説明

振盪機

【課題】直線往復動、偏心旋回動及び8の字旋回動を切替可能な振盪機を提供する。
【解決手段】第1偏心回転軸14及び偏心量が半分で回転数が2倍の第2偏心回転軸15とX方向スライドテーブル16とY方向スライドテーブル17と振盪動作切替部材18とを備え、X方向スライドテーブルは第1偏心回転軸をY軸方向に移動可能に挟着する下部挟着部材16dを、振盪動作切替部材は第1偏心回転軸を挟着する上部挟着部材と第2偏心回転軸挟着部材とY方向スライドテーブルの移動を規制する凹凸嵌合部材を備え、振盪動作切替部材の凹凸嵌合部材を嵌合させると直線往復動を、上部挟着部材が第1偏心回転軸を挟着させると旋回動を、振盪動作切替部材の第2偏心回転軸挟着部材で第2偏心回転軸を挟着させると8の字旋回動を行う。各テーブルをガイドするガイドローラなどはポリウレタンで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振盪機に関し、詳しくは、振盪台の振盪運動を、直線往復動、旋回動及び8の字旋回動に切替可能な振盪機に関する。
【背景技術】
【0002】
振盪培養、反応、溶解、混合などに用いられる振盪機として、振盪機架台に1:2の回転比率で回転する第1偏心回転軸と第2偏心回転軸とを設けるとともに、水平方向に移動可能な振盪台に前記第1偏心回転軸及び第2偏心回転軸との係合状態を変更するスライド板を設け、スライド板の位置によって振盪台を直線往復動、偏心旋回動及び8の字旋回動の三種に切替可能とした振盪機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−270981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1に記載されたような振盪機は、3個の軸受とスライド板との係合状態をスライド板をスライドさせて切り替えるため、スライド板などが大型化してしまう。また、軸受と係合するスライド板の溝部分が板材を打ち抜いて形成されているため、十分な寸法精度を確保することが難しく、さらに、軸受とスライド板とが係合する部分や、振盪台をXY方向に移動可能に支持するガイドローラとガイドレールとの部分についても、金属や硬質合成樹脂で形成されているため、振盪作動時に振盪機全体に振動や騒音が発生するという問題があった。特に、多数の試料を取り扱う部門で多数の振盪機を使用する際には、振盪機からの騒音が室内に響き渡り、室内環境を著しく悪化させていた。
【0005】
そこで本発明は、振動や騒音の発生を抑えながら、直線往復動、偏心旋回動及び8の字旋回動の切り替えを容易かつ確実に行うことができる振盪機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の振盪機は、駆動用モータを備えた駆動ベースと、該駆動ベースの上面から上方に突出した第1偏心回転軸及び第2偏心回転軸と、前記駆動ベースに対して直交座標のX軸方向に移動可能に設けられたX方向スライドテーブルと、該X方向スライドテーブルに対して直交座標のY軸方向に移動可能に設けられたY方向スライドテーブルと、該Y方向スライドテーブルに対して前記X軸方向に移動可能に設けられた振盪動作切替部材とを備えた振盪機であって、前記第2偏心回転軸は、前記第1偏心回転軸の半分の偏心量及び第1偏心回転軸の2倍の回転数を有し、前記X方向スライドテーブルは、前記第1偏心回転軸が挿通される第1偏心回転軸挿通孔及び該第1偏心回転軸挿通孔に挿通された第1偏心回転軸をY軸方向に移動可能に挟着する下部挟着部材と、前記第2偏心回転軸が挿通される第2偏心回転軸挿通孔とを有し、前記振盪動作切替部材は、前記第1偏心回転軸挿通孔から上方に突出した第1偏心回転軸の上部をX軸方向に移動可能に挟着する上部挟着部材と、前記第2偏心回転軸挿通孔から上方に突出した第2偏心回転軸をX軸方向に移動可能に挟着する第2偏心回転軸挟着部材とを備え、さらに、前記X方向スライドテーブルと前記振盪動作切替部材との間には、前記Y方向スライドテーブルのY軸方向への移動を規制するための凹凸嵌合部材を備えており、前記振盪動作切替部材を前記凹凸嵌合部材が嵌合する位置にしてX方向スライドテーブルに対するY方向スライドテーブルのY軸方向への移動を規制したときに前記第1偏心回転軸が前記下部挟着部材に挟着された状態で偏心回転することによってX方向スライドテーブル及びY方向スライドテーブルが一体にX軸方