説明

振動速度センサ校正方法及び装置

【課題】振幅が大きい振動運動を発生し、この振動運動を用いて振動速度センサのスケールファクタの校正を行うことを可能にする。
【解決手段】回転ユニット12に内蔵された回転駆動源に結合された回転台14に、校正するべき振動速度センサSをその入力軸が回転台14の回転方向に合うように設置し、回転台14をある回転周波数で振動するように回転し、振動速度センサSに振動する振動速度が入力されるようにし、振動速度センサSからの出力信号を取得し、該取得した出力信号から振動速度センサSのスケールファクタを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地震や建物の揺れ等の振動速度を計測する振動速度センサの校正方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の振動速度センサとしては、特許文献1に記載されるものが知られている。この特許文献1で記載されたサーボ型振動計では、振子を備えており、振子に作用した振動変位が変位検出器によって電気信号に変換され、この変位出力がアンプを介して駆動部へと供給されるようになっている。振子に作用した振動は変位検出器によって、その振子の変位が電気信号として検出され、これがアンプを介して出力されると同時に、アンプからの電気信号は、微分回路を経て駆動部に帰還されて、駆動部では、振子の変位の微分出力の大きさに対応した復元力が働き、振子が元の位置に戻される力が発生される。
【0003】
アンプのゲインを大きく設定することにより、振子の変位量は、振動計の空間に対する変位の速度に比例することになるので、アンプからの出力を速度信号として得ることができるようになっている。
【0004】
また、本件特許出願人による特願2008−67097号では、振子の変位を検出するピックアップからの出力信号を周波数によって高域信号と低域信号とに弁別する弁別手段と、前記弁別手段からの高域信号を増幅して帰還信号とする第1増幅手段と、前記弁別手段からの高域信号を積分して振動速度信号とする積分手段と、前記弁別手段からの低域信号を微分して帰還信号とする微分手段と、前記弁別手段からの低域信号を増幅して振動速度信号とする第2増幅手段と、を有し、広い帯域で高感度な振動速度信号が得られるサーボ型振動速度センサが提案されている。
【0005】
ところで、このような振動速度センサを実用化する場合、そのスケールファクタの校正を行う必要がある。そこで、校正のために、図14に示すような振動運動を発生する振動装置を使用することが考えられる。
【0006】
図14の振動装置は、振動ユニット42と、振動ユニット42に結合された振動台44と、振動台44を案内する基台46と、振動ユニット42の振幅と周波数を制御するコントローラ48と、から成り、振動台44は、基台46上を水平方向に直線的に振動可能となっており、校正されるべき振動速度センサSは、振動台44上に入力軸を振動方向に合わせて設置され、コントローラ48から与えられた振幅と周波数を持つ振動速度信号を検出して出力するので、この出力信号からスケールファクタを校正することが考えられる。
【0007】
【特許文献1】実公平6−28698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この種の振動装置では、振動ユニット42のストロークに制限があり、周波数が低く大振幅の振動を発生させるのは困難であるという問題がある。
【0009】
例えば、振動速度をA=1 [m/sec]、振動周波数をf=0.1 [Hz]とすると、振動振幅である振動変位a[m]は
【0010】
【数1】

