説明

挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物及びこれを用いた挽肉もしくは挽肉様加工品

【課題】
本発明はエマルジョンカードを調製することなく、挽肉もしくは挽肉様加工品において高配合に脂肪分を含有させることができ、かつ焼成等の加熱時のドリップを低減して高歩留りを確保し、ソフトな食感やジューシー感等の好ましい食感を付与できる挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物を提供する。
【解決手段】
植物性蛋白素材及び水をベースとするペースト中に、融点が5℃以上の固体状の油脂が分散しており、水と固体状の油脂との重量比率が2:1〜2:6であることを特徴とする、挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挽肉もしくは挽肉様加工品の製造に用いられる組成物及びこれを用いた挽肉もしくは挽肉様加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンバーグ、ミートボール、つくね等の挽肉を原料とする挽肉加工品は、焼成等の高温で加熱殺菌され、さらに消費者が喫食する際に行われる2次加熱調理によって生地中の水分、油脂分がドリップにより失われ、ジューシー感に欠けたパサパサした食感になる。また焼き縮み等が生じてボリューム感が低下することによって、外観及び歩留りが低下し、食感及び風味において著しく品質が悪くなってしまう問題があった。
【0003】
一方、比較的安価で栄養価の高い分離大豆たん白(以下、「SPI」と略することがある。)は、大豆粉末や濃縮大豆たん白に比べ高い乳化能および高いゲル形成能を有することから、該物性を利用し、挽肉加工品においては主にコストダウン、結着、加熱時の歩留り向上等の目的で使用されている。
【0004】
SPIの挽肉加工品への効果的な使用法として、エマルジョンカード法が挙げられる。エマルジョンカードは、基本配合としてSPI、水、油脂をサイレントカッター等の高速攪拌装置で混合し乳化させて調製したペースト状ないし可塑性を有するカード状の乳化物である。このエマルジョンカードを挽肉加工品の加熱前の生地調製時に添加して食肉類と混合することで、上記挽肉加工品の問題を改善できる。すなわち、食感にソフト感、ジューシー感を付与し、さらに加熱時の歩留りを向上、ドリップを低減させることが可能である。
【0005】
このエマルジョンカードの利用は公知であり、食肉、惣菜業界では広く利用されている。また、エマルジョンカードを利用した技術も種々開示されている。例えば、
(1)エマルジョンカードに特定の増粘多糖類を用いて粘性を増加させることで、乳化状態をさらに改善させる技術(特許文献1)、
(2)エマルジョンカードをつなぎとし、豆腐と固体状の油脂を配合した、なめらかさとやわらかさを併せ持つナゲット食品の技術(特許文献2)、
(3)湯葉を練り込んだエマルジョンカードを生地中に配合し、滑らかなソフト感、テリ(照り)を付与する練り惣菜の製造技術(特許文献3)、
(4)ゼラチン水溶液とトランスグルタミナーゼと動物性油脂とを混合し乳化および架橋させてなる、油脂の分離抑制および食感をソフトに改善することができる食品用改質剤、水産練り製品および畜産練り製品の技術(特許文献4)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3570470号公報
【特許文献2】WO2004/034822号公報
【特許文献3】特許第3287247号公報
【特許文献4】特開2009−22176号公報
【特許文献5】特公昭55−1024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜4の技術はいずれもエマルジョンカードを調製することが必須となっており、これらの方法はジューシー感もある程度付与できるが、エマルジョンすなわち乳化物を調製するためには幾つかの制限がある。すなわち、SPI等の乳化能を有する蛋白素材は、その乳化能を超える量の油脂を添加することはできない。
【0008】
一般的にSPIを使用した場合、油脂の添加量は水の添加量以下とすることが通常であり、それを超えると乳化不良を起こす場合がある。乳化状態が悪くなると、保型性が失われ、油脂の分離が生じ、エマルジョンカードとしての効果を発揮し難くなるという問題が生ずる。
【0009】
またエマルジョンカードは油脂の配合が多くなるほど、カードの流動性が少なく脆くなる傾向が強くなる。カードがこのような性状になると、挽肉加工品の製造の際に、ミキサー等の攪拌時の混合がし難くなり、生産効率が低下する可能性がある。
【0010】
以上のように、エマルジョンカード法の場合、SPI等の乳化素材自体の乳化能に制限されてしまうため油脂の配合量に限界があり、食感面でさらにジューシー感を高めることは困難である。一方、エマルジョンカード法を用いずに単に油脂を増やしても、油脂が保持されなかったり、油脂が偏在したりしてしまい、良い品質の挽肉加工品が得られるものでもない。そしてこのような課題は挽肉加工品を模した豆腐ハンバーグなどの挽肉様加工品においても同様に存在する。
