振動検出素子、振動測定装置並びに振動測定方法
【課題】レーザー光を反射する特性を有していない物体に対しても反射シールは貼ることなしに非接触で振動の検出が可能で、かつ、受信電波から十分な信号を取り出すことができる振動検出素子、前記振動検出素子を好適に用いることのできる振動測定装置並びに振動測定方法を提供する。
【解決手段】電波発信手段2によって測定対象の物体に電波を発信する。発信電波と反射電波とを、電波反射手段3の内部、かつ電波発信手段2の近傍に配置されたアンテナ4で受信し、アンテナ4で受信された発信電波と反射電波との位相に関する情報含む信号をトランジスター5で検波する。
【解決手段】電波発信手段2によって測定対象の物体に電波を発信する。発信電波と反射電波とを、電波反射手段3の内部、かつ電波発信手段2の近傍に配置されたアンテナ4で受信し、アンテナ4で受信された発信電波と反射電波との位相に関する情報含む信号をトランジスター5で検波する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の振動を非接触で検出できる振動検出素子、前記振動検出素子を好適に用いることができる振動測定装置並びに振動測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば機械装置等の物体の振動を測定する際には、一般的に、加速度ピックアップ等の振動センサを該物体に接触させて振動を検出して測定する方法が用いられる。
この振動センサを接触させて測定する方法は生物計測の分野でも応用され、様々な手法が提案されている。例えば、果実のような生物体の内部品質を振動によって計測するには、果実に接触式振動検出素子(例えばピエゾ素子等)を接触させることによって行われる。
【0003】
しかし、本発明者らはこのような接触式振動子を果実等のような柔らかい物体に接触させる行為自体が測定対象の特性変化を引き起し、正確な測定が行なえないことを見出した。
そこで、本発明者らは測定対象の物体に非接触で振動を測定するために、従来から工業計測に用いられていたレーザードップラー振動計を果実等の生物計測に利用して内部品質を計測する技術であるレーザードップラー法を提案している。(特許文献1参照)。
また、さらに本発明者らはマイクロ波を測定対象の物体に照射し、照射電波を櫛型アンテナで受信し検波することにより振動を測定する技術も提案している(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−236587号公報
【特許文献2】特開20007−198787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、レーザー光を反射しない物体の振動を測定するには該物体の表面に反射シールを貼る必要があり、この作業が非常に煩雑で、またその貼り方によっては該物体の振動を正確に測定できない恐れがある。
また、特許文献2に記載の技術では、アンテナが信号源から遠い位置に配置されている。そのため、受信電波の信号強度が弱くその受信感度が低くなる。その結果受信電波から振動測定のための十分な信号を取り出せない恐れがある。
【0005】
本発明には、上記課題に鑑みてなされたものであり、レーザー光を反射する特性を有していない物体に対しても反射シールは貼ることなしに非接触で振動の検出が可能で、かつ受信電波から十分な信号を取り出すことができる振動検出素子、前記振動検出素子を好適に用いることのできる振動測定装置並びに振動測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)少なくとも一端が開口された筒状の電波反射手段と、電波反射手段の一端に、発信した電波が開口端の方向に向かうように取り付けられた電波発信手段と、電波発信手段の近傍、かつ電波反射手段の内部に配置され、電波発信手段から発信された電波を受信するとともに、発信された電波が測定対象の物体で反射した反射電波を受信するアンテナと、
アンテナで受信された発信電波と反射電波との位相に関する情報含む信号を検波するトランジスターと、を備えたことを特徴とする振動検出素子。
(2)アンテナが櫛型である前項1に記載の振動検出素子。
(3)アンテナが折り返し型ダイポールアンテナである前項1に記載の振動検出素子。
(4) 少なくとも一端が開口された筒状の電波反射手段と、電波反射手段の一端に、発信した電波が開口端の方向に向かうように取り付けられた電波発信手段と、電波発信手段の近傍、かつ電波反射手段の内部に配置され、電波発信手段から発信された電波を受信するとともに、発信された電波が測定対象の物体で反射した反射電波を受信するダイポールアンテナと、ダイポールアンテナで受信した発信電波と反射電波との位相に関する情報含む信号を検波するダイオードと、を備えたことを特徴とする振動検出素子。
(5)少なくとも一端が開口された筒状の電波反射手段と、電波反射手段の一端に、発信した電波が開口端の方向に向かうように取り付けられた電波発信手段と、4つのダイオードをブリッジ結合したブリッジ回路と、ブリッジ回路の入力側に接続された第一同調回路と、ブリッジ回路の出力側に接続された第二同調回路と、電波反射手段の内部、かつ電波発信手段の近傍に配置され一対の導体板によってくの字状に形成されたレフレクターと、を備え、第一同調回路はレフレクターの成す角が鋭角である側の空間に、第二同調回路はレフレクターの成す角が鈍角である側の空間にそれぞれ配置されたことを特徴とする振動検出素子。
(6)電波反射手段は、電磁ホーンアンテナである前項1から5のいずれかに記載の振動検出素子。
(7)電波発信手段から発信される電波の周波数が、5GHzから30GHzの範囲である、前項1から6のいずれかに記載の振動検出素子。
(8)位相に関する情報を含む信号とは、発信電波と反射電波との位相差の情報を含む信号であること特徴とする前項1から7のいずれかに記載の振動検出素子。
(9)前項1から8のいずれかに記載された振動検出素子と、位相に関する情報を含む信号を周波数解析する周波数解析手段と、を備えたことを特徴とする振動測定装置。
(10)測定対象の物体に電波を発信する第1の工程と、電波発信手段の近傍、かつ電波反射手段の内部に配置されたアンテナによって、第1工程で発信された電波を受信するとともに、発信された電波が測定対象の物体で反射した反射電波を受信する第2の工程と、第2工程で受信された発信電波と受信電波との位相に関する情報を含む信号をトランジスターで検波する第3の工程と、第3工程で検波された位相に関する情報を含む信号を周波数解析する第4の工程と、を備えたことを特徴とする振動測定方法。
(11)位相に関する情報を含む信号とは、発信電波と受信電波との位相差の情報を含む信号であることを特徴とする前項10に記載の振動測定方法。
【発明の効果】
【0007】
