振動装置
近づくことが難しい体腔、特に、鼻腔、又は、腸の内部の体組織の振動刺激のための装置が開示されている。この装置は、体の開口部を通じて、体腔へと導入することができる膨張可能な刺激手段を含んでいる。装置の膨張した状態において、刺激手段は、体腔内の体組織に隣接する。振動刺激を達成するために、刺激手段は、体腔内に1〜5000Hzの周波数の振動を生じさせる。また、患者の体腔、特に、鼻腔、又は、腸の内部の体組織の振動刺激のための方法が開示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内の、特に、鼻腔又は腸の体組織の振動刺激のための振動装置と方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者の体腔内で治療を行う、いくつかの公知の装置がある。鼻腔にて使用される装置は、例えば、鼻粘膜の充血解消を目指し、多くの場合、ある化学物質と一緒に使用される。例えば、手術中の、体腔内での出血を防止するために、様々な種類の詰め物が、一般的に使用される。体腔内で、例えば、耳の内で又は身体表面一面に、機械的な振動によって、組織に作用する装置も公知である。
【0003】
特許文献1には、例えば、呼吸器系機能を直接制御する目的で、耳内の前庭神経を機械的に刺激するための様々な技術が開示され、説明されている。例えば、隣接した組織に静圧を加える膨張性のバルーンによって、刺激を発生させることができる。圧力を変動させることにより、ある種の感覚を引き起こすことができる。さらに、ある周波数で振動している身体を含む神経を、機械的に刺激するための別の方法も開示され、説明されている。
【0004】
鼻腔及び他の体腔内の出血を膨張性のバルーンにより防止する装置は、従来から公知である。例えば、特許文献2や特許文献3に、出血を防止するための手術に関連して用いる膨張性の詰め物が開示されている。
【0005】
鼻腔内での治療に用いる装置の他の実施例は、例えば、鼻腔拡張器である。これらの装置は、鼻内部の通路を物理的に開いておくことにより、呼吸を容易にすることを意図したものであり、これらの装置は、ある点では、いびきの軽減を意図している。
【0006】
電磁波の照射による、鼻炎や鼻腔内の他の症状治療のための装置が、例えば、特許文献4及び特許文献5に開示されている。
【0007】
鼻腔内の粘膜腫大は、例えば、エタノール等の化学物質と一緒に使用される様々な装置によって、治療できる。しかし、鼻孔内の炎症の様な症状は、通常様々な医薬物質を用いて治療が行われる。
【0008】
鼻腔等の体腔における、慢性又は非慢性の炎症症状を患う患者は、多くの場合、例えば、コルチゾン等のコルチコステロイドを用いた治療により和らげられる。残念ながら、コルチゾン療法は、特に長期治療の場合は、いくつかの副作用を有する。良く知られた副作用は、一般に、例えば、身体中への体液の蓄積、高血圧、及び、新陳代謝の変化である。鼻炎は、鼻腔内治療による一般的な副作用である。
【0009】
慢性の鼻詰まりに苦しむ患者は、多くの場合、薬物中毒、薬物性鼻炎を発症し、この場合、鼻詰まりを防止するために、患者は、一日に一回又は数回、鼻内噴霧又は点鼻薬の治療をしなければならない。このための満足すべき治療形態と装置は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US2002/0072781A1
【特許文献2】WO9639218
【特許文献3】EP1626766
【特許文献4】EP0935980
【特許文献5】EP0825889
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、患者の中で近づくことが困難な体腔内の体組織の刺激のための振動装置を提供することである。別の目的は、振動によって、これらの組織表面一面を刺激する方法を提供することである。これらの目的は、添付の請求項の装置と方法によって、達成される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの態様によると、患者の体腔の、特に、鼻腔又は腸の体組織の刺激のための振動装置が提供されており:この装置は、
膨張可能な刺激手段;及び
刺激手段に振動を生じさせる振動手段を含んでおり;
振動装置は、刺激手段を、体の開口部を通じて体腔に導入することが可能になる第1の状態と、刺激手段が体腔内の組織に様な容積に、刺激手段が膨張している第2の状態に、配置することができる。
【0013】
例えば、鼻の場合のように、体腔がタイトな体腔の背部に隠されているなら、前記刺激手段は、振動装置の第1の状態にて、開口部、例えば、鼻孔を通じて、導入可能である。従って、刺激手段は可変容積を有し、これは装置が可変の大きさであることを意味し、これにより狭い腔への導入が容易になる。
【0014】
近づくことが困難な、鼻腔又は体腔において、体組織との良好な接触面積を備えるために、刺激手段は、装置の第2の状態において、組織のかなりの面積が同時に作用を受ける様な大きさを有する。刺激手段は組織表面に接し、刺激手段と周囲の体組織との間で、良好でタイトな接触が達成される。
【0015】
本発明の装置は、振動刺激による治療のために、例えば、神経機能の正常化のために、適切に使用できる。この装置により、近づくことが困難な体腔内の、大きな面積の組織に近づくことができる。振動刺激は、前記振動手段により達成され、これにより刺激手段に振動をもたらす。治療が、鼻腔又は体腔の大きさに影響を及ぼすならば、治療の過程において、刺激手段の容積を変える必要があり得る。
【0016】
装置が体腔に導入される前に、患者が装置を見ることができる場合には、装置が、その容積によって過度に恐ろしく見えないことも長所である。患者とは、人間又は動物を意味する。調子が良好である及び具合が悪い、双方の患者が、本発明の装置によって治療を受けることができる。調子が良好である患者の例は、身体的演技を前に、鼻の空気通路を広げたいと望む運動選手である。
【0017】
本発明の装置の前記振動手段により、刺激手段に、好ましくは1〜5000Hzの、より好ましくは10〜100Hzの、さらに好ましくは30〜70Hzの、最も好ましくは35〜60Hzの周波数の振動が生じる。鼻腔の治療のためには、刺激手段に、好ましくは30〜70Hzの周波数にて振動が生じる。他の体腔における組織表面の治療には、他の周波数間隔が適用される。
【0018】
刺激手段は、好ましくは、スムーズな外表面を有する、及び/又は、刺激手段の外表面は、体腔を通じての通過を容易にするために、潤滑剤を含んでいる。潤滑剤は、パラフィン溶液又は当業者には良く知られている他の潤滑剤である。
【0019】
本発明の一実施態様では、振動装置は、安定化部分を含み、この部分が、装置に形状と安定をもたらす。装置が、装置の第2の、膨張された状態に配置されていない時にでも、装置の形状はさまざまな程度に維持される。従って、安定化部分によって、体の開口部と体腔への刺激手段とを含む装置の導入と位置調整が、それぞれ、容易になる。
【0020】
本発明の別の実施態様において、振動装置は、刺激手段を膨張させるための膨張手段を含んでいる。膨張手段は、好ましくは、刺激手段に流体を供給するための、少なくとも、1つの導水管を含み、これにより前記膨張が達成される。振動手段は、好ましくは、前記流体に振動を与えるように配置されている。
【0021】
一つの例においては、第1の(即ち、本質的に膨張していない)状態において、刺激手段は膨張手段に収めることができる。治療に関連して、装置が体の開口部に導入された後にのみ、刺激手段は膨張手段から持ち出される。このように、振動装置の幅は最小にでき、これにより、タイトな通路を通って、体腔への導入が容易になる。装置の第1の状態においては、刺激手段は、好ましくは、膨張手段の導水管内に収めることができる。
【0022】
別の例では、装置の第1の状態において、刺激手段を膨張手段の周りに配置することができる。治療中、装置はこの状態で体腔内へ導入され、その後すぐに刺激手段は、刺激手段が体腔内部の適切な位置にある時、装置の第2の状態に移行する。上の場合のように、この方法において、装置の幅を最小にすることができ、これにより、タイトな通路を通って体腔内部への導入が容易になる。
【0023】
別の例では、刺激手段を、装置の第1の状態において、安定化部分の周りに配置することができる。
【0024】
本発明の一実施態様において、振動装置は、刺激手段をとり囲むように配置された交換可能な衛生的な保護カバーを含む。これにより、バクテリアの危険又は他の化学的若しくは生物学的危険に曝されること無しに、反復して使用できる装置が提供される。衛生的な保護カバーは、好ましくは、刺激手段をとり囲み、容積は刺激手段と同様に膨張する。
【0025】
本発明の別の態様は、
体の開口部を通じて体腔内へ刺激手段を導入することが可能である、膨張可能な刺激手段を含む振動装置を提供し、;
体の開口部を通じて体腔内へ刺激手段を導入し;
体腔内部の組織に刺激手段が隣接するように、振動装置の第2の状態に刺激手段を膨張し;そして
前記第2の状態において、刺激手段に振動を生じさせる、
工程を含む、患者の体腔内の、特に鼻腔又は腸内の体組織を刺激するための方法を提供する。
【0026】
本発明の方法の一実施態様において、振動装置は、好ましくは、導入する前に第1の状態に配置され、刺激手段は体の開口部を通じて体腔内へ導入できる。
【発明の効果】
【0027】
このように、本発明の装置と方法は、機械的振動によって、近づくことが困難である体腔内の広い面積の組織表面の神経末端や血管の、好ましくは、鼻腔内の神経末端の、しかもさらに深部の血管に対しても、刺激のために使用することができる。
【0028】
本発明の装置と方法は、患者の気導腔、例えば、腸や鼻、及び、流体を導く腔、例えば、血管、胆管、又は、尿管の、治療に使用することができる。
【0029】
本発明の方法による、風邪に関わる、例えば、鼻詰まりの治療によって、粘膜の充血解消がもたらされる。この方法によって、鼻詰まりからの主観的な安堵感が患者にもたらされる。効果は数時間維持され、リバウンド効果は起きない。こうしたリバウンド効果は、多くの、いわゆる、市販の風邪用点鼻薬や鼻腔用スプレーに生じる。
【0030】
本発明の方法による、患者体腔内の神経末端や血管の振動刺激は、いくつかの異なった症状に効果を及ぼす。鼻腔内の粘膜の振動刺激の場合、この方法は、鼻腔内の通路を拡げることにより、風邪、アレルギー性鼻炎、慢性及び非慢性の非アレルギー性鼻炎、薬物性鼻炎の患者や、上気道の通路が狭まった患者に、効果をもたらす。
【0031】
本発明の方法による体組織への振動刺激によって、炎症症状の場合、コルチゾン等のコルチコステロイドによる投薬の必要性の減少と同様に、例えば、嗅覚の機能障害のある患者の嗅覚の改善、ポリープ手術後の再発の減少、組織炎症の減少、いびきの場合の上気道における障害の緩和がもたらされる。
【0032】
本発明の方法による末端神経の振動刺激は、知覚神経の反応を、おそらく運動神経の応答をも、促進し、異常な知覚神経機能、例えば、神経学的多動性又は活動性低下を有する患者の神経機能を正常化する。
【0033】
本発明の方法による振動刺激は、例えば、耳鳴り症状、喘息、慢性声帯炎、好ましくは大腸における腸の炎症、潰瘍性大腸炎、クローン病、及び、尿道炎の治療に使用できる。
【0034】
本発明の方法による神経末端の振動刺激は、神経性疼痛の症状を緩和することもできる。鼻の神経痛の場合、疼痛の緩和が、本発明の方法により達成される。
【0035】
深部血管及び静脈の振動刺激は、血管収縮を実現でき、これにより、体組織の腫脹を軽減できる。
【0036】
本発明の装置は、血管又は体の開口部への、医薬品の局所的な投与にも使用することができる。装置は、薬剤、例えば、コルチゾンを用いた従来の治療を、例えば、補完することができる。
【0037】
本発明の前記態様の他の実施態様は、独立形式請求項から明らかである。
【0038】
以下の詳細な説明において、添付図面が参照され、この図面において、
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の振動装置の実施態様を概略的に示す。
【図2】鼻腔内の、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示す。
【図3a】第1の状態に配置された、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段が膨張手段の導水管に収められている。
【図3b】中間の状態に配置された、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段が部分的に膨張している。
【図3c】第2の状態に配置された、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段が本質的に膨張している。
【図4a】第1の状態に配置された、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段が膨張手段の周囲に配置されている。
【図4b】第2の状態に配置された、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段が膨張している。
【図5】安定化部分を含む、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、ここでは、安定化部分は刺激手段内部に配置されている。
【図6a】交換可能な衛生的な保護カバーを含む、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示す。
【図6b】本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、振動装置には、交換可能な衛生的な保護カバーが備えられている。
【図6c】本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、振動装置には、交換可能な衛生的な保護カバーが備えられている。
【図7】本発明の装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段は、多くのアームにより構成されている
【図8a】第1の状態に配置された、本発明の装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段は膨張手段に収められており、刺激手段が多くの弾力性のあるアームで構成されている。
【図8b】中間の状態に配置された、本発明の装置の実施態様を概略的に示しており、ここでは、刺激手段が部分的に膨張され、刺激手段が多くの弾力性のあるアームで構成されている。
【図8c】第2の状態に配置された、本発明の装置の実施態様を概略的に示しており、ここでは、刺激手段が膨張し、刺激手段が多くの、弾力性のあるアームで構成されている。
【図9】本発明の方法の実施態様の振動刺激の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の好ましい実施態様を、限定されない実施例として及び図面を参照して、ここに記述する。
【0041】
本発明の第1の態様によると、体腔内の体組織の神経末端及び血管を刺激するための振動装置1が達成される(図1)。この装置は、膨張可能な刺激手段2及び刺激手段に振動を生じさせる振動手段を含んでいる。体腔、例えば鼻腔へ、体の開口部を通じて刺激手段を導入するために、振動装置を第1の状態に配置することができ、ここで刺激手段を体の開口部、例えば鼻孔を通して導入することができる。振動装置1を同様に第2の状態に配置することができ、ここで刺激手段を体腔内で体組織と密接な接触をもたらす様な容積に、刺激手段2は膨張される(図2)。刺激手段の容積は、このように、振動刺激に先立って体組織との良好な接触が得られるように、体腔の大きさに合わせて調整可能である。良好な、及び/又は、密接な接触とは、第2の、少なくとも部分的に膨張した状態の、刺激手段の有効な外表面が体組織の本質的に表面に寄りかかっているような接触を意味する。刺激手段は、測定可能な、制御可能な低い圧力で体組織に隣接していることが好ましい。
【0042】
本発明の実施態様においては、刺激手段はスムーズな外表面を有する。例えば、刺激手段の外表面は、外表面が滑らかな、又は、体腔若しくは鼻腔内の体組織との接触時の摩擦を最小にする様な材質でできている。同様に、刺激手段の外表面は、体の開口部の通過を容易にするために潤滑剤を含むことができる。刺激手段には、例えば、パラフィン溶液などの潤滑剤を、例えば塗布することができる。
【0043】
