説明

振動発電デバイス

【課題】発電効率の高い振動発電デバイスを提供する。
【解決手段】振動発電デバイス110は、荷重によって弾性変形する弾性シート111と、弾性シート111の表面に設置される圧電フィルム112と、を備えている。圧電フィルム112は、圧電フィルム112の面が弾性シート111の膨張或いは収縮する方向を向いて配置されている。弾性シート111は荷重を受けて荷重方向に対して垂直方向に弾性変形し、弾性シート111の膨張或いは収縮によって、圧電フィルム112が引張力又は圧縮力を受け歪み発電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動発電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や工作機械等が発生させる振動エネルギーを効率よく回収する技術が望まれている。特許文献1には、容器内に板状の圧電素子と球状の衝突部材を格納し、容器に加えられた振動によって衝突部材を圧電素子に衝突させて発電する振動型発電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−209980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電素子から多くの電力を得るためには、一度に発電素子の多くの面積を歪ませる必要がある。しかしながら、特許文献1に示す発電装置は、衝突部材を衝突させることによって圧電素子を歪ませているため、歪みが発電素子の一部の面積に集中する。そのため、特許文献1のような発電装置では、発電素子の多くの面積を有効利用できず、効率よく発電できないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、発電効率の高い振動発電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の振動発電デバイスは、
荷重よって弾性変形する弾性体と、
前記弾性体に設置される圧電フィルムと、を備え、
前記圧電フィルムは、前記圧電フィルムの面が前記弾性体の膨張或いは収縮する方向を向いて配置され、
前記弾性体は荷重を受けて荷重方向に対して垂直方向に弾性変形し、前記弾性体の膨張或いは収縮によって、前記圧電フィルムが引張力又は圧縮力を受け歪み発電する、
ことを特徴とする。
【0007】
前記圧電フィルムは前記弾性体を取り囲んで設置されていてもよい。
【0008】
前記圧電フィルムは前記弾性体に取り囲まれて配置されていてもよい。
【0009】
前記弾性体はシート状の弾性シートであり、
前記圧電フィルムが前記弾性シートの表面に設置され、
前記弾性シート及び前記圧電フィルムが渦巻き状に巻回されていてもよい。
【0010】
複数の前記圧電フィルムが荷重方向を軸に周回し離間して配置されていてもよい。
【0011】
前記圧電フィルムの荷重方向の幅が前記弾性体の荷重方向の幅よりも短くてもよい。
【0012】
前記圧電フィルムの荷重方向のそれぞれの端部が、前記弾性体の荷重方向のそれぞれの端部から離間していてもよい。
【0013】
前記弾性体の荷重方向の少なくとも一方の端部に所定重量の固有振動数変更部材が直接的或いは間接的に設置されていてもよい。
【0014】
前記弾性体の荷重方向の端部の少なくとも一方に前記端部の変形を抑制する変形抑制部材が直接的或いは間接的に設置されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
発電効率の高い振動発電デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1の振動発電装置の斜視図である。
【図2】振動発電デバイスの設置例を示す図である。
【図3】振動発電デバイスに使用する弾性シートを説明するための図であり、(A)は弾性シートの断面図、(B)弾性シートの平面図である。
【図4】実施形態1の振動発電デバイスを説明するための図であり、(A)は振動発電デバイスの斜視図、(B)は振動発電デバイスの側面図である。
【図5】実施形態1の振動発電デバイスが弾性変形する様子を説明するための図であり、(A)は圧縮荷重を負荷したときの振動発電デバイスを示す図、(B)は荷重を除去したときの振動発電デバイスを示す図、(C)は引張荷重を負荷したときの振動発電デバイスを示す図である。