前項(1)に記載の発明によれば、測定対象の物体に対して電波発信手段から電波が発信され、アンテナによって発信電波と反射電波とが、電波反射手段の内部かつ電波発信手段の近傍に配置されたアンテナによって受信される。そして、発信電波と反射電波との位相に関する情報がトランジスターによって検波される。これにより、電波を用いることでレーザーを反射しない特性を有する物体に対しても反射シールを貼るといった煩雑な作業をすることなしに非接触で物体の振動の検出が可能となる。また、反射シールを貼る必要がないので、反射シールの貼り方によっては物体の振動を正確に測定できない恐れを解消できる。また、アンテナを電波発信手段(信号源)の近く、かつ反射電波が集まってくる電波反射手段の内部に配置したので発信電波と反射電波との受信強度が強くなり感度が高くとれ、受信電波からの振動測定のための十分な信号を取り出すことが出来る。また、トランジスターによって発信電波と反射電波との位相に関する情報を含む信号を検波するので高い復調効率を得ることができる。
【0008】
前項(2)に記載の発明によれば、発信電波と受信波とを受信するアンテナを櫛型とすることができる。
【0009】
前項(3)に記載の発明によれば、発信電波と受信波とを受信するアンテナを折り返し型ダイポールアンテナとすることができる。
【0010】
前項(4)に記載の発明によれば、電波を用いての測定対象の物体の振動測定が可能となるので、レーザーを反射しない性質を有する物体に対しても、反射シールを貼るといった手間をかけずに非接触で物体の振動を検出できる。また、反射シールを貼る必要がないので、反射シールの貼り方によっては物体の振動を正確に測定できない恐れを解消できる。また、ダイポールアンテナを電波発射手段の近く、かつ電波反射手段の内部に配置したので、発信電波と反射電波との受信強度が強くなり感度が高くとれ、受信電波からの振動測定のための十分な信号を取り出すことが出来る。また、ダイポールアンテナとダイオードとを組み合わせることにより、発信電波と反射電波との位相に関する情報を含む信号を効率よく復調できる。
【0011】
前項(5)に記載の発明によれば、電波を用いての測定対象の物体の振動測定が可能となるので、レーザーを反射しない性質を有する物体に対しても、反射シールを貼る手間をかけずに非接触で物体の振動を検出できる。また、反射シールを貼る必要がないので、反射シールの貼り方によっては物体の振動を正確に測定できない恐れを解消できる。さらに、レフレクター、2つの同調回路及び該2つの同調回路の接続されたブリッジ回路を組合せることで発信電波と反射電波との位相に関する情報を含む信号を効率よく復調できる。
【0012】
前項(6)に記載の発明によれば、電波反射手段を電磁ホーンアンテナとすることができる。
前項(7)に記載の発明によれば、5GHzから30GHzの範囲の電波を用いて、測定対象の物体の振動を検出することができる。
前項(8)に記載の発明によれば、発信電波と反射電波との位相差の情報を含む信号によって測定対象の物体の振動を検出できる。
前項(9)に記載の発明によれば、発信電波と反射電波との位相に関する情報を含む信号に基づいて、測定対象の物体の振動の周波数を解析することができる。
【0013】
前項(10)に記載の発明によれば、測定に電波を用いるのでレーザーを反射しない特性を有する物体に対して反射シールを貼るといった煩雑な作業をすることなしに非接触で物体の振動測定が可能となる。また、アンテナが電波反射手段の内部、かつ電波発信手段の近傍に配置されているので信号受信強度が強く感度が高くとれ、受信電波からの振動測定のための十分な信号を取り出すことができる。その結果、精度の高い振動測定が可能となる。
前項(11)に記載の発明によれば、発信電波と反射電波との位相差の情報を含む信号に基づいて、測定対象の物体の振動の周波数を解析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施例1)
以下に、本発明の実施例1に係る振動検出素子及び振動測定装置を、図面を参照しながら説明する。
図1は、振動測定装置1の概略構成を示した図である。
図1に示すように、振動測定装置1は電波発信手段2、電磁ホーンアンテナ3、4本櫛型アンテナ4、トランジスター5、リアクタンス6、電源電圧7及び周波数解析手段8を備えており、4本櫛型アンテナ4、トランジスター5及びリアクタンス6は、電磁ホーンアンテナ3の内部に配置されている。
【0015】
トランジスター5のベース部は4本櫛型アンテナ4に、コレクタ部はリアクタンス6にそれぞれ接続され、エミッタ部は接地されている。また、リアクタンス6のもう一端は電源電圧7のプラス側に接続されている。
電波発信手段2は、電磁ホーンアンテナ3の一端(基部)に、発信された電波が電磁ホーンアンテナ3の開口端の方向に向かうように配置され、測定対象の物体対して周波数10GHzの電波を発信する。
【0016】
電磁ホーンアンテナ3は電波反射手段として利用され電波を効率良く集光する。
4本櫛型アンテナ4は、発信電波と反射電波とを受信する。
トランジスター5は、受信された発信電波と受信電波との位相差情報を含む信号の検波を行う。
リアクタンス6は、検波された信号を周波数解析手段8に出力する。
電源電圧7は、信号を出力するのに利用される。
周波数解析手段8は、出力された信号に対して、高速フーリエ解析等の公知の周波数解析を行う。
なお、電波発信手段2、電磁ホーンアンテナ3、4本櫛型アンテナ4及びトランジスター5によって振動検出素子が構成されている。
【0017】
電波発信手段2で発信された発信電波と測定対象の物体から反射した反射電波とが、4本櫛型アンテナ4で受信される。発信電波と反射電波との位相差情報を含む信号はトランジスター5で検波され、電源電圧7を用いて周波数解析手段8に出力される。
次に、図2を参照しながら、測定対象の物体10(以下では、単に物体ともいう)に電波を発信した際の発信電波と反射電波との関係を説明する。
【0018】
電波発信手段2から、周波数10GHzの発信電波15が物体10(この実施形態では、りんご)に向けて発信されると、4本櫛型アンテナ4によって受信されると共に、物体10に照射される。物体10に照射された発信電波15は反射され、その反射波である反射電波16が4本櫛型アンテナ4で受信される。
【0019】
次に、図3〜図6を参照しながら、振動測定装置1の測定原理を説明する。
図3は、4本櫛型アンテナ4の詳細を示した図である。
本実施例では、周波数が10GHzの電波が使用される。該周波数を持つ電波の波長は約3.0cmであるので、4本櫛型アンテナ4には、アンテナ素子30〜33が半波長分(約1.5cm)間隔ではしご状につながれている。また、アンテナ素子30〜33と向かい合うようにアンテナ素子34〜37がはしご状につなげられている。
【0020】
電波発信手段2から電波が発信されると、発信電波15は4本櫛型アンテナ4で受信され、同時に物体10に投射される。投射された電波は物体10の表面で反射され、その反射波である反射電波16が4本櫛型アンテナ4によって受信される。
【0021】
発信電波15が4本櫛型アンテナ4で受信されると、アンテナ素子30では、
【数1】
の信号が受信される。
【0022】
半波長分(約1.5cm)離れたアンテナ素子31では、
【数2】
の信号が受信される。
【0023】
また、アンテナ素子32、アンテナ素子33ではそれぞれ
【数3】
【数4】
の信号が受信される。
【0024】
アンテナ素子31〜33で受信された信号はアンテナ素子30の位置に伝播される際には、それぞれπ、2π、3π分位相が遅れる。
よって、アンテナ素子30の位置では、図4に示すように、
【数5】
で表される信号が得られる。
【0025】