本発明の実施態様においては、刺激手段は弾力性がある。刺激手段は、例えば、弾性材料でできている。刺激手段の大きさと容積は、その結果内部圧力により変えることができる。刺激手段の大きさと容積のこの変化は、例えば、刺激手段への流体の供給を制御することで達成される。導水管を通じて、刺激手段への流体供給により、刺激手段の膨張が達成され、刺激手段から流体を除去することにより、刺激手段の圧縮が達成される。
【0044】
本発明の実施態様においては、刺激手段は装置の第1の状態に圧縮できる。この場合、刺激手段は、常圧下で膨張状態にある。刺激手段は、例えば外部作用又は圧力により、体腔の外部に、装置の第1の状態へと移動させることができる。外部作用の目的は、例えば空気等の流体を刺激手段より取り除くことにより、刺激手段を圧縮することである。これにより、刺激手段は装置の第1の状態に対応した大きさと容積となり、刺激手段は体腔内へと導入が可能となる。刺激手段の膨張は、外部作用が停止した時、ある一時的な遅れをもって、すなわち、体腔内で起こることができる。体腔内にて、装置は第2の状態に移動させられ、腔内にて体組織とできる限り大きな接触面積をとるために、刺激手段を少なくとも部分的に膨張させる。圧縮可能な刺激手段は、弾性材料でできていることが好ましい。
【0045】
一実施態様においては、刺激手段は一定の内部圧力を有し、この圧力は、治療に関連して調整されない。刺激手段の大きさと容積は、この場合、粘膜の治療が行われる体腔への開口部を刺激手段が通過し得るものでなければならない。適した形状を有するならば、刺激手段は、振動によって粘膜内の神経末端及び血管を刺激するために、粘膜に対して十分大きな接触面積を取ることができる。一定の内部圧力を用いた刺激手段を含む装置の実施例が図7に示されている。
【0046】
本発明の装置の別の実施態様においては、刺激手段を体腔内へと導入することができる装置の第1の状態において、刺激手段の大きさが小さくなるように、刺激手段は非弾性材料でできている。装置の第2の状態において、組織表面に隣接するように刺激手段を膨張させる。
【0047】
同様に、刺激手段は部分的に弾性特性を有することができ、これにより、装置が第1の状態に戻る時に、刺激手段を小さくしたり及び折りたたんだりの両方ができる。一般的に、刺激手段は折りたたむことができる薄い材料でできている。
【0048】
本発明の装置の一実施態様においては、刺激手段が接触するいかなる体組織に、刺激手段が化学的に又は生物学的に影響しない様な材料でできていることが好ましい。
【0049】
別の実施態様においては、刺激手段が接触するいかなる体組織に、刺激手段が化学的に又は生物学的に影響しない様な材料でできている。
【0050】
あるいは、医療目的を達成するために、例えば炎症を減らすために、患者の体腔又は身体の他の部分において、局部的に、化学的又は生物学的な活性を有する物質を、刺激手段の表面に塗布することもできる。
【0051】
刺激手段は、例えばプラスティック材料又はゴム材料でできている。刺激手段は、好ましくはラテックスでできている。
【0052】
刺激手段を、体腔内部の刺激手段に収められた流体を、刺激手段が放出しない様な材料で作ることができる。
【0053】
別の場合には、周囲の体組織に化学薬品、又は、薬剤を投与するための投薬口を有するように、刺激手段を設計することができる。
【0054】
刺激手段は、刺激手段が流体に対して半透過性である様な材料で作ることができる。例えば、体腔内又は鼻腔内の刺激手段を摩擦なしで動かすのを容易にするために、及び/又は、振動治療の一部として組織への医学的な作用のために、治療中に刺激手段に収められた流体を、少なくとも、部分的に体腔内又は鼻腔内に放出させることができる。鼻の治療の場合、そのような流体は、例えば、生理食塩水でよい。
【0055】
化学的、生物学的又は医薬的物質に対して半透過性であり、治療を受けている組織にこれらの物質を送り込む刺激手段は、例えば血管、腸又は胆嚢管の治療に、例えば、好適なものであり得る。
【0056】
患者の体腔又は末梢に、局部的に化学的又は医薬的な効果を持つ薬剤を投薬するために、刺激手段の表面にそのような薬剤を塗被することができる。
【0057】
刺激手段の寸法は、治療される体腔の大きさと形状に合わせて適切に適合させられる。例えば、成人の鼻腔の粘膜治療においては、刺激手段の膨張の程度と鼻腔の大きさ次第で、鼻の奥部の刺激手段の長さがおよそ3mmからおよそ100mm、好ましくはおよそ40からおよそ60mmが、例えば、適している。鼾をかく患者の鼻腔の治療の場合、口蓋のずっと奥で刺激を与えるためには、刺激手段は、100mmより長いのが好ましい。
【0058】
さらに、鼻における横方向の刺激手段の幅は、刺激手段の膨張の程度と鼻腔の大きさ次第で、およそ1mmからおよそ40mmに、好ましくは、およそ10からおよそ20mmに、変わり得る。新生児の場合、刺激手段は、装置の第1の状態において、例えば、長さおよそ20mmで、幅およそ1mmもあればよい。装置が膨張された第2の状態では、刺激手段は、長さおよそ20mmで、幅およそ3mmもあればよい。当然のことであるが、刺激手段の寸法は上記の間隔外に変わってもよい。
【0059】
ある他の体腔、例えば成人の腸、の治療のために、刺激手段の膨張の程度と体腔の大きさ次第で、刺激手段の長さがおよそ10mmからおよそ200mm、好ましくは、およそ100mmからおよそ200mm、例えばおよそ150mmであると好適である。さらに、ある他の体腔、例えば成人の腸、における刺激手段の幅は、刺激手段の膨張の程度と体腔の大きさ次第で、およそ1mmからおよそ40mm、好ましくは、およそ10mmからおよそ20mmに変わってもよい。
【0060】
当然のことであるが、装置の第2の状態における刺激手段の形状は、体腔の大きさと形状に適合させられている。例えば、鼻腔の場合、膨張状態の刺激手段は、例えば、円形、長円形又は小滴の形状を取ることができる。
【0061】
本発明の装置の振動手段は、刺激手段に振動を生じるように配置されている。振動手段の実施例は、例えば、刺激手段内部に設けられた振動発生器を含み、この振動発生器に外部電源より電流が流される。この実施態様においては、振動手段は、振動発生器と共に、この場合は必要とされる電気回路を含む。
【0062】
本発明の装置の別の実施態様においては、振動手段は、例えば、刺激手段の外部であるが装置に接続されている、外部設置の振動源を含んでいる。この外部振動源は、好ましくは、装置に収められている流体に振動を与えるように配置される。振動装置の実施例は、信号発生器、例えば、音声発信器を含んでいる。本発明の装置に適する他の振動源は、当業者に公知である。
【0063】
振動手段は、周波数1〜5000Hzの、好ましくはおよそ10〜100Hzの周波数の、さらに好ましくはおよそ30〜70Hzの周波数の、そして最も好ましくはおよそ35〜60Hzの周波数の振動を、刺激手段に生じさせるように設けられている。
【0064】
本発明の装置の実施態様においては、刺激手段の容積は膨張手段3により制御できる。本実施態様の実施例では、膨張を達成するため、膨張手段はさらに刺激手段へ流体を供給する、少なくとも1つの導水管を含んでいる。
【0065】
刺激手段の容積は、流体を、例えば空気等のガス、又は、液体を、膨張手段を通って振動装置に供給することにより適合せせることができる。この供給は、膨張手段を経由して、外部器具により調整できる。このような器具の実施例は、シリンダー内の流体量を調整し、これにより膨張手段内の流体量を調整するために、前後に移動させることができる可動プランジャーを有するシリンダーである。
【0066】
膨張手段は、好ましくは、少なくとも1つの導水管を含む。その様な導水管の実施例は、管類である。外部器具は、導水管への接続部を経由して、流体供給を調整することができ、これにより刺激手段の容積を調整することができる。
【0067】
通常は、膨張した刺激手段は、振動装置の第2の状態において、体腔の内部にて刺激手段が周囲の組織に(制御可能な)低圧をかけるだけの、少しでもあるとしたら、周囲の大気圧を僅かだけ超える内圧を有する。
【0068】
刺激手段と、適用例における導水管を含む膨張手段との間の接続部により、流体は、例えば、液体又はガスは、刺激手段と導水管の間を、周囲の組織に流体が漏れ出ることなく、自由に通ることができる。
【0069】
刺激手段を振動させるために、少なくとも、1つの導水管を通じて刺激手段に供給される流体に、さらに振動が加えられる。この場合、振動手段が流体に振動を供給し、この流体が刺激手段に振動を受け渡す媒体として機能する。振動は、1つ又はそれ以上の導水管内の流体を通じて、刺激手段へ仲介される。振動装置が、少なくとも部分的には、刺激手段の内部に安定化部分を含む場合には、体組織との接触表面を通じて、刺激手段が体組織の振動刺激をもたらすように、振動はこの部分にも仲介される。振動手段は、流体を通じて刺激手段に振動を仲介する外部振動源を含むことができる。
【0070】
図1は、第2の状態に配置された、本発明の装置の実施態様を概略的に示し、刺激手段2は膨張している。振動装置1は、膨張可能な刺激手段2と膨張手段3を含む。この実施態様において、刺激手段2は、膨張手段の一端が刺激手段の内側に位置するように、部分的に膨張手段3の周りに配置されている。刺激手段2は、膨張手段3の端部に直接接続するように、又は、この端部からいくらか離れた膨張手段3の周りのスリーブとして配置することも可能であろう。これらは、刺激手段を膨張手段に対して、いかに配置することができるかの実施例にすぎないこと、及び、本発明の範囲内で、他の実施例も可能であることは、当然である。
【0071】
膨張手段3は、好ましくは、流体を刺激手段2に供給するための、少なくとも1つの導水管4を含む。次に、刺激手段は、流体が導水管から刺激手段へと自由に通過できるように、膨張手段に接続される。通常は、流体が患者の開口部の内部で外に漏れ出ることができないように振動装置は閉じられている。少なくとも1つの導水管を含む膨張手段の実施例は、パイプ、管類、コンジット、シリンダー、チューブなどである。膨張手段は、例えば、プラスティック、ゴム、又は、金属材料で作ることができ、従って、問題になっている材料に特有の特性を有することができる。ある場合には、人間、又は、動物の身体内部へ、例えば、腸や血管へ、近づくことが難しい場所に装置を近づけるように、膨張手段は、長く、例えば、1mの長さであり、そして、曲がりやすくできる。鼻腔の治療の場合、膨張手段の好ましい長さは、70mmと300mmの間であり、一方好ましい幅は、好ましくは1mmと15mmの間である。腸の治療の場合には、膨張手段の好ましい長さは、50cmと150cmの間、好ましくは、80cmと100cmの間であり、一方、好ましい幅は10mmと30mmの間、好ましくは10mmと20mmの間、例えば15mmである。
【0072】
刺激手段は、どの体腔が治療されるかによって、例えば、堅いもの又は曲がりやすいものであり得る。
【0073】
流体は、好ましくは刺激手段2に供給されたり、除去されたりすることができる。言い換えれば、刺激手段は、流体を保有するための容量を有するように設計されている。刺激手段は、流体供給に意図された少なくとも1つの空洞を有する。刺激手段の実施例はバルーンであり、このバルーンにより、少なくとも部分的に膨張した状態において、体腔内の体組織に対する装置の接触表面を確かなものにする。刺激手段の他の実施例は、袋、泡、泡装置などである。
【0074】
図2は、本発明の装置1の実施態様がいかに人間の鼻腔において使用され得るかを概略的に示している。これは、体腔における本発明の使用実施例に過ぎないことは当然のことである。膨張手段3の一端は、通常、治療全体を通じて、鼻又は体の開口部の外にある。刺激手段2は、治療されるべき組織表面に密な接触をするように意図され、刺激手段が周囲の組織と良好な接触表面を与えるならば、複数の方法で設計できる。
【0075】
刺激手段2は、鋭い端部又は点を有しないように設計され、それ故、刺激手段は、刺激手段が接触する組織を損傷することはない。刺激手段2が組織表面を摩擦なしで滑ることができるように、刺激手段2の表面上に潤滑剤を使用することができる。
【0076】
本発明の方法は、体腔内の粘膜の治療を提供するものである。体腔内の組織の治療は、ここでは鼻腔内の治療によって例証される。
【0077】
膨張可能な刺激手段を含む振動装置が提供されている。次いで、膨張されていない刺激手段2が鼻孔経由にて鼻腔に導入される。振動装置は、鼻孔を通じての挿入を容易にし、かさばる器具が患者に与える恐ろしい感じを最小にするために、このように、好ましくは、第1の、本質的に膨張されていない状態にある。
【0078】
刺激手段2は、次に、鼻腔内で装置の第2の状態へと膨張される。導入時に、刺激手段が装置の第1の状態であるならば、刺激手段が少なくとも部分的に図2の鼻腔に導入された時に、膨張が生じる。
【0079】
例えば、膨張手段3によって、治療に適する大きさ、及び/又は、容積に、少なくとも部分的に刺激手段を膨張させることができる。好ましくは、膨張手段に含まれる、1つまたはそれ以上の導水管を通じて、刺激手段に流体を供給することにより、刺激手段は膨張する。このように、刺激手段の容積は、流体の供給により刺激手段内部にて達成される内部圧力によって調整される。例えば、流体を、膨張手段に接続された外部源(図示されていない)から供給することができる。
【0080】
少なくとも部分的に膨張した刺激手段の内部圧力と容積により、周囲組織との、特に本発明の処置により治療される神経末端と血管の組織との、良好な接触が得られる。少なくとも部分的に膨張した刺激手段2は、好ましくは、刺激手段の外部表面でより広い組織表面と接触し、これにより、振動装置が振動を生じた時に、多数の神経末端、及び/又は、血管を同時に刺激することができる。
【0081】
好ましくは、刺激手段は、刺激手段の外表面と周囲の組織との接触を与える内部圧力を有する。
【0082】
好ましくは、振動による組織の刺激は、刺激手段が望ましい容積を得た時に開始される。刺激手段が、好ましい、適切な容積に膨張できないように、組織が膨れている場合は、刺激手段が完全に、又は、部分的に膨張していない時に、例えば、圧縮されている時に、振動刺激を開始することができる。1つの実施態様においては、刺激手段の内部圧力が刺激手段に特定の形状、又は、容積になるのには不十分であるとしても、図5の安定化部分5により、刺激手段は適切な形状となる。
【0083】
刺激手段の容積は、周囲の組織が振動刺激に反応し、充血除去が起こるので、治療の間調整できる。同様に、振動刺激の間、刺激手段により周囲の組織に働く圧力を調整又は変えることができる。
【0084】
振動刺激は、好ましくは、およそ1秒からおよそ30分までの間、より好ましくは、およそ15秒からおよそ7分の間、刺激手段が体腔内にて振動を生じることを含んでいる。
【0085】
本発明の方法の振動刺激は、望ましい振動パターンのために様々な周波数、振幅、及び他の条件で実施できる。好ましくは、刺激は、1〜5000Hz、より好ましくは、およそ10からおよそ100Hz、さらに好ましくはおよそ30からおよそ70Hz、そして最も好ましくはおよそ35からおよそ65Hzの間の周波数にて行われる、が、他の周波数も予想される。振動装置は、好ましくは、およそ0.05mmとおよそ20mm、より好ましくは、0.3mmとおよそ5mmの間の振幅にて振動する、が、他の振幅も予想される。どんな振動条件が選択されるかは、ある程度は、どの腔に及びどんな治療が要望されているか、又は、治療を受ける患者の、どんな可能性のある症状かに拠っている。
【0086】
本発明の方法は、外部振動源を含むシステムを利用することができ、この外部振動源は、訓練を受けたオペレーター、例えば、医者若しくは看護士、又は患者自身により操作される。上記のシステムは、サポートなどに固定でき、又は、オペレーター又は患者により自由に扱うことができる。
【0087】
体組織に望ましい振動刺激を、適切な時間行った後、治療を適切に終了させることができる。少なくとも部分的に膨張した刺激手段は、刺激手段を体の開口部、例えば、鼻孔、を通じて除去する前に、適切に、基本的に膨張していない状態、装置の第1の状態に戻る。刺激手段のこの予測され得る容量減少は、例えば、流体圧力の低下、例えば、刺激手段内の圧力を低下させる膨張手段による空気又は液体圧力の低下により達成でき、それによって刺激手段内の圧力が減少する。圧力を低下した後、このように刺激手段は膨張していない状態に戻る。安定化部分5が装置に存在するならば、これにより、装置のある形状と容積を、ある程度保つことができる。
【0088】
体の開口部から、例えば、鼻孔から、刺激手段が通過できる様な大きさに、刺激手段が