【図6】圧電フィルムの分極特性を説明する図であり、(A)は圧電フィルムが伸張したときの分極特性を示す図、(B)は圧電フィルムが収縮したときの分極特性を示す図である。
【図7】蓄電装置の構成を説明するための図である。
【図8】実施形態1の振動発電デバイスの変形例を説明するための図であり、(A)は弾性シートに圧電フィルムを複数設置した様子を示す図、(B)は圧電フィルムが弾性シートの伸張を抑制する様子を示す図、(C)は圧電フィルムを複数設置した振動発電デバイスを示す図である。
【図9】実施形態1の振動発電デバイスに付加物を設置した様子を示す図であり、(A)は振動発電デバイスの一方の底面に付加物として固有振動数調整部材を設置した様子を示す図、(B)は振動発電デバイスの両方の底面に固有振動数調整部材を設置した様子を示す図、(C)は付加物として設置した変形抑制部材が振動発電デバイスの底面の変形を抑制する様子を示す図である。
【図10】振動発電デバイスの側面から荷重を負荷する様子を示す図である。
【図11】実施形態2の振動発電装置の斜視図である。
【図12】実施形態2の振動発電デバイスを説明するための図であり、(A)は振動発電デバイスの斜視図、(B)は振動発電デバイスの側面図である。
【図13】実施形態2の振動発電デバイスが弾性変形する様子を説明するための図であり、(A)は荷重を負荷したときの振動発電デバイスを示す図、(B)は荷重を除去したときの振動発電デバイスを示す図である。
【図14】圧電フィルムを複数設置した振動発電デバイスを示す図である。
【図15】実施形態2の振動発電デバイスに付加物を設置した様子を示す図であり、(A)は振動発電デバイスの一方の底面に付加物として固有振動数調整部材を設置した様子を示す図、(B)は振動発電デバイスの両方の底面に固有振動数調整部材を設置した様子を示す図、(C)は付加物として設置した変形抑制部材が振動発電デバイスの底面の変形を抑制する様子を示す図である。
【図16】実施形態2の振動発電デバイスの変形例を説明するための図であり、(A)は弾性体の形状を四角柱にした図、(B)は弾性体の形状を六角柱にした図である。
【図17】実施形態3の振動発電装置の斜視図である。
【図18】実施形態3の振動発電デバイスを説明するための図であり、(A)は振動発電デバイスの斜視図、(B)は振動発電デバイスを底面から見た図である。
【図19】実施形態3の振動発電デバイスが弾性変形する様子を説明するための図であり、(A)は荷重を負荷したときの振動発電デバイスを側面から見た図、(B)は荷重を負荷したときの振動発電デバイスを底面から見た図である。
【図20】実施形態3の振動発電デバイスの変形例を説明するための図であり、(A)は底面の形状を逆円錐状にした振動発電デバイスの断面図、(B)はその振動発電デバイスに荷重を負荷した様子を示す断面図である。
【図21】振動発電デバイスの設置例を示す図であり、(A)は防波堤に振動発電デバイスを設置した様子を示す図、(B)はエンジンまたは工作機械のマウント部に振動発電デバイスを設置した様子を示す図、(C)はサスペンションの支持部に振動発電デバイスを設置した様子を示す図である。
【図22】実験で使用した振動発電デバイスの構成を説明するための図であり、(A)はPVDFを設置した弾性シートの平面図、(B)はPVDFを設置した弾性シートの断面図、(C)は振動発電デバイスの斜視図である。
【図23】振動試験機に振動発電デバイスをセットした様子を示す図である。
【図24】振動試験機の振幅特性を示す図である。
【図25】各振動発電デバイスの出力電力を比較した図である。
【図26】各振動発電デバイスの単位振幅あたりの出力電力を比較した図である。
【図27】各振動発電デバイスの単位振幅・単位面積あたりの出力電力を比較した図である。
【図28】振動試験機に振動発電デバイスをセットした様子を示す図であり、(A)は振動発電デバイスを縦置きにしてセットした様子を示す図、(B)は各振動発電デバイスの配置を示す図である。
【図29】各振動発電デバイスの性能を比較した図であり、(A)は各振動発電デバイスの出力電力を比較した図、(B)は各振動発電デバイスの単位振幅あたりの出力電力を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態に係る振動発電デバイスについて、以下、蓄電装置と接続した振動発電装置を例に取り、図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施形態1)
