説明

振動濾過方法及び装置

【課題】振動濾過方法において、濾過性能を自動的に回復させ長期間安定した濾過を可能にする。
【解決手段】振動させたフィルタに被濾過液3を供給しクロスフローによりフィルタ7上に浮遊粒子層を形成させて濾液14と粒子が濃縮されたオーバーフロー液16とに分離する振動濾過方法であって、オーバーフロー液16の流出を絞ってフィルタ7における圧力差を調節することにより浮遊粒子層を安定形成して濾過を行い、フィルタ7の濾過性能が低下したときは、オーバーフロー液16の流出を開放して浮遊粒子層を洗い流すようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は濾過性能を自動的に回復させ長期間安定した濾過を可能にする振動濾過方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シリコンの半導体ウェーハを製造するには、単結晶インゴットをスライスして薄円板状のウェーハを得るスライス工程、ウェーハの欠けや割れを防ぐための面取り工程、面取り部やウェーハ面を仕上研磨する研磨工程等の多数の加工工程があり、このようなウェーハの加工工程においては廃スラリーが生じる。特に、単結晶インゴットをスライスするスライス工程では、クーラントに砥粒を混合した切削液をワイヤソーのワイヤに掛けながら切削を行っており、従って、廃スラリーは砥粒と、砥粒の破片と、シリコンの切削屑がクーラントに混合したものとなっている。
【0003】
ここで、前記廃スラリーは、経済的な理由及び廃棄物の減容化の観点から再生して再使用することが行われている。すなわち、廃スラリーを砥粒とクーラントとシリコン切削屑等の不純物とに分離し、砥粒とクーラントはpHなどの諸条件を調整した後、必要に応じて新クーラント及び新砥粒と混合して再度切削、研磨等の加工工程に用いられる。
【0004】
上記ウェーハの加工工程において発生する廃スラリーは微粒子が高い濃度で混合した比較的高い粘度を有しているため、前記砥粒とクーラントを高効率で分離して回収することは困難となっている。
【0005】
前記廃スラリーの分離回収には、2台の遠心分離器を備えて1段目の遠心分離器では砥粒を回収し、2段目の遠心分離器ではクーラントを回収するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0006】
しかし、2段目の遠心分離器で回収されるクーラント中には10重量%前後の不純物(主にシリコン切削屑)が存在しており、従って、前記2段目の遠心分離器からのクーラントを全量回収しようとした場合には再生切削液中の不純物量が過多となって切削性能の悪化などが生じるため、クーラントは30〜50%程度しか回収して再利用されておらず、残りのクーラントは廃棄しているのが現状である。
【0007】
従って、前記クーラントの回収率を高めて廃棄量を減少することが望まれるが、クーラントを確実に分離する方法としては、膜濾過方式がある(特許文献2参照)。膜濾過方式は、濾過膜を選定することによって微細粒子までも確実に分離できる利点がある反面、濾過膜が目詰まりし易く、そのために短時間で濾過性能が低下し、洗浄を行っても性能が回復せず寿命が短いという問題がある。従って、膜濾過方式はppmオーダーの僅かな不純物を濾過する場合に用いられており、前記2段目の遠心分離器で回収されるクーラントのように10重量%前後もの不純物が混在するものの処理には適用できない。
【0008】
また、従来よりケーキ濾過方式がある(特許文献3参照)。ケーキ濾過方式は、被濾過液中の固体粒子がフィルタにトラップされて形成されるケーキがフィルタの役目を果たすようにしたものであり、混在する固体粒子の濃度が比較的高くても分離することができる。しかし、前記2段目の遠心分離器からのクーラントのような場合はケーキが安定して形成され難いために効果的な濾過が難しいという問題を有していた。
【0009】
前記シリコンの加工工程からの廃スラリーには、図7に固体粒子の粒径分布図を示すように、砥粒(粒径大)とシリコン切削屑(粒径小)は2つのピーク点P1,P2を有する2点ピーク分布Aとなっている。そして、前記1段目の遠心分離器で第1のピーク点P1を狙って砥粒を除去し、その後、前記2段目の遠心分離器で第2のピーク点P2を狙ってシリコン切削屑を除去するようにしている。このようにして遠心分離器で処理した後のクーラントは、前記2つのピーク点P1,P2とは異なるが、やはり2つのピーク点P1’,P2’を有する2点ピーク分布Bが残った状態となっている。
