説明

振幅変調回路および振幅変調方法

【課題】振幅変調回路のS/N特性が悪化する組合せに対応する電源電圧の値を予め求めることなく、振幅変調回路のS/N特性の悪化を防止可能な振幅変調回路を提供する。
【解決手段】振幅変調回路は、搬送波を増幅する複数の増幅手段と、入力アナログ音声信号をデジタル信号に変換して出力する変換手段と、アナログ音声信号の無信号時にオンとなるオン増幅手段の組合せを決定するデジタル値を出力する調整手段と、デジタル値にて決定されるオン増幅手段の組合せが所定の組合せの場合、オン増幅手段の組合せを所定の組合せ以外にするデジタル補正値を出力し、デジタル値にて決定されるオン増幅手段の組合せが所定の組合せと異なる場合、そのデジタル値を出力する補正手段と、補正手段の出力と変換手段の出力を加算し当該加算の結果に従って増幅手段のオンオフを制御する制御手段と、制御手段にてオンされた増幅手段の出力を合成して出力する合成手段を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振幅変調回路および振幅変調方法に関し、例えば、中波帯または短波帯等の帯域を使用した無線送信機に搭載される振幅変調回路および振幅変調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中波帯または短波帯等の帯域を使用した無線送信機に搭載される振幅変調回路が知られている。
【0003】
図8は、関連技術の振幅変調回路の構成を示す図である。
【0004】
図8において、振幅変調回路100は、高周波発振器1と、分配器2と、等出力電圧増幅器3−1〜3−n(nは2以上の整数)と、バイナリ電圧増幅器4−1〜4−m(mは2以上の整数)と、電源5と、電源6と、出力変成器7と、フィルタ8と、A/D変換回路9と、増幅器微調回路10と、A/D変換回路11と、加算回路12と、変調エンコーダ13と、を含む。以下では、等出力電圧増幅器3−1〜3−nを、単に増幅器3−1〜3−nと称し、バイナリ電圧増幅器4−1〜4−mを、単に増幅器4−1〜4−mと称する。
【0005】
振幅変調回路100は、アナログ音声信号Sと、出力設定バイアス電圧(以下、単に「バイアス電圧」と称する)Vbと、電源電圧V1と、電源電圧V2と、を受け付ける。
【0006】
バイアス電圧は、アナログ音声信号Sが振幅変調回路100に入力されていない状況(以下「音声無信号状況」と称する)での増幅器3−1〜3−nおよび増幅器4−1〜4−mの動作の仕方を決定するための情報である。また、電源電圧V1が電源電圧V2を兼ねてもよい。
【0007】
振幅変調回路100は、アナログ音声信号Sと、バイアス電圧Vbと、電源電圧V1と、に基づいて、増幅器3−1〜3−nと増幅器4−1〜4−mとのオンオフを制御する。
【0008】
高周波発振器1は、振幅変調回路100で用いられる搬送波信号を出力する。
【0009】
分配器2は、高周波発振器1からの搬送波信号を、増幅器3−1〜3−nおよび増幅器4−1〜4−mに分配する。
【0010】
増幅器3−p(p=1、2、・・・、n)は、オン状態になると、互いに等しい出力レベルの電圧を出力する。例えば、増幅器3−pは、オン状態になると、搬送波信号の電圧振幅をA(Aは1以上の正数)倍した電圧を出力する。なお、Aは、電源電圧V1が低くなるにつれて小さくなり、電源電圧V1が高くなるにつれて大きくなる。
【0011】
増幅器4−q(q=1、2、・・・、m)は、オン状態になると、搬送波信号の電圧振幅をD(D=A/(2q))倍した電圧を出力する。
【0012】
なお、増幅器3−pおよび増幅器4−qは、変調エンコーダ13からの信号に従ってオンオフされる。変調エンコーダ13からの信号については後述する。
【0013】
出力変成器7は、増幅器3−pおよび増幅器4−qのうち、オン状態の増幅器から出力される電圧を加算して出力信号を生成する。出力変成器7は、出力信号を、フィルタ8を通して出力する。フィルタ8から出力された信号は、アナログ信号となる。
【0014】
A/D変換回路9は、アナログ音声信号Sを受け付けると、アナログ音声信号Sを2進の多ビットデジタル信号に変換する。
【0015】
増幅器微調回路10は、バイアス電圧Vbと電源電圧V1とを受け付ける。増幅器微調回路10は、バイアス電圧Vbと電源電圧V1とに基づいて増幅器3−pと増幅器4−qとのオンオフを制御するための調整信号を出力する。調整信号はアナログ信号である。
【0016】