【0011】
このように、SPI等の乳化素材の利用において、油脂をより多く配合することが可能であり、エマルジョンカード法を用いるよりもさらにソフトな食感、ジューシー感、加熱時の歩留り向上、ドリップ低減を達成した例はいずれも開示されていない。
【0012】
そこで、本発明はエマルジョンカードを調製することなく、挽肉もしくは挽肉様加工品において高配合に脂肪分を含有させることができ、かつ焼成等の加熱時のドリップを低減して高歩留りを確保し、ソフトな食感やジューシー感等の好ましい食感を付与できる挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは前記課題を解決すべく、できるだけ高配合の脂肪分を含有させることができ、かつ焼成等の加熱によっても高歩留りを確保してジューシー感等の好ましい食感を挽肉もしくは挽肉様加工品に付与することができないか鋭意研究するなかで、エマルジョンカードを予め調製しなくとも、植物性蛋白素材を水和させたペースト中に固体状の油脂を高配合に分散させた組成物を調製することにより、従来のエマルジョンカードよりも油脂を高配合できる知見が得られた。さらにこれを加熱すると加熱時にドリップによるロスが少なく、歩留まりが良好で食感もよりジューシーな挽肉もしくは挽肉様加工品を得るに到り、本発明を完成させた。
【0014】
即ち本発明は、
(1)植物性蛋白素材及び水をベースとするペースト中に、融点が5℃以上の固体状の油脂が分散しており、水と固体状の油脂との重量比率が2:1〜2:6であることを特徴とする、挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物、
(2)植物性蛋白素材と水との重量比率が1:3〜1:10である、前記(1)記載の挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物、
(3)固体状の油脂が、豚脂、牛脂及び植物性の硬化油脂もしくは分別油脂からなる群より選択される1以上である、前記(1)記載の挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物、
(4)前記(1〜3の何れか)記載の挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物を使用した挽肉もしくは挽肉様加工品、
(5)挽肉加工品が、ハンバーグ、ミートボール、シュウマイ、鶏から揚げ、つくね、つみれである、前記(1)記載の挽肉もしくは挽肉様加工品、
(6)植物性蛋白素材に対し水を混合してペーストを調製した後に、該ペーストに対し、融点が5℃以上である固体状の油脂を、水との重量比率が2:1〜2:6となるよう混合し、分散させることを特徴とする挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物の製造法、である。
【0015】
なお、植物性蛋白素材と水をベースとするペーストに油脂をなるべく乳化させずに混合する技術として、特許文献5には、大豆蛋白ペーストに未加工の動物脂肪組織や、凍結させた脂肪や、多糖類ゲルによりコーティングした脂肪を混合し、この混合物を加熱して蛋白質をゲル化させ、肉様食品を得ることが記載されている。この肉様食品は挽肉等の原料が可食性のケーシングに充填されたソーセージタイプの食品の製造に関するものであるため、加熱時のドリップ等の問題がない。そのため、本発明のような挽肉もしくは挽肉様加工品を対象とするものではない。また油脂の配合量も水に対する比率が本発明の組成物の配合量には及ばないものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、挽肉もしくは挽肉様加工品の製造において、蛋白質、水及び油脂を乳化混合させて得られるエマルジョンカードを調製する必要がなく、しかもエマルジョンカード法よりも脂肪分を高配合に含有させた挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物を得ることができる。これによって焼成等の加熱後にもドリップが低減されて高歩留りを確保し、ソフト感及びジューシー感等の好ましい食感の挽肉もしくは挽肉様加工品を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物は、植物性蛋白素材及び水をベースとするペースト中に、融点が5℃以上の固体状の油脂が分散していることを特徴とする。以下に本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0018】
(植物性蛋白ペースト)
本発明の挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物を構成する植物性蛋白ペーストは、植物性蛋白素材及び水をベースとしてこれらを均一に混合して該蛋白素材を水和させてペースト状としたものである。
