説明

挿入感および位置決め作業性が改善された成形面ファスナー

【課題】直接係合部を目視確認することが困難な部分に面ファスナーを使用する場合においても位置決めが可能で、取付け時の挿入感を改善した成形面ファスナーを提供する。
【解決手段】U字型の樹脂製構造体であって、該U字溝の底部にあたる基板表面に多数の係合素子を有し、該構造体の長さ方向両側面に基板の表面から略垂直に立ち上がる長さ方向に連続した突条、即ちU字溝両壁にあたる部分を有し、そのU字溝両壁の上端において、溝の入り口にあたる部分に連続した邪魔板を有する構造を有する成形面ファスナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形面ファスナーに関するものであり、さらに詳しくは係合部分が目視で確認できないような作業環境下においても、狙った位置に確実に係合させる性能に優れた面ファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や建築を初めとする様々な分野における「製品」とは、それらを構成する多くの部品が何らかの結合部材を用いて組み立てられることで成り立っており、その結合部位に成形面ファスナーが使用されることも多く、現在も様々な分野において面ファスナーの用途開発が拡大している。
【0003】
一般に、自動車や各種椅子などに用いられるシートは、発泡ウレタン等からなるクッションの表面に、シートカバーを取付けて構成している。
公知の自動車シート成形方法として、表面に多数の係合素子(通常はフック状の係合素子)、裏面に多数の埋設素子をそれぞれ備えた成形面ファスナーを、成形型内の所定の位置にセットし、成形型内に成形用樹脂を封入して発泡させ、上記テープの埋設素子をクッション内に埋設一体化し、且つ上記係合素子がクッションの外表面に露出するように埋め込み成形する方法、いわゆるモールドイン成形法が提案されている。(特許文献1参照)
【0004】
そして、シートカバーには、上記成形面ファスナーの係合素子に係合可能な被係合素子(通常はループ状の係合素子)が設けられており、これらの両係合素子(いわゆるフック&ループ)を係合させることにより、上記シートカバーをクッションに沿わせ、クッションはシートカバーにより被覆される。
【0005】
特許文献1に示されたような成形面ファスナーが埋め込まれたクッションは、クッション表面に係合素子(フック状係合素子)が露出している状態となるため、このクッションにシートカバーを取付ける際に、シートカバー裏面に縫製されたループ状係合素子を持つ面ファスナー(ループ状面ファスナー)が当該クッション表面に露出したフック状係合素子に接触させてしまうと、作業者が意図しない位置で係合してしまい、そうなるとクッションからシートカバーを剥がしてやり直しする等の二度手間が発生してしまう等の問題がある。また、仮に位置決めがうまくいったとしても両素子が確実に係合した事を確認しにくいため、係合が不完全であることが気付かれずに、シートクッションとした後に係合が外れて、不良品となることもある。
【0006】
また、上記のように係合部分を直接目視で確認できない状況下で使用される例として、特許文献2に示すように、建材の裏面に面ファスナーを貼り付けて使用されるものがあり、この場合においても建材と施工面の位置合わせの段階で適正でない位置で係合させてしまうと、シートクッションの例と同様に剥がしてやり直しする等の二度手間が発生する問題があり、さらに両素子が確実に係合した事を確認しにくい状況であることから、取付け位置がずれたままの状態又は係合が不完全であることに気付かず組立作業が終了されてしまうと、期待値通りの耐荷重が得られず、意図しないタイミングで建材が落下してしまい、利用者やその近辺にいる人が危険にさらされる等の問題もある。そして、これら諸問題が面ファスナー用途拡大の障害となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3128444号公報
【特許文献2】特開平05−179775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点を解決するものであって、即ち、公知技術を含めた面ファスナーの持つ特徴、いわゆるフック&ループによる係合を基本形とすることで生じる、係合素子と被係合素子の先端同士が触れ合うと即係合となり、小さな力で簡単に取付けができるメリットが、逆に係合位置を探りながらの作業、いわゆる位置決め作業を困難にさせ、またフック&ループは音もなく係合感もなく速やかに係合してしまう特徴から、係合部分を目視確認することが困難な状況下では、フック&ループが正常に係合されたことの確認を行い難くさせており、これら問題を解決する必要がある。
