説明

振動切削装置及び振動切削方法

本発明は振動切削装置1と振動切削方法を開示する。振動切削装置は、少なくとも1個の第1の振動ヘッド10と、キロヘルツ範囲を下回る周波数範囲内で振動させるために第1の振動ヘッド10を選択的に電気的に励振し得るコントローラと、第1の固定具30と第2の固定具40との間に配置された切削工具50とを有し、第1の固定具30が第1の振動ヘッド10に接続されており、第1の振動ヘッド10の機械的振動を切削工具50に伝達することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動切削装置及び振動切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、台所用具である自動ナイフや切削工具を備えた超音波ソノトロード(sonotrode)等の種々の切削装置が従来技術において知られている。
【0003】
超音波切削は、切削工具の振幅がマイクロメートルの範囲でキロヘルツの範囲の振動によって行われる。切削ソノトロードの動きが上下方向であるため、従来の切削よりもたたき切りに似ている。超音波切削は、例えば食品工業において使用される。超音波切削の欠点は、切削工具の振幅がマイクロメートルの範囲であるため、切削工具の鋸歯状構造の効果が無くなってしまうことである。何故なら、切削工具の歯の寸法が、実現可能な切削工具の最大振幅よりも大きいためである。また、別の欠点は、超音波切削用の切削工具の長さは30cm未満であり、そうでないと作動中に不安定になってしまうことである。しかし、切削工具の長さが制限されているため、不都合なことに、超音波切削の適用範囲が制限される。また、超音波を用いた場合、垂直及び斜めにしか切削できない。超音波切削ソノトロードを用いて水平方向の切削を行いたい場合、上側の切削片が自動的に切削ソノトロードの上に乗ることになるが、これは望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、広範囲の用途に使用できると共に経済的に成り立つ切削装置及び切削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、独立請求項1に記載の振動切削装置、及び独立請求項12に記載の振動切削方法によって達成される。本発明の有利な実施形態及び更なる展開は、以下の説明、図面及び添付の請求の範囲に示されている。
【0006】
本発明による振動切削装置は、少なくとも1個の第1の振動ヘッドと、キロヘルツ範囲を下回る周波数範囲内で振動させるために第1の振動ヘッドを選択的に電気的に励振し得るコントローラと、第1及び第2の固定具の間に配置された切削工具とを有し、少なくとも第1の固定具が第1の振動ヘッドに接続されており、第1の振動ヘッドの機械的振動を切削工具に伝達し得ることを特徴とする。
【0007】
本発明による装置の助けにより、超音波の範囲を下回る周波数の機械的振動が切削工具に伝達される。この特別に選択した周波数範囲は、切削工具の振動運動と、鋸歯等の切削工具の特別な幾何学的形状との両方を組み合わせて使用することを可能にする。使用する振動ヘッドは、例えば、プラスチックの振動溶着において知られており、寿命が長く、磨耗や破損が少ないという特徴がある。切削工具は2個の固定具に固定されるが、少なくとも1個の振動ヘッドの振動は、固定具の一方のみ又は両方に伝えられる。片方の固定具のみに振動が伝えられる場合には、他方の固定具、即ち切削工具の他端のみが、例えば、ばねを介して取り付けられており、一体的に放出され/伝達された振動に追従できる。
【0008】
本振動切削装置の一実施形態によれば、その振動ヘッドは、ばねセットを介して第1の固定具に接続されている。第2の振動ヘッドを第1の振動ヘッドと組み合わせて使用することが更に好ましく、第2の振動ヘッドは第2の固定具に接続されており、第1及び第2の振動ヘッドは電気的及び/又は機械的に結合されている。
【0009】