【0010】
前記ケーキ濾過方式では、固体粒子の粒径が比較的揃った1つのピーク点を有するものの場合には、図8に示すように粒子間に適当な流路ができて濾過が行われることによって大きい厚さのケーキが形成されて良好な濾過が行われるが、図7に示すように2つのピーク点P1’,P2’を有する2点ピーク分布のクーラントの場合には、微粒子が早い段階でフィルタ上に堆積して流路を覆ぐためにその後の大径の粒子の分離が進行せず、よって大きい厚さのケーキが形成できず、良好な濾過が行われないという問題がある。
【0011】
一方、前記クーラントに含有する固体粒子を完全に分離する方法としては蒸発と凝縮を行って分離する蒸留方式がある。しかし、この蒸留方式においては、クーラントが低沸点でしかも引火性、毒性が低い例えばプロピレングリコールを主成分としたものに限定される問題がある。蒸留方式では蒸発と凝縮による回収プロセスとなるため、例えば高沸点及び引火性、毒性を有するクーラントを用いた場合には、高温での処理、及び安全対策が必要となり、設備費及び加熱燃料費が増大するという問題がある。尚、近年では、クーラントが油性から水性に移行しつつあり、水性クーラントの中でもプロピレングリコールよりも安価なジエチレングリコールや粘性等が安定しているポリエチレングリコール(PEG200等)等を用いることが検討されているが、これらはいずれも高沸点或いは熱分解性があるため、蒸留方式での適用には限界がある。
【0012】
又、近年では前記従来の問題点を解決できる分離方式として、振動させたフィルタに被濾過液を供給し、フィルタ上に浮遊粒子層が形成された状態で濾液と、粒子が濃縮されたオーバーフロー液とに分離するクロスフローによる振動分離システムが提案されている(特許文献4参照)。
【0013】
この振動分離システムでは、フィルタから離れて浮遊する浮遊粒子層が形成され、しかも浮遊粒子層の粒子が振動していることにより、フィルタの目詰まりが起こり難いことによって安定した濾過を行うことができる。
【特許文献1】特開2001−277115号公報
【特許文献2】特開2001−015465号公報
【特許文献3】特開平08−294606号公報
【特許文献4】特表2002−509014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献4に示す振動分離システムにおいても、前記クーラントのように粘性の高い被濾過液の濾過を行う場合、濾過を継続するとフィルタ上に形成される浮遊粒子層の層厚が徐々に厚くなってフィルタに接近し、濾過性能が低下してしまうという問題がある。更に、振動分離システムを停止した際には、前記浮遊粒子層がフィルタに密着して張り付いてしまい、運転を再開した際に、良好な濾過ができないという問題を有していた。
【0015】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、振動濾過方法において、濾過性能を自動的に回復させ長期間安定した濾過を可能にする振動濾過方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、振動させたフィルタに被濾過液を供給しクロスフローにより濾液と、粒子が濃縮されたオーバーフロー液とに分離する振動濾過方法であって、前記オーバーフロー液の流出を絞ってフィルタに作用する圧力を調節することにより濾過を行い、振動によりフィルタ上に形成される浮遊粒子層の層厚が増加して濾過性能が低下したときは、前記オーバーフロー液の流出を開放して浮遊粒子層を洗い流すことを特徴とする振動濾過方法、に係るものである。
【0017】
上記振動濾過方法において、オーバーフロー液の流出を開放する際に、濾液の流出を遮断することは好ましい。
【0018】
又、上記振動濾過方法において、フィルタの濾過性能は、濾液の流出流量から検出できる。
【0019】
又、上記振動濾過方法において、フィルタの濾過性能は、被濾過液を定量ポンプにより定量供給する際に被濾過液の供給圧力から検出できる。
【0020】
又、上記振動濾過方法において、被濾過液を、該被濾過液の粘度が高粘度から低粘度に変化する変曲点以上の温度に加熱することは好ましい。
【0021】
又、上記振動濾過方法において、被濾過液は、シリコン加工工程で生じるシリコン切削屑と砥粒がクーラントに混入した2点ピーク分布を有する廃スラリーであってもよい。
【0022】
又、上記振動濾過方法において、振動濾過の停止前に、前記オーバーフロー液の流出を開放して浮遊粒子層を洗い流し、その後振動濾過を停止することは好ましい。
