説明

挽肉加工製品の製造方法

【課題】
本発明は、食感、味質、及び肉粒感を満足させた挽肉加工製品を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
挽肉加工製品原料に、2質量%の水溶液の20℃における粘度が150〜400mPa・sの範囲であるヒドロキシプロピルセルロースを添加して混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉粒感に富む挽肉加工製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肉粒感を供えた畜肉加工食品の製造方法として、畜肉をミンチ処理する複数のミンチ処理工程、ミンチ状畜肉と他の食材を混合する混合工程とを備え、最後のミンチ処理工程を除くいずれかにのミンチ処理工程中に畜肉の改質剤を添加することを特徴とする畜肉加工食品の製造方法が知られており、改質剤として、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等が例示されている。(特許文献1を参照)
また、ミンチ状の畜肉または魚肉加工食品原料に、ジェランガム粉砕物及び水を直接添加して混練することを含む、畜肉または魚肉加工食品の製造方法が知られており、該方法を適用することにより、食感を劣化されず、ドリップや水分の流出を防ぎ、歩留まりを向上させ、さらにカロリー低減された畜肉加工食品または魚肉加工食品を提供することができるようになり、さらに本方法により得られる畜肉加工食品や魚肉加工食品は、肉粒感や風味やジューシー感が向上し、冷蔵または冷凍保存しても品質の劣化が少なくなる特徴を有する。(特許文献2を参照)
また、肉粒感、繊維感の付与されたリン酸塩不使用の畜肉練り製品の製造方法として、水酸化カルシウム及び/または酸化カルシウムと、トランスグルタミナーゼ及びクエン酸三ナトリウムを添加する方法が、知られている。(特許文献3を参照)
また、肉粒感や風味やジューシー感を効果的に改善する方法として、グルコマンナンを含む水溶液中に、内相にアルカリ水溶液を含むW/O型エマルジョンが均一に分散しており、pH4〜8である食品素材を、ハンバーグ用の生地に添加する方法が知られている。(特許文献4を参照)
また、焼成後の歩留向上や、凍結解凍時のドリップ防止効果があり、かつ肉粒感を失わずソフトでジューシーな食感が得られる挽肉加工食品の製造方法として、挽肉加工製品原料に、平均粒子系が5〜40μmに微細加工したおからを用いる方法が知られている。(特許文献5を参照)
一方、魚介系肉類、畜肉系肉類等の各種に肉類の加熱加工にあたり、タンパク質の変性、水分の放出に伴う歩留まりの低下を改善し、加熱加工による身質の縮みで生じる肉質の硬化を抑え、程よい柔らかさを維持し、食べた時の食感に優れ、食肉の味質に優れるなど、各種の好適な効果を奏し、かつリン酸塩を含有しない品質改良剤として、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.01〜35重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.01〜10重量部からなる品質改良剤が知られている。(特許文献6を参照)
また、ソーセージ、ハム、ハンバーグ、ミートボール、つくね、ロールキャベツの具材などの食肉及び野菜やその他の原料を合わせて調整した具材等の畜肉加工食品にヒドロキシプロピルセルロースを併用することにより、得られた食品の食感を向上させることができることが知られている。(特許文献7を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−274999号公報
【特許文献2】特開2007−222041号公報
【特許文献3】特開2007−53960号公報
【特許文献4】特開2005−113号公報
【特許文献5】特開2002−204675号公報
【特許文献6】特開2007−312751号公報
【特許文献7】特開2007−28938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、ヒドロキシプロピルセルロースを食品添加物として用いた場合には、その効果としては主に食感(特にやわらかさ、及びジューシーさ)、及び味質の点に重点がおかれていた。具体的には、引用文献7の実施例において、ヒドロキシプロピルセルロース(KLUCEL EF)を全体の0.1〜1.0質量%の範囲で用いたハンバーグが記載されており、生地が鉄板につき難く剥がれ易いため焼きやすく、また、得られたハンバーグも弾力がある食感であることが記載されているが、肉粒感が改善されているどうかについては、記載も示唆もされていない。
本発明は、食感、味質、及び肉粒感を満足させた挽肉加工製品を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ある特定の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースを添加する、または、粘度の異なる2種以上のヒドロキシプロピルセルロースを添加することで、本発明の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、
挽肉加工製品原料に、2質量%の水溶液の20℃における粘度が150〜400mPa・sの範囲であるヒドロキシプロピルセルロースを添加して混合する挽肉加工製品の製造方法に関し、