向に直線往復動を行い、前記振盪動作切替部材を前記上部挟着部材が第1偏心回転軸を挟着する位置にしたときに前記第1偏心回転軸が前記下部挟着部材及び前記上部挟着部材にそれぞれ挟着された状態で偏心回転することによりY方向スライドテーブルが旋回動を行い、前記振盪動作切替部材を前記第2偏心回転軸の挟着部材が第2偏心回転軸を挟着する位置にしたときに前記第1偏心回転軸が前記下部挟着部材に挟着された状態で偏心回転するとともに前記第2偏心回転軸が前記挟着部材に挟着された状態で偏心回転することによりY方向スライドテーブルが8の字旋回動を行うように形成され、前記Y方向スライドテーブルと前記振盪動作切替部材との間には、該振盪動作切替部材を前記各位置に振盪動作切替部材を位置決めするボールプランジャを用いた位置決め手段が設けられ、前記X方向スライドテーブル及びY方向スライドテーブルは、凹溝型ガイドレールと該凹溝型ガイドレール内を転動するガイドローラとによって移動可能に支持され、該ガイドローラの外周部と前記第1偏心回転軸の外周部及び第2偏心回転軸外周部とがそれぞれポリウレタン(ウレタン樹脂、ウレタンゴム)で形成されていることを特徴とする振盪機。
【発明の効果】
【0007】
本発明の振盪機によれば、簡単な構成で直線往復動、偏心旋回動及び8の字旋回動の切り替えを容易かつ確実に行うことができるとともに、摺動部や転動部にポリウレタン製のガイドローラを使用しているので、振動や騒音の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の振盪機における駆動部の一形態例を示すもので、直線往復動を行う状態を示す平面図である。
【図2】同じく正面図である。
【図3】同じく右側面図である。
【図4】図1のIV−IV断面図である。
【図5】図1のV−V断面図である。
【図6】旋回動を行う状態を示す平面図である。
【図7】図6のVII−VII断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII断面図である。
【図9】8の字旋回動を行う状態を示す平面図である。
【図10】図9のX−X断面図である。
【図11】図9のXI−XI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本形態例に示す振盪機の駆動部11は、駆動用モータ12を備えた駆動ベース13と、該駆動ベース13の天板13aから上方に突出した第1偏心回転軸14及び第2偏心回転軸15と、前記駆動ベース13に対して直交座標のX軸方向(振盪機幅方向)に移動可能に設けられたX方向スライドテーブル16と、該X方向スライドテーブル16に対して直交座標のY軸方向(振盪機前後方向)に移動可能に設けられたY方向スライドテーブル17と、該Y方向スライドテーブル17に対して前記X軸方向に移動可能に設けられた振盪動作切替部材18とを備えている。
【0010】
前記第1偏心回転軸14は、駆動ベース13の天板13aに設けられた軸受14aに回転可能に保持されており、軸受14aの上部には回転円盤14bが、軸受14aの下部には大径プーリ14c及び小径プーリ14dがそれぞれ設けられ、大径プーリ14cと駆動用モータ12の出力軸12aとに駆動ベルト14eが掛け渡されている。回転円盤14bの上面外周部には、ポリウレタン製の第1下部ローラ14fと第1上部ローラ14gとが同じ軸に回転可能に設けられている。
【0011】
前記第2偏心回転軸15は、駆動ベース13の天板13aに設けられた軸受15aに回転可能に保持されており、軸受15aの上部には回転円盤15bが、軸受15aの下部にはプーリ15cがそれぞれ設けられ、該プーリ15cと前記第1偏心回転軸14の小径プーリ14dとに駆動ベルト15dが掛け渡されている。回転円盤15bの上面外周部には、ポリウレタン製の第2ローラ15eが回転可能に設けられている。
【0012】
第1偏心回転軸14における回転円盤14bの回転数と第2偏心回転軸15における回転円盤15bの回転数との関係は、第2偏心回転軸15の回転数が第1偏心回転軸14の2倍の回転数に設定されている。また、第1偏心回転軸14における第1下部ローラ14f及び第1上部ローラ14gの偏心量と第2偏心回転軸15における第2ローラ15eの偏心量との関係は、第1偏心回転軸14の偏心量が第2偏心回転軸15の偏心量の2倍の偏心量に設定されている。
【0013】
