説明

振動浮上装置及び振動浮上搬送装置

【課題】振動プレートを支持するプレート支持部を容易に設置できるとともに、振動プレートが熱膨張した場合でも、プレート支持部が振動プレートの振動を妨げることのない振動浮上装置及び振動浮上搬送装置を提供する。
【解決手段】振動プレートと、前記振動プレートを振動させる振動子と、前記振動プレートを支持するプレート支持部と、を備え、前記振動子により前記振動プレートを特定周波数で振動させることにより、前記振動プレート上の対象物を前記振動プレートの表面から浮上させる振動浮上装置であって、前記プレート支持部は、前記振動プレートの裏面と対向する部分にエアを噴出するエア噴出部を有しており、前記エア噴出部から噴出されたエアにより前記振動プレートが浮上した状態で支持される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板をプレートから浮上させて搬送する基板搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)のフォトリソグラフィの技術分野では、基板に所定処理を行う基板処理装置から次工程における基板処理装置への基板の搬送に基板搬送装置が使用されている。中でも基板をプレートから浮上させた状態で搬送を行う浮上搬送装置は、ロボットハンドなどによる搬送装置に比べて基板の姿勢変化の動作がないため、タクトタイムを短縮できるという利点を有している。
【0003】
一般に、浮上搬送装置は、プレートの表面からエアを噴出させることにより基板をプレートから浮上させるエア浮上搬送装置が知られている。ところが、エア浮上搬送装置は、搬送される基板表面が噴出するエアの流れの影響を受けることや、エアによるパーティクルの影響を受ける場合があるという問題を有していることから、プレートを振動させることにより基板を浮上させる振動浮上装置を用いた振動浮上搬送装置が考案されている(下記特許文献1参照)。
【0004】
振動浮上装置は、振動プレートと振動子とを備えており、振動子により振動プレートを特定周波数で振動させることにより、振動プレート上の対象物(例えば基板等)を浮上させることができる。具体的には、振動プレートは、ほぼ水平状態にプレート支持部で支持されており、振動子が振動プレートに当接した状態で設けられている。そして、振動子により振動プレートを特定周波数(例えば超音波領域の周波数)で振動させることにより、振動プレートと基板との間に空気層が形成され、基板が振動プレートの表面から浮上する。また、振動浮上搬送装置は、上述の振動浮上装置に搬送装置が設けられており、浮上した基板を所定の方向にガイドすることにより、基板を浮上させた状態で搬送できるようになっている。
【0005】
ここで、振動プレートは、プレート支持部により振動プレートの振動が妨げられることのないように支持されている。具体的には、プレート支持部は、ピン状の形状を有しており、ピン状のプレート支持部が振動プレートに当接することにより支持している。すなわち、振動プレートを特定周波数で振動させると、振動プレートには、厚み方向に最大振幅になる「腹」部分と、厚み方向の振幅がゼロになる「節」部分とが形成される。そして、ピン状のプレート支持部は、振動プレートの振動が妨げられることのないように、この「節」部分にピン状の先端部分を当接させることにより、振動プレートを支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−24415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の振動浮上装置又は振動浮上搬送装置では、プレート支持部が振動プレートの振動を妨げることなく支持するのは困難であるという問題があった。すなわち、プレート支持部の設置には、振動プレートの「腹」部分と「節」部分とを正確に見極め、プレート支持部を「節」部分に精度よく設置する必要がある。仮にずれて設置した場合には、振動プレートの振動が妨げられるため所定の周波数で振動させることが困難になる。また、特定の周波数で振動する振動プレートとプレート支持部とが接触すると、その接触によりパーティクルが発生するとともに、高周波音の騒音が発生する虞がある。そのため、プレート支持部の先端部分を精度よく振動プレートの「節」部分に当接させるという設置作業には、非常に手間がかかるという問題があった。
【0008】