ヒドロキシプロピルセルロースの割合が、挽肉加工製品原料全体の0.1〜2重量%の範囲であるのが好ましく、
さらに、ヒドロキシプロピルセルロースの割合が、挽肉加工製品原料全体の0.5〜1重量%の範囲であるのが好ましい。
また、さらに、2質量%の水溶液の粘度が、6〜10mPa・sの範囲であるヒドロキシプロピルセルロースを添加して混合するのが好ましく、
挽肉加工食品が、ハンバーグであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法を用いることにより、食感、味質、及び肉粒感のすべてを満足させる挽肉加工製品を得ることができる。特に、一旦挽肉加工製品原料を加熱調理して挽肉加工製品を得て、該製品を冷蔵、または冷凍保存した後に、さらに電子レンジ等の加熱器具を用いて再加熱された挽肉加工製品と、特定のヒドロキシプロピルセルロースを添加しなかった挽肉加工製品原料を、同様の方法で、調理、保存したものを同様に再加熱して得られた挽肉加工製品とを比較した場合に、その効果が顕著に現れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の方法に用いられるヒドロキシプロピルセルロースは、セルロースの水酸基の全部または一部が、−(CHCH(CH3)O)n−Hで置換されていれば、その製造方法は特に限定されず、例えば、原料のセルロースに、水酸化ナトリウムを作用させてアルカリセルロースとし、次いでアルカリセルロースとプロピレンオキサイドとを置換反応させ、置換反応の後、反応液に、酢酸や塩酸などの酸を加えて水酸化ナトリウムを中和し、次いで精製する方法を例示することができる。
【0009】
ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒドロキシプロピル基−(CHCH(CH3)O)n−Hの含有量が40〜80重量%の範囲にあることが好ましく、53〜78重量%の範囲にあることがより好ましい。なお、ヒドロキプロピル基の含有量は、USP24(米国薬局方)による方法などによって求めることができる。
【0010】
本発明に用いるられるヒドロキシプロピルセルロースの粘度は、2質量%水溶液の20℃における粘度が、150〜400mPa・sの範囲である。粘度はヒドロキシプロピルセルロースの重合度を表す指標である。
本発明に用いられるヒドロキシプロピルセルロースの量は、挽肉加工製品原料全体の0.1〜2質量%の範囲が好ましく、さらに、0.5〜1.0質量%の範囲が好ましい。添加量が、0.1質量%以下では、その効果を十分に発揮することができず、2質量%以上添加した場合に、その効果に大きな違いはなく、むしろ味質が低下する結果になる。
【0011】
また、本発明において、2質量%の水溶液の20℃における粘度が、6〜10mPa・sの範囲のヒドロキシプロピルセルロースを150〜400mPa・sのものと併用するのが好ましい。より低粘度のヒドロキシプロピルセルロースは、挽肉加工製品の食感、及び肉粒感を保持できる点で優れており、両者を併用することにより、より、品質の高い挽肉加工製品を提供することができる。
両者の混合比率は特に制限されないが、150〜400mPa・sのものと、6〜10mPa・sのものを、質量比で、99:1〜50:50の範囲で混合するのが好ましく、さらに、90:10〜60:40の範囲で混合するのが好ましい。
【0012】
本発明における挽肉加工製品とは、食用として一般に使用できる食肉、たとえば、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、馬肉、兎肉、魚介肉等を主原料としたものであり、具体的には、ハンバーグ類、ミートボール類、メンチカツ類、ラビオリ類、肉まん類、ワンタン類、ハム類、ソーセージ類、サラミ類、餃子類、シュウマイ類、コンビーフ類、ジャーキー類等の畜肉製品や、ちくわ、かまぼこ、すり身惣菜類、ソーセージ等の魚肉製品等を例示することができる。中でも、その食感として、肉粒感が製品の特徴となるハンバーグ類、ソーセージ類、シュウマイ類等の挽肉加工製品において、本発明の方法を好適に用いることができる。
【0013】
本発明の挽肉加工製品の製造方法は特に限定されず、具体的には、公知である常法で製造することができる。上記に述べた主原料の食肉に用いる副原料として、キャベツやたまねぎ等の野菜類や塩、砂糖、味醂、酒等の調味料、胡椒、芥子等の香辛料、更に必要に応じては粉末状大豆蛋白、粒状大豆蛋白、増粘多糖類、澱粉、小麦粉、ショ糖脂肪酸エステル、食用油等を使用することができる。
【0014】
これらの副原料と主原料の食肉を混合または混練する際、手攪拌による弱い攪拌能力のものからミキサー、フードカッター等強い攪拌能力のものまで何れも用いることが出来る。本発明の挽肉加工製品は、最終は加熱調理を経て製造されるが、加熱様式として焼成、スチーム加熱、ボイル、フライ等いずれも用いることが出来る。また加熱の前又は後に冷蔵状態、冷凍状態で流通、販売することができる。さらに、本発明の挽肉加工製品は冷凍品として流通販売し、消費者が電子レンジなどで解凍して利用することもできる。
本発明において添加されるヒドロキシプロピルセルロースは、上記原材料と十分に混合されるのであれば、その添加時期は、制限されず、主原料である食肉に添加し、混合または混練した後、副原料と混合または混練する、または、主原料と副原料を混合または混練した後に添加して混合または混練する、または、主原料、副原料、及びヒドロキシプロピルセルロースを一度に混合または混練する等いずれかの時期に添加して混合または混練することができる。