前記駆動ベース13は、前後一対の脚部13bの上に長方形状の天板13aを設けたものであって、天板13aには、前記駆動用モータ12、第1偏心回転軸14及び第2偏心回転軸15を取り付けるための切欠部や打抜部が形成されている。また、天板13aの前縁部及び後縁部には、上部が開口した凹溝型の一対のガイドレール13cがX軸方向に平行に設けられるとともに、該ガイドレール13c内の所定位置に、X方向スライドテーブル16の浮き上がりを防止するためのポリウレタン製の抑えローラ13dが設けられている。
【0014】
前記X方向スライドテーブル16は、長方形状の金属板に打ち抜き加工及び曲げ加工を施して所定形状に形成したものであって、前縁両端部及び後縁両端部の4箇所には、前記駆動ベース13のガイドレール13c内を転動するポリウレタン製のガイドローラ16aがそれぞれ設けられている。また、前記抑えローラ13dがX方向スライドテーブル16の端縁部上面を転動することにより、駆動ベース13からX方向スライドテーブル16が浮き上がってガイドレール13cからガイドローラ16aが外れることを防止している。
【0015】
X方向スライドテーブル16における前記第1偏心回転軸14に対応する位置には、第1偏心回転軸14の第1下部ローラ14f及び第1上部ローラ14gが下方から上方に挿通可能な大きさを有する第1偏心回転軸挿通孔16bが設けられ、第2偏心回転軸15に対応する位置には、第2偏心回転軸15の第2ローラ15eを下方から上方に挿通するための第2偏心回転軸挿通孔16cが設けられている。各挿通孔16b,16cは、各ローラ14f,14g,15eの旋回運動及び各テーブル16,17のスライドが可能な形状に形成されており、第1偏心回転軸挿通孔16bはY軸方向に長い長孔形状に、第2偏心回転軸挿通孔16cはX軸方向に長い長孔形状にそれぞれ形成されている。
【0016】
X方向スライドテーブル16の第1偏心回転軸挿通孔16bの側縁上面には、第1偏心回転軸14の第1下部ローラ14fをY軸方向に移動可能に挟着する一対の下部ローラ挟着部材16dが対向した状態で設けられている。この下部ローラ挟着部材16dは、耐摩耗性、摺動性が良好なポリアセタール(POM)を所定形状に形成したもの、あるいは、転動面にポリアセタール製部材を装着した金属厚板で形成されたものであって、第1下部ローラ14fが転動する転動面がY軸に平行な方向になるようにして、下部ローラ挟着部材16dの転動面同士の間隔が、第1下部ローラ14fの直径と略等しいか、僅かに大きくなるように正確に位置決めされた状態で固定されている。
【0017】
また、X方向スライドテーブル16の左右両側縁部上面には、上部が開口した凹溝型の一対のガイドレール16eがY軸方向に平行に設けられるとともに、Y方向スライドテーブル17の浮き上がりを防止するためのアングル状の浮き防止部材16fが設けられている。さらに、X方向スライドテーブル16の上面右手前側には、Y方向スライドテーブル17及び前記振盪動作切替部材18をX方向スライドテーブル16に対して固定した状態とするための直動用保持部16gが設けられている。
【0018】
Y方向スライドテーブル17は、前後方向及び左右方向に配置される部材を枠組みしたものであって、左右両側縁部の前後計4箇所に、前記X方向スライドテーブル16のガイドレール16e内を転動するポリウレタン製のガイドローラ17aが設けられるとともに、該ガイドローラ17aと同じ軸に、前記浮き防止部材16fの下面を転動するポリウレタン製の浮き防止ローラ17bが設けられている。
【0019】
また、Y方向スライドテーブル17の前縁部と後縁部とには、前記振盪動作切替部材18をX軸方向に移動可能にガイドするための一対のガイド部材17cがX軸方向に平行に設けられ、さらに、振盪動作切替部材18を3箇所の設定位置に固定するための凹溝からなる位置決め部19a,19b,19cを形成した位置決めガイド部材17dが設けられている。さらに、Y方向スライドテーブル17の左端部には、振盪動作切替部材18を保持する保持部材17eが設けられ、保持部材17eの開口側にはガイド斜面が設けられている。
【0020】