一方、発信電波15が物体10に照射されると物体の振動のため反射する位置が変化し位相変化を受ける。アンテナ素子34の位置ではψで表す位相の変化を受けるものとする。
反射電波16を4本櫛型アンテナ4で受信すると、
アンテナ素子34では、
【数6】
の信号が受信される。
【0026】
また、アンテナ素子35、36及び37では、
【数7】
【数8】
【数9】
の信号がそれぞれ受信される。
【0027】
アンテナ素子30〜33でそれぞれ受信された信号がアンテナ素子34に伝播されると、
位相がそれぞれ、π、2π、3π進むので、アンテナ素子34の位置では、図4に示すように、
【数10】
の信号が得られる。
【0028】
そして、2つの信号の合計Iは、
【数11】
【数12】
【0029】
ここで、
【数13】
【数14】
とおくと、
【数15】
となる。
【0030】
これが位相差情報を含む信号であり、この信号をトランジスター5で検波(整流)する。
当該信号を整流して平滑した後の出力は、図5に示すように
【数16】
となり、出力効率をαとすると
【数17】
となる。つまり、位相差(ψ)に従った出力(振動強度)が得られ、(a-b)>0の場合、ψが2π毎に値が最低となる。
【0031】
これを示したのが、図6である。
図6は、電波発信手段2の位置を変化させ、電波発信手段2の物体からの位置(横軸)と振動強度(縦軸)との関係を測定したグラフである。電波が行き帰りするので、位相2πは距離としては半波長分相当する。よって、発信される電波の周波数は10GHzなので、半波長(約1.5cm)毎に振動強度の値が最低となる。
なお、ψがゼロの時、整流した信号の振幅はa+bに比例し、ψがπの時はa−bに比例する。
【0032】
最後に、整流され平滑された信号に対して周波数解析手段8で高速フーリエ解析等の公知の周波数解析することによって物体10の振動を解析する。
【0033】
次に、振動測定装置1を用いてスイカの振動特性を測定した際の測定結果を説明する。
図7に示すように、スイカ40を加振器41の上におき、10MHz〜100MHzまでの振動を与え、その振動を振動測定装置1によって測定し高速フーリエ解析を行う。
図8は、上記方法により測定したスイカの振動をグラフで表した図である。
図8から読み取れるように、周波数190地点45、周波数230地点46、周波数350MHz地点47にスイカ特有の第2、第3及び第4共鳴ピークが観察された。
【0034】
なお、本実施例ではアンテナとして4本櫛型アンテナを用いたが、これに限定されず、例えば図9に示す折り返し型ダイポールアンテナ50や、他の形状のアンテナでも良い。
また、本実施例では、周波数が10GHzの電波を利用したが、これに限定されず周波数が5GHzから30GHzの範囲であれば如何なる周波数の電波を用いても良い。
また、トランジスター5とリアクタンス6を電磁ホーンアンテナ3の内部に配置するものとしたが、これらを電磁ホーンアンテナ3の外部に配置するものとしても良い。
【0035】
以上のように、実施例1に係る振動検出素子及び振動測定装置は、以下に示す効果を奏する。
第一に、測定に電波を用いるため、レーザーを反射しない物体に対しても、反射シールを貼るといった手間なしに非接触で物体の振動の検出・測定が可能となる。
第二に、反射シールを貼る必要がないので反射シールの貼り方によっては物体の振動を正確に測定できない恐れを解消できる。
【0036】
第三に、トランジスターのC級増幅回路によって発信電波と反射電波との位相差に関する情報を含む信号を検波するので高い復調効率を得ることができる。
【0037】
第四に、受信用の4本櫛形アンテナ4を、電波発信手段2の近傍、かつ反射電波が集まってくる電磁ホーンアンテナ3内に配置したので、発信電波及び反射電波の受信強度が強くなり、感度が高くとれる。その結果受信電波からの振動測定のための十分な信号を取り出すことが出来るので精度の高い振動測定が可能となる。
(実施例2)
次に、本発明の実施例2に係る振動検出素子及び振動測定装置を、図面を参照しながら説明する。
【0038】
実施例1では、4本櫛型アンテナで発信電波と反射電波とを受信し、トランジスターによって検波を行った。実施例2では、4つのダイオードをブリッジ結合したブリッジ回路と2つの同調回路を用いて、電波の受信や検波等を行う。
【0039】
図10は、本実施例で使用される振動検出素子が備えている検波回路の構成を示した図である。図10に示されるように、検波回路は、4つのダイオードをブリッジ結合したブリッジ回路53に、アンテナと共用される2つの同調回路51、52を備えており、同調回路51がブリッジ回路53の入力側に接続され、また同調回路52がブリッジ回路53の出力側に接続されている。
【0040】
図11は、本実施例で用いられる振動検出素子の構成を示した図である。
図11に示すように、電磁ホーンアンテナ3の内部に一対の導体板をくの字型にすることにより形成されたレフレクター54配置され、また電磁ホーンアンテナ3の一端(基部)に電波発信手段2が配置されている。
【0041】
レフレクター54の成す角が鋭角である側の空間に同調回路51が、またレフレクターの成す角が鈍角である側の空間に同調回路52が配置されている。また、同調回路51の一端はレフレクター54に接地されている。発信電波を位相検出の対照とし、その信号に対する反射信号の位相を検波回路で検出する。なお、レフレクター54は対照用の信号と反射信号とを隔離するために配置されている。
【0042】
一方の同調回路に信号を、もう一方に同調回路に対照信号を入力して平衡復調回路で位相信号を取り出して出力する。出力信号は2つの同調回路の中点から得られ、出力信号線は干渉がないように電波の偏波に直角の向きに引き出される。
なお、該振動検出素子を備えた振動測定装置の構成及び該振動測定装置を用いた振動測定の方法に関しては、実施例1と同様なので、ここでは割愛する。
このように、実施例2に係る振動検出素子及び振動測定装置は、以下に示す効果を奏する。
【0043】
第一に、測定に電波を用いるのでレーザーを反射しない物体に対しても、反射シールを貼るといった手間なしに非接触で物体の振動の検出・測定が可能となる。
第二に、反射シールを貼る必要がないので反射シールの貼り方によっては物体の振動を正確に測定できない恐れを解消できる。
第三に、レフレクター54、同調回路51,52及びブリッジ回路53を組み合わせることにより、高い復調率が実現できる。
【0044】
第四に、アンテナと共用する同調回路を電波発信手段2の近傍、かつ反射電波が集まってくる電磁ホーンアンテナ3内に配置したので、受信電波の受信強度が強くなり感度が高くとれる。その結果受信電波からの振動測定のための十分な信号を取り出すことが出来るので精度の高い振動測定が可能となる。
(実施例3)
次に、本発明の実施例3に係る振動検出素子及び振動測定装置を、図面を参照しながら説明する。
【0045】
本実施例は、アンテナとして多重ダイポール型アンテナ60を使用し、検波用のダイオード61を接続したものである。
図12は、本実施例で利用される振動検出素子の構成を示した図である。
振動検出素子は、電波発信手段2、電磁ホーンアンテナ3、多重ダイポールアンテナ60及びダイオード61を備えている。電磁ホーンアンテナ3の内部に、多重ダイポールアンテナ60、ダイオード61が配置され、また電波発射手段2は電磁ホーンアンテナ3の一端(基部)に配置されている。
