説明

挿入口装着器

【課題】 本発明は、誤検出の発生しない、体内、外を確実に検出できる挿入口装着器を提供することである。
【解決手段】 内視鏡装置の挿入部2が挿入される人の口H1に装着される挿入口装着器11であって、前記挿入口装着器11は、人の口H1に挿入された状態で、人の口H1の周縁部位に固定される筒状の装着器本体12を有し、前記装着器本体12は、前記装着器本体12が人の口H1に装着されているか否かを検出する装着状態検出手段16と、前記挿入部2が人の口H1に挿入されているか否かを検出する挿入状態検出手段15と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば人体の消化器を観察するための上部消化器内視鏡や、下部消化器内視鏡や腹腔鏡など、人体に用いるための様々な内視鏡はもちろん、動物用の内視鏡や、工業用の内視鏡など様々な内視鏡と組み合わせて用いることが可能な挿入口装着器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内視鏡の挿入部先端を観察対象物である人体の内部に挿入する際に内視鏡挿入部の挿入動作をガイドするマウスピース等の挿入口装着器が示されている。ここでは、挿入口装着器と受発光素子を組み合わせ、内視鏡の挿入部先端が観察対象物である人体の内部にあるのか外部にあるのかを検出する方法の一例が記載されている。
【0003】
マウスピースには内視鏡挿入部が挿入される貫通孔が形成されている。このマウスピースの貫通孔の内周面上には、受発光素子対が組み込まれている。内視鏡挿入部の外周面には反射手段が設けられている。そして、マウスピースの貫通孔内に内視鏡挿入部先端が挿入されている状態では、発光素子から射出された光が内視鏡挿入部の反射手段により反射され、その反射光が受光素子により検出される。一方、内視鏡挿入部がマウスピースに挿入されていない状態では、受光素子が検出する光量は、挿入部が挿入されている状態と比べ、小さくなる。
【0004】
これにより、挿入口装着器の受発光素子によって内視鏡挿入部が生体内にあるのか外にあるのかを検出し、内視鏡挿入部が生体内にある場合のみレーザ光を発光させるなど、生体への安全性を考慮した光源制御を可能とする構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−28125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、内視鏡挿入部がマウスピースを通過しているか否かを検出することができる。しかしながら、内視鏡挿入部が体内に挿入されている状態と、体外に配置されている状態とを直接的に検出している訳ではないので、内視鏡の挿入操作を行う際に次のような不具合がある。
【0007】
内視鏡の挿入操作を行う際の手法の一例として例えば、内視鏡挿入部をあらかじめマウスピースに通しておき、その後、内視鏡挿入部の先端を体内に挿入した後、生体の内視鏡挿入口にマウスピースを装着する手法が知られている。このような場合、特許文献1の方法では、実際には内視鏡挿入部が体外にあるにもかかわらず、マウスピースに内視鏡挿入部を通した時点で内視鏡挿入部が体内にあると誤判断してしまう可能性がある。
【0008】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、誤検出の発生しない、体内、外を確実に検出できる挿入口装着器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面の態様は、被検体の物体内面を観察する内視鏡装置と組み合わせて使用され、前記内視鏡装置の挿入部が挿入される前記物体の開口部である挿入口に装着される挿入口装着器であって、前記挿入口装着器は、前記物体の挿入口に挿入された状態で、前記挿入口の開口部周縁部位に固定される筒状の装着器本体を有し、前記装着器本体は、前記装着器本体が前記挿入口に装着されているか否かを検出する装着状態検出手段と、前記挿入部が前記挿入口に挿入されているか否かを検出する挿入状態検出手段と、を有していることを特徴とする挿入口装着器である。
【0010】
好ましくは、前記装着器本体を前記挿入口に装着した状態に於いて、前記装着状態検出手段は、前記装着器本体の前記物体と対向する面に形成され、前記挿入状態検出手段は、前記装着器本体に前記挿入部を挿入したときに前記挿入部と対向する面に形成されている。
【0011】
好ましくは、前記装着器本体は、前記挿入口に挿入される筒状壁部と、前記筒状壁部が前記物体の内部に落ち込むことを規制するストッパ部とを有している。
