説明

振動検出装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、音響及び振動検出装置、特にディジタル形の振動検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の音響及び振動検出装置、例えば直線運動検出素子としての振動ピックアップや回転運動検出素子としての振動ジャイロ等においては、その出力信号はアナログのものが多い。また、振動検出装置内にA/D変換器を内蔵するものが提案されているが、それはアナログ信号を単に内蔵のA/D変換器によってディジタル化するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のアナログ形のものは、外来ノイズの影響を受けやすく、また、伝送経路が長くなると伝送線の線間容量が大きくなるため、特に高域の信号が劣化しがちである。このような信号劣化を防止するためには太いケーブルが必要であり、移動物体の振動検出のためには多くの困難が伴うし、特に多数の検出装置を用いる場合は検出不可能となることもある。
【0004】また、従来のディジタル形の場合は、振動検出装置のアナログ出力が必ずしも検出素子そのものの出力ではなく、種々の変調、例えば振幅変調を受けており、それを復調して正しい検出出力を得なければならないものもあり、最終的に離散的なディジタル信号列にするために不要な処理、例えば平均化処理等を行う必要があるので、その処理のために時間遅れや信号歪みが生じることがある。
【0005】本発明は、以上のような従来の振動検出装置における問題点を解消し、特に検出出力が振幅変調されている振動検出装置の新しいディジタル化を実現する。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による振動検出装置においては、出力信号が振幅変調されて出力される振動検出素子を用い、搬送波信号と振幅変調された出力信号との乗算出力の波高値をサンプルして量子化データを得、搬送波信号と振幅変調された出力信号との乗算出力符号をサインビットとして、それらを組み合わせてディジタル出力とするA/D変換部を備え、振動検出素子の検出出力を直接ディジタル化する。そして、そのディジタル化出力を用途やその後の演算処理に適合するように補正処理するディジタル補正処理回路を設けて、それらを一体的に結合して振動検出装置が構成される。更に、外部からのディジタル制御信号を受けて、A/D変換部や補正処理回路に任意の特性を持たせることができるように制御信号を生成し供給する制御回路をも内蔵させる。
【0007】
【作用】検出出力が振幅変調を受けて出力される場合に、検出した振動の振幅変調されたアナログ出力のピーク値をそのまま量子化データとし、また、同期検波出力の極性を符号ビットとするディジタル信号に、検出素子の至近において、平均化することなく直接変換することができる。
【0008】
【実施例】以下、音響および振動検出素子の出力信号が振幅変調されて出力される振動検出装置、例えば角柱振動方式の振動ジャイロの場合を例として本発明を説明する。図1は、角柱振動方式の振動ジャイロの振動検出原理を説明するための概念図であり、1は正方形断面の角柱振動子、2は対向する二面に取り付けられた駆動用圧電素子、3は他の対向する二面に取り付けられた検出用圧電素子、4、4は支点、5は差動増幅器、6は駆動用信号源、7は復調のための乗算器、8は低域フィルタである。
【0009】駆動用素子2に角柱振動子1の固有振動周波数の交番信号を、すなわち搬送波信号を加えると、角柱振動子1は強制振動されて一定のモードで共振を起こす。外力が加わらない状態においては信号検出用素子3の出力は零であるが、角柱振動子1の軸方向に回転力が加わると、コリオリの力により強制振動用の交番信号が振幅変調された信号となって検出される。この場合の振幅の大きさは軸に及ぼされる回転角速度に比例し、回転方向は駆動用交番信号に対する検出信号の位相ずれ方向に対応する。 従って、一般的には振幅変調された検出信号と駆動用信号相互の積をとり、その信号を低域フィルタにより搬送波成分を除去して検出信号とすることが行われている。そのため、積を求める時の演算エラーや低域フィルタを通すために生ずる時間遅れが発生する。
【0010】そこで、このように振幅変調された検出信号と駆動用信号とから直接A/D変換することにより、上記した問題点を解消することができる。図2は、そのために有効な本発明による振動検出装置の実施例の構成を説明するための図であり、特にそのA/D変換部分の構成を示している。図中、9は検出信号、10は駆動用信号であり、これらは図1における乗算器7の2つの入力信号に相当する。11はピーク値PCM化手段、12は同期検波器、13は極性のみに着目した符号化手段、20はこれらから構成されるA/D変換部である。
【0011】図3は、このA/D変換部20の変換原理を説明するための図である。ピーク値PCM化手段11は、図に示すように、搬送波信号と振幅変調された出力信号との積のピーク部波高値をサンプリングしてPCM符号化するもので、特別にサンプリングすることなく搬送波周波数のN(N=1、2、3・・・)倍および1/N倍をサンプル周波数として検出信号の波高値をサンプルし符号化する。また、同期検波器12は、同じく図に示すように、検出信号と駆動用信号との同期検波を行い、振動の回転方向を検出するもので、位相検波器あるいは乗算器により構成することができる。また、符号化手段13は、その同期検波出力の極性、すなわちサンプル時点の検出信号と駆動用信号とが同相であるかあるいは逆相であるかをサインビットとして符号化する。そして、これらの符号化出力が図に示すように極性のサインビットをMSBとし、以下にピーク値符号化ビットが配列されたビット構成により出力される。
