説明

振替乗車システム

【課題】 定期券機能とSF乗車券機能を有するICカード等を利用した振替乗車システムにおいて、振替輸送時に利用客は余計な料金を払わないで済み、利用客にとって利便性が高く、振替輸送発生に関係する利用客の管理に適した振替乗車システムを提供する。
【解決手段】 上位コンピュータ40と自動改札機は通信システムで接続され、改札処理に必要な情報を送受するように構成された改札システムでの振替乗車システムである。上位コンピュータ40は、任意の路線で発生した不通区間の情報を受信し、定期券区間内に不通区間を含むすべてのID番号を抽出するID番号抽出部44と、不通区間を含む路線以外の路線における自動改札機で、抽出されたID番号に係る乗車用媒体が改札処理されるとき、この改札処理に応じて受信するID番号に対応する乗車用媒体を定期券として振替処理する振替処理部45と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振替乗車システムに関し、特に、定期券機能とSF乗車券機能を有するICカードまたは同じ機能を有する携帯電話機等を利用して車両等に乗車する利用客が定期券利用路線で振替輸送の事態に遭遇したとき当該利用客の利便性に好適な振替乗車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードやモバイルIC機(携帯電話機やPAD)等により定期券機能とSF(ストアドフェア)乗車券機能を有する乗車用媒体(以下「ICカード等」ともいう)を利用して、駅の改札処理を行う改札システムが開発されてきた。そして、現在、そのICカード等を利用して電車に乗車する人が多くなってきている。電車を利用する上において、振替輸送が必要となる場合がある。例えば、JR京浜東北線の品川−大井町間で不通になった場合、京浜急行電鉄で振替輸送がなされる。そのとき、振替乗車票を受け取って利用する。そのような場合、振替乗車票は、改札システムの自動改札機を利用できるものではなく、そのため、駅の係員によって改札処理がなされ、係員の負担が増大してしまう。また、運賃精算処理も煩雑となる。そこで、特許文献1では、振替処理の効率化を図った振替乗車券発行装置および振替システムが開示されている。その振替乗車券発行装置では、路線に運行障害が発生すると、その運行障害情報をその装置の不通区間入力部にて入力する。利用者が定期券等の通行媒体をその装置の投入口に投入すると、券読取部はその装置に投入された通行媒体から通行情報を読み取る。振替乗車券発行装置のCPUは、通行情報および運行障害情報に基づいて通行媒体が振替対象であるか否かを判断し、振替対象と判断した場合は、振替券発行部は、CPUの制御の下に、振替乗車券を発行する。また、特許文献2では、自動改札機において、無線式乗車券媒体の情報記録エリアに振替乗車情報を記録することにより、予め設定されたルート以外の区間を振替乗車区間として利用することを可能にする振替乗車システムが開示されている。
【特許文献1】特開平9−81809号公報
【特許文献2】特開2000−200371公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1で開示された振替システムでは、定期券を振替乗車券発行装置に一度入れてから振替乗車券を発行するため、一度振替乗車券を受け取ってから改札を通る必要がある。そのため、振替発行装置の設置場所で、振替乗車券を取得するために人の行列ができる可能性があり、利用客に不便をかけるという問題が生じる。また、特許文献2で開示された振替乗車システムでは、自動改札機において、乗車用媒体の情報記録エリアに振替乗車情報を記録して利用する場合では、定期券機能とSF乗車券機能を有する乗車用媒体を利用しようとしたとき、振替乗車するときに、SF乗車券として処理されてしまう場合があり、利用客に余計な料金を支払わせることになるという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、定期券機能とSF乗車券機能を有するICカード等を利用した振替乗車システムにおいて、振替輸送時に利用客は余計な料金を払わないで済み、利用客にとって利便性が高く、さらに振替輸送発生に関係する利用客の管理に適した振替乗車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る振替乗車システムは、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0006】
第1の振替乗車システム(請求項1に対応)は、管理域内における、定期券機能とSF乗車券機能を有するすべての乗車用媒体の各々について対応するID番号を記憶・管理する上位コンピュータと、管理域内の駅の各々に設置され、定期券機能とSF乗車券機能を有する乗車用媒体の各々に対して路線に応じて定期券またはSF乗車券として改札処理を行う自動改札機とから成り、上位コンピュータと自動改札機は通信システムで接続され、改札処理に必要な情報を送受するように構成された改札システムでの振替乗車システムである。上位コンピュータは、任意の路線で発生した不通区間の情報を受信し、定期券区間内に不通区間を含むすべてのID番号を抽出するID番号抽出部と、不通区間を含む路線以外の路線における自動改札機で、抽出されたID番号に係る乗車用媒体が改札処理されるとき、この改札処理に応じて受信するID番号に対応する乗車用媒体を定期券として振替処理する振替処理部と、を備える。
【0007】