好ましくは、前記装着状態検出手段は、光検出器を有しており、前記光検出器に入射する光量が、前記装着器本体の装着状態に応じて変化することを利用して前記装着器本体の装着状態を検出する。
【0012】
好ましくは、前記装着器本体は、前記挿入部を挿入可能な開口を備えた筒状壁部を有し、前記光検出器は、前記筒状壁部の外面に配置されており、前記装着器本体が前記挿入口部に装着された状態で、外光が前記物体によって遮られ、前記光検出器に入射する光量が減少することを利用して前記装着器本体の装着状態を検出する。
【0013】
好ましくは、前記ストッパ部は、前記筒状壁部の一端に設けられ、前記挿入部の挿入方向に対し、交差する方向に、外側に向かって延設された板状の延設部材によって形成されている。
好ましくは、前記装着状態検出手段は、光検出器を有しており、前記光検出器は、前記装着器本体を前記挿入口に装着した状態において、前記延設部材の前記物体と対向する面に設けられている。
【0014】
好ましくは、前記装着状態検出手段は、温度センサを有している。
好ましくは、前記温度センサは、接触型の温度センサであり、前記温度センサの検出部は、前記装着器本体を前記挿入口部に装着した状態で、前記物体と接する位置に配置されている。
【0015】
好ましくは、前記装着状態検出手段は、複数の温度センサを備えた温度センサ群を有し、前記温度センサ群を構成するそれぞれの温度センサは、非接触型センサであり、前記温度センサは、全て、前記装着器本体を前記挿入口部に装着した状態で、前記物体と対向する位置に配置されている。
【0016】
好ましくは、前記装着状態検出手段は、圧力に応じて電気抵抗が変化する電気機能素子を有し、前記電気機能素子の圧力を検出する部分は、前記装着器本体が前記挿入口部に装着された状態で、前記物体と接する部分に配置されている。
好ましくは、前記電気機能素子は、圧力に応じて導通状態と絶縁状態とを切り替えるスイッチ素子である。
好ましくは、前記スイッチ素子は、防水皮膜により覆われている。
好ましくは、前記装着器本体は、前記挿入状態検出手段からの出力と、前記装着状態検出手段の出力とから、前記挿入部と前記物体の挿入口との位置関係を判断する挿入状態判断手段を有している。
【0017】
好ましくは、前記挿入状態判断手段は、前記挿入状態検出手段が、前記挿入部が挿入されていることを検出し、かつ、前記装着状態検出手段が前記挿入口に装着されていることを検出したときに、前記挿入部が前記挿入口に挿入されていると判断する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、誤検出の発生しない、体内、外を確実に検出できる挿入口装着器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態の内視鏡の挿入口装着器を人体の挿入口に装着した状態の概略構成を示す縦断面図。
【図2】第1の実施の形態の内視鏡の挿入口装着器の装着器本体を示す斜視図。
【図3】第1の実施の形態の内視鏡の挿入口装着器の装着器本体を示す縦断面図。
【図4】第1の実施の形態の内視鏡のシステム全体の概略構成図。
【図5】第1の実施の形態の内視鏡の挿入口装着器の検出器の接続状態を示すブロック図。
【図6】第1の実施の形態の内視鏡の挿入口装着器の装着器本体の変形例を示す縦断面図。
【図7】本発明の第2の実施の形態の内視鏡の挿入口装着器の装着器本体の概略構成を示す斜視図。
【図8】第2の実施の形態の内視鏡の挿入口装着器の装着器本体の変形例を示す斜視図。
【図9】本発明の第3の実施の形態の内視鏡の挿入口装着器の装着器本体を示す縦断面図。
【図10】本発明の第4の実施の形態の内視鏡の挿入口装着器の装着器本体を示す斜視図。
【図11】本発明の第5の実施の形態の内視鏡の挿入口装着器の装着器本体を示す縦断面図。
【図12】第5の実施の形態の内視鏡の挿入口装着器の装着器本体を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施の形態]
(構成)
図1乃至図5は、本発明の第1の実施の形態を示す。図4は、患者を処置、観察するための医療器具としての内視鏡1のシステム全体の概略構成図である。内視鏡1は、生体の体腔内に挿入される細長い挿入部2と、この挿入部2の基端部に連結され、内視鏡1の操作を行う操作部3とを備えるスコープ部4を有している。また、操作部3にはユニバーサルコード5の一端が接続されている。このユニバーサルコード5の他端は、コネクタ部6を介して光源装置7に接続されている。さらに、コネクタ部6には電気ケーブル8を介してカメラコントロールユニット(CCU)9に接続されている。このCCU9にはモニタ10が接続されている。
