面を参照しながら説明する。図6は本発明の実施の形態2に係る振動低減装置の平面図であり、図7は本発明の実施の形態2に係る振動低減装置の重錘の側面図である。なお、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、重錘の構成の相違にあり、重錘の構成以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、同一のものには同一符号を付して、主としてその相違する点について説明する。
【0035】
即ち、本発明の実施の形態2に係る振動低減装置1の重錘6は、複数の平板状の重錘片6′が積層されている。そして、これら積層された重錘片6′は、最下部の重錘片6′に設けられたねじ穴に下端が螺着されてなる締結用ねじロッド10と、この締結用ねじロッド10の先端のねじに螺着されるナット11とからなる機械的締結手段によって一体的に締結されている。なお、この実施の形態2の場合にあっては、重錘6は、厚さが相違する2種類の重錘片6′から構成されている。しかしながら、このような構成に限らず、例えば重錘6は、厚さがすべて同一の重錘片6′から構成されていても良く、また厚さが相違する3種類以上の重錘片6′から構成されていてもよい。さらに、重錘6は部分的に積層構造になっていてもよいものである。
【0036】
上記実施の形態2に係る振動低減装置1によれば、積層された複数の重錘片6′が機械的締結手段により一体的に締結されているだけであるから、上記実施の形態1に係る振動低減装置1と同等の効果を得ることができる。そして、この効果に加えて、重錘片6′の積層枚数を調整することにより、この振動低減装置1の吸収し得る振動の周波数を、圧延機が発生する振動の周波数に容易に合わせることができる。
【0037】
従って、上記実施の形態2に係る振動低減装置1によれば、振動を発生する機械によって別々の振動低減装置を設計、製造するような必要がない。つまり、重錘片6′の枚数を増したり、厚さが相違する重錘片6′を用意したりするだけで、同構成の振動低減装置1により多くの機種の振動低減に対応することができる点において、上記実施の形態1に係る振動低減装置1よりも優れており、極めて経済的である。なお、締結用ねじロッド10の先端のねじに、図7に示すように、吊持用アイナット12を採用すると、重錘6を容易に移動させることができ、振動低減装置1の組立が容易になるから、振動低減装置1の製造コストの低減に寄与することができる。
【0038】
本発明の実施の形態3に係る振動低減装置を、図面を参照しながら説明する。図8は本発明の実施の形態3に係る振動低減装置の平面図であり、図9は本発明の実施の形態3に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。なお、本発明の実施の形態3が上記実施の形態1と相違するところは、重錘の構成の相違にあり、重錘の構成以外は上記形態1と全く同構成であるから、同一のものには同一符号を付して、主としてその相違する点について説明する。
【0039】
即ち、本発明の実施の形態3に係る振動低減装置1の場合においては、重錘6の上面側から下面側に連通し、前記粘弾性体または粘性体9が介在する孔13を複数設けたものである。ところで、本実施の形態3に係る振動低減装置1の場合は、粘弾性体または粘性体9が介在する孔13は、重錘6の上面側から下面側に連通している。しかしながら、この構成に限らず、本発明の実施の形態3′に係る振動低減装置の一部断面視側面図の図10に示すように、粘弾性体または粘性体9が介在する孔13は、重錘6の下面側から空けられ、上面側に貫通していない構成であっても同等の効果を得ることができ、特に孔13の上端の空間部分(上端開口部)が粘弾性体または粘性体9の上面より高い位置にあることが好ましい。なお、重錘6の底面の総面積に対する複数の粘弾性体または粘性体9が介在する孔13の下部開口総面積の割合(開口率)は4.25%である。また、孔13の直径は必ずしも一定でなくても良く、孔13の下端から上端の間に直径が小さい部分および/または大きい部分があってもよい。
【0040】
本発明の実施の形態3に係る振動低減装置1によれば、重錘6の振動により空間8が収縮する際に、粘弾性体または粘性体9が介在する孔13の存在により粘弾性体または粘性体9が流入する空間が多いので、粘弾性体または粘性体9の流入時における圧力損失が増大する。従って、上記実施の形態1に係る振動低減装置1よりも優れた減衰能力を発揮することができる。
【0041】
本発明の実施の形態4に係る振動低減装置を、図面を参照しながら説明する。図11は本発明の実施の形態4に係る振動低減装置の平面図であり、図12は本発明の実施の形態4に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。なお、本発明の実施の形態4が上記形態2と相違するところは、重錘の構成が相違すると共に、粘弾性体または粘性体の温度を一定に保持し得るように構成した点にあり、これ以外の構成については、上記実施の形態3と全く同構成であるから、同一のものには同一符号を付して、主としてその相違する点について説明する。
【0042】
即ち、本発明の実施の形態4に係る振動低減装置1では、上記実施の形態3の場合と同様、複数の重錘片6′からなる重錘6の上面側から下面側に連通し、前記粘弾性体または粘性体9が介在する孔13が設けられている。また、これら粘弾性体または粘性体9が介在する孔13の一つに粘弾性体または粘性体9の温度を検出する温度検出センサ14を遊嵌状態に嵌挿されると共に、粘弾性体または粘性体9が介在する孔13の列の左右方向の一個所ずつの締結用ねじロッド10の嵌挿穴に、温度調節手段である加熱器15が嵌入されている。そして、前記温度検出センサ14により検出される粘弾性体または粘性体9の温度が予め設定した所定の温度範囲になるように、前記加熱器15に電力を供給する電力供給装置16を制御するコントローラ17が設けられてなるものである。
【0043】