また、プレート支持部の先端部分を振動プレートの「節」部分に精度よく設置できた場合であっても、振動プレートが振動子によって振動されると、その振動とともに熱が発生する。その結果、プレート支持部を設置した時に振動プレートの温度に比べて、しばらく時間が経過した振動プレートの温度は僅かに高温になり、振動プレートが熱膨張する。また、振動プレートの温度上昇により共振周波数が変化する。そうすると、振動プレートの「腹」部分と「節」部分の位置が僅かにずれ、当初のプレート支持部の配置位置では振動プレートの振動が妨げられ、上述のパーティクル及び騒音の問題が露呈してしまう虞があるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、振動プレートを支持するプレート支持部を容易に設置できるとともに、振動プレートが熱膨張した場合、また、振動プレートの温度上昇により共振周波数が変化し「節」位置がずれた場合でも、プレート支持部が振動プレートの振動を妨げることのない振動浮上装置及び振動浮上搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の振動浮上装置は、振動プレートと、前記振動プレートを振動させる振動子と、前記振動プレートを支持するプレート支持部と、を備え、前記振動子により前記振動プレートを特定周波数で振動させることにより、前記振動プレート上の対象物を前記振動プレートの表面から浮上させる振動浮上装置であって、前記プレート支持部は、前記振動プレートの裏面と対向する部分にエアを噴出するエア噴出部を有しており、前記エア噴出部から噴出されたエアにより前記振動プレートが浮上した状態で支持されることを特徴としている。
【0011】
上記振動浮上装置によれば、振動プレートを支持するプレート支持部には、振動プレートの裏面と対向する部分にエア噴出部が備えられており、このエア噴出部から噴出されるエアにより振動プレートが浮上した状態で支持されるため、振動プレートの振動を妨げることなく支持することができる。すなわち、エア噴出部からエアが噴出されると、振動プレートの裏面とプレート支持部との間に空気層が形成され、この空気層分だけ振動プレートがプレート支持部から浮上した状態で支持される。そして、エア噴出部のエア圧を調整することにより前記空気層の厚みを調節することができるため、振動プレートの「腹」部分の振幅よりも大きな寸法に前記空気層が形成されるように調節することにより、振動する振動プレートがプレート支持部に接触するのを回避した状態で支持することができる。したがって、プレート支持部の配置は、振動プレートの「腹」部分と「節」部分の位置に制限されることなく自由に配置することができるため、プレート支持部の設置作業を容易にすることができる。また、振動プレートが熱膨張した場合、また、振動プレートの温度上昇により共振周波数が変化し「節」位置がずれた場合でも、振動プレートとプレート支持部とが接触することがないため、パーティクルの発生や騒音が発生する問題を回避することができる。
【0012】
また、前記振動プレートが前記振動プレートの表面と水平をなす方向に変位するのを防止する水平方向規制機構をさらに備えており、前記水平方向規制機構は、前記振動プレートの裏面に凹形状に形成された規制凹部に前記プレート支持部の一部を挿入させることにより形成されており、前記プレート支持部は、前記規制凹部の側壁面に対向する位置に側面エア噴出部がさらに設けられている構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、振動プレートの規制凹部にプレート支持部の一部が挿入されているため、振動プレートの水平方向の変位が規制される。さらに、側壁面に対応する側面エア噴出部からエアが噴出されることにより、規制凹部にプレート支持部の一部が挿入された状態で振動プレートが水平方向に変位しようとした場合に側面エア噴出部から噴出されるエア圧により規制凹部とプレート支持部とが接触するのを回避することができる。すなわち、機械的に完全に固定される場合に比べて水平方向の振動は僅かに許容されるため、振動プレートの振動が妨げられることなく振動プレートの水平方向の変位を抑えることができる。したがって、振動プレートとプレート支持部とが接触することによるパーティクルの発生を抑えつつ、振動プレートの水平方向の変位を規制することができる。
【0014】
また、前記水平方向規制機構の前記プレート支持部は、ガイド部材上に配置されており、このガイド部材により、プレート支持部の取付位置は振動プレートの表面と水平をなす方向に変位するのを許容される構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、振動プレートが水平方向に変位した場合、振動プレートの規制凹部が変位するのにしたがって、プレート支持部の取付位置がガイド部材とともに移動する。したがって、振動プレートが熱膨張を生じた場合であっても、熱膨張が起因する変位量をガイド部材で吸収させることができるため、振動プレートに歪み変形を生じさせることなく振動プレートを浮上した状態で支持することができる。
【0016】
