説明

振動減衰装置

【課題】ボディ重量の大幅な増大や特別な補強部材の追加を要することなく、車両の剛性を高めることを可能にする新規な手段として、特別な構造の振動減衰装置を提供すること。
【解決手段】壁部の少なくとも一部がゴム弾性体16で形成されて内部に粘性流体が封入された流体室48を備えており、開閉体56と本体54との間に装着されて本体54又は開閉体56に当接して弾性変形される振動減衰装置10において、壁部におけるゴム弾性体16で形成された部分(28)から流体室48に突出する内部突起50が設けられており、且つ弾性変形に伴って内部突起50の動く方向が本体54又は開閉体56への当接部25の移動方向とは異なる方向とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車におけるドア等の開閉体の閉状態において、開閉体をホワイトボディ等の本体に対して防振保持させる振動減衰装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両におけるドア等の開閉体とボディ(ドア等の開閉体を除いた、所謂ホワイトボディ)との間に設けられる部材として、特開2003−237379号公報(特許文献1)等に示されたウェザストリップが知られている。このウェザストリップは、雨水等がドアとボディとの隙間を通じて車室内に進入するのを防ぐこと等を目的として、ドアとボディの間に介装されており、ドアが閉められた状態においてドアとボディの間で挟圧されるようになっている。
【0003】
ところで、ウェザストリップは、ドアとボディの開口縁部との間をシールするだけでなく、ドアを閉める際に衝撃を吸収する緩衝材としても機能しており、ドアの開閉に際して音や振動が緩和されるようになっている。
【0004】
しかしながら、従来のウェザストリップでは、動的な減衰性能は殆ど考慮されておらず、動的な減衰効果が発揮される構造とはなっていなかった。それ故、ドア等の開閉体は、ボディに対する単なる付加物に過ぎず、ボディにおける動的な剛性に関して何ら寄与し得るものではなかったのである。その結果、ボディの剛性を向上させるためには、ボディの重量増加や、ストラットタワーバー等の特別な補強部材の追加等が必要とされていたのであり、簡易な構造でボディ剛性を向上させ得る機構が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−237379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、ボディ重量の大幅な増大や特別な補強部材の追加を要することなく、車両の剛性を高めることを可能にする新規な手段として、特別な構造の振動減衰装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第一の態様は、壁部の少なくとも一部がゴム弾性体で形成されて内部に粘性流体が封入された流体室を備えており、開閉体と本体との間に装着されて該本体又は該開閉体に当接して弾性変形される振動減衰装置において、前記壁部における前記ゴム弾性体で形成された部分から前記流体室に突出する内部突起が設けられており、且つ弾性変形に伴って該内部突起の動く方向が前記本体又は前記開閉体への当接部の移動方向とは異なる方向とされていることを、特徴とする。
【0008】
第一の態様によれば、内部突起が荷重を入力される当接部とは異なる方向に動くようになっていることにより、荷重の入力時に内部突起が効率的に大きく変位させられて、流体室に封入された粘性流体の流動摩擦等に基づく減衰効果が有利に発揮される。その結果、微小振幅の振動入力時にも、大きな減衰効果が期待できると共に、高い減衰力によってドア等の開閉体をホワイトボディ等の本体に対する補強部材として作用させることが出来る。従って、特別に別体の補強部材を追加する必要もなく、ドア等の開閉体を上手く利用して、ホワイトボディ等の本体の動的剛性の向上を図ることが出来る。
【0009】
また、粘性流体のずり剪断作用や攪拌による流動摩擦効果等を利用することから、広い周波数域の入力振動に対して、目的とする減衰効果が安定して発揮される。これにより、広い周波数域において、ホワイトボディ等の本体の動的変形に対してドア等の開閉体を補強部材として作用させて、本体の動的剛性の向上を図り得る。
【0010】
また、本発明の振動減衰装置は、静荷重に対して、充分な柔軟性や低減衰を確保し得ることから、例えば本体と開閉体の間に別途ウェザストリップ等のシール部材が配される場合でも、かかるシール部材等への悪影響が回避される。