前記振盪動作切替部材18は、Y方向スライドテーブル17の幅寸法に対して幅が狭い板材を加工したものであって、Y方向スライドテーブル17の枠組み内に嵌り込む状態に形成され、下面前後部には前記Y方向スライドテーブル17のガイド部材17cにガイドされるプーリ状のガイドローラ18aが前後4箇所に設けられている。さらに、上面後部側には、後部側のガイド部材17cの上面に圧接する2個のボールプランジャ18bが設けられるとともに、上面前部側には、前記位置決めガイド部材17dの位置決め部19a,19b,19cに係合するボールプランジャ18cが一つ設けられている。また、振盪動作切替部材18の手前側には、操作つまみ18dを備えた操作部が突出しており、振盪機の前面側から振盪動作切替部材18をX軸方向に移動させることができるように形成している。さらに、振盪動作切替部材18の上面左側には、前記Y方向スライドテーブル17の保持部材17eの保持溝に係合する係合突起18eが設けられている。
【0021】
この振盪動作切替部材18は、ガイドローラ18aの外周がガイド部材17cの下部を転動するとともに、後部のボールプランジャ18bがガイド部材17cの上面に圧接し、前部のボールプランジャ18cが前記位置決めガイド部材17dに圧接しながら位置決め部19a,19b,19cに係合するように形成されているので、Y方向スライドテーブル17に対してガタつきなく移動可能に保持されるとともに、あらかじめ設定された位置決め部19a,19b,19cの位置で固定される状態になる。
【0022】
また、振盪動作切替部材18の下面には、X方向スライドテーブル16の前記直動用保持部16gに凹凸嵌合して保持される直動用保持突起18fと、第1偏心回転軸14の前記第1上部ローラ14gをX軸方向に移動可能に挟着する一対の上部ローラ挟着部材18gと、第2偏心回転軸15の前記第2ローラ15eをX軸方向に移動可能に挟着する一対の第2ローラ挟着部材18hとが設けられている。さらに、上部ローラ挟着部材18g及び第2ローラ挟着部材18hは、前記下部ローラ挟着部材16dと同様に、ポリアセタールのように耐摩耗性、摺動性が良好なものを所定形状に形成したものが用いられており、各ローラ14g,15eが転動する転動面がX軸に平行な方向になるようにして、転動面同士の間隔が各ローラの直径と略等しいか、僅かに大きくなるように正確に位置決めされた状態で固定されている。また、前記直動用保持突起18fはポリアセタールで形成されており、直動用保持突起18fが嵌合する直動用保持部16gは、少なくとも嵌合部をポリアセタールで形成して嵌合・離脱が容易に行えるようにするとともに、耐久性の向上を図っている。
【0023】
各部材の関係は、振盪動作切替部材18を右方向に移動させて右側に位置する位置決め部19aにボールプランジャ18cを係合させたときに直動用保持突起18fが直動用保持部16gに嵌合して保持され、振盪動作切替部材18を中央部に位置させて中央の位置決め部19bにボールプランジャ18cを係合させたときに上部ローラ挟着部材18gが第1上部ローラ14gを挟着し、振盪動作切替部材18を左方向に移動させて左側に位置する位置決め部19cにボールプランジャ18cを係合させたときに第2ローラ挟着部材18hが第2ローラ15eを挟着するように設定されている。さらに、直動用保持突起18f、上部ローラ挟着部材18g及び第2ローラ挟着部材18hは、前記下部ローラ挟着部材16dと同様に、正確に位置決めされた状態で振盪動作切替部材18に取り付けられており、上部ローラ挟着部材18g及び第2ローラ挟着部材18hの側縁には、各ローラを各挟着面間にガイドするためのガイド斜面がそれぞれ形成されている。
【0024】
このように形成した駆動部11は、振盪動作切替部材18の位置に関係なく、第1偏心回転軸14の第1下部ローラ14fがX方向スライドテーブル16の下部ローラ挟着部材16dにY軸方向に移動可能に挟着された状態になっているため、第1偏心回転軸14の第1下部ローラ14fが旋回運動を行うと、第1下部ローラ14fが下部ローラ挟着部材16dに挟着されてY軸方向に往復しながら、下部ローラ挟着部材16dを介してX方向スライドテーブル16を常にX軸方向に往復動させる状態となっている。
【0025】
したがって、操作つまみ18dを持って振盪動作切替部材18を右方向に移動させ、図1乃至図5に示すように、右側の位置決め部19aにボールプランジャ18cを係合させ、直動用保持突起18gを直動用保持部16gに凹凸嵌合させることにより、振盪動作切替部材18を含むY方向スライドテーブル17がX方向スライドテーブル16に対してY軸方向に移動することを規制した状態になる。これにより、Y方向スライドテーブル17は、Y軸方向に移動することなく、X方向スライドテーブル16のX軸方向への往復動に伴って直線往復動する状態になる。