例えば、増幅器微調回路10は、電源電圧V1が変動しても、音声無信号状況の振幅変調回路100の出力レベル(フィルタ8からの出力レベル)が一定になるように、バイアス電圧Vbにて決定された増幅器3−pおよび増幅器4−qの動作台数を、電源電圧V1の大きさに応じて変更するための調整信号を出力する。
【0017】
増幅器微調回路10は、例えば、電源電圧V1が上昇したとき、増幅器3−pや増幅器4−qの動作台数を減少させ、電源電圧V1が低下したとき、増幅器3−pや増幅器4−qの動作台数を増加させる。
【0018】
A/D変換回路11は、増幅器微調回路10からの調整信号(アナログ信号)を、2進の多ビットデジタル信号(デジタル値)に変換する。
【0019】
加算回路12は、A/D変換回路9からのデジタル信号とA/D変換回路11からのデジタル信号とを加算し、加算の結果(デジタル信号)を出力する。
【0020】
変調エンコーダ13は、加算回路12からのデジタル信号に基づいて、増幅器3−pおよび増幅器4−qのオンオフを制御する制御信号を生成する。具体的には、変調エンコーダ13は、加算回路12からのデジタル信号が示す値(デジタル時)が変化するごとに、増幅器3−pおよび増幅器4−qのオンオフの組み合わせが変更するように、制御信号が表す値を変更する。
【0021】
変調エンコーダ13は、制御信号を、増幅器3−1〜3−nおよび増幅器4−1〜4−mに出力する。
【0022】
図9は、6台の増幅器3−1〜3−6と3台の増幅器4−1〜4−3が用いられた状況下でのアナログ音声信号Sの振幅に応じた各増幅器の出力を示す図である。
【0023】
図9において、無変調時(0%)には増幅器3−1〜3−3がオン状態となりかつ増幅器3−4〜3−6がオフ状態となり、100%変調の正側ピーク時(+100%)には増幅器3−1〜3−6がオン状態となり、負側ピーク時(−100%)には増幅器3−1〜3〜6がオフ状態となるように、変調エンコーダ13は、制御信号を生成する。
【0024】
増幅器3−pおよび増幅器4−qのオンオフが共通の制御信号に従って制御される状況で、増幅器3−pのオンオフ応答タイミングが増幅器4−qのオンオフ応答タイミングと異なる場合、振幅変調回路100の出力のS/N(Signal to Noise)特性が悪化するという問題が発生する。
【0025】
図10は、振幅変調回路100の出力のS/N特性が悪化する状況を示した図である。
【0026】
図10(a)は、増幅器4−qのオン応答タイミングが増幅器3−pのオフ応答タイミングよりも遅れている状況での出力変成器7からの出力信号を示した図である。図10(a)に示した例では、本来、出力電圧の隙間が生じるべきではない箇所に隙間Aが生じている。
【0027】
図10(b)は、図10(a)に示した出力変成器7からの出力信号がフィルタ8によってアナログ信号に変換された例を示した図である。図10(b)では、増幅器4−qのオンオフ応答タイミングが増幅器3−pのオンオフ応答タイミングよりも遅れていることが原因となって、ノイズBが生じている。
【0028】
図10(c)は、増幅器4−qのオン応答タイミングが増幅器3−pのオフ応答タイミングよりも進んでいる状況での出力変成器7からの出力信号を示した図である。図10(c)に示した例では、本来、増幅器3−pのいずれかからの電圧と増幅器4−qからの電圧とが重なるべきでない箇所Cで、増幅器3−pのいずれかからの電圧と増幅器4−qからの電圧とが重なっている。
【0029】
図10(d)は、図10(c)に示した出力変成器7からの出力信号がフィルタ8によってアナログ信号に変換された例を示した図である。図10(d)では、増幅器4−qのオン応答タイミングが増幅器3−pのオフ応答タイミングよりも進んでいることが原因となって、ノイズDが生じている。
【0030】
図10(a)〜図10(d)に示したように、ノイズは、増幅器3−pのいずれかがオンまたはオフするとき、つまり、制御信号が増幅器3−pのいずれかをオンまたはオフさせる値を示すときに、観点を変えると、制御信号が増幅器4−qの全てをオンさせる値を示すときに、発生する。以下、制御信号が増幅器3−pのいずれかをオンまたはオフさせる値、または、制御信号が増幅器4−qの全てをいずれかをオンさせる値を「動作切り替わり点」と称する。
【0031】
制御信号が動作切り替わり点を示す状況としては、例えば、音声無信号状況下で、電源電圧V1の変動に伴い、増幅器微調回路10からの調整信号が変動し、この調整信号の変動に伴って、制御信号が動作切り替わり点を示す状況が考えられる。
【0032】