【0011】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載の振動減衰装置において、前記内部突起が前記壁部におけるゴム弾性体で形成された部分に対して部分的に設けられているものである。
【0012】
第二の態様によれば、ゴム弾性体における内部突起の設けられていない部分が変形し易くなって、取付け位置や装置サイズのばらつき等に起因する入力荷重の差がある場合にも、当該部分の変形によって吸収されることで、目的とする減衰効果が安定して発揮される。また、例えば、ドア等の開閉体を閉める際に、入力される荷重が異なる場合にも、ドア等の開閉体が閉まり難くなる等の不具合が回避される。
【0013】
さらに、内部突起の形成部分に比して非形成部分の変形を容易と出来ることから、外力作用で潰れるように変形された際に非粘性流体が逃げる領域を、内部突起の非形成部分における外方への膨出変形で容易に確保することが可能となる。また、内部突起の非形成部分を外方に弾性的に膨出変形させることで、内部突起の形成部分と非形成部分との間で、外力作用時の粘性流体の流動量を一層効果的に確保することが可能となり、粘性流体の流動摩擦等に基づく減衰効果の更なる向上も図られ得る。
【0014】
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された振動減衰装置において、前記壁部におけるゴム弾性体で形成された部分は、対向する一対の側壁と、それら一対の側壁を連結すると共に前記当接部が設けられた入力部とを備えており、かかる一対の側壁の少なくとも一方は、前記内部突起が設けられた突起形成部と、該当接部の移動方向とは異なる方向への該内部突起の動きを許容する変形許容部とを備えているものである。
【0015】
第三の態様によれば、当接部に外力が入力されて変形許容部が変形することにより、突起形成部に設けられた内部突起を当接部の異動方向とは異なる方向に動かすことが出来る。
【0016】
本発明の第四の態様は、第三の態様に記載された振動減衰装置において、前記突起形成部が前記入力部と連設されており、該突起形成部に設けられた前記内部突起が該入力部にまで延設されていると共に、該突起形成部における該入力部への連設側と反対側に前記変形許容部が連設されているものである。
【0017】
第四の態様によれば、側壁において入力部と突起形成部が連続的に設けられており、突起形成部から入力部に至るまで内部突起が延びているので、当接部への荷重の入力によって入力部が変形し始める初期段階から内部突起を効率的に移動させることが出来る。それ故、微小振幅の振動入力時にも振動減衰作用が効果的に発揮される。
【0018】
また、変形許容部の変形によって、内部突起における入力部と反対側の端部を大きく移動させることが出来ることから、粘性流体中での内部突起の移動による粘性抵抗等に基づいた振動減衰作用が効果的に発揮される。
【0019】
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか1つの態様に記載の振動減衰装置において、前記壁部が、一定断面で延びる長手筒形状の周壁と、該周壁の長手方向両端の開口部を閉塞する一対の端壁とによって構成されており、前記内部突起が該周壁の長さ方向に所定間隔をもって複数形成されていると共に、該内部突起が該周壁における対向する部位にそれぞれ突設されて、それら内部突起が該周壁の長手方向の投影で互いに重なり合うように互い違いに設けられていると共に、それら内部突起の重なり合う部分が前記当接部に及ぼされる外力の作用方向線上に位置しているものである。
【0020】
第五の態様によれば、隣り合う内部突起のオーバーラップ部分に狭窄領域が形成されることで、粘性流体の流動摩擦等がより大きく確保されて、減衰作用がより効果的に発揮される。
【0021】
本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか1つの態様に記載の振動減衰装置において、前記壁部が、一定断面で延びる長手筒形状の周壁と、該周壁の長手方向両端の開口部を閉塞する一対の側壁とによって構成されており、前記内部突起が該周壁の長さ方向に所定間隔をもって複数形成されていると共に、該周壁における該複数の内部突起を支持する部位に該周壁の変形を規制する規制部が設けられているものである。
【0022】
第六の態様によれば、動荷重の入力時に、複数の内部突起が規制部によって相対変位を制限された状態で拘束されて、一体的に変位することから、複数の内部突起が何れも流体室に封入された粘性流体を攪拌して、流動摩擦等による減衰効果がより効率的に発揮される。
【0023】
本発明の第七の態様は、第一〜第六の何れか1つの態様に記載の振動減衰装置において、前記壁部における荷重の入力部位と前記内部突起の支持部位との連接部分が、荷重入力によって該壁部における該内部突起の支持部位を外方に開くように変形させる外方に向かって凸の突出形状とされているものである。