また、前記振動プレートは、複数の前記プレート支持部で支持されており、これら複数のプレート支持部のうち、前記水平方向規制機構のプレート支持部は、一方向に並べて配列されており、これら水平方向規制機構のプレート支持部のうち、1つ以外は前記ガイド部材上に配置されており、そのガイド部材の移動方向は、プレート支持部の配列方向である構成にしてもよい。
【0017】
この構成によれば、複数のプレート支持部の中に水平方向規制機構を有するプレート支持部が少なくとも1つ含まれているため、振動プレートの水平方向の変位を抑えて振動プレートを支持することができる。そして、1列に配列された水平方向規制機構を有するプレート支持部と水平方向に変位するのを規制する機能がないプレート支持部とによって支持されていることにより、仮に振動プレートが熱膨張し水平方向の延びが生じた場合でも、水平方向規制機構を有するプレート支持部により水平方向の変位が規制され落下が防止される。一方、水平方向規制機構のないプレート支持部により支持されている部分は、自由端になるため振動プレートが自由に伸縮変形する。しかし、振動プレートの裏面と対向する部分にエア噴出部が備えられているため、振動プレートの「腹」部分と「節」部分の位置に制限されることなく支持することができる。また、水平方向規制機構を有するプレート支持部の配列方向の延びは、1つのプレート支持部以外は、ガイド部材上に配置されているため、熱による延びがガイド部材で吸収される。したがって、振動プレートは熱の影響を受けた場合でも、パーティクルの発生や騒音が発生することなく支持することができる。
【0018】
また、前記振動プレートが前記振動プレートの表面と水平をなす方向に変位するのを防止する水平方向規制機構をさらに備えており、前記水平方向規制機構は、前記振動プレートの裏面に設けられ前記振動プレートの表面と垂直をなす方向に延びる規制突起部と、この規制突起部の変位を拘束する拘束部とを有しており、前記拘束部は、前記規制突起部が挿入可能な挿入孔と、この挿入孔の壁面からエアを噴出するエア供給部とを有しており、この挿入部に前記規制突起部が挿入された状態で前記エア供給部からエアが噴出されることにより、前記規制突起部が振動プレートの表面と水平をなす方向に変位するのが規制される構成にしてもよい。
【0019】
この構成によれば、振動プレートに設けられた規制突起部が拘束部の挿入孔に挿入された状態で前記エア供給部からエアが供給されると、規制突起部と挿入孔の壁面との間に空気層が介在することにより、エア圧により規制突起部が挿入孔内に拘束される。したがって、規制突起部が振動プレートの表面と水平をなす方向に変位しようとすると規制突起部の変位が規制されることにより、振動プレートが水平方向に変位するのが規制される。また、規制突起部の水平方向の変位がエア圧によって規制されるため、規制突起部が機械的に完全に固定される場合に比べて水平方向の振動は僅かに許容される。これにより、振動プレートの振動が妨げられることなく振動プレートの水平方向の変位を抑えることができる。そして、規制突起部と拘束部とが直接接触しないため、接触することによるパーティクルの発生や騒音が発生する問題を回避することができる。
【0020】
また、上記課題を解決するために本発明の振動浮上搬送装置は、上記に記載の振動浮上装置と、前記振動プレート上の対象物を特定方向に導く搬送装置と、を備えることを特徴としている。
【0021】
この振動浮上搬送装置によれば、プレート支持部にエア噴出部が備えられており、このエア噴出部から噴出されるエアにより振動プレートが浮上した状態で支持されるため、振動する振動プレートがプレート支持部に接触するのを回避することができる。したがって、パーティクルの発生や騒音が発生する問題を回避して基板を搬送することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の振動浮上装置及び振動浮上搬送装置によれば、振動プレートを支持するプレート支持部を容易に設置できるとともに、振動プレートが熱膨張した場合でも、プレート支持部が振動プレートの振動を妨げるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態における振動浮上搬送装置を示す上面図である。
【図2】上記振動浮上搬送装置の側面図である。
【図3】上記振動浮上搬送装置の正面図である。
【図4】プレート支持部を示す拡大図である。
【図5】水平方向規制機構を示す拡大図である。
【図6】他の実施形態におけるプレート支持部の配置を上から見た図である。
【図7】水平方向規制機構付きのプレート支持部を示す図である。
【図8】図6におけるA−A断面図とB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の振動浮上装置及び振動浮上搬送装置に係る実施の形態について、図面を用いて説明する。
[実施例1]
図1は、振動浮上搬送装置の一実施形態を示す上面図であり、図2は、振動浮上搬送装置の側面図、図3は、振動浮上搬送装置の正面図である。