本発明の実施形態にかかる振動発電装置100は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換し蓄電する装置である。振動発電装置100は、図1に示すように、振動発電デバイス110と、蓄電装置120とから構成される。
【0019】
振動発電デバイス110は、例えば図2に示すように、エアコンの室外機210と室外機210を支える架台220との間に設置され、室外機210から供給される振動で発電するデバイスである。
【0020】
振動発電デバイス110は、図3(A)に示すように、弾性シート111と、圧電フィルム112と、配線113aと、配線113bとから構成される。振動発電デバイス110は、図3(B)に示すように、表面に圧電フィルム112が設置された弾性シート111が、図4(A)に示すように、渦巻状に巻回された略円柱形状の構造体である。なお、以下の説明では、図4(A)及び(B)に示すように、振動発電デバイス110の側面を周回する方向を「巻回し方向」、円柱状の振動発電デバイス110の中心軸方向を「軸方向」、中心軸から側面に向かう方向を「半径方向」、軸方向の両方の端部をそれぞれ「底面」と呼ぶ。
【0021】
弾性シート111は、弾性素材から構成される長方形をしたシート状の弾性体である。ここで弾性素材とは、荷重を加えると例えば図5(A)に示すように変形するが、荷重を取り除くと例えば図5(B)に示すように元の形状に戻る性質の素材、例えば、シリコン、ゴム、スポンジ等のことをいう。なお、「荷重」には図5(A)に示すような圧縮荷重のみならず、図5(C)に示すような引張荷重も含まれる。弾性シート111の片面には、図3(A)及び(B)に示すように、圧電フィルム112が設置されている。弾性シート111は、図4(A)に示すように、圧電フィルム112とともに渦巻状に巻回されている。
【0022】
圧電フィルム112は、PVDF(PolyVinylidene DiFluoride:ポリフッ化ビニリデン)などの圧電材料によって構成される圧電シートの両面に電極膜を形成したフィルム状の圧電素子から構成される。圧電フィルム112は長方形をしており、長手方向を巻回し方向に向けて弾性シート111の表面に設置されている。圧電フィルム112は、伸張したとき、図6(A)に示すように、一方の面の電位が高くなり(例えば、図中上面が+極、下面が−極となり)、収縮したとき、図6(B)に示すように、他方の面の電位が高くなる(例えば、図中上面が−極、下面が+極となる)分極特性を有している。
【0023】
圧電フィルム112の両面には、図3(A)に示すように、それぞれ外側電極112aと内側電極112bとが形成されている。外側電極112aと内側電極112bには、それぞれ配線113aと配線113bとが接続されている。分極によって発生した電荷は、配線113aおよび配線113bを通って蓄電装置120に出力される。
【0024】
蓄電装置120は、振動発電デバイス110が生成した電荷を蓄えるための装置であり、図7に示すように、整流回路121と、蓄電媒体122とから構成される。蓄電装置120は、複数の圧電フィルム112からの配線が接続可能になっている。
【0025】
整流回路121は、ダイオードブリッジ回路等の整流回路から構成される。整流回路121は、一対の入力端子を有しており、その入力端子は、それぞれ、配線113aと配線113bに接続されている。また、整流回路121は、正極端子、負極端子から構成される1対の出力端子を有しており、正極端子は蓄電媒体122の正極端子に、負極端子は蓄電媒体122の負極端子に接続されている。
【0026】
蓄電媒体122は、大容量コンデンサや二次電池等から構成され、整流回路121により整流された電流を蓄える。
【0027】
次に、このような構成を有する振動発電装置100の発電動作について説明する。
【0028】
振動発電デバイス110は、一方の底面が室外機210に対向し、他方の底面が架台220に対向して、室外機210と架台220との間に挟み込まれるように設置されている。エアコンが動作を開始すると、室外機210はファンの回転で振動し、足元にある振動発電デバイス110に対し振動を伝達する。
【0029】