ここで、植物性蛋白素材は、大豆、エンドウ、トウモロコシ等の豆類あるいは穀類から蛋白質が濃縮されたものである。典型的には粗蛋白質含量が固形分重量あたり85重量%以上の粉末状蛋白素材が好ましく、特に粉末状大豆蛋白素材が好ましい。例えば分離大豆たん白や分離大豆たん白に予め油脂を混合し粉末化したエマルジョンパウダーも使用できる。さらに本発明の組成物では予め水和物を形成させるため、植物性蛋白素材は水に対する溶解性が高いほど好ましく、具体的にはNSI(窒素溶解指数)が80以上、好ましくは90以上のものを用いるのが適当である。
【0019】
植物性蛋白ペーストにおける植物性蛋白素材と水との重量比率は1:3〜1:10が好ましく、1:3.5〜1:7がより好ましい。植物性蛋白素材に対する水が1:3未満であると水が少なく流動性が低くなる傾向にあるため、作業性が低下し、また油脂の保持力も低下する傾向となる。また1:10を超える場合は、分散させる油脂を取り囲む植物性蛋白ペーストの濃度が薄くなるためか、油脂の保持力が低下する傾向となる。
【0020】
(固体状の油脂)
本発明の挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物は、融点が5℃以上の固体状の油脂が植物性蛋白ペースト中に分散していることが重要である。すなわち、ここでの「分散」とは該固体状の油脂が、均一な植物性蛋白ペースト中に微粒子状になって散在することをいう。これにより、より多くの油脂を植物性蛋白ペーストへ混合することができ、しかも焼成等の加熱でも高歩留りを確保し、ジューシー感等の好ましい食感が得られる。
固体脂の融点については、本発明の挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物中で固体状で存在する融点であることに意味がある。そのため、融点5℃以上の固体脂は、挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物の品温が5℃程度で調製される場合に好適である。該組成物がより高い品温で取り扱われる場合には、その品温以上の融点の固形脂を用いることが望ましく、例えば取り扱う品温に合わせて7℃以上、10℃以上、あるいは15℃以上の油脂を用いることができる。
ただし、本組成物を取り扱う温度は、腐敗や変質等を考慮すると通常20℃以下で行われることが多いため、固形脂の融点は20℃以上であれば問題なく使用され、さらに25℃以上の融点であればなお好ましい。
また固体状の油脂が挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物の製造途中に融解して植物性たん白ペーストと均一に乳化するのを防ぐため、製造途中においては、使用する固体状の油脂の融点以上に植物性たん白ペーストの品温を上昇させないことが好ましく、製造中は少なくとも0〜20℃に維持しておくことが好ましく、0〜15℃がより好ましく、0〜10℃がさらに好ましく、0〜7℃がさらに好ましく、0〜5℃が最も好ましい。尚、本発明における油脂の融点測定法は、「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法2.2.4.2(1996)」によるものとする。
【0021】
使用できる油脂としては、豚脂、牛脂、魚油などの動物性油脂もしくはそれらの硬化油;シア脂、サル脂、イリッペ脂、ココア脂等の植物性の固形脂;パーム油、菜種油、大豆油、ひまわり油、サフラワー油、コーン油、落花生油等の植物性液状油の硬化油脂・分別油脂・エステル交換油脂等が挙げられ、上記油脂を用いたマーガリン等の加工油脂も用いることができる。上記油脂の中でも風味面から豚脂、牛脂又は植物性油脂の硬化油脂、分別油脂もしくはエステル交換油脂が好ましく、特に口溶けがシャープでジューシー感を付与しやすい観点から植物性油脂の分別油脂が好ましい。上記に例示した油脂の融点はいずれも文献や基準油脂分析試験法による測定から容易に知ることができるので、選択する油脂の融点以上で本発明の挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物を調製しないように留意すればよい。
なお、動物性の脂肪組織そのものは油脂を含有するが、本発明の組成物に使用する油脂はかかる脂肪組織から抽出等により分離された油脂であることが好ましい。
【0022】
植物性蛋白ペースト中に分散させたときの固体状の油脂の粒度は細かい程好ましく、1mm以下とすることが好ましい。
【0023】
固体状の油脂は、植物性蛋白ペーストに使用される水と固体状の油脂との重量比率が2:1〜2:6、好ましくは2:1.5〜2:5の割合となるよう配合するのが適当である。水に対する固体状の油脂の重量比が1/2未満ではジューシー感等の好ましい食感が不足し、3を超えると焼成等の加熱での歩留が低下する。
【0024】