【0021】
そして、内視鏡1は、光源装置7から供給される照明光が挿入部2の先端部の図示しない照明窓から出射され、体腔内が照明される。さらに、挿入部2の先端部の図示しない観察窓から入射された観察像は、CCDなどの撮像素子で電気信号に変換され、CCU9に伝送されるとともに、CCU9で処理された画像がモニタ10に表示される。
【0022】
また、上部消化器内視鏡1では、例えば人の口H1を挿入口(物体の開口部)として挿入部2を体内に挿入する。このとき、図1に示すように挿入口である人の口H1には、内視鏡挿入部2の挿入動作をガイドするマウスピース等の筒状の挿入口装着器11を装着して内視鏡挿入部2の挿入動作を行う方法が知られている。
【0023】
なお、本実施の形態では、人体の消化器を観察するための上部消化器内視鏡用の挿入口装着器11を例に説明を進めるが、被検体の物体内面を観察する内視鏡装置と組み合わせて使用される挿入口装着器11は、これに限定されない。例えば、下部消火器内視鏡や腹腔鏡など、人体に用いるための様々な内視鏡はもちろん、動物用の内視鏡や、工業用の内視鏡など様々な内視鏡の挿入動作をガイドする挿入口装着器に用いることが可能である。
【0024】
本実施形態による挿入口装着器11を図1、2に示す。図1は挿入口装着器11を人の口H1に取り付けた図であり、図2は挿入口装着器11の斜視図である。本実施の形態の挿入口装着器11は、人の口H1に挿入された状態で、人の口H1の開口部周縁部位に固定される筒状の装着器本体12を有する。
【0025】
装着器本体12は、図2に示すように生体Hの開口である人の口H1に挿入される筒状壁部13と、挿入口装着器11が生体内部に落ち込んでしまうのを防ぐストッパ部14とにより構成されている。本実施形態では、筒状壁部13は、挿入部2を挿入可能な筒状壁部である。以降の説明、図では、簡便なため筒状壁部13を円筒で表現する。また、ストッパ部14は、筒状壁部13の一端に設けられ、挿入部2の挿入方向に対し、交差する方向に、外側に向かって延設された円板状の延設部材によって形成されている。
【0026】
挿入口装着器11は、装着器本体12が外光の少なくとも一部を遮光する性質を有する材料で構成されている。望ましくは、装着器本体12は、外光のほとんど全てを遮断する性質を有する材料で構成される。
挿入口装着器11は、内視鏡1が装着器本体12に挿入されているか否かを検出する挿入状態検出手段15と、挿入口装着器11が人の口H1に装着されているか否かを検出する検出部を有する装着状態検出手段16とを有している。本実施の形態における挿入状態検出手段15は、挿入口装着器11の筒状壁部13の筒内部分13aの内周面に配置された受発光素子対で構成されている。
【0027】
受発光素子対は、発光素子17aと、この発光素子17aから放射された光を検出する受光素子17bとを有する。発光素子17aと受光素子17bとは筒状壁部13の筒内部分13aの内周面の対向壁面(周方向に180°離れた位置)に配置されている。挿入状態検出手段15は、挿入口装着器11の筒状壁部13の筒内部分13aへの内視鏡挿入部2の挿入の有無により受光素子17bが受光する光量が変化する。これにより挿入口装着器11の筒状壁部13の筒内部分13aに内視鏡挿入部2が挿入されている内視鏡挿入部2の挿入状態を検出できる。
【0028】
図1は内視鏡挿入部2が挿入口装着器11の筒状壁部13の筒内部分13aに挿入されている状態を示した図である。このとき、発光素子17aから射出される光の一部は内視鏡挿入部2により遮光されるため、受光素子17bに入射する光量が減少する。これにより内視鏡挿入部2が挿入口装着器11の筒状壁部13の筒内部分13aに挿入されていることが確認できる。
【0029】
なお、挿入状態検出手段15は、受発光素子対に限定されるものではなく、挿入口装着器11に取り付け可能なものであれば、一般に知られている様々な手段を用いることが可能である。
装着状態検出手段16は、挿入口装着器11が人の口H1に装着されているか否かを検出する。装着状態検出手段16は、本実施形態では、挿入口装着器11の筒状壁部13の外壁面に配置された第2の受光素子18によって形成されている。第2の受光素子18は、筒状壁部13の外壁面であって、人の口H1に挿入口装着器11を取り付けたときに、人の口H1の内面に接するか、または生体Hにより取り囲まれる位置に設けられている。
【0030】
