説明

振動体のオイル潤滑装置

【課題】 この発明は、振動体ケース内軸受けを介して偏心錘を軸支させた振動体において、偏心錘の回転によってオイルを効率よく軸受け方向へ移動させ、軸受け部へのオイルの供給効率を可及的に向上することを課題とするものである。
【解決手段】 振動体ケース1の軸受け2に偏心錘3を軸支した振動体において、前記偏心錘3の低ウエイト側表面をオイル受け面5とし、前記オイル受け面5の軸方向両側にはオイル受け面のオイルを軸受け方向へ案内する案内手段7を設ける。この案内手段7は、前記偏心錘の軸方向中央部から軸受け側に向けて回転時の遠心力が次第に大きくなるように構成し、案内手段の両端部には前記軸受けに対向したオイル流出部9を設ける。係る構成により、オイル受け面のオイルは回転による遠心力を受けて案内手段に沿って軸受け方向へ移動し、オイル流出部から軸受け側へ流出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、路面振動締固め機などの振動発生手段として用いられる振動体において、振動体の内部に貯留された潤滑オイルの潤滑装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の振動体のオイル潤滑機構は、振動体ケース内に貯留されたオイルが、偏心錘の回転によって振動体ケース内に拡散されることで、偏心錘回転軸の軸受け部にオイルが付着し、偏心錘回転軸を潤滑している。かかるオイル潤滑機構は、偏心錘の回転による振動、撹拌、回転風圧によってオイルが拡散されるものであるが、そのオイルの拡散は振動体ケース内において無秩序に拡散され方向性がないため、軸受け部に効果的にオイルを供給することができない。
【0003】
オイルの拡散方向に一定の方向性を持たせたものとして次の先行技術がある。
【0004】
【特許文献1】特許第3447993号公報
【0005】
この特許文献の発明は、偏心錘回転軸を軸支するベアリングの外側(偏心錘が存在しない側)からもベアリングにオイルを供給するために、偏心錘回転軸の端部に中空状にしたオイル供給路を設け、そのオイル供給路の偏心錘側の内径を回転軸外側端部の内径よりも小さいテーパー形に形成したして構成したものである。
【0006】
この発明によれば、回転軸の回転によって生じる遠心力を利用して、オイル供給路に付着したオイルを外側へ流れるように方向性を持たせることができるとされているが、偏心錘に付着したオイルについては方向性を持たせることができないのでテーパー状としたオイル供給路にオイルを効果的に流入させることができず、その結果軸受け部にオイルを効率よく供給することは期待できない。
【0007】
すなわち、この発明の偏心錘上面のオイル受け部の回転軸に沿った両側には一対の平行な補強壁が設けられているが、偏心錘回転時に生じる遠心力によってオイル受け部に付着したオイルはオイル受け部底部に押しやられながら補強壁側に向かって移動するものの、補強壁部分における遠心力は全長に亘り同一であるから遠心力によってオイルの流れを積極的にオイル受け部方向に向けることはできないのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、振動体ケース内に軸受けを介して偏心錘を軸支させた振動体において、偏心錘の回転によってオイルを効率よく軸受け方向へ移動させ、軸受け部へのオイルの供給効率を可及的に向上することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
振動体ケースの軸受けに偏心錘を軸支した振動体において、前記偏心錘の低ウエイト側表面をオイル受け面とし、前記オイル受け面の軸方向両側にはオイル受け面のオイルを軸受け方向へ案内する案内手段を設ける。この案内手段は、前記偏心錘の軸方向中央部から軸受け側に向けて回転時の遠心力が次第に大きくなるように構成し、案内手段の両端部には前記軸受けに対向したオイル流出部を設ける。
【0010】
前記オイル受け面は、その表面で振動ケース内に拡散しているオイルを受ける機能、偏心錘の回転時に作用する遠心力によって表面のオイルを両側へ移動させる機能を奏するものであればよい。