【0025】
図1〜図3において、振動浮上搬送装置1は、対象物(本実施形態では基板2)を浮上させた状態で搬送するものであり、上流側の基板処理装置から次工程における下流側の基板処理装置に基板2を搬送するものである。この振動浮上搬送装置1は、振動浮上装置10と搬送装置20とを有しており、振動浮上装置10によって浮上状態の基板2が搬送装置20によって特定方向に導かれることによって基板2が搬送されるようになっている。
【0026】
なお、以下の説明では、基板2が搬送される搬送方向をX軸方向とし、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0027】
振動浮上搬送装置1は、振動浮上装置10を備え、この振動浮上装置10のY軸方向両側に搬送装置20が配置されている。本実施形態では、振動浮上装置10はX軸方向に2台配列されており、この配列方向に沿って搬送装置20が配置されている。すなわち、搬送装置20により振動浮上装置10上の基板2がX軸方向に搬送されるようになっている。
【0028】
振動浮上装置10は、基板2を浮上した状態に保つものであり、振動プレート11を振動させることにより基板2を振動プレート11の表面11a上に浮上させることができる。この振動浮上装置10は、振動プレート11と、この振動プレート11を振動させる振動子12と、振動プレート11を支持するプレート支持部30とを有しており、プレート支持部30で支持された振動プレート11を振動子12により特定周波数(例えば超音波領域の周波数)で振動させることにより、基板2を振動プレート11上で浮上させることができる。
【0029】
振動プレート11は、矩形状に形成された金属製の平板状部材であり、基板2が供給されるプレート表面11aとその裏面11bとがそれぞれ平坦状に形成されている。また、振動プレート11は、そのプレート表面11aが基板2よりも大きいサイズに形成されており、供給された基板2全面がはみ出すことなく、プレート表面11aに対向するようになっている。そして、振動プレート11のプレート表面11aに基板2が供給された状態で、振動プレート11が特定周波数で振動させられると、プレート表面11aと基板2との間に空気層が形成され、基板2がプレート表面11aから浮上できるようになっている。
【0030】
この振動プレート11は、基台14上に支持されている。基台14は、金属製の棒状フレーム14aが組付けられることにより形成されており、本実施形態では、棒状フレーム14aがボルトで固定されることにより直方体形状の枠体に形成されている。そして、この基台14上にプレート支持部30が設けられており、このプレート支持部30により振動プレート11が支持されている。
【0031】
プレート支持部30は、振動プレート11をその振動を妨げることなく支持するためのものであり、基台14に連結されるブラケット部31と、ブラケット部31に連結されるエアベアリング32とを有している。このプレート支持部30は、複数配置されており、本実施形態では、1つの振動プレート11に対しX軸方向及びY軸方向に4つずつ計16個配置されている。そして、エアベアリング32からエアが噴出されることにより、振動プレート11が噴出したエアにより浮上した状態で支持されるようになっている。
【0032】
ここで、図4は、プレート支持部30の先端部分を拡大した図である。図4に示すように、ブラケット部31は、金属製の平板状部材であり、一方端が基台14の棒状フレーム14aにボルト33で連結されている。そして、他方端には、エアベアリング32が軸部材34を介して連結されている。すなわち、ブラケット部31の他方端には、軸部材34がその軸方向が振動プレート11と直交する姿勢で設けられており、この軸部材34の先端部分に、エアベアリング32が取り付けられている。このように、プレート支持部30において、振動プレート11の裏面11bに最も接近する位置にエアベアリング32が取付けられている。
【0033】
このエアベアリング32は、円盤形状を有しており、振動プレート11の裏面11bと対向する表面は、表面全体からエアが噴出するエア噴出部32aが形成されている。すなわち、エアベアリング32が取付けられた状態では、エアベアリング32のエア噴出部32aが振動プレート11の裏面11bと対向する姿勢で取付けられている。そして、エアベアリング32には、エアコンプレッサー(不図示)と連結される配管35が接続されており、エアコンプレッサーからエアが供給されると、エア噴出部32aを通じて振動プレート11の裏面11bに向かってエアが噴出されるようになっている。したがって、エアコンプレッサーからエアを供給すると、16個それぞれのエアベアリング32からエアが噴出されることにより、振動プレート11の裏面11bとエア噴出部32aとの間に空気層が形成され、振動プレート11がエア噴出部32aから浮上した状態で支持される(図4における実線の振動プレート11。2点鎖線は浮上前の振動プレート11を示す)。
