説明

振動発生装置及び携帯電子機器

【課題】 携帯電子機器に搭載される振動発生装置において、電子部品を冷却する機能を有しながら、携帯電子機器の小型軽量化を極力図ることができるようにする。
【解決手段】 回転軸線L1を中心に正方向及び負方向に回転可能な回転軸17を有するモータ19と、前記回転軸17に錘クラッチ手段を介して偏心状態に取り付けられた錘21と、前記回転軸17に取り付けられた風車部材23と、を備え、前記錘クラッチ手段は、前記回転軸17の正方向の回転時のみに、前記回転軸17の回転を前記錘21に伝達させるように構成される振動発生装置15を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動発生装置、及び、これを備えた携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等の携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等の携行可能な携帯電子機器は、偏心状態で回転軸に取り付けられた錘を備える振動発生用モータを備えている。この振動発生用モータ(振動発生装置)は、携帯電子機器のユーザーに通話やメールの着信、アラーム等の各種情報を振動により知らせるものである。
ところで、近年の携帯電子機器には、通話機能やメール機能等の基本機能に加えて、撮影機能等の各種機能が付加される傾向にあり、この携帯電子機器の機能増加にともなってCPU等の各種電子部品において発生する発熱量は増大する。そして、この発熱量が過度になると電子部品本来の機能が確実に発揮できなくなる虞があるため、放熱性についても考慮する必要がある。
【0003】
そして、従来の携帯電子機器として、羽根を有すると共に振動発生用モータの回転軸に対して着脱可能な回転部材を備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。この振動発生用モータの回転軸に回転部材を取り付けた状態においては、回転軸を回転させた際に風を発生させることができる。
【特許文献1】特開2004−297907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の携帯電子機器において、筐体内部にヒートシンクや空冷ファン等の放熱手段を別途追加して設けた場合には、筐体のサイズが大きくなり、また、携帯電子機器の重量が増加するため、携行性を重要視する携帯電子機器の小型軽量化が妨げられるという問題がある。
なお、特許文献1に記載の携帯電子機器を応用し、振動発生用モータに取り付けられた回転部材を筐体内部に配して電子部品の冷却を行う場合に、各種情報を振動でユーザーに知らせることができなくなってしまう。さらに、電子部品は筐体内部に設けられるものであるため、振動発生用モータに対して回転部材を着脱することは非常に困難である。
【0005】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、電子部品を冷却する機能を有しながら、携帯電子機器の小型軽量化を極力図ることができる振動発生装置及びこれを備えた携帯電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の振動発生装置は、回転軸線を中心に正方向及び負方向に回転可能な回転軸を有するモータと、前記回転軸に錘クラッチ手段を介して偏心状態に取り付けられた錘と、前記回転軸に取り付けられた風車部材と、を備え、前記錘クラッチ手段は、前記回転軸の正方向の回転時のみに、前記回転軸の回転を前記錘に伝達させるように構成されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の振動発生装置は、前記錘は、前記回転軸を前記回転軸線方向に挿入させる開口部を有し、前記錘クラッチ手段は、前記回転軸に取り付けられると共に前記開口部の内面に当接するように付勢される付勢部材と、前記開口部の内面に形成され、前記回転軸の正方向への回転時のみに前記付勢部材に係合して前記開口部の内面に対する前記付勢部材の摺動を規制する係合部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の振動発生装置は、前記風車部材は、前記回転軸の負方向の回転時のみに、前記回転軸の回転を前記風車部材に伝達させる風車クラッチ手段を介して、前記回転軸に取り付けられることを特徴とする。