特許文献1には、制御信号(A/D変換回路の出力)が動作切り替わり点を示した場合に、制御信号の元になる信号を変更して、制御信号が動作切り替わり点を示さないように変更する振幅変調回路が記載されている。
【0033】
また、特許文献2には、電源電圧が変動しても制御信号が動作切り替わり点を示さないように、制御信号を補正するディジタルAMラジオ送信機が記載されている。
【0034】
特許文献2に記載のディジタルAMラジオ送信機では、制御信号(A/D変換回路の出力)が動作切り替わり点を示すときの電源電圧の大きさ(以下「補正対象電圧」と称する)が予め求められる。
【0035】
特許文献2に記載のディジタルAMラジオ送信機では、電源電圧が補正対象電圧になると、制御信号が動作切り替わり点を示さないように、電源電圧の測定値が変更され、変更後の電源電圧の測定値がA/D変換回路に入力され、A/D変換回路が変更後の電源電圧に応じた制御信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2007−336111号公報
【特許文献2】特開2001−251143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
特許文献1に記載の振幅変調回路では、制御信号が動作切り替わり点を示した後に制御信号の補正が行われるため、制御信号が動作切り替わり点を示す状況が発生してしまうという課題があった。
【0038】
特許文献2に記載のディジタルAMラジオ送信機では、制御信号が動作切り替わり点を示す状況を防止できるが、補正対象電圧を予め求めなければならないという課題があった。
【0039】
よって、特許文献1に記載の振幅変調回路および特許文献2に記載のディジタルAMラジオ送信機では、補正対象電圧の大きさを予め求めることなく、制御信号が動作切り替わり点を示すことを防止する、ということができないという課題があった。
【0040】
本発明の目的は、上述した課題を解決する振幅変調回路および振幅変調方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明による振幅変調回路は、搬送波を生成する生成手段と、前記搬送波を増幅する複数の増幅手段と、入力されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換して出力する変換手段と、前記複数の増幅手段のうち前記アナログ音声信号が無信号である状況でオンとなるオン増幅手段の組合せを決定するデジタル値を出力する調整手段と、前記デジタル値にて決定されるオン増幅手段の組合せが所定の組合せである場合には、オン増幅手段の組合せを前記所定の組合せ以外の組合せとするデジタル補正値を出力し、前記デジタル値にて決定されるオン増幅手段の組合せが前記所定の組合せと異なる場合には、当該デジタル値を出力する補正手段と、前記補正手段からの出力と前記変換手段からの出力とを加算し、当該加算の結果に従って前記増幅手段の各々のオンオフを制御する制御手段と、前記複数の増幅手段のうち前記制御手段にてオンとされた増幅手段の出力を合成して出力する合成手段と、を含む。
【0042】
本発明による振幅変調方法は、搬送波を増幅する複数の増幅手段を含む振幅変調回路での振幅変調方法であって、前記搬送波を生成する生成ステップと、入力されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換して出力する変換ステップと、前記複数の増幅手段のうち前記アナログ音声信号が無信号である状況でオンとなるオン増幅手段の組合せを決定するデジタル値を出力する調整ステップと、前記デジタル値にて決定されるオン増幅手段の組合せが所定の組合せである場合には、オン増幅手段の組合せを前記所定の組合せ以外の組合せとするデジタル補正値を出力し、前記デジタル値にて決定されるオン増幅手段の組合せが前記所定の組合せと異なる場合には、当該デジタル値を出力する補正ステップと、前記補正ステップでの出力と前記変換ステップでの出力とを加算し、当該加算の結果に従って前記増幅手段の各々のオンオフを制御する制御ステップと、前記複数の増幅手段のうち前記制御ステップにてオンとされた増幅手段の出力を合成して出力する合成ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、補正対象電圧の大きさを予め求めることなく、制御信号が動作切り替わり点を示すことを防止可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態の振幅変調回路100Aを示す図である。
【図2】補正回路1Cの機能を示したブロック図である。