とかなり大きくなる。更にf=0.01 [Hz]ともなればa=16 [m]となって、このような長いストロークを直線的に振動台44にさせるのは現実的ではない、という問題がある。
【0011】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、その目的は、振幅が大きい振動を発生させることができて、この振動を用いて振動速度センサのスケールファクタの校正を行うことができる振動速度センサ校正方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、振動速度センサのスケールファクタを校正する振動速度センサ校正方法において、
回転駆動源に結合された回転台に、前記振動速度センサをその入力軸が回転台の回転方向に合うように設置し、
前記回転台をある回転周波数で振動するように回転し、振動速度センサに振動する振動速度が入力されるようにし、
振動速度センサからの出力信号を取得し、
前記取得した出力信号からスケールファクタを算出する、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の前記回転台に加速度センサを、その入力軸が回転台の回転方向に合うように設置し、
前記加速度センサからの出力信号を振動速度センサからの出力信号と併せて取得し、
前記スケールファクタの算出は、前記取得した加速度センサからの出力信号を用いる、
ことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の本発明は、請求項1記載の前記回転台に加速度センサを、その入力軸が回転台の回転方向と直交する半径方向に合うように設置し、
前記加速度センサからの出力信号を振動速度センサからの出力信号と併せて取得し、
前記スケールファクタの算出は、前記取得した加速度センサからの出力信号を用いる、
ことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の本発明は、請求項2または3記載の前記スケールファクタの算出には、前記加速度センサの予め校正されたスケールファクタを用いることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の本発明は、請求項2ないし4のいずれか1項に記載の前記加速度センサと前記振動速度センサとを、回転台の同一円周上に配置することを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の本発明は、請求項1記載の方法において、前記回転台に校正済みの基準振動速度センサを、その入力軸が回転台の回転方向に合うように設置し、
前記基準振動速度センサからの出力信号を振動速度センサからの出力信号と併せて取得し、
前記スケールファクタの算出は、前記取得した基準振動速度センサからの出力信号と、該基準振動速度センサの予め校正されたスケールファクタとを用いる、
ことを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の本発明は、請求項6記載の前記基準振動速度センサと前記振動速度センサとを、回転台の同一円周上に配置することを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の本発明は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の振動速度センサ校正方法に用いる振動速度センサ校正装置であって、
回転駆動源と、回転駆動源に結合された回転台と、回転台を回転可能に支持する基台と、回転台の回転周波数を制御するコントローラと、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、回転台をある回転周波数で振動させるように回転させることで、回転台の寸法を大きくしなくとも、大きな振幅の振動運動を発生させることができる。よって、振動速度の大きい運動も実現することができ、精度よく振動速度センサのスケールファクタを算出することができる。
【0021】
すでに校正された加速度センサまたは基準振動速度センサを回転台に設置して、同時に出力信号を取得して、これらの出力信号を用いることにより、スケールファクタの算出の為に必要なパラメータを減らすことができる。
【0022】
加速度センサまたは基準振動速度センサを回転台の同一円周上に配置することにより、スケールファクタの算出の為に必要なパラメータをさらに減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1〜図3は、本発明の振動速度センサ校正方法を実施する振動速度センサ校正装置の第1実施形態を示す図である。
【0025】
振動速度センサ校正装置10は、回転駆動源が内蔵された回転ユニット12と、回転ユニット12の回転駆動源に結合された回転台14と、回転台14を支持する基台16と、回転台14の回転周波数を制御するコントローラ18と、回転センサ20と、記録装置22と、解析装置24と、から成る。回転台14は、好ましくはエアベアリングによって基台16に回転可能に支持されている。
【0026】
校正するべき振動速度センサSは回転台14上に入力軸を回転台14の回転方向に合わせて設置され、振動速度センサSから出力される信号は、記録装置22においてアナログ又はデジタル信号として記録される。また、記録装置22で記録された信号は、解析装置24において解析される。記録装置22及び解析装置24は、同一の装置として構成することができ、例えば、コンピュータで構成することができる。また、記録装置22は、スリップリング等を介した適当な接続手段によって振動速度センサSと接続されて、回転台14から離れた場所に設置することができ、または、回転台14上に設置することも可能である。
【0027】
コントローラ18は、回転台14を制御された回転周波数で動作させるものであり、回転ユニット12のためのドライバ回路を含み、駆動信号を回転ユニット12に供給する。
【0028】
ここで、コントローラ18は、回転台14が回転周波数f0[Hz]で振動するように、回転させる。これによって、回転台14は、ω0=2πf0とすると、tを時間として、回転角速度ω[rad/sec]が
【0029】
【数2】

