説明

挽肉及び/又はすり身被覆食品及びその製造方法

【課題】塊状の具材を挽肉生地で包んでも、具材の本来もつ食感や味や匂いを損なわない挽肉及び/又はすり身被覆食品を提供する。
【解決手段】野菜や果物等の芯食材を、チーズやマヨネーズのような半固形状食材で被覆した上で、挽肉を主原料とする生地で包むことで、挽肉からの味や臭いが芯食材となる具材に移ったり、野菜の水分が挽肉に移行せず、芯食材となる具材の味、匂い及び食感ともに良好な挽肉及び/又はすり身被覆食品ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挽肉及び/又はすり身被覆食品及びその製造方法、より詳しくは、芯食材を半固形状食材で被覆した上で、挽肉及び/又はすり身を主原料とする生地で包み込み、さらに加熱処理する、または、加熱処理しないことを特徴とする挽肉及び/又はすり身被覆食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
挽肉を主原料とする挽肉加工食品には、ハンバーグ、ミートボール、ソーセージがあり、一方、すり身を主原料とするすり身加工食品としては、魚肉ハンバーグ、魚肉ソーセージ、かまぼこ、さつまあげ等がある。いずれも、挽肉又はすり身状にしたものに、食塩、調味料、添加物等を添加し、所定の形状に成型後、加熱処理を行うことでできる食品である。
【0003】
近年、挽肉加工食品のバラエティ感を出すために、本来かけて食べるソースを内部に充填した、ソース入りのハンバーグであったり(特許文献1参照)、ハンバーグ上部に目玉焼きをのせた目玉焼きハンバーグであったり(特許文献2参照)、挽肉加工食品とチーズを組み合わせた個包装製品が提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
また、ハンバーグの生地を二層構造にすることにより、肉粒感がありジューシーな手作り感のあるハンバーグ(特許文献4及び5参照)や内部に多くの肉汁や野菜のジュースや香辛料・調味料が混ざり合ったスープを蓄え、喫食時にスープが溢れ出すハンバーグ(特許文献6参照)や三層以上の多層構造のハンバーグ(特許文献7及び8参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】第3583826号
【特許文献2】特開平9−98742号
【特許文献3】第3033624号
【特許文献4】第3548515号
【特許文献5】特開平6−38710号
【特許文献6】第3109000号
【特許文献7】特開2007−252281号
【特許文献8】特開2008−29330号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な製造方法として、野菜等の挽肉以外の具材を挽肉加工品やすり身加工品に添加する場合は、通常、みじん切りにしたものを添加、混練するのが一般的であるが、比較的大きな塊状の具材をそのまま挽肉に包み込むような挽肉及び/又はすり身被覆食品については知られていない。
【0007】
そこで、本発明者らは、比較的大きな塊状の具材を直接挽肉に包む挽肉及び/又はすり身被覆食品を発明したが、包あん後の経時変化により、挽肉及び/又はすり身からの味や臭いが具材に移ったり、具材の味や水分が挽肉に移行することで、具材の本来持っている味や匂い、食感が損なわれるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、野菜や果物といった具材となる芯食材を、チーズやマヨネーズのような半固形状食材で被覆した上で、挽肉を主原料とする生地で包むことで、挽肉からの味や臭いが芯食材に移ったり、芯食材の水分が挽肉に移行せず、芯食材の味や匂い、食感ともに良好な挽肉及び/又はすり身被覆食品ができることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は、(1)芯食材が半固形状食材で被覆され、かかる芯食材を被覆した半固形状食材が、挽肉及び/又はすり身を主原料とする生地により
包まれた後、加熱処理される、又は、加熱処理されないことを特徴とする挽肉及び/又はすり身被覆食品、(2)前記芯食材が、野菜、野菜加工品、果物、果物加工品、大豆加工品、卵、卵加工品、穀類加工品であることを特徴とする(1)記載の挽肉及び/又はすり身被覆食品に関する。
【0010】
また、本発明は、(3)芯食材を半固形状食材で被覆し、かかる芯食材を被覆した半固形状食材を、挽肉及び/又はすり身を主原料とする生地に
より包み込んだ後、加熱処理される、又は、加熱処理されないことを特徴とする挽肉及び/又はすり身被覆食品の製造方法、(4)前記芯食材が、野菜、野菜加工品、果物、果物加工品、大豆加工品、卵、卵加工品、穀類加工品であることを特徴とする(3)記載の挽肉及び/又はすり身被覆食品の製造方法、にも関する。
【発明の効果】
【0011】
野菜や果物といった芯食材を、チーズやマヨネーズといった半固形状食材で被覆し、さらにその周りを、挽肉及び/又はすり身を主原料とする生