図2は挿入口装着器11が人の口H1に取り付けられていない状態を示す図である。すなわち、第2の受光素子18は外部に露出しており、外光が照射されている。一方、図1、図3に示すように挿入口装着器11が人の口H1に装着された状態では、外光の大部分は生体Hにより遮られる。そのため、第2の受光素子18には外光の大部分は照射されないか、あるいは照射されるとしても極わずかであり、人の口H1に挿入口装着器11が装着されていない状態と比較して第2の受光素子18で検出される光は、小さな光量となる。このため、第2の受光素子18が照射される外光の光量により、挿入口装着器11が人の口H1に装着されているか否かを検出することができる。
【0031】
なお、挿入口装着器11が外光の一部の波長領域であるΔλの光のみを遮断する材料で構成されている場合、第2の受光素子18の受光面上には、同じ波長領域Δλの光のみを透過するようなフィルタが配置されることが望ましい。
図5に示すように挿入状態検出手段15の受光素子17bと装着状態検出手段16の第2の受光素子18は、例えば挿入口装着器11の内部に配置された制御回路19に接続されている。制御回路19には、さらにバッテリー20と、送信機21とが接続されている。送信機21は、有線または無線にて内視鏡システム22に接続されている。そして、挿入状態検出手段15の検出状況および装着状態検出手段16の検出状況は、送信機21から内視鏡システム22に有線または無線にて送信される。
【0032】
内視鏡システム22は、挿入状態判断手段23を有している。内視鏡システム22の挿入状態判断手段23は、挿入状態検出手段15の検出結果と、装着状態検出手段16の検出結果とから、内視鏡1の挿入部2と生体開口部(人の口H1)との位置関係を判断する。ここで、挿入状態判断手段23は、挿入部2が挿入口装着器11に挿入されていることを挿入状態検出手段15が検出し、かつ、挿入口装着器11が挿入口に装着されていることを装着状態検出手段16が検出したときに、挿入部2が人の口H1に挿入されていると判断する。
【0033】
なお、挿入状態検出手段15に接続された制御回路19、バッテリー20、送信機21と、装着状態検出手段16の検出部に接続された制御回路19、バッテリー20、送信機21とは、それぞれ別々のものとすることができる。さらに、制御回路19、バッテリー20、送信機21は挿入口装着器11の外部に配置し、これらの部品と挿入口装着器11とを有線または無線にて接続することも可能である。また、挿入状態判断手段23を挿入口装着器11の内部に配置することも可能である。
【0034】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。内視鏡1の使用時には、本実施の形態の挿入口装着器11が内視鏡1と組み合わせて使用される。本実施の形態の挿入口装着器11は、図3に示すように筒状壁部13が人の口H1に挿入された状態で装着される。このとき、ストッパ部14が人の口H1の周縁部位に当接する状態まで筒状壁部13が人の口H1に挿入される状態にセットされる。このように挿入口装着器11が人の口H1に挿入された状態で正しく取り付けられた場合には、第2の受光素子18は生体開口である人の口H1の内部に位置する。このため第2の受光素子18が受光する、検査室の照明光等の外光の光量は、挿入口装着器11が人の口H1に装着されていないときと比較して、小さくなる。すなわち、図2に示すように挿入口装着器11が人の口H1に取り付けられていない状態では、第2の受光素子18は外部に露出しており、外光が照射されている。そのため、第2の受光素子18に照射される外光の光量は大きくなる。これに対して、挿入口装着器11が人の口H1に装着された場合は、外光の大部分は生体Hにより遮られる。そのため、第2の受光素子18には外光の大部分は照射されないか、あるいは照射されるとしても極わずかであり、第2の受光素子18が受光する外光の光量が小さくなる。したがって、第2の受光素子18が照射される外光の光量が小さくなったことを検出することにより、挿入口装着器11が人の口H1に装着されたことが検出できる。
【0035】
また、本実施の形態では、挿入状態検出手段15により、内視鏡挿入部2が挿入口装着器11の筒状壁部13の筒内部分13aに挿入されているか否かである挿入状態を検出可能である。すなわち、図3に示すように挿入口装着器11の筒状壁部13の筒内部分13aに内視鏡挿入部2が挿入されていない状態では、受発光素子対の発光素子17aから放射された光が直接的に受光素子17bで検出される。そのため、受光素子17bに入射する光量は大きい状態で保持されている。これに対し、図1に示すように内視鏡挿入部2が挿入口装着器11の筒状壁部13の筒内部分13aに挿入された場合には、発光素子17aから射出される光の一部は内視鏡挿入部2により遮光されるため、受光素子17bに入射する光量が減少する。これにより内視鏡挿入部2が挿入口装着器11の筒状壁部13の筒内部分13aに挿入されていることが確認できる。