【0026】
また、振盪動作切替部材18をX軸方向中央部に移動させ、図6乃至図8に示すように、中央の位置決め部19bにボールプランジャ18cを係合させ、直動用保持突起18fと直動用保持部16gとの凹凸嵌合を解除するとともに、第1偏心回転軸14の第1上部ローラ14gを振盪動作切替部材18の上部ローラ挟着部材18gでX軸方向に移動可能に挟着した状態にすると、第1上部ローラ14gの旋回運動により上部ローラ挟着部材18g及び振盪動作切替部材18を介してY方向スライドテーブル17がY軸方向に往復動する状態となる。これにより、X方向スライドテーブル16に対してY軸方向に移動可能な状態となっているY方向スライドテーブル17は、X方向スライドテーブル16のX軸方向への往復動とY方向スライドテーブル17自身のY軸方向への往復動とを合成した旋回動を行う状態となる。
【0027】
さらに、振盪動作切替部材18を左方向に移動させ、図9乃至図11に示すように、左側の位置決め部19cにボールプランジャ18cを係合させ、第2偏心回転軸15の第2ローラ15eを振盪動作切替部材18の第2ローラ挟着部材18hにX軸方向に移動可能に挟着した状態にすると、第2ローラ15eの旋回運動により第2ローラ挟着部材18h及び振盪動作切替部材18を介してY方向スライドテーブル17がY軸方向に往復動する状態となる。前述のように、第2偏心回転軸15は、第1偏心回転軸14に対して偏心量が半分で回転数が2倍となっているので、第2ローラ挟着部材18h及び振盪動作切替部材18を介してY軸方向に往復動するY方向スライドテーブル17は、X方向スライドテーブル16がX軸方向に1往復する間にY軸方向に2往復することになり、Y方向スライドテーブル17は、X方向スライドテーブル16のX軸方向への往復動とY方向スライドテーブル17自身のY軸方向への往復動とを合成した8の字旋回動を行う状態となる。この8の字旋回動状態の際には、振盪動作切替部材18の係合突起18eがY方向スライドテーブル17の保持部材17eに係合して保持された状態になるので、振盪動作切替部材18の動きをY方向スライドテーブル17により確実に伝達することができる。
【0028】
前記8の字旋回動状態から前記旋回動状態に切り替える場合や、前記旋回動状態から前記8の字旋回動状態に切り替える場合、さらに、前記旋回動状態から直線往復動状態に切り替える場合には、振盪動作切替部材18のY軸方向の位置が旋回動又は8の字旋回動の終了時の位置にあり、各ローラ14f,14g,15eや直動用保持突起18fのY軸方向の位置が各挟着部材や直動用保持部の位置とずれていることがあるが、上部ローラ挟着部材18gの右側縁に形成したガイド斜面、第2ローラ挟着部材18hの左側縁に形成したガイド斜面、直動用保持部16gの左側縁に形成したガイド斜面がローラなどに当接して振盪動作切替部材18及びY方向スライドテーブル17を所定位置にガイドするので、振盪動作切替部材18を容易かつ確実に所定位置に移動させることができる。
【0029】
このように形成した振盪機の駆動部11は、ケーシング内に収容され、Y方向スライドテーブル17の上に振盪台を取り付け、操作つまみ18dをケーシング前部側に突出させた状態で使用され、振盪動作切替部材18の位置を選択することにより、振盪台を直線往復動、旋回動及び8の字旋回動のいずれかの動作で振盪させ、振盪台上に載置した容器内の試料を振盪させる。
【0030】
振盪機を使用中に転動する各ローラ、すなわち、駆動ベース13の抑えローラ13d、第1偏心回転軸14の第1下部ローラ14f及び第1上部ローラ14g、第2偏心回転軸15の第2ローラ15e、X方向スライドテーブル16のガイドローラ16a、Y方向スライドテーブル17のガイドローラ17a及び浮き防止ローラ17bをポリウレタン製としたことにより、振盪時に各ガイドレール部分などを転動する際の転がり音や、各挟着部材間で旋回運動してテーブルを往復動させる際の挟着部材とローラとの衝突音及び転がり音を小さくすることができる。したがって、この駆動部11を使用した振盪機の作動音を小さくすることができ、室内に多数の振盪機を設置して同時に作動させても騒音は発生せず、室内環境を改善することができる。
【符号の説明】
【0031】