回復した後、オペレーター又は患者は振動装置を体の開口部から、例えば、鼻から、引き出すことができる。
【0089】
本発明の方法の一実施態様においては、本発明の第1の態様の振動装置が利用される。
【0090】
本発明の振動装置を体の開口部にできる限り容易に導入するために、関連する体の開口部の大きさと、かさばった装置が患者に及ぼす可能性のある、ぞっとさせる影響を考慮して、膨張していない刺激手段はできる限り小さいことが望ましい。振動装置が、適切なやり方で、まとめられ、保管され、かつ、輸送されることも望ましいことである。
【0091】
本発明の装置の膨張可能な刺激手段は、かさばらない方法で装置の第1の状態に配置することができる。装置が膨張手段3を含む一実施態様においては、刺激手段2は、膨張手段に収められた第1の状態に配置することができる。膨張手段3が導水管4を含む場合には、刺激手段2は導水管内に含まれた第1の状態に配置することができる、図3a参照。刺激手段が潤滑剤と共に使用されるなら、この潤滑剤も導水管内に収めることができる。
【0092】
上述の実施態様により配置された刺激手段を含む本発明の装置を用いた治療においては、完全に又は部分的に膨張手段に、例えば、導水管4に、収められた刺激手段と共に、装置は体の開口部に導入される(図3a、3b)。刺激手段2の膨張は、恐らくより狭い体腔を、例えば、鼻孔を、通過した後で、体腔内部で起きる。刺激手段2を導水管4から押し出す圧力を与える流体で、膨張手段3を通じて振動装置を満たすことにより、刺激手段2を、膨張手段3から、例えば、導水管4から、例えば、動かすことができる。これにより、刺激手段は膨張される(図3b、3c)
【0093】
かさばらない第1の状態における、本発明の振動装置の別の実施例が図4a、4bに示されている。この場合、装置の第1の状態にある刺激手段2が、図4aの膨張手段3の周囲に配置されている。装置の第1の状態において、刺激手段は、膨張手段の周りに、又は、安定化部分がある場合には、安定化部分の周りに、例えば、畳めるか又はひだをつけることができる。体腔への体の開口部を通じての導入に続いて、刺激手段は、体腔内部にて、完全に又は部分的に、膨張する(図4b)。
【0094】
本発明の振動装置の別の実施例においては,装置の第1の状態の刺激手段は、場合により、安定化部分を含む、膨張手段の周りに配置されているが、膨張手段の貫通している端部を囲んではいない。この場合、場合によっては潤滑剤が塗布されている、貫通している端部は、体の開口部の内部又は体腔内部の組織を傷つけないように、柔軟な組織に優しい材料でできていることが望ましい。体の開口部を経由して体腔内への導入の後、刺激手段は、膨張手段の貫通している端部からやや離れて、膨張手段の周りにスリーブを形成し、体腔内部で、完全に又は部分的に膨張する。
【0095】
刺激手段を、本発明の装置の第1の状態にいかに配置するかに拘わらずに、装置の外装が好都合である。外装(図示されていない)により、いかなる潤滑剤、他の物質、揮発性物質又は装置の部品が、輸送や保管中に喪失又は劣化しないように守られると同時に、装置の衛生の確保を助け、機械的又は化学的作用から装置の繊細な部品を保護することができる。
【0096】
本発明の振動装置の一実施態様においては、前記装置は安定化部分を含んでいる。安定化部分5は、例えば、体腔内での刺激手段の導入及び/又は位置の制御を容易にし、特に、装置の第1の状態の刺激手段に体腔内部で望ましい位置を取らせるために、配置することができる。安定化部分5を、例えば、刺激手段2の内部に配置することができる(図5)。安定化部分は、膨張手段3(図示していない)のみに配置してもよいし又は刺激手段と膨張手段の双方に配置してもよい。
【0097】
図5には、本発明の装置の実施態様が示されており、刺激手段は安定化部分5を含んでいる。安定化部分は、好ましくは、体腔内で組織と直接接触をしないで、安定化部分の全体が、刺激手段に収められている。安定化部分5は、刺激手段へ流体を供給するために、膨張手段の導水管と刺激手段2の内部との間に、好ましくは、少なくとも1つの接続6を含んでいる。
【0098】
好ましくは、刺激手段と本質的に同一の振動パターンに従って、安定化部分に振動が生じる。中間流体無しに、刺激手段の表面を通じて安定化部分と接触する体組織は、刺激手段が少なくとも部分的に膨張状態にある時に、刺激手段の他の表面を通じて伝播される振動パターンに対応する振動パターンで刺激される。
【0099】
安定化部分は柔らかい曲がりやすい材料でできており、これにより、体の開口部の通過が容易になる。安定化部分はシリコーン、プラスティック又はゴム材料で、適切にできている。他の材料を使用することも予想される。
【0100】
刺激手段及び/又は体腔内部の周囲の組織を傷付けないように、図5の安定化部分5は、好ましくは、丸みのある形状を有する。体の開口部内の狭い通路へ安定化部分を含む刺激手段の導入を容易にするために、安定化部分は、安定化部分の下部の寸法(断面)より小さい上端寸法(断面)を有することが適切である。
【0101】
刺激手段が、装置の第2の状態において膨張する時、安定化部分は、刺激手段の内側表面との直接の物理的接触をしないことがある。好ましくは、安定化部分により、刺激手段への振動が仲介され;振動パターンは、安定化部分によって、あるとしても、少しだけ、妨げられるか又は抑えられる。振動手段が流体に振動を与える場合には、図5の安定化部分5による障害無しに、この流体が流れれば、それは、例えば、適切である。
【0102】
あるいは、安定化部分が刺激手段を完全に満たすような大きさと形状を有し、そこでは、刺激手段内に流体のためのスペースがない。この場合、安定化部分は、好ましくは、柔らかい曲がりやすい材質でできている。この場合、安定化部分は、刺激手段の目的を満たすことができ、刺激手段に取って替わることができる。
【0103】
静的な内部圧力を有する刺激手段も、図5の安定化部分を含むことができる。この実施態様においては、膨張手段3も、好ましくは、少なくとも安定化部分の一部を含む。
【0104】
治療方法の進行中に、刺激手段は、例えば、膨張手段、安定化部分又はおそらく他の機器を用いて、鼻腔、腸又は他の体腔に導入される。
【0105】
一実施態様においては、膨張手段は、体の開口部を通じて、体腔への振動装置の導入を容易にするための安定化部分を含む。
【0106】
安定化部分を含む膨張手段により、体腔内においてと同様に、体腔の外部で、並びに、振動装置が体腔へ導入される時及び体腔から引き出される時にも、例えば、振動装置の位置制御がさらに容易になる。この実施態様においては、腔内の刺激手段の位置と方向の制御を可能にするために、安定化部分は、好ましくは、寸法安定性と、場合により、剛性を有する。安定化部分を含む膨張手段は、まっすぐな形状をとることができ、比較的堅くてよい。あるいは、安定化部分を含む膨張手段はまっすぐな形状から逸脱することもでき、そして、例えば、湾曲したり又は曲っていてもよい。
【0107】
安定化部分が膨張手段内に収められているなら、前記部分は、その部分と膨張手段に安定性を与える、例えば、弾力性は無いが曲がりやすいチューブと、周辺構造とで作ることができる。その部分は、チューブのみから構成されてもよい。
【0108】
本発明の振動装置の一実施態様においては、刺激手段は交換可能な衛生的な保護カバー7で囲まれている。衛生的な保護カバー7は、ほこり又は他の生物学的若しくは化学的物質等の有害な物質の拡がりが防止するので、衛生的な保護カバー7により、例えば、装置を一回だけでなく多数回使用することができる(図6a)。
【0109】
図6a〜6cの衛生的な保護カバー7は、刺激手段2上のどんな有害な又は伝染性の物質も周囲の組織と直接の物理的な接触することができない様な方法で、装置1を囲んでいる。
【0110】
衛生的な保護カバー7は、容易に交換できなければならない。衛生的な保護カバーを装置1に配置する時、衛生的な保護カバーが容易に装置から離れ落ちることはないように、例えば、衛生的な保護カバー上のサポート8と膨張手段上のサポート9によって、衛生的な保護カバーは拘束されている。保護カバーが、例えば、関連の体腔内で動かなくなる、又は、体腔内に残ってしまう、又は、治療後に開いてしまうことによる問題は、これにより回避される。これにより、例えば、鼻腔治療時に、衛生的な保護カバーが患者の気道に残ってしまって、患者を危険や不安に曝すリスクが除かれる。図6a〜6cは、衛生的な保護カバー7を膨張手段3にいかに配置することができるかを示しており、刺激手段2の完全な囲い込みと同時に、装置1への衛生的な保護カバーの強固な取り付けが実現されている。
【0111】
衛生的な保護カバーは、刺激手段から周囲の組織に振動を伝える。衛生的な保護カバーの大きさが、囲まれる刺激手段の容積との関連で変えられるように、衛生的な保護カバーは弾力のあるものがよい。
【0112】
さらに、刺激手段と同様に衛生的な保護カバーは、好ましくは、体の開口部を内に又は外へ、及び、治療が実施される体腔へ、又は、体腔から容易に通過することができる。このように、衛生的な保護カバーは、好ましくは、スムーズな外部表面を有する、又は、別の方法で、周囲の体組織との摩擦をできるだけ小さくする。
【0113】
装置の実施態様の一実施例においては、装置は、周囲の組織への、薬学的、化学的又は生物学的影響が本質的に無い衛生的な保護カバーを含んでいる。
【0114】
あるいは、医療目的を達成するために、例えば、炎症を減らすために、衛生的な保護カバーは、周囲の組織に、化学的又は生物医学的影響を有する。
【0115】
本質的に薬学的、化学的又は生物学的な影響を周囲の組織にもたらさない潤滑剤を、例えば、衛生的な保護カバーと共に使用することができる。衛生的な保護カバーを、潤滑剤で塗布することができ、例えば、パラフィン溶剤に浸すことができる。
【0116】
衛生的な保護カバーは、好ましくは、使い捨て製品であり、言い換えれば、体腔における治療において一度より多くの機会に使用されるように意図されていない。
【0117】
振動装置自身が使い捨て製品の場合、衛生的な保護カバーは、刺激手段で構成することができ、したがって、交換できる必要はない。
【0118】
本発明の振動装置が衛生的な保護カバーと共に使用されるように意図されているなら、刺激手段それ自身は、どんな組織に優しい材料でできている必要はなく、その理由は、その時は、この材料が治療中に組織と接触しないからである。
【0119】
本発明の振動装置の実施態様において、刺激手段内には流体用のスペースはない。この様な振動装置は、図7の装置によって例示することができ、ここでは刺激手段2は、柔らかくて延性のある材料、例えば、シリコーン、プラスティック又はゴムでできている任意の本数のアーム10を含んでいる。アームが体の開口部を通じて導入される時は、アームを圧縮させることが可能であり、最初は、利用可能な全表面積は減らされており、その後、体腔内部で膨張され、アームが拡がり、アームの利用可能な外表面積は最大になる。アームは、装置と体組織との間に良好でタイトな接触が実現されるように、大きな面積の領域に分布している。アームは、静的な内部圧力を有することが可能であり、及び/又は、流体の供給なしで膨張ができる。しかし、例えば、アームの投薬用開口部を通じて医療用又は他の生物学的効果を持つ物質の投与のために、流体の供給がとにかく発生してもよい。
【0120】
前記アーム10は、例えば、弾力性のあるものであってよく、図8a〜8cに示されている。弾力性のあるアームは、第1の状態では、膨張手段に、例えば、膨張手段の導水管に収めることができる(図8a)。例えば、アーム10は、膨張手段から、例えば導水管から、アームを押し出すエレメント11により、装置の第2の状態へと、移動することができる(図8b)。エレメントは、例えば、流体又はプランジャーの様な固体であってよい。装置を体腔内に導入した後、アームは体腔内部に分配され、その結果、装置に第2の状態がもたらされ、組織の広い面積が届く範囲となる(図8c)。このように、刺激手段と体組織との良好でタイトな接触が、振動刺激が開始される前に、達成される。刺激手段に含まれるアームの本数がより多ければ多い程、体組織に隣接するより広い利用可能面積が得られることは当然のことである。全体として、刺激手段2のアームにより届く、体腔内の組織表面は、刺激手段が体腔に入るために通過する体の開口部の面積より大きく成り得る。
【0121】
刺激手段が静的内部圧力を有する場合には、装置の第1の状態の刺激手段は、膨張手段に収めることができる。体腔にて振動を用いた治療を行うために、例えば、図8bのエレメントによって刺激手段が外に押し出されることにより、刺激手段の第2の状態への膨張が起きる。
【0122】
本発明の振動装置は、例えば、安全弁を含むこともでき、装置に過大な圧力で液体が供給された場合に、その圧力の一部を放出することができ、これにより装置の圧力は適切なレベルへと下げられる。
【0123】
装置を、外部器具、及び、例えば、振動装置の操作用のハンドルに、接続することができる。
【0124】
本発明の装置が、少なくとも部分的に膨張した刺激手段を有して、第2の状態にある時に、刺激手段は振動を生じるようになる。振動は、好ましくは、刺激手段の外表面と組織表面との間の直接の物理的接触によって、体腔内で刺激を受ける、神経末端と血管を有する体組織に運ばれる。
【0125】
本発明の振動装置は、装置の実施態様と、関与している治療に応じた、様々な振動パターンで、振動を生じることができる。
【0126】
本発明の装置は、刺激手段の容積が振動するということを意味するパターンで振動を生じることができる。装置には、膨張手段に平行な刺激手段の縦方向の動きによって、振動がもたらされてもよい。装置には、任意の主軸の回りの振動によって、振動がもたらされてもよい。装置には、任意の平面に並進する動きによって、振動がもたらされてもよい。刺激手段の振動は、前記振動パターンの組み合わせであってもよく、又は、関与している適用分野を考慮して、適切な方法にて振動してもよい。
【0127】
患者の鼻腔を治療する時、本発明の振動装置は、普通は、好ましくはおよそ30〜70Hzの周波数にて振動を生じるが、他の治療においては、他の振動周波数があり得る。治療される体組織内の神経末端への振動装置の神経学的効果は、特定の周波数又は治療において使われる周波数によって、大方の場合、決定される。
【0128】
本発明の振動装置によって体組織の治療をする時、治療される組織の神経末端への装置の効果は、刺激手段によって組織がさらされる振動の大きさ(振幅)にも依存する。通常は、刺激手段の表面に、0.05mmとおよそ20mmの間の、より好ましくは、0.3mmとおよそ5mmの間の振幅で、振動がもたらされるが、ある治療に要求される振幅は、関連する体の開口部の性質、問題となっている患者の感度、及び、実施されようとしている治療の種類によって決定される。
【0129】
本発明の振動装置は、応用分野に応じて、様々な波形にて振動を生じることができる。振動装置は、例えば、振動が、正弦波で又は矩形波として、後者の場合0.1と0.5の間の“負荷サイクル”にて、表現することができるように、振動を生じることができる。他の波形も、上記したものと類似のものも又は類似でないものも、今回の場合に適切であり得る。
【0130】
パイロット・テスト
本発明の装置と方法を用いてパイロット・テストが行われた。テストは、成人の、健常人、並びに、鼻部に関連した様々な種類の問題、及び/又は、疾患を持った患者の鼻にて行われた。
【0131】
これまでに行われたすべてのテストにおいて、振動手段に接続された刺激手段と膨張手段を含む振動装置が使用された。
【0132】
刺激手段は、膨張した、第2の状態において、直径1.5cmで、長さ5cmのバルーンであった。バルーンは、導水管を含む膨張手段に接続された。長さ15cmの管類がこの目的に使用された。管類とバルーンは、鼻腔内への導入を簡単にするために、最大で4cmの長さを有しており、管類の一端がバルーン内にあるように、互いに接続された。バルーンを膨張させるために、管類はバルーンに流体を、この場合は空気を、供給した。閉鎖系の空気システムに接続された別の管類にと同じように、管類の他の端部は三方コックを経由して、目盛付き注射器(20ml)に接続された。閉鎖系空気システムは、柔軟な膜に接続され、その膜は、次には間隔10〜100Hzの可変の周波数を持つ音声発信器に接続された。水圧0〜100cmの圧力間隔以内で制御された方法にて、空気圧は変化させることができよう。振動する膜の振幅は、制御された方法にて(任意ではあるが、再生可能なユニットにおいて)変えられるであろう。使用に先立って、バルーンに、使い捨て手袋の指部から成る、衛生的な保護カバーが取り付けられた。鼻腔内へのそれぞれの導入に先立って、衛生的な保護カバーはパラフィン溶液に浸された。