【0024】
第七の態様によれば、荷重入力時に、壁部における内部突起の支持部位が効率的に変形されて、内部突起の変位量が大きく確保されることから、ずり剪断等に基づく減衰効果が有利に発揮される。
【0025】
本発明の第八の態様は、第七の態様に記載の振動減衰装置において、前記壁部における荷重の入力部位の断面形状が湾曲形状とされているものである。
【0026】
第八の態様によれば、取付け方向のばらつきや振動減衰装置自体の形状誤差,振動減衰装置におけるゴム弾性体の経時的な変形等に起因して、荷重の入力方向にばらつきがある場合にも、荷重を入力される当接部を備えた壁部を湾曲断面で形成することによって、荷重入力方向のばらつきを許容して、目的とする減衰性能を安定して発揮させることが出来る。
【0027】
本発明の第九の態様は、第一〜第八の何れか1つの態様に記載の振動減衰装置において、前記本体が自動車の車体とされていると共に、前記開閉体が自動車のドアとされており、それら車体とドアの間に装着されるものである。
【0028】
第九の態様によれば、ホワイトボディの動的な剛性が、ドアを補強部材として利用することで効果的に高められて、ロールに対するボディ剛性の向上等によって優れた操縦性が実現される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、静荷重に対する柔軟性及び低減衰性能と、動荷重に対する高減衰性能とを、兼ね備えた振動減衰装置を実現することが出来る。それ故、ドア等の開閉体が閉じ難くなったり、シール機構に悪影響を及ぼすといった不具合を回避しながら、走行時の動荷重を効果的に減衰して、ドア等の開閉体をホワイトボディ等の本体に対する補強部材として機能させることが出来る。特に、内部突起の移動方向を荷重の入力方向と異ならせて、内部突起の変位量を効率的に大きく確保することで、小振幅振動の入力時にも粘性流体の流動摩擦等に基づく減衰作用が有効に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態としての振動減衰装置を示す斜視図。
【図2】図1に示された振動減衰装置の正面図。
【図3】図2のIII−III断面図。
【図4】図2のIV−IV断面図。
【図5】図1に示された振動減衰装置を構成する一体加硫成形品を示す断面図。
【図6】図5のVI−VI断面図。
【図7】図5のVII−VII断面図。
【図8】図5のVIII矢視図。
【図9】図1に示された振動減衰装置の車両への装着状態を示す説明図。
【図10】図1に示された振動減衰装置の変形を説明する図であって、(a)が変形前の状態を、(b)が変形後の状態を示す。
【図11】図10(b)に示された変形状態のゴム弾性体の内部を示す説明図。
【図12】本発明の別の一実施形態としての振動減衰装置の要部を示す断面図。
【図13】本発明のまた別の一実施形態としての振動減衰装置の要部を示す断面図。
【図14】本発明の更に別の一実施形態としての振動減衰装置の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
先ず、図1〜図4には、本発明の一実施形態としての振動減衰装置10が示されている。振動減衰装置10は、一体加硫成形品12と蓋金具14によって構成されている。
【0033】
より詳細には、一体加硫成形品12は、図5,図6に示されているように、ゴム弾性体16とかしめ金具18を有している。ゴム弾性体16は、略全体が薄肉とされており、長手状の作用壁部20と、作用壁部20の長手方向(図2中、左右方向)両端に一体形成された端壁部22とを備えている。
【0034】
作用壁部20は、略一定のU字断面で長手方向に延びる薄肉のゴムによって形成されており、その底壁部分(図3中の左端部)が、外側に向かって凸の円弧状断面の入力部24とされている。また、入力部24の断面における中央(図2,図3中の上下方向中央)には、長手方向に連続して直線的に延びる当接部25が設けられており、当接部25に対して後述するドア56との当接による荷重が入力されるようになっている。なお、当接部25は、入力部24におけるドア56との当接部位をいうのであって、本実施形態では入力部24の中央とされているが、振動減衰装置10の車両への装着状態等に応じて、入力部24における任意の位置に設定され得る。
【0035】