【0009】
本発明の目的は、面ファスナーを用いた各部品同士の組立作業において、係合部分の目視確認が困難な状況下での位置決め作業を可能にし、且つ従来よりも係合感が得られるよう改善することで上記した公知技術の問題点を解消するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記の課題を解決するための具他的手段について検討した結果、U字型の断面形状を有する樹脂製の面ファスナーであって、該U字の底部にあたる基板表面にU字型内部方向に向けて突出する多数のフック状係合素子を有し、該基板の幅方向両端部に基板の表面から立ち上がる長さ方向に連続した突条を有し、さらに該突条上端からU字型内部方向に突出する邪魔板を有することを特徴とする成形面ファスナーが上記目的を達成することを見出した。
【0011】
そして、上記成形面ファスナーにおいて、該基板の幅方向両端部には、樹脂の厚みが基板の厚みより薄いくびれ部分を長さ方向に有する場合が好ましいこと、また該突条の高さが、相手材として使用されるループ状係合素子を有する面ファスナーのループ状係合素子の高さと当該成形面ファスナーのフック状係合素子の高さを合計した値を超える高さを有する場合が好ましいこと、また該邪魔板の高さがU字型開口部における開口幅の半分以下の高さであって、且つ三角形の断面形状を有している場合が好ましいこと、また該突条に該U字型外側方向に向けて突出する少なくとも1対の埋設素子または嵌入素子を有している場合が好ましいことを見出した。
【0012】
さらに本発明は、上記の成形面ファスナーがモールドイン成形法によって、シートクッションに一体成形されたシートクッションであり、上記の成形面ファスナーをセットして成形用樹脂液を注入し、発泡させてシートクッションを製造するための金型であって、金型内には、上記面ファスナーをセットするためのレール状セット部を有しており、同セット部の底面は長さ方向に連続する凸型の断面形状を有し、長さ方向の両端部には末端及び両サイドの3面に壁を有する凹型の溝を有している金型や上記の成形面ファスナーを該U字型開口部がレール状セット部の凸型を覆うように上記の金型にセットし、成形用樹脂液を注入し、発泡させて、そして成形面ファスナーが取付けられた成形物を金型から取り出す発泡成形体の製造方法に、上記成形面ファスナーを一体化した成形体が好適に製造できる。
【0013】
また、本発明品を建材の裏面に取付けて使用する際には、建材と面ファスナー間の接合強力がフックとループ間の係合力を上回っている必要があるため、建材にビス留め等で強固に取付けられた挿入金具へ本発明品を挿入するための嵌入素子を突条外面に少なくとも1対以上設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の成形面ファスナーを用いると、成形面ファスナーとループ状係合素子を係合させようとする時、突条の上端に連続した邪魔板があることで、容易にループ状係合素子がフック状係合素子に接触しにくく、そのため該成形面ファスナーの邪魔板部分とループ状係合素子を接触させた状態でスライドさせることが可能となり、適切な係合位置を探りながらの組立作業(いわゆる位置決め作業)が容易にできるようになる。
【0015】
また、位置決め作業完了後に、該面ファスナー幅側両端の基板表面から立ち上がる突条上部に設置された邪魔板の間へ、係合させようとするループ状係合素子またはループ状係合素子を一体化させた被着体を挿入させる時に邪魔板との間に発生する音または振動等が挿入感として作業者に伝わり、この挿入感を持って、確実にフック&ループが係合したことを確認できるようになる。
【0016】
上記のように、本発明により、部品の組立等において、係合部分を目視確認することが困難な状況下で面ファスナーを使用する場合であっても位置決め作業が可能となり、ループ状係合素子またはループ状係合素子を一体化させた被着体を邪魔板の間に挿入させる時に邪魔板との間に発生する音または振動等により挿入感が改善され、取付け後の確認を行わなくてもフック&ループが正常に係合していることを確認できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の成形面ファスナーの断面模式図である。
【図2】本発明の成形面ファスナーの斜視模式図である。