【0023】
本発明は、被濾過液を供給する供給ポンプと、
供給ポンプからの被濾過液が振動するフィルタに供給されフィルタ上に形成される浮遊粒子層により濾液と、粒子が濃縮されたオーバーフロー液とに分離する振動濾過機と、
前記オーバーフロー液の流出流路に備えた切換弁と、
該切換弁に絞り弁介して接続された調整流路と、
前記切換弁に接続された開放流路と、
フィルタによる濾過性能を検出する濾過性能検出手段と、
該濾過性能検出手段で検出した濾過性能が設定値以下に低下したときに、前記オーバーフロー液を開放流路に開放するよう切換弁を切り換える切換制御器と、
を有することを特徴とする振動濾過装置、に係るものである。
【0024】
上記振動濾過装置において、前記オーバーフロー液を開放流路に開放する時に濾液の流出を遮断する遮断弁を有することは好ましい。
【0025】
又、上記振動濾過装置において、濾過性能検出手段は、濾液の流出流量を検出する流量計であってもよい。
【0026】
又、上記振動濾過装置において、濾過性能検出手段は、被濾過液を定量ポンプによりフィルタに供給する場合に被濾過液の供給圧力を検出する圧力計であってもよい。
【0027】
又、上記振動濾過装置において、タンクに、被濾過液を加熱するための加熱器を有することは好ましい。
【0028】
又、上記振動濾過装置において、切換制御器は、振動濾過の停止前に、前記オーバーフロー液を開放流路に開放するように切換弁を制御することは好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の振動濾過方法及び装置によれば、オーバーフロー液の流出を絞ってフィルタに作用する圧力を調節することによりフィルタ上に安定した浮遊粒子層を形成して濾過を濾過を行い、フィルタ上の浮遊粒子層の層厚が大きくなって濾過性能が低下したときには、オーバーフロー液の流出を開放して浮遊粒子層を洗い流すようにしたので、濾過性能の低下時にフィルタの濾過性能を自動的に回復することができ、よって長期間安定した濾過を行えるという優れた効果を奏し得る。
【0030】
被濾過液を、該被濾過液の粘度が高粘度から低粘度に変化する変曲点以上の温度に加熱すると、被濾過液の粘度を低下させて濾過効率を高められると共に、粘度が安定することにより浮遊粒子層の形成が安定する効果がある。
【0031】
被濾過液が、シリコン加工工程で生じるシリコン切削屑と砥粒がクーラントに混入した2点ピーク分布を有する廃スラリーであっても、浮遊粒子層を自動的に洗い流す操作により安定した濾過が行える効果がある。
【0032】
振動濾過の停止前に、前記オーバーフロー液の流出を開放して浮遊粒子層を洗い流し、その後振動濾過を停止すると、停止時に浮遊粒子層がフィルタに密着して張り付く問題を防止して、運転を再開した際に良好な濾過を行える効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0034】
図1は本発明における振動濾過装置の概略の一例を示すフローチャートである。図1中、1は振動濾過機、2は被濾過液3が収容されたタンク、4はタンク2の被濾過液3を供給流路5を介して前記振動濾過機1に供給する供給ポンプである。
【0035】
前記振動濾過機1は、筒状の容器6内に複数の円板状のフィルタ7が収容されており、前記容器6が駆動モータ8によって往復回転されることにより前記フィルタ7は振動するようになっている。フィルタ7の直径方向中心には、濾液流出流路9が形成してある一方、濾液流出流路9を通る直径方向一側には供給ポンプ4からの被濾過液3が導入される被濾過液導入流路10が設けられ、又、濾液流出流路9を通る直径方向他側にはオーバーフロー液流路11が設けられている。
【0036】
図2は前記振動濾過機1におけるフィルタ7の濾過構造を示すもので、間隔7aを隔てた2枚のフィルタ7が1つのユニット12に形成されており、このユニット12が所要の間隔13を有して複数積層された構成を有している。そして、前記被濾過液導入流路10から導入された被濾過液3は、間隔13を通してユニット12の上下の外側面に導かれ、クロスフローにより濾液14は破線で示すように各フィルタ7を通り抜けて濾過され、濾液14は間隔7aから濾液流出流路9に流出される。このとき、フィルタ7は振動しているため、フィルタ7の外面には、図3に示すようにフィルタ7外面と間隔を有して浮遊する浮遊粒子層15が形成される。従って、被濾過液3は浮遊粒子層15によって濾過されるようになる。濾液14が分離された被濾過液3は、粒子が濃縮されたオーバーフロー液16となってオーバーフロー液流路11から流出される。