【0036】
また、挿入状態検出手段15の検出状況および装着状態検出手段16の検出状況は、制御回路19に入力されたのち、送信機21から内視鏡システム22に有線または無線にて送信される。そして、内視鏡システム22の挿入状態判断手段23は、挿入部2が挿入口装着器11に挿入されていることを挿入状態検出手段15が検出し、かつ、挿入口装着器11が挿入口に装着されていることを装着状態検出手段16が検出したときに、挿入部2が人の口H1に挿入されていると判断する。
【0037】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の挿入口装着器11は、挿入状態検出手段15と装着状態検出手段16の2つの検出手段を有している。このため、装着状態検出手段16により、挿入口装着器11が人の口H1に装着されているか否かである装着状態を検出可能であるとともに、挿入状態検出手段15によって内視鏡挿入部2が挿入口装着器11の筒状壁部13の筒内部分13aに挿入されているか否かである挿入状態を検出可能である。これら挿入状態検出手段15による内視鏡挿入部2の挿入状態の検出と装着状態検出手段16による挿入口装着器11の装着状態の検出とは互いに独立に検出可能である。
【0038】
そして、挿入状態判断手段23は、挿入部2が挿入口装着器11に挿入されていることを挿入状態検出手段15が検出し、かつ、挿入口装着器11が挿入口に装着されていることを装着状態検出手段16が検出したときに、挿入部2が人の口H1に挿入されていると正しく判断することができる。これにより、挿入口装着器11に内視鏡挿入部2が挿入されているだけで、挿入口装着器11が生体に装着されていない状態、すなわち、内視鏡挿入部2が実際には生体開口部に挿入されていない状態を、誤って生体開口部に挿入されている状態と誤検出することが無い。したがって、例えば、内視鏡挿入部2が実際には生体開口部に挿入されていない状態で内視鏡1の光源装置7から照明光を発光させる場合のように、不要な光を生体開口の外部に照射することを防ぐなど、エネルギーロスを軽減したり、強力な照明光が眼に照射されるなどの、不快な状況を回避したりすることが可能となる。この結果、誤検出の発生しない、体内、外を確実に検出できる挿入口装着器11を提供することができる。
【0039】
また、本実施形態では、装着状態検出手段16の第2の受光素子18は、挿入口装着器11が人の口H1に装着された装着状態で、確実に人の口H1内に位置する筒状壁部13の外壁面に設けられている。そのため、挿入口装着器11が人の口H1に装着された装着状態を第2の受光素子18によって確実に検出できる。
【0040】
また、挿入状態検出手段15の発光素子17aは筒状壁部13の筒内部分13aの内周面に配置され、第2の受光素子18は筒状壁部13の外壁面に設けられている。そして、挿入状態検出手段15の筒状壁部13は外光等の少なくとも一部を遮光する性質を有しているため、発光素子17aの光が筒状壁部13を透過して筒状壁部13の筒内部分13aの外壁面側に漏洩する量は小さいので、第2の受光素子18は発光素子17aからの発光の影響を受けにくい。
【0041】
なお、本実施形態では簡単のため、挿入口装着器11は、円筒形状の筒状壁部13と円板形状のストッパ部14とを組み合わせた形状の例を示したが、これに限らない。実際には、例えば人の口H1に取り付ける場合であれば、歯や唇などの位置、大きさを考慮し、口腔にフィットし易い形状に設計される。
【0042】
[第1実施形態の変形例]
(構成)
第1実施形態の挿入口装着器11では、装着状態検出手段16である第2の受光素子18は、挿入口装着器11の円筒状の筒状壁部13の外壁面に設けた構成を示したが、図6に示すように、本変形例の挿入口装着器31では、円板状のストッパ部14の筒状壁部13が配置されている面に第2の受光素子18が設けられている。
【0043】
(作用・効果)
上記構成により、第2の受光素子18は、人の口H1の口腔内に挿入されないため、歯が第2の受光素子18に当たることによって第2の受光素子18が破損するリスクが小さくなっている。また、唾液等の液体に第2の受光素子18がさらされにくいため、液体進入を防止するための第2の受光素子18の防水構造を簡素化することができる。
【0044】
[第2の実施の形態]
(構成)
図7は、本発明の第2の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図5参照)の挿入口装着器11の構成を次の通り変更したものである。なお、図7中で、図1乃至図5と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0045】