また、本発明の振動発生装置は、前記風車部材は、前記回転軸線に沿う平坦面を有する略板状の羽根部を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の携帯電子機器は、前記振動発生装置と、前記振動発生装置を内部に固定する筐体と、前記回転軸の回転方向を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の携帯電子機器は、前記制御部は、前記筐体を振動させる必要がある場合に、前記回転軸を正方向に回転させるように制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の携帯電子機器は、通信を行う通信部を備え、前記制御部は、前記通信部による着信あるいはデータ受信が生じると、前記回転軸を正方向に回転させるように制御することを特徴とする。
また、本発明の携帯電子機器は、前記筐体の内部の温度を検知する温度検出部を備え、前記制御部は、前記温度検出部の検出結果に基づいて、前記回転軸を負方向に回転させるように制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の携帯電子機器は、前記筐体の内部には、前記風車部材の送風方向に隣接して熱を発生する電子部品が配されることを特徴とする。
また、本発明の携帯電子機器は、前記電子部品は、高周波回路、無線通信部、ベースバンド部、アプリケーション制御部、充電ICの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、モータの回転軸を正方向に回転させた際には、錘クラッチ手段により回転軸の回転が錘に伝達されるため、錘が回転軸線を中心に偏心回転して筐体を振動させることができる。そして、回転軸を負方向に回転させた際には、錘クラッチ手段により回転軸の回転が錘に伝達されないため錘が回転しない。すなわち、回転軸を負方向に回転させた際には、風車部材を振動させることなく、回転させることができるため、風車部材から安定した風を発生させることができる。
【0013】
したがって、振動発生装置を携帯電子機器の筐体内部に設けた場合には、風車部材から発生する安定した風を、筐体の内部に設けられ、熱を発生する電子部品に当てることで、電子部品を効率よく冷却することができる。
また、回転軸を有するモータは、錘を偏心回転させて筐体を振動させる機能、及び、風車部材を回転させて風を発生させる機能を兼用して構成するため、風車部材を回転させるための別途駆動手段が不要となる。したがって、筐体内部のスペースを有効に活用して、携帯電子機器の小型軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1から図5は本発明に係る一実施形態を示しており、ここで説明する実施の形態は、この発明を携帯電話機に適用した場合のものである。図1に示すように、この実施の形態に係る携帯電話機(携帯電子機器)1は、平面視略矩形の板状に形成された筐体2と、数字キー、通話キー及び終話キー等の複数の操作キー4を有する操作部3と、各種の情報を表示する表示部5と、通話用のマイクロフォン部及びスピーカ部(不図示)とを備えている。操作部3の操作キー4及び表示部5の表示面は、筐体2の一方の主面2aから外方に露出している。
マイクロフォン部及びスピーカ部は、筐体2の内部のうち、筐体2の長手方向の両端部にそれぞれ配されており、スピーカ部は主面2aのうち一端に形成された放音口7aを通じて音声等を放音するようになっている。また、マイクロフォン部は筐体2の主面2aのうち他端に形成された集音口7bを通じて音声等を集音するようになっている。なお、スピーカ部を配した筐体2の長手方向の一端部には、基地局との無線通信を行うためのアンテナ9が突出して設けられている。
【0015】
また、筐体2の内部には、図2に示すように、前述した表示部5、アンテナ9、マイクロフォン部及びスピーカ部等の電気部品を電気的に接続する回路基板11が固定して配されている。この回路基板11の表面11aには、携帯電話機1の通話機能、表示機能、入力操作機能等の各種基本機能を制御するための基本機能用CPU(不図示)や、後述するROMに記憶されたゲームソフト等のアプリケーションソフトを制御するためのアプリケーション用CPU(アプリケーション制御部)13が搭載されている。
【0016】