【0037】
前記振動濾過機1において濾過を継続すると、浮遊する浮遊粒子層15の層厚が徐々に厚くなり、これによって濾過性能が低下する問題がある。更に、振動濾過機1の運転を停止した際には前記浮遊粒子層15がフィルタ7上に密着して張り付いてしまい、運転を再開した際に良好な濾過ができない問題がある。
【0038】
このため、図1に示すように、前記オーバーフロー液16が流出する流出流路17に切換弁18(三方切換弁)を設け、更に該切換弁18に、絞り弁19を介して前記オーバーフロー液16をタンク2に戻す調整流路20と、オーバーフロー液16をそのまま前記タンク2に開放する開放流路21とを接続している。
【0039】
更に、振動濾過機1におけるフィルタ7の濾過性能を検出するために、濾液14の流出流路22に流量計23による濾過性能検出手段24を設けている。濾過性能検出手段24としては、前記供給ポンプ4が定量ポンプである場合には、供給流路5に圧力計25を設けてフィルタ7に供給される被濾過液3の供給圧力を検出するようにしてもよい。
【0040】
そして、前記濾過性能検出手段24で検出した濾過性能が設定値以下に低下したときに、前記オーバーフロー液16を開放流路21によってタンク2に開放するように切換弁18の切り換えを制御する切換制御器26を設けている。
【0041】
更に、図1では、濾液14の流出流路22に、前記したようにオーバーフロー液16を開放流路21によりタンク2に開放する際に、濾液14の流出を遮断するようにした遮断弁27を設けている。
【0042】
又、タンク2には被濾過液3を加熱するための加熱器28を設けている。加熱器28は、タンク2に設けて被濾過液3の温度を検出する温度計29の検出温度に基づいて、制御器30により加熱を制御するようにしている。図4、図5に異なる種類の被濾過液3の温度と粘度の関係を示すように、被濾過液3は種類によって、粘度が高粘度から低粘度に変化する異なった変曲点Xを有しているので、被濾過液3の種類に応じて変曲点X以上の温度が維持されるように、前記加熱器28により被濾過液3を加熱するようにしている。被濾過液3を加熱する加熱器28には電気ヒータ、温水等種々の方式を用いることができ、被濾過液3を加熱する位置も任意に選定できる。
【0043】
又、前記切換制御器26は、振動濾過機1による濾過の停止前にも前記切換弁18を切り換えてオーバーフロー液16を開放流路21に開放するようになっている。即ち、切換制御器26に停止指令31が入力されると、切換制御器26はオーバーフロー液16を開放流路21に開放するよう切換弁18を切換えた後、振動濾過機1の運転を停止する指令を発するようになっている。
【0044】
以下に、上記形態の作用を説明する。
【0045】
駆動モータ8により振動濾過機1を往復回転させてフィルタ7を振動させた状態において、供給ポンプ4を駆動してタンク2の被濾過液3を供給流路5を介して被濾過液導入流路10に導入すると共に、オーバーフロー液16の流出流路17に設けた絞り弁19を所定の開度に絞ることにより、被濾過液3は所要の圧力でユニット12における上下のフィルタ7の外面に導かれ、フィルタ7上に浮遊粒子層15が形成された状態で、被濾過液3の濾液14は浮遊粒子層15及びフィルタ7を通り抜けて濾過されることにより濾液流出流路9から流出される。フィルタ7の外面をクロスフローした被濾過液3は、粒子が濃縮されてオーバーフロー液16となってオーバーフロー液流路11から流出流路17に流出される。
【0046】
この時、不純物の濃度が大きい被濾過液3を濾過するには、フィルタ7は駆動モータ8の駆動によって40〜70Hz前後の振動数で且つ1/2インチ〜1インチ(約13〜25mm)前後の振幅にて振動させると良好な濾過を行えることが判明した。前記振動濾過機1によって10重量%前後の不純物が混在したクーラントからなる被濾過液3を濾過する際には、50Hzの振動数で且つ3/4インチ(約19mm)の振幅でフィルタ7を振動させた場合に、フィルタ7外面に良好な浮遊粒子層15が形成されて、良好な濾過を行うことができた。
【0047】
しかし、上記のような良好な状態での濾過を行っていても、濾過を継続していると、浮遊する浮遊粒子層15の層厚が徐々に厚くなってフィルタ7に接近し、フィルタ7の濾過性能が低下するようになる。
【0048】