となるように振動する。ここで、a0[rad]は振幅である。
【0030】
以上のコントローラ18の制御は、(2)式に基づいてコントローラ18が逐次演算した値に基づいて駆動信号を出力するとよく、または、コントローラ18以外のコンピュータによって(2)式を演算した値をコントローラ18に指示信号として外部から与えてもよい。あるいは、外部から正弦波信号を与えてこの信号に追従させる方法で、コントローラ18に駆動信号を出力させてもよい。
【0031】
回転センサ20は、回転台14の回転角度を検出するためのものであり、例えば、回転台14の所定回転角ごとにパルス信号を出力するエンコーダで構成することができる。回転センサ20からの信号は、記録装置22において角度に変換されて、記録される。
【0032】
コントローラ18から与えられた回転周波数f0に従って、回転台14が回転角速度ωで回転・振動すると、振動速度センサSは、その回転台14の振動速度を検出して電圧Evとして出力する。出力電圧Evは記録装置22で記録され、以下に示す解析処理等によってスケールファクタが校正される。
【0033】
図2は回転台14上の振動速度センサSの設置例を示す。(2)式のような回転角速度を与えた場合、図2の回転半径r[m]の点の回転方向の速度vφは、
【0034】
【数3】

となる。この点に振動速度センサSを置けば、(3)式で与えられる振動速度が振動速度センサSに入力される。
【0035】
図3は校正対象の振動速度センサSのスケールファクタを示す。入力速度をvi[m/sec]、出力電圧をEv[V]とすると、振動速度センサSのスケールファクタSv[V/m/sec]は
【0036】
【数4】

である。(3)式のvφと(4)式のviが等しければ
【0037】
【数5】

であるので、振動成分に注目し、Evの振幅値(ピーク値または実効値等)を|Ev|として、この値を測定するものとすれば
【0038】
【数6】

より、速度信号のスケールファクタSvが求められる。
【0039】
また、記録装置22では、回転センサ20からのパルス信号を計数することにより、角度に換算しており、このEvのピーク値になるときの角度を求めて記録する。
【0040】
解析装置24による処理により、または解析装置24を用いて作業者が処理することにより、振動速度センサSの電圧の、Evの振幅値(ピーク値または実効値等)|Ev|と、コントローラ18で用いたω0またはf0と、前記Evのピーク値間の角度差から求めた振幅a0[rad]と、既知である振動速度センサSの設置点の回転半径rを用いて、(6)からスケールファクタSvを求めることができる。振幅a0は他の任意の手段によって求めることもできる。
【0041】
また、コントローラ18においてω0を変化させることによって、スケールファクタSvの周波数特性を求めることができる。
【0042】
実現可能な寸法の回転台14において、回転台14を複数周に渡り、回転させるようにして振動させることにより、大きな振幅の振動運動を発生させることができる。よって、振動速度の大きい運動も実現することができ、広い振動速度範囲で振動速度センサSの校正を行うことができる。
【0043】
(第2実施形態)
図4〜図6は、本発明の振動速度センサ校正方法を実施する振動速度センサ校正装置の第2実施形態を示す図である。第1実施形態と同様の手段は同一の符号を付し、その詳細説明を省略する。
【0044】
この実施形態の振動速度センサ校正装置10では、回転台14上に校正するべき振動速度センサSの他に、加速度センサ28が設置されており、回転台14上の振動速度センサSの入力軸は回転方向に設置され、加速度センサ28の入力軸は校正すべき振動速度センサSと同じく回転方向に設置される。
【0045】
校正すべき振動速度センサSは、コントローラ18によって制御された回転台14の振動に対して、その振動の振動速度を検出して出力信号を出力する一方で、加速度センサ28は、コントローラ18によって制御された回転台14の振動に対して、その振動の振動加速度を検出して出力信号を出力する。
【0046】
以下、第2実施形態による振動速度センサ校正装置10の作用を説明する。
【0047】
図5は回転台14上の速度センサSと加速度センサ28の設置例を示す。(2)式のような回転角速度を与えた場合、図5の回転半径r1[m]の点の回転方向の加速度αφ
【0048】
【数7】

である。この点に入力軸を回転方向とした加速度センサ28を置けば、(7)式で与えられる振動加速度が加速度センサ28に入力される。
【0049】
図6は加速度センサ28のスケールファクタを示す。入力加速度をαi[m/sec2]、出力電圧をEα[V]とすると、加速度センサ28のスケールファクタSα[V/m/sec2]は
【0050】
【数8】