【0046】
多重ダイポールアンテナ60は、復調効率を上げるためにアンテナを多重にされている。
電波発信手段2から発信された電波の発信電波と反射電波とが、多重ダイポールアンテナ60で受信され、ダイオード61で位相差情報を含む信号を検波(整流)する。
なお、該振動検出素子を備えた振動測定装置の構成及び該振動測定装置を用いた振動測定の方法に関しては、実施例1と同様なので、ここでは割愛する。
また、本実施例では、電磁ホーンアンテナ3の内部にダイオード61を配置するものとしたが、ダイオード61を電磁ホーンアンテナ3の外部に配置するものとしても良い。
【0047】
実施例3に係る振動検出素子及び振動測定装置は、以下に示す効果を奏する。
第一に、測定に電波を利用するのでレーザーを反射しない物体に対しても、反射シールを貼るといった手間なしに非接触で物体の振動の検出・測定が可能となる。
第二に、反射シールを貼る必要がないので、反射シールの貼り方によっては物体の振動を正確に測定できない恐れを解消できる。
【0048】
第三に、多重ダイポールアンテナ60とダイオード61とを組み合わせることにより高い復調率を得ることが可能となる。
第四に、多重ダイポールアンテナ60を電波発信手段2の近傍、かつ反射電波が集まってくる電磁ホーンアンテナ3内に配置したので、発信電波及び反射電波の受信強度が強くなり感度が高くとれる。その結果受信電波からの振動測定のための十分な信号を取り出すことが出来るので精度の高い振動測定が可能となる。
【0049】
なお、実施例1、実施例2及び実施例3では、トランジスター、ダイオード等を用いて検波を行ったが、これ以外の能動素子を用いて検波を行うものとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る振動検出素子、振動測定装置並びに振動測定方法は、青果物のような軟らかい生物体、特にレーザー光を反射しにくい生物体の振動を非接触に測定できるので、青果物の品質を非接触で検査する選別機械や生育途上の青果物の生育モニタリングセンサーとして有用である。また、樹木、木材、といった青果物以外の生物体の品質を非接触で測定できる品質測定器にも有用である。さらには、コンクリートなどの人工物の建築構造物の内部劣化や構造を測定するという応用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1に係る振動検出素子と振動測定装置との構成を示した図である。
【図2】実施例1に係る振動測定装置と測定対象の物体との位置関係を示した図である。
【図3】発信電波と反射電波とが各アンテナ素子で受信される際の位相を示した図である。
【図4】トランジスターの位置での合成された信号の位相を示した図である。
【図5】トランジスターの位置での出力をベクトルで示した図である。
【図6】電波発信手段の位置と振動出力との関係を示した図である。
【図7】実施例1に係る振動測定装置を用いてスイカの振動を測定する際の図である。
【図8】実施例1に係る振動測定装置で測定したスイカの振動スペクトルを示した図である。
【図9】実施例1に係る振動検出素子のアンテナを折り返し型ダイポールアンテナとしたものである。
【図10】実施例2に係る振動検出素子で用いる検出回路を示した図である。
【図11】実施例2に係る振動検出素子を示した図である。
【図12】実施例3に係る振動検出素子を示した図である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・振動測定装置
2・・・電波発信手段
3・・・電磁ホーンアンテナ
4・・・4本櫛型アンテナ
5・・・トランジスター
6・・・リアクタンス
7・・・電源電圧
8・・・周波数解析手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の振動を非接触で検出できる振動検出素子、前記振動検出素子を好適に用いることができる振動測定装置並びに振動測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば機械装置等の物体の振動を測定する際には、一般的に、加速度ピックアップ等の振動センサを該物体に接触させて振動を検出して測定する方法が用いられる。
この振動センサを接触させて測定する方法は生物計測の分野でも応用され、様々な手法が提案されている。例えば、果実のような生物体の内部品質を振動によって計測するには、果実に接触式振動検出素子(例えばピエゾ素子等)を接触させることによって行われる。
【0003】
しかし、本発明者らはこのような接触式振動子を果実等のような柔らかい物体に接触させる行為自体が測定対象の特性変化を引き起し、正確な測定が行なえないことを見出した。
そこで、本発明者らは測定対象の物体に非接触で振動を測定するために、従来から工業計測に用いられていたレーザードップラー振動計を果実等の生物計測に利用して内部品質を計測する技術であるレーザードップラー法を提案している。(特許文献1参照)。
また、さらに本発明者らはマイクロ波を測定対象の物体に照射し、照射電波を櫛型アンテナで受信し検波することにより振動を測定する技術も提案している(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−236587号公報
【特許文献2】特開20007−198787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、レーザー光を反射しない物体の振動を測定するには該物体の表面に反射シールを貼る必要があり、この作業が非常に煩雑で、またその貼り方によっては該物体の振動を正確に測定できない恐れがある。
また、特許文献2に記載の技術では、アンテナが信号源から遠い位置に配置されている。そのため、受信電波の信号強度が弱くその受信感度が低くなる。その結果受信電波から振動測定のための十分な信号を取り出せない恐れがある。
【0005】
本発明には、上記課題に鑑みてなされたものであり、レーザー光を反射する特性を有していない物体に対しても反射シールは貼ることなしに非接触で振動の検出が可能で、かつ受信電波から十分な信号を取り出すことができる振動検出素子、前記振動検出素子を好適に用いることのできる振動測定装置並びに振動測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)少なくとも一端が開口された筒状の電波反射手段と、電波反射手段の一端に、発信した電波が開口端の方向に向かうように取り付けられた電波発信手段と、電波発信手段の近傍、かつ電波反射手段の内部に配置され、電波発信手段から発信された電波を受信するとともに、発信された電波が測定対象の物体で反射した反射電波を受信するアンテナと、
アンテナで受信された発信電波と反射電波との位相に関する情報含む信号を検波するトランジスターと、を備えたことを特徴とする振動検出素子。
(2)アンテナが櫛型である前項1に記載の振動検出素子。
(3)アンテナが折り返し型ダイポールアンテナである前項1に記載の振動検出素子。