また、入力部24の両端には、一対の側壁26,26が一体形成されており、それぞれ入力部24の接線方向に延び出して、互いに対向して略平行に設けられている。換言すれば、対向配置された一対の側壁26,26の一方の端部同士が、入力部24によって連結されている。この側壁26は、図6に示されているように、入力部24側から順に、突起形成部28と、変形許容部30と、固着部32とが連接された構造とされている。なお、図6中において、Aが突起形成部28の範囲を、Bが変形許容部30の範囲を、Cが固着部32の範囲を、それぞれ示している。尤も、本実施形態では、突起形成部28と変形許容部30と固着部32とがゴム弾性体で一体形成されていることから、それらは必ずしも明確に区別されるものではない。
【0036】
突起形成部28は、薄肉の略平板形状であって、一対の突起形成部28a,28bが互いに所定距離を隔てて対向していると共に、それら一対の突起形成部28a,28bの一方の端部が入力部24の両端部に連接されている。変形許容部30は、突起形成部28と同様に薄肉の略平板形状であって、突起形成部28における入力部24と反対側の端部から延び出しており、後述する内部突起50及び規制部52の形成部位から外れた位置に設けられている。固着部32は、変形許容部30における突起形成部28と反対側の端部(図3中、左端)から延び出すように設けられており、その変形許容部30との境界側端部に固着突起34が一体形成されていると共に、変形許容部30と反対側の端部にシール部36が一体形成されている。
【0037】
一方、端壁部22は、図5に示されているように、全体として薄肉のゴムで形成されて、上端部が半球殻形状とされていると共に、下端部には作用壁部20と同様の固着部32が設けられており、それら上端部と下端部の間が半筒形断面を有する中間部とされている。これら上端部と中間部と下端部は一体的に連接されており、作用壁部20の入力部24の長手方向端部開口が端壁部22の上端部によって閉塞されていると共に、作用壁部20の側壁26の長手方向端部開口が端壁部22の中間部及び下端部によって閉塞されている。
【0038】
また、ゴム弾性体16には、かしめ金具18が加硫接着されている。かしめ金具18は、全体として略矩形環状とされた高剛性の部材であって、主たる振動入力方向に対して直交して広がる環状の段差部38を有している。更に、かしめ金具18は、段差部38の内周縁部から段差部38と略直交するように突出する環状の固着片40と、段差部38の外周縁部から固着片40と反対側に延び出すかしめ片42とを、一体的に備えており、固着片40が、ゴム弾性体16における固着部32の外周面に重ね合わされて加硫接着されている。このように、ゴム弾性体16が、かしめ金具18を備えた一体加硫成形品12として形成されている。なお、かしめ片42は、段差部38の各片に1つずつ設けられており、それら4つのかしめ片42が段差部38の角部において周方向で互いに離隔している。
【0039】
なお、かしめ金具18の固着片40は、その先端部がゴム弾性体16の固着部32に設けられた固着突起34に埋め込まれた状態で固着されることによって、固着部32に対してより強固に固着されている。また、ゴム弾性体16の固着部32に設けられたシール部36は、かしめ金具18の段差部38に加硫接着されて、かしめ片42と同じ側に突出している。
【0040】
また、一体加硫成形品12には、蓋金具14が取り付けられている。蓋金具14は、角部を丸められた略四角形の金属板であって、周縁部が略全周に亘って一方の面側に屈曲されることで、曲げ剛性を高めるための補強部46が形成されている。そして、蓋金具14が、かしめ金具18におけるかしめ片42の突出先端側から挿し入れられて、かしめ金具18の段差部38に重ね合わされた後、かしめ片42が屈曲変形されて、蓋金具14が段差部38とかしめ片42の先端部分との間で挟持されることにより、蓋金具14がかしめ金具18に対して固定されている。なお、作用壁部20におけるかしめ金具18側の開口部が、蓋金具14で覆われることによって、長手筒状の周壁が構成されている。また、本実施形態の端壁は、端壁部22とかしめ金具18の一部とによって構成されている。
【0041】
また、蓋金具14のかしめ金具18への組付け状態において、蓋金具14の補強部46が段差部38に対して直接的に重ね合わされていると共に、蓋金具14の補強部46よりも内周部分が段差部38に対してシール部36を介して間接的に重ね合わされている。これにより、蓋金具14とゴム弾性体16の間には、壁部の一部がゴム弾性体16で構成されて、外部に対して流体密に閉鎖された流体室48が形成されている。
【0042】
また、流体室48には、粘性流体が封入されている。この流体室48に封入される粘性流体は、特に限定されるものではないが、高粘性シリコーンオイルや高粘度の分散系溶液(コロイド溶液)等が好適に採用され、それらの液体に粉粒体を混合することで粘度を高めることも出来る。なお、好適には、流体室48に封入される粘性流体は、動粘度が10万cSt〜100万cStの範囲とされていることが望ましく、本実施形態では、高粘性シリコーンオイルに粉粒体を混合したものが採用されている。