なお、本発明の実施の形態4に係る振動低減装置1においては、締結用ねじロッド10の嵌挿穴に加熱器15を嵌入したが、重錘6の粘弾性体または粘性体9が介在する孔13の列の左右方向の一個所ずつに、別途加熱器挿入穴を設けてもよい。また、粘弾性体または粘性体9が介在する孔13の1つに温度検出センサ14を遊嵌状態に嵌挿したが、重錘6に温度検出センサ14を嵌挿するセンサ嵌挿穴を別途設けてもよい。
【0044】
本発明の実施の形態4に係る振動低減装置1では、温度変化により動的特性(剪断弾性率や損失係数)が変化する粘弾性体または粘性体9であっても、温度検出センサ14で検出される温度が所定の温度になるように、コントローラ17により加熱器15に電力を供給する電力供給装置16が制御される。従って、本発明の実施の形態4に係る振動低減装置1によれば、加熱器15に供給される電力を制御することにより、粘弾性体または粘性体9の温度を一定に保持することができるから、この振動低減装置1の減衰性能の安定化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。なお、温度調節手段としては加熱器に限らず、粘弾性体または粘性体9を直接、または間接的に加熱/冷却するものであればよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の上記実施の形態1に係る振動低減装置1による実施例を、添付図面を参照しながら説明する。図13は本発明の形態1に係る振動低減装置を付設した圧延機の振動説明図であり、また図14は振動低減装置が付設されていない圧延機の振動説明図である。なお、これら図13、14における縦軸は上部バックアップロール用チョックの振動(単位;m/s2)であり、また横軸は時間(単位;s)である。
【0046】
本実施例においては、下記の仕様の振動低減装置を、図1に示す構成になる圧延機の上部バックアップロールを支持する上部バックアップロール用チョックに付設してその減衰効果を調査した。その調査結果は、図13に示すとおりである。
(1)重錘の重量 ;267Kg
(2)ばねの合計ばね定数 ;5.0×107N/m
(3)シリコンオイルの粘度;100万cst
図13によれば、振動低減装置が付設されていない圧延機の振動説明図の図14との比較において良く理解されるように、本実施例においては、異常振動がなくなっており、振動が抑制されていることが分かる。
【0047】
ところで、上記実施の形態2乃至4に係る振動低減装置1においては、何れも重錘6と壁部材3との間の空間8に粘弾性体または粘性体9が介在しているだけの場合を例として説明した。しかしながら、上記実施の形態1′に係る振動低減装置1の場合と同様、上記実施の形態2乃至4に係る振動低減装置1の重錘6の側面または壁部材3の内面のうちの何れか一方に、間隔保持部材9′を突設することができる。また、上記実施の形態1乃至4に係る振動低減装置1は、何れも本発明の具体例に過ぎず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内における設計変更等は自由自在であるから、上記実施の形態1乃至4に係る振動低減装置1の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る振動低減装置1によれば、コンパクトな構成であるにもかかわらず、大きな減衰能力があるので、圧延機の他に、例えば工作機械、破砕機等の産業用機械、自動車や鉄道等の車両、建設機械等のように振動を発生する多品種の機械に対して適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1に係る振動低減装置を付設した圧延機の模式的側面構成説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る振動低減装置の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。
【図4】本発明の実施の形態1′に係る振動低減装置の平面図である。
【図5】本発明の実施の形態1′に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る振動低減装置の平面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る振動低減装置の重錘の側面図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る振動低減装置の平面図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。
【図10】本発明の実施の形態3′に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係る振動低減装置の平面図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。
【図13】本発明の実施例に係り、本発明の実施の形態1に係る振動低減装置を付設した圧延機の振動説明図である。
【図14】本発明の実施の形態1に係る振動低減装置が付設されていない圧延機の振動説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1…振動低減装置,2…固定治具,3…壁部材,4…ねじロッド,5…ばね,6…重錘,6a…外側面,6b…底面,6h…ロッド挿通孔,6′…重錘片,7…ナット,7a…ワッシャ,8…空間,9…粘弾性体または粘性体,9′…間隔保持部材,10…締結用ねじロッド,11…ナット,12…吊持用アイナット,13…粘弾性体または粘性体が介在する孔,14…温度検出センサ,15…加熱器,16…電力供給装置,17…コントローラ
20…圧延機,21…ハウジング,21a…開口部,22…上部バックアップロール,22a…上部バックアップロール用チョック,23…上部圧延ロール,23a…上部圧延ロール用チョック,24…下部圧延ロール,24a…下部圧延ロール用チョック,25…下部バックアップロール,25a…下部バックアップロール用チョック,26…圧下装置