(4) 少なくとも一端が開口された筒状の電波反射手段と、電波反射手段の一端に、発信した電波が開口端の方向に向かうように取り付けられた電波発信手段と、電波発信手段の近傍、かつ電波反射手段の内部に配置され、電波発信手段から発信された電波を受信するとともに、発信された電波が測定対象の物体で反射した反射電波を受信するダイポールアンテナと、ダイポールアンテナで受信した発信電波と反射電波との位相に関する情報含む信号を検波するダイオードと、を備えたことを特徴とする振動検出素子。
(5)少なくとも一端が開口された筒状の電波反射手段と、電波反射手段の一端に、発信した電波が開口端の方向に向かうように取り付けられた電波発信手段と、4つのダイオードをブリッジ結合したブリッジ回路と、ブリッジ回路の入力側に接続された第一同調回路と、ブリッジ回路の出力側に接続された第二同調回路と、電波反射手段の内部、かつ電波発信手段の近傍に配置され一対の導体板によってくの字状に形成されたレフレクターと、を備え、第一同調回路はレフレクターの成す角が鋭角である側の空間に、第二同調回路はレフレクターの成す角が鈍角である側の空間にそれぞれ配置されたことを特徴とする振動検出素子。
(6)電波反射手段は、電磁ホーンアンテナである前項1から5のいずれかに記載の振動検出素子。
(7)電波発信手段から発信される電波の周波数が、5GHzから30GHzの範囲である、前項1から6のいずれかに記載の振動検出素子。
(8)位相に関する情報を含む信号とは、発信電波と反射電波との位相差の情報を含む信号であること特徴とする前項1から7のいずれかに記載の振動検出素子。
(9)前項1から8のいずれかに記載された振動検出素子と、位相に関する情報を含む信号を周波数解析する周波数解析手段と、を備えたことを特徴とする振動測定装置。
(10)測定対象の物体に電波を発信する第1の工程と、電波発信手段の近傍、かつ電波反射手段の内部に配置されたアンテナによって、第1工程で発信された電波を受信するとともに、発信された電波が測定対象の物体で反射した反射電波を受信する第2の工程と、第2工程で受信された発信電波と受信電波との位相に関する情報を含む信号をトランジスターで検波する第3の工程と、第3工程で検波された位相に関する情報を含む信号を周波数解析する第4の工程と、を備えたことを特徴とする振動測定方法。
(11)位相に関する情報を含む信号とは、発信電波と受信電波との位相差の情報を含む信号であることを特徴とする前項10に記載の振動測定方法。
【発明の効果】
【0007】
前項(1)に記載の発明によれば、測定対象の物体に対して電波発信手段から電波が発信され、アンテナによって発信電波と反射電波とが、電波反射手段の内部かつ電波発信手段の近傍に配置されたアンテナによって受信される。そして、発信電波と反射電波との位相に関する情報がトランジスターによって検波される。これにより、電波を用いることでレーザーを反射しない特性を有する物体に対しても反射シールを貼るといった煩雑な作業をすることなしに非接触で物体の振動の検出が可能となる。また、反射シールを貼る必要がないので、反射シールの貼り方によっては物体の振動を正確に測定できない恐れを解消できる。また、アンテナを電波発信手段(信号源)の近く、かつ反射電波が集まってくる電波反射手段の内部に配置したので発信電波と反射電波との受信強度が強くなり感度が高くとれ、受信電波からの振動測定のための十分な信号を取り出すことが出来る。また、トランジスターによって発信電波と反射電波との位相に関する情報を含む信号を検波するので高い復調効率を得ることができる。
【0008】
前項(2)に記載の発明によれば、発信電波と受信波とを受信するアンテナを櫛型とすることができる。
【0009】
前項(3)に記載の発明によれば、発信電波と受信波とを受信するアンテナを折り返し型ダイポールアンテナとすることができる。
【0010】
前項(4)に記載の発明によれば、電波を用いての測定対象の物体の振動測定が可能となるので、レーザーを反射しない性質を有する物体に対しても、反射シールを貼るといった手間をかけずに非接触で物体の振動を検出できる。また、反射シールを貼る必要がないので、反射シールの貼り方によっては物体の振動を正確に測定できない恐れを解消できる。また、ダイポールアンテナを電波発射手段の近く、かつ電波反射手段の内部に配置したので、発信電波と反射電波との受信強度が強くなり感度が高くとれ、受信電波からの振動測定のための十分な信号を取り出すことが出来る。また、ダイポールアンテナとダイオードとを組み合わせることにより、発信電波と反射電波との位相に関する情報を含む信号を効率よく復調できる。
【0011】
前項(5)に記載の発明によれば、電波を用いての測定対象の物体の振動測定が可能となるので、レーザーを反射しない性質を有する物体に対しても、反射シールを貼る手間をかけずに非接触で物体の振動を検出できる。また、反射シールを貼る必要がないので、反射シールの貼り方によっては物体の振動を正確に測定できない恐れを解消できる。さらに、レフレクター、2つの同調回路及び該2つの同調回路の接続されたブリッジ回路を組合せることで発信電波と反射電波との位相に関する情報を含む信号を効率よく復調できる。
【0012】
前項(6)に記載の発明によれば、電波反射手段を電磁ホーンアンテナとすることができる。
前項(7)に記載の発明によれば、5GHzから30GHzの範囲の電波を用いて、測定対象の物体の振動を検出することができる。
前項(8)に記載の発明によれば、発信電波と反射電波との位相差の情報を含む信号によって測定対象の物体の振動を検出できる。
前項(9)に記載の発明によれば、発信電波と反射電波との位相に関する情報を含む信号に基づいて、測定対象の物体の振動の周波数を解析することができる。
【0013】
前項(10)に記載の発明によれば、測定に電波を用いるのでレーザーを反射しない特性を有する物体に対して反射シールを貼るといった煩雑な作業をすることなしに非接触で物体の振動測定が可能となる。また、アンテナが電波反射手段の内部、かつ電波発信手段の近傍に配置されているので信号受信強度が強く感度が高くとれ、受信電波からの振動測定のための十分な信号を取り出すことができる。その結果、精度の高い振動測定が可能となる。
前項(11)に記載の発明によれば、発信電波と反射電波との位相差の情報を含む信号に基づいて、測定対象の物体の振動の周波数を解析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施例1)
以下に、本発明の実施例1に係る振動検出素子及び振動測定装置を、図面を参照しながら説明する。
図1は、振動測定装置1の概略構成を示した図である。
図1に示すように、振動測定装置1は電波発信手段2、電磁ホーンアンテナ3、4本櫛型アンテナ4、トランジスター5、リアクタンス6、電源電圧7及び周波数解析手段8を備えており、4本櫛型アンテナ4、トランジスター5及びリアクタンス6は、電磁ホーンアンテナ3の内部に配置されている。
【0015】
トランジスター5のベース部は4本櫛型アンテナ4に、コレクタ部はリアクタンス6にそれぞれ接続され、エミッタ部は接地されている。また、リアクタンス6のもう一端は電源電圧7のプラス側に接続されている。
電波発信手段2は、電磁ホーンアンテナ3の一端(基部)に、発信された電波が電磁ホーンアンテナ3の開口端の方向に向かうように配置され、測定対象の物体対して周波数10GHzの電波を発信する。