さらに、筐体2の内部側に面する筐体2の内壁面2bには、筐体2を振動させるためのバイブレータ(振動発生装置)15が固定して配されている。このバイブレータ15は、図3,4に示すように、回転軸線L1を中心に正方向(A方向)及び負方向(B方向)に回転可能な回転軸17を有するモータ19と、回転軸17に取り付けられた錘21及び風車部材23とを備えている。
モータ19は、回転軸17を正方向及び負方向に回転駆動するモータ本体25を備えており、このモータ本体25の駆動力によって回転軸17が回転する。なお、回転軸17の回転方向は、モータ本体25に流す電流の向きや電圧を適宜変えることにより、変えることができる。
【0017】
錘21は、平面視略半円状に形成されており、錘クラッチ手段27を介して回転軸17に偏心状態で取り付けられている。また、この錘21には、回転軸17を回転軸線L1方向に挿通させる平面視略円形の開口部31が形成されている。錘クラッチ手段27は、回転軸17に固定された爪部材(付勢部材)29と、錘21の開口部31の内面に、回転軸17の軸の方向に略一致する方向に形成された複数の係合溝(係合部)33とから構成されている。
錘21の開口部31は、これに挿通された回転軸17との間に隙間を有するように形成されている。各係合溝33は、その底部から正方向(回転軸17が正回転する方向)に延びる急斜面、及び、逆に負方向に延びる緩斜面とから構成されており、複数の係合溝33は鋸歯状に連ねて形成されている。すなわち、開口部17の内面は、これら複数の急斜面及び緩斜面により構成されている。
爪部材29は、回転軸17の周面に固定される円環部35と、円環部35の外周面から突出する一対の付勢部37とから構成されている。一対の付勢部37は、円環部35に対して弾性変形可能となっており、回転軸線L1を基準として点対称となる位置に形成されている。
【0018】
この爪部材29が開口部31の内側に配された状態においては、爪部材29の各付勢部37が開口部31の内面に当接するように付勢される。
この状態において、回転軸17を正方向に回転させた際には、付勢部37が急斜面に押し付けられて係合溝33に係合するため、回転軸17の回転が爪部材29を介して錘21に伝達され、錘21が回転軸線L1を中心に偏心回転する。また、回転軸17を負方向に回転させた際には、爪部材29の付勢部37が緩斜面を乗り越えることにより、この緩斜面に対して摺動する、すなわち、付勢部37が係合溝33に係合しないため、錘21は回転軸17と共に回転しない。
以上のように、この錘クラッチ手段27は、回転軸17を正方向に回転させたときのみに、回転軸17の回転を錘21に伝達する、所謂一方向ラチェットクラッチの役割を果たしている。
【0019】
風車部材23は、回転軸17に一体的に固定されており、平面視略円形状の円板部39と、円板部39の表面39a(回転軸17を直交する面)から突出する略矩形板状に形成された羽根部41とを備えている。円板部39は、その表面39aの中心が回転軸線L1に一致するように、また、その表面39aが回転軸線L1に直交するように、回転軸17に一体的に固定されている。
羽根部41は、回転軸線L1を通過すると共に、その両端が円板部39の表面39aの周縁まで到達するように形成されている。また、この羽根部41の表面(平坦面)41aは、回転軸線L1に沿って形成されている、すなわち、円板部39の表面39aに対して直立している。
【0020】
すなわち、この風車部材23を回転軸17に取り付けた状態においては、円板部39及び羽根部41の重心が回転軸線L1上に位置している。したがって、この風車部材23は非偏心状態で回転軸17に固定されることになり、この風車部材23の回転だけに基づいてバイブレータ15が振動することはない。
また、この羽根部41の表面41aは、回転軸線L1に沿って形成されるため、回転軸線L1を中心に風車部材23を回転させた際には、回転軸線L1と直交する方向の風が羽根部41から発生する。
【0021】
以上のように構成されたバイブレータ15は、図2に示すように、モータ本体25を筐体2の内壁面2によって回路基板11の表面11aに向けて押さえつけることにより、回路基板11の表面11aに設けられたバネ端子43を介して回路基板41と電気的に接続されている。なお、アプリケーション用CPU13は、バイブレータ15の風車部材23と隣接して回転軸線L1に直交する方向に並べて配されている、すなわち、風車部材23の送風方向に隣接して配されている。
【0022】