【図3】本発明の成形面ファスナーを組み立てる前の状態の断面模式図である。
【図4】本発明の成形面ファスナーを組み立てる前の状態の斜視模式図である。
【図5】本発明のモールド成形面ファスナー用セット金型の断面模式図である。
【図6】本発明のモールド成形面ファスナーをセット金型に取付けた一例の断面模式図である。
【図7】本発明の成形面ファスナーとループ状面ファスナー(被着体に接着されたもの)の取付方法の一例を示した断面模式図である。
【図8】本発明のモールド成形面ファスナーをセット金型に取付けた一例の斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面に基づき本発明を説明する。
図1は、本発明の成形面ファスナーの一例を示す断面模式図であり、図2は本発明の成形面ファスナーの斜視模式図である。
該成形面ファスナーは、その基板1の表面側に多数のフック状係合素子2を有し、さらに基板1の表面側の幅側両端部に基板1から立ち上がり、長さ方向に連続して存在する突条3を有する。基板1又は突条3の裏面側には、埋設素子または嵌入素子4を設けることがクッションや建材裏面等への一体化が強固となる上で好ましい。そして、突条3の先端付近にはU字型内部方向に突出する長さ方向に連続した邪魔板5を有している。
基板1は幅5〜25mmが好ましく、より好ましくは10〜15mmであり、その厚みは0.1〜1.0mmが好ましく、より好ましくは0.3〜0.7mmである。
【0019】
係合素子2の形状としては、やじり型、きのこ型、かぎ型等公知の形状のいずれでも良く、本発明では、これらを総称してフック状係合素子あるいはフックと称している。係合素子2の高さ(基板面からの高さ)としては、特に制限はないが、通常1mm〜5mmが好ましく、より好ましくは1.5〜2.5mmである。
さらに、係合素子密度としては10〜120個/cm2の範囲が好ましく、より好ましくは20〜80個/cm2である。係合素子2は、通常、基板面に対してほぼ垂直に直立して、基板1の長さ方向に列をなして並んでおり、一列に存在する係合素子本数としては3〜20個/cm程度が好ましく、かつそのような列が基板1の幅方向に2〜20列/cm、特に3〜8列存在しているのが係合力と作業効率の面から好ましい。
【0020】
また、本発明の成形面ファスナーをシートクッションの係止部材として使用する際には、突条3裏面には埋設素子4が存在しているのが成形面ファスナーを発泡成形体に強固に一体化させることができる点で好ましい。埋設素子4は、両壁の突条3に対して、略垂直に、あるいは斜め方向に、外側に向かって少なくとも両壁に1対ずつ突出しているのが好ましい。また、埋設素子として、織物、編物、不織布等の布帛を基板裏面に貼り付けても良く、これら布帛はモールドイン成形の際に成形樹脂が侵入してアンカー効果を発現してアンカー材として働くこととなる。アンカー材および埋設素子4は、成形面ファスナーの長さ方向に連続して存在しているのがより好ましいが、係合素子2のように、成形面ファスナーの長さ方向に不連続で存在しても良い。さらに、埋設素子4は、突条3の外面に設置する以外に、基板1の裏面に設置することも出来る。
【0021】
また、本発明の成形面ファスナーを建材の裏面等に取付ける際には、両壁の突条3裏面には嵌入素子4が存在しているのが成形面ファスナーを建材等に強固に接合させることができる点で好ましい。すなわち、嵌入素子4は、両壁の突条3の裏面に基板のほぼ延長線上に、突条3に対してほぼ垂直に外側に向かって少なくとも両突条に1対ずつ突出しているのが好ましい。また、この嵌入素子4は、成形面ファスナーの長さ方向に連続して存在しているのが好ましく、建材の裏面等にビス留め等で強固に取付けられた金具へ本発明成形面ファスナーの嵌入素子4を挿入させた後、挿入された部分の金具をかしめて一体化させると本発明の成形面ファスナーを建材等にしっかり固定できる。
【0022】
本発明の成形面ファスナーを構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド系樹脂などの各種熱可塑性樹脂が挙げられ、特に成形性の点からポリオレフィン系樹脂、なかでもポリプロピレン樹脂やポリエチレンを少量ブレンドしたポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0023】
図3は、本発明の成形面ファスナーを組み立てる前の状態の断面模式図である。
図4は、本発明の成形面ファスナーを組み立てる前の状態の斜視模式図である。