フィルタ7の濾過性能が低下すると、流出流路22から流出する濾液14の流量が徐々に減少することになるが、濾液14の流出流量が流量計23からなる濾過性能検出手段24によって検出され、その検出値が切換制御器26に入力されているので、濾過性能検出手段24による性能の検出値が設定値以下に低下すると、切換制御器26は、前記オーバーフロー液16を開放流路21によってタンク2に開放するように切換弁18を切り換える。
【0049】
すると、フィルタ7上に厚く成長した浮遊粒子層15は瞬時に洗い流される。この時、濾液14の流出流路22に設けた遮断弁27を閉じることにより、被濾過液3はすべてオーバーフロー液16となるので、浮遊粒子層15を洗い流す作用を高めることができる。
【0050】
浮遊粒子層15が洗い流されたフィルタ7の面は綺麗な状態に回復されるので、切換制御器26は、再び前記オーバーフロー液16を絞り弁19を有する調整流路20に流すように切換弁18を切り換える。これにより、再びフィルタ7上には良好な状態の浮遊粒子層15が形成されて良好な濾過が行われるようになる。
【0051】
上記において、例えばタンク2に設けた加熱器28により、被濾過液3の粘度が、図4、図5に示す高粘度から低粘度に変化する変曲点X以上の温度に加熱する。このようにすると、被濾過液3の粘度を低下させて濾過効率を高めることができると共に、粘度が安定することによって浮遊粒子層15の形成を安定させることができる。
【0052】
又、切換制御器26に停止指令31を入力すると、切換制御器26はオーバーフロー液16を開放流路21に開放するよう切換弁18を切換えた後、振動濾過機1の運転を停止する指令を発するようになっているので、振動濾過機1の運転停止時にはフィルタ7上の浮遊粒子層15が洗い流され、よって、停止時に浮遊粒子層15がフィルタ7に密着して張り付き、運転を再開した際に良好な濾過ができないという問題を解消することができる。
【0053】
図6は、本発明をシリコン加工工程からの廃スラリーの濾過に適用した場合の一例を示すものであり、図6中、32はワイヤソー等のシリコン加工装置、33はシリコン加工装置32からの廃スラリー34を導入して砥粒35を分離する第1段の遠心分離器であり、分離した砥粒35は調合タンク36に導かれ、濾液37は濾液タンク38に導かれる。39は濾液タンク38の濾液37を導入して濾液40を分離する第2段の遠心分離器であり、分離した濾液40は受入れタンク41に導かれる。第2段の遠心分離器39で分離された不純物42は廃棄される。前記受入れタンク41の濾液40は図1のタンク2に被濾過液3として供給され、供給ポンプ4により前記振動濾過機1に供給されて、粒子が効果的に除去されたクーラント43(濾液14)が得られる。得られたクーラント43は、前記調合タンク36に導かれて、前記砥粒35及び新砥粒、新クーラントの添加が行われて切削液44の調合が行われ、切削液44は再びシリコン加工装置32へ供給される。前記濾過によってタンク2内の濾液40の不純物は徐々に濃縮されるので、タンク2内の濾液40の一部は取出し、蒸留分離等により廃棄固形分とクーラントとに分離される。従って、図6の形態においては、廃スラリー34に含まれるクーラントの略全量を回収して再利用できるようになる。
【0054】
図6の第2段の遠心分離器39において分離された濾液40は、図7に示すように2つのピーク点P1’,P2’を有する2点ピーク分布Bを有しているが、前記振動濾過機1によって図3に示したようにフィルタ7上に形成される浮遊粒子層15により濾過され、更に、浮遊粒子層15の層厚が厚くなって濾過性能が低下すると自動的に浮遊粒子層15を洗い流すようになっているので、分離し難い2点ピーク分布Bを有する濾液40(廃スラリー)も安定して濾過することができる。
【0055】
上記したように、本発明では、オーバーフロー液16の流出を絞ってフィルタ7に作用する圧力を調節することによりフィルタ7上に安定した浮遊粒子層15を形成して濾過を行い、フィルタ7上の浮遊粒子層15の層厚が大きくなって濾過性能が低下したときには、オーバーフロー液16の流出を開放して浮遊粒子層15を洗い流すようにしたので、濾過性能の低下時にフィルタ7の濾過性能を自動的に回復することができ、よって長期間安定した濾過が可能になる。
【0056】
尚、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明における振動濾過装置の概略の一例を示すフローチャートである。
【図2】振動濾過機におけるフィルタの濾過構造を示す断面図である。
【図3】フィルタ上に浮遊粒子層が形成されている状態を示す説明図である。
【図4】被濾過液の温度と粘度の関係と変曲点を示す線図である。