また、この携帯電話機1は、図5に示すように、上述したものの他に、前述した基本機能用CPUやアプリケーション用CPU13を含む制御部45と、アンテナ9に接続された無線通信部47と、マイクロフォン部49及びスピーカ部51に接続された音声処理部53と、アプリケーションソフト等の各種プログラムを格納するROM55と、処理用のRAM57と、温度センサ(温度検出部)59とを備えている。
無線通信部47は、アンテナ11を介して通話や通信を行うものである。また、音声処理部53は、例えば、無線通信部47で受信した音声信号を処理してスピーカ部51に送ったり、マイクロフォン部49において集音した音声を処理して無線通信部47に送るものである。
【0023】
温度センサ59は、筐体2内部や、筐体2内部に配されるアプリケーション用CPU13等の熱を発生する電子部品の温度を検出するものであり、この検出結果は、制御部45に出力される。
制御部45は、携帯電話機1全体を制御するものであり、例えば、前述の温度センサ59の検出結果に基づいて、バイブレータ15の回転軸17を負方向に回転させる制御を行う。すなわち、筐体2内部やアプリケーション用CPU13の温度が所定温度以上になった場合には、制御部15が回転軸17と共に風車部材23を負方向に回転させる。また、この制御部45は、例えば、無線通信部47の着信やデータ受信時に、バイブレータ15の回転軸17を正方向に回転させる制御を行う。
なお、筐体2内部やアプリケーション用CPU13の温度が所定温度以上であることを温度センサ59が検出しても、無線通信部47に着信やデータ受信が発生した場合には、制御部45は、バイブレータ15の回転軸17を正方向に回転させる制御を優先して行う。
【0024】
以上のように構成された携帯電話機1において、バイブレータ15の動作について説明する。
例えば、携帯電話機1において、ゲームソフト等のアプリケーションソフトが使用されると、アプリケーション用CPU13から熱が発生する。そして、アプリケーション用CPU13の温度が所定温度以上の高温になったことを、温度センサ59が検出した際には、制御部45が、バイブレータ15の回転軸17及び風車部材23を負方向に回転させる。この際には、クラッチ手段27が回転軸17の回転を錘21に伝達しないため、錘21は回転しない。
風車部材23が負方向に回転する際には、羽根部41から回転軸線L1と直交する方向の風が発生し、アプリケーション用CPU13に向けて吹き付けられ、これによりアプリケーション用CPU13が冷却されることになる。また、この際に錘21は回転しないため、風車部材23を振動させることなく回転させて、風車部材23から安定した風を発生させることができる。
【0025】
なお、このアプリケーション用CPU13をさらに効率よく冷却するためには、例えば、風車部材23と共にアプリケーション用CPU13を挟み込む位置に、筐体2の内部から外方に貫通する開口部(不図示)を形成しておくことが好ましい。この場合には、風車部材23から発生した風がアプリケーション用CPU13の近傍を通過した後に、筐体2の開口部を通じて外方に吹き出されるため、アプリケーション用CPU13から発生した熱を筐体2の外方に効率よく逃がすことができる。
【0026】
また、この携帯電話機1において、無線通信部47に通話・メールの着信やデータ受信が発生したり、アラーム等の各種情報の報知等が発生した際には、制御部45がバイブレータ15の回転軸17を正方向に回転させることにより、錘21が偏心回転する。そして、この錘21の偏心回転によってバイブレータ15が回転軸線L1に直交する方向に振動し、この振動が筐体2に伝達される。これにより、筐体2が振動し、携帯電話機1の使用者は、この振動に基づいて着信、データ受信やアラーム等の各種情報の報知があったことに気づくことができる。
【0027】
なお、回転軸17が正方向に回転した場合には、風車部材23も回転するため、前述と同様に、アプリケーション用CPU13に向けて吹き付ける風が発生する。ただし、この場合には、風車部材23が振動しながら回転するため、回転軸17が負方向に回転した場合風と比較して、風車部材23から発生する風は安定しない。
さらに、制御部45が、温度センサ59の検出結果に基づいてバイブレータ15の回転軸17を負方向に回転させている状態において、無線通信部47に着信やデータ受信が発生した場合には、制御部45が回転軸17の回転方向を負方向から正方向に変えて、筐体2を振動させる。
【0028】