振動は荷重の負荷と除去の繰り返しと考えられる。すなわち、室外機210は、振動発電デバイス110に対して、図5(A)に示すような荷重の負荷と、図5(B)に示すような荷重の除去とを一定周期で繰り返していると考えられる。弾性シート111は、室外機210から荷重が負荷されると、両方の底面が押圧されて圧縮されるので、図5(A)に示すように、荷重が負荷された方向(以下、「荷重方向」という。)と直角をなす方向に放射状に膨張する。換言すれば、弾性シート111は荷重方向に対して垂直方向に放射状に変形する。そうすると、圧電フィルム112は面が弾性シート111の膨張する方向を向いて設置されているので、圧電フィルム112の全面が弾性シート111の膨張により引張力を受け伸張される。このため、圧電フィルム112は、図6(A)に示すように、長手方向(巻回し方向)に伸張し、両面に大きな電荷を発生させる。
【0030】
圧電フィルム112に発生した電荷は、配線113aおよび配線113bを通って図7に示す蓄電装置120に伝達される。蓄電装置120に伝達された電荷は整流回路121によって一定方向の電流に変換され、蓄電媒体122に蓄積される。
【0031】
振動発電デバイス110は荷重が除去されると元の形状に戻る。そして、再び室外機210から荷重が負荷されると、弾性シート111とともに圧電フィルム112を伸張させて両面に電荷を発生させる。発生した電荷は、配線113a、配線113b、及び整流回路121を通って蓄電媒体122に蓄積される。
【0032】
本実施形態によれば、荷重の負荷によって振動発電デバイス110が半径方向に膨張して弾性シート111が巻回し方向に伸張し、弾性シート111に設置された圧電フィルム112全体を伸張させることができる。そのため、圧電フィルムの面積を有効に利用できなかった従来の振動発電デバイスと比べ、極めて効率よく発電できる。
【0033】
また、振動発電デバイス110は弾性素材から構成される弾性シート111を備えているため、防振機能も有する。したがって、振動発電デバイス110は防振デバイスとしても利用可能である。例えば、自動車のエンジンやモータのマウント部等に設置することによって、エンジンやモータ等の振動によって発電するとともに、振動が自動車のフレーム等へ伝達することを抑制できる。
【0034】
また、振動発電デバイス110は、長尺な弾性シート111が渦巻状に巻回された形態であるため、圧電フィルム112の設置面となる弾性シート111の表面積は極めて大きくなっている。そのため、1個の振動発電デバイス110に、より大きな面積の圧電フィルム112を設置することが可能となる。その結果、振動発電デバイス110は1個のデバイスでより多くの電力を発電することができる。
【0035】
また、弾性シート111と圧電フィルム112とが滑ることがないよう、圧電フィルム112は弾性シート111に接着材等で接着されていることが好ましい。弾性シート111の引張力が効率的に圧電フィルム112に伝わり、圧電フィルム112が歪みやすくなる。
【0036】
なお、圧電フィルム112の設置箇所は弾性シート111の片面に限られない。圧電フィルム112は弾性シート111の両面に設置されていてもよい。振動発電デバイス110一個あたりの圧電フィルム112の面積がさらに大きくなるため、1個の振動発電デバイス110でさらに多くの電力を発電することができる。
【0037】
また、圧電フィルム112は、図8(A)に示すように、巻回し方向に沿って離間して複数設置されていてもよい。1枚の長い圧電フィルム112が弾性シート111に設置されている場合、荷重の負荷による弾性シート111の半径方向への広がりは、例えば図8(B)に示すように、圧電フィルム112によって抑制され得る。しかしながら、複数の圧電フィルム112が離間して設置されていると、弾性シート111の半径方向への広がりが、図8(C)に示すように抑制されにくくなる。その結果、弾性シート111は荷重の負荷で大きく変形できるので、それぞれの圧電フィルム112の歪みも大きくなり、より効率のよい発電が可能になる。
【0038】
また、振動発電デバイス110は、その一方または両方の底面に、例えば図9(A)及び(B)に示すように、平板状またはシート状をした、所定重量の固有振動数調整部材114を備えていてもよい。振動発電デバイス110が設置される振動発生源の振動数に応じて、重量が調整された固有振動数調整部材114が設置されることで、振動発電デバイス110の固有振動数と振動発生源の振動数とが近づき、振動発電デバイス110は振動により敏感に反応するようになる。その結果、振動発電デバイス110は小さな振動でも大きく変形するようになって、より効率のよい発電が可能になる。