ばねセットを1個以上の振動ヘッドと組み合わせて使用することにより、切削工具の切り込みに必要な振動の発生と維持が可能となる。利用可能な設置空間と、切削すべき材料によっては、切削工具に切削運動を伝達する1個、2個又は複数の振動ヘッドを組み合わせて使用できる。少なくとも2個の振動ヘッドが最適に振動を発生できるようにするために、それらは共通の電気制御グループによって作動される。少なくとも2個の振動ヘッドがこのようにして電気的に結合されることにより、この少なくとも2個の振動ヘッドは、それらが作り出す振動エネルギーが最適に補われるように作動される。例えば、振動ヘッドを共振周波数帯で動作させることが好ましい。電気的結合に替え、或いは、それと組み合わせて、少なくとも2個の振動ヘッドを機械的に結合することができる。この種の機械的に結合は、例えば、少なくとも2個の振動ヘッドの間を強固に接続することによって実現でき、これにより、少なくとも2個の振動ヘッドの同期作動が可能とされる。
【0010】
50〜500Hz、好ましくは50〜60Hzの周波数範囲で振動切削装置を動作させることが好ましい。本振動切削装置の別の実施形態では、切削工具の長手軸と平行に±5mmの振幅で切削工具が変移される。また、10〜150cm、好ましくは30〜100cmの長さを有する切削工具が使用される。これを実現するために、例えば、円滑なブレード、鋸歯付きのブレード、ワイヤ又は綱から成る切削工具が使用される。
【0011】
本発明の別の実施形態では、振動切削装置は、切削すべき製品のための作業テーブルを有し、作業テーブルが、少なくとも切削工具の長手軸に対して垂直方向に、好ましくは3空間方向の全ての方向に移動可能であるか、或いは、切削工具が作業テーブルに対して平行に、好ましくは3空間方向の全ての方向に移動可能である。
【0012】
上記の作業テーブルにより、切削すべき製品が所望の方法で振動切削装置に運ばれる。この目的のために、切削すべき製品は作業テーブルによって保持され、作業テーブルに固定され、作業テーブルを通して振動切削装置に運ばれ、及び/又は作業テーブルを通して振動切削装置によって排出される。最も単純な実施形態では、切削すべき製品の固定、所望の供給及び排出は、切削工具の長手軸に対して垂直の移動によって実現される。これは、作業テーブル自体の移動によって行われる。また、作業テーブルの切削装置と対向する側にコンベアを配置することも考えられる。切削すべき製品はこのコンベア上に配置され、これにより、切削すべき製品の切削工具への供給及び切削すべき製品の切削工具による排出、並びに、切削すべき製品を通しての切削工具の制御された移動が所望の方法で行われる。振動切削装置によって快適に作業を行うためには、作業テーブルが3空間方向の全ての方向に移動でき、これにより切削すべき製品を切削工具に対して如何なる場所にも位置決めできるようにすることも有利である。また、この種の作業テーブルの操作性は、切削すべき製品を通して切削を任意の方向で行えることを保証する。また、作業テーブルが固定的に設置され、切削すべき製品が定義された位置に保持されることが好ましい。切削すべき製品を通して切れ目を入れるために、切削工具を、少なくとも作業テーブルの上側支持面と平行に動かすことができる。また、切削工具を3空間方向の全ての方向に移動でき、作業テーブルが固定されているのにも関わらず、切削すべき製品を通して切れ目を入れることができるのが有利である。
【0013】
他の実施形態では、振動切削装置は、切削すべき製品を通して同時に移動できる複数の切削工具を有する。複数の切削工具をそれらの長手軸に関して互いに平行に及び/又は所定の角度で位置合わせするのが好ましい。更に、複数の切削工具を、それらの切削方向に対して平行及び/又は垂直に、互いにオフセットして配置するのが好ましい。また、本発明は、振動切削方法であって、キロヘルツ範囲を下回る周波数範囲、好ましくは50〜500Hzの範囲で振動させるために少なくとも1個の第1の振動ヘッドを励振するステップと、この振動を切削工具に、第1の振動ヘッドと切削工具との間の機械的結合を介して伝達するステップと、切削すべき製品を備えた作業テーブルを切削工具の長手軸に対して垂直に移動させて製品を切削するステップとを有する振動切削方法を提供する。上記方法の別の実施形態では、該方法は、機械的に及び/又は電気的に互いに結合された少なくとも第1の振動ヘッドと第2の振動ヘッドを励振するステップと、50〜60Hzの周波数で及び/又は±5mmの振幅で切削工具の長手軸と平行に切削工具を変移させるステップとを任意的に有する。本方法の更なる実施形態として、複数の切削工具を切削すべき製品を通して同時に移動させることも考えられる。この目的のために、複数の切削工具が、それらの切削方向に対して平行及び/又は垂直に、互いにオフセットされて配置されており、複数の切削工具が切削すべき製品を通してこの配置に従って移動される。