11…駆動部、12…駆動用モータ、12a…出力軸、13…駆動ベース、13a…天板、13b…脚部、13c…ガイドレール、13d…抑えローラ、14…第1偏心回転軸、14a…軸受、14b…回転円盤、14c…大径プーリ、14d…小径プーリ、14e…駆動ベルト、14f…第1下部ローラ、14g…第1上部ローラ、15…第2偏心回転軸、15a…軸受、15b…回転円盤、15c…プーリ、15d…駆動ベルト、15e…第2ローラ、16…X方向スライドテーブル、16a…ガイドローラ、16b…第1偏心回転軸挿通孔、16c…第2偏心回転軸挿通孔、16d…下部ローラ挟着部材、16e…ガイドレール、16f…浮き防止部材、16g…直動用保持部、17…Y方向スライドテーブル、17a…ガイドローラ、17b…浮き防止ローラ、17c…ガイド部材、17d…位置決め部材、17e…保持部材、18…振盪動作切替部材、18a…ガイドローラ、18b,18c…ボールプランジャ、18d…操作つまみ、18e…係合突起、18f…直動用保持突起、18g…上部ローラ挟着部材、18h…第2ローラ挟着部材、19a,19b,19c…位置決め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用モータを備えた駆動ベースと、該駆動ベースの上面から上方に突出した第1偏心回転軸及び第2偏心回転軸と、前記駆動ベースに対して直交座標のX軸方向に移動可能に設けられたX方向スライドテーブルと、該X方向スライドテーブルに対して直交座標のY軸方向に移動可能に設けられたY方向スライドテーブルと、該Y方向スライドテーブルに対して前記X軸方向に移動可能に設けられた振盪動作切替部材とを備えた振盪機であって、前記第2偏心回転軸は、前記第1偏心回転軸の半分の偏心量及び第1偏心回転軸の2倍の回転数を有し、前記X方向スライドテーブルは、前記第1偏心回転軸が挿通される第1偏心回転軸挿通孔及び該第1偏心回転軸挿通孔に挿通された第1偏心回転軸をY軸方向に移動可能に挟着する下部挟着部材と、前記第2偏心回転軸が挿通される第2偏心回転軸挿通孔とを有し、前記振盪動作切替部材は、前記第1偏心回転軸挿通孔から上方に突出した第1偏心回転軸の上部をX軸方向に移動可能に挟着する上部挟着部材と、前記第2偏心回転軸挿通孔から上方に突出した第2偏心回転軸をX軸方向に移動可能に挟着する第2偏心回転軸挟着部材とを備え、さらに、前記X方向スライドテーブルと前記振盪動作切替部材との間には、前記Y方向スライドテーブルのY軸方向への移動を規制するための凹凸嵌合部材を備えており、前記振盪動作切替部材を前記凹凸嵌合部材が嵌合する位置にしてX方向スライドテーブルに対するY方向スライドテーブルのY軸方向への移動を規制したときに前記第1偏心回転軸が前記下部挟着部材に挟着された状態で偏心回転することによってX方向スライドテーブル及びY方向スライドテーブルが一体にX軸方向に直線往復動を行い、前記振盪動作切替部材を前記上部挟着部材が第1偏心回転軸を挟着する位置にしたときに前記第1偏心回転軸が前記下部挟着部材及び前記上部挟着部材にそれぞれ挟着された状態で偏心回転することによりY方向スライドテーブルが旋回動を行い、前記振盪動作切替部材を前記第2偏心回転軸の挟着部材が第2偏心回転軸を挟着する位置にしたときに前記第1偏心回転軸が前記下部挟着部材に挟着された状態で偏心回転するとともに前記第2偏心回転軸が前記挟着部材に挟着された状態で偏心回転することによりY方向スライドテーブルが8の字旋回動を行うように形成され、前記Y方向スライドテーブルと前記振盪動作切替部材との間には、該振盪動作切替部材を前記各位置に振盪動作切替部材を位置決めするボールプランジャを用いた位置決め手段が設けられ、前記X方向スライドテーブル及びY方向スライドテーブルは、凹溝型ガイドレールと該凹溝型ガイドレール内を転動するガイドローラとによって移動可能に支持され、該ガイドローラの外周部と前記第1偏心回転軸の外周部及び第2偏心回転軸外周部とがそれぞれポリウレタンで形成されていることを特徴とする振盪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−255308(P2011−255308A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131714(P2010−131714)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(591245543)東京理化器械株式会社 (36)
【Fターム(参考)】