上記のように、このバイブレータ15及び携帯電話機1によれば、回転軸17を有するモータ19は、錘21を回転させて筐体2を振動させる機能、及び、風車部材23を回転させて風を発生させる機能を兼用して構成するため、別途風車部材23を回転させる駆動手段が不要となる。したがって、携帯電話機1の小型軽量化を図ることができる。
また、回転軸17を負方向に回転させることにより、風車部材23からアプリケーション用CPU13に向かう安定した風を発生させることができるため、ゲームソフト等のアプリケーションソフトを使用することでアプリケーション用CPU13から大量の熱が発生しても、アプリケーション用CPU13を効率よく冷却することができると共に、筐体2内部の加熱を抑えることができる。
【0029】
さらに、回転軸17を負方向に回転させる際には風車部材23のみが回転するため、小さい力で回転軸17を回転させることができ、回転軸17の回転駆動に要するバッテリーの消費電力を低く抑えることができる。
また、回転軸17及び風車部材23の負方向への回転は、温度センサ59の検出結果に基づく制御部45の制御によって行われる。すなわち、アプリケーション用CPU13の温度が所定温度以上となったときにのみに、回転軸17及び風車部材23が負方向に回転するため、回転軸17の回転に使用されるバッテリーの消費電力をさらに低く抑えることができる。
【0030】
さらに、風車部材23に設けられた平板状の羽根部41は、その表面41aが回転軸線L1に沿うように配されているため、羽根部41から回転軸線L1と直交する方向の風を発生させることができる。また、風車部材23を回転軸17と共に正方向及び負方向のいずれの方向に回転させても、羽根部41から同じ風向きの風が発生する。すなわち、上記羽根部41によって風車部材23から発生する風向きが決められるため、アプリケーション用CPU13に対するバイブレータ15の位置決めを容易に行うこともできる。
また、無線通信部47に着信やデータ受信が発生したり、アラーム等の各種情報の報知が発生した際には、制御部45が回転軸17を正方向に回転させる制御を行うことで、筐体2を振動させることができるため、着信やデータ受信等の情報報知があったことを携帯電話機1の使用者に確実に知らせることができる。
【0031】
さらに、錘クラッチ手段27は、回転軸17に固定された爪部材29と錘21に形成された係合溝33とから構成されており、回転軸17を正方向に回転させた際には、爪部材29の付勢部37が錘21の係合溝33に係合して、開口部31の内面に対する付勢部37の摺動が規制されるため、錘21を確実に回転軸17と共に回転させることができる。また、回転軸17を負方向に回転させた際には、付勢部37が開口部31の内面に対して摺動して係合溝33には係合しないため、錘21が回転軸17と共に回転することを確実に防止できる。
【0032】
なお、上記の実施形態において、羽根部41は、略板状に形成されるとしたが、これに限ることはなく、少なくとも風車部材23の重心が回転軸線L1上に位置するように形成されていればよい。すなわち、例えば、図6に示すように、円板部39の表面39aの中心から同表面39aの周縁まで円板部39の半径方向に延びる複数の板状部材61(図示例では4つ)により羽根部63を構成してもよい。この構成の場合には、複数の板状部材61を、同一の形状に形成すると共に円板部39の周方向に等間隔(図示例では90度)で配することにより、羽根部63の重心を回転軸線L1上に位置させることができる。
【0033】
また、風車部材23は、1枚の円板部39及び羽根部41,63により構成されるとしたが、例えば、図7に示すように、羽根部63を2枚の円板部39,65により挟み込んで構成されるとしてもよい。すなわち、この風車部材67は、隙間を介して回転軸線L1方向に並べて配置された2つの円板部39,65の隙間に羽根部63を配した構成となっている。この構成の場合には、羽根部63から発生する風の方向が、相互に対向する2つの円板部39,65の表面39a,65aにより、回転軸線L1の直交方向のみに規制されるため、風車部材23から発生して回転軸線L1の直交方向に向かう風の風量を大きくすることができる。
なお、上述した風車部材23,67は、円板部39,65を備えるとしたが、これに限ることはなく、例えば、回転軸17に固定される羽根部41,63のみから構成するとしても構わない。
【0034】
