説明

振動診断システム

【課題】 作動の良否を正確に診断することのできる振動診断システムを提供する。
【解決手段】 入口側配管2に複数のホルダー8,9,10を取り付けて、超音波送受信器5,6を着脱自在に配置する。蒸気トラップ1の上面にハンディ式の超音波振動検出器7を押し当てて、蒸気トラップ1の内部を流下する流体によって発生する超音波振動を検出する。超音波送受信器5と超音波振動検出器7は、接続コード13,16で超音波流量測定器4と接続する。超音波流量測定器4には各種演算や表示や記憶を行う記憶演算表示部を内蔵する。
蒸気トラップ1の作動の良否を振動検出器7で測定することが出来ると共に、蒸気トラップ1に流入する復水量もホルダー8,9,10を介した超音波送受信器5,6で測定することができ、蒸気トラップ1の作動の良否をより正確に診断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種流体配管に取り付けられる自動制御弁や手動弁などの弁類若しくは蒸気トラップやガストラップなどのトラップ類、あるいは、モーターなどの各種プラント設備類の保守・点検のために振動を検出して作動の良否を診断する振動診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
振動診断は、モーターなどの回転機械や、内部を液体や気体が通過する弁類やトラップ類から発せられる振動を検出して、予め設定しておいた作動の良否の振動基準と比較することにより、診断対象物が正常に作動しているのか否かを診断するものである。
【0003】
従来の振動診断システムにおいては、特に、診断対象物の内部を流体が通過するものにおいて、通過流量値がどの程度の値であるのかが不明確なために、作動の良否を正確に診断することができない問題点があった。これは、弁内部を通過する流量が多い場合又は弁部から漏洩する流体が多い場合は発生する振動値が大きくなり、一方、弁内部を通過する流量が少ない場合又は弁部から漏洩する流体が少ない場合は発生する振動値が小さくなるのであるが、通過流量値が不明確な場合に通過流量は少ないものとの推測で振動を検出して、検出振動値が比較的大きな値であった場合に、実際には多量の流体が通過しているために振動値が大きいのであるにもかかわらず、診断対象物としての弁が多量の流体を漏洩しているものと誤って診断してしまうからである。
【特許文献1】特公平4−55260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、診断対象物を通過する流体量を測定できるようにして、診断対象物の作動の良否を正確に診断することのできる振動診断システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、診断対象物の発する振動を検出して、診断対象物が正常に作動しているのか否かを診断するものにおいて、診断対象物を通過する流体量を超音波で測定する超音波流量測定器を具備したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、超音波で流量を測定する超音波流量測定器を具備したことによって、診断対象物を通過する流体量を測定することができ、診断対象物の作動の良否を正確に診断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の振動診断システムでは、超音波流量測定器として、従来周知のシングアラウンド法やドプラー法等で流体の通過流速を測定し、補正係数や管路内断面積を乗じて通過流量を測定する方法、あるいは、管路内の液体の液位を超音波で検出して、上述した流速や断面積から通過流量を測定する方法によって、流量値を正確に測定することができる。
【実施例1】
【0008】
本実施例においては、診断対象物として蒸気トラップ1を用いた例を示す。蒸気トラップ1は、入口側配管2から流入して来る蒸気と、蒸気の凝縮した復水との混合流体の内、液体としての復水だけを出口側配管3へ排出し、蒸気は排出することのない自動弁の一種である。
【0009】
図1において、蒸気トラップ1と、超音波流量測定器4と、超音波送受信器5,6、及び、超音波送受信器6を先端に取り付けたハンディ式の超音波振動検出器7とで振動診断システムを構成する。図1においては、超音波振動検出器7によって、蒸気トラップ1が発する超音波振動を検出して、蒸気トラップ1が正常に作動しているのか、又は、蒸気漏れを起こしているのか等の作動の良否を診断している状態を示す。なお、超音波送受信器6は振動検出器7から着脱自在に取り付けるものとする。
【0010】
入口側配管2に超音波送受信器5を所定角度で固定するホルダー8を取り付ける。ホルダー8から所定距離隔てて第2のホルダー9を取り付ける。ホルダー9には、図示しないが、配管2内の流体の流速を測定するために着脱式の超音波送受信器6を送受信器5と同様に取り付ける。また、配管2の下面に第3のホルダー10を取り付けて、超音波送受信器5,6のいずれか一方を固定して配管2内の液位を測定することができるようにする。
【0011】
蒸気トラップ1の入口11を入口側配管2と接続し、出口12を出口側配管3と接続する。蒸気トラップ1は、流入して来る気液混合流体の内、液体としての復水だけを出口12側へ排出するものであるが、長期間の使用によって蒸気を出口12側へ漏洩したり、あるいは、出口12側へ復水を排出することが出来なくなってしまう不具合を生じる。本実施例においては、超音波振動検出器7により蒸気トラップ1の発する超音波振動を検出することによって、蒸気トラップ1が正常に復水だけを排出しているのか、不良となって蒸気を出口12側へ漏洩しているのか、あるいは、復水を排出できなくなっているのかをそれぞれ測定することができるものである。
【0012】
超音波振動検出器7の上端部に接続コード13を着脱自在に取り付ける。接続コード13の他端部は各種演算や表示や記憶機能を果たす超音波流量測定器4と接続する。超音波振動検出器7で検出された蒸気トラップ1の超音波振動は、接続コード13で測定器4に送られ、この測定器4で演算や比較等が行われ、表示部14にその結果を表示する。測定器4には、各種データや条件や数値を入力するためのキーボード15を配置すると共に、接続コード16によって超音波送受信器5と接続する。
【0013】
入口側配管2を通過する液体としての復水量を測定する場合は、超音波送受信器6を振動検出器7から取り外して接続コード13と接続すると共に、ホルダー9に固定して、配管2上面の超音波送受信器5と対をなし、それぞれ超音波を発信又は受信することによって、配管2内の復水の流速を検出することができ、更に、必要な補正係数や配管2の断面積等を測定器4へ入力することによって、配管2を通過する復水量を測定することができる。
【0014】
配管2内を通過する復水量が少なくてホルダー8,9を介した超音波送受信器5,6での測定値では誤差が大きい場合は、超音波送受信器5をホルダー8から取り外して別個のホルダー10に固定することにより、配管2内の断面積を満たしきれていない復水の液面で超音波が反射することを利用して、復水の液位を検出することができ、更に正確に配管2内を通過する復水量を測定することができる。
【0015】
このように蒸気トラップ1に流入する復水量を正確に測定することができ、診断対象物としての蒸気トラップ1の作動の良否も正確に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の振動診断システムの構成図。
【符号の説明】
【0017】
1 蒸気トラップ
2 入口側配管
3 出口側配管
4 超音波流量測定器
5 超音波送受信器
6 超音波送受信器
7 超音波振動検出器
8,9 ホルダー
10 ホルダー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象物の発する振動を検出して、診断対象物が正常に作動しているのか否かを診断するものにおいて、診断対象物を通過する流体量を超音波で測定する超音波流量測定器を具備したことを特徴とする振動診断システム。


【図1】
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【公開番号】特開2006−3085(P2006−3085A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176445(P2004−176445)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】