W…被圧延材
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動低減装置の改善に係り、より詳しくは、機械に付設され、この機械が発生する振動の振幅を減衰させる振動低減装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動を発生する機械、例えば圧延機では、周知のとおり、一対のワークロールの間に被圧延材を挟圧して通過させることによって圧延が行われている。これら一対のワークロールに対しては、各ワークロールの背後に設けられたバックアップロールを介して大きな圧下力が加えられる。このような構成になる圧延機において、被圧延材の圧延速度がある程度速くなると、チャタリングと称される数10〜数100Hzの異常振動が発生し、被圧延材に板厚不良が生じることがある。そこで、チャタリングが生じた場合、圧延速度を低下させることなく振動を抑制するために、圧延機に振動低減装置を付設することにより振動を低減させるようにしている。圧延機の振動を低減させる振動低減装置としては、例えば後述するような2つの典型例がある。
【0003】
先ず、第1従来例に係る圧延機の振動を低減させる振動低減装置は、下記のような構成になるものである。即ち、圧延機のハウジングに縦振動の振動周波数領域に合致させたばね定数を有する振動低減装置を配置することによって、圧延機のハウジングの縦振動を低減させる。このハウジングの振動低減によってワークロールの縦振動も低減され、被圧延材を高速で圧延しても圧延不良を起こすようなことがなくなる。なお、前記振動低減装置は、縦振動の振動周波数に合致させたばね定数を有するばねと、このばねの上端に固着された錘とから構成されている。また、ダンパを併用した構成のものも開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
次に、第2従来例に係る圧延機の振動を低減させる振動低減装置は、下記のような構成になるものである。即ち、振動低減装置は、錘が圧延機のバックアップロールの2つのチョックの間または2つの圧力台の間に設けられ、粘性流体を利用したダンパにより減衰を付与する構造、または梁の間に高減衰ゴムが積層されてなる構造の梁状のばねを用いる構造、またはバックアップロールの圧力台の周囲に設けられた錘で構成された構造になっており、圧延機の振動をコンパクトな錘(付加質量)により、効果的に低減し得る効果を期待することができる(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平5−104117号公報
【特許文献2】特開平9−267110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例1,2に係る振動低減装置は、何れも圧延機の振動を低減することができるので、それなりに有用であると考えられる。しかしながら、従来例に係るこれら振動低減装置は、それぞれ下記のような問題点を持っている。
【0006】
先ず、上記従来例1(特許文献1)に係る振動低減装置の場合には、振動吸収装置を圧延機のハウジングに設置する構成になっており、圧延ロールの振動を抑制しなければならないにもかかわらず、圧延機のハウジングを介して、圧延ロールの振動を抑制する構成となっている。従って、錘を重くしなければ十分な振動低減効果が得られないという問題がある。また、圧延機の圧下荷重等が変化した場合に、十分な振動低減効果が得られないという問題もある。
【0007】
次に、上記従来例2(特許文献2)の、錘が圧延機のバックアップロールのチョックの間または圧力台の間に設けられ、粘性流体を利用したダンパにより減衰を付与する構造の振動低減装置の場合には、バックアップロールとハウジングとの間の空間が狭いため、既存の圧延機に付設することが困難である。また、粘性流体を利用したダンパの場合、大きな減衰を得るためには、ダンパ部の寸法を大きくしなければならず、同様に既存の圧延機に付設することが困難である。さらに、梁の間に高減衰ゴムが積層された構造の梁状のばねを用いる構造の振動低減装置の場合には、梁状のばねの間に積層された高減衰ゴムは粘性流体を利用したダンパに比較して小さな減衰しか得ることができないため、振動を効果的に減衰させることが困難である。また、バックアップロールの圧力台の周囲に設けられた錘により構成された構造の振動低減装置の場合には、振動を効果的に減衰させることが困難である。
【0008】
従って、本発明の目的は、重錘とばねとダンパで構成すると共に、ダンパ部の寸法を大きくすることなく、より効果的に減衰機能を発揮し、圧延機等の機械に容易に付設することを可能ならしめる振動低減装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、従って上記課題を解決するために本発明の請求項1に係る振動低減装置が採用した手段は、振動する機械に付設される固定治具と、この固定治具に立設された支持部材と、この支持部材で貫通支持される重錘と、この支持部材に嵌着され、前記重錘の上部および下部を弾性支持する弾性体と、前記重錘の一部または全体の四方を囲む壁部材と、前記固定治具と前記壁部材とで形成される空間に充填される粘弾性体または粘性体とからなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項1に記載の振動低減装置において、前記重錘は、複数の平板状の重錘片を積層したものであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項1または2のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置において、前記重錘の下面側に孔を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