地により包み込み、加熱処理を施すことで、包あん後の経時変化により挽肉及び/又はすり身からの味や臭いが芯食材に移ったり、芯食材の水分が
挽肉に移行せず、野菜の味や匂い、食感ともに良好な挽肉及び/又はすり身被覆食品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】包あん機のノズル部分の概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、芯食材が半固形状食材で被覆され、かかる芯食材を被覆した半固形状食材が、挽肉及び/又はすり身を主原料とする生地により包まれ
た後、加熱処理される、又は、加熱処理されないことを特徴とする挽肉及び/又はすり身被覆食品、及び、前記芯食材が、野菜、野菜加工品、果物、果物加工品、大豆加工品、卵、卵加工品、穀類加工品であることを特徴とする挽肉及び/又はすり身被覆食品である。
【0014】
前記芯食材としては、通常の大きさのハンバーグやミートボールで包める程度であれば、特に限定されないが、野菜、野菜加工品、果物、果物加
工品、大豆加工品、卵加工品、穀類加工品が特に望ましい。
【0015】
野菜の具体例としては、プチトマト、芽キャベツ、ベビーコーン、ラディッシュ、プチオニオン、ベビーキャロット、ゆりね、里芋、ふくろ茸、そら豆、にんにく、ブロッコリー、きのこ等が挙げられる。また、野菜が大きい場合は、適宜カットし、ハンバーグやミートボールで包むことで芯食材として利用することができる。また、野菜加工品としては、野菜の漬物、煮物、揚げ物、缶詰、冷凍野菜等が挙げられる。
【0016】
果物の具体例としては、ブドウ、すもも、イチゴ、ベリー、ライチ、栗、ナッツ、チェリー等の果物が挙げられる。果物のサイズが大きい場合には、前記同様、通常の大きさのハンバーグやミートボールのサイズに合うようにカットすればよく、種類は特に限定されない。果物加工品としては、ドライフルーツ、缶詰等があげられる。
【0017】
大豆加工品としては、豆腐、凍り豆腐、厚揚げ等が挙げられる。また、卵加工品としては、ゆで卵、卵焼き等が挙げられる。さらに、穀物加工品としては、餅、団子、おにぎり、パン等が挙げられる。いずれも、大豆、卵、穀物を原料とし、芯食材として利用できれば種類は特に限定されない。
【0018】
前記半固形状食材としては、マヨネーズ、ソース、ケチャップ、マッシュポテト(ポテトサラダ)、ジャム等を利用することができるが、包あん後の経時変化による芯食材からの水分や挽肉あるいはすり身からの臭いの移行を防ぎ、かつ、芯食材を被覆できるものであれば、特に限定されない。特に、ナチュラルチーズを所定の乳化工程を経て乳化した乳化チーズが好ましい。この乳化チーズの乳化工程としては、原料とされるナチュラルチーズに、少量の乳化剤(重合リン酸塩)等を添加し、これらを加熱溶融させて乳化チーズとしたものである。
【0019】
この乳化チーズは、その後の包あん工程で芯食材を被覆するが、最終的な乳化温度は、70〜100℃の温度帯で形成している。
【0020】
挽肉及び/又はすり身を主原料とする生地は、挽肉又はすり身のみを主原料とする生地であってもよいし、挽肉とすり身を所定の割合で混合した生地でもよい。前記挽肉の原料としては、豚肉、牛肉、鶏肉等が挙げられるが、食用であれば特に限定されない。また、使用する原料肉の部位も限定されない。挽肉を主原料とする生地は、豚肉、牛肉等の原料肉をミンチ状にした後、食塩、香辛料、調味料等と混合することにより製造することができる。尚、原料肉のミンチ目は2〜30mmが好ましい。また、当該生地の強度を保つために、植物性タンパク質、澱粉、乳タンパク質を適宜用いることができる。一方、前記すり身の原料としては、魚肉、エビ、イカ等が挙げられる。すり身を主原料とする生地は、魚肉等の切り身に、食塩等の添加物を混ぜて練りあわせることでできる。
【0021】
本発明の加熱処理は、オーブンで焼く方法、油で揚げる方法、蒸煮する方法、湯煮方法等があるが、特に方法は限定されない。加熱時の温度は、中心温度63〜95℃が好ましい。
【0022】
本発明は、芯食材を半固形状食材で被覆し、かかる芯食材を被覆した半固形状食材を、挽肉を主原料とする生地により包み込んだ後、加熱処理を
施すことを特徴とする挽肉及び/又はすり身被覆食品の製造方法、及び、前記芯食材が、野菜、野菜加工品、果物、果物加工品、大豆加工品、卵、卵加工品、穀類加工品であることを特徴とする挽肉及び/又はすり身被覆食品の製造方法に関する。
【0023】
前記芯食材及び半固形状食材として用いられる食材、挽肉を主原料とする生地の製造条件、及び加熱処理の条件は上述の通りである。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)プチトマト(チーズ被覆)入りミートボールの製造
5mmにミンチした豚肉、豚脂肪1000gに対して、植物性タンパク質20g、でん粉40g、香辛料2g、砂糖15g、食塩15g、調味料15g、リン酸塩5g、水300g、を添加混合してミートボール用の挽肉生地を調製した。