また、風車部材23,67は、モータ本体25の外側に錘21を配したバイブレータ15に搭載されることに限らず、例えば、図8に示すように、錘をモータ本体69の内部に配した所謂コイン型のバイブレータ(振動発生装置)71に搭載されるとしてもよい。なお、この構成の場合でも、錘は、上記実施形態と同様に、錘クラッチ手段を介して図示しない回転軸に取り付けられている。
【0035】
さらに、風車部材23,67は、回転軸17に一体的に固定されるとしたが、これに限ることはなく、例えば、錘21と回転軸17との連結に使用した錘クラッチ手段27と同様の構成を有する風車クラッチ手段を介して、回転軸17に取り付けられるとしてもよい。この風車クラッチ手段では、回転軸17を負方向に回転させた際に、風車部材23に回転軸17の回転が伝達され、回転軸17を正方向に回転させた際に、風車部材23に回転軸17の回転が伝達されないように構成する。
この風車クラッチ手段を設けた場合には、筐体2を振動させる際には錘21のみが回転軸17と共に回転し、筐体2内部の放熱を行う際には風車部材23のみが回転軸17と共に回転するため、回転軸17の回転方向にかかわらず、小さな駆動力で回転軸17を回転させることができる。すなわち、駆動力の小さい小型のモータからなるバイブレータを筐体2内部に配することができるため、携帯電話機1の小型軽量化をさらに図ることができる。
【0036】
また、風車部材23,67は、これを回転させた際に風車部材23,67から離れる方向の風が発生するように構成されるとしたが、これに限ることはなく、例えば、風車部材23,67に向かう風を発生するように構成しても構わない。したがって、風車部材23,67は、例えば、その回転に基づいて筐体2の外方から内部への吸気が行われるように構成されるとしてもよい。
さらに、上記実施形態においては、アプリケーション用CPU13の冷却について説明したが、これに限ることはなく、少なくとも携帯電話機1の内部に配され、熱を発生する各種電子部品を冷却すればよい。すなわち、各種電子部品としては、例えば、バッテリーの充電ICであってもよい。この充電ICは、アプリケーション用CPU13の場合と同様に、携帯電話機1の使用状況に応じて大きな熱を発生するが、これを冷却することにより筐体2内部の加熱を特に抑えることができる。
【0037】
また、各種電子部品としては、例えば、送信電波を発生する無線通信部47や高周波回路や、音声信号等のベースバンド信号を発生するベースバンド部であっても構わない。これらベースバンド部や無線通信部47、高周波回路を冷却した場合には、筐体2内部の加熱を抑制できると共に、ベースバンド部や無線通信部47、高周波回路から安定したベースバンド信号や送信電波を出力することができる。
さらに、錘クラッチ手段27は、回転軸17に固定された爪部材29と錘21に形成された係合溝33とから構成されるとしたが、これに限ることはなく、少なくとも回転軸17の正方向の回転時のみに、回転軸17の回転を錘21に伝達させるように構成されていればよい。
【0038】
制御部45は、例えば、無線通信部47の着信やデータ受信時に、バイブレータ15の回転軸17を正方向に回転させて筐体2を振動させるとしたが、これに限ることはなく、少なくとも筐体2を振動させる必要がある場合に、回転軸17を正方向に回転させて筐体2を振動させればよい。すなわち、例えば、ゲーム機能等のアプリケーションソフトを使用して、ゲーム内容等のアプリケーションの内容に連動するように、制御部45が回転軸17を正方向に回転させて筐体2を振動させるとしてもよい。
【0039】
さらに、本実施形態においては、1つの筐体2からなる携帯電話機1について述べたが、筐体内部に少なくとも熱を発生する電子部品と、風車部材を備えたバイブレータとを設けた携帯電子機器であればよい。したがって、本実施形態の構成を、例えば、相互に開閉可能な2つの筐体からなる携帯電話機に適用してもよいし、PDAやデジタルカメラ、ノートパソコンに適用するとしても構わない。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯電話機を示す斜視図である。
【図2】図1の携帯電話機において、筐体内部におけるバイブレータ及びアプリケーション用CPUの配置を示す拡大断面図である。
【図3】図1の携帯電話機に搭載されるバイブレータを示す拡大斜視図である。
【図4】図1の携帯電話機に搭載されるバイブレータのクラッチ手段を示す拡大正面図である。