【0014】
本発明を添付の図面を使用してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】振動切削装置の第1の実施形態の概略側面図。
【図2】振動切削装置の別の実施形態の斜視図。
【図3】図2の振動切削装置の側面図。
【図4】振動切削装置の別の実施形態。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明による振動切削装置1の第1の実施形態を示す。この振動切削装置1は、振動プレート15に接続された振動ヘッド10を有する。例として図4を用いてより詳細に説明するこの振動ヘッド10は、質量体と電磁駆動装置とから構成されている。振動ヘッド10の電磁駆動装置はコントローラに接続されており、或る周波数範囲の機械的振動を振動ヘッド10を用いて所望の方法で発生できる。この周波数範囲は、周波数がキロヘルツの範囲である超音波帯外である50〜500Hzである。振動切削装置1の単数又は複数の振動ヘッドは、切削工具50が50〜500Hz、好ましくは50〜60Hzの周波数で移動されるように作動されるのが好ましい。
【0017】
図4を参照して振動ヘッド10の構造をより詳細に説明する。振動ヘッド10の構造は、第1の振動ヘッド10と反対側に配置された第2の振動ヘッド70の構造と同じである。振動ヘッド10、70は、質量体12、72と電磁駆動装置14、74とを有し、電磁駆動装置14、74は、電力を供給可能なスプール組立体14a、74aと軟鉄組立体14b、74bとから構成されており、これらは共通の駆動軸A上にある。スプール組立体14a、74aと軟鉄組立体14b、74bとの間には空隙が設けられている。スプール組立体14a、74aに電流を供給することにより、軟鉄組立体14b、74bが振動する。この振動を切削工具50に伝達するために、軟鉄組立体14b、74bは、任意的に設けられるばねセット60を介して、切削工具50用の固定具30、40に接続されている(図4参照)。図2によれば、軟鉄組立体(不図示)が固定具30、40に接続されており、固定具30、40がばねセット60を介してブリッジ体80にばね取り付けされている。図示の種々の実施形態によれば、ばねセット60は、例えば、皿ばね状のスプリングワッシャによって構成される(図4参照)か、或いは、図2にように櫛状ばね構造体によって構成される。上記の振動ヘッド10、70の構造と機能はDE102006011974及びEP1772253にも記載されている。
【0018】
切削工具50は、第1の固定具30と第2の固定具40とに固定されている。固定具30、40のそれぞれが振動ヘッド10、70、即ち1個の共通の振動ヘッドのみによって、或いはそれ以上の数の共通の振動ヘッドによって振動される。また、切削工具50の一端のみ、即ち一方の固定具30のみを振動ヘッド10に結合することによって振動させることも考えられる。この場合、切削工具50の移動を助けるために、切削工具50の他端及び/又他方の固定具40は、ばね式で、例えばばねセットによって、及び/又は摺動軸受けで固定されている。従って、振動切削装置1の最も単純な実施形態は、切削工具50の一端に配置されたばねセット、切削工具50、及び切削工具50の他端に配置された振動ヘッドによって構成される。
【0019】
本振動切削装置の別の実施形態によれば、複数の切削工具50が振動させられる。複数の切削工具50は、切削すべき製品において数箇所での切削を同時に行う。例えば、振動切削装置50を用いてケーキを3切れに切断することが考えられる。この目的のために、2個又は3個の切削工具50が、上記した方々で第1の固定具30と第2の固定具40に固定される。更に、その幾つかの切削工具50は、切削すべき製品の切削方向に対して垂直方向に互いにオフセットされている、即ち、それらは所定の離間距離で配置される。この切削工具50の間の離間距離は、例えば、切削すべき製品から切り出す層の厚さを定義する。また、切削工程における幾つかの切削工具50両側の障害を避けるために、それらは、切削すべき製品の切削方向と平行に配置され且つ互いにオフセットされていることが好ましい。この配置により、複数の切削工具50が切削すべき製品を連続して切削できることが保証される。これにより、移動された材料が、切削中に他の切削工具50の切削工程を妨げるのが阻止される。これにより、幾つかの切削工具50は、高さ方向と深さ方向の両方に互いにオフセットされて配置される。