項4に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置において、前記孔は、前記重錘の最下面側から最上面側に貫通する貫通孔であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項5に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項3に記載の振動低減装置において、前記孔の上端開口部は、前記粘弾性体または粘性体の上面より高い位置にあることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項6に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項1乃至5のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置において、前記粘弾性体または粘性体は、液体であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項7に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項1乃至6のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置において、前記粘弾性体または粘性体の温度を調節する温度調節手段を設けたことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項8に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項7に記載の振動低減装置において、前記粘弾性体または粘性体の温度を検出する温度検出センサを設け、この温度検出センサにより検出される前記粘弾性体または粘性体の温度が所定の温度範囲になるよう、前記温度調節手段を制御するコントローラを設けたことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項9に係る振動低減装置が採用した手段は、請求項1乃至8のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置において、前記重錘の側面に相対する前記壁部材の内面または前記壁部材の内面に相対する前記重錘の側面のうちの何れか一方に、先端に前記重錘の側面または壁部材の内面のうちのいずれか一方に摺接する低摩擦部材が付設され、前記重錘と前記壁部材との間の間隔を保持する間隔保持部材を突設したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1乃至9に係る振動低減装置では、振動する機械に付設される固定治具と、この固定治具に立設された支持部材と、この支持部材で貫通支持される重錘と、この支持部材に嵌着され、前記重錘の上部および下部を弾性支持する弾性体と、前記重錘の一部または全体の四方を囲む壁部材と、前記固定治具と前記壁部材とで形成される空間に充填される粘弾性体または粘性体とからなる構成になっている。
【0019】
従って、本発明の請求項1乃至9に係る振動低減装置によれば、粘弾性体または粘性体のばね特性により減衰作用を発揮させることができる。加えて、重錘の振動により固定治具と壁部材と重錘との間の空間が収縮し、そして粘弾性体または粘性体が固定治具と壁部材と重錘との間に流出入する際に圧力損失が発生するため、さらなる減衰作用を発揮させることができる。さらに、粘弾性体または粘性体のずり変形により減衰作用を発揮させることができる。上記のような複数の減衰作用によって大きな減衰効果が得られ、従来例に係る振動低減装置で用いられているようなダンパを用いる必要がないから、振動低減装置をコンパクトな構造にすることができる。
【0020】
本発明の請求項2に係る振動低減装置では、重錘は、複数の平板状の重錘片が積層されている。従って、本発明の請求項2に係る振動低減装置によれば、重錘片の積層枚数を調整することにより、振動低減装置の吸収し得る振動の周波数を機械が発生する振動の周波数に合わせることができる。
【0021】
本発明の請求項3乃至6に係る振動低減装置では、重錘に、粘弾性体または粘性体が介在し得る孔が設けられている。従って、本発明の請求項3乃至6に係る振動低減装置によれば、重錘の振動により固定治具と壁部材と重錘との間の空間が収縮する際に、粘弾性体または粘性体が流入する空間の容積が多く、流入時における圧力損失が増大するから、より優れた減衰能力を発揮することができる。
【0022】
本発明の請求項7または8に係る振動低減装置では、温度変化により粘弾性体または粘性体の動的特性(剪断弾性率や損失係数)が変化しても、加熱器に供給する電力を制御することにより、粘弾性体または粘性体の温度を一定に保持することができる。従って、本発明の請求項7または8に係る振動低減装置によれば、振動低減装置の減衰性能の安定化を図ることができる。
【0023】
本発明の請求項9に係る振動低減装置では、重錘の側面に相対する壁部材の内面または壁部材の内面に相対する重錘の側面のうちの何れか一方に、先端に重錘の側面または壁部材の内面のうちのいずれか一方に摺接する低摩擦部材が付設され、重錘と壁部材との間の間隔を保持する間隔保持部材が突設されている。従って、本発明の請求項9に係る振動低減装置によれば、振動低減装置に衝撃等の外乱が作用しても、間隔保持部材により重錘と壁部材との間の間隔が保持されるので、間隔の変化に起因する粘弾性体または粘性体の動的特性の変動を回避することができる。また、間隔保持部材の先端に低摩擦部材が付設されているため、通常時に摺動抵抗が大きくなる等の支障が生じるようなことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態1乃至4に係る振動低減装置を、添付図面の図1乃至12を順次参照しながら、振動低減装置を圧延機に適用した場合を例として説明する。