【0133】
治療方法
下記の一般的な方法が、すべての治療に使用された:
バルーンと膨張していない状態の衛生的な保護カバーを有する、第1の状態の振動装置が鼻腔に導入された。鼻腔内にて、バルーンを水圧40〜80cmへと膨張させた。
【0134】
音声発信器を用いて柔軟な膜の制御運動によって、バルーンを経由して、間隔が水圧40〜80cm以内で、選択された圧力の周りで、殆ど変動なしで、閉鎖系システムの空気圧を変化させる変えることにより、間隔39〜60Hzの振動が達成された。刺激は、鼻腔内で5〜10分間与えられた。
【0135】
次に、空気はバルーンから排出され、バルーンは膨張していない状態に移された。バルーンは鼻腔から引き出され、衛生的な保護カバーは取り除かれた。
【0136】
新しい保護カバーがバルーンに当てられ、第二の鼻腔に導入する前に、パラフィン溶液に浸された。上記の方法により、バルーンを、鼻腔内で水圧40〜80cmへと膨張させた。間隔39〜60Hzの周波数を有する振動が、5〜10分間、達成された。
【0137】
前記方法によるテストが、健常人と患者とに行われ、そして治療の結果が、鼻腔を通る空気の通りの効果として、即ち、鼻呼吸抵抗の主観的評価度合いとして、評価された。患者は、治療前後の鼻の通りを、0〜10の観察によるスケール(VAS)に基づいて、評価した、ここで、0は抵抗無しに対応し、10は最大の抵抗、即ち、完全な鼻詰まり、に対応する。
【0138】
様々なグループの患者と健常人の結果が下記に記載されている。
【0139】
健康な、症状の無い個体
健常人が、両方の鼻腔に、一度には片側の鼻腔に、上記一般的治療方法(周波数40Hz、5分間、水圧50cm)にて手当された。両方の鼻腔の処置完了後15分以内に、呼吸抵抗がVASスケールにて評価された。
【0140】
すべての個体が、呼吸抵抗の低下を体験した。グループの呼吸抵抗は、VASスケールで、平均して3から1に減少した。両側とも、空気の通りが楽であるのが、少なくとも2時間続いたと評価された。ある個体の場合には、空気の通りが楽であるのが、4時間に至るまで続いた。
【0141】
風邪をひいている個体、ただし、これの他は健康
この個体は、1〜2日前から、臨床的に上気道に、おそらくウィールス感染により、感染していて、この感染により、鼻水が出、鼻の空気の通りが悪く、即ち、かなりの鼻詰まりを引き起こしていた。すべての個体が、上記の一般的治療方法(水圧70cm)により治療を受けた。
【0142】
グループの全メンバーが、10〜15分後に、呼吸抵抗の軽減を経験した。主観的な呼吸抵抗は、全ての固体に対して、グループレベルで、VASスケール8から3へと軽減された。効果は少なくとも2時間続き、ある個体では、3時間より長い間続いた。
【0143】
薬物性鼻炎患者
薬物性鼻炎の患者は、風邪の治療には鼻詰まり防止の点鼻薬に、または、鼻詰まりには鼻腔用スプレーに依存しており、それ故、これらの薬を、通常毎晩、そしてしばしば昼間にも使用する。これまで治療を受けたこれらの患者は、毎晩、大部分の患者はその上毎日、点鼻薬を利用してきた。この常用は、少なくとも2年間続いてきており、患者の何人かは、10年間までも続いてきた。常用の開始の理由は通常知られていないが、重くて長引く鼻詰まりと共に、上気道の感染に関連して鼻詰まりが始まったことは、珍しいことではない。一部の患者は、鼻詰まりを伴う頑固な問題について、鼻をかんだ後又は鼻の外側若しくは内側を手術した後、と述べた。調査対象のすべての患者は、多くの既知の薬物治療計画で治療されたと述べた。同様に、一部の患者は、鼻の手術をうけた、とりわけ、粘膜の鬱血、即ち“萎縮(shrivelling)”を軽減するために、鼻粘膜を焼かれた、とも述べた。
【0144】
本方法や本装置を用いて治療を受けたすべての患者は、以前の薬物治療は、薬物治療が終了した後は、何らの効果も無かったと述べた。さらに、手術を受けた、そのうち何人かは4度も受けた、すべての人が、手術の効果は乏しい、即ち、彼らは鼻詰まりを緩和できなかった、これが薬の常用が続いた理由である、と述べた。
【0145】
前記治療方法(周波数48Hz、水圧40〜50cm、鼻粘膜の手術を受けた人には、水圧70cm)にて7分間を、2回、ある時は3回、治療した後では、すべての患者において、少なくとも1カ月間、最大限でも、これまでの最長の継続時間である3カ月間、昼間の鼻詰まりが完全に無くなった(VASスケールで平均8から2への改善)。
【0146】
ある患者の場合には、治療後に夜間も鼻詰まりが無くなった(VASスケールで平均9から2への改善)。このように、これらの患者は、3か月に至るまで、症状が完全に出なかった。
【0147】
治療に多少なりとも反応を示したこれらの患者は、すべて昼間には症状が出なかった(上記参照)、が、治療の5〜10日後に、かれらは、片側の、ただし、交互の側の、鼻詰まりを夜間に再び経験し、それ故、追加の治療が必要であった(前記治療方法によった)。繰り返した治療により、その後の5〜10日間症状が出なかった、等をもたらした。
【0148】
すべての患者は、彼らが受けた治療の効果は、長い間変わらずに続いた、即ち、個体又は患者の治療が繰り返された時に、効果が減少しなかった様だ、と述べた。
【0149】
比較治療、薬物性鼻炎の一患者
比較実験として、薬物性鼻炎の一患者に、一方の鼻孔に風邪用の点鼻薬を用いて、もう一方の鼻孔に上記(薬物性鼻炎の他の患者に対すると同様の)振動刺激にて、治療を施した。治療の時、この患者は10年より長い間点鼻薬を常用してきていた。
【0150】
一方の鼻孔に点鼻薬を用いて治療を施した後、一定の、同じ程度の鼻詰まりが認められた。もう一方の鼻孔に、振動刺激にて治療を施した後、鼻孔内の神経機能が通常の状態に戻った、即ち、様々な程度の鼻詰まりが、夜と昼に、認められた。通常、昼間と夜間の鼻詰まりの変化は、各鼻孔において、正弦曲線に従うと説明できる。当初、鼻詰まりは一方の鼻孔には無く、その後、増えていった。他方の鼻孔における鼻詰まりは、最初の鼻孔と比較すると、逆転した正弦曲線に従う、これは、一方の鼻孔が鼻詰まりする時は、他方の鼻孔は空気が通っており、そして逆もまた同様であることである。
【0151】
神経痛の患者(他の点では健全)
この患者は10年より前の時から、鼻に痛みを持っていた。患者は、利用可能な、あらゆる種類の痛みを緩和する治療、及び/又は、薬物治療を試みてきたが、何らの実質的な効果が無かった。強力な鎮痛剤により、数時間の痛みの緩和がもたらされてきた。
【0152】
鼻の痛みについての他の考えられる原因が除外された後で、神経痛との診断がなされた。
【0153】
これまでの痛み緩和の治療が中止された。上記治療方法(周波数48Hz、水圧40〜50cm)による7分間の治療後、患者は、痛みと薬物治療から、8週間解放され、この期間は、これまでのところ、このケースのフォローアップ時間に相当している。
【0154】
鼻腔に非アレルギー性の炎症を有する患者
これらの患者すべてに、アレルギー検査が行われたが、いかなるアレルギーも有さないと診断された。患者は、鼻詰まり、及び/又は、鼻の分泌物の増加を軽減するために、毎日鼻にコーチゾン噴霧を使用していた。薬用治療は、ある程度かれらの症状を軽減した。
【0155】
患者に、上記方法による治療(周波数48Hz、水圧40〜50cm)を、7分間一方の鼻孔に施した。コーチゾン噴霧を用いた薬物治療を完全にやめた後、治療が1週間行われた。未治療の鼻孔(VASスケール値が6と5にとどまっている)より、空気の通りの改善(VASスケールで平均6から3への改善)と、分泌物の減少(VASスケールで平均5から3への改善)が、治療後の1週間、治療された鼻腔で経験された。
嗅覚低下の患者
【0156】
これらの患者は、嗅覚低下を経験していると自ら述べた。
【0157】
7分間の上記方法による治療(周波数48Hz、水圧70cm)の後、彼らは嗅覚の改善を体験した。
【0158】
周辺の人に迷惑をかけるいびきをかく患者
親族によると、いびきで周辺の人に迷惑をかけるいびきをかくとみなされていた患者は、上記方法による治療後に、いびきをかかなくなった。
【0159】
結論として、振動刺激の治療は、いかなる“リバウンド”の鼻詰まりを引き起こさない、即ち、鼻詰まりがひどくなるという、いわゆるリバウンド効果が、長い時間をかけて何回も治療を繰り返した後でさえ、続いて生じることがないことを、テストが示した。リバウンド効果は、市販の多くのいわゆる風邪用点鼻薬を用いると起こる。その上、この治療方法は、新生児の時から及び妊娠中も、副作用無しで使用できる。
【0160】
このように、患者の敏感な体組織の刺激のために、到達するのが困難な体腔内にて使用する振動装置が提供された。本発明の装置は、患者又は別のオペレーターにとって使用が容易である。本装置は狭い体の開口部を通じて、容易に導入可能であり、刺激手段が、組織を押しのけること無く体組織に隣接するように、少なくとも、部分的に膨張する第2の状態に配置できる。
【0161】
さらに、体腔内の体組織の刺激のための方法が提供された。本方法は、末梢知覚神経と、及び、おそらく、運動神経とにおける、神経機能の正常化を推進する。鼻腔内の多くの症状を治療する時、従来の治療計画が効果を生じない時に、本方法は効果をもたらす。本方法は、副作用を起こさず、すべての年齢層の患者に使用できる。加えて、これは、痛みが無く迅速であり、多くの場合、症状の緩和又は症状の除去に、持続的な効果をもたらす。
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内の、特に、鼻腔又は腸の体組織の振動刺激のための振動装置と方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者の体腔内で治療を行う、いくつかの公知の装置がある。鼻腔にて使用される装置は、例えば、鼻粘膜の充血解消を目指し、多くの場合、ある化学物質と一緒に使用される。例えば、手術中の、体腔内での出血を防止するために、様々な種類の詰め物が、一般的に使用される。体腔内で、例えば、耳の内で又は身体表面一面に、機械的な振動によって、組織に作用する装置も公知である。
【0003】
特許文献1には、例えば、呼吸器系機能を直接制御する目的で、耳内の前庭神経を機械的に刺激するための様々な技術が開示され、説明されている。例えば、隣接した組織に静圧を加える膨張性のバルーンによって、刺激を発生させることができる。圧力を変動させることにより、ある種の感覚を引き起こすことができる。さらに、ある周波数で振動している身体を含む神経を、機械的に刺激するための別の方法も開示され、説明されている。
【0004】
鼻腔及び他の体腔内の出血を膨張性のバルーンにより防止する装置は、従来から公知である。例えば、特許文献2や特許文献3に、出血を防止するための手術に関連して用いる膨張性の詰め物が開示されている。
【0005】
鼻腔内での治療に用いる装置の他の実施例は、例えば、鼻腔拡張器である。これらの装置は、鼻内部の通路を物理的に開いておくことにより、呼吸を容易にすることを意図したものであり、これらの装置は、ある点では、いびきの軽減を意図している。
【0006】
電磁波の照射による、鼻炎や鼻腔内の他の症状治療のための装置が、例えば、特許文献4及び特許文献5に開示されている。
【0007】
鼻腔内の粘膜腫大は、例えば、エタノール等の化学物質と一緒に使用される様々な装置によって、治療できる。しかし、鼻孔内の炎症の様な症状は、通常様々な医薬物質を用いて治療が行われる。
【0008】
鼻腔等の体腔における、慢性又は非慢性の炎症症状を患う患者は、多くの場合、例えば、コルチゾン等のコルチコステロイドを用いた治療により和らげられる。残念ながら、コルチゾン療法は、特に長期治療の場合は、いくつかの副作用を有する。良く知られた副作用は、一般に、例えば、身体中への体液の蓄積、高血圧、及び、新陳代謝の変化である。鼻炎は、鼻腔内治療による一般的な副作用である。
【0009】
慢性の鼻詰まりに苦しむ患者は、多くの場合、薬物中毒、薬物性鼻炎を発症し、この場合、鼻詰まりを防止するために、患者は、一日に一回又は数回、鼻内噴霧又は点鼻薬の治療をしなければならない。このための満足すべき治療形態と装置は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US2002/0072781A1
【特許文献2】WO9639218
【特許文献3】EP1626766
【特許文献4】EP0935980
【特許文献5】EP0825889
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、患者の中で近づくことが困難な体腔内の体組織の刺激のための振動装置を提供することである。別の目的は、振動によって、これらの組織表面一面を刺激する方法を提供することである。これらの目的は、添付の請求項の装置と方法によって、達成される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの態様によると、患者の体腔の、特に、鼻腔又は腸の体組織の刺激のための振動装置が提供されており:この装置は、
膨張可能な刺激手段;及び
刺激手段に振動を生じさせる振動手段を含んでおり;
振動装置は、刺激手段を、体の開口部を通じて体腔に導入することが可能になる第1の状態と、刺激手段が体腔内の組織に様な容積に、刺激手段が膨張している第2の状態に、配置することができる。
【0013】
例えば、鼻の場合のように、体腔がタイトな体腔の背部に隠されているなら、前記刺激手段は、振動装置の第1の状態にて、開口部、例えば、鼻孔を通じて、導入可能である。従って、刺激手段は可変容積を有し、これは装置が可変の大きさであることを意味し、これにより狭い腔への導入が容易になる。
【0014】
近づくことが困難な、鼻腔又は体腔において、体組織との良好な接触面積を備えるために、刺激手段は、装置の第2の状態において、組織のかなりの面積が同時に作用を受ける様な大きさを有する。刺激手段は組織表面に接し、刺激手段と周囲の体組織との間で、良好でタイトな接触が達成される。
【0015】
本発明の装置は、振動刺激による治療のために、例えば、神経機能の正常化のために、適切に使用できる。この装置により、近づくことが困難な体腔内の、大きな面積の組織に近づくことができる。振動刺激は、前記振動手段により達成され、これにより刺激手段に振動をもたらす。治療が、鼻腔又は体腔の大きさに影響を及ぼすならば、治療の過程において、刺激手段の容積を変える必要があり得る。
【0016】
装置が体腔に導入される前に、患者が装置を見ることができる場合には、装置が、その容積によって過度に恐ろしく見えないことも長所である。患者とは、人間又は動物を意味する。調子が良好である及び具合が悪い、双方の患者が、本発明の装置によって治療を受けることができる。調子が良好である患者の例は、身体的演技を前に、鼻の空気通路を広げたいと望む運動選手である。
【0017】
本発明の装置の前記振動手段により、刺激手段に、好ましくは1〜5000Hzの、より好ましくは10〜100Hzの、さらに好ましくは30〜70Hzの、最も好ましくは35〜60Hzの周波数の振動が生じる。鼻腔の治療のためには、刺激手段に、好ましくは30〜70Hzの周波数にて振動が生じる。他の体腔における組織表面の治療には、他の周波数間隔が適用される。
【0018】
刺激手段は、好ましくは、スムーズな外表面を有する、及び/又は、刺激手段の外表面は、体腔を通じての通過を容易にするために、潤滑剤を含んでいる。潤滑剤は、パラフィン溶液又は当業者には良く知られている他の潤滑剤である。
【0019】
本発明の一実施態様では、振動装置は、安定化部分を含み、この部分が、装置に形状と安定をもたらす。装置が、装置の第2の、膨張された状態に配置されていない時にでも、装置の形状はさまざまな程度に維持される。従って、安定化部分によって、体の開口部と体腔への刺激手段とを含む装置の導入と位置調整が、それぞれ、容易になる。
【0020】
本発明の別の実施態様において、振動装置は、刺激手段を膨張させるための膨張手段を含んでいる。膨張手段は、好ましくは、刺激手段に流体を供給するための、少なくとも、1つの導水管を含み、これにより前記膨張が達成される。振動手段は、好ましくは、前記流体に振動を与えるように配置されている。
【0021】
一つの例においては、第1の(即ち、本質的に膨張していない)状態において、刺激手段は膨張手段に収めることができる。治療に関連して、装置が体の開口部に導入された後にのみ、刺激手段は膨張手段から持ち出される。このように、振動装置の幅は最小にでき、これにより、タイトな通路を通って、体腔への導入が容易になる。装置の第1の状態においては、刺激手段は、好ましくは、膨張手段の導水管内に収めることができる。
