説明

振動子

【課題】 セラミックス製キャップ及びガラス製キャップは、レーザー照射による印字時にレーザーを透過してしまう特性があり、キャップ中央にレーザー印字すると振動子片に形成された電極がトリミングされてしまう事がある。
【解決手段】 互いに接合されたベース基板12とキャップ14との間に形成されたキャビティ14a内に振動子片101が封止された振動子において、前記ベース基板12とキャップ14の接合部上にあたるキャップ14表面にレーザーで印字16を刻印する。ベース基板12とキャップ14の接合部上に印字16を刻印することで、レーザーが振動子片101に照射されることがなくなり、印字16を刻印する際に振動子がその特性に受ける影響を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として、水晶等の圧電材料からなる振動子片を利用した圧電振動子が用いられている。
【0003】
図5は、従来の振動子を説明するための図であり、(a)は従来の振動子の上面図、(b)は正面図である。図6は振動子片を説明するための図である。振動子は図6に示すように、セラミックス製のベース102に接着剤103が塗布されており、振動子片101が接着剤103に搭載される事で、振動子片101がベース102に固定されている。振動子片101は、基部101aから一対の振動脚101bが延出された音叉型をしており、その表面には振動子片101を振動させたり、周波数を調整するための電極101cが形成されている。振動子片101が搭載されたベース102は金属製のキャップ104で気密に封止されている。また、金属製のキャップ104の中央部には、製造ロットをトレースをするための製造ロットがレーザー照射により印字されている。
【0004】
キャップ104としては、近年、振動子は低コスト化ニーズが高まり、ガラス製キャップやセラミックス製キャップも提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−256415号公報
【特許文献1】特開2010−56930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セラミックス製キャップ及びガラス製キャップは、レーザー照射による印字時にレーザーを透過してしまう特性があり、キャップ中央にレーザー印字すると振動子片に形成された電極がトリミングされてしまう事がある。また、セラミックス製キャップにレーザーを照射すると、セラミックスに含有されたバインダ等が熱せられ、その一部がガス化しベースとキャップで形成された振動子片を搭載するための空間内の真空度悪化が生じてしまう事がある。これらの現象が起こると振動子は、周波数、CI値(等価直列抵抗)が変動し、振動子特性に影響を及ぼすという問題が発生する。
【0007】
さらに、レーザー照射の条件によっては、照射されたレーザーがキャップ及びベースを透過し、レーザー照射時に振動子を位置決め固定している治具へもダメージを及ぼしてしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑み、レーザー照射による印字の際に、振動子の周波数、CI値の振動子特性に影響を与えず、また振動子を搭載した治具へもダメージを及ぼさない振動子を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
互いに接合されたベース基板とキャップとの間に形成されたキャビティ内に振動子片が封止された振動子において、前記ベースとキャップの接合部上にあたるキャップ表面にレーザーで印字がされた振動子とする。
【0010】
前記水晶片は、基部と基部から延出する少なくとも2本の振動脚から形成されており、前記振動脚の基部側に印字された振動子とする。
【0011】
前記基部から前記振動脚と所定の間隔をあけて配置された固定脚が延出されている振動子とする。
【0012】
前記ベース基板とキャップは金属ロウ材で接合されている、振動子とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、レーザー照射による印字をベースとキャップ接合部上にあたる位置に行う事により、水晶片に形成された電極のトリミングや、キャップ内部の内包ガス放出による真空度悪化を抑え、周波数、CI値変動を低減する事が出来る。
【0014】
本発明では、さらにレーザー照射による印字を基部側にする事で、電極がトリミングされた際に、周波数変動の大きい振動脚先端を避ける事が出来、接合部からレーザー印字が外れても、周波数、CI値変動を低減する事が出来る。
【0015】
ベース基板とキャップは金属ロウ材で接合する事で、振動子が搭載されている治具へレーザー透過を抑える事が出来、治具へのダメージを防止する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における振動子を説明するための図。
【図2】本発明の振動子の印字箇所の別の形態を説明するための図。
【図3】本発明の実施例2の振動子片を説明するための図。
【図4】本発明の実施例2の振動子を説明するための図。
【図5】従来の振動子を説明するための図。
【図6】振動子片を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
本発明の振動子を音叉型水晶振動子を例に図を用いて説明する。図1は、本発明における振動子を説明するための図であり、図1の(a)は従来の振動子の上面図、(b)は正面図である。本実施例の振動子の振動子片は従来技術の振動子片と同様であり、図6を参照し説明する。振動子片101は水晶よりなり、基部101aから一対の振動脚101bが延出され、その表面には振動子片101を振動させたり、周波数を調整するための電極101cが形成されている。振動子片101は、セラミック製のベース基板12上に塗布された接着剤13を介して、ベース基板12に固定されている。ベース基板12には、振動子片101を気密に封止するためのキャビティ14aが形成されたキャップ14が接合され、振動子片101を気密に封止している。また、キャップ14の表面には製造ロット等の判別記号が印字16として刻まれている。
【0018】