【0025】
先ず、本発明の実施の形態1に係る振動低減装置を、添付図面の図1乃至3を順次参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る振動低減装置を付設した圧延機の模式的側面構成説明図、図2は本発明の実施の形態1に係る振動低減装置の平面図、図3は本発明の実施の形態1に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。
【0026】
先ず、図1は本発明の実施の形態1に係る振動低減装置を付設した圧延機の概要を、図1を参照しながら説明する。図に示す符号20は圧延機であって、この圧延機10は幅方向の両側の開口部にロールの端部を支えるチョックが設けられたハウジング21を備えている。このハウジング21の内側には、上側から順に上部バックアップロール22、上部圧延ロール23、この上部圧延ロール23との間で被圧延材Wを圧延する下部圧延ロール24、および下部バックアップロール25が設けられている。前記各ロール22,23,24,25それぞれの端部は、何れもハウジング21の幅方向の両側の開口部21aに設けられたチョックにより支持されている。また、前記下部バックアップロール25の下部に、下部バックアップロール25を介して前記下部圧延ロール24に上向きの力を付与する圧下装置26が設けられている。
【0027】
そして、このような構成の圧延機20の上部バックアップロール22の端部を回転可能に支持するバックアップロール用チョック22aの上に、後述する構成になる振動低減装置1が配設されている。この実施の形態1の場合にあっては、振動低減装置1が上部バックアップロール用チョック22aの上に配設されている。しかしながら、配設位置はこれに限らず、例えば上部圧延ロール用チョック23a、下部圧延ロール用チョック24a、下部バックアップロール用チョック25aの上であってもよく、またハウジング21や圧下装置26の何れの上に配設されていてもよいものである。
【0028】
前記振動低減装置1は、振動低減装置1を図示しない取付けボルトにより上部バックアップロール用チョック22aの上に取付けるためのベース盤である、平面視矩形状の固定治具(図3参照)2を備えている。この固定治具2の4個所のコーナ付近に、支持部材であるねじロッド4がねじ部を上側に向けて立設されている。これらねじロッド4は、ブロック状の重錘6に設けられたロッド挿通孔6hに挿通されており、そしてこの重錘6の上面と下面とがこれらねじロッド4に嵌着された、弾性体であるばね5,5より挟圧されて固定治具2に弾性支持されている。ところで、この実施の形態1においては、ねじロッド4を用いているが、このねじロッド4を周知の構成になる植込みボルトに置換することができる。
【0029】
前記重錘6に対する挟圧力は、ねじロッド4の上端の雄ねじに螺着されてなるナット7のねじ込み力がワッシャ7aを介して上部のばね5に伝達されることにより確保されるように構成されている。そして、前記重錘6と、この重錘6の底面6bと固定治具2の間、およびこの重錘6の外側面6aと固定治具2の4端面に固着されて立設され、この重錘6を四方から囲む壁部材3の内側との間の空間8内には、重錘6の上面よりも低位の液面を有する粘弾性体または粘性体9、より具体的には、シリコンオイル(液体)が入れられている。ところで、本実施の形態1においては、粘弾性体または粘性体9として、上記のとおり、シリコンオイル(液体)を用いた。しかしながら、これ以外に、例えば油、水ガラス、電気粘性流体、磁気粘性流体等も用いることができるから、特にシリコンオイルに限定されるものではなく、固液混合体でよいので、特に液体と限定されるものでもない。
【0030】
前記ばね5,5は、図3に示すように、細径部と、この細径部の基端部に連なり、前記細径部の外径よりも大径の平面円板部と、この平面円板部の端縁に連なって反細径部側に伸びる円環部とから構成されている。つまり、これらばね5,5は、何れも平面円板部の弾性変形によって重錘6に対する挟圧力が発生するように構成されている。なお、これらばね5,5を、例えば周知の構成になる皿ばねに置換することができる。
【0031】
以下、上記構成になる本発明の実施の形態1に係る振動低減装置1の作用態様について説明する。即ち、本発明の実施の形態1に係る振動低減装置1によれば、粘弾性体または粘性体9のばね特性により振動の振幅を減衰させる減衰作用を発揮させることができる。
これに加えて、重錘6の振動により空間8が収縮し、そして粘弾性体または粘性体9が固定治具2と壁部材3と重錘6との間に流出入する際に圧力損失が発生するため、さらなる減衰作用を発揮させることができる。さらに、粘弾性体または粘性体9のずり変形により減衰作用を発揮させることができる。本発明の実施の形態1に係る振動低減装置1によれば、上記のような複数の減衰作用によって大きな減衰効果が得られ、そして従来例に係る振動低減装置で用いられているようなダンパを用いる必要がないから、振動低減装置1をコンパクトな構造にすることができる。
【0032】
ところで、本発明の実施の形態1に係る振動低減装置1の場合においては、上記のとおり、前記重錘6と前記壁部材3との間の空間8に、粘弾性体または粘性体9が介在しているだけの構成になっている。しかしながら、本発明の実施の形態1′に係る、その平面図の図4、およびその一部断面視側面図の図5において示すように、重錘6の側面に相対する壁部材3の内面に、先端に重錘6の側面に摺接する低摩擦部材が付設され、これら重錘6と壁部材3との間の空間8の間隔を保持する複数の間隔保持部材9′を突設することができる。なお、低摩擦部材としては、例えばテフロン(商品名)と呼ばれる四フッ化エチレン樹脂を採用することができる。
【0033】