【0039】
また、圧電フィルム112の軸方向の幅w2は弾性シート111の軸方向の幅w1よりも短く、そして、圧電フィルム112の軸方向の両端部は弾性シート111の軸方向の両端部よりも離間していることが好ましい。この場合、一方の圧電フィルム112の端部と弾性シート111の端部との距離d1と、他方の圧電フィルム112の端部と弾性シート111の端部との距離d2が実質的に等しいことが好ましい。弾性シート111は巻回されて略円柱形状であり、一般に、円柱状の弾性体の両底面から押圧力が加わった際、図9(C)に示すように、両底面の中心付近の変形が最大となる。上記の如く圧電フィルム112が配置されていれば、弾性シート111の最も変形量の大きい箇所に圧電フィルム112が位置するので、圧電フィルム112の歪みが大きく、より効率的な発電が可能になる。
【0040】
また、振動発電デバイス110は、一方の底面或いは両方の底面に、底面の変形を抑制する変形抑制部材115を備えていてもよい。振動発電デバイス110底面の変形が抑制されると、弾性シート111は両底面の中心付近が変形しやすい。変形抑制部材115は、それ自体が変形しないよう、また、振動供給源から弾性シート111への振動伝達を損なわないよう金属や硬質プラスチック等、硬質の素材から構成されていることが好ましい。また、変形抑制部材115は弾性シート111の底面に接着材等、種々の接着手段で接着されていることが好ましい。なお、変形抑制部材115は、上述の固有振動数調整部材114と同一部材であり、振動数調整及び変形抑制の二つの機能を一つの部材が果たす形態であってもよい。
【0041】
また、振動発電デバイス110への荷重が加えられる方向は軸方向に限られない。例えば、図10に示すように、振動発電デバイス110の側面から荷重が負荷されてもよい。このように用いても、弾性シート111の変形で圧電フィルム112が歪み、発電が可能である。
【0042】
(実施形態2)
弾性体の形状は渦巻状に限られず、例えば図11に示すような柱体であってもよい。以下、弾性体に柱体を使用した振動発電装置100について説明する。
【0043】
振動発電装置100は、振動発電デバイス110と、蓄電装置120とから構成される。振動発電デバイス110は、図12に示すように、圧電フィルム112と、配線113aと、配線113bと、柱体116とから構成される。
【0044】
柱体116は、弾性素材から構成される弾性体である。柱体116は軸方向に端部となる2つの底面を有している。柱体116の側面には、柱体116を取り囲むように、周方向に沿って圧電フィルム112が設置されている。なお、圧電フィルム112の軸方向の幅は柱体116の軸方向の幅よりも短く、そして、圧電フィルム112の軸方向の両端部は柱体116の軸方向の両端部よりも離間していることが好ましい。この場合、一方の圧電フィルム112の端部と柱体116の端部との距離と、他方の圧電フィルム112の端部と弾性シート111の端部との距離の差が実質的に等しいことが好ましい。
【0045】
なお、圧電フィルム112、配線113a、配線113b、及び蓄電装置120の構成については実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0046】
次に、このような構成を有する振動発電装置100の発電動作について説明する。
振動発電デバイス110は、実施形態1と同様に、エアコンの室外機210と架台220との間に設置されている。エアコンが動作を開始すると、室外機210はファンを回転させて柱体116に荷重を負荷する。柱体116は荷重が負荷されると、図13(A)に示すように、半径方向に広がる。そうすると、圧電フィルム112は引張力を受けて伸張し両面に大きな電荷を発生させる。圧電フィルム112に発生した電荷は、配線113aおよび配線113bを通って蓄電装置120に伝達される。蓄電装置120に伝達された電荷は整流回路121によって一定方向の電流に変換され、蓄電媒体122に蓄積される。
【0047】
本実施形態によれば、振動発電デバイス110の全面を歪ませることができるため、従来の振動発電デバイスと比べ、効率よく発電できる。
【0048】