【図3】補正プログラム実行機能部1C2の動作を説明するための図である。
【図4】変調エンコーダ13に入力される2進の多ビットデジタル信号のビットに対する増幅器の割り当てを表す図である。
【図5】補正回路1Cの動作を説明するための図である。
【図6】補正回路1Cの動作を説明するための図である。
【図7】補正回路1Cを示した図である。
【図8】関連技術の振幅変調回路の構成を表す図である。
【図9】振幅変調回路の出力に対する増幅器の対する分担を表す図である。
【図10】振幅変調回路の出力に生じるノイズを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0046】
図1は、本発明の一実施形態の振幅変調回路100Aを示す図である。振幅変調回路100Aは、例えば、振幅変調送信機に含まれる。なお、図1において、図8に示したものと同一構成のものには同一符号を付してあり、図8に示したものと同一構成のものについてはその説明を省略する。
【0047】
図1において、振幅変調回路100Aは、図8に示した振幅変調回路100に、補正回路1Cが追加されたものである。
【0048】
高周波発振器1と分配器2は、生成部1Aに含まれる。生成部1Aは、一般的に生成手段と呼ぶことができる。生成部1Aは、搬送波(搬送波信号)を生成する。
【0049】
増幅器3−pおよび増幅器4−qは、一般的に増幅手段と呼ぶことができる。増幅器3−pは、一般的に第1増幅手段と呼ぶことができる。増幅器4−qは、一般的に第2増幅手段と呼ぶことができる。増幅器3−pの出力レベルは増幅器4−qの出力レベルよりも大きい。
【0050】
A/D変換回路9は、一般的に変換手段と呼ぶことができる。A/D変換回路9は、入力されたアナログ音声信号Sをデジタル信号に変換して出力する。
【0051】
増幅器微調回路10とA/D変換回路11は、調整部1Bに含まれる。調整部1Bは、一般的に調整手段と呼ぶことができる。調整部1Bは、複数の増幅器(増幅器3−pおよび増幅器4−q)のうち、アナログ音声信号Sが無信号である状況でオンとなる増幅器(以下「オン増幅器」と称する)の組合せを決定するデジタル値を出力する。
【0052】
補正回路1Cは、一般的に補正手段と呼ぶことができる。
【0053】
補正回路1Cは、調整部1Bからのデジタル値にて決定されるオン増幅器の組合せが所定の組合せ(図10を用いて上述したような振幅変調回路100AのS/N特性を悪化させる組み合わせ)である場合には、オン増幅部の組合せを所定の組合せ以外の組合せとするデジタル補正値を出力する。
【0054】
なお、所定の組合せは、増幅器3−pおよび増幅器4−qのうち、増幅器4−qのすべてがオンとなる組合せである。さらに言えば、所定の組合せは、増幅器3−pおよび増幅器4−qのうち、増幅器4−qのすべてがオンとなり、増幅器3−pの少なくとも1つがオンとなる組み合わせである。
【0055】
また、補正回路1Cは、調整部1Bからのデジタル値にて決定されるオン増幅器の組合せが所定の組合せと異なる場合には、調整部1Bからのデジタル値を出力する。
【0056】
加算回路12と変調エンコーダ13は、制御部1Dに含まれる。制御部1Dは、一般的に制御手段と呼ぶことができる。制御部1Dは、補正回路1Cからの出力とA/D変換回路9からの出力とを加算し、その加算の結果に従って、増幅器3−pおよび増幅器4−qの各々のオンオフを制御する。
【0057】
出力変成器7とフィルタ8は、合成部1Eに含まれる。合成部1Eは、一般的に合成手段と呼ぶことができる。合成部1Eは、増幅器3−pおよび増幅器4−qのうち、制御部1Dにてオンとされた増幅器の出力を合成して出力する。
【0058】
なお、本実施形態では、調整部1Bは、アナログ音声信号Sが無信号である状況での合成部1Eからの出力が一定になるように、電源電圧V1の大きさに応じてデジタル値を変更する。
【0059】
次に、動作を説明する。
【0060】
入力されたアナログ音声信号Sは、A/D変換回路9で、2進の多ビットデジタル信号に変換される。
【0061】
電源電圧V1は、バイアス電圧Vbと共に増幅器微調回路10に入力される。増幅器微調回路10は、電源電圧V1が、振幅変調回路100Aが必要とする電圧よりも高い場合は、増幅器の動作台数を減らし、電源電圧V1が、振幅変調回路100Aが必要とする電圧よりも低い場合は、増幅器の動作台数を増やすことで、振幅変調回路100Aの出力を一定に保つ機能を備えている。このときの動作台数の調整が、S/N特性が悪化するポイント(図10参照)で発生する場合がある。