【0043】
また、流体室48には、複数の内部突起50が突出されている。内部突起50は、図7,図8に示されているように、突出先端に向かって次第に狭幅となる略一定の等脚台形断面を有しており、ゴム弾性体16における突起形成部28に一体形成されている。また、内部突起50は、その一端(図3中の左端)が入力部24まで延び出して入力部24と一体形成されていると共に、他端(図3中の右端)が変形許容部30までは至らずに自由端とされており、流体室48の壁部を構成するゴム弾性体16に対して部分的に設けられている。即ち、内部突起50は、下方に開口する逆向きの略袋構造とされたゴム弾性体16において互いに平行に長さ方向に延びる両側壁部分(側壁26,26)の対向内面において、それぞれ、上底部分(入力部24)から壁高さ方向(深さ方向)中間部分にまで至る大きさで一体形成されている。
【0044】
また、ゴム弾性体16における一方の突起形成部28から複数の内部突起50aが突出していると共に、他方の突起形成部28から複数の内部突起50bが突出しており、それら内部突起50aと内部突起50bは、互いに略同一の断面形状を有している。更に、内部突起50aと内部突起50bは、何れも、作用壁部20の長手方向に略一定の間隔で複数が形成されており、それら複数の内部突起50が並列に設けられている。
【0045】
また、それら複数の内部突起50aと内部突起50bは、互い違いに設けられており、図7,図8に示されているように、隣り合う内部突起50bと内部突起50bの突出先端間に、内部突起50aの突出先端が入り込むように配されている。そして、内部突起50aと内部突起50bは、図7に示されているように、その突出先端部が、所定のラップ代:tで互いに重なり合っている。更に、それら内部突起50aと内部突起50bの重なり合う部分は、後述する当接部25に及ぼされる外力の作用方向線(当接部25から外力の作用方向に延び出す仮想的な線(面)であって、図3,図7中の一点鎖線)上に位置している。また、隣り合う内部突起50aと内部突起50bの隙間:d(図4参照)は、流体室48に封入される粘性流体の粘度や内部突起50のサイズ等に応じて設定されており、後述する内部突起50aと内部突起50bの相対変位によって、粘性流体の流動摩擦等に基づく減衰作用が有効に発揮される程度に小さく設定されている。
【0046】
また、一対の突起形成部28a,28bには、図1〜図3及び図6,図7に示されているように、それぞれ規制部52が設けられている。規制部52は、内部突起50とは反対側に突出する長手ブロック形状のゴム弾性体であって、突起形成部28に一体形成されている。また、規制部52は、略一定の四角形断面でゴム弾性体16の長手方向に延びており、少なくとも、突起形成部28における内部突起50の形成領域に連続的に形成されている。このような規制部52の形成部分において、突起形成部28が厚肉化されて、突起形成部28の変形が規制されており、長手方向で並列的に設けられた複数の内部突起50が、規制部52によって相対変位を制限されている。
【0047】
かくの如き構造とされた振動減衰装置10は、図9に示されているように、蓋金具14が本体であるボディ54のドア開口周縁部に対して、ボルトやクリップ等で固定されることによって、車体としてのボディ54と開閉体としてのドア56の間に配設されている。そして、振動減衰装置10は、ドア56の開状態において変形することなく装着されていると共に、ドア56が閉じられることで、ドア56がゴム弾性体16の入力部24に当接して、荷重が入力されるようになっている。そこにおいて、振動減衰装置10では、静荷重の入力に対して、薄肉膜状とされたゴム弾性体16の入力部24と変形許容部30が容易に変形することから、優れた柔軟性や低減衰が実現される。それ故、ドア56が閉まり難くなる等の不具合が回避されると共に、振動減衰装置10と並列的に配されるシール部材(ウェザストリップ)によるシール効果が低下するのを防ぐことが出来る。なお、ボディ54は、必ずしもホワイトボディ単体で構成されている必要はなく、ドア開口部の周辺に取り付けられるガーニッシュ等の付属部品を含んでいても良い。
【0048】
一方、自動車の走行時には、ドア56からの動的な入力振動が振動減衰装置10によって効果的に減衰されるようになっている。即ち、図10,図11からも明らかなように、振動減衰装置10では、入力部24の当接部25に対してドア56の振動に起因する図10中右向きの荷重が入力されると、図10(b)及び図11に示されているように、入力部24及び変形許容部30が弾性変形する。そして、それら入力部24及び変形許容部30の弾性変形に基づいて、内部突起50が荷重の入力部位(当接部25)と異なる方向に動くことにより、粘性流体の流動摩擦等に基づいて減衰効果が発揮されるようになっている。