【0016】
電磁ホーンアンテナ3は電波反射手段として利用され電波を効率良く集光する。
4本櫛型アンテナ4は、発信電波と反射電波とを受信する。
トランジスター5は、受信された発信電波と受信電波との位相差情報を含む信号の検波を行う。
リアクタンス6は、検波された信号を周波数解析手段8に出力する。
電源電圧7は、信号を出力するのに利用される。
周波数解析手段8は、出力された信号に対して、高速フーリエ解析等の公知の周波数解析を行う。
なお、電波発信手段2、電磁ホーンアンテナ3、4本櫛型アンテナ4及びトランジスター5によって振動検出素子が構成されている。
【0017】
電波発信手段2で発信された発信電波と測定対象の物体から反射した反射電波とが、4本櫛型アンテナ4で受信される。発信電波と反射電波との位相差情報を含む信号はトランジスター5で検波され、電源電圧7を用いて周波数解析手段8に出力される。
次に、図2を参照しながら、測定対象の物体10(以下では、単に物体ともいう)に電波を発信した際の発信電波と反射電波との関係を説明する。
【0018】
電波発信手段2から、周波数10GHzの発信電波15が物体10(この実施形態では、りんご)に向けて発信されると、4本櫛型アンテナ4によって受信されると共に、物体10に照射される。物体10に照射された発信電波15は反射され、その反射波である反射電波16が4本櫛型アンテナ4で受信される。
【0019】
次に、図3〜図6を参照しながら、振動測定装置1の測定原理を説明する。
図3は、4本櫛型アンテナ4の詳細を示した図である。
本実施例では、周波数が10GHzの電波が使用される。該周波数を持つ電波の波長は約3.0cmであるので、4本櫛型アンテナ4には、アンテナ素子30〜33が半波長分(約1.5cm)間隔ではしご状につながれている。また、アンテナ素子30〜33と向かい合うようにアンテナ素子34〜37がはしご状につなげられている。
【0020】
電波発信手段2から電波が発信されると、発信電波15は4本櫛型アンテナ4で受信され、同時に物体10に投射される。投射された電波は物体10の表面で反射され、その反射波である反射電波16が4本櫛型アンテナ4によって受信される。
【0021】
発信電波15が4本櫛型アンテナ4で受信されると、アンテナ素子30では、
【数1】
の信号が受信される。
【0022】
半波長分(約1.5cm)離れたアンテナ素子31では、
【数2】
の信号が受信される。
【0023】
また、アンテナ素子32、アンテナ素子33ではそれぞれ
【数3】
【数4】
の信号が受信される。
【0024】
アンテナ素子31〜33で受信された信号はアンテナ素子30の位置に伝播される際には、それぞれπ、2π、3π分位相が遅れる。
よって、アンテナ素子30の位置では、図4に示すように、
【数5】
で表される信号が得られる。
【0025】
一方、発信電波15が物体10に照射されると物体の振動のため反射する位置が変化し位相変化を受ける。アンテナ素子34の位置ではψで表す位相の変化を受けるものとする。
反射電波16を4本櫛型アンテナ4で受信すると、
アンテナ素子34では、
【数6】
の信号が受信される。
【0026】
また、アンテナ素子35、36及び37では、
【数7】
【数8】
【数9】
の信号がそれぞれ受信される。
【0027】
アンテナ素子30〜33でそれぞれ受信された信号がアンテナ素子34に伝播されると、
位相がそれぞれ、π、2π、3π進むので、アンテナ素子34の位置では、図4に示すように、
【数10】
の信号が得られる。
【0028】
そして、2つの信号の合計Iは、
【数11】
【数12】
【0029】
ここで、
【数13】
【数14】
とおくと、
【数15】
となる。
【0030】
これが位相差情報を含む信号であり、この信号をトランジスター5で検波(整流)する。
当該信号を整流して平滑した後の出力は、図5に示すように
【数16】
となり、出力効率をαとすると
【数17】
となる。つまり、位相差(ψ)に従った出力(振動強度)が得られ、(a-b)>0の場合、ψが2π毎に値が最低となる。
【0031】
これを示したのが、図6である。
図6は、電波発信手段2の位置を変化させ、電波発信手段2の物体からの位置(横軸)と振動強度(縦軸)との関係を測定したグラフである。電波が行き帰りするので、位相2πは距離としては半波長分相当する。よって、発信される電波の周波数は10GHzなので、半波長(約1.5cm)毎に振動強度の値が最低となる。
なお、ψがゼロの時、整流した信号の振幅はa+bに比例し、ψがπの時はa−bに比例する。
【0032】
最後に、整流され平滑された信号に対して周波数解析手段8で高速フーリエ解析等の公知の周波数解析することによって物体10の振動を解析する。
【0033】
次に、振動測定装置1を用いてスイカの振動特性を測定した際の測定結果を説明する。
図7に示すように、スイカ40を加振器41の上におき、10MHz〜100MHzまでの振動を与え、その振動を振動測定装置1によって測定し高速フーリエ解析を行う。
図8は、上記方法により測定したスイカの振動をグラフで表した図である。
図8から読み取れるように、周波数190地点45、周波数230地点46、周波数350MHz地点47にスイカ特有の第2、第3及び第4共鳴ピークが観察された。
【0034】
なお、本実施例ではアンテナとして4本櫛型アンテナを用いたが、これに限定されず、例えば図9に示す折り返し型ダイポールアンテナ50や、他の形状のアンテナでも良い。
また、本実施例では、周波数が10GHzの電波を利用したが、これに限定されず周波数が5GHzから30GHzの範囲であれば如何なる周波数の電波を用いても良い。
また、トランジスター5とリアクタンス6を電磁ホーンアンテナ3の内部に配置するものとしたが、これらを電磁ホーンアンテナ3の外部に配置するものとしても良い。
【0035】
以上のように、実施例1に係る振動検出素子及び振動測定装置は、以下に示す効果を奏する。
第一に、測定に電波を用いるため、レーザーを反射しない物体に対しても、反射シールを貼るといった手間なしに非接触で物体の振動の検出・測定が可能となる。
第二に、反射シールを貼る必要がないので反射シールの貼り方によっては物体の振動を正確に測定できない恐れを解消できる。
【0036】
第三に、トランジスターのC級増幅回路によって発信電波と反射電波との位相差に関する情報を含む信号を検波するので高い復調効率を得ることができる。
【0037】
第四に、受信用の4本櫛形アンテナ4を、電波発信手段2の近傍、かつ反射電波が集まってくる電磁ホーンアンテナ3内に配置したので、発信電波及び反射電波の受信強度が強くなり、感度が高くとれる。その結果受信電波からの振動測定のための十分な信号を取り出すことが出来るので精度の高い振動測定が可能となる。
(実施例2)
次に、本発明の実施例2に係る振動検出素子及び振動測定装置を、図面を参照しながら説明する。
【0038】
実施例1では、4本櫛型アンテナで発信電波と反射電波とを受信し、トランジスターによって検波を行った。実施例2では、4つのダイオードをブリッジ結合したブリッジ回路と2つの同調回路を用いて、電波の受信や検波等を行う。
【0039】