【0062】
増幅器微調回路10の出力は、A/D変換回路11で、2進の多ビットデジタル信号に変換される。
【0063】
加算回路12は、A/D変換回路11の出力とA/D変換回路9の出力を加算する。加算回路12での加算結果を示す2進の多ビットデジタル信号が、変調エンコーダ13に入力され、変調エンコーダ13が、加算回路12での加算結果に従って、それぞれの増幅器3−pおよび4−qのオンオフを制御する。
【0064】
本実施形態では、A/D変換回路11と加算回路12の間に、A/D変換回路11の出力を補正する補正回路1Cが設けられている。
【0065】
補正回路1Cは、A/D変換回路11の出力にて決定されるオン増幅器の組み合わせが、図10を参照して説明したS/N特性を悪化させる組み合わせ(所定の組合せ)になっていないか確認し、その確認の結果に従って、A/D変換回路11の出力を調整する機能を備えている。
【0066】
A/D変換回路11からのデジタル信号が補正回路1Cに入力されると、A/D変換回路11からのデジタル信号は、補正回路1C内のROMに記録された補正プログラムに従って補正される。
【0067】
図2は、補正回路1Cの機能を示したブロック図である。図2において、補正回路1Cは、変換機能部1C1と、補正プログラム実行機能部1C2と、変換機能部1C3と、を含む。
【0068】
A/D変換回路11からのデジタル信号が補正回路1Cに入ると、まず、デジタル信号は、変換機能部1C1で2進数の値から10進数の値に変換される。続いて、10進数の値は、補正プログラム実行機能部1C2で補正される。続いて、補正プログラム実行機能部1C2での補正の結果は、変換機能部1C3で10進数の値から2進数の値に変換され出力される。
【0069】
図3は、補正プログラムを実行する補正プログラム実行機能部1C2の動作、具体的には、補正プログラム実行機能部1C2の入力と出力の関係を説明するための図である。補正プログラム実行機能部1C2に入力された10進数の値は、図3に示すようなヒステリシスを持たせて出力される。
【0070】
本実施形態では、図9に示す増幅器を用い、「0」〜「9」の番号が振られた各ビットからなる10ビットのデジタル信号で増幅器をオンオフさせるものとする。このとき増幅器4−qに割り当てられるビット数は、図4のように下位3ビットとする。
【0071】
図4と図9より、番号「2」のビットと番号「3」ビットが、増幅器3−pのいずれかと増幅器4−1のオンオフが起こる境目である。入力信号の番号「2」のビットが“1”であるときを10進で表すと「4」、入力信号の番号「3」のビット目が“1”であるときを10進で表すと「8」となる。番号「2」のビットと番号「3」のビットとが同時に“1”を出力するとき、すなわち、入力信号が10進でいう「12」であるポイントがS/N特性が悪化するポイントである。
【0072】
同じように、番号「2」のビットと番号「4」のビットが同時に“1”であるとき(10進数でいう「20」)、番号「2」のビット、番号「3」のビットおよび番号「4」のビットが同時に“1”であるとき(10進数でいう「28」)などが、S/N特性悪化ポイントである。
【0073】
補正プログラムは、このS/N特性悪化ポイントを避けるようにヒステリシスを持たせてデジタル値を出力させるプログラムである。補正プログラム実行機能部1C2は、補正プログラムに従って、次のような計算を行っている。
【0074】
出力=入力−1−(WD/2)+WD−MOD(入力−1,WD)・・・補正(A)
出力=入力−1+(WD/2)+WD−MOD(入力―1,WD)・・・補正(B)
なお、MOD(A,B)は、AをBで割ったときの余りを求める計算である。
【0075】
また、WDは、2の(増幅器4−qを動作させるビット割り当て数+1)乗の数である。
【0076】
なお、補正プログラム実行機能部1C2が補正(A)の計算のみで入力値を出力値に補正する状況で、A/D変換回路11からのデジタル値が、図5の矢印のポイントの近傍でふらつく場合、補正回路1Cの出力が不安定になり、S/N特性悪化の原因となってしまう。
【0077】
本実施形態では、これを防止するため、図6に示すようにヒステリシスを持たせるために、補正プログラム2つ(図6に示した「補正(A)」と「補正(B)」)を用意する。
【0078】
A/D変換回路11からのデジタル値が、補正(A)に従って図5の矢印のポイントで調整されると、S/N特性が悪化する。このとき、補正回路1Cは、補正プログラムを補正(A)からもう一方の補正(B)に切り替えることで、補正回路1C自身の出力を安定させるように調整する。補正(B)においても同様に補正(A)へ切り替える動作をする。