【0034】
ここで、振動プレート11の浮上量は、振動プレート11の最大振幅よりも大きくなるように設定される。すなわち、振動プレート11の浮上量は、振動プレート11の「腹」部分の振幅よりも大きくなるようにエア噴出部32aからのエア供給量を調節することより、振動プレート11とエア噴出部32aとの接触が回避され、プレート支持部30が振動プレート11の振動を妨げることなく支持することができる。
【0035】
また、本実施形態の振動浮上装置10には、水平方向規制機構40が設けられている。この水平方向規制機構40は、振動プレート11が振動プレート11の表面11aと水平をなす方向に変位するのを防止するものである。この水平規制機構は、振動プレート11の裏面11bに設けられた規制突起部41と、規制突起部41の変位を拘束する拘束部42とを有している。
【0036】
ここで、図5は、水平方向規制機構40を示す図である。図5に示すように、規制突起部41は、振動プレート11の裏面11bから垂直方向に延びて設けられている。具体的には、規制突起部41は、一方向に延びる円柱状軸部材であり、その端部に雄ネジが設けられている。そして、振動プレート11の裏面11bには、雌ネジが設けられており、軸部材34の雄ネジと振動プレート11の裏面11bの雌ネジとが螺合されることにより取付けられている。これにより、規制突起部41は、振動プレート11の裏面11bと垂直をなす方向に延びるように取付けられる。
【0037】
また、拘束部42は、円筒形状のエアブッシュが用いられており、基台14の棒状フレーム14aに取付けられている。拘束部42は、規制突起部41が挿入可能な挿入孔42aを有しており、棒状フレーム14aには、この挿入孔42aが垂直方向になる姿勢で取付けられている。これにより、規制突起部41が振動プレート11に取付けられた状態で、拘束部42の挿入孔42aに挿入できるようになっている。
【0038】
また、挿入孔42aの壁面には、エアを噴出するエア供給部42bが設けられている。すなわち、挿入孔42aの壁面には、壁面全体にわたって複数の孔が形成されており、拘束部42と配管43で連結されるエアコンプレッサー(不図示)からエアが供給されると、多数の孔からエアが噴出される。これにより、規制突起部41の動きがエアの圧力で規制されるようになっている。すなわち、規制突起部41が挿入孔42aに挿入された状態でエア供給部42bにエアが供給されると、規制突起部41と対面する挿入孔42aの壁面全体からエアが噴出することにより挿入孔42a内の圧力が上昇し、そのエアの圧力により規制突起部41が挿入孔42a内に一時的に固定される。これにより、規制突起部41が連結される振動プレート11が振動プレート11の表面と水平をなす方向に変位(XY平面上の変位)が防止される。また、規制突起部41がエアの圧力で拘束されるため、規制突起部41と拘束部42とが直接接触しない。したがって、これらが接触することによるパーティクルの発生や騒音が発生する問題を回避することができる。
【0039】
また、搬送装置20は、振動プレート11上の基板2を搬送方向に搬送するものである。搬送装置20は、一方向に延びるレール21と、レール21に沿って移動する基板ガイドユニット50とを有しており、基板ガイドユニット50がレール21に沿って移動することにより、基板ガイドユニット50によって拘束された基板2が搬送されるようになっている。具体的には、基板ガイドユニット50は、レール21に連結されるガイド本体部51と、基板2に当接する基板ガイド52とを有しており、基板ガイド52が基板2を拘束した状態でガイド本体部51がレール21に沿って移動することにより基板2が搬送されるようになっている。
【0040】
レール21は、基板ガイドユニット50をガイドするものであり、一方向(本実施形態ではX軸方向)に延びるように設けられている。具体的には、X軸方向に延びる1組の基台22が搬送方向に沿って振動プレート11を挟むように配置されており、この基台22上にレール21が設けられている。また、レール21上には、LMガイド23とリニアモータ24が設けられている。具体的には、レール21のY軸方向中央位置にリニアモータ24の固定子(マグネットプレート)がX軸方向に延びるように設けられており、この固定子の両側にLMガイド23がX軸方向に延びるように設けられている。そして、このLMガイド23には、ガイド本体部51が連結されており、ガイド本体部51に設けられた可動子が固定子に接続されている。したがって、リニアモータ24を駆動させることにより、可動子が固定子に沿って移動すると、ガイド本体部51がレール21に沿って移動できるようになっている。すなわち、リニアモータ24を駆動制御することにより、ガイド本体部51がX軸方向に沿って移動し、任意の位置で停止できるようになっている。