本発明の成形面ファスナーは、まず、上記熱可塑性樹脂を、図3のような断面形状で、基板1、係合素子2、基板からくびれ部分9を経て両端部に邪魔板5を有する突条3の裏面に埋設素子・嵌入素子4を有する所定のスリットを設けたノズルから溶融押出し、基板1の表面及び裏面に連続した列条を有するテープを成形する。この段階では、係合素子2は長さ方向に連続した列条となっているため、係合能を有していない。次に、このテープ表面にある係合素子用の連続列条に小間隔で切れ目を入れ、そしてテープを長さ方向に延伸することにより、表面に多数の係合素子2を有する成形面ファスナーが得られる。埋設素子4は成形面ファスナーの長さ方向に連続していても良いし、また係合素子2のように長さ方向に小間隔で切れ目を入れて不連続としても良い。嵌入素子4の場合には、成形面ファスナーの長さ方向に連続していることが好ましい。
【0024】
この時、くびれ部分9の幅は0.3〜1.0mmが好ましい。また、くびれ部分の樹脂厚みは基板1の厚み未満でかつ基板1の厚みの10分の1以上が好ましく、より好ましくは0.1〜0.3mmの範囲内である。
埋設素子・嵌入素子の幅・厚み等の寸法的要素については、使用する状況によって決定されることが好ましいが、幅(突出高さ)1.0〜10.0mm、厚みは0.1〜1.0mmがより好ましい。幅(突出高さ)に関しては、1.5〜3.0mmがさらに好ましく、厚みは基板厚みとほぼ同じとなることがさらに好ましい。
【0025】
フック形成後、図3や図4に示すような状態の、得られた樹脂構造体の長さ方向両側面に基板1からくびれ部分9を隔てて表面から略垂直に立ち上がる長さ方向に連続した突条3をくびれ部分9を根元にして、基板1表面方向(フック状係合素子の立設方向)に谷折りに折り返し、両壁が基板1に対して略垂直となるように保持したままガラス転移点<t℃<融点の熱を与え、その後形を保持した状態で冷却することで、本発明の特徴となる形状を有する成形ファスナーを得る。
ただし、モールドイン成形で金型にセットして使用する場合は、上記成形工程を経ていないまま、折り返す前の成形ファスナーを金型に沿って挿入し、挿入と同時に折り返す方法を用いることも可能である。
【0026】
この時、本発明の成形面ファスナーの長さ方向両側面に基板1の表面から略垂直に立ち上がる長さ方向に連続した突条3の高さは、相手材として使用されるループの高さと当該成形面ファスナーが持つフックの高さを足した分を僅かに超える高さ、例えば、僅かに超える高さとは0.5mm〜5mmであることが好ましく、実際の突条3の高さとしては好ましくは3.0〜15.0mm、より好ましくは5〜12mmの範囲内である。
【0027】
また、突条3のほぼ上端部分に設置される邪魔板の断面形状としては、U字の内側方向に頂点がある三角形が好ましく、この断面形状を持つ長さ方向に連続した邪魔板において、その底辺から頂点までの高さ(邪魔板の幅)は、基板1の幅の半分未満であることが好ましく、さらに好ましくは2.5〜12.5mmの範囲内である。
ただし、モールドイン成形で金型にセットして使用する場合は、図6に示すようにセット金型は凸型底部を有する場合が好ましく、この場合には、基板の幅の半分の値から凸型底辺の幅の半分だけ差し引いた幅とするのが好ましい。
【0028】
図5は本発明の成形面ファスナーをモールドイン成形用の金型にセットするためのセット金型の斜視模式図であり、図6は該係止部材をセット金型にセットしたときの断面模式図である。
本発明のセット金型は、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、セラミックス等の各種無機材料が使用でき、金型の加工性の点からアルミニウムが好ましい。
また、セット金型の断面形状は、該係止部材の寸法により任意に変更でき特に制限されるものではないが、図6に示すように、長さ方向に連続した凸型の底部形状を有し、両端部には末端及び両サイドの3面に壁を有する凹型部aを有していることが好ましい。係止部材が嵌入される凹部aの内径(金型下面の幅)iは5〜25mm、金型下面から両壁上辺までの高さiiは5〜15mm、が好ましい。本発明のセット金型は、鋳造、鍛造等及び削り出し等の機械加工により作製されることが好ましい。
【0029】