である。(7)式のαφと(8)式のαiが等しければ
【0051】
【数9】

であるので、振動成分に注目し、Eαの振幅値(ピーク値または実効値等)を|Eα|を測定するものとすれば
【0052】
【数10】

である。(6)式に(10)式の関係を代入すると
【0053】
【数11】

となる。ただし、
【0054】
【数12】

である。
【0055】
この(11)式には、回転台の回転角度の振幅a0が含まれていない。測定値であるEvの振幅値(ピーク値または実効値等)の|Ev|、Eαの振幅値(ピーク値または実効値等)である|Eα|の他に、加速度センサ28のスケールファクタSαと、振動の周波数f0(ω0=2πf0)の値、回転台の回転半径rとr1を用いて、振動速度センサSのスケールファクタSvを決定することができる。
【0056】
こうして、第2実施形態でも第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。さらに、第1実施形態では、(6)式でスケールファクタを求めて校正する際に、必要なパラメータとして回転台14の振動の振幅a0の測定が必要になるが、この第2実施形態では、振幅a0の測定を不要にすることができる。これによって、必要な測定値は、振動速度センサSと加速度センサ28からそれぞれ出力される電圧値だけであり、この電圧値は電気信号であり一般に精度よく測定できるので、振動速度センサSのスケールファクタSvを精度よく決定することができる。
【0057】
(第3実施形態)
図7〜図9は、本発明の振動速度センサ校正方法を実施する振動速度センサ校正装置の第3実施形態を示す図である。第1及び第2実施形態と同様の手段は同一の符号を付し、その詳細説明を省略する。
【0058】
この実施形態の振動速度センサ校正装置10では、回転台14上に校正するべき振動速度センサSの他に、加速度センサ30が設置されており、回転台14上の振動速度センサSの入力軸は回転方向に設置され、加速度センサ30の入力軸は校正すべき振動速度センサの入力軸と同じ回転方向に直交する半径方向に設置されている。
【0059】
振動速度センサSは、コントローラ18によって制御された回転台14の振動に対して、その振動の振動速度を検出して出力信号を出力する一方で、加速度センサ30は、コントローラ18によって制御された回転台14の振動に対して、その振動の振動加速度を検出して出力信号を出力する。
【0060】
以下、第3実施形態による振動速度センサ校正装置10の作用を説明する。
【0061】
図8に回転台14上の振動速度センサSと加速度センサ30の設置例を示す。(2)式のような回転角速度を与えた場合、図8の回転半径r1[m]の点の半径方向の加速度αr
【0062】
【数13】

である。この点に入力軸を回転方向に直交する半径方向とした加速度センサ30を置けば、(13)式で与えられる振動加速度が加速度センサ30に入力される。
【0063】
図9は加速度センサ30のスケールファクタを示す。入力加速度をβi[m/sec2]、出力電圧をEβ[V]とすると、加速度センサ30のスケールファクタSβ [V/m/sec2]は
【0064】
【数14】

である。尚、加速度センサ30として、加速度センサ28を用いれば、スケールファクタは、図6で示す通りとなる。
【0065】
(13)式のαrと(14)式のβiが等しければ
【0066】
【数15】