固体状の油脂の代わりに液体油(挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物の品温において液体状である油脂)を用いた場合は、エマルジョンカードとして油脂を植物性蛋白ペーストと乳化させないと、液体油を挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物中に十分に保持させることができない。この場合、油脂の添加量は水と同量程度に制限され、固体状の油脂のように高配合することは不可能である。また乳化させることで、固体状の油脂を高配合する場合に比べ、ジューシー感は不足せざるを得ない。
【0025】
(挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物)
本発明の挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物は、上記の水、固体状の油脂、植物性蛋白素材を構成物とするもので、性状としては液状ではなくペースト状ないしは可塑性を有するカード状である。
【0026】
挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物の調製は、予めサイレントカッターやミキサー等の混合機で植物性たん白素材と水を混合し充分に水和させ、ペースト状にした上で、固体状の油脂を該混合機でさらに攪拌混合させて調製する。これによって、固体状の油脂を植物性蛋白ペーストと均一に分散させる。
この際、混合機は高剪断力を有するものが好ましい。具体的には回転数が1,000min-1(1,000rpm)以上である回転刃装置で撹拌混合することにより固体状の油脂を植物性蛋白ペーストに分散させる方法が好ましく、特に回転刃装置としてはサイレントカッター等の高速カッター類の使用が好ましい。剪断力が弱い場合、たとえ分散させる油脂の粒度を細かくしても、挽肉もしくは挽肉様加工品に加工したときに歩留まりが減少し、ジューシー感も減る傾向となってしまう。挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物は公知のエマルジョンカード同様、挽肉もしくは挽肉様加工品において、つなぎ、肉類等の置換えに使用することができる。また高配合の脂肪分を含有出来、かつ焼成等の加熱でも高歩留りを確保し、ジューシー感等の好ましい食感を付与できる利点も有する。
【0027】
(挽肉もしくは挽肉様加工品)
本発明の挽肉もしくは挽肉様加工品は、上記した挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物を使用することを特徴とする。使用量は、挽肉もしくは挽肉様加工品の全原料中、通常10〜25重量%であり、15〜20重量%が好ましい。
【0028】
本発明において「挽肉加工品」とは、食肉の挽き肉を主原料とした加工食品を指し、代表的にはハンバーグ、ミートボール、つくね、つみれ等が挙げられる。なお、挽肉等の原料が可食性のケーシングに充填されたソーセージなどは加熱時のドリップによる歩留まりの低下の問題が生じにくいので、本発明ではケーシングされていない挽肉加工品においてより効果が奏しやすい。ちなみに食肉は、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、馬肉、鹿肉、猪肉、鯨肉、海豚肉、魚肉等が挙げられる。例えばハンバーグは食肉を挽き肉にしたもの、あるいは、該挽き肉に魚肉を細切りし若しくはすり潰したもの又は肉様の組織を有する植物性たん白を添加したものを、必要により玉ねぎその他の野菜をみじん切りしたもの、つなぎ、調味料、香辛料、結着補強材、保存料等を加えて、練り合わせた後、楕円形状等に成型し、焙焼又は蒸し焼きし、必要によりソース等を加えたものである。
【0029】
また、この挽肉加工品の他に、これに類する挽肉様加工品として、例えば食肉の一部又は全部を豆腐、植物性粒状たん白、野菜等の代替原料と置換して製造されたミートレスハンバーグや豆腐ハンバーグ等が存在する。本発明において「挽肉もしくは挽肉様加工品」とは、挽肉加工品とかかる挽肉様の加工品を包含する意味である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明の実施態様をより具体的に説明する。なお、実施例中の「%」、「部」は特記しない限り「重量%」、「重量部」を示す。
【0031】
(挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物の調製)
下記表1の配合により、挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物を調製した。
植物性蛋白素材としてSPI「ニューフジプロSE」(不二製油(株)製)を使用し、固体状の油脂として、豚脂(融点33℃)又はパーム分別油「ユニショートMJ」(融点26℃、不二製油(株)製)を使用し、比較として液体状の油脂である菜種白絞油(融点0℃以下)を使用した。
挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物の調製は、サイレントカッターを用い、SPIと水を混合し充分に水和させ、大豆蛋白ペーストを調製した後に、続いて該ペーストに固体状の油脂(直径3mmにチョッピング済み)を攪拌混合させて調製した(試験1〜7)。