【0079】
図7は、補正回路1Cを示した図である。
【0080】
図7において、補正回路1Cは、音声無信号検出回路1CAと、補正実行部1CBと、フリップフロップ(F/F)1CCと、比較器1CDと、を含む。
【0081】
音声無信号検出回路1CAは、アナログ音声信号Sが無信号状態になっているときを検出する。例えば、音声無信号検出回路1CAは、A/D変換回路9にアナログ音声信号Sが入力されているかを検出し、A/D変換回路9にアナログ音声信号Sが入力されていない場合、アナログ音声信号Sが無信号状態になっていることを検出する。
【0082】
補正実行部1CBは、図2に示した変換機能部1C1、補正プログラム実行機能部1C2および変換機能部1C3が備える機能を有する。
【0083】
補正実行部1CBは、例えば、音声無信号検出回路1CAが、アナログ音声信号Sが無信号状態になっていることを検出している間、A/D変換回路11からのデジタル値を、補正(A)に従って補正し、補正後のデジタル値を加算回路12に出力する。
【0084】
また、補正後のデジタル値は、フリップフロップ1CCによって1クロックだけ遅延される。また、比較器1CDは、補正実行部1CBからの出力と、フロップフロップ1CCからの出力と、を比較し、その比較の結果を、補正実行部1CBに出力する。
【0085】
補正実行部1CBは、比較の結果が不一致を示す場合、補正プログラムを補正(A)から補正(B)に切り替えることで、補正実行部1CBの出力を安定させる。
【0086】
このように、補正回路4は、簡単な回路構成で実現され、補正を施す際の調整も補正プログラムが自動的に行い、調整が容易にできる。
【0087】
本実施形態によれば、補正回路1Cは、調整部1Bからのデジタル値にて決定されるオン増幅器の組合せが所定の組合せである場合には、オン増幅器の組合せを所定の組合せ以外の組合せとするデジタル補正値を出力し、調整部1Bからのデジタル値にて決定されるオン増幅器の組合せが所定の組合せと異なる場合には、そのデジタル値を出力する。
【0088】
制御部1Dは、補正回路1Cからの出力とA/D変換回路9からの出力とを加算し、その加算の結果に従って、増幅器3−pおよび増幅器4−qの各々のオンオフを制御する。
【0089】
このため、A/D変換回路9からの出力がない場合、つまり、アナログ音声信号Sが無信号である場合に、オン増幅器の組合せが所定の組合せになることを防止可能となる。よって、オン増幅器の組合せが所定の組合せとなって、振幅変調回路100AのS/N特性が悪化することを防止可能になる。なお、所定の組合せは、振幅変調回路100AのS/N特性が悪化するオン増幅器の組合せである。
【0090】
この場合、振幅変調回路100AのS/N特性が悪化する組合せに対応する電源電圧の値を予め求めることなく、振幅変調回路100AのS/N特性の悪化を防止可能になる。
【0091】
また、本実施形態では、所定の組合せとして、増幅器3−pおよび増幅器4−qのうち、増幅器4−pのすべてがオンとなる組合せが用いられる。図10に示したように、増幅器4−pのすべてがオンとなる組合せが、振幅変調回路100AのS/N特性が悪化するオン増幅器の組合せとなる。よって、振幅変調回路100AのS/N特性の悪化を防止可能になる。
【0092】
また、本実施形態では、増幅器3−pおよび増幅器4−qは、電源電圧V1の大きさに応じて出力レベルが変動し、調整部1Bは、アナログ音声信号Sが無信号である状況での合成部1Eからの出力が一定になるように、電源電圧V1の大きさに応じてデジタル値を変更する。
【0093】
この場合、アナログ音声信号Sが無信号である状況での合成部1Eからの出力を一定にしながら、振幅変調回路100AのS/N特性の悪化を防止可能になる。つまり、振幅変調回路100Aに供給される電源電圧の変動に対して信号対雑音比(S/N特性)の悪化を抑制することが可能になる。
【0094】
以上説明した実施形態において、図示した構成や、補正プログラム内の計算は単なる一例であって、本発明はそれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0095】
100A 振幅変調回路
1 高周波発振器
2 分配器
3−p 等出力電圧増幅器
4−q バイナリ電圧増幅器
5、6 電源
7 出力変成器
8 フィルタ
9 A/D変換回路
10 増幅器微調回路
11 A/D変換回路
12 加算回路
13 変調エンコーダ