なお、圧電フィルム112は、図14に示すように、周方向に沿って離間して複数設置されていてもよい。振動発電デバイス110は、その一方または両方の底面に、例えば図15(A)及び(B)に示すように、振動発電デバイス110の固有振動数を調整する固有振動数調整部材114を備えていてもよい。また、振動発電デバイス110は、一方の底面或いは両方の底面に、例えば図15(C)に示すように、底面の変形を抑制する変形抑制部材115を備えていてもよい。なお、変形抑制部材115は、固有振動数調整部材114と同一部材であり、振動数調整及び変形抑制の二つの機能を一つの部材が果たす形態であってもよい。
【0049】
また、柱体116の形状は円柱に限られず、例えば、角柱(例えば、図16(A)や(B)に示すような四角柱や六角柱)であってもよいし、底面が楕円の楕円柱であってもよい。
【0050】
(実施形態3)
実施形態1や2では、弾性体の膨張による表面の伸張を利用して圧電フィルム112を歪ませたが、弾性体の膨張による表面の収縮を利用して圧電フィルム112を歪ませることも可能である。以下、弾性体表面の収縮を利用して圧電フィルム112を歪ませる振動発電装置100について説明する。
【0051】
振動発電装置100は、図17に示すように、振動発電デバイス110と、蓄電装置120とから構成される。振動発電デバイス110は、筒状体117と、2枚の圧電フィルム112と、配線113aと、配線113bとから構成される。
【0052】
筒状体117は、弾性素材から構成される弾性体である。筒状体117は、図18(A)に示すように、軸方向に端部となる2つの底面を有し、筒内部に内面を有する円筒体である。筒状体117の外側面には、図18(B)に示すように、円周方向に沿って圧電フィルム112が設置されている。また、筒状体117の内面には、圧電フィルム112が筒状体117に取り囲まれるように、円周方向に沿って圧電フィルム112が設置されている。なお、圧電フィルム112の軸方向の幅は筒状体117の軸方向の幅よりも短く、そして、圧電フィルム112の軸方向の両端部が、筒状体117の軸方向の両端部よりも離間していることが好ましい。この場合、一方の圧電フィルム112の端部と筒状体117の端部との距離と、他方の圧電フィルム112の端部と弾性シート111の端部との距離の差が実質的に等しいことが好ましい。
【0053】
なお、圧電フィルム112、配線113a、配線113b、及び蓄電装置120の構成については実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0054】
次に、このような構成を有する振動発電装置100の発電動作について説明する。
振動発電デバイス110は、実施形態1と同様に、エアコンの室外機210と架台220との間に設置されている。エアコンが動作すると、室外機210はファンを回転させて筒状体117に荷重を負荷する。筒状体117は荷重が負荷されると、図19(A)に示すように、荷重方向と垂直をなす半径方向に広がる。そうすると、筒状体117の外表面は伸張し、それによって圧電フィルム112は引張力を受けて伸張し、両面に大きな電荷を発生させる。一方、筒状体117は荷重が負荷されると、図19(B)に示すように、半径方向に中心軸に向かって膨張する。そうすると、筒状体117の内面は収縮し、それによって圧電フィルム112は圧縮力を受けて長手方向(巻回し方向)に収縮し、両面に大きな電荷を発生させる。圧電フィルム112に発生した電荷は、配線113aおよび配線113bを通って蓄電装置120に伝達される。蓄電装置120に伝達された電荷は整流回路121によって一定方向の電流に変換され、蓄電媒体122に蓄積される。
【0055】
本実施形態によれば、筒状体117の外側面の伸張のみならず、内面の変形をも利用して発電することができる。そのため、従来の振動発電デバイスと比べ、効率よく発電できる。
【0056】
なお、筒状体117は、例えば図20(A)に示すように、内面の軸方向の幅が外側面の軸方向の幅より短くなるように、底面の一方または両方が中心軸に向かって傾斜した逆円錐状をしていてもよい。先端が三角錐の硬質素材の加圧体230を使って、例えば図20(B)に示すように、筒状体117に軸方向に荷重を負荷する。このとき、加圧体230の表面と底面との摩擦係数が低くなるように、例えば、底面に潤滑油等を塗っておいてもよい。これにより、底面が三角錐の表面に沿って半径方向に滑り、その結果、内面が半径方向に移動して伸張する。その結果、外側面に設置した圧電フィルム112のみならず内面に設置した圧電フィルム112をも伸張させることができる。
【0057】