【0041】
基板ガイド52は、基板2を拘束するものであり、基板2に当接する基板当接部52aを有している。この基板当接部52aは、樹脂製の円筒状に形成されており、この基板当接部52aが基板2の側面に当接することにより、振動プレート11上の基板2を拘束することができる。すなわち、基板ガイドユニット50は、振動プレート11に対して対角線上に位置するように配置されており、それぞれの基板ガイド52は、ガイド本体部51に連結された部分から振動プレート11側に進退動作可能であって、かつ、昇降動作できるようになっている。これにより、振動プレート11上に基板2が搬入されると、基板ガイド52が振動プレート11側に進出しつつ、基板当接部52aが基板の高さ位置になるように調節される。そして、それぞれの基板ガイド52が基板の対角線上のコーナー部分を挟むように変位させることで、基板当接部52aの外周面が基板2の側面に当接し、僅かに圧接することにより、振動プレート11上に浮上する基板2を拘束することができる。
【0042】
このような基板ガイドユニット50は、上流側の振動プレート11から下流側の振動プレート11まで移動し、その後、元の振動プレート11まで復帰する動作を行うことができる。したがって、基板当接部52aにより基板2を拘束した状態で、このような動作を行うことにより、基板2を搬送方向に搬送することができるようになっている。
【0043】
このように、上記実施形態における振動浮上装置10及び振動浮上搬送装置によれば、振動プレート11を支持するプレート支持部30には、振動プレート11の裏面11bと対向する部分にエア噴出部32aが備えられており、このエア噴出部32aから噴出されるエアにより振動プレート11が浮上した状態で支持されるため、振動プレート11の振動を妨げることなく支持することができる。したがって、プレート支持部30の配置は、振動プレート11の「腹」部分と「節」部分の位置に制限されることなく自由に配置することができるため、プレート支持部30の設置作業を容易にすることができる。また、振動プレート11が熱膨張した場合、また振動プレート11の温度上昇により共振周波数が変化し「節」位置がずれた場合でも、振動プレート11とプレート支持部30とが接触することがないため、パーティクルの発生や騒音が発生する問題を回避することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、水平方向規制機構40について、振動プレート11の裏面11bに設けられた規制突起部41と、規制突起部41の変位を拘束する拘束部42とを有している場合について説明したが、振動プレート11のY軸方向側面にエアベアリング32が備えられているものであってもよい。具体的には、振動プレート11のY軸方向両側面部分に、この側面部とエア噴出部32aとが対向するようにエアベアリング32を配置する。これにより、振動プレート11はエアベアリング32のエア圧によってY軸方向の移動が規制される。したがって、この実施形態によっても、振動プレート11を非接触で固定することができる。
【0045】
[実施例2]
また、振動浮上装置10及び振動浮上搬送装置1にかかる他の実施形態について、図6〜図8を用いて説明する。この実施例2における本実施形態では、実施例1に示す水平方向規制機構40以外の水平方向規制機構40を有する例である。ここで、図6は、他の実施形態におけるプレート支持部30の配置を上から見た図であり、図7は、水平方向規制機構40付きのプレート支持部30を示す図であり、図8は、図6におけるA−A断面図とB−B断面図である。なお、以下説明する構成以外の構成については、実施例1における構成と同様であるため、説明は省略する。
【0046】
図6〜図8において、本実施形態では、4つのプレート支持部30の上に振動プレート11が配置されている。これらのプレート支持部30は、固定型プレート支持部30aと、自由型プレート支持部30bであり、図6に示す例では、紙面左側に固定型プレート支持部30aが配置されており、紙面右側に自由型プレート支持部30bが配置されている。
【0047】
自由型プレート支持部30bは、水平方向規制機構40のないプレート支持部30であり、図4に示すプレート支持部30と同じものである。すなわち、上述の説明の通り、基台14に連結されるブラケット部31と、ブラケット部31に連結されるエアベアリング32とを有しており、エアベアリング32のエア噴出部32aからエアが噴出されることにより、振動プレート11が噴出したエアにより浮上した状態で支持できるようになっている。
【0048】