該係止部材嵌着用セット金型両端に設けられたの凹部aの内径(金型下面の幅)iは、本発明の成形面ファスナーの幅よりやや小さいかほぼ等しい幅に設定され、該成形面ファスナーはU字型開口部がレール状セット部の凸型を覆うように下に向けた状態で、両端に設けられた該凹部aに嵌入することでセットする。また、両端以外の中央部はセット金型底部bに沿わすようにセットされることが成形時に樹脂が係合素子側に侵入するのを防ぐ上で好ましい。また、該両端以外の中央部は突条3及び邪魔板5により間隙が封止されるから、係合素子2側に流入することはない。
【0030】
本発明に用いる成形面ファスナーの長さ方向の端末部は、樹脂の粘度が高い場合には、U字内部に滲入する樹脂が少ないので特にそのシールを考慮しなくてよい。一方、樹脂の粘度が低く、樹脂が滲入しやすい場合は、成形面ファスナーの長さ方向における両端部に、繊維塊または樹脂片などを貼り付けて、シール部を付与して、樹脂が長さ方向の端部から凹部に滲入することを防ぐことが好ましい。また、金型の溝の長さと成形面ファスナーの長さが極力一致するように、成形面ファスナーを切断することも好ましい。
【0031】
本発明のセット金型は、本発明の成形面ファスナーとともに自動車用シートなどの樹脂成形体が製造に用いられる。成形用の樹脂は発泡性のポリウレタン系樹脂が好ましく用いられるが、該樹脂に限定されず、各種の樹脂を使用することができ、図8に示すように、金型内にセットされた溝に本発明の成形面ファスナーを図6に示すように嵌め込み、そして、上記の発泡性ポリウレタン等を金型内に流し込み、そして発泡・硬化させたのち、金型から取り出す。これにより、本発明の成形面ファスナーが埋設されかつ基板表面に存在しているフック状係合素子は露出し、さらにその一部は間隔を開けて邪魔板に覆われている発泡成形体が得られる。
【0032】
そして、このような発泡成形体の表面に、裏面にループ状面ファスナーを取付けた布帛を被せ、フック状係合素子とループ状係合素子を係合させ、発泡成形体表面を布帛で覆う。この際に本発明の成形面ファスナーの場合には、位置決めができることから、布帛を被せる際に、不要な係合が生じたり、あるいはズレた位置で係合するということを大きく減少させることができる。
そして、正しい位置に被せられていることを確認した上で、布帛に取付けたループ状係合素子をフック状係合素子に押し付ける。この際に、邪魔板が音を発したり、あるいは振動が生じたり、あるいは邪魔板の抵抗感が作業者に伝わり、確実に係合したことが感覚的に確認できることとなる。
【0033】
なお、図7は、本発明の成形面ファスナーとループ状面ファスナー(被着体に接着されたもの)の取付け方法の一例を示した断面模式図である。
すなわち、本発明の成形面ファスナーの邪魔板4の両先端間の幅よりも広い幅を有する被着体6にループ状面ファスナー7を接着させておき、ループ状面ファスナー6を接着させた被着体5の両サイド部と邪魔板5が先ず接触することで、ループ状係合素子7とフック状係合素子2の接触を防止し、且つ、邪魔板5と被着体6の接触部分でスライドさせることで位置決めが容易に出来るようになる。被着体6の断面形状は台形又は三角形及び楕円形が好ましい。
【0034】
本発明の目的である位置決めと挿入感の改善という意味においては、図7に示したループ状面ファスナーおよび被着体の仕様が本発明の成形面ファスナーとの組み合わせとして好適である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を図面に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制限されるものではない。
【0036】
[実施例1]
図3に示すような断面スリットノズルからポリプロピレン樹脂を溶融押し出し、そして得られるテープ状物の係合素子用列条にテープ幅方向に切れ目を入れ、そして、該テープ状物を1.15倍に延伸して、幅11.5mm×厚さ0.5mmの基板面上に垂直に立ち上がる高さ1.5mm、基板の100mm長当たり5列×120行(600本)のフック状係合素子が形成され、該基板の両サイドに幅0.5mm×厚さ0.2mmのくびれ部分を隔てて、幅7.5mm×厚さ0.5mmの突条部となる耳部を有し、その先端表面側には底辺1.5mm×高さ2.5mmの二等辺三角形状の邪魔板部を両サイド1つずつ有し、突条の裏面側には成形面ファスナーの長さ方向に連続な幅2.0mm、厚み0.5mmの埋設・嵌入素子を有し、該耳部が基板の裏面側に倒れた状態である50mm長のポリプロピレン系樹脂製の成形面ファスナーを得た。
【0037】
その後該成形面ファスナーの耳部を基板に対して表面側へ垂直方向に谷折りに折り曲げ、折り曲げた状態で160℃のオーブン内で30秒加熱後、室温になるまで冷却して、本発明の特徴であるU字型の樹脂製構造体を得た。