【0020】
本振動切削装置1の別の実施形態によれば、切削工具50の内の幾つか、即ち一部は互いに平行に配置されていない。切削すべき製品に所定の切削パターンを作るために、切削工具50の長手軸が互いに角度を成すように位置合わせすることも考えられる。
【0021】
第1の固定具30及び第2の固定具40は、切削工具50のためのクランプ装置34、44と、張力調整装置32、42を備えていることが好ましい(図1、図2を参照)。クランプ装置34、44は、切削工具50の正確な保持と案内を保証する。張力調整装置32、42は、切削工具50に予め張力をかけ、及び/又は再び張力をかけることを可能にする。クランプ装置34、44と張力調整装置32、42の設計と必要性は、切削工具50の形状と用途に依存する。
【0022】
種々の実施形態によれば、切削工具50は、円滑なブレード、鋸歯状ブレード、波形の形状を有するブレード、ワイヤ又は綱によって作られる。切削工具50の長さは、約10〜150cm、好ましくは30〜100cmである。
【0023】
1個又は複数の振動ヘッド10、70によって作られた振動は、固定具30、40を介して切削工具50に伝達され、切削工具50はその長手軸の方向に変移される。このようにして長手軸と平行に切削工具50によって励起された振動の周波数と振幅は、振動ヘッド10、70を制御することによって決定される。切削工具50は5〜−5mmの範囲の振幅で振動する。この振幅の範囲は、例えば、鋸歯付きブレードの歯構造部の寸法に対応しており、歯構造部は切削すべき製品内で鋸のように移動される。従って、最適な切削効果を達成するために、切削工具50の振動切削運動中に、切削工具50の切削のための前後移動と幾何学形状(例えば、鋸歯)が互いに補い合う。
【0024】
振動ヘッド10、70を個々に又は組み合わせて制御するために電圧が対応するスプール組立体14a、74aに加えられる。この電圧によりスプール組立体14a、74a内に電磁力が発生し、軟鉄組立体14b、74b、従って固定具30、40をばねセット60の復帰力に抗してスプール組立体14a、74aの方向に引っ張ろうとする。電圧がオフに切り替えられると、ばねセット60の復帰力により、軟鉄組立体14b、74b、従って固定具30、40がアイドル状態に戻される。この戻り移動の間に、保存されたエネルギーが、ばねセット60において、アイドル状態を超える軟鉄組立体14b、74b、従って固定具30、40の移動に変換される。損失が少ない理想的なケースでは、この移動は、スプール組立体14a、74aの方向への移動時と殆ど同じ振幅で行われる。交流電圧がスプール組立体14a、74aに供給された場合、軟鉄組立体14b、74bと固定具30、40は、直線振動移動を行い、これが振動切削装置1を駆動するのに使用される。
【0025】
振動切削装置1の機械的共振周波数に対応する周波数を、電磁駆動装置14、74の電気的作動のための動作周波数として使用した場合、振動ヘッド10、70は特に効果的に動作する。機械的共振周波数は、ばねセット60のばね定数と、振動ヘッド10、70の関連する振動マスによって主に決まる。電磁駆動装置14、74の好ましい作動においては、電気的共振周波数は機械的共振周波数の半分である。
【0026】
図2、図3及び図4に示す実施形態では、少なくとも2個の振動ヘッド10、70は、切削工具50を介して互いに機械的に接続されているだけでなく、ブリッジ体80を介して互いに機械的に接続されている。ブリッジ体80は、振動ヘッド10、70の質量体を接続し、それらが1個の均一なマスシステムを形成する。この実施形態では、軟鉄組立体14b、74b、固定具30、40及び切削工具50の調波振動を発生するために、2個の振動ヘッド10、70のスプール組立体14a、74aが交互に電気的に作動される。両振動ヘッド10、70のばねセット60は、振動ヘッド10、70をそのアイドル状態に復帰させるか、或いは振動マスと共に機械的共振周波数を発生するために必要となるだけである。振動ヘッド10、70のアイドル状態から両方向への変移は、交互に電気的に作動されるス2個のプール組立体14a、74aによって発生される。この様にして、切削工具50が垂直成分の重畳のない直線振動を行う、安定で機能的に確実な振動切削装置1が提供される。
【0027】