【図5】図1の携帯電話機の回路構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るバイブレータを示す拡大斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るバイブレータを示す拡大斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るバイブレータを示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 携帯電話機(携帯電子機器)
2 筐体
13 アプリケーション用CPU(アプリケーション制御部)
15,71 バイブレータ(振動発生装置)
17 回転軸
19 モータ
21 錘
23,67 風車部材
27 クラッチ手段
29 爪部材(付勢部材)
31 開口部
33 係合溝(係合部)
41,63 羽根部
41a 表面(平坦面)
45 制御部
47 無線通信部
59 温度センサ(温度検出部)
L1 回転軸線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を中心に正方向及び負方向に回転可能な回転軸を有するモータと、
前記回転軸に錘クラッチ手段を介して偏心状態に取り付けられた錘と、
前記回転軸に取り付けられた風車部材と、を備え、
前記錘クラッチ手段は、前記回転軸の正方向の回転時のみに、前記回転軸の回転を前記錘に伝達させるように構成されることを特徴とする振動発生装置。
【請求項2】
前記錘は、前記回転軸を前記回転軸線方向に挿入させる開口部を有し、
前記錘クラッチ手段は、前記回転軸に取り付けられると共に前記開口部の内面に当接するように付勢される付勢部材と、前記開口部の内面に形成され、前記回転軸の正方向への回転時のみに前記付勢部材に係合して前記開口部の内面に対する前記付勢部材の摺動を規制する係合部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記風車部材は、前記回転軸の負方向の回転時のみに、前記回転軸の回転を前記風車部材に伝達させる風車クラッチ手段を介して、前記回転軸に取り付けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記風車部材は、前記回転軸線に沿う平坦面を有する略板状の羽根部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の振動発生装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の振動発生装置と、
前記振動発生装置を内部に固定する筐体と、
前記回転軸の回転方向を制御する制御部と、を備えることを特徴とする携帯電子機器。
【請求項6】
前記制御部は、前記筐体を振動させる必要がある場合に、前記回転軸を正方向に回転させるように制御することを特徴とする請求項5に記載の携帯電子機器。
【請求項7】
通信を行う通信部を備え、
前記制御部は、前記通信部による着信あるいはデータ受信が生じると、前記回転軸を正方向に回転させるように制御することを特徴とする請求項5に記載の携帯電子機器。
【請求項8】
前記筐体の内部の温度を検知する温度検出部を備え、
前記制御部は、前記温度検出部の検出結果に基づいて、前記回転軸を負方向に回転させるように制御することを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の携帯電子機器。
【請求項9】
前記筐体の内部には、前記風車部材の送風方向に隣接して熱を発生する電子部品が配されることを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の携帯電子機器。
【請求項10】
前記電子部品は、高周波回路、無線通信部、ベースバンド部、アプリケーション制御部、充電ICの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項9に記載の携帯電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−280104(P2006−280104A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95869(P2005−95869)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】