【0038】
一方、下底10.0mm×上底6.0mm×厚さ2.0mm×50mm長の断面形状が台形の板状ポリプロピレン系樹脂製被着体の上辺部分に両面テープでループ状面ファスナー(ループ状係合素子高さ2.0mm)を貼り付けたものを準備した。
【0039】
U字型の樹脂製構造体である上記成形面ファスナーに、準備したループ状面ファスナー(被着体)を接近させたところ、該成形面ファスナー幅側両端に長さ方向に基板の表面に立ち上がる突条の上部にある邪魔板と、被着体の両サイド部分が接触し、ループ状面ファスナーのループ状係合素子と該成形面ファスナーのフック状係合素子が接触することは無く、長さ方向にスライドして位置決めが可能であった。
【0040】
両部材の位置決めが完了した後、該成形面ファスナーとループ状面ファスナーを接触させる為に、邪魔板と接触している被着体をフック状係合素子の方向に上から押し込んだところ、被着体の両サイド部が邪魔板の間を通過させるとき、接触面でカチッという通過音が発生すると同時に手元に振動を感じられ、挿入感を得ることが出来た。
【0041】
[比較例1]
比較例として、上記実施例1の邪魔板をカッターで除去した成形面ファスナーを使用して実施例1と同様な使用テストを実施した。
【0042】
そして、実施例1と同手順で断面形状が台形の板状ポリプロピレン系樹脂製被着体の上辺部分に両面テープでループ状面ファスナーを貼り付けたものを準備した。
【0043】
この成形面ファスナーに、ループ状係合素子(被着体)を接近させたところ、ループ状係合素子が容易に成形面ファスナーの係合素子に引っかかってスライドさせることが出来ず、位置決め機能が失われていることが確認された。
【0044】
さらに、ループ状面ファスナーをフック状係合素子面に向けて挿入させたときには、音も感触も感じられず、挿入感改善の機能も失われたことが確認された。
【0045】
[実施例2]
セット金型として、金型下面の全幅11.5mm、凸型の上辺の幅6.5mm、両端に高さ7.5mmの壁3面を有している長さ300mmのセット金型を準備した。
【0046】
一方、実施例1と同様の方法により、幅11.5mm×厚さ0.5mmの基板面上に垂直に立ち上がる高さ1.5mm、基板の100mm長当たり5列×120行(600本)の二段矢尻状の断面形状を持つフック状係合素子が形成され、該基板の両サイドに幅0.5mm×厚さ0.2mmのくびれ部分を隔てて、幅7.5mm×厚さ0.5mmの突条部となる耳部を有し、その先端表面側には底辺1.5mm×高さ2.5mmの二等辺三角形状の邪魔板部を両サイド1つずつ有し、突条の裏面側には成形面ファスナーの長さ方向に連続な幅2.0mm、厚み0.5mmの埋設素子を有し、該耳部が基板の裏面側に倒れた状態である300mm長のポリプロピレン系樹脂製の成形面ファスナーを得た。
【0047】
その後、該成形品の耳部を基板に対して表面側へ垂直方向に谷折りに折り曲げ、折り曲げた状態で160℃のオーブン内で30秒加熱後、室温になるまで冷却して、本発明の特徴であるU字型の成形面ファスナーを得た。
【0048】
次いで前述のセット金型両端の凹部に、得られたU字型の成形面ファスナーを同部材の中央の開口部がU字溝の底の凸部に嵌め込まれた状態となるように嵌入し、成形型内にポリウレタン樹脂を注入し発泡させ、表面に成形面ファスナーを有する樹脂成形体を得た。
【0049】
上記のモールドイン成形法により得られた樹脂成形体の表面にシートカバーとなる織物を切断し、裏面にループ状係合素子を縫製した試験片を準備し、表面に露出している上記成形面ファスナーの係合素子に、シートカバーの裏面側に設けた被係合素子(ループ状繊維や起毛繊維)を係合させることにより擬似的なシートクッションを得た。
【0050】
得られた擬似シートクッションは、シートカバーがクッションの外観形状に沿って密着していた。この成形面ファスナーに、シートカバーに取付けられたループ状面ファスナーを係合させようとする時、U字溝両壁の上端(溝の入り口部分)に連続した邪魔板があることで、該モールドイン成形用係止部材とシートカバーに取付けられたループ状面ファスナーが接触しても、ループ面が係合素子面(フック面)に到達することはなく、そのためクッションに埋め込まれた成形面ファスナーの邪魔板部分とループ状面ファスナーを接触させた状態でスライドさせることが可能となり、適切な係合位置を探りながらの組立作業(いわゆる位置決め作業)が容易にできた。
【0051】