本実施の形態の挿入口装着器41では、第1実施形態の装着状態検出手段16である第2の受光素子18の代わりに温度センサ42が設けられている点が異なっている。温度センサ42は、挿入口装着器41が生体開口に装着されたときに、生体と接触する位置に配置されている。例えば、温度センサ42は図7に示すように、挿入口装着器41の円筒状の筒状壁部13の外壁面に配置されている。そして、挿入口装着器41が口に取り付けるマウスピースの場合は、唇が触れる位置に温度センサ42を配置することが好ましい。
【0046】
本実施形態の温度センサ42は、接触型、非接触型を問わず、どのような構造の温度センサでも用いることができる。なお、接触型温度センサを用いる場合には、挿入口装着器41が人の口H1に装着されたか否かをより確実に検出することが可能となる。また、非接触型の温度センサを用いる場合、挿入口装着器41が人の口H1の口腔内に挿入される前であっても、生体の温度を検出し、装着されたと誤検出する可能性があるため、接触型温度センサであることが望ましい。
【0047】
なお、挿入状態検出手段15は、第1実施形態と共通のものをはじめ、一般に知られている様々なものを利用可能なので、説明を省略する。
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。一般的な生体の温度は、おおよそ35℃から40℃の範囲である。生体の開口に本実施の形態の挿入口装着器41を装着したときに、生体と確実に触れる位置に温度センサ42を配置することで、生体の温度を確実に検出することが可能となる。そのため、本実施の形態の挿入口装着器41が生体に正常に装着されたときに、生体と確実に触れる位置に温度センサ42を設けることで、挿入口装着器41が生体に正常に配置されていることを温度センサ42によって確実に検出することができる。言い換えると、挿入口装着器42が生体に正常に装着されていない場合に、装着状態検出手段16が、生体に装着されていると判断することによる誤検出のリスクを小さくすることができる。
【0048】
(効果)
そこで、本実施の形態では第1実施形態の効果に加え、本実施の形態の挿入口装着器41では、室内照明の明るさ、位置や、作業者との位置関係等により、挿入口装着器41に十分な外光が照射されないような環境であっても、誤検出することがない効果がある。
【0049】
[第2の実施の形態の変形例]
(構成)
第2実施形態(図7参照)の挿入口装着器41では、装着状態検出手段16である温度センサ42は、挿入口装着器41の円筒状の筒状壁部13の外壁面に一つだけ設けられている構成を示したが、本変形例の挿入口装着器51では、図8に示すように、複数の温度センサ52(以下温度センサ群53)が円筒状の筒状壁部13の外壁面の周方向に沿って並設される状態で配置されている。
【0050】
(作用・効果)
上記構成により、作業者が本実施の形態の挿入口装着器51を生体の開口部に装着するときに、作業者が誤って、筒状壁部13の外壁面の全ての温度センサ52に同時に触れる可能性はほとんど無い。そのため、作業者の手指などが温度センサ52に触れることにより発生する誤検出の恐れを回避できる。
【0051】
一方、生体に挿入口装着器51が装着された場合は、全ての温度センサ52が略等しい温度となるため、生体に装着したことを、より確実に検出することが可能となる。本変形例では、温度センサ52は接触型、非接触型を問わず利用することが可能である。
【0052】
非接触型の場合、生体開口に挿入口装着器51が装着された状態では、全ての温度センサ52が生体の温度を検出するため、より確実に挿入口装着器51の装着状態を検出できる。そのため、非接触型の温度センサを用いることが望ましい。なお、接触型温度センサでは、接触している温度センサと接触していない温度センサとで異なる温度を検出する可能性があるため、補正が必要な場合がある。
【0053】
[第3の実施の形態]
(構成)
図9は、本発明の第3の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図5参照)の挿入口装着器11の構成を次の通り変更したものである。なお、図9中で、図1乃至図5と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