【0022】
別の例では、装置の第1の状態において、刺激手段を膨張手段の周りに配置することができる。治療中、装置はこの状態で体腔内へ導入され、その後すぐに刺激手段は、刺激手段が体腔内部の適切な位置にある時、装置の第2の状態に移行する。上の場合のように、この方法において、装置の幅を最小にすることができ、これにより、タイトな通路を通って体腔内部への導入が容易になる。
【0023】
別の例では、刺激手段を、装置の第1の状態において、安定化部分の周りに配置することができる。
【0024】
本発明の一実施態様において、振動装置は、刺激手段をとり囲むように配置された交換可能な衛生的な保護カバーを含む。これにより、バクテリアの危険又は他の化学的若しくは生物学的危険に曝されること無しに、反復して使用できる装置が提供される。衛生的な保護カバーは、好ましくは、刺激手段をとり囲み、容積は刺激手段と同様に膨張する。
【0025】
本発明の別の態様は、
体の開口部を通じて体腔内へ刺激手段を導入することが可能である、膨張可能な刺激手段を含む振動装置を提供し、;
体の開口部を通じて体腔内へ刺激手段を導入し;
体腔内部の組織に刺激手段が隣接するように、振動装置の第2の状態に刺激手段を膨張し;そして
前記第2の状態において、刺激手段に振動を生じさせる、
工程を含む、患者の体腔内の、特に鼻腔又は腸内の体組織を刺激するための方法を提供する。
【0026】
本発明の方法の一実施態様において、振動装置は、好ましくは、導入する前に第1の状態に配置され、刺激手段は体の開口部を通じて体腔内へ導入できる。
【発明の効果】
【0027】
このように、本発明の装置と方法は、機械的振動によって、近づくことが困難である体腔内の広い面積の組織表面の神経末端や血管の、好ましくは、鼻腔内の神経末端の、しかもさらに深部の血管に対しても、刺激のために使用することができる。
【0028】
本発明の装置と方法は、患者の気導腔、例えば、腸や鼻、及び、流体を導く腔、例えば、血管、胆管、又は、尿管の、治療に使用することができる。
【0029】
本発明の方法による、風邪に関わる、例えば、鼻詰まりの治療によって、粘膜の充血解消がもたらされる。この方法によって、鼻詰まりからの主観的な安堵感が患者にもたらされる。効果は数時間維持され、リバウンド効果は起きない。こうしたリバウンド効果は、多くの、いわゆる、市販の風邪用点鼻薬や鼻腔用スプレーに生じる。
【0030】
本発明の方法による、患者体腔内の神経末端や血管の振動刺激は、いくつかの異なった症状に効果を及ぼす。鼻腔内の粘膜の振動刺激の場合、この方法は、鼻腔内の通路を拡げることにより、風邪、アレルギー性鼻炎、慢性及び非慢性の非アレルギー性鼻炎、薬物性鼻炎の患者や、上気道の通路が狭まった患者に、効果をもたらす。
【0031】
本発明の方法による体組織への振動刺激によって、炎症症状の場合、コルチゾン等のコルチコステロイドによる投薬の必要性の減少と同様に、例えば、嗅覚の機能障害のある患者の嗅覚の改善、ポリープ手術後の再発の減少、組織炎症の減少、いびきの場合の上気道における障害の緩和がもたらされる。
【0032】
本発明の方法による末端神経の振動刺激は、知覚神経の反応を、おそらく運動神経の応答をも、促進し、異常な知覚神経機能、例えば、神経学的多動性又は活動性低下を有する患者の神経機能を正常化する。
【0033】
本発明の方法による振動刺激は、例えば、耳鳴り症状、喘息、慢性声帯炎、好ましくは大腸における腸の炎症、潰瘍性大腸炎、クローン病、及び、尿道炎の治療に使用できる。
【0034】
本発明の方法による神経末端の振動刺激は、神経性疼痛の症状を緩和することもできる。鼻の神経痛の場合、疼痛の緩和が、本発明の方法により達成される。
【0035】
深部血管及び静脈の振動刺激は、血管収縮を実現でき、これにより、体組織の腫脹を軽減できる。
【0036】
本発明の装置は、血管又は体の開口部への、医薬品の局所的な投与にも使用することができる。装置は、薬剤、例えば、コルチゾンを用いた従来の治療を、例えば、補完することができる。
【0037】
本発明の前記態様の他の実施態様は、独立形式請求項から明らかである。
【0038】
以下の詳細な説明において、添付図面が参照され、この図面において、
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の振動装置の実施態様を概略的に示す。
【図2】鼻腔内の、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示す。
【図3a】第1の状態に配置された、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段が膨張手段の導水管に収められている。
【図3b】中間の状態に配置された、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段が部分的に膨張している。
【図3c】第2の状態に配置された、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段が本質的に膨張している。
【図4a】第1の状態に配置された、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段が膨張手段の周囲に配置されている。
【図4b】第2の状態に配置された、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段が膨張している。
【図5】安定化部分を含む、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、ここでは、安定化部分は刺激手段内部に配置されている。
【図6a】交換可能な衛生的な保護カバーを含む、本発明の振動装置の実施態様を概略的に示す。
【図6b】本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、振動装置には、交換可能な衛生的な保護カバーが備えられている。
【図6c】本発明の振動装置の実施態様を概略的に示しており、振動装置には、交換可能な衛生的な保護カバーが備えられている。
【図7】本発明の装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段は、多くのアームにより構成されている
【図8a】第1の状態に配置された、本発明の装置の実施態様を概略的に示しており、刺激手段は膨張手段に収められており、刺激手段が多くの弾力性のあるアームで構成されている。
【図8b】中間の状態に配置された、本発明の装置の実施態様を概略的に示しており、ここでは、刺激手段が部分的に膨張され、刺激手段が多くの弾力性のあるアームで構成されている。
【図8c】第2の状態に配置された、本発明の装置の実施態様を概略的に示しており、ここでは、刺激手段が膨張し、刺激手段が多くの、弾力性のあるアームで構成されている。
【図9】本発明の方法の実施態様の振動刺激の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の好ましい実施態様を、限定されない実施例として及び図面を参照して、ここに記述する。
【0041】
本発明の第1の態様によると、体腔内の体組織の神経末端及び血管を刺激するための振動装置1が達成される(図1)。この装置は、膨張可能な刺激手段2及び刺激手段に振動を生じさせる振動手段を含んでいる。体腔、例えば鼻腔へ、体の開口部を通じて刺激手段を導入するために、振動装置を第1の状態に配置することができ、ここで刺激手段を体の開口部、例えば鼻孔を通して導入することができる。振動装置1を同様に第2の状態に配置することができ、ここで刺激手段を体腔内で体組織と密接な接触をもたらす様な容積に、刺激手段2は膨張される(図2)。刺激手段の容積は、このように、振動刺激に先立って体組織との良好な接触が得られるように、体腔の大きさに合わせて調整可能である。良好な、及び/又は、密接な接触とは、第2の、少なくとも部分的に膨張した状態の、刺激手段の有効な外表面が体組織の本質的に表面に寄りかかっているような接触を意味する。刺激手段は、測定可能な、制御可能な低い圧力で体組織に隣接していることが好ましい。
【0042】
本発明の実施態様においては、刺激手段はスムーズな外表面を有する。例えば、刺激手段の外表面は、外表面が滑らかな、又は、体腔若しくは鼻腔内の体組織との接触時の摩擦を最小にする様な材質でできている。同様に、刺激手段の外表面は、体の開口部の通過を容易にするために潤滑剤を含むことができる。刺激手段には、例えば、パラフィン溶液などの潤滑剤を、例えば塗布することができる。
【0043】
本発明の実施態様においては、刺激手段は弾力性がある。刺激手段は、例えば、弾性材料でできている。刺激手段の大きさと容積は、その結果内部圧力により変えることができる。刺激手段の大きさと容積のこの変化は、例えば、刺激手段への流体の供給を制御することで達成される。導水管を通じて、刺激手段への流体供給により、刺激手段の膨張が達成され、刺激手段から流体を除去することにより、刺激手段の圧縮が達成される。
【0044】
本発明の実施態様においては、刺激手段は装置の第1の状態に圧縮できる。この場合、刺激手段は、常圧下で膨張状態にある。刺激手段は、例えば外部作用又は圧力により、体腔の外部に、装置の第1の状態へと移動させることができる。外部作用の目的は、例えば空気等の流体を刺激手段より取り除くことにより、刺激手段を圧縮することである。これにより、刺激手段は装置の第1の状態に対応した大きさと容積となり、刺激手段は体腔内へと導入が可能となる。刺激手段の膨張は、外部作用が停止した時、ある一時的な遅れをもって、すなわち、体腔内で起こることができる。体腔内にて、装置は第2の状態に移動させられ、腔内にて体組織とできる限り大きな接触面積をとるために、刺激手段を少なくとも部分的に膨張させる。圧縮可能な刺激手段は、弾性材料でできていることが好ましい。
【0045】
一実施態様においては、刺激手段は一定の内部圧力を有し、この圧力は、治療に関連して調整されない。刺激手段の大きさと容積は、この場合、粘膜の治療が行われる体腔への開口部を刺激手段が通過し得るものでなければならない。適した形状を有するならば、刺激手段は、振動によって粘膜内の神経末端及び血管を刺激するために、粘膜に対して十分大きな接触面積を取ることができる。一定の内部圧力を用いた刺激手段を含む装置の実施例が図7に示されている。
【0046】
本発明の装置の別の実施態様においては、刺激手段を体腔内へと導入することができる装置の第1の状態において、刺激手段の大きさが小さくなるように、刺激手段は非弾性材料でできている。装置の第2の状態において、組織表面に隣接するように刺激手段を膨張させる。
【0047】
同様に、刺激手段は部分的に弾性特性を有することができ、これにより、装置が第1の状態に戻る時に、刺激手段を小さくしたり及び折りたたんだりの両方ができる。一般的に、刺激手段は折りたたむことができる薄い材料でできている。
【0048】
本発明の装置の一実施態様においては、刺激手段が接触するいかなる体組織に、刺激手段が化学的に又は生物学的に影響しない様な材料でできていることが好ましい。
【0049】
別の実施態様においては、刺激手段が接触するいかなる体組織に、刺激手段が化学的に又は生物学的に影響しない様な材料でできている。
【0050】
あるいは、医療目的を達成するために、例えば炎症を減らすために、患者の体腔又は身体の他の部分において、局部的に、化学的又は生物学的な活性を有する物質を、刺激手段の表面に塗布することもできる。
【0051】
刺激手段は、例えばプラスティック材料又はゴム材料でできている。刺激手段は、好ましくはラテックスでできている。
【0052】
刺激手段を、体腔内部の刺激手段に収められた流体を、刺激手段が放出しない様な材料で作ることができる。
【0053】
別の場合には、周囲の体組織に化学薬品、又は、薬剤を投与するための投薬口を有するように、刺激手段を設計することができる。
【0054】
刺激手段は、刺激手段が流体に対して半透過性である様な材料で作ることができる。例えば、体腔内又は鼻腔内の刺激手段を摩擦なしで動かすのを容易にするために、及び/又は、振動治療の一部として組織への医学的な作用のために、治療中に刺激手段に収められた流体を、少なくとも、部分的に体腔内又は鼻腔内に放出させることができる。鼻の治療の場合、そのような流体は、例えば、生理食塩水でよい。
【0055】
化学的、生物学的又は医薬的物質に対して半透過性であり、治療を受けている組織にこれらの物質を送り込む刺激手段は、例えば血管、腸又は胆嚢管の治療に、例えば、好適なものであり得る。
【0056】
患者の体腔又は末梢に、局部的に化学的又は医薬的な効果を持つ薬剤を投薬するために、刺激手段の表面にそのような薬剤を塗被することができる。
【0057】
刺激手段の寸法は、治療される体腔の大きさと形状に合わせて適切に適合させられる。例えば、成人の鼻腔の粘膜治療においては、刺激手段の膨張の程度と鼻腔の大きさ次第で、鼻の奥部の刺激手段の長さがおよそ3mmからおよそ100mm、好ましくはおよそ40からおよそ60mmが、例えば、適している。鼾をかく患者の鼻腔の治療の場合、口蓋のずっと奥で刺激を与えるためには、刺激手段は、100mmより長いのが好ましい。
【0058】
さらに、鼻における横方向の刺激手段の幅は、刺激手段の膨張の程度と鼻腔の大きさ次第で、およそ1mmからおよそ40mmに、好ましくは、およそ10からおよそ20mmに、変わり得る。新生児の場合、刺激手段は、装置の第1の状態において、例えば、長さおよそ20mmで、幅およそ1mmもあればよい。装置が膨張された第2の状態では、刺激手段は、長さおよそ20mmで、幅およそ3mmもあればよい。当然のことであるが、刺激手段の寸法は上記の間隔外に変わってもよい。
【0059】
ある他の体腔、例えば成人の腸、の治療のために、刺激手段の膨張の程度と体腔の大きさ次第で、刺激手段の長さがおよそ10mmからおよそ200mm、好ましくは、およそ100mmからおよそ200mm、例えばおよそ150mmであると好適である。さらに、ある他の体腔、例えば成人の腸、における刺激手段の幅は、刺激手段の膨張の程度と体腔の大きさ次第で、およそ1mmからおよそ40mm、好ましくは、およそ10mmからおよそ20mmに変わってもよい。
【0060】
当然のことであるが、装置の第2の状態における刺激手段の形状は、体腔の大きさと形状に適合させられている。例えば、鼻腔の場合、膨張状態の刺激手段は、例えば、円形、長円形又は小滴の形状を取ることができる。
【0061】
本発明の装置の振動手段は、刺激手段に振動を生じるように配置されている。振動手段の実施例は、例えば、刺激手段内部に設けられた振動発生器を含み、この振動発生器に外部電源より電流が流される。この実施態様においては、振動手段は、振動発生器と共に、この場合は必要とされる電気回路を含む。
【0062】
本発明の装置の別の実施態様においては、振動手段は、例えば、刺激手段の外部であるが装置に接続されている、外部設置の振動源を含んでいる。この外部振動源は、好ましくは、装置に収められている流体に振動を与えるように配置される。振動装置の実施例は、信号発生器、例えば、音声発信器を含んでいる。本発明の装置に適する他の振動源は、当業者に公知である。
【0063】
振動手段は、周波数1〜5000Hzの、好ましくはおよそ10〜100Hzの周波数の、さらに好ましくはおよそ30〜70Hzの周波数の、そして最も好ましくはおよそ35〜60Hzの周波数の振動を、刺激手段に生じさせるように設けられている。
【0064】
本発明の装置の実施態様においては、刺激手段の容積は膨張手段3により制御できる。本実施態様の実施例では、膨張を達成するため、膨張手段はさらに刺激手段へ流体を供給する、少なくとも1つの導水管を含んでいる。
【0065】
刺激手段の容積は、流体を、例えば空気等のガス、又は、液体を、膨張手段を通って振動装置に供給することにより適合せせることができる。この供給は、膨張手段を経由して、外部器具により調整できる。このような器具の実施例は、シリンダー内の流体量を調整し、これにより膨張手段内の流体量を調整するために、前後に移動させることができる可動プランジャーを有するシリンダーである。
【0066】
膨張手段は、好ましくは、少なくとも1つの導水管を含む。その様な導水管の実施例は、管類である。外部器具は、導水管への接続部を経由して、流体供給を調整することができ、これにより刺激手段の容積を調整することができる。
【0067】
通常は、膨張した刺激手段は、振動装置の第2の状態において、体腔の内部にて刺激手段が周囲の組織に(制御可能な)低圧をかけるだけの、少しでもあるとしたら、周囲の大気圧を僅かだけ超える内圧を有する。