このように、壁部材3の内面に、複数の間隔保持部材9′を突設することにより、後述するとおりの効果を得ることができる。即ち、振動低減装置1に対して衝撃等の外乱が作用したとしても、これら複数の間隔保持部材9′により重錘6と壁部材3との間の間隔が保持されるので、間隔の変化に起因する粘弾性体または粘性体9の動的特性の変動を回避することができる。また、これら間隔保持部材9′の先端に低摩擦部材が付設され手いるため、通常時に摺動抵抗が大きくなる等の支障が生じるようなことがない。ところで、本実施の形態1′の場合には、間隔保持部材9′は壁部材6の内面に突設されているが、重錘6の側面に突設しても同等の効果を得ることができる。
【0034】
本発明の実施の形態2に係る振動低減装置を、図面を参照しながら説明する。図6は本発明の実施の形態2に係る振動低減装置の平面図であり、図7は本発明の実施の形態2に係る振動低減装置の重錘の側面図である。なお、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、重錘の構成の相違にあり、重錘の構成以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、同一のものには同一符号を付して、主としてその相違する点について説明する。
【0035】
即ち、本発明の実施の形態2に係る振動低減装置1の重錘6は、複数の平板状の重錘片6′が積層されている。そして、これら積層された重錘片6′は、最下部の重錘片6′に設けられたねじ穴に下端が螺着されてなる締結用ねじロッド10と、この締結用ねじロッド10の先端のねじに螺着されるナット11とからなる機械的締結手段によって一体的に締結されている。なお、この実施の形態2の場合にあっては、重錘6は、厚さが相違する2種類の重錘片6′から構成されている。しかしながら、このような構成に限らず、例えば重錘6は、厚さがすべて同一の重錘片6′から構成されていても良く、また厚さが相違する3種類以上の重錘片6′から構成されていてもよい。さらに、重錘6は部分的に積層構造になっていてもよいものである。
【0036】
上記実施の形態2に係る振動低減装置1によれば、積層された複数の重錘片6′が機械的締結手段により一体的に締結されているだけであるから、上記実施の形態1に係る振動低減装置1と同等の効果を得ることができる。そして、この効果に加えて、重錘片6′の積層枚数を調整することにより、この振動低減装置1の吸収し得る振動の周波数を、圧延機が発生する振動の周波数に容易に合わせることができる。
【0037】
従って、上記実施の形態2に係る振動低減装置1によれば、振動を発生する機械によって別々の振動低減装置を設計、製造するような必要がない。つまり、重錘片6′の枚数を増したり、厚さが相違する重錘片6′を用意したりするだけで、同構成の振動低減装置1により多くの機種の振動低減に対応することができる点において、上記実施の形態1に係る振動低減装置1よりも優れており、極めて経済的である。なお、締結用ねじロッド10の先端のねじに、図7に示すように、吊持用アイナット12を採用すると、重錘6を容易に移動させることができ、振動低減装置1の組立が容易になるから、振動低減装置1の製造コストの低減に寄与することができる。
【0038】
本発明の実施の形態3に係る振動低減装置を、図面を参照しながら説明する。図8は本発明の実施の形態3に係る振動低減装置の平面図であり、図9は本発明の実施の形態3に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。なお、本発明の実施の形態3が上記実施の形態1と相違するところは、重錘の構成の相違にあり、重錘の構成以外は上記形態1と全く同構成であるから、同一のものには同一符号を付して、主としてその相違する点について説明する。
【0039】
即ち、本発明の実施の形態3に係る振動低減装置1の場合においては、重錘6の上面側から下面側に連通し、前記粘弾性体または粘性体9が介在する孔13を複数設けたものである。ところで、本実施の形態3に係る振動低減装置1の場合は、粘弾性体または粘性体9が介在する孔13は、重錘6の上面側から下面側に連通している。しかしながら、この構成に限らず、本発明の実施の形態3′に係る振動低減装置の一部断面視側面図の図10に示すように、粘弾性体または粘性体9が介在する孔13は、重錘6の下面側から空けられ、上面側に貫通していない構成であっても同等の効果を得ることができ、特に孔13の上端の空間部分(上端開口部)が粘弾性体または粘性体9の上面より高い位置にあることが好ましい。なお、重錘6の底面の総面積に対する複数の粘弾性体または粘性体9が介在する孔13の下部開口総面積の割合(開口率)は4.25%である。また、孔13の直径は必ずしも一定でなくても良く、孔13の下端から上端の間に直径が小さい部分および/または大きい部分があってもよい。
【0040】
本発明の実施の形態3に係る振動低減装置1によれば、重錘6の振動により空間8が収縮する際に、粘弾性体または粘性体9が介在する孔13の存在により粘弾性体または粘性体9が流入する空間が多いので、粘弾性体または粘性体9の流入時における圧力損失が増大する。従って、上記実施の形態1に係る振動低減装置1よりも優れた減衰能力を発揮することができる。
【0041】
本発明の実施の形態4に係る振動低減装置を、図面を参照しながら説明する。図11は本発明の実施の形態4に係る振動低減装置の平面図であり、図12は本発明の実施の形態4に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。なお、本発明の実施の形態4が上記形態2と相違するところは、重錘の構成が相違すると共に、粘弾性体または粘性体の温度を一定に保持し得るように構成した点にあり、これ以外の構成については、上記実施の形態3と全く同構成であるから、同一のものには同一符号を付して、主としてその相違する点について説明する。
【0042】