また、固定型プレート支持部30aは、振動プレート11を支持しつつ、振動プレート11が水平方向に変位するのを防止するためのプレート支持部30であり、水平方向規制機構40を有している。ここで、水平方向とは振動プレート11の表面と水平をなす方向である。本実施形態における水平方向規制機構40は、振動プレート11の裏面に凹形状の規制凹部が形成されており、この規制凹部に固定型プレート支持部30aの一部が挿入されることによって形成されている。
【0049】
固定型プレート支持部30aは、図7に示すように、円筒状の本体部71を有しており、その頂上部には、エア噴出部32aが設けられている。このエア噴出部32aは、焼結材が平板状に形成されたものであり、頂上部の端面とほぼ面位置に配置されている。そして、このエア噴出部32aには、本体部71内に設けられたエア供給路72と連結されており、このエア供給路72が図示しないエアコンプレッサーに連結されている。したがって、エアコンプレッサを作動させるとエア噴出部32aからエアが噴出されることにより、振動プレート11が浮上した状態で支持できるようになっている。
【0050】
また、本体部71の外周面には、側面エア噴出部32bが設けられている。具体的には、側面エア噴出部32bは、焼結材によって形成されており、焼結材が本体部71の外周面の一部を全周覆うように設けられている。本実施形態では、焼結材が規制凹部の側壁面に対向する位置に配置されている。そして、この側面エア噴出部32bには、上述のエア供給路72と連結されており、エアコンプレッサを作動させると側面エア噴出部32bからエアが噴出されるようになっている。これにより、振動プレート11が水平方向に変位しようとするのを抑えるとともに、水平方向に僅かに変位しても側面エア噴出部32bから噴出されるエアの圧力により振動プレート11が元の位置に押し戻されることにより、振動プレート11と固定型プレート支持部30aとの接触が回避される。したがって、規制凹部に固定型プレート支持部30aの本体部71が挿入されることにより、振動プレート11の振動が妨げられることなく振動プレート11の水平方向の変位が規制される。したがって、振動プレートとプレート支持部とが接触することによるパーティクルの発生を抑えつつ、振動プレートの水平方向の変位を規制することができる。
【0051】
また、図6に示す例では、プレート支持部30は4つ設けられており、図6における紙面右側に2つの自由型プレート支持部30bが一列に配置されており、紙面左側に2つの固定型プレート支持部30aが一列に配置されている。そして、これら固定型プレート支持部30aの1つがガイド部材上に配置されている。
【0052】
ガイド部材は、図6、図8(b)に示すように、レール81とスライドブロック82とを有しており、レール81が固定型プレート支持部30aの配列方向(Y軸方向)に沿って配置され、このレール81上をスライドブロック82が移動可能に構成されている。そして、このスライドブロック82に固定型プレート支持部30aが連結されていることにより、固定型プレート支持部30aが固定型プレート支持部30aの配列方向に沿って移動可能になっている。
【0053】
これにより、振動プレート11が熱の影響により水平方向への変形が生じた場合であっても、振動プレート11に歪み変形を生じさせることなく支持することができる。
【0054】
すなわち、少なくとも1つの固定型プレート支持部30aを有しているため、その水平方向規制機構40により振動プレート11の水平方向の変位が規制され、振動プレート11が落下するのを防止することができる。そして、熱の影響により仮にX軸方向に膨張又は収縮した場合には、固定型プレート支持部30aで支持されている部分は水平方向規制機構40により水平方向の変位が規制される。一方、自由型プレート支持部30bで支持されている部分は、水平方向規制機構40がない自由端であるため振動プレート11が自由に膨張又は収縮変形する。しかし、自由に膨張又は収縮変形した場合でも、エア噴出部32aから噴出されるエアにより浮上した状態で支持しているため、振動プレートの「腹」部分と「節」部分の位置に制限されることなく支持することができる。
【0055】
一方、熱の影響により仮にY軸方向に膨張又は収縮した場合には、自由型プレート支持部30bで支持されている部分は、上述のX軸方向に変形した場合と同様である。また、固定型プレート支持部30aで支持されている部分は、水平方向規制機構40を有しているものの、ガイド部材上に配置された固定型プレート支持部30aで支持された部分は、固定型プレート支持部30aが膨張又は収縮変形に伴って移動する。すなわち、固定型プレート支持部30aの取付位置が規制凹部の位置に追従するため、振動プレート11の変形により規制凹部の側壁面と固定型プレート支持部30aの本体部71とが接触し振動プレート11が歪み変形してしまうのを抑えることができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、プレート支持部30が4つの場合を説明したが、4つ以上設けるものであってもよい。