【0012】本実施例の振動検出装置は以上のように構成されているので、検出出力は検出素子の至近において、検出された振動の振幅変調されたアナログ出力のピーク値がそのまま量子化データとされ、また、同期検出検波出力の極性は符号ビットとされて、ディジタル信号に平均化することなく直接変換される。更に、このようにしてディジタル化された検出出力に対して、その検出出力の用途やその後の必要な演算処理等に適合した特性を与えるために、帯域制限、線形補正、検出出力の次元変換等の種々の補正処理を施すことが必要であり、そのためのディジタル処理回路を上記したA/D変換部20の後段に設けることができる。そして、その補正処理特性は外部からの制御信号により制御しうるように構成される。
【0013】図4は、そのための振動検出装置の構成例を示しており、21は変調された検出出力を出力する振動検出素子、22は図2において説明した検出出力を直接変換するA/D変換部(20)、23はディジタル補正処理回路、24は外部からのディジタル制御入力を受けて、A/D変換及び補正処理の特性を制御するための制御回路であり、これらが一体的に結合された振動検出装置30が構成されている。
【0014】
【発明の効果】本発明による振動検出装置は上記のように構成されているので、検出した振動のアナログ出力を検出素子の至近でディジタル信号に変換することにより、外来ノイズの影響を受けにくい;伝送信号の劣化が少ない;光ケーブル等の細くて軽いケーブルを用いることができる;複数の振動検出装置からの時分割多重伝送が可能である;ワイヤレス化にも適する等々のディジタル化に伴う効果が達成される。加えて、本発明によれば、ディジタル信号を用いて振動検出装置に対する双方向通信が可能となるので、振動体の振動状況に応じた細かな測定条件の設定を遠距離から容易に行うことができる。特に、検出出力は振幅変調を受けている振動検出素子に対して、搬送波信号と振幅変調された出力信号との積のピーク値をそのまま量子化データとし、また、同期検波出力の極性を符号ビットとするディジタル信号に検出素子の至近で平均化することなく直接変換できるので、外来ノイズの影響を受けず、また、信号伝送による劣化を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】角柱振動方式の振動ジャイロの振動検出原理を説明するための概念図である。
【図2】本発明による振動検出装置におけるA/D変換部の構成を説明するための図である。
【図3】A/D変換部30の変換原理を説明するための図である。
【図4】本発明による振動検出装置の概念的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 角柱振動子
2 駆動用圧電素子
3 検出用圧電素子
4 支点
5 差動増幅器
6 駆動用信号源
7 乗算器
8 低域フィルタ
9 検出信号
10 駆動用信号
11 ピーク値PCM化手段
12 同期検波器
13 符号化手段
20、22 A/D変換部
21 振動検出素子
23 ディジタル補正処理回路
24 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 音響及び振動検出素子の出力信号が振幅変調されて出力される振動検出装置において、搬送波周波数のN(N=1、2、3………)倍及び1/N倍をサンプル周波数とし、搬送波信号と上記振幅変調された出力信号との乗算出力の波高値をサンプル点としたA/D変換手段と、搬送波信号と上記振幅変調された出力信号との乗算出力の符号をサインビットとした符号化手段とからなるA/D変換部を備え、上記振動検出素子の検出出力を直接ディジタル化することを特徴とする振動検出装置。
【請求項2】 A/D変換部の後段に接続されるディジタル補正処理回路を一体的に内蔵したことを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項3】 外部からのディジタル制御信号を受け入れ、A/D変換特性及び検出信号補正処理特性を制御する信号を生成する制御回路を、更に備えたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の振動検出装置。
【請求項4】 A/D変換部は、符号化手段により得られたサインビットをMSBとし、A/D変換手段においてPCM化された波高値データを以下LSBまでのビット上に配列したディジタル信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3123227号(P3123227)
【登録日】平成12年10月27日(2000.10.27)
【発行日】平成13年1月9日(2001.1.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−161863
【出願日】平成4年5月29日(1992.5.29)
【公開番号】特開平5−332818
【公開日】平成5年12月17日(1993.12.17)
【審査請求日】平成11年5月19日(1999.5.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【参考文献】
【文献】特開 平4−106409(JP,A)
【文献】特開 昭60−52773(JP,A)
【文献】特開 平2−306112(JP,A)
【文献】特開 平2−151288(JP,A)