上記の振替乗車システムによれば、不通区間が発生した場合、上位コンピュータはそのID番号抽出部によって定期券区間内に不通区間を含むすべてのID番号を利用客データベース等から抽出し、振替処理部によって抽出されたID番号に対応する乗車用媒体を定期券として振替処理をするため、振替輸送時において利用客に余計な料金を払わせずに済ませることができる。また、利用客にとって利便性が高く、さらに振替輸送発生に関係する利用客の管理に適した振替乗車システムを提供することができる。
【0008】
第2の振替乗車システム(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、乗車用媒体はICカードであることで特徴づけられる。この構成では、ICカードの記憶部内には定期区間とストアドフェア機能の各種情報が格納されており、上位コンピュータは、抽出された上記ID番号情報と、ICカードから送信される情報とに基づき該当するICカードを振替の改札処理する。
【0009】
第3の振替乗車システム(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、乗車用媒体は携帯電話機であることで特徴づけられる。この構成では、携帯電話機の記憶部に定期区間とストアドフェア機能の各種情報が記憶されており、上位コンピュータは、抽出された上記ID番号情報と携帯電話機から送信される情報とに基づき該当する携帯電話機を振替改札処理する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、振替乗車券発行装置を振替乗車券を取得する必要もなく、また、振替輸送時も余計な料金を払わずにすませることができる。さらに、利用客にとって利便性が高く、振替輸送発生に関係する利用客の管理に適した振替乗車システムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1〜図3を参照して本発明の本実施形態に係る振替乗車システムの基本的構成を説明する。この振替乗車システム10は、既設された鉄道運行管理用のコンピュータシステムを利用して構築される。なお、図1では、不通区間は生じていないものとする。図1に示すように、振替乗車システム10は、例えば、路線1の駅A,B,C,Dの改札口にそれぞれ設けられた自動改札機11,12,13,14と、例えば路線2の駅E,Fの改札口にそれぞれ設けられた自動改札機21,22と、各自動改札機から通信網(図示せず)を経由して情報をやり取りし、自動改札機の通常の改札処理と振替改札処理を行う上位コンピュータ40とから構成される。また利用客は、ICカードあるいはモバイルIC機(携帯電話機やPAD)等の乗車用媒体を用いて自動改札機に改札を行わせるものとする。
【0013】
ICカード等は、定期券機能とSF(ストアドフェア)機能を有しており、定期券の定期区間、定期券の有効期間、ストアドフェア機能として用いるときの残額、そして、個々のICカード等に付されたID番号を記憶している。
【0014】
自動改札機11〜14,21,22の内部構成は、図2に示される。各自動改札機は、機能部として、ゲート33と、ICカード等の情報を読み込み、SF機能を用いるときの残額を書き込む情報読込み書込み部30と、読み込んだ情報を上位コンピュータ40に送信する送信部31と、送信した情報に基づいて上位コンピュータ40が送信してくるゲートを開けるかどうかの情報を受信する受信部32と、受信部32で受信した情報に基づいてゲート33の開閉を制御するゲート制御部34を備えている。また、情報読込み書込み部30と送信部31と受信部32とゲート制御部34の各動作は、制御部35によって制御される。
【0015】
上位コンピュータ40は、自動改札機11〜14,21,22の通常の改札処理、および、振替輸送の事態が発生したときの振替乗車のための改札処理を管理する。上位コンピュータ40は、図3に示すごとく、機能部として、受信部41と改札処理部42とデータベース43とID番号抽出部44と振替処理部45と送信部46と制御部47を備えている。受信部41は、改札機11〜14,21,22によって送信された情報を受信する装置である。データベース43は、発行したICカード等のID番号と定期区間の情報を記憶する装置である。改札処理部42は、受信し記憶したICカード等のID番号と定期区間情報に基づいて自動改札機のゲートの開閉を決定する装置である。また、改札処理部42は、定期券として扱わないときにSF機能としての残額を計算し、その残額を送信する。振替処理部45は、振替輸送が発生したときの処理を行う。受信部41と改札処理部42とデータベース43、ID番号抽出部44、振替処理部45、送信部46、の各動作は、制御部47に基づいて制御される。
【0016】
次に、本実施形態の振替乗車システム10における通常の改札処理を詳細に説明する。図4は例えば自動改札機12と上位コンピュータ40のそれぞれでの処理を示すフローチャートである。
【0017】
本実施形態の振替乗車システム10の振替輸送のない通常の改札処理は、まず、利用客が自動改札機12を通るとき、改札機12に設けられた情報読込み書込み部30によりICカード等に記憶された情報を読み込む(ステップS11)。自動改札機12は、読み込んだID情報を上位コンピュータ40に送信する(ステップS12)。上位コンピュータ40は、受信したID情報をID番号抽出部44によりデータベース43からそのID番号の定期区間を検索する(ステップS13)。そして、検索した定期区間がその自動改札機の駅であるかどうか判断する(ステップS14)。もし、定期区間であるならば、ゲートを開の情報を改札機に送信する(ステップS15)。
【0018】