本実施の形態の挿入口装着器61では、第1実施形態の装着状態検出手段16である第2の受光素子18の代わりに、生体からの圧力により電気抵抗が変化する電気機能素子62が設けられている点が第1実施形態とは異なっている。本実施形態の電気機能素子62は、挿入口装着器61が生体に装着された装着時の生体からの応力に応じて絶縁状態と導通状態とが切り替わるスイッチ63である。
【0055】
図9は本実施形態における挿入口装着器61の縦断面図である。スイッチ63は挿入口装着器61の円筒状の筒状壁部13の外壁面に取り付けられている。スイッチ63は、挿入口装着器61が生体に取り付けられた状態において、生体から圧力が加わる位置に取り付けられている。例えば、唇や歯、歯茎等が当たる位置に配置されている。ここで、唇により圧力が加わる位置にスイッチ63が配置されている場合には、スイッチ63に過度の圧力が加わったり、局所的に圧力が集中したりする恐れが小さいため、望ましい。
【0056】
スイッチ63の外側には、防水カバー64が設けられている。これにより、唾液等の体液がスイッチ63に侵入するのを防ぐ。なお、防水カバー64は唾液等の進入を防ぐものであって、かつ、歯等により容易に損傷されない材料であることが望ましい。
また、スイッチ63は、挿入口装着器61が口に装着された状態であれば、被検者が特に意識せずに加えられる圧力程度で状態が切り替わるように調整されている。スイッチ63は内視鏡挿入口装着器61の装着器本体65の内部に配置された検出回路66と接続されている。スイッチ63がオンされたときに検出回路66は、挿入口装着器61が生体開口部に装着されたと判断し、送信機21(図5参照)から内視鏡システム22(図5参照)に向けて検出状態を送信する。
【0057】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態では、挿入口装着器61が生体の開口部に装着されるときに自然に生じる圧力から、スイッチ63がオンされて挿入口装着器61の装着状態を検出することが可能となる。
(効果)
そこで、本実施の形態では第1実施形態の効果に加え、挿入口装着器61が生体の開口部に装着される装着時に挿入口装着器61の装着器本体65に作用する圧力のみからスイッチ63がオンされて挿入口装着器61の装着状態を検出するため、外光や温度の変化に伴う誤検出の恐れが無い。
【0058】
[その他の実施の形態]
なお、上記各実施形態では観察対象として、口に装着する挿入口装着器11、31、41、51、61を例に説明を行ったが、これに限らない。例えば、大腸内視鏡に代表される、下部消化器内視鏡や、腹腔鏡、気管支鏡等、呼吸器を観察する内視鏡などの挿入口装着器に用いることができる。また、家畜やペットに用いる動物用の内視鏡や、さらにはエンジン等の内部を観察する工業用内視鏡などの挿入口装着器に用いることができる。このような場合、挿入口装着器は、観察対象に応じて適切に選択される。
【0059】
例えば、図10に示す第4の実施の形態の挿入口装着器71のように装着器本体72の円筒状の筒状壁部13に中心線方向に延設された切り欠き部73を設けてもよい。この場合は、使用する内視鏡挿入部2の太さや、挿入開口の大きさに応じて切り欠き部73の拡開幅を調整することで、挿入口装着器71の装着器本体72の円筒状の筒状壁部13の径を調整可能となる。
【0060】
また、図11、図12に示す第5の実施の形態の挿入口装着器81のように構成してもよい。ここでは、挿入口装着器81の装着器本体82の円筒状の筒状壁部13の一端にひとつまたは複数のフック部83を設け、観察対象物の管体84の一端の開口部84aの端縁部位にフック部83を取り付けるように形成されている。
さらに、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、人体の上部消化器内視鏡の他、下部消火器内視鏡や腹腔鏡など、人体に用いるための様々な内視鏡はもちろん、動物用の内視鏡や、工業用の内視鏡など様々な内視鏡の挿入動作をガイドする挿入口装着器を使用する技術分野や、これを製造する技術分野に有効である。
【符号の説明】
【0062】
1…内視鏡、2…挿入部、H1…人の口(挿入口)、11…挿入口装着器、12…装着器本体、15…挿入状態検出手段、16…装着状態検出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の物体内面を観察する内視鏡装置と組み合わせて使用され、
前記内視鏡装置の挿入部が挿入される前記物体の開口部である挿入口に装着される挿入口装着器であって、
前記挿入口装着器は、前記物体の挿入口に挿入された状態で、前記挿入口の開口部周縁部位に固定される筒状の装着器本体を有し、
前記装着器本体は、前記装着器本体が前記挿入口に装着されているか否かを検出する装着状態検出手段と、