図10は、本実施例で使用される振動検出素子が備えている検波回路の構成を示した図である。図10に示されるように、検波回路は、4つのダイオードをブリッジ結合したブリッジ回路53に、アンテナと共用される2つの同調回路51、52を備えており、同調回路51がブリッジ回路53の入力側に接続され、また同調回路52がブリッジ回路53の出力側に接続されている。
【0040】
図11は、本実施例で用いられる振動検出素子の構成を示した図である。
図11に示すように、電磁ホーンアンテナ3の内部に一対の導体板をくの字型にすることにより形成されたレフレクター54配置され、また電磁ホーンアンテナ3の一端(基部)に電波発信手段2が配置されている。
【0041】
レフレクター54の成す角が鋭角である側の空間に同調回路51が、またレフレクターの成す角が鈍角である側の空間に同調回路52が配置されている。また、同調回路51の一端はレフレクター54に接地されている。発信電波を位相検出の対照とし、その信号に対する反射信号の位相を検波回路で検出する。なお、レフレクター54は対照用の信号と反射信号とを隔離するために配置されている。
【0042】
一方の同調回路に信号を、もう一方に同調回路に対照信号を入力して平衡復調回路で位相信号を取り出して出力する。出力信号は2つの同調回路の中点から得られ、出力信号線は干渉がないように電波の偏波に直角の向きに引き出される。
なお、該振動検出素子を備えた振動測定装置の構成及び該振動測定装置を用いた振動測定の方法に関しては、実施例1と同様なので、ここでは割愛する。
このように、実施例2に係る振動検出素子及び振動測定装置は、以下に示す効果を奏する。
【0043】
第一に、測定に電波を用いるのでレーザーを反射しない物体に対しても、反射シールを貼るといった手間なしに非接触で物体の振動の検出・測定が可能となる。
第二に、反射シールを貼る必要がないので反射シールの貼り方によっては物体の振動を正確に測定できない恐れを解消できる。
第三に、レフレクター54、同調回路51,52及びブリッジ回路53を組み合わせることにより、高い復調率が実現できる。
【0044】
第四に、アンテナと共用する同調回路を電波発信手段2の近傍、かつ反射電波が集まってくる電磁ホーンアンテナ3内に配置したので、受信電波の受信強度が強くなり感度が高くとれる。その結果受信電波からの振動測定のための十分な信号を取り出すことが出来るので精度の高い振動測定が可能となる。
(実施例3)
次に、本発明の実施例3に係る振動検出素子及び振動測定装置を、図面を参照しながら説明する。
【0045】
本実施例は、アンテナとして多重ダイポール型アンテナ60を使用し、検波用のダイオード61を接続したものである。
図12は、本実施例で利用される振動検出素子の構成を示した図である。
振動検出素子は、電波発信手段2、電磁ホーンアンテナ3、多重ダイポールアンテナ60及びダイオード61を備えている。電磁ホーンアンテナ3の内部に、多重ダイポールアンテナ60、ダイオード61が配置され、また電波発射手段2は電磁ホーンアンテナ3の一端(基部)に配置されている。
【0046】
多重ダイポールアンテナ60は、復調効率を上げるためにアンテナを多重にされている。
電波発信手段2から発信された電波の発信電波と反射電波とが、多重ダイポールアンテナ60で受信され、ダイオード61で位相差情報を含む信号を検波(整流)する。
なお、該振動検出素子を備えた振動測定装置の構成及び該振動測定装置を用いた振動測定の方法に関しては、実施例1と同様なので、ここでは割愛する。
また、本実施例では、電磁ホーンアンテナ3の内部にダイオード61を配置するものとしたが、ダイオード61を電磁ホーンアンテナ3の外部に配置するものとしても良い。
【0047】
実施例3に係る振動検出素子及び振動測定装置は、以下に示す効果を奏する。
第一に、測定に電波を利用するのでレーザーを反射しない物体に対しても、反射シールを貼るといった手間なしに非接触で物体の振動の検出・測定が可能となる。
第二に、反射シールを貼る必要がないので、反射シールの貼り方によっては物体の振動を正確に測定できない恐れを解消できる。
【0048】
第三に、多重ダイポールアンテナ60とダイオード61とを組み合わせることにより高い復調率を得ることが可能となる。
第四に、多重ダイポールアンテナ60を電波発信手段2の近傍、かつ反射電波が集まってくる電磁ホーンアンテナ3内に配置したので、発信電波及び反射電波の受信強度が強くなり感度が高くとれる。その結果受信電波からの振動測定のための十分な信号を取り出すことが出来るので精度の高い振動測定が可能となる。
【0049】
なお、実施例1、実施例2及び実施例3では、トランジスター、ダイオード等を用いて検波を行ったが、これ以外の能動素子を用いて検波を行うものとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る振動検出素子、振動測定装置並びに振動測定方法は、青果物のような軟らかい生物体、特にレーザー光を反射しにくい生物体の振動を非接触に測定できるので、青果物の品質を非接触で検査する選別機械や生育途上の青果物の生育モニタリングセンサーとして有用である。また、樹木、木材、といった青果物以外の生物体の品質を非接触で測定できる品質測定器にも有用である。さらには、コンクリートなどの人工物の建築構造物の内部劣化や構造を測定するという応用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1に係る振動検出素子と振動測定装置との構成を示した図である。
【図2】実施例1に係る振動測定装置と測定対象の物体との位置関係を示した図である。
【図3】発信電波と反射電波とが各アンテナ素子で受信される際の位相を示した図である。
【図4】トランジスターの位置での合成された信号の位相を示した図である。
【図5】トランジスターの位置での出力をベクトルで示した図である。
【図6】電波発信手段の位置と振動出力との関係を示した図である。
【図7】実施例1に係る振動測定装置を用いてスイカの振動を測定する際の図である。
【図8】実施例1に係る振動測定装置で測定したスイカの振動スペクトルを示した図である。
【図9】実施例1に係る振動検出素子のアンテナを折り返し型ダイポールアンテナとしたものである。
【図10】実施例2に係る振動検出素子で用いる検出回路を示した図である。
【図11】実施例2に係る振動検出素子を示した図である。
【図12】実施例3に係る振動検出素子を示した図である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・振動測定装置
2・・・電波発信手段
3・・・電磁ホーンアンテナ
4・・・4本櫛型アンテナ
5・・・トランジスター
6・・・リアクタンス
7・・・電源電圧
8・・・周波数解析手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端が開口された筒状の電波反射手段と、
電波反射手段の一端に、発信した電波が開口端の方向に向かうように取り付けられた電波発信手段と、
電波発信手段の近傍、かつ電波反射手段の内部に配置され、電波発信手段から発信された電波を受信するとともに、発信された電波が測定対象の物体で反射した反射電波を受信するアンテナと、
アンテナで受信された発信電波と反射電波との位相に関する情報含む信号を検波するトランジスターと、