ヒドロキシプロピルセルロースは、固体(粉末)のまま、または水溶液にして、添加することができる。
【0015】
ヒドロキシプロピルセルロース以外にも、必要に応じて増粘剤、油脂、糖質、調味料、乳化剤、香料、色素などを添加することができる。
【0016】
増粘剤としては、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギナン、トラガントガム、タマリンドシードガム、タラガム、カラヤガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、アラビアガム、マクロホモプシスガム、寒天、ゼラチン、HMペクチン、L M ペクチン、カードラン、グルコマンナン、アルギン酸、アルギン酸塩、微結晶セルロース、大豆多糖類、ラムザンガム、ウエランガム、サイリウムシードガム、プルラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース誘導体、等を挙げることができる。
【0017】
油脂としては、バター、生クリーム等の乳脂肪分、植物油脂あるいはこれらの分別油脂、硬化油脂、エステル交換油脂等の中から一種又は二種以上を併用することができる。植物油脂の例としては、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、パーム油、パーム核油及びヤシ油を挙げることができる。
【0018】
糖質としては、砂糖の他には、例えば、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水飴、粉末水飴、還元麦芽水飴、蜂蜜、トレハロース、トレハルロース、ネオトレハロース、パラチノース、D − キシロース等の糖類; キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類を挙げることができる。また、サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料等も添加してもよい。
【0019】
調味料としては、塩、砂糖、グリシン、グルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸系調味料や、クエン酸、酢酸などの有機酸類を挙げることができる。
【0020】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル(蒸留モノグリセライド、反応モノグリセライド、ジ・トリグリセライド、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等)及び、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ユッカ抽出物、サポニン、ステアロイル乳酸塩( ナトリウムもしくはカルシウム) 、ポリソルベート及び大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素処理レシチン等を挙げることができる。また、ビタミン、カルシウム、鉄、DHAの栄養剤等を併用することも可能である。
【実施例】
【0021】
次に、実施例を示して、本発明をより詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0022】
実施例1〜3、比較例1〜3
表1に示す原材料を、一度に混練し、1個当たり、150gの大きさでよく空気を抜いて成形し、オーブンにて230℃、スチーム40%の条件で焼成し、その後冷凍保管した。冷凍後、電子レンジで解凍し、更に加熱した後、試食評価を行った。評価項目は、柔らかさ、うまみ、肉粒感、総合評価であり、各評価項目は、順位付けを行う相対評価で行った。その結果を表2に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
低粘度品であるセルニーLを単独で使用した場合(比較例1)、肉粒感、及び柔らかさにおいて、優れているものの、うまみの点で評価が低く、総合評価としては、実施例よりも劣る結果となった。
本発明の範囲に入るセルニーMを用いた場合、添加量によっては肉粒感に多少問題となるが、総合評価では、上位をしめることができた。セルニーLとセルニーMを併用した場合、相互の欠点を相補的にカバーして、全体として高い評価を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挽肉加工製品原料に、2質量%の水溶液の20℃における粘度が150〜400mPa・sの範囲であるヒドロキシプロピルセルロースを添加して混合する挽肉加工製品の製造方法。
【請求項2】
ヒドロキシプロピルセルロースの割合が、挽肉加工製品原料全体の0.1〜2重量%の範囲である請求項1に記載の挽肉加工製品の製造方法。
【請求項3】
ヒドロキシプロピルセルロースの割合が、挽肉加工製品原料全体の0.5〜1重量%の範囲である請求項1に記載の挽肉加工製品の製造方法。
【請求項4】
さらに、2質量%の水溶液の20℃における粘度が、6〜10mPa・sの範囲であるヒドロキシプロピルセルロースを添加して混合する請求項1に記載の挽肉加工製品の製造方法。
【請求項5】
挽肉加工製品が、ハンバーグである請求項1〜4のいずれかに記載の挽肉加工製品の製造方法。