即ち、本発明の実施の形態4に係る振動低減装置1では、上記実施の形態3の場合と同様、複数の重錘片6′からなる重錘6の上面側から下面側に連通し、前記粘弾性体または粘性体9が介在する孔13が設けられている。また、これら粘弾性体または粘性体9が介在する孔13の一つに粘弾性体または粘性体9の温度を検出する温度検出センサ14を遊嵌状態に嵌挿されると共に、粘弾性体または粘性体9が介在する孔13の列の左右方向の一個所ずつの締結用ねじロッド10の嵌挿穴に、温度調節手段である加熱器15が嵌入されている。そして、前記温度検出センサ14により検出される粘弾性体または粘性体9の温度が予め設定した所定の温度範囲になるように、前記加熱器15に電力を供給する電力供給装置16を制御するコントローラ17が設けられてなるものである。
【0043】
なお、本発明の実施の形態4に係る振動低減装置1においては、締結用ねじロッド10の嵌挿穴に加熱器15を嵌入したが、重錘6の粘弾性体または粘性体9が介在する孔13の列の左右方向の一個所ずつに、別途加熱器挿入穴を設けてもよい。また、粘弾性体または粘性体9が介在する孔13の1つに温度検出センサ14を遊嵌状態に嵌挿したが、重錘6に温度検出センサ14を嵌挿するセンサ嵌挿穴を別途設けてもよい。
【0044】
本発明の実施の形態4に係る振動低減装置1では、温度変化により動的特性(剪断弾性率や損失係数)が変化する粘弾性体または粘性体9であっても、温度検出センサ14で検出される温度が所定の温度になるように、コントローラ17により加熱器15に電力を供給する電力供給装置16が制御される。従って、本発明の実施の形態4に係る振動低減装置1によれば、加熱器15に供給される電力を制御することにより、粘弾性体または粘性体9の温度を一定に保持することができるから、この振動低減装置1の減衰性能の安定化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。なお、温度調節手段としては加熱器に限らず、粘弾性体または粘性体9を直接、または間接的に加熱/冷却するものであればよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の上記実施の形態1に係る振動低減装置1による実施例を、添付図面を参照しながら説明する。図13は本発明の形態1に係る振動低減装置を付設した圧延機の振動説明図であり、また図14は振動低減装置が付設されていない圧延機の振動説明図である。なお、これら図13、14における縦軸は上部バックアップロール用チョックの振動(単位;m/s2)であり、また横軸は時間(単位;s)である。
【0046】
本実施例においては、下記の仕様の振動低減装置を、図1に示す構成になる圧延機の上部バックアップロールを支持する上部バックアップロール用チョックに付設してその減衰効果を調査した。その調査結果は、図13に示すとおりである。
(1)重錘の重量 ;267Kg
(2)ばねの合計ばね定数 ;5.0×107N/m
(3)シリコンオイルの粘度;100万cst
図13によれば、振動低減装置が付設されていない圧延機の振動説明図の図14との比較において良く理解されるように、本実施例においては、異常振動がなくなっており、振動が抑制されていることが分かる。
【0047】
ところで、上記実施の形態2乃至4に係る振動低減装置1においては、何れも重錘6と壁部材3との間の空間8に粘弾性体または粘性体9が介在しているだけの場合を例として説明した。しかしながら、上記実施の形態1′に係る振動低減装置1の場合と同様、上記実施の形態2乃至4に係る振動低減装置1の重錘6の側面または壁部材3の内面のうちの何れか一方に、間隔保持部材9′を突設することができる。また、上記実施の形態1乃至4に係る振動低減装置1は、何れも本発明の具体例に過ぎず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内における設計変更等は自由自在であるから、上記実施の形態1乃至4に係る振動低減装置1の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る振動低減装置1によれば、コンパクトな構成であるにもかかわらず、大きな減衰能力があるので、圧延機の他に、例えば工作機械、破砕機等の産業用機械、自動車や鉄道等の車両、建設機械等のように振動を発生する多品種の機械に対して適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1に係る振動低減装置を付設した圧延機の模式的側面構成説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る振動低減装置の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。
【図4】本発明の実施の形態1′に係る振動低減装置の平面図である。
【図5】本発明の実施の形態1′に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る振動低減装置の平面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る振動低減装置の重錘の側面図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る振動低減装置の平面図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。
【図10】本発明の実施の形態3′に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係る振動低減装置の平面図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係る振動低減装置の一部断面視側面図である。
【図13】本発明の実施例に係り、本発明の実施の形態1に係る振動低減装置を付設した圧延機の振動説明図である。