【0049】
より具体的には、ドア56によって押圧されることで入力部24の当接部25に荷重が及ぼされると、当接部25は、荷重の作用方向(ドア56の移動方向)と略同じ方向(図10中、右方)に移動する。一方、外側に凸の湾曲断面を有する入力部24が、荷重の作用によって潰れるように弾性変形して、入力部24の両端部、換言すれば、一対の突起形成部28a,28bの入力部24側端部が、一対の突起形成部28a,28bの対向方向の外側に向かって離隔変位する。また、変形許容部30が弾性変形して、変形許容部30の突起形成部28側の端部が、入力部24の両端部と同じ方向に変位する。これらによって、内部突起50aと内部突起50bが、それぞれ、一対の突起形成部28a,28bの対向方向(図10中、上下方向)外側に変位すると共に、荷重入力方向に対する傾斜方向にこじり変位するようになっている。特に、それらの平行移動とこじり移動によって、内部突起50aと内部突起50bの各自由端(図10中、右端)が、大きく離隔変位するようになっている。
【0050】
このように、荷重の入力によるゴム弾性体16の変形に伴って、内部突起50が効率的に大きく変位するようになっており、走行時にドア56側から入力される小振幅振動に対しても、流動摩擦等を利用した優れた減衰効果が有効に発揮されるようになっている。それ故、ドア56がボディ54の補強部材として機能して、ボディ54の捩れ等の変形がドア56によって拘束される。その結果、ボディ54の動的な剛性が、ドア56を利用して特別な部材の追加を要することなく向上されて、ロールの低減等に基づく操縦性の向上が実現される。
【0051】
特に、ゴム弾性体16の入力部24に荷重入力部位(当接部25)が設定されており、この荷重入力部位に外力が及ぼされると、上底部から開口部に向かって略平行に延びる側壁26,26が、互いに離隔して外方に膨らむように弾性変形するようになっている。そして、これらの側壁26,26には、入力部24から深さ方向中間部分に至る大きさで内部突起50a,50bが形成されていることから、入力部24への荷重入力に伴い、両内部突起50a,50bは、入力部24の当接部25を中心とし、当接部25を挟んだ両側に向かって相互に離隔して開くように相対変位せしめられることとなる。このように、当接部25を外れた方向で荷重入力方向とは異なる方向(略直交する方向)に向かって内部突起50a,50bが変位することにより、荷重入力に伴う内部突起50a,50bの潰れを回避しつつ、内部突起50a,50bの相対的変位量を効率的に大きく確保することが可能となって、粘性流体の流動に基づく減衰効果の更なる向上も図られ得るのである。また、荷重入力部位となるゴム弾性体16の入力部24の当接部25では、両側の内部突起50a,50bがオーバーラップするように形成されていることから、当接部25における耐久性や強度の向上も図られ得る。
【0052】
なお、内部突起50の変位量が、内部突起50が当接部25と異なる方向に変位することで増大するのは、荷重の入力による入力部24と変形許容部30の変形も寄与している。即ち、荷重の入力方向で入力部24と変形許容部30がそれぞれ潰れ変形を生じると、内部突起50の全体が、一対の突起形成部28a,28bの対向方向外側に変位すると共に、内部突起50の変形許容部30側の端部がより大きく変位する。これにより、内部突起50は、当接部25の移動方向に対して傾斜するように移動する(こじり変位する)ことから、特に変形許容部30側の端部において変位量が増大して、小振幅振動に対しても有効な減衰作用が発揮されることとなる。
【0053】
さらに、内部突起50aと内部突起50bが互い違いに形成されており、それら内部突起50a,50bの突出先端が所定距離を隔てて重なり合っている。これにより、それら内部突起50aと内部突起50bの先端部分の間に狭窄領域が形成されており、その狭窄領域に充填された粘性流体が隣り合う内部突起50aと内部突起50bの間でずられる。その結果、それら内部突起50aと内部突起50bの間でずり剪断等に基づく減衰作用がより効果的に発揮される。
【0054】
また、複数の内部突起50aが、規制部52aによって相対変位を制限されて、一体的に変位するようになっていると共に、複数の内部突起50bが、規制部52bによって相対変位を制限されて、一体的に変位するようになっている。これにより、一部の内部突起50だけが変位するのではなく、全ての内部突起50が変位して粘性流体を攪拌することで、流体の流動摩擦等に基づく減衰作用がより効率的に発揮される。