前記挿入部が前記挿入口に挿入されているか否かを検出する挿入状態検出手段と、を有している
ことを特徴とする挿入口装着器。
【請求項2】
前記装着器本体を前記挿入口に装着した状態に於いて、
前記装着状態検出手段は、前記装着器本体の前記物体と対向する面に形成され、前記挿入状態検出手段は、前記装着器本体に前記挿入部を挿入したときに前記挿入部と対向する面に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の挿入口装着器。
【請求項3】
前記装着器本体は、前記挿入口に挿入される筒状壁部と、
前記筒状壁部が前記物体の内部に落ち込むことを規制するストッパ部とを有している
ことを特徴とする請求項2に記載の挿入口装着器。
【請求項4】
前記装着状態検出手段は、光検出器を有しており、
前記光検出器に入射する光量が、前記装着器本体の装着状態に応じて変化することを利用して前記装着器本体の装着状態を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の挿入口装着器。
【請求項5】
前記装着器本体は、前記挿入部を挿入可能な開口を備えた筒状壁部を有し、
前記光検出器は、前記筒状壁部の外面に配置されており、
前記装着器本体が前記挿入口部に装着された状態で、外光が前記物体によって遮られ、前記光検出器に入射する光量が減少することを利用して前記装着器本体の装着状態を検出する
ことを特徴とする請求項4に記載の挿入口装着器。
【請求項6】
前記ストッパ部は、前記筒状壁部の一端に設けられ、前記挿入部の挿入方向に対し、交差する方向に、外側に向かって延設された板状の延設部材によって形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の挿入口装着器。
【請求項7】
前記装着状態検出手段は、光検出器を有しており、
前記光検出器は、前記装着器本体を前記挿入口に装着した状態において、前記延設部材の前記物体と対向する面に設けられている
ことを特徴とする請求項6に記載の挿入口装着器。
【請求項8】
前記装着状態検出手段は、温度センサを有していることを特徴とする請求項1に記載の挿入口装着器。
【請求項9】
前記温度センサは、接触型の温度センサであり、
前記温度センサの検出部は、前記装着器本体を前記挿入口部に装着した状態で、前記物体と接する位置に配置されている
ことを特徴とする請求項8に記載の挿入口装着器。
【請求項10】
前記装着状態検出手段は、複数の温度センサを備えた温度センサ群を有し、
前記温度センサ群を構成するそれぞれの温度センサは、非接触型センサであり、
前記温度センサは、全て、前記装着器本体を前記挿入口部に装着した状態で、前記物体と対向する位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の挿入口装着器。
【請求項11】
前記装着状態検出手段は、圧力に応じて電気抵抗が変化する電気機能素子を有し、
前記電気機能素子の圧力を検出する部分は、前記装着器本体が前記挿入口部に装着された状態で、前記物体と接する部分に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の挿入口装着器。
【請求項12】
前記電気機能素子は、圧力に応じて導通状態と絶縁状態とを切り替えるスイッチ素子である
ことを特徴とする請求項11に記載の挿入口装着器。
【請求項13】
前記スイッチ素子は、防水皮膜により覆われている
ことを特徴とする請求項12に記載の挿入口装着器。
【請求項14】
前記装着器本体は、前記挿入状態検出手段からの出力と、前記装着状態検出手段の出力とから、前記挿入部と前記物体の挿入口との位置関係を判断する挿入状態判断手段を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の挿入口装着器。
【請求項15】
前記挿入状態判断手段は、前記挿入状態検出手段が、前記挿入部が挿入されていることを検出し、かつ、前記装着状態検出手段が前記挿入口に装着されていることを検出したときに、前記挿入部が前記挿入口に挿入されていると判断する
ことを特徴とする請求項14に記載の挿入口装着器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−254128(P2012−254128A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127646(P2011−127646)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】