また、圧電フィルム112は、実施形態1や2と同様に、周方向に沿って離間して複数設置されていてもよい。振動発電デバイス110は、その一方または両方の底面に振動発電デバイス110の固有振動数を調整する所定重量の固有振動数調整部材114を備えていてもよい。また、振動発電デバイス110は、一方の底面或いは両方の底面に底面の変形を抑制する変形抑制部材115を備えていてもよい。変形抑制部材115は、固有振動数調整部材114と同一部材であり、振動数調整及び変形抑制の二つの機能を一つの部材が果たす形態であってもよい。また、筒状体117の形状は円筒に限られず、例えば、角筒(例えば、四角筒や六角筒等)や楕円筒であってもよい。
【0058】
なお、各実施形態の振動発電デバイス110の設置場所はエアコン室外機の足元に限られない。例えば、図21(A)に示すように、防波堤の側面に設置し、波による振動を電気エネルギーに変換してもよい。また、各実施形態の振動発電デバイス110は防振機能も有しているため、例えば図21(B)に示すように、エンジンや工作機械のマウント部等に設置して防振するとともに、エンジンや工作機械の振動を電気エネルギーに変換してもよい。また、図21(C)に示すように、サスペンションの支持部に設置し、サスペンションの振動を電気エネルギーに変換してもよい。
【0059】
また、各実施形態の軸方向の端部の形状は平面に限られない。設置箇所の形状、例えば、エンジン、工作機械、サスペンション等の設置箇所の形状に合わせ、例えば実施形態3の図20に示すように、種々の形状に変形することが可能である。
【0060】
また、圧電フィルム112を構成する圧電材料はPVDFに限られず、例えば、非常に薄いPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛等の薄膜化された圧電材料であってもよい。
【0061】
また、上述の実施形態では、弾性体に圧縮荷重を加えて弾性体を荷重方向に対して垂直方向に膨張させることによって、弾性体の表面を伸縮し、圧電フィルム112を歪ませたが、弾性体に引張荷重を加えて弾性体を荷重方向に対して収縮させることによって弾性体の表面を伸縮し、圧電フィルム112を歪ませてもよい。また、弾性体の内部に密閉空間を備え、その密閉空間に空気や水を送り込むことによって弾性体を膨張させて圧電フィルム112を歪ませてもよい。
【実施例1】
【0062】
振動発電デバイスを振動試験機で振動させて発電量を検証した。
【0063】
圧電フィルムのサイズが異なる6つの振動発電デバイス(サンプル1〜6)を作成した。各サンプルの圧電フィルムのサイズは表1の通りである。なお、弾性シートは弾性素材として天然スポンジゴムを使用した。サイズは図22(A)及び(B)に示すように、長さ1000mm、幅30mm、厚さ5mmである。また、弾性シートを巻回したときの振動発電デバイスの直径は図22(C)に示すように80mmである。
【0064】
【表1】

【0065】
まず、振動試験機の振動特性を調べるため、これら6つの振動発電デバイスを、図23に示すように振動試験機にセットし、振動試験機の台座を上下に振動させた。そして、レーザー変位計で台座の振幅を測定した。図24は、台座の振幅と振動の周波数との関係を示すグラフである。振動の周波数が上昇するにつれて、台座の振幅が小さくなっていることが分かる。
【0066】
次に、6つの振動発電デバイスの発電量を計測した。図25は、6つの振動発電デバイスの発電量をグラフにしたものである。また、図26は、台座の移動距離1mm(以下、「単位振幅」という。)あたりの振動発電デバイスの発電量をグラフにしたものである。また、図27は、単位振幅(1mm)・単位PVDF面積(1m)あたりの振動発電デバイスの発電量をグラフにしたものである。
【0067】
いずれのグラフもサンプル5の振動発電デバイスが最も高い発電量を示すことが分かった。このことから、条件に応じて適切な圧電フィルムのサイズがあることが分かった。
【実施例2】
【0068】
振動発電デバイスを、図28(A)に示すように、縦置きにし、振動試験機にセットした。そして振動試験機の台座を振動させて発電量を比較した。使用した振動発電デバイスは実施例1に示すサンプル2〜5の4つである。なお、実験に際して、図29(B)に示すように、4つのサンプルを一度に振動試験機にセットした。
【0069】