【図5】図4とは異なる被濾過液の温度と粘度の関係と変曲点を示す線図である。
【図6】本発明をシリコン加工工程からの廃スラリーの濾過に適用した場合の一例を示すフローチャートである。
【図7】シリコンの加工工程からの廃スラリーにおける固体粒子の粒径分布図である。
【図8】ケーキ濾過において、固体粒子の粒径が比較的揃った1つのピーク点を有する場合のケーキの厚さを示す模式図である。
【図9】ケーキ濾過において、固体粒子の粒径が2つのピーク点を有する2点ピーク分布の場合のケーキの厚さを示す模式図である。
【符号の説明】
【0058】
1 振動濾過機
3 被濾過液
4 供給ポンプ
7 フィルタ
14 濾液
15 浮遊粒子層
16 オーバーフロー液
17 流出流路
18 切換弁
19 絞り弁
20 調整流路
21 開放流路
23 流量計
24 濾過性能検出手段
25 圧力計
26 切換制御器
27 遮断弁
28 加熱器
32 シリコン加工装置
34 廃スラリー
35 砥粒
43 クーラント
B 2点ピーク分布
X 変曲点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動させたフィルタに被濾過液を供給しクロスフローにより濾液と、粒子が濃縮されたオーバーフロー液とに分離する振動濾過方法であって、前記オーバーフロー液の流出を絞ってフィルタに作用する圧力を調節することにより濾過を行い、振動によりフィルタ上に形成される浮遊粒子層の層厚が増加して濾過性能が低下したときは、前記オーバーフロー液の流出を開放して浮遊粒子層を洗い流すことを特徴とする振動濾過方法。
【請求項2】
オーバーフロー液の流出を開放する際に、濾液の流出を遮断する請求項1に記載の振動濾過方法。
【請求項3】
フィルタの濾過性能が、濾液の流出流量から検出される請求項1又は2に記載の振動濾過方法。
【請求項4】
フィルタの濾過性能が、被濾過液を定量ポンプにより定量供給する際には被濾過液の供給圧力から検出される請求項1又は2に記載の振動濾過方法。
【請求項5】
被濾過液を、該被濾過液の粘度が高粘度から低粘度に変化する変曲点以上の温度に加熱する請求項1〜4のいずれか1つに記載の振動濾過方法。
【請求項6】
被濾過液が、シリコン加工工程で生じるシリコン切削屑と砥粒がクーラントに混入した2点ピーク分布を有する廃スラリーである請求項1〜5のいずれか1つに記載の振動濾過方法。
【請求項7】
振動濾過の停止前に、前記オーバーフロー液の流出を開放して浮遊粒子層を洗い流し、その後振動濾過を停止する請求項1に記載の振動濾過方法。
【請求項8】
被濾過液を供給する供給ポンプと、
供給ポンプからの被濾過液が振動するフィルタに供給されフィルタ上に形成される浮遊粒子層により濾液と、粒子が濃縮されたオーバーフロー液とに分離する振動濾過機と、
前記オーバーフロー液の流出流路に備えた切換弁と、
該切換弁に絞り弁介して接続された調整流路と、
前記切換弁に接続された開放流路と、
フィルタによる濾過性能を検出する濾過性能検出手段と、
該濾過性能検出手段で検出した濾過性能が設定値以下に低下したときに、前記オーバーフロー液を開放流路に開放するよう切換弁を切り換える切換制御器と、
を有することを特徴とする振動濾過装置。
【請求項9】
前記オーバーフロー液を開放流路に開放する時に濾液の流出を遮断する遮断弁を有する請求項8に記載の振動濾過装置。
【請求項10】
濾過性能検出手段が、濾液の流出流量を検出する流量計である請求項8又は9に記載の振動濾過装置。
【請求項11】
濾過性能検出手段が、被濾過液を定量ポンプによりフィルタに供給する場合は被濾過液の供給圧力を検出する圧力計である請求項8又は9に記載の振動濾過装置。
【請求項12】
タンクに、被濾過液を加熱するための加熱器を有する請求項8〜11のいずれか1つに記載の振動濾過装置。
【請求項13】
切換制御器は、振動濾過の停止前に、前記オーバーフロー液を開放流路に開放するように切換弁を制御する請求項8に記載の振動濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−115719(P2010−115719A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288398(P2008−288398)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000198352)株式会社IHI回転機械 (27)
【Fターム(参考)】