【0068】
刺激手段と、適用例における導水管を含む膨張手段との間の接続部により、流体は、例えば、液体又はガスは、刺激手段と導水管の間を、周囲の組織に流体が漏れ出ることなく、自由に通ることができる。
【0069】
刺激手段を振動させるために、少なくとも、1つの導水管を通じて刺激手段に供給される流体に、さらに振動が加えられる。この場合、振動手段が流体に振動を供給し、この流体が刺激手段に振動を受け渡す媒体として機能する。振動は、1つ又はそれ以上の導水管内の流体を通じて、刺激手段へ仲介される。振動装置が、少なくとも部分的には、刺激手段の内部に安定化部分を含む場合には、体組織との接触表面を通じて、刺激手段が体組織の振動刺激をもたらすように、振動はこの部分にも仲介される。振動手段は、流体を通じて刺激手段に振動を仲介する外部振動源を含むことができる。
【0070】
図1は、第2の状態に配置された、本発明の装置の実施態様を概略的に示し、刺激手段2は膨張している。振動装置1は、膨張可能な刺激手段2と膨張手段3を含む。この実施態様において、刺激手段2は、膨張手段の一端が刺激手段の内側に位置するように、部分的に膨張手段3の周りに配置されている。刺激手段2は、膨張手段3の端部に直接接続するように、又は、この端部からいくらか離れた膨張手段3の周りのスリーブとして配置することも可能であろう。これらは、刺激手段を膨張手段に対して、いかに配置することができるかの実施例にすぎないこと、及び、本発明の範囲内で、他の実施例も可能であることは、当然である。
【0071】
膨張手段3は、好ましくは、流体を刺激手段2に供給するための、少なくとも1つの導水管4を含む。次に、刺激手段は、流体が導水管から刺激手段へと自由に通過できるように、膨張手段に接続される。通常は、流体が患者の開口部の内部で外に漏れ出ることができないように振動装置は閉じられている。少なくとも1つの導水管を含む膨張手段の実施例は、パイプ、管類、コンジット、シリンダー、チューブなどである。膨張手段は、例えば、プラスティック、ゴム、又は、金属材料で作ることができ、従って、問題になっている材料に特有の特性を有することができる。ある場合には、人間、又は、動物の身体内部へ、例えば、腸や血管へ、近づくことが難しい場所に装置を近づけるように、膨張手段は、長く、例えば、1mの長さであり、そして、曲がりやすくできる。鼻腔の治療の場合、膨張手段の好ましい長さは、70mmと300mmの間であり、一方好ましい幅は、好ましくは1mmと15mmの間である。腸の治療の場合には、膨張手段の好ましい長さは、50cmと150cmの間、好ましくは、80cmと100cmの間であり、一方、好ましい幅は10mmと30mmの間、好ましくは10mmと20mmの間、例えば15mmである。
【0072】
刺激手段は、どの体腔が治療されるかによって、例えば、堅いもの又は曲がりやすいものであり得る。
【0073】
流体は、好ましくは刺激手段2に供給されたり、除去されたりすることができる。言い換えれば、刺激手段は、流体を保有するための容量を有するように設計されている。刺激手段は、流体供給に意図された少なくとも1つの空洞を有する。刺激手段の実施例はバルーンであり、このバルーンにより、少なくとも部分的に膨張した状態において、体腔内の体組織に対する装置の接触表面を確かなものにする。刺激手段の他の実施例は、袋、泡、泡装置などである。
【0074】
図2は、本発明の装置1の実施態様がいかに人間の鼻腔において使用され得るかを概略的に示している。これは、体腔における本発明の使用実施例に過ぎないことは当然のことである。膨張手段3の一端は、通常、治療全体を通じて、鼻又は体の開口部の外にある。刺激手段2は、治療されるべき組織表面に密な接触をするように意図され、刺激手段が周囲の組織と良好な接触表面を与えるならば、複数の方法で設計できる。
【0075】
刺激手段2は、鋭い端部又は点を有しないように設計され、それ故、刺激手段は、刺激手段が接触する組織を損傷することはない。刺激手段2が組織表面を摩擦なしで滑ることができるように、刺激手段2の表面上に潤滑剤を使用することができる。
【0076】
本発明の方法は、体腔内の粘膜の治療を提供するものである。体腔内の組織の治療は、ここでは鼻腔内の治療によって例証される。
【0077】
膨張可能な刺激手段を含む振動装置が提供されている。次いで、膨張されていない刺激手段2が鼻孔経由にて鼻腔に導入される。振動装置は、鼻孔を通じての挿入を容易にし、かさばる器具が患者に与える恐ろしい感じを最小にするために、このように、好ましくは、第1の、本質的に膨張されていない状態にある。
【0078】
刺激手段2は、次に、鼻腔内で装置の第2の状態へと膨張される。導入時に、刺激手段が装置の第1の状態であるならば、刺激手段が少なくとも部分的に図2の鼻腔に導入された時に、膨張が生じる。
【0079】
例えば、膨張手段3によって、治療に適する大きさ、及び/又は、容積に、少なくとも部分的に刺激手段を膨張させることができる。好ましくは、膨張手段に含まれる、1つまたはそれ以上の導水管を通じて、刺激手段に流体を供給することにより、刺激手段は膨張する。このように、刺激手段の容積は、流体の供給により刺激手段内部にて達成される内部圧力によって調整される。例えば、流体を、膨張手段に接続された外部源(図示されていない)から供給することができる。
【0080】
少なくとも部分的に膨張した刺激手段の内部圧力と容積により、周囲組織との、特に本発明の処置により治療される神経末端と血管の組織との、良好な接触が得られる。少なくとも部分的に膨張した刺激手段2は、好ましくは、刺激手段の外部表面でより広い組織表面と接触し、これにより、振動装置が振動を生じた時に、多数の神経末端、及び/又は、血管を同時に刺激することができる。
【0081】
好ましくは、刺激手段は、刺激手段の外表面と周囲の組織との接触を与える内部圧力を有する。
【0082】
好ましくは、振動による組織の刺激は、刺激手段が望ましい容積を得た時に開始される。刺激手段が、好ましい、適切な容積に膨張できないように、組織が膨れている場合は、刺激手段が完全に、又は、部分的に膨張していない時に、例えば、圧縮されている時に、振動刺激を開始することができる。1つの実施態様においては、刺激手段の内部圧力が刺激手段に特定の形状、又は、容積になるのには不十分であるとしても、図5の安定化部分5により、刺激手段は適切な形状となる。
【0083】
刺激手段の容積は、周囲の組織が振動刺激に反応し、充血除去が起こるので、治療の間調整できる。同様に、振動刺激の間、刺激手段により周囲の組織に働く圧力を調整又は変えることができる。
【0084】
振動刺激は、好ましくは、およそ1秒からおよそ30分までの間、より好ましくは、およそ15秒からおよそ7分の間、刺激手段が体腔内にて振動を生じることを含んでいる。
【0085】
本発明の方法の振動刺激は、望ましい振動パターンのために様々な周波数、振幅、及び他の条件で実施できる。好ましくは、刺激は、1〜5000Hz、より好ましくは、およそ10からおよそ100Hz、さらに好ましくはおよそ30からおよそ70Hz、そして最も好ましくはおよそ35からおよそ65Hzの間の周波数にて行われる、が、他の周波数も予想される。振動装置は、好ましくは、およそ0.05mmとおよそ20mm、より好ましくは、0.3mmとおよそ5mmの間の振幅にて振動する、が、他の振幅も予想される。どんな振動条件が選択されるかは、ある程度は、どの腔に及びどんな治療が要望されているか、又は、治療を受ける患者の、どんな可能性のある症状かに拠っている。
【0086】
本発明の方法は、外部振動源を含むシステムを利用することができ、この外部振動源は、訓練を受けたオペレーター、例えば、医者若しくは看護士、又は患者自身により操作される。上記のシステムは、サポートなどに固定でき、又は、オペレーター又は患者により自由に扱うことができる。
【0087】
体組織に望ましい振動刺激を、適切な時間行った後、治療を適切に終了させることができる。少なくとも部分的に膨張した刺激手段は、刺激手段を体の開口部、例えば、鼻孔、を通じて除去する前に、適切に、基本的に膨張していない状態、装置の第1の状態に戻る。刺激手段のこの予測され得る容量減少は、例えば、流体圧力の低下、例えば、刺激手段内の圧力を低下させる膨張手段による空気又は液体圧力の低下により達成でき、それによって刺激手段内の圧力が減少する。圧力を低下した後、このように刺激手段は膨張していない状態に戻る。安定化部分5が装置に存在するならば、これにより、装置のある形状と容積を、ある程度保つことができる。
【0088】
体の開口部から、例えば、鼻孔から、刺激手段が通過できる様な大きさに、刺激手段が
回復した後、オペレーター又は患者は振動装置を体の開口部から、例えば、鼻から、引き出すことができる。
【0089】
本発明の方法の一実施態様においては、本発明の第1の態様の振動装置が利用される。
【0090】
本発明の振動装置を体の開口部にできる限り容易に導入するために、関連する体の開口部の大きさと、かさばった装置が患者に及ぼす可能性のある、ぞっとさせる影響を考慮して、膨張していない刺激手段はできる限り小さいことが望ましい。振動装置が、適切なやり方で、まとめられ、保管され、かつ、輸送されることも望ましいことである。
【0091】
本発明の装置の膨張可能な刺激手段は、かさばらない方法で装置の第1の状態に配置することができる。装置が膨張手段3を含む一実施態様においては、刺激手段2は、膨張手段に収められた第1の状態に配置することができる。膨張手段3が導水管4を含む場合には、刺激手段2は導水管内に含まれた第1の状態に配置することができる、図3a参照。刺激手段が潤滑剤と共に使用されるなら、この潤滑剤も導水管内に収めることができる。
【0092】
上述の実施態様により配置された刺激手段を含む本発明の装置を用いた治療においては、完全に又は部分的に膨張手段に、例えば、導水管4に、収められた刺激手段と共に、装置は体の開口部に導入される(図3a、3b)。刺激手段2の膨張は、恐らくより狭い体腔を、例えば、鼻孔を、通過した後で、体腔内部で起きる。刺激手段2を導水管4から押し出す圧力を与える流体で、膨張手段3を通じて振動装置を満たすことにより、刺激手段2を、膨張手段3から、例えば、導水管4から、例えば、動かすことができる。これにより、刺激手段は膨張される(図3b、3c)
【0093】
かさばらない第1の状態における、本発明の振動装置の別の実施例が図4a、4bに示されている。この場合、装置の第1の状態にある刺激手段2が、図4aの膨張手段3の周囲に配置されている。装置の第1の状態において、刺激手段は、膨張手段の周りに、又は、安定化部分がある場合には、安定化部分の周りに、例えば、畳めるか又はひだをつけることができる。体腔への体の開口部を通じての導入に続いて、刺激手段は、体腔内部にて、完全に又は部分的に、膨張する(図4b)。
【0094】
本発明の振動装置の別の実施例においては,装置の第1の状態の刺激手段は、場合により、安定化部分を含む、膨張手段の周りに配置されているが、膨張手段の貫通している端部を囲んではいない。この場合、場合によっては潤滑剤が塗布されている、貫通している端部は、体の開口部の内部又は体腔内部の組織を傷つけないように、柔軟な組織に優しい材料でできていることが望ましい。体の開口部を経由して体腔内への導入の後、刺激手段は、膨張手段の貫通している端部からやや離れて、膨張手段の周りにスリーブを形成し、体腔内部で、完全に又は部分的に膨張する。
【0095】
刺激手段を、本発明の装置の第1の状態にいかに配置するかに拘わらずに、装置の外装が好都合である。外装(図示されていない)により、いかなる潤滑剤、他の物質、揮発性物質又は装置の部品が、輸送や保管中に喪失又は劣化しないように守られると同時に、装置の衛生の確保を助け、機械的又は化学的作用から装置の繊細な部品を保護することができる。
【0096】
本発明の振動装置の一実施態様においては、前記装置は安定化部分を含んでいる。安定化部分5は、例えば、体腔内での刺激手段の導入及び/又は位置の制御を容易にし、特に、装置の第1の状態の刺激手段に体腔内部で望ましい位置を取らせるために、配置することができる。安定化部分5を、例えば、刺激手段2の内部に配置することができる(図5)。安定化部分は、膨張手段3(図示していない)のみに配置してもよいし又は刺激手段と膨張手段の双方に配置してもよい。
【0097】
図5には、本発明の装置の実施態様が示されており、刺激手段は安定化部分5を含んでいる。安定化部分は、好ましくは、体腔内で組織と直接接触をしないで、安定化部分の全体が、刺激手段に収められている。安定化部分5は、刺激手段へ流体を供給するために、膨張手段の導水管と刺激手段2の内部との間に、好ましくは、少なくとも1つの接続6を含んでいる。
【0098】
好ましくは、刺激手段と本質的に同一の振動パターンに従って、安定化部分に振動が生じる。中間流体無しに、刺激手段の表面を通じて安定化部分と接触する体組織は、刺激手段が少なくとも部分的に膨張状態にある時に、刺激手段の他の表面を通じて伝播される振動パターンに対応する振動パターンで刺激される。
【0099】
安定化部分は柔らかい曲がりやすい材料でできており、これにより、体の開口部の通過が容易になる。安定化部分はシリコーン、プラスティック又はゴム材料で、適切にできている。他の材料を使用することも予想される。
【0100】
刺激手段及び/又は体腔内部の周囲の組織を傷付けないように、図5の安定化部分5は、好ましくは、丸みのある形状を有する。体の開口部内の狭い通路へ安定化部分を含む刺激手段の導入を容易にするために、安定化部分は、安定化部分の下部の寸法(断面)より小さい上端寸法(断面)を有することが適切である。
【0101】
刺激手段が、装置の第2の状態において膨張する時、安定化部分は、刺激手段の内側表面との直接の物理的接触をしないことがある。好ましくは、安定化部分により、刺激手段への振動が仲介され;振動パターンは、安定化部分によって、あるとしても、少しだけ、妨げられるか又は抑えられる。振動手段が流体に振動を与える場合には、図5の安定化部分5による障害無しに、この流体が流れれば、それは、例えば、適切である。
【0102】
あるいは、安定化部分が刺激手段を完全に満たすような大きさと形状を有し、そこでは、刺激手段内に流体のためのスペースがない。この場合、安定化部分は、好ましくは、柔らかい曲がりやすい材質でできている。この場合、安定化部分は、刺激手段の目的を満たすことができ、刺激手段に取って替わることができる。
【0103】
静的な内部圧力を有する刺激手段も、図5の安定化部分を含むことができる。この実施態様においては、膨張手段3も、好ましくは、少なくとも安定化部分の一部を含む。
【0104】
治療方法の進行中に、刺激手段は、例えば、膨張手段、安定化部分又はおそらく他の機器を用いて、鼻腔、腸又は他の体腔に導入される。
【0105】
一実施態様においては、膨張手段は、体の開口部を通じて、体腔への振動装置の導入を容易にするための安定化部分を含む。
【0106】
安定化部分を含む膨張手段により、体腔内においてと同様に、体腔の外部で、並びに、振動装置が体腔へ導入される時及び体腔から引き出される時にも、例えば、振動装置の位置制御がさらに容易になる。この実施態様においては、腔内の刺激手段の位置と方向の制御を可能にするために、安定化部分は、好ましくは、寸法安定性と、場合により、剛性を有する。安定化部分を含む膨張手段は、まっすぐな形状をとることができ、比較的堅くてよい。あるいは、安定化部分を含む膨張手段はまっすぐな形状から逸脱することもでき、そして、例えば、湾曲したり又は曲っていてもよい。
【0107】
安定化部分が膨張手段内に収められているなら、前記部分は、その部分と膨張手段に安定性を与える、例えば、弾力性は無いが曲がりやすいチューブと、周辺構造とで作ることができる。その部分は、チューブのみから構成されてもよい。
【0108】
本発明の振動装置の一実施態様においては、刺激手段は交換可能な衛生的な保護カバー7で囲まれている。衛生的な保護カバー7は、ほこり又は他の生物学的若しくは化学的物質等の有害な物質の拡がりが防止するので、衛生的な保護カバー7により、例えば、装置を一回だけでなく多数回使用することができる(図6a)。
【0109】
図6a〜6cの衛生的な保護カバー7は、刺激手段2上のどんな有害な又は伝染性の物質も周囲の組織と直接の物理的な接触することができない様な方法で、装置1を囲んでいる。
【0110】