を備えたことを特徴とする振動検出素子。
【請求項2】
アンテナが櫛型である請求項1に記載の振動検出素子。
【請求項3】
アンテナが折り返し型ダイポールアンテナである請求項1に記載の振動検出素子。
【請求項4】
少なくとも一端が開口された筒状の電波反射手段と、
電波反射手段の一端に、発信した電波が開口端の方向に向かうように取り付けられた電波発信手段と、
電波発信手段の近傍、かつ電波反射手段の内部に配置され、電波発信手段から発信された電波を受信するとともに、発信された電波が測定対象の物体で反射した反射電波を受信するダイポールアンテナと、
ダイポールアンテナで受信した発信電波と反射電波との位相に関する情報含む信号を検波するダイオードと、
を備えたことを特徴とする振動検出素子。
【請求項5】
少なくとも一端が開口された筒状の電波反射手段と、
電波反射手段の一端に、発信した電波が開口端の方向に向かうように取り付けられた電波発信手段と、
4つのダイオードをブリッジ結合したブリッジ回路と、ブリッジ回路の入力側に接続された第一同調回路と、ブリッジ回路の出力側に接続された第二同調回路と、電波反射手段の内部、かつ電波発信手段の近傍に配置され一対の導体板によってくの字状に形成されたレフレクターと、
を備え、
第一同調回路はレフレクターの成す角が鋭角である側の空間に、第二同調回路はレフレクターの成す角が鈍角である側の空間にそれぞれ配置されたことを特徴とする振動検出素子。
【請求項6】
電波反射手段は、電磁ホーンアンテナである請求項1から5のいずれかに記載の振動検出素子。
【請求項7】
電波発信手段から発信される電波の周波数が、5GHzから30GHzの範囲である請求項1から6のいずれかに記載の振動検出素子。
【請求項8】
位相に関する情報を含む信号とは、発信電波と反射電波との位相差の情報を含む信号であること特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の振動検出素子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載された振動検出素子と、
位相に関する情報を含む信号を周波数解析する周波数解析手段と、
を備えたことを特徴とする振動測定装置。
【請求項10】
測定対象の物体に電波を発信する第1の工程と、
電波発信手段の近傍、かつ電波反射手段の内部に配置されたアンテナによって、第1工程で発信された電波を受信するとともに、発信された電波が測定対象の物体で反射した反射電波を受信する第2の工程と、
第2工程で受信された発信電波と受信電波との位相に関する情報を含む信号をトランジスターで検波する第3の工程と、
第3工程で検波された位相に関する情報を含む信号を周波数解析する第4の工程と、
を備えたことを特徴とする振動測定方法。
【請求項11】
位相に関する情報を含む信号とは、発信電波と受信電波との位相差の情報を含む信号であることを特徴とする請求項10に記載の振動測定方法。
【請求項1】
少なくとも一端が開口された筒状の電波反射手段と、
電波反射手段の一端に、発信した電波が開口端の方向に向かうように取り付けられた電波発信手段と、
電波発信手段の近傍、かつ電波反射手段の内部に配置され、電波発信手段から発信された電波を受信するとともに、発信された電波が測定対象の物体で反射した反射電波を受信するアンテナと、
アンテナで受信された発信電波と反射電波との位相に関する情報含む信号を検波するトランジスターと、
を備えたことを特徴とする振動検出素子。
【請求項2】
アンテナが櫛型である請求項1に記載の振動検出素子。
【請求項3】
アンテナが折り返し型ダイポールアンテナである請求項1に記載の振動検出素子。
【請求項4】
少なくとも一端が開口された筒状の電波反射手段と、
電波反射手段の一端に、発信した電波が開口端の方向に向かうように取り付けられた電波発信手段と、
電波発信手段の近傍、かつ電波反射手段の内部に配置され、電波発信手段から発信された電波を受信するとともに、発信された電波が測定対象の物体で反射した反射電波を受信するダイポールアンテナと、
ダイポールアンテナで受信した発信電波と反射電波との位相に関する情報含む信号を検波するダイオードと、
を備えたことを特徴とする振動検出素子。
【請求項5】
少なくとも一端が開口された筒状の電波反射手段と、
電波反射手段の一端に、発信した電波が開口端の方向に向かうように取り付けられた電波発信手段と、
4つのダイオードをブリッジ結合したブリッジ回路と、ブリッジ回路の入力側に接続された第一同調回路と、ブリッジ回路の出力側に接続された第二同調回路と、電波反射手段の内部、かつ電波発信手段の近傍に配置され一対の導体板によってくの字状に形成されたレフレクターと、
を備え、
第一同調回路はレフレクターの成す角が鋭角である側の空間に、第二同調回路はレフレクターの成す角が鈍角である側の空間にそれぞれ配置されたことを特徴とする振動検出素子。
【請求項6】
電波反射手段は、電磁ホーンアンテナである請求項1から5のいずれかに記載の振動検出素子。
【請求項7】
電波発信手段から発信される電波の周波数が、5GHzから30GHzの範囲である請求項1から6のいずれかに記載の振動検出素子。
【請求項8】
位相に関する情報を含む信号とは、発信電波と反射電波との位相差の情報を含む信号であること特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の振動検出素子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載された振動検出素子と、
位相に関する情報を含む信号を周波数解析する周波数解析手段と、
を備えたことを特徴とする振動測定装置。
【請求項10】
測定対象の物体に電波を発信する第1の工程と、
電波発信手段の近傍、かつ電波反射手段の内部に配置されたアンテナによって、第1工程で発信された電波を受信するとともに、発信された電波が測定対象の物体で反射した反射電波を受信する第2の工程と、
第2工程で受信された発信電波と受信電波との位相に関する情報を含む信号をトランジスターで検波する第3の工程と、
第3工程で検波された位相に関する情報を含む信号を周波数解析する第4の工程と、
を備えたことを特徴とする振動測定方法。
【請求項11】
位相に関する情報を含む信号とは、発信電波と受信電波との位相差の情報を含む信号であることを特徴とする請求項10に記載の振動測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−216625(P2009−216625A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62318(P2008−62318)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(596027988)学校法人帝塚山学園 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(596027988)学校法人帝塚山学園 (3)
【Fターム(参考)】
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