【0055】
また、振動減衰装置10では、上述のように、流体室48に封入された粘性流体の流動摩擦を利用して減衰作用が発揮されるようになっていることから、幅広い周波数の振動に対して、有効な減衰作用が安定して発揮されるようになっている。
【0056】
また、ドア56と当接して荷重が入力される入力部24が、外側に向かって凸の円弧状湾曲断面を有している。それ故、荷重が入力されると、入力部24が潰れて、一対の突起形成部28a,28bの入力部24側の端部が互いに離隔する方向に変位する。これにより、突起形成部28から突出する内部突起50の変位量が効率的に確保されて、粘性流体の流動摩擦による減衰作用が、効果的に発揮されるようになっている。しかも、入力部24が外側に向かって凸の円弧状湾曲断面を有していることにより、振動減衰装置10の寸法誤差や取付け誤差によって、入力部24におけるドア56との当接箇所(荷重の入力方向)にずれが生じた場合にも、かかるずれが許容されて、目的とする減衰性能が安定して発揮される。
【0057】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、略等脚台形断面を有する内部突起50が示されていたが、内部突起の形状は特に限定されるものではない。具体的には、図12〜図14に示された構造の内部突起60,70,80等も採用可能である。
【0058】
より詳細には、図12に示された内部突起60は、全体として略半円形断面を有しており、突出先端側に向かって次第に狭幅となっている。また、図12からも明らかなように、内部突起60aと内部突起60bは、一対の突起形成部28a,28bの対向方向で離隔しており、それら内部突起60aの突出先端部と内部突起60bの突出先端部がオーバーラップしていない。このような図12に示された内部突起60であっても、粘性流体の流動摩擦等に基づく減衰作用が有効に発揮される。
【0059】
図13に示された内部突起70は、基端部が突出先端側に向かって狭幅となる等脚台形断面を有していると共に、先端部は幅寸法が略一定とされた矩形断面を有しており、更に、中間部分には、幅方向外側に突出する中間突部72が一体形成されている。この中間突部72は、内部突起70の突出方向外側に行くに従って次第に突出高さが小さくなっており、その表面が内部突起70の突出方向に対して傾斜する傾斜平面で構成されている。このような図13に示された内部突起70であっても、粘性流体の流動摩擦等に基づく減衰作用が有効に発揮される。しかも、中間突部72が設けられていることによって、内部突起70の表面積が大きくなっており、粘性流体中で内部突起70が変位することによる摩擦抵抗がより大きくなって、減衰作用がより効果的に発揮される。
【0060】
図14に示された内部突起80は、基端部が突出先端側に向かって狭幅となる等脚台形断面を有していると共に、先端部が円形断面を有している。このような図14に示された内部突起80によれば、粘性流体の流動摩擦等に基づく減衰作用が有効に発揮されると共に、先端部分が円形断面とされていることで表面積が大きくなって、減衰作用をより効果的に得ることが出来る。
【0061】
また、内部突起は、必ずしも複数が形成されている必要は無く、1つだけであっても良い。更に、前記実施形態では、内部突起50aが突起形成部28aから突出するように形成されていると共に、内部突起50bが突起形成部28bから突出するように形成されていたが、内部突起50は、何れか一方の突起形成部28からのみ突出するように形成されていても良い。更にまた、突起形成部28aから内部突起50aが突出すると共に、突起形成部28bから内部突起50bが突出する場合にも、それら内部突起50aと内部突起50bが交互に設けられている必要は無い。
【0062】
また、前記実施形態では、規制部52がゴム弾性体16に一体形成されていたが、規制部は、例えば、ゴム弾性体16とは別体の金属等で形成された硬質な部材とされて、ゴム弾性体16に対して固着されていても良い。このように規制部をゴム弾性体16とは別体の部材とすることで、規制部による突起形成部28の変形規制作用をより効果的に得ることができ、しかも、規制部のサイズを小さくしながら、十分な剛性を確保することも出来る。なお、規制部は、本発明において必須ではなく、省略することも可能である。
【0063】
また、荷重が入力される入力部は、前記実施形態に示されているような外側に凸の湾曲断面形状とされていることが望ましいが、例えば。外側に向かって山形となる屈曲断面形状等も採用可能である。
【0064】