種々の実施形態において、ブリッジ体80が使用される場合もあれば、省略される場合もある。ブリッジ体80を省略する場合、2個の振動ヘッド10、70は機械的に分離される。2個の対向する振動ヘッド10、70の間の機械的接続は、切削工具50を介してのみ行われる。この実施形態では振動ヘッド10、70の振動の共通周波数が自動的に設定されないため、2個の振動ヘッドの対応する電気的結合又は共通の作動を設けなければならない。この制御の場合、2個の振動ヘッド10、70の振動の周波数と振幅は、2個の振動ヘッド10、70の周波数が一致し、振幅が逆相になるように、制御されるか、或いは調整される。
【0028】
図に示す実施形態は、振動切削装置1の可能な構成の一選択肢を示しているだけである。従って、図1における1個の振動ヘッド10及び図2〜図4における2個の振動ヘッド10、70に加え、多数の振動ヘッドを使用することも考えられる。これらの振動ヘッドは、例えば、群を構成するように互いに隣接して配置され、郡内では、振動ヘッドが機械的に及び/又は電気的に互いに結合される。特に、固定具30、40及び振動ヘッド10、70の質量体が機械的に分離され、振動ヘッド10、70の振動の同期は、電気的結合と共通の作動のみによって行われる配置も可能である。
【0029】
上記の振動切削装置1の構造的な特長により、キロヘルツ範囲未満の周波数範囲、好ましくは50〜500Hzの範囲で少なくとも1個の第1の振動ヘッドを励振することで振動切削を行うことができる。引起された振動は、上で述べた種々構造によって切削工具50に伝達される。切削すべき製品を載せた作業テーブル90(図4を参照)が切削工具50の長手軸に対して垂直に移動すると、製品は切削工具50の振動によって切削される。切削工具50の振動を、切削すべき材料に最適に合わせ得るようにするために、上で述べた機械的及び/又は電気的結合が振動切削装置1内で使用される。作業テーブル90は、所望の切削を行うために切削方向と平行に、好ましくは3空間方向の全ての方向に移動できるが、作業テーブル90を固定的に設置し、切削工具50を移動させることも好ましい。この目的のために、振動切削装置1は、少なくとも切削方向へ移動可能、好ましくは3空間方向の全ての方向に移動可能に配置される。この様にして、切削すべき製品において如何なる切削も行える。また、所定の切削を行うために作業テーブル90及び/又は振動切削装置1を移動させるコンピュータを使用することも考えられる。これにより、切削期間、切削速度及び切削の進行を全て予め設定でき、切削中に変更でき、切削すべき種々の材料に対して最適に調節できる。
【0030】
作業テーブル90及び/又は振動装置1の移動に関し、切削すべき製品又は切削工具50の位置決めのために2空間方向への移動を提供し、実行すべき切削工程のために第3の空間方向への移動を調節することも考えられる。これを実現するためには、振動切削装置1及び/又は作業テーブル90における異なる空間方向に対して異なる駆動装置を使用する。何故なら、例えば、切削移動の実行には、位置決めのための特別に位置合わせされる駆動装置に比べて、位置決め精度は低いがより強力な駆動装置が必要となるからである。また、3空間方向の移動を振動切削装置1と作業テーブル90とに分配することも考えられる。例えば、作業テーブル90が2空間方向における位置決めのためだけに調整可能である場合、振動切削装置1は、残りの第3の空間方向に移動できるだけで十分である。このようにして、移動の自由度は、任意の方法で、作業テーブル90と振動切削装置1に分配される。
【0031】
鋸歯構造やセレーション(serration)等の切削工具50の幾何学形状を利用して、切削すべき製品における切削効果を最適にするために、切削工具50は、その長手軸と平行に±1〜10mm、好ましくは±1〜5mmの振幅範囲で変移される。これと組み合わせて或いは単独で、切削工具50を50〜60Hzの周波数で振動させることも好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動切削装置(1)であって、
a.少なくとも1個の第1の振動ヘッド(10)と、
b.キロヘルツ範囲を下回る周波数範囲内で振動させるために第1の振動ヘッド(10)を選択的に電気的に励振し得るコントローラと、
c.第1の固定具(30)と第2の固定具(40)との間に配置された切削工具(50)とを有し、少なくとも第1の固定具(30)が第1の振動ヘッド(10)に接続されており、第1の振動ヘッド(10)の機械的振動を切削工具(50)に伝達し得ることを特徴とする振動切削装置(1)。