衛生的な保護カバー7は、容易に交換できなければならない。衛生的な保護カバーを装置1に配置する時、衛生的な保護カバーが容易に装置から離れ落ちることはないように、例えば、衛生的な保護カバー上のサポート8と膨張手段上のサポート9によって、衛生的な保護カバーは拘束されている。保護カバーが、例えば、関連の体腔内で動かなくなる、又は、体腔内に残ってしまう、又は、治療後に開いてしまうことによる問題は、これにより回避される。これにより、例えば、鼻腔治療時に、衛生的な保護カバーが患者の気道に残ってしまって、患者を危険や不安に曝すリスクが除かれる。図6a〜6cは、衛生的な保護カバー7を膨張手段3にいかに配置することができるかを示しており、刺激手段2の完全な囲い込みと同時に、装置1への衛生的な保護カバーの強固な取り付けが実現されている。
【0111】
衛生的な保護カバーは、刺激手段から周囲の組織に振動を伝える。衛生的な保護カバーの大きさが、囲まれる刺激手段の容積との関連で変えられるように、衛生的な保護カバーは弾力のあるものがよい。
【0112】
さらに、刺激手段と同様に衛生的な保護カバーは、好ましくは、体の開口部を内に又は外へ、及び、治療が実施される体腔へ、又は、体腔から容易に通過することができる。このように、衛生的な保護カバーは、好ましくは、スムーズな外部表面を有する、又は、別の方法で、周囲の体組織との摩擦をできるだけ小さくする。
【0113】
装置の実施態様の一実施例においては、装置は、周囲の組織への、薬学的、化学的又は生物学的影響が本質的に無い衛生的な保護カバーを含んでいる。
【0114】
あるいは、医療目的を達成するために、例えば、炎症を減らすために、衛生的な保護カバーは、周囲の組織に、化学的又は生物医学的影響を有する。
【0115】
本質的に薬学的、化学的又は生物学的な影響を周囲の組織にもたらさない潤滑剤を、例えば、衛生的な保護カバーと共に使用することができる。衛生的な保護カバーを、潤滑剤で塗布することができ、例えば、パラフィン溶剤に浸すことができる。
【0116】
衛生的な保護カバーは、好ましくは、使い捨て製品であり、言い換えれば、体腔における治療において一度より多くの機会に使用されるように意図されていない。
【0117】
振動装置自身が使い捨て製品の場合、衛生的な保護カバーは、刺激手段で構成することができ、したがって、交換できる必要はない。
【0118】
本発明の振動装置が衛生的な保護カバーと共に使用されるように意図されているなら、刺激手段それ自身は、どんな組織に優しい材料でできている必要はなく、その理由は、その時は、この材料が治療中に組織と接触しないからである。
【0119】
本発明の振動装置の実施態様において、刺激手段内には流体用のスペースはない。この様な振動装置は、図7の装置によって例示することができ、ここでは刺激手段2は、柔らかくて延性のある材料、例えば、シリコーン、プラスティック又はゴムでできている任意の本数のアーム10を含んでいる。アームが体の開口部を通じて導入される時は、アームを圧縮させることが可能であり、最初は、利用可能な全表面積は減らされており、その後、体腔内部で膨張され、アームが拡がり、アームの利用可能な外表面積は最大になる。アームは、装置と体組織との間に良好でタイトな接触が実現されるように、大きな面積の領域に分布している。アームは、静的な内部圧力を有することが可能であり、及び/又は、流体の供給なしで膨張ができる。しかし、例えば、アームの投薬用開口部を通じて医療用又は他の生物学的効果を持つ物質の投与のために、流体の供給がとにかく発生してもよい。
【0120】
前記アーム10は、例えば、弾力性のあるものであってよく、図8a〜8cに示されている。弾力性のあるアームは、第1の状態では、膨張手段に、例えば、膨張手段の導水管に収めることができる(図8a)。例えば、アーム10は、膨張手段から、例えば導水管から、アームを押し出すエレメント11により、装置の第2の状態へと、移動することができる(図8b)。エレメントは、例えば、流体又はプランジャーの様な固体であってよい。装置を体腔内に導入した後、アームは体腔内部に分配され、その結果、装置に第2の状態がもたらされ、組織の広い面積が届く範囲となる(図8c)。このように、刺激手段と体組織との良好でタイトな接触が、振動刺激が開始される前に、達成される。刺激手段に含まれるアームの本数がより多ければ多い程、体組織に隣接するより広い利用可能面積が得られることは当然のことである。全体として、刺激手段2のアームにより届く、体腔内の組織表面は、刺激手段が体腔に入るために通過する体の開口部の面積より大きく成り得る。
【0121】
刺激手段が静的内部圧力を有する場合には、装置の第1の状態の刺激手段は、膨張手段に収めることができる。体腔にて振動を用いた治療を行うために、例えば、図8bのエレメントによって刺激手段が外に押し出されることにより、刺激手段の第2の状態への膨張が起きる。
【0122】
本発明の振動装置は、例えば、安全弁を含むこともでき、装置に過大な圧力で液体が供給された場合に、その圧力の一部を放出することができ、これにより装置の圧力は適切なレベルへと下げられる。
【0123】
装置を、外部器具、及び、例えば、振動装置の操作用のハンドルに、接続することができる。
【0124】
本発明の装置が、少なくとも部分的に膨張した刺激手段を有して、第2の状態にある時に、刺激手段は振動を生じるようになる。振動は、好ましくは、刺激手段の外表面と組織表面との間の直接の物理的接触によって、体腔内で刺激を受ける、神経末端と血管を有する体組織に運ばれる。
【0125】
本発明の振動装置は、装置の実施態様と、関与している治療に応じた、様々な振動パターンで、振動を生じることができる。
【0126】
本発明の装置は、刺激手段の容積が振動するということを意味するパターンで振動を生じることができる。装置には、膨張手段に平行な刺激手段の縦方向の動きによって、振動がもたらされてもよい。装置には、任意の主軸の回りの振動によって、振動がもたらされてもよい。装置には、任意の平面に並進する動きによって、振動がもたらされてもよい。刺激手段の振動は、前記振動パターンの組み合わせであってもよく、又は、関与している適用分野を考慮して、適切な方法にて振動してもよい。
【0127】
患者の鼻腔を治療する時、本発明の振動装置は、普通は、好ましくはおよそ30〜70Hzの周波数にて振動を生じるが、他の治療においては、他の振動周波数があり得る。治療される体組織内の神経末端への振動装置の神経学的効果は、特定の周波数又は治療において使われる周波数によって、大方の場合、決定される。
【0128】
本発明の振動装置によって体組織の治療をする時、治療される組織の神経末端への装置の効果は、刺激手段によって組織がさらされる振動の大きさ(振幅)にも依存する。通常は、刺激手段の表面に、0.05mmとおよそ20mmの間の、より好ましくは、0.3mmとおよそ5mmの間の振幅で、振動がもたらされるが、ある治療に要求される振幅は、関連する体の開口部の性質、問題となっている患者の感度、及び、実施されようとしている治療の種類によって決定される。
【0129】
本発明の振動装置は、応用分野に応じて、様々な波形にて振動を生じることができる。振動装置は、例えば、振動が、正弦波で又は矩形波として、後者の場合0.1と0.5の間の“負荷サイクル”にて、表現することができるように、振動を生じることができる。他の波形も、上記したものと類似のものも又は類似でないものも、今回の場合に適切であり得る。
【0130】
パイロット・テスト
本発明の装置と方法を用いてパイロット・テストが行われた。テストは、成人の、健常人、並びに、鼻部に関連した様々な種類の問題、及び/又は、疾患を持った患者の鼻にて行われた。
【0131】
これまでに行われたすべてのテストにおいて、振動手段に接続された刺激手段と膨張手段を含む振動装置が使用された。
【0132】
刺激手段は、膨張した、第2の状態において、直径1.5cmで、長さ5cmのバルーンであった。バルーンは、導水管を含む膨張手段に接続された。長さ15cmの管類がこの目的に使用された。管類とバルーンは、鼻腔内への導入を簡単にするために、最大で4cmの長さを有しており、管類の一端がバルーン内にあるように、互いに接続された。バルーンを膨張させるために、管類はバルーンに流体を、この場合は空気を、供給した。閉鎖系の空気システムに接続された別の管類にと同じように、管類の他の端部は三方コックを経由して、目盛付き注射器(20ml)に接続された。閉鎖系空気システムは、柔軟な膜に接続され、その膜は、次には間隔10〜100Hzの可変の周波数を持つ音声発信器に接続された。水圧0〜100cmの圧力間隔以内で制御された方法にて、空気圧は変化させることができよう。振動する膜の振幅は、制御された方法にて(任意ではあるが、再生可能なユニットにおいて)変えられるであろう。使用に先立って、バルーンに、使い捨て手袋の指部から成る、衛生的な保護カバーが取り付けられた。鼻腔内へのそれぞれの導入に先立って、衛生的な保護カバーはパラフィン溶液に浸された。
【0133】
治療方法
下記の一般的な方法が、すべての治療に使用された:
バルーンと膨張していない状態の衛生的な保護カバーを有する、第1の状態の振動装置が鼻腔に導入された。鼻腔内にて、バルーンを水圧40〜80cmへと膨張させた。
【0134】
音声発信器を用いて柔軟な膜の制御運動によって、バルーンを経由して、間隔が水圧40〜80cm以内で、選択された圧力の周りで、殆ど変動なしで、閉鎖系システムの空気圧を変化させる変えることにより、間隔39〜60Hzの振動が達成された。刺激は、鼻腔内で5〜10分間与えられた。
【0135】
次に、空気はバルーンから排出され、バルーンは膨張していない状態に移された。バルーンは鼻腔から引き出され、衛生的な保護カバーは取り除かれた。
【0136】
新しい保護カバーがバルーンに当てられ、第二の鼻腔に導入する前に、パラフィン溶液に浸された。上記の方法により、バルーンを、鼻腔内で水圧40〜80cmへと膨張させた。間隔39〜60Hzの周波数を有する振動が、5〜10分間、達成された。
【0137】
前記方法によるテストが、健常人と患者とに行われ、そして治療の結果が、鼻腔を通る空気の通りの効果として、即ち、鼻呼吸抵抗の主観的評価度合いとして、評価された。患者は、治療前後の鼻の通りを、0〜10の観察によるスケール(VAS)に基づいて、評価した、ここで、0は抵抗無しに対応し、10は最大の抵抗、即ち、完全な鼻詰まり、に対応する。
【0138】
様々なグループの患者と健常人の結果が下記に記載されている。
【0139】
健康な、症状の無い個体
健常人が、両方の鼻腔に、一度には片側の鼻腔に、上記一般的治療方法(周波数40Hz、5分間、水圧50cm)にて手当された。両方の鼻腔の処置完了後15分以内に、呼吸抵抗がVASスケールにて評価された。
【0140】
すべての個体が、呼吸抵抗の低下を体験した。グループの呼吸抵抗は、VASスケールで、平均して3から1に減少した。両側とも、空気の通りが楽であるのが、少なくとも2時間続いたと評価された。ある個体の場合には、空気の通りが楽であるのが、4時間に至るまで続いた。
【0141】
風邪をひいている個体、ただし、これの他は健康
この個体は、1〜2日前から、臨床的に上気道に、おそらくウィールス感染により、感染していて、この感染により、鼻水が出、鼻の空気の通りが悪く、即ち、かなりの鼻詰まりを引き起こしていた。すべての個体が、上記の一般的治療方法(水圧70cm)により治療を受けた。
【0142】
グループの全メンバーが、10〜15分後に、呼吸抵抗の軽減を経験した。主観的な呼吸抵抗は、全ての固体に対して、グループレベルで、VASスケール8から3へと軽減された。効果は少なくとも2時間続き、ある個体では、3時間より長い間続いた。
【0143】
薬物性鼻炎患者
薬物性鼻炎の患者は、風邪の治療には鼻詰まり防止の点鼻薬に、または、鼻詰まりには鼻腔用スプレーに依存しており、それ故、これらの薬を、通常毎晩、そしてしばしば昼間にも使用する。これまで治療を受けたこれらの患者は、毎晩、大部分の患者はその上毎日、点鼻薬を利用してきた。この常用は、少なくとも2年間続いてきており、患者の何人かは、10年間までも続いてきた。常用の開始の理由は通常知られていないが、重くて長引く鼻詰まりと共に、上気道の感染に関連して鼻詰まりが始まったことは、珍しいことではない。一部の患者は、鼻詰まりを伴う頑固な問題について、鼻をかんだ後又は鼻の外側若しくは内側を手術した後、と述べた。調査対象のすべての患者は、多くの既知の薬物治療計画で治療されたと述べた。同様に、一部の患者は、鼻の手術をうけた、とりわけ、粘膜の鬱血、即ち“萎縮(shrivelling)”を軽減するために、鼻粘膜を焼かれた、とも述べた。
【0144】
本方法や本装置を用いて治療を受けたすべての患者は、以前の薬物治療は、薬物治療が終了した後は、何らの効果も無かったと述べた。さらに、手術を受けた、そのうち何人かは4度も受けた、すべての人が、手術の効果は乏しい、即ち、彼らは鼻詰まりを緩和できなかった、これが薬の常用が続いた理由である、と述べた。
【0145】
前記治療方法(周波数48Hz、水圧40〜50cm、鼻粘膜の手術を受けた人には、水圧70cm)にて7分間を、2回、ある時は3回、治療した後では、すべての患者において、少なくとも1カ月間、最大限でも、これまでの最長の継続時間である3カ月間、昼間の鼻詰まりが完全に無くなった(VASスケールで平均8から2への改善)。
【0146】
ある患者の場合には、治療後に夜間も鼻詰まりが無くなった(VASスケールで平均9から2への改善)。このように、これらの患者は、3か月に至るまで、症状が完全に出なかった。
【0147】
治療に多少なりとも反応を示したこれらの患者は、すべて昼間には症状が出なかった(上記参照)、が、治療の5〜10日後に、かれらは、片側の、ただし、交互の側の、鼻詰まりを夜間に再び経験し、それ故、追加の治療が必要であった(前記治療方法によった)。繰り返した治療により、その後の5〜10日間症状が出なかった、等をもたらした。
【0148】
すべての患者は、彼らが受けた治療の効果は、長い間変わらずに続いた、即ち、個体又は患者の治療が繰り返された時に、効果が減少しなかった様だ、と述べた。
【0149】
比較治療、薬物性鼻炎の一患者
比較実験として、薬物性鼻炎の一患者に、一方の鼻孔に風邪用の点鼻薬を用いて、もう一方の鼻孔に上記(薬物性鼻炎の他の患者に対すると同様の)振動刺激にて、治療を施した。治療の時、この患者は10年より長い間点鼻薬を常用してきていた。
【0150】
一方の鼻孔に点鼻薬を用いて治療を施した後、一定の、同じ程度の鼻詰まりが認められた。もう一方の鼻孔に、振動刺激にて治療を施した後、鼻孔内の神経機能が通常の状態に戻った、即ち、様々な程度の鼻詰まりが、夜と昼に、認められた。通常、昼間と夜間の鼻詰まりの変化は、各鼻孔において、正弦曲線に従うと説明できる。当初、鼻詰まりは一方の鼻孔には無く、その後、増えていった。他方の鼻孔における鼻詰まりは、最初の鼻孔と比較すると、逆転した正弦曲線に従う、これは、一方の鼻孔が鼻詰まりする時は、他方の鼻孔は空気が通っており、そして逆もまた同様であることである。
【0151】
神経痛の患者(他の点では健全)
この患者は10年より前の時から、鼻に痛みを持っていた。患者は、利用可能な、あらゆる種類の痛みを緩和する治療、及び/又は、薬物治療を試みてきたが、何らの実質的な効果が無かった。強力な鎮痛剤により、数時間の痛みの緩和がもたらされてきた。
【0152】
鼻の痛みについての他の考えられる原因が除外された後で、神経痛との診断がなされた。
【0153】
これまでの痛み緩和の治療が中止された。上記治療方法(周波数48Hz、水圧40〜50cm)による7分間の治療後、患者は、痛みと薬物治療から、8週間解放され、この期間は、これまでのところ、このケースのフォローアップ時間に相当している。
【0154】
鼻腔に非アレルギー性の炎症を有する患者
これらの患者すべてに、アレルギー検査が行われたが、いかなるアレルギーも有さないと診断された。患者は、鼻詰まり、及び/又は、鼻の分泌物の増加を軽減するために、毎日鼻にコーチゾン噴霧を使用していた。薬用治療は、ある程度かれらの症状を軽減した。
【0155】
患者に、上記方法による治療(周波数48Hz、水圧40〜50cm)を、7分間一方の鼻孔に施した。コーチゾン噴霧を用いた薬物治療を完全にやめた後、治療が1週間行われた。未治療の鼻孔(VASスケール値が6と5にとどまっている)より、空気の通りの改善(VASスケールで平均6から3への改善)と、分泌物の減少(VASスケールで平均5から3への改善)が、治療後の1週間、治療された鼻腔で経験された。
嗅覚低下の患者
【0156】
これらの患者は、嗅覚低下を経験していると自ら述べた。
【0157】
7分間の上記方法による治療(周波数48Hz、水圧70cm)の後、彼らは嗅覚の改善を体験した。
【0158】
周辺の人に迷惑をかけるいびきをかく患者
親族によると、いびきで周辺の人に迷惑をかけるいびきをかくとみなされていた患者は、上記方法による治療後に、いびきをかかなくなった。