次に、振動子の製造方法を説明する。まずベース基板12を準備し、ベース基板12に接着剤13を塗布し、振動子片101を搭載する。振動子片101がベース基板12に搭載された状態で、振動子片101の電極101cの一部を除去、又は電極を追加形成することで所望の発振周波数となるように周波数調整を行う。周波数調整を行った後、振動子片101が搭載されたベース基板12とキャップ14を真空中で接合し、振動子片101を気密に封止する。ベース基板12とキャップ14には、その接合部に該当する位置にそれぞれ金属ロウ材15が形成され、ロウ材15を溶融する事によりベース基板12とキャップ14の接合が行われる。ロウ材15としては、Au−Sn合金を主に用いる。このように製造された振動子は、周波数、CI値等の特性検査を行い、製造ロット等をレーザー照射により印字し完成となる。
【0019】
製造ロットのレーザー照射による印字は、振動子片101の基部101a側のベース基板12とキャップ14の接合部上短辺側にあたる位置に行っている。ベース基板12とキャップ14の接合部上に印字を行う事で、振動子片101に形成された電極101cの一部が除去されることを防止でき、またキャップ14から発生するガスもキャビティ14a内への放出されることも抑えることができ、振動子の周波数、CI値変動を低減する事が出来る。
【0020】
更に、振動子片101の基部101a側に印字を行う事で、接合部上から印字16が多少外れた場合であっても、最も周波数変動に影響する振動脚101b側の電極101cではなく、影響の少ない基部101aに形成された電極101cが除去されるだけですみ、振動子の周波数、CI値変動を低減する事が出来る。ここで本実施例では、キャップ14の短辺側に印字16を行っているが、ベース基板12とキャップ14の接合部上のキャップ14表面であれば良く、特に基部101a側であればより効果が大きい。図2は、本発明の振動子の印字箇所の別の形態を説明するための図である。図2に示すように振動子の基部側のキャップ長片に印字16を形成する形態でも良い。
【0021】
また、ベース基板12とキャップ14は金属のロウ材15で接合する事で、レーザーがキャップ14を透過した場合においてもロウ材15によりレーザーを反射、あるいは吸収し、ベース基板12、またはレーザー照射時に振動子101を位置決め固定している治具まで透過することはなく、前記治具へのダメージを防止する事が出来る。
【0022】
印字16を行うレーザーとしては本実施例ではYVO4レーザーを用いている。YVO4レーザーは波長が比較的短い532nmのレーザーである。波長が532nmのレーザーは、常用する1064nm波長よりも透過しにくい特性を持っており、レーザーがキャップ14を透過することを抑えられ、本発明の課題を解決するためには有用である。本実施例ではYVO4レーザーを用いているが、レーザーの波長は短いほど透過しにくく波長が短ければYAGレーザー等でも良い。しかし、532nm未満のレーザーは高価な為、振動子等の電子部品の製造にはコスト高となってしまい、本実施例では532nmレーザーを使用している。
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の振動子の別の形態を説明する。図3は、本発明の実施例2の振動子片を説明するための図である。図4は、本発明の実施例2の振動子を説明するための図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。振動子片21は、基部21aから一対の振動脚21bが延出されている。また基部21aからは振動脚21bと所定の間隔をあけて配置された固定脚21dが延出されている。また、振動子片21の表面には振動子片21を振動させたり、周波数を調整するための電極21cが形成されている。本実施例の振動子片21は、固定脚21dの一部を、接着剤23によりベース基板22と接着し固定する。ベース基板21とキャップ24は実施例1と同様の構造であり、本実施例においても、ベース基板22とキャップ24とにより振動子片21が気密に封止される。製造工程についても実施例1と同様である。
【0024】
キャップ24へのレーザー照射による印字26の刻印は図4に示すように、振動子片21の基部21a側のベース基板22とキャップ24の接合部上短辺側にあたる位置に行っていおり、このように印字を行うことで実施例1にて記載した効果と同様の効果を得られる。
【0025】
以上、2種類の振動子片を例に本発明の振動子を説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、ベース基板とキャップの接合部上にあたるキャップ表面に印字がされれば良く、また振動子片の電極が除去されたときに振動子特性への影響度が低い位置へ印字をすればより良い事はいうまでもない。
【符号の説明】
【0026】
12 ベース基板
13 接着剤
14 キャップ
14a キャビティ
15 ロウ材
16 印字
21 振動子片
21a 基部
21b 振動脚
21c 電極
21d 固定脚
22 ベース基板
23 接着剤
24 キャップ
26 印字
101 振動子片
101a 基部
101b 振動脚
101c 電極
102 ベース基板
103 接着剤
104 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合されたベース基板とキャップとの間に形成されたキャビティ内に振動子片が封止された振動子において、前記ベースとキャップの接合部上にあたるキャップ表面にレーザーで印字がされたことを特徴とする振動子。
【請求項2】
前記水晶片は、基部と基部から延出する少なくとも2本の振動脚から形成されており、前記振動脚の基部側に印字がされたことを特徴とする請求項1に記載の振動子。
【請求項3】
前記基部から前記振動脚と所定の間隔をあけて配置された固定脚が延出されている請求項2に記載の振動子。
【請求項4】
ベース基板とキャップは金属ロウ材で接合されている、請求項1項から請求項3のいずれか一つに記載の振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−85170(P2013−85170A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224717(P2011−224717)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】