【請求項2】
振動ヘッド(10)がばねセット(60)を介して第1の固定具(30)に接続されている、請求項1に記載の振動切削装置(1)。
【請求項3】
第2の固定具(40)に接続された第2の振動ヘッド(70)を有し、第1の振動ヘッド(10)と第2の振動ヘッド(70)とが電気的及び/又は機械的に結合されている、請求項1又は2に記載の振動切削装置(1)。
【請求項4】
50〜500Hz、好ましくは50〜60Hzの周波数範囲で動作できる、請求項1〜3の何れかに記載の振動切削装置(1)。
【請求項5】
切削工具(50)を±5mmの振幅で、切削工具(50)の長手軸(L)と平行に変移できる、請求項1〜4の何れかに記載の振動切削装置(1)。
【請求項6】
切削工具(50)の長さが10〜150cm、好ましくは30〜100cmの範囲である、請求項1〜5の何れかに記載の振動切削装置(1)。
【請求項7】
切削工具(50)は、円滑なブレード、鋸歯付きブレード、ワイヤ又は綱によって作られている、請求項1〜6の何れかに記載の振動切削装置(1)。
【請求項8】
切削すべき製品のための作業テーブル(90)を更に有し、作業テーブル(90)が、少なくとも切削工具(50)の長手軸(L)に対して垂直方向に、好ましくは3空間方向の全ての方向に移動可能であるか、或いは、切削工具(50)が作業テーブル(90)に対して平行に、好ましくは3空間方向の全ての方向に移動可能である、請求項1〜7の何れかに記載の振動切削装置(1)。
【請求項9】
切削すべき製品を通して同時に移動できる複数の切削工具(50)を有している、請求項1〜8の何れかに記載の振動切削装置(1)。
【請求項10】
複数の切削工具(50)は、それらの長手軸に関して互いに平行に又は角度を成して位置合わせされている、請求項9に記載の振動切削装置(1)。
【請求項11】
複数の切削工具(50)は、互いにオフセットされると共に、それらの切削方向に対して平行及び/又は垂直に配置されている、請求項9又は10に記載の振動切削装置(1)。
【請求項12】
振動切削方法であって、
a.キロヘルツ範囲を下回る周波数範囲、好ましくは50〜500Hzの範囲で振動させるために少なくとも1個の第1の振動ヘッド(10)を励振するステップと、
b.第1の振動ヘッド(10)と切削工具(50)との間の機械的結合を介してこの振動を切削工具(50)に伝達するステップと、
c.切削すべき製品を備えた作業テーブル(90)を切削工具(50)の長手軸(L)に対して垂直に移動させて製品を切削するステップと
を有する振動切削方法。
【請求項13】
機械的に及び/又は電気的に互いに結合された少なくとも第1の振動ヘッド(10)と第2の振動ヘッド(50)とを励振するステップを更に有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
50〜60Hzの周波数で及び/又は±1〜10mm、好ましくは±1〜5mmの振幅で、切削工具(50)の長手軸(L)と平行に切削工具(50)を変移させるステップを更に有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数の切削工具(50)を切削すべき製品を通して同時に移動させるステップを更に有する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
複数の切削工具(50)をそれらの切削方向に対して平行及び/又は垂直で互いにオフセットされた配置で、切削すべき製品を通して移動させるステップを更に有する、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−504816(P2011−504816A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535292(P2010−535292)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010091
【国際公開番号】WO2009/068293
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(595002605)ブランソン・ウルトラシャル・ニーダーラッスング・デア・エマーソン・テヒノロギーズ・ゲーエムベーハー・ウント・コムパニー・オーハーゲー (3)
【Fターム(参考)】