前者の機能を最大限に得るためには、オイル受け面の形状を偏心錘の軸心を通る断面形状と一致させることが好ましく、後者の機能を最大限に得るためには、偏心軸の軸心部分における回転時の遠心力を大きくするために、オイル受け面は軸心を通る面とすることが好ましく、回転中にオイルがオイル受け面に押しつけられる作用を得るためにはオイル受け面を軸心よりも低い位置とすることが好ましい。
【0011】
前記案内手段は、案内壁又は案内溝が考えられる。何れの場合もオイル受け面における軸方向中央部における遠心力よりも軸受け側の遠心力が大きくなるように構成する。
すなわち、案内手段を案内壁とした場合は、オイル受け面両側の対向する案内壁の間隔を、偏心錘の軸方向中央部で最小とし、軸受け側に向けて次第に間隔を大きくする(請求項2)。
案内手段を案内溝とした場合は、オイル受け面両側の対向する案内溝の間隔を、偏心錘の軸方向中央部で最小とし、軸受け側に向けて次第に間隔を大きくする(請求項3)。また、溝の間隔は変えずに溝の深さを、偏心錘の軸方向中央部で最小とし、軸受け側に向けて次第に大きくする(軸心から溝底までの距離を中央部で最小とし次第に大きくする)手法もある。
【0012】
案内手段としての案内壁又は案内溝の構成を請求項2,3のようにすると、案内手段は平面視において中央部が狭窄された構成となる。オイル受け面の形状を方形としつつ上記ような構成とした案内手段を設けると、案内手段の外側にもオイル受け面が存在し、この部分に付着したオイルは軸受け側の流出部に至ることができず効率が悪い。
そこで、オイル受け面の形状は案内手段の形状に合わせて中央部を狭窄させた形状とすることが好ましい。
また、上記の形状とすると、偏心錘の外面に付着したオイルも偏心錘の外面を軸受け側に流れる作用を得ることができる。
【0013】
請求項4の発明は、振動体ケースの内壁に凸部を形成し、この凸部からケース内壁に付着したオイルがオイル受け面に落下するようにしたものである。前記凸部は偏心錘回転時に偏心錘と接触しない大きさとし、振動体の設置時に上側に位置する部分(天井部)に設ければ足りる。その形状は、凸条を1本又は複数本設けたり、突起を複数設けたり、両者の組合せとしたりする。また凸部は振動体ケースの内壁天井部全般に亘って凸条を形成するのが好ましいが、一部にのみ設けてもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、オイル受け面に滞留するオイルは偏心錘の回転によってオイル受け面に生じる遠心力によって案内手段方向に押しやられる。そして案内手段は中央部から両側に向けて次第に遠心力が大きくなるようにしてあるので、案内手段に到達したオイルは、案内手段に沿って偏心錘回転軸方向に向かって移動する。そして、案内手段端部にまで到達したオイルは、軸受けに対向した流出部から流出し、軸受けに供給される。
したがって、オイルの流動方向に方向性を与えて軸受け部へのオイルの供給効率を可及的に向上することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、振動体ケースの内壁天井部には凸部を設けてあるから、偏心錘の回転によって拡散されて振動体ケース内壁面に付着したオイルがこの凸部に集中しやすくなり、オイルの滴下を促進し、オイルの回収効率が向上する。滴下したオイルは偏心錘のオイル受け面ないし偏心錘外周に付着し、偏心錘の回転で生じる遠心力によって再びベアリングに供給されることとなり、振動体ケース内におけるオイルの循環を促進する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1において、振動体ケース1の内部にはベアリング2を介して偏心錘3の回転軸4が回転自在に軸支されている。前記偏心錘3は回転により振動が発生するように、一側を大ウエイト部3a、他側を低ウエイト部としてある。
【0017】
偏心錘3の低ウエイト部の表面はオイル受け面5としてある。このオイル受け面5は、その上面が偏心錘3の回転軸心6より僅かに低い位置とし、その表面は平滑面としてあり、その軸心6と直交する面における断面形状は緩やかな凹弧をなしている。
前記オイル受け面5の回転軸を挟む両側にそれぞれ案内壁7が設けてある。これら両案内壁7は、対向間隔が偏心錘3の軸方向中央部で最小とし、軸受け側に向けて次第に大きくなるように緩い曲線を描いている。この案内壁は偏心錘外周が偏心錘上面より突出して、すなわち錘材から前記オイル受け面5を抉り取った残部により形成されている。