【図14】本発明の実施の形態1に係る振動低減装置が付設されていない圧延機の振動説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1…振動低減装置,2…固定治具,3…壁部材,4…ねじロッド,5…ばね,6…重錘,6a…外側面,6b…底面,6h…ロッド挿通孔,6′…重錘片,7…ナット,7a…ワッシャ,8…空間,9…粘弾性体または粘性体,9′…間隔保持部材,10…締結用ねじロッド,11…ナット,12…吊持用アイナット,13…粘弾性体または粘性体が介在する孔,14…温度検出センサ,15…加熱器,16…電力供給装置,17…コントローラ
20…圧延機,21…ハウジング,21a…開口部,22…上部バックアップロール,22a…上部バックアップロール用チョック,23…上部圧延ロール,23a…上部圧延ロール用チョック,24…下部圧延ロール,24a…下部圧延ロール用チョック,25…下部バックアップロール,25a…下部バックアップロール用チョック,26…圧下装置
W…被圧延材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動する機械に付設される固定治具と、この固定治具に立設された支持部材と、この支持部材で貫通支持される重錘と、この支持部材に嵌着され、前記重錘の上部および下部を弾性支持する弾性体と、前記重錘の一部または全体の四方を囲む壁部材と、前記固定治具と前記壁部材とで形成される空間に充填される粘弾性体または粘性体とからなることを特徴とする振動低減装置。
【請求項2】
前記重錘は、複数の平板状の重錘片を積層したものであることを特徴とする請求項1に記載の振動低減装置。
【請求項3】
前記重錘の下面側に孔を設けたことを特徴とする請求項1または2のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置。
【請求項4】
前記孔は、前記重錘の最下面側から最上面側に貫通する貫通孔であることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置。
【請求項5】
前記孔の上端開口部は、前記粘弾性体または粘性体の上面より高い位置にあることを特徴とする請求項3に記載の振動低減装置。
【請求項6】
前記粘弾性体または粘性体は、液体であることを特徴とする請求項1乃至5のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置。
【請求項7】
前記粘弾性体または粘性体の温度を調節する温度調節手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置。
【請求項8】
前記粘弾性体または粘性体の温度を検出する温度検出センサを設け、この温度検出センサにより検出される前記粘弾性体または粘性体の温度が所定の温度範囲になるよう、前記温度調節手段を制御するコントローラを設けたことを特徴とする請求項7に記載の振動低減装置。
【請求項9】
前記重錘の側面に相対する前記壁部材の内面または前記壁部材の内面に相対する前記重錘の側面のうちの何れか一方に、先端に前記重錘の側面または壁部材の内面のうちのいずれか一方に摺接する低摩擦部材が付設され、前記重錘と前記壁部材との間の間隔を保持する間隔保持部材を突設したことを特徴とする請求項1乃至8のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置。
【請求項1】
振動する機械に付設される固定治具と、この固定治具に立設された支持部材と、この支持部材で貫通支持される重錘と、この支持部材に嵌着され、前記重錘の上部および下部を弾性支持する弾性体と、前記重錘の一部または全体の四方を囲む壁部材と、前記固定治具と前記壁部材とで形成される空間に充填される粘弾性体または粘性体とからなることを特徴とする振動低減装置。
【請求項2】
前記重錘は、複数の平板状の重錘片を積層したものであることを特徴とする請求項1に記載の振動低減装置。
【請求項3】
前記重錘の下面側に孔を設けたことを特徴とする請求項1または2のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置。
【請求項4】
前記孔は、前記重錘の最下面側から最上面側に貫通する貫通孔であることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置。
【請求項5】
前記孔の上端開口部は、前記粘弾性体または粘性体の上面より高い位置にあることを特徴とする請求項3に記載の振動低減装置。
【請求項6】
前記粘弾性体または粘性体は、液体であることを特徴とする請求項1乃至5のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置。
【請求項7】
前記粘弾性体または粘性体の温度を調節する温度調節手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置。
【請求項8】
前記粘弾性体または粘性体の温度を検出する温度検出センサを設け、この温度検出センサにより検出される前記粘弾性体または粘性体の温度が所定の温度範囲になるよう、前記温度調節手段を制御するコントローラを設けたことを特徴とする請求項7に記載の振動低減装置。
【請求項9】
前記重錘の側面に相対する前記壁部材の内面または前記壁部材の内面に相対する前記重錘の側面のうちの何れか一方に、先端に前記重錘の側面または壁部材の内面のうちのいずれか一方に摺接する低摩擦部材が付設され、前記重錘と前記壁部材との間の間隔を保持する間隔保持部材を突設したことを特徴とする請求項1乃至8のうちの何れか一つの項に記載の振動低減装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−120756(P2007−120756A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260954(P2006−260954)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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