であるので、振動成分に注目し、Eβの振幅値(ピーク値または実効値等)を|Eβ|を測定するものとすれば
【0067】
【数16】

である。(6)式に(16)式の関係を代入すると
【0068】
【数17】

となる。
【0069】
この(17)式には、回転台の回転角度の振幅a0及び振動の周波数f0(ω0=2πf0)が含まれていない。測定値であるEvの振幅値(ピーク値または実効値等)の|Ev|、Eβの振幅値(ピーク値または実効値等)である|Eβ|の他に、加速度センサ30のスケールファクタSβと、回転台の回転半径rとr1の値を用いて、振動速度センサSのスケールファクタSvを決定することができる。
【0070】
この結果、第3実施形態でも、第2実施形態と同様の作用効果が得られ、スケールファクタSvを求めるのに必要なパラメータを減らすことができる。低い周波数の振動に対して、(15)式より加速度センサ30の出力は、2倍の周波数の信号が得られるので、測定が容易である。
【0071】
第2実施形態及び第3実施形態においては、加速度センサ28、30のスケールファクタを予め求めておくことで加速度センサ28、30を基準としている。振動の周波数f0(ω0=2πf0)の値をコントローラ18から与えれば、後は電圧値の測定のみで、与えた振動の周波数f0(ω0=2πf0)における振動速度センサSのスケールファクタが決定できるので、校正が容易である。
【0072】
尚、加速度センサ28、30のスケールファクタは、振動速度センサSと異なり、公知の方法により簡単に求めることができ、重力加速度を利用したり、任意の遠心加速度を加速度センサに与えたり、または、電気信号を疑似的に与える等の方法で、校正を行うことができる。加速度センサ28、30は、振動速度センサSと異なり、直流成分を検出し、また、低い周波数帯域において、そのスケールファクタの周波数特性が小さいので、簡単に正確なスケールファクタを求めることができる。
【0073】
図10は、入力軸が回転方向の振動速度センサSの出力電圧Evと、本発明による第2実施形態による入力軸が振動速度センサSと同じ回転方向に設置された加速度センサ28の出力電圧Eαと、本発明による第3実施形態の方法による入力軸が振動速度センサSと同じ回転方向に直交する半径方向に設置された加速度センサ30の出力電圧Eβの例を示す。図10では周波数が0.1[Hz]の例となっている。このような出力電圧の振幅値(ピーク値または実効値等)を測定することで、予め基準とする加速度センサ28、30のスケールファクタが分かっていれば、(11)式または(17)式により校正すべき振動速度センサSのスケールファクタを求めることができる。
【0074】
(第2実施形態及び第3実施形態の一例)
図11及び図12は、第2実施形態及び第3実施形態の一例として、加速度センサ28または30が、校正すべき振動速度センサSと同一円周上に設置されている設置例を示す。
【0075】
校正すべき振動速度センサSと、加速度センサ28または30は、治具32によって一緒に回転台14に取り付けられている。治具32を用いることで、振動速度センサS、加速度センサ28または30を個々に同一半径に調整して設置する必要がなくなり、設置が容易になる。
【0076】
このように、同一円周上に設置することで(12)式は
【0077】
【数18】

となり、(11)式、または(17)式がより簡単となる。(11)式は
【0078】
【数19】

となってスケールファクタの校正に半径rの値が不要となる。(17)式は
【0079】
【数20】

となって、予め振動速度センサSと加速度センサ28または30の設置点の回転半径rの値を測定しておけばrの値は固定値となるので、測定は電圧値だけとなる。この結果、振動速度センサSのスケールファクタを精度よく測定できる。
【0080】
(第4実施形態)
図13は、本発明の振動速度センサ校正方法を実施する振動速度センサ校正装置の第4実施形態を示す図である。前実施形態と同様の手段は同一の符号を付し、その詳細説明を省略する。
【0081】
この実施形態の振動速度センサ校正装置10では、回転台14上に校正するべき振動速度センサSの他に、既に校正済みの基準となる基準振動速度センサ34が回転半径r1上に設置されており、回転台14上の振動速度センサSの入力軸は回転方向に設置され、基準振動速度センサ34の入力軸は校正すべき振動速度センサと同じ入力軸に設置されている。基準振動速度センサ34は、例えば、第1ないし第3実施形態のいずれかの方法により予め校正を行うことができる。
【0082】
基準振動速度センサ34のスケールファクタをSRvとし、基準振動速度センサ34の出力電圧ERvの振幅値(ピーク値または実効値等)を|ERv|とすると、
【0083】
【数21】