仮にプレート支持部30を4つ以上設けた場合には、1つのみガイド部材のない固定型プレート支持部30aで支持し、残りはガイド部材を有する固定型プレート支持部30aと自由型プレート支持部30bを使用する。そして、ガイド部材のレール81の延びる方向は、固定型プレート支持部30aの配列方向であれば、振動プレート11の熱による伸縮変形に対応することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、搬送装置20についてY軸方向両側に基板ガイドユニット50をそれぞれ設け、これらによって基板2の対角線上におけるコーナー部分を把持する例について説明したが、Y軸方向片側のみに基板ガイドユニット50を設けるものであってもよい。すなわち、片側の基板ガイドユニット50の基板当接部52aを基板2の厚み方向から挟圧する構成とすることにより基板2を把持し、基板ガイドユニット50がレール81に沿って移動するものであっても浮上した基板2を搬送することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 振動浮上搬送装置
2 基板
10 振動浮上装置
11 振動プレート
15 規制凹部
20 搬送装置
30 プレート支持部
30a 固定型プレート支持部
30b 自由型プレート支持部
32 エアベアリング
32a エア噴出部
32b 側面エア噴出部
40 水平方向規制機構
41 規制突起部
42 拘束部
42a 挿入孔
80 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動プレートと、
前記振動プレートを振動させる振動子と、
前記振動プレートを支持するプレート支持部と、
を備え、前記振動子により前記振動プレートを特定周波数で振動させることにより、前記振動プレート上の対象物を前記振動プレートの表面から浮上させる振動浮上装置であって、
前記プレート支持部は、前記振動プレートの裏面と対向する部分にエアを噴出するエア噴出部を有しており、前記エア噴出部から噴出されたエアにより前記振動プレートが浮上した状態で支持されることを特徴とする振動浮上装置。
【請求項2】
前記振動プレートが前記振動プレートの表面と水平をなす方向に変位するのを防止する水平方向規制機構をさらに備えており、
前記水平方向規制機構は、前記振動プレートの裏面に凹形状に形成された規制凹部に前記プレート支持部の一部を挿入させることにより形成されており、前記プレート支持部は、前記規制凹部の側壁面に対向する位置に側面エア噴出部がさらに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の振動浮上装置。
【請求項3】
前記水平方向規制機構の前記プレート支持部は、ガイド部材上に配置されており、このガイド部材により、プレート支持部の取付位置は振動プレートの表面と水平をなす方向に変位するのを許容されることを特徴とする請求項2に記載の振動浮上装置。
【請求項4】
前記振動プレートは、複数の前記プレート支持部で支持されており、これら複数のプレート支持部のうち、前記水平方向規制機構のプレート支持部は、一方向に並べて配列されており、これら水平方向規制機構のプレート支持部のうち、1つ以外は前記ガイド部材上に配置されており、そのガイド部材の移動方向は、プレート支持部の配列方向であることを特徴とする請求項3に記載の振動浮上装置。
【請求項5】
前記振動プレートが前記振動プレートの表面と水平をなす方向に変位するのを防止する水平方向規制機構をさらに備えており、
前記水平方向規制機構は、前記振動プレートの裏面に設けられ前記振動プレートの裏面と垂直をなす方向に延びる規制突起部と、この規制突起部の変位を拘束する拘束部とを有しており、
前記拘束部は、前記規制突起部が挿入可能な挿入孔と、この挿入孔の壁面からエアを噴出するエア供給部とを有しており、この挿入部に前記規制突起部が挿入された状態で前記エア供給部からエアが噴出されることにより、前記規制突起部が振動プレートの表面と水平をなす方向に変位するのが規制されることを特徴とする請求項1に記載の振動浮上装置。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれかに記載の振動浮上装置と、
前記振動プレート上の対象物を特定方向に導く搬送装置と、
を備えることを特徴とする振動浮上搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−140244(P2012−140244A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113753(P2011−113753)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】