また位置決め作業完了後に、クッションに埋設された成形面ファスナーに取付けられた邪魔板を押しのけて、ループ状面ファスナーを係合素子面に向けて挿入させたとき、邪魔板を押しのけるときの感触が挿入感として得られ、フック&ループが確実に係合した事を確認できた。
【0052】
擬似的に作製したシートクッションを上から手で押してみての感触的な試験では、深い溝部の中に埋設された係止部材が直接触れないことから、手に異物感を感じることは無く、シートクッションとして座り心地を損なうことはないものであることが確認された。
【0053】
[比較例2]
比較として、実施例2の邪魔板をカッターで除去した本発明の成形面ファスナーを使用して実施例2と同様な使用テストを実施した。
【0054】
この成形面ファスナーに、シートカバーに取付けられたループ状面ファスナーを係合させようとする時、ループ状面ファスナーがクッションに埋め込まれた成形面ファスナーのフック状係合素子に引っかかってスライドさせることが出来ず、位置決め機能が失われることが確認された。
【0055】
さらに、ループ状面ファスナーを係合素子面に向けて挿入させたときの感触も感じられず、挿入感改善の機能も失われたことが確認された。
【符号の説明】
【0056】
1:基板
2:係合素子
3:両壁の突条
4:埋設素子・嵌入素子
5:両壁上部の邪魔板
6:ループ状面ファスナーを接着させる被着体
7:ループ状面ファスナー
8:樹脂
9:くびれ部分
a:セット金型両端の凹部
b:セット金型の底部下面
c:セット金型の凸型底部上辺
i:セット金型両端凹部aの内径(金型下面の幅)
ii:セット金型両端凹部aの金型下面から両壁上辺までの高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字型の断面形状を有する樹脂製の面ファスナーであって、該U字の底部にあたる基板表面にU字型内部方向に向けて突出する多数のフック状係合素子を有し、該基板の幅方向両端部に基板の表面から立ち上がる長さ方向に連続した突条を有し、さらに該突条上端からU字型内部方向に突出する邪魔板を有することを特徴とする成形面ファスナー。
【請求項2】
基板の幅方向両端部には、樹脂の厚みが基板の厚みより薄いくびれ部分を長さ方向に有する請求項1に記載の成形面ファスナー。
【請求項3】
突条の高さが、相手材として使用されるループ状係合素子を有する面ファスナーのループ状係合素子の高さと当該成形面ファスナーのフック状係合素子の高さを合計した値を超える高さを有する請求項1または2に記載の成形面ファスナー。
【請求項4】
邪魔板の高さがU字型開口部における開口幅の半分以下の高さであって、且つ三角形の断面形状を有している請求項1〜3のいずれかに記載の成形面ファスナー。
【請求項5】
突条に該U字型外側方向に向けて突出する少なくとも1対の埋設素子または嵌入素子を有する請求項1〜4のいずれかに記載の成形面ファスナー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の成形面ファスナーがモールドイン成形法によって、シートクッションに一体成形されたシートクッション。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の成形面ファスナーをセットして成形用樹脂液を注入し、発泡させてシートクッションを製造するための金型であって、金型内には、上記面ファスナーをセットするためのレール状セット部を有しており、同セット部の底面は長さ方向に連続する凸型の断面形状を有し、長さ方向の両端部には末端及び両サイドの3面に壁を有する凹型の溝を有している金型。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載された成形面ファスナーを請求項7に記載された金型に該U字型開口部がレール状セット部の凸型を覆うようにセットし、成形用樹脂液を注入し、発泡させて、そして成形面ファスナーが取付けられた成形物を金型から取り出す発泡成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−70890(P2013−70890A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213595(P2011−213595)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(591017939)クラレファスニング株式会社 (43)
【Fターム(参考)】