となる。
【0084】
(21)式により、測定値であるEvの振幅値(ピーク値または実効値等)の|Ev|、ERVの振幅値(ピーク値または実効値等)である|ERv|の他に、基準振動速度センサ34のスケールファクタSRvと、回転台の回転半径rとr1とを用いて、振動速度センサSのスケールファクタSvを決定することができる。
【0085】
校正するべき振動速度センサSと基準振動速度センサ34とを同一円周上に設置することにより、R=1、即ちr=r1となり、一層簡単にスケールファクタSvを算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の振動速度センサ校正方法を実施する振動速度センサ校正装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態による振動速度センサの設置を表す平面図である。
【図3】振動速度センサのスケールファクタを表すブロック図である。
【図4】本発明の振動速度センサ校正方法を実施する振動速度センサ校正装置の第2実施形態を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態による振動速度センサと加速度センサの設置を表す平面図である。
【図6】入力軸が回転方向に設置された加速度センサのスケールファクタを表すブロック図である。
【図7】本発明の振動速度センサ校正方法を実施する振動速度センサ校正装置の第3実施形態を示す斜視図である。
【図8】第3実施形態による振動速度センサと加速度センサの設置を表す平面図である。
【図9】入力軸が半径方向に設置された加速度センサのスケールファクタを表すブロック図である。
【図10】測定電圧の例を表すグラフである。
【図11】第2実施形態または第3実施形態において、振動速度センサと加速度センサとが、同一円周上に設置された例を示す斜視図である。
【図12】第2実施形態または第3実施形態において、振動速度センサと加速度センサとが、同一円周上に設置された例を表す平面図である。
【図13】本発明の振動速度センサ校正方法を実施する振動速度センサ校正装置の第4実施形態を示す斜視図である。
【図14】従来の振動装置の構成例を表す斜視図である。
【符号の説明】
【0087】
10 振動速度センサ校正装置
12 回転ユニット
14 回転台
16 基台
18 コントローラ
28、30 加速度センサ
34 基準振動速度センサ
S 校正するべき振動速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動速度センサのスケールファクタを校正する振動速度センサ校正方法において、
回転駆動源に結合された回転台に、前記振動速度センサをその入力軸が回転台の回転方向に合うように設置し、
前記回転台をある回転周波数で振動するように回転し、振動速度センサに振動する振動速度が入力されるようにし、
振動速度センサからの出力信号を取得し、
前記取得した出力信号からスケールファクタを算出する、
ことを特徴とする振動速度センサ校正方法。
【請求項2】
前記回転台に加速度センサを、その入力軸が回転台の回転方向に合うように設置し、
前記加速度センサからの出力信号を振動速度センサからの出力信号と併せて取得し、
前記スケールファクタの算出は、前記取得した加速度センサからの出力信号を用いる、
ことを特徴とする請求項1記載の振動速度センサ校正方法。
【請求項3】
前記回転台に加速度センサを、その入力軸が回転台の回転方向と直交する半径方向に合うように設置し、
前記加速度センサからの出力信号を振動速度センサからの出力信号と併せて取得し、
前記スケールファクタの算出は、前記取得した加速度センサからの出力信号を用いる、
ことを特徴とする請求項1記載の振動速度センサ校正方法。
【請求項4】
前記スケールファクタの算出は、前記加速度センサの予め校正されたスケールファクタを用いることを特徴とする請求項2または3記載の振動速度センサ校正方法。
【請求項5】
前記加速度センサと前記振動速度センサとは、回転台の同一円周上に配置することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の振動速度センサ校正方法。
【請求項6】
前記回転台に校正済みの基準振動速度センサを、その入力軸が回転台の回転方向に合うように設置し、
前記基準振動速度センサからの出力信号を振動速度センサからの出力信号と併せて取得し、
前記スケールファクタの算出は、前記取得した基準振動速度センサからの出力信号と、該基準振動速度センサの予め校正されたスケールファクタとを用いる、
ことを特徴とする請求項1記載の振動速度センサ校正方法。
【請求項7】
前記基準振動速度センサと前記振動速度センサとは、回転台の同一円周上に配置することを特徴とする請求項6記載の振動速度センサ校正方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の振動速度センサ校正方法に用いる振動速度センサ校正装置であって、
回転駆動源と、回転駆動源に結合された回転台と、回転台を回転可能に支持する基台と、回転台の回転周波数を制御するコントローラと、を備える振動速度センサ校正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−96552(P2010−96552A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265736(P2008−265736)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000003388)東京計器株式会社 (103)
【Fターム(参考)】