前記偏心錘3の大ウエイト部3aの外径は、前記案内壁7の軸心6を通る面における断面を外径とする円であって、全体として中央部が狭窄された鼓状をなしている。 前記オイル受け面5の両端部はオイル受け面から突出した軸ハウジング8よりも幅広としてあり、オイル受け面5の縁に位置する案内壁7の端部と軸ハウジング8との間にはオイル流出部9が形成されている。そしてこのオイル流出部9はベアリング2に対向している。
【0018】
振動体ケース1の内壁面天井部には、軸心6方向の凸条10が形成してある。
【0019】
以下この発明のオイル潤滑機構における作動について説明する。
図3において、振動体ケース1内の底部にはオイル11が貯留されている。偏心錘3を回転させると、偏心錘3の回転によって生じる振動ケースの振動、偏心錘3による撹拌、回転風圧などによって貯留されたオイル11が振動ケース1内で次第に拡散される。
図1において、拡散されたオイル11は回転中の偏心錘3のオイル受け面5及び外周に付着する。オイル受け面5に付着したオイル11は矢示したように遠心力によって両側の案内壁7方向に押しやられ、案内壁7に到達する。案内壁7は軸方向中央部が窪み、軸受け側にかけて次第に対向する案内壁との間隔が広くなるように形成されているから、偏心錘3の回転時における案内壁の回転径は中央部から両端部に向けて次第に大きくなり、これに伴って遠心力も両端部の方が大きくなる。したがって、案内壁7まで達したオイルは案内壁7に沿って遠心力の大きい方へと流れる。そして、案内壁7の端部に達すると流出部9からベアリング2に向かって吐出される。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明は、路面振動締固め機などの振動発生手段として用いられる振動体におけるオイル潤滑装置に関するものであって、そのオイル潤滑効率を向上させるものであり、産業上の利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態の横断面図
【図2】同じく偏心錘の斜視図
【図3】同じく実施形態の縦断面図
【図4】同じく偏心錘回転時におけるオイルの流れを示す縦断面図
【符号の説明】
【0022】
1 振動体ケース
2 ベアリング
3 偏心錘
3a 大ウエイト部
4 回転軸
5 オイル受け面
6 回転軸心
7 案内壁
8 軸ハウジング
9 流出部
10 凸条
11 オイル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動体ケースの軸受けに偏心錘が軸止され、
前記偏心錘は、その低ウエイト側表面がオイル受け面とされ、
前記オイル受け面の軸方向両側にはオイル受け面のオイルを軸受け方向へ案内する案内手段が設けられ、
前記案内手段は、前記偏心錘の軸方向中央部から軸受側に向けて回転時の遠心力が次第に大きくなるように構成され、
前記案内手段の両端部には前記軸受けに対向したオイル流出部が設けられ、
前記偏心錘の回転によって発生する遠心力により、前記オイル受け面のオイルが前記案内手段側へ流れ、次いで前記案内手段に案内されてその端部から軸受け側に流出するようにした、
振動体のオイル潤滑装置
【請求項2】
案内手段は案内壁とし、対向するオイル受け面両側の案内壁の間隔は、偏心錘の軸方向中央部で最小とし、軸受側に向けて次第に大きくした、請求項1記載の振動体のオイル潤滑装置
【請求項3】
案内手段は溝とし、対向するオイル受け面両側の溝の間隔は、偏心錘の軸方向中央部で最小とし、軸受け側に向けて次第に大きくした、請求項1記載の振動体のオイル潤滑装置
【請求項4】
振動体ケースの内壁には凸部を設け、この凸部から振動体ケースの内壁天井に付着したオイルが偏心錘に落下するようにした、請求項1ないし3のいずれかに記載の振動体のオイル潤滑機構

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−336692(P2006−336692A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159523(P2005−159523)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(391040397)エクセン株式会社 (22)
【Fターム(参考)】