また、前記実施形態では、流体室48に封入される粘性流体として、高粘性シリコーンオイルに粉粒体を混合したものが例示されているが、粘性流体の種類は、実施形態の具体的な例示によって限定されるものではない。
【0065】
本発明の振動減衰装置は、自動車のボディとドアの間に装着されるものに限定されず、剛性を要する本体と、本体に付加的に取り付けられて開閉される開閉体の間に装着されていれば良い。また、本発明は、ボディと乗降用のドアとの間に装着される振動減衰装置だけでなく、ボディとトランク・フード等、ボディとそれに取り付けられた開閉体との間に装着される振動減衰装置に適用され得る。また、必ずしも本体側に取り付けられていなくても良く、開閉体側に取り付けられて、本体に入力部が当接するようになっていても良い。
【符号の説明】
【0066】
10:振動減衰装置、12:一体加硫成形品、14:蓋金具、16:ゴム弾性体、20:作用壁部(流体室の壁部におけるゴム弾性体で形成された部分)、22:端壁部(流体室の壁部におけるゴム弾性体で形成された部分)、24:入力部(壁部における荷重の入力部位)、25:当接部、26:側壁、28:突起形成部(壁部における内部突起の支持部位)、30:変形許容部、32:固着部、48:流体室、50,60,70,80:内部突起、52:規制部、54:ボディ(本体)、56:ドア(開閉体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部の少なくとも一部がゴム弾性体で形成されて内部に粘性流体が封入された流体室を備えており、開閉体と本体との間に装着されて該本体又は該開閉体に当接して弾性変形される振動減衰装置において、
前記壁部における前記ゴム弾性体で形成された部分から前記流体室に突出する内部突起が設けられており、且つ弾性変形に伴って該内部突起の動く方向が前記本体又は前記開閉体への当接部の移動方向とは異なる方向とされていることを特徴とする振動減衰装置。
【請求項2】
前記内部突起が前記壁部におけるゴム弾性体で形成された部分に対して部分的に設けられている請求項1に記載の振動減衰装置。
【請求項3】
前記壁部におけるゴム弾性体で形成された部分は、対向する一対の側壁と、それら一対の側壁を連結すると共に前記当接部が設けられた入力部とを備えており、
かかる一対の側壁の少なくとも一方は、前記内部突起が設けられた突起形成部と、該当接部の移動方向とは異なる方向への該内部突起の動きを許容する変形許容部とを備えている請求項2に記載の振動減衰装置。
【請求項4】
前記突起形成部が前記入力部と連設されており、該突起形成部に設けられた前記内部突起が該入力部にまで延設されていると共に、
該突起形成部における該入力部への連設側と反対側に前記変形許容部が連設されている請求項3に記載の振動減衰装置。
【請求項5】
前記壁部が、一定断面で延びる長手筒形状の周壁と、該周壁の長手方向両端の開口部を閉塞する一対の端壁とによって構成されており、前記内部突起が該周壁の長さ方向に所定間隔をもって複数形成されていると共に、該内部突起が該周壁における対向する部位にそれぞれ突設されて、それら内部突起が該周壁の長手方向の投影で互いに重なり合うように互い違いに設けられていると共に、それら内部突起の重なり合う部分が前記当接部に及ぼされる外力の作用方向線上に位置している請求項1〜4の何れか1項に記載の振動減衰装置。
【請求項6】
前記壁部が、一定断面で延びる長手筒形状の周壁と、該周壁の長手方向両端の開口部を閉塞する一対の端壁とによって構成されており、前記内部突起が該周壁の長さ方向に所定間隔をもって複数形成されていると共に、該周壁における該複数の内部突起を支持する部位に該周壁の変形を規制する規制部が設けられている請求項1〜5の何れか1項に記載の振動減衰装置。
【請求項7】
前記壁部における荷重の入力部位と前記内部突起の支持部位との連接部分が、荷重入力によって該壁部における該内部突起の支持部位を外方に開くように変形させる外方に向かって凸の突出形状とされている請求項1〜6の何れか1項に記載の振動減衰装置。
【請求項8】
前記壁部における荷重の入力部位の断面形状が湾曲形状とされている請求項7に記載の振動減衰装置。
【請求項9】
前記本体が自動車の車体とされていると共に、前記開閉体が自動車のドアとされており、それら車体とドアの間に装着される請求項1〜8の何れか1項に記載の振動減衰装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−202720(P2011−202720A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69471(P2010−69471)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】