【0026】
プチトマトを被覆するチーズとして、ナチュラルチーズ1000gに対して リン酸塩30g、水100g添加し、これらを加熱溶融させて乳化チーズとした。
【0027】
前記方法により調製した挽肉生地及び乳化チーズ、プチトマトを包あん機(レオン自動機株式会社製)にかけた。包あん機のノズル部分を図1に示す。芯食材となるプチトマト1はシリンダ2の作用により、内側搬送ノズル3を通って、吐出部4まで吐出される。一方、プチトマトを被覆する乳化チーズ、及び挽肉生地は、それぞれ、中間層搬送ノズル5、及び外側搬送ノズル6を通って、吐出部4で芯食材となるプチトマトと合流する。合流した3種の食材は、内側にプチトマト1、その周りを乳化チーズ7が覆い、最外層は挽肉生地で被覆された状態で、棒状を形成するように挽肉生地8が吐出され、シャッター9で切り取られることで、プチトマト(チーズ被覆)入りミートボール10の生地が成型される。
【0028】
前記方法により成型された生地を、150℃、3分のフライ加熱処理、130℃、10分のオーブン加熱処理を経て、プチトマト(チーズ被覆)
入りミートボールを製造した。
【0029】
(実施例2)プチトマト(マッシュポテト被覆)入りミートボールの製造
使用するミートボール用の挽肉生地は、実施例1と同様の方法で製造を行った。
【0030】
プチトマトを被覆するマッシュポテトとして、茹でて3mmミンチしたじゃがいも1000gに対して 加工でん粉100g、バター50g、牛乳100g、食塩7g添加し、これらを攪拌してなめらかにさせてマッシュポテトとした。
【0031】
前記方法により調製した挽肉生地、プチトマト、マッシュポテトを包あん機(レオン自動機株式会社製)にかけ、実施例1と同様の方法により、プチトマト(マッシュポテト被覆)入りミートボールの生地を成型し、さらに、加熱処理を行った。
【0032】
(比較例1)プチトマト入りミートボールの製造(チーズなし)
実施例1と同じ条件で、挽肉生地を調製し、プチトマトと共に包あん機(レオン自動機株式会社製)にかけ、プチトマト入りミートボールの生地を成型した。その後、実施例1と同じ条件で加熱処理を行った。乳化チーズ等の半固形状食材は包あん機に投入しておらず、プチトマトが直接挽肉生地で被覆されている状態である。
【0033】
(官能検査)
実施例1、実施例2、及び比較例1で製造されたプチトマト入りミートボールを1日間、5日間、10日間、15日間、20日間を冷蔵保管し、8名のパネルに試食してもらったところ、表1のような結果となった。○は、挽肉の味や臭いがプチトマトに全く移っていない、若しくは違和感がない、△は、プチトマトに若干挽肉の味や臭いが移っている、×は挽肉の味や臭いが移っている、という3段階の評価により行った。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、塊状の野菜を挽肉生地で包んでも、野菜の本来もつ食感や匂いを損なわない挽肉及び/又はすり身被覆食品を提供することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 プチトマト(芯食材)、2 シリンダ、3 内側搬送ノズル、4 吐出部、5 中間層搬送ノズル、6 外側搬送ノズル、7 乳化チーズ、8 挽肉生地、9 シャッター、10 プチトマト入りミートボール











【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯食材が半固形状食材で被覆され、かかる芯食材を被覆した半固形状食材が、挽肉及び/又はすり身を主原料とする生地により包まれた後、加熱
処理される、又は、加熱処理されないことを特徴とする挽肉及び/又はすり身被覆食品。

【請求項2】
前記芯食材が、野菜、野菜加工品、果物、果物加工品、大豆加工品、卵、卵加工品、穀類加工品であることを特徴とする請求項1記載の挽肉及び
/又はすり身被覆食品。

【請求項3】
芯食材を半固形状食材で被覆し、かかる芯食材を被覆した半固形状食材を、挽肉又はすり身を主原料とする生地により包み込んだ後、加熱処理さ
れる、又は、加熱処理されないことを特徴とする挽肉及び/又はすり身被覆食品の製造方法。

【請求項4】
前記芯食材が、野菜、野菜加工品、果物、果物加工品、大豆加工品、卵、卵加工品、穀類加工品であることを特徴とする請求項3記載の挽肉及び
/又はすり身被覆食品の製造方法。


















【図1】
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【公開番号】特開2012−50380(P2012−50380A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195373(P2010−195373)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000118497)伊藤ハム株式会社 (57)
【Fターム(参考)】