図29(A)は、これら4つの振動発電デバイスの発電量をグラフにしたものである。また、図29(B)は、単位振幅あたりの発電量をグラフにしたものである。
【0070】
振動発電デバイスを縦置きにしても発電できることが分かった。また、縦置きにした場合、実施例1のように横置きにした場合よりも高い発電量を示すことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
振動発電デバイスは弾性素材から構成されているため、エンジン、工作機械、モータ等、振動を発生させるさまざまな構造物の防振材として利用することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
100 振動発電装置
110 振動発電デバイス
111 弾性シート
112 圧電フィルム
112a 外側電極
112b 内側電極
113a、113b 配線
114 固有振動数調整部材
115 変形抑制部材
116 柱体
117 筒状体
120 蓄電装置
121 整流回路
122 蓄電媒体
210 室外機
220 架台
230 加圧体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重よって弾性変形する弾性体と、
前記弾性体に設置される圧電フィルムと、を備え、
前記圧電フィルムは、前記圧電フィルムの面が前記弾性体の膨張或いは収縮する方向を向いて配置され、
前記弾性体は荷重を受けて荷重方向に対して垂直方向に弾性変形し、前記弾性体の膨張或いは収縮によって、前記圧電フィルムが引張力又は圧縮力を受け歪み発電する、
ことを特徴とする振動発電デバイス。
【請求項2】
前記圧電フィルムは前記弾性体を取り囲んで設置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の振動発電デバイス。
【請求項3】
前記圧電フィルムは前記弾性体に取り囲まれて配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の振動発電デバイス。
【請求項4】
前記弾性体はシート状の弾性シートであり、
前記圧電フィルムが前記弾性シートの表面に設置され、
前記弾性シート及び前記圧電フィルムが渦巻き状に巻回されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の振動発電デバイス。
【請求項5】
複数の前記圧電フィルムが荷重方向を軸に周回し離間して配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の振動発電デバイス。
【請求項6】
前記圧電フィルムの荷重方向の幅が前記弾性体の荷重方向の幅よりも短い、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の振動発電デバイス。
【請求項7】
前記圧電フィルムの荷重方向のそれぞれの端部が、前記弾性体の荷重方向のそれぞれの端部から離間している、
ことを特徴とする請求項6に記載の振動発電デバイス。
【請求項8】
前記弾性体の荷重方向の少なくとも一方の端部に所定重量の固有振動数変更部材が直接的或いは間接的に設置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の振動発電デバイス。
【請求項9】
前記弾性体の荷重方向の端部の少なくとも一方に前記端部の変形を抑制する変形抑制部材が直接的或いは間接的に設置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の振動発電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図28】
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【図21】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図29】
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【公開番号】特開2013−99130(P2013−99130A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240206(P2011−240206)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)