比較試験として、固体状の油脂の代わりにエマルジョンカード法で液体状の油脂を多めに使用した場合(比較試験1)、固体状の油脂を大豆蛋白ペースト中に分散させるのではなく、ハンバーグ調製時に別添した場合(比較試験2)、及びエマルジョンカード法で液体状の油脂を適正な量で使用した場合(比較試験3)を挙げた。
【0032】
(表1)

【0033】
(ハンバーグの調製例)
次に、表1で調製された各試験の組成物の全量を用い、表2の配合にてハンバーグを調製した。調製はミキサー混合にて肉類、豚脂(比較試験2のみ)、戻し水で水戻しした組織状大豆蛋白「ニューフジニック51」(不二製油(株)製)を混合し、次に予め調製した挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物を加えて混合し、さらに調味料類、玉ねぎ、パン粉の順に混合後、成型し、網上で加熱(蒸し焼き210℃、7分)を行い、ハンバーグを得た。
【0034】
(表2)

【0035】
以上により得られたハンバーグの評価は、官能評価として熟練パネラー5名により、ジューシー感について5点評価法で行い、その平均値を採用した(5点:ジューシー感強い、4点:やや強い、3点:普通、2点:やや弱い、1点:弱い)。
また各ハンバーグの加熱時(焼き蒸し210℃7分)の歩留りも測定した。これは、加熱前の成型ハンバーグ生地の重量を100とした時の、加熱後のハンバーグの重量で示した。なお、加熱後のハンバーグは表面に付着した油を取り除かずにそのまま重量を測定した。
【0036】
(表3)

【0037】
試験1〜4ではジューシー感、加熱歩留り共良好な結果が得られた。試験2,3は、特に良好な結果となったが、試験3は口当たりの良いジューシー感であった。試験4は、脂肪含量が多くジューシー感は得られたものの、加熱歩留りはやや低い結果となった。
【0038】
試験5では、豚脂を過剰に配合したことにより、油脂を囲む大豆たん白ペーストの割合が減ったためか、結果的にかなりの割合で豚脂が溶出してしまった。
【0039】
試験6では、加熱歩留りは高いものの、脂質分が少なく、ジューシー感も少ないものとなった。
【0040】
試験7では、大豆たん白の濃度が薄くなることで植物性蛋白素材の効果を充分に発揮できず、歩留り、ジューシー感とも低いものとなった。
【0041】
比較試験1では、エマルジョンカードとしては液体油の添加量が多すぎたため、乳化不良が起こりエマルジョンカードがきちんと調製できておらず、歩留り、ジューシー感とも低いものとなった。
【0042】
比較試験2は、挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物として豚脂を添加せず、肉類同様のタイミングで添加しているため、大豆蛋白ペーストによる油分の保持効果が発揮されず、歩留り、ジューシー感とも低いものとなった。
【0043】
比較試験3では、エマルジョンカード法によって適正量の液体油が十分に乳化し、歩留まりは高かったが、試験1〜5に比べるとジューシー感に乏しい評価となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性蛋白素材及び水をベースとするペースト中に、融点が5℃以上の固体状の油脂が分散しており、水と固体状の油脂との重量比率が2:1〜2:6であることを特徴とする、挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物。
【請求項2】
植物性蛋白素材と水との重量比率が1:3〜1:10である、請求項1記載の挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物。
【請求項3】
固体状の油脂が、豚脂、牛脂及び植物性の硬化油脂もしくは分別油脂からなる群より選択される1以上である、請求項1記載の挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか記載の挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物を使用した挽肉もしくは挽肉様加工品。
【請求項5】
挽肉加工品が、ハンバーグ、ミートボール、シュウマイ、鶏から揚げ、つくね、つみれである、請求項1記載の挽肉もしくは挽肉様加工品。
【請求項6】
植物性蛋白素材に対し水を混合してペーストを調製した後に、該ペーストに対し、融点が5℃以上である固体状の油脂を、水との重量比率が2:1〜2:6となるよう混合し、分散させることを特徴とする挽肉もしくは挽肉様加工品用組成物の製造法。

【公開番号】特開2011−139684(P2011−139684A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3024(P2010−3024)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】