【0159】
結論として、振動刺激の治療は、いかなる“リバウンド”の鼻詰まりを引き起こさない、即ち、鼻詰まりがひどくなるという、いわゆるリバウンド効果が、長い時間をかけて何回も治療を繰り返した後でさえ、続いて生じることがないことを、テストが示した。リバウンド効果は、市販の多くのいわゆる風邪用点鼻薬を用いると起こる。その上、この治療方法は、新生児の時から及び妊娠中も、副作用無しで使用できる。
【0160】
このように、患者の敏感な体組織の刺激のために、到達するのが困難な体腔内にて使用する振動装置が提供された。本発明の装置は、患者又は別のオペレーターにとって使用が容易である。本装置は狭い体の開口部を通じて、容易に導入可能であり、刺激手段が、組織を押しのけること無く体組織に隣接するように、少なくとも、部分的に膨張する第2の状態に配置できる。
【0161】
さらに、体腔内の体組織の刺激のための方法が提供された。本方法は、末梢知覚神経と、及び、おそらく、運動神経とにおける、神経機能の正常化を推進する。鼻腔内の多くの症状を治療する時、従来の治療計画が効果を生じない時に、本方法は効果をもたらす。本方法は、副作用を起こさず、すべての年齢層の患者に使用できる。加えて、これは、痛みが無く迅速であり、多くの場合、症状の緩和又は症状の除去に、持続的な効果をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体腔内において、体組織を刺激するための振動装置であって、
膨張可能な刺激手段と、
刺激手段に振動を生じさせる振動手段を含み、
刺激手段を体の開口部を通じて体腔内へと導入できる第1の状態、及び、刺激手段が体腔内で組織に隣接するような容積に、刺激手段が膨張する第2の状態に、振動装置を配置できる振動装置。
【請求項2】
振動手段が、1〜5000Hzの周波数で刺激手段に振動を生じさせるように配置されている、請求項1に記載の振動装置。
【請求項3】
振動手段が、10〜100Hzの周波数で刺激手段に振動を生じさせるように配置されている、請求項2に記載の振動装置。
【請求項4】
振動手段が、30〜70Hzの周波数で刺激手段に振動を生じさせるように配置されている、請求項3に記載の振動装置。
【請求項5】
振動手段が、35〜60Hzの周波数で刺激手段に振動を生じさせるように配置されている、請求項4に記載の振動装置。
【請求項6】
刺激手段は、弾力性のある、請求項1〜5のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項7】
刺激手段がスムーズな外表面を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項8】
刺激手段の外表面が潤滑剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項9】
刺激手段は、患者の体腔内局所において、又は、末梢において、化学的又は、生物学的活性を有する物質で塗被されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項10】
刺激手段が、周囲の体組織に化学薬品、又は、薬剤を投与するための、投薬口を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項11】
刺激手段が、プラスティック材料製である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項12】
刺激手段が、ゴム材料製である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項13】
刺激手段を取り囲むように配置された、交換可能な衛生的な保護カバーを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項14】
刺激手段を膨張させるための膨張手段を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項15】
膨張手段が、膨張を実現するために、刺激手段に流体を供給するための、少なくとも、1つの導水管を含む、請求項14に記載の振動装置。
【請求項16】
振動手段が、流体に振動をもたらすように配置されている、請求項15に記載の振動装置。
【請求項17】
第1の状態において、刺激手段が、膨張手段内に収められている、請求項14〜16のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項18】
刺激手段が、膨張手段の導水管内に収められている、請求項17に記載の振動装置。
【請求項19】
第1の状態において、刺激手段が、膨張手段の周りに配置されている、請求項14〜16のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項20】
第1の状態において、体の開口部を通じて、体腔へ導入するために、刺激手段が圧縮されるように、刺激手段が圧縮可能である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の振動装置
【請求項21】
安定化部分を含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項22】
第1の状態において、刺激手段が、安定化部分の周りに配置されている、請求項21に記載の振動装置。
【請求項23】
患者の体腔内において、体組織を刺激するための方法であって、
体の開口部を通じて刺激手段を体腔内へ導入できる、膨張可能な刺激手段を含む振動装置を備え、
体の開口部を通じて体腔内へ刺激手段を導入し、
刺激手段が体腔内の組織に隣接するような振動装置の第2の状態に刺激手段を膨張し、そして
前記第2の状態において、刺激手段に振動を生じさせる工程を含む方法。
【請求項24】
導入に先立って振動装置が、刺激手段を体の開口部を通じて体腔内へと導入できる第1の状態に配置されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
刺激が1秒から30分の間継続する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
刺激が15秒から7分の間継続する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
刺激が1〜5000Hzの周波数で伝えられる、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
刺激が10〜100Hzの周波数で伝えられる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
刺激が30〜70Hzの周波数で伝えられる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
刺激が35〜60Hzの周波数で伝えられる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
刺激が0.05mmと20mmの間の振幅で伝えられる、請求項23〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
刺激が0.3mmと5mmの間の振幅で伝えられる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
体腔における刺激が、耳鳴り症状、コルチコステロイドを用いて治療される症状、慢性の声帯炎、腸の炎症、及び、組織の炎症から選択された症状を患っている患者の治療のために使用される、請求項23〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
体腔が鼻腔である、請求項23〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
鼻腔における刺激が、風邪、アレルギー性鼻炎、慢性又は非慢性の非アレルギー性の鼻炎、薬物性鼻炎、嗅覚の障害、ポリープ手術後の再発の危険、いびき、及び、上気道の通路の狭まりから選択された症状を患っている患者の治療のために使用される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
体腔が腸である、請求項23〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
患者の体腔内において、体組織を刺激するための振動装置であって、
膨張可能な刺激手段と、
刺激手段に振動を生じさせる振動手段を含み、
刺激手段を体の開口部を通じて体腔内へと導入できる第1の状態、及び、刺激手段が体腔内で組織に隣接するような容積に、刺激手段が膨張する第2の状態に、振動装置を配置できる振動装置。
【請求項2】
振動手段が、1〜5000Hzの周波数で刺激手段に振動を生じさせるように配置されている、請求項1に記載の振動装置。
【請求項3】
振動手段が、10〜100Hzの周波数で刺激手段に振動を生じさせるように配置されている、請求項2に記載の振動装置。
【請求項4】
振動手段が、30〜70Hzの周波数で刺激手段に振動を生じさせるように配置されている、請求項3に記載の振動装置。
【請求項5】
振動手段が、35〜60Hzの周波数で刺激手段に振動を生じさせるように配置されている、請求項4に記載の振動装置。
【請求項6】
刺激手段は、弾力性のある、請求項1〜5のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項7】
刺激手段がスムーズな外表面を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項8】
刺激手段の外表面が潤滑剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項9】
刺激手段は、患者の体腔内局所において、又は、末梢において、化学的又は、生物学的活性を有する物質で塗被されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項10】
刺激手段が、周囲の体組織に化学薬品、又は、薬剤を投与するための、投薬口を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項11】
刺激手段が、プラスティック材料製である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項12】
刺激手段が、ゴム材料製である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項13】
刺激手段を取り囲むように配置された、交換可能な衛生的な保護カバーを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項14】
刺激手段を膨張させるための膨張手段を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項15】
膨張手段が、膨張を実現するために、刺激手段に流体を供給するための、少なくとも、1つの導水管を含む、請求項14に記載の振動装置。
【請求項16】
振動手段が、流体に振動をもたらすように配置されている、請求項15に記載の振動装置。
【請求項17】
第1の状態において、刺激手段が、膨張手段内に収められている、請求項14〜16のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項18】
刺激手段が、膨張手段の導水管内に収められている、請求項17に記載の振動装置。
【請求項19】
第1の状態において、刺激手段が、膨張手段の周りに配置されている、請求項14〜16のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項20】
第1の状態において、体の開口部を通じて、体腔へ導入するために、刺激手段が圧縮されるように、刺激手段が圧縮可能である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の振動装置
【請求項21】
安定化部分を含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項22】
第1の状態において、刺激手段が、安定化部分の周りに配置されている、請求項21に記載の振動装置。
【請求項23】
患者の体腔内において、体組織を刺激するための方法であって、
体の開口部を通じて刺激手段を体腔内へ導入できる、膨張可能な刺激手段を含む振動装置を備え、
体の開口部を通じて体腔内へ刺激手段を導入し、
刺激手段が体腔内の組織に隣接するような振動装置の第2の状態に刺激手段を膨張し、そして
前記第2の状態において、刺激手段に振動を生じさせる工程を含む方法。
【請求項24】
導入に先立って振動装置が、刺激手段を体の開口部を通じて体腔内へと導入できる第1の状態に配置されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
刺激が1秒から30分の間継続する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
刺激が15秒から7分の間継続する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
刺激が1〜5000Hzの周波数で伝えられる、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
刺激が10〜100Hzの周波数で伝えられる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
刺激が30〜70Hzの周波数で伝えられる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
刺激が35〜60Hzの周波数で伝えられる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
刺激が0.05mmと20mmの間の振幅で伝えられる、請求項23〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
刺激が0.3mmと5mmの間の振幅で伝えられる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
体腔における刺激が、耳鳴り症状、コルチコステロイドを用いて治療される症状、慢性の声帯炎、腸の炎症、及び、組織の炎症から選択された症状を患っている患者の治療のために使用される、請求項23〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
体腔が鼻腔である、請求項23〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
鼻腔における刺激が、風邪、アレルギー性鼻炎、慢性又は非慢性の非アレルギー性の鼻炎、薬物性鼻炎、嗅覚の障害、ポリープ手術後の再発の危険、いびき、及び、上気道の通路の狭まりから選択された症状を患っている患者の治療のために使用される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
体腔が腸である、請求項23〜33のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9】
【公表番号】特表2010−526621(P2010−526621A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507941(P2010−507941)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056080
【国際公開番号】WO2008/138997
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509315412)リノメド・アクチエボラーグ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056080
【国際公開番号】WO2008/138997
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509315412)リノメド・アクチエボラーグ (1)
【Fターム(参考)】
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