1A 生成部
1B 調整部
1C 補正回路
1C1 変換機能部
1C2 補正プログラム実行機能部
1C3 変換機能部
1CA 音声無信号検出回路
1CB 補正実行部
1CC フリップフロップ
1CD 比較器
1D 制御部
1E 合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波を生成する生成手段と、
前記搬送波を増幅する複数の増幅手段と、
入力されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換して出力する変換手段と、
前記複数の増幅手段のうち前記アナログ音声信号が無信号である状況でオンとなるオン増幅手段の組合せを決定するデジタル値を出力する調整手段と、
前記デジタル値にて決定されるオン増幅手段の組合せが所定の組合せである場合には、オン増幅手段の組合せを前記所定の組合せ以外の組合せとするデジタル補正値を出力し、前記デジタル値にて決定されるオン増幅手段の組合せが前記所定の組合せと異なる場合には、当該デジタル値を出力する補正手段と、
前記補正手段からの出力と前記変換手段からの出力とを加算し、当該加算の結果に従って前記増幅手段の各々のオンオフを制御する制御手段と、
前記複数の増幅手段のうち前記制御手段にてオンとされた増幅手段の出力を合成して出力する合成手段と、を含む振幅変調回路。
【請求項2】
請求項1に記載の振幅変調回路において、
前記複数の増幅手段は、オンオフ応答特性が互いに異なる第1増幅手段および第2増幅手段からなり、
前記第1増幅手段の出力レベルは、前記第2増幅手段の出力レベルよりも大きいものであり、
前記所定の組合せは、前記複数の増幅手段のうち、前記第2増幅手段のすべてがオンとなる組合せである、振幅変調回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の振幅変調回路において、
前記増幅手段は、電源電圧の大きさに応じて出力レベルが変動し、
前記調整手段は、前記アナログ音声信号が無信号である状況での前記合成手段からの出力が一定になるように、前記電源電圧の大きさに応じて前記デジタル値を変更する、振幅変調回路。
【請求項4】
搬送波を増幅する複数の増幅手段を含む振幅変調回路での振幅変調方法であって、
前記搬送波を生成する生成ステップと、
入力されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換して出力する変換ステップと、
前記複数の増幅手段のうち前記アナログ音声信号が無信号である状況でオンとなるオン増幅手段の組合せを決定するデジタル値を出力する調整ステップと、
前記デジタル値にて決定されるオン増幅手段の組合せが所定の組合せである場合には、オン増幅手段の組合せを前記所定の組合せ以外の組合せとするデジタル補正値を出力し、前記デジタル値にて決定されるオン増幅手段の組合せが前記所定の組合せと異なる場合には、当該デジタル値を出力する補正ステップと、
前記補正ステップでの出力と前記変換ステップでの出力とを加算し、当該加算の結果に従って前記増幅手段の各々のオンオフを制御する制御ステップと、
前記複数の増幅手段のうち前記制御ステップにてオンとされた増幅手段の出力を合成して出力する合成ステップと、を含む振幅変調方法。
【請求項5】
請求項4に記載の振幅変調方法において、
前記複数の増幅手段は、オンオフ応答特性が互いに異なる第1増幅手段および第2増幅手段からなり、
前記第1増幅手段の出力レベルは、前記第2増幅手段の出力レベルよりも大きいものであり、
前記所定の組合せは、前記複数の増幅手段のうち、前記第2増幅手段のすべてがオンとなる組合せである、振幅変調方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の振幅変調方法において、
前記増幅手段は、電源電圧の大きさに応じて出力レベルが変動し、
前記調整ステップでは、前記アナログ音声信号が無信号である状況での前記合成ステップでの出力が一定になるように、前記電源電圧の大きさに応じて前記デジタル値を変更する、振幅変調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−188430(P2011−188430A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54432(P2010−54432)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】