ステップS14で定期区間ではないならば、残額があるかどうか判断する(ステップS16)もし、残額があるならば、ゲートを開の情報を自動改札機に送信する(ステップS15)。その情報を受信した自動改札機はゲートを開く。残額がないならば、ゲートを閉じたままの情報を送信する(ステップS17)。自動改札機は、ゲート開の命令を受信したかどうか判断する(ステップS18)。ステップS18でゲート開の命令を受けていると判断されたら、ゲートを開く(ステップS19)。もし、ステップS18でゲート開の命令を受けていないと判断されれば、ゲートを閉じたままにする(ステップS20)。
【0019】
次に、振替輸送の改札処理の場合を説明する。図5で示すように、駅Bと駅Cの間で不通になったとする。そのときの上位コンピュータと自動改札機それぞれでの処理を図6のフローチャートで示す。上位コンピュータ40は、発生した不通区間の情報を受信し(ステップS31)、ID番号抽出部44により、定期券区間内に不通区間を含むすべてのID番号を抽出する(ステップS32)。そして、駅B−C間を含む定期券は、駅E−F間においても定期券として処理するように振替処理部45は実行する。通常、路線1を利用していた利用客は、振替輸送のため、駅Bから駅Eまで移動し(矢印50)、駅Eと駅Fの区間を路線2を利用する。そして、駅Fから駅Cに移動して(矢印51)路線1に乗り換える。駅Eにおいて利用客が自動改札機21を通るとき、自動改札機21に設けられた情報読込み書込み部30によりICカード等に記憶された情報を読み込む(ステップS33)。自動改札機21は、読み込んだID情報を上位コンピュータ40に送信する(ステップS34)。上位コンピュータ40は、受信したID情報からそのICカード等を定期券として処理するかどうか判断する(ステップS35)。そして、定期券として処理するならば、ゲートを開の情報を改札機に送信する(ステップS36)。
【0020】
ステップS35で定期券として処理しないならば、残額があるかどうか判断する(ステップS37)。もし、残額があるならば、ゲートを開の情報を改札機に送信する(ステップS36)。残額がないならば、ゲートを閉じたままの情報を送信する(ステップS38)。自動改札機は、ゲート開の命令を受信したかどうか判断する(ステップS39)。ステップS18でゲート開の命令を受けていると判断されたら、ゲートを開く(ステップS40)。もし、ステップS18でゲート開の命令を受けていないと判断されれば、ゲートを閉じたままにする(ステップS41)。
【0021】
以上のように、振替輸送時に自動改札機によってICカード等から取り込んだID番号に応じて、上位コンピュータ40は、定期券として処理するか、SFとして処理するかを判断して振替乗車処理を行うため、振替乗車券発送装置を用いる必要がなく、また、余分なお金を支払う必要がなく振替輸送を行うことができる。また、利用客にとって利便性が高く、さらに振替輸送発生に関係する利用客の管理に適した振替乗車システムを構築することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、鉄道等において不通区間が生じたときの振替乗車システムとして利用される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る振替乗車システムの構成を説明するための図である。
【図2】本実施形態の自動改札機の構成を説明するためのブロック図である。
【図3】本実施形態の上位コンピュータの構成を説明するためのブロック図である。
【図4】本実施形態の振替乗車システムにおける通常の改札処理を説明するフローチャートである。
【図5】不通区間が生じた場合の例を示す図1と同様な図である。
【図6】本実施形態の振替乗車システムにおける振替輸送の改札処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0024】
11,12 自動改札機
13,14 自動改札機
21,22 自動改札機
31 送信部
32 受信部
33 ゲート
34 ゲート制御部
35 制御部
40 上位コンピュータ
41 受信部
42 改札処理部
43 データベース
44 ID番号抽出部
45 振替処理部
46 送信部
47 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理域内における、定期券機能とSF乗車券機能を有するすべての乗車用媒体の各々について対応するID番号を記憶・管理する上位コンピュータと、
前記管理域内の駅の各々に設置され、定期券機能とSF乗車券機能を有する前記乗車用媒体の各々に対して路線に応じて定期券またはSF乗車券として改札処理を行う自動改札機とから成り、
前記上位コンピュータと前記自動改札機は通信システムで接続され、改札処理に必要な情報を送受するように構成された改札システムでの振替乗車システムであって、
前記上位コンピュータは、
任意の路線で発生した不通区間の情報を受信し、定期券区間内に前記不通区間を含むすべての前記ID番号を抽出するID番号抽出手段と、
前記不通区間を含む前記路線以外の路線における前記自動改札機で、抽出された前記ID番号に係る前記乗車用媒体が改札処理されるとき、この改札処理に応じて受信する前記ID番号に対応する前記乗車用媒体を定期券として振替処理する振替処理手段と、を備える、
ことを特徴とする振替乗車システム。
【請求項2】
前記乗車用媒体は、ICカードであることを特徴とする請求項1記載の振替乗車システム。
【請求項3】
前記乗車用媒体は、携帯電話機であることを特徴とする請求項1記載の振替乗車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−215733(P2006−215733A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26717(P2005−26717)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)