説明

挿入物の投入装置

【課題】挿入物を紙層上に、正確な姿勢で、正確に位置決めしながら、正確な投入間隔で連続的に投入できるようにすること。
【解決手段】ICタグインレット1を収納する多数のポケット2aを長さ方向に沿って定間隔で配したエンボステープ2b及びそのポケット2a、2a…の開口部を閉じるべく剥離自在に貼着したカバーテープ2cからなるキャリヤテープ2と、これを下方の湿紙4aのICタグインレット1の投入位置まで搬送し、ICタグインレット1を放出したキャリヤテープ2のエンボステープ2bを投入位置の直後で折り返すべく搬送するスプロケット3cと、投入位置の直前でキャリヤテープ2のカバーテープ2cを剥離する剥離ナイフ5a及び剥離したカバーテープ2cを巻き取るカバーテープ巻取リール5bと、キャリヤテープ2の搬送速度を制御する制御手段とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグ又はICタグインレット等の挿入物を紙層中又は紙層間に抄き込んだ挿入物抄込紙を製造する抄造装置において、抄き合わせる複数の紙層の内の最上部以外の紙層上に、または抄き込む一枚の紙層上に、その抄き込みに先立って挿入物を任意の間隔で投入するために使用する挿入物の投入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療、食品、教育又は商品の流通段階における管理を含めた種々の物品等の管理のためにICタグが使用されつつある。このICタグをより簡易に使用できるようにする趣旨で紙層間にICタグインレット又はICタグ等の挿入物を抄き込んだICタグ抄込用紙が提案され、更にその製法及び製造装置が提案されている。
【0003】
特許文献1はその一つの例であり、これは、ICチップを内包させた不織布を下部紙層と上部紙層との間に抄き込んだ多層抄き合わせ紙であって、それらの下部紙層、不織布及び上部紙層の繊維が互いに絡み合って結合されている多層抄き合わせ紙を提案している。そして、この多層抄き合わせ紙は、多数のICチップを定間隔で埋め込んだ帯状の不織布を下部紙層と上部紙層との間に挟んだ状態で同時に引き出し、三層を結合することで製造するものである。なお、ICチップはアンテナコイルを付設したものである。
【0004】
従ってこの特許文献1の例では、多層抄き合わせ紙中のICチップの間隔は、不織布に配したICチップの間隔で決まってしまい、自由な間隔で配置することはできない。間隔を変える必要がある場合は、既存のそれとは異なる所望の間隔でICチップを配した新たな不織布を作成して、これを用いることとするほかない。なお、不織布内に定間隔でICチップを埋め込む手段に関しても何らの記述もない。
【0005】
特許文献2も同様の例であるが、これは、アンテナ付きの半導体チップを細幅のフィルムに設けた偽造防止用スレッドをシート状物の内部に挿入してなる偽造防止用シート状物を提案している。そしてこの偽造防止用シート状物は、複数枚の紙又はプラスチックシートの間に上記スレッドを挿入しながら該複数枚の紙又はプラスチックシートを貼合することで製造するものである。しかしこの特許文献2には、スレッドの挿入方法及び挿入装置に関しては全く記述がない。
【0006】
特許文献3も同様の例であるが、これは、用紙基材の紙層間に、非接触方式のタグ部材が抄き込まれた状態で内蔵された用紙に関するものであり、この用紙は、円網抄紙機の2基のワイヤーシリンダーの金網にそれぞれ紙層を形成させ、これを毛布に移し取ることで二層合わせ紙を製造し、該シリンダー二基の間のスペースに配した該非接触方式のタグ部材を貼付する装置により、該紙層表面に該タグ部材を貼付し、引き続いて二枚の紙層を抄き合わせることを通じて製造するものである。
【0007】
従ってこの特許文献3の例によれば、個別のタグ部材を自由な間隔で用紙中に挿入することは可能であると思われるが、その挿入方法及び挿入装置のいずれに関しても全く記述がない。
【0008】
特許文献4も同様の例であり、これは、連続して流れる第1の紙層と第2の紙層との間に所定の間隔をおいて無線タグを順次挿入する工程と、前記無線タグが挿入された前記第1及び第2の紙層を圧着して紙を形成する工程と、前記紙を巻き取る工程とを含む紙の製造方法を提案するものである。
【0009】
従ってこの特許文献4の例によれば、特許文献3の例と同様に、個別の無線タグを自由な間隔で紙の中に挿入配置することは可能であると思われるが、その挿入方法及び挿入装置のいずれに関してもやはり全く記述がない。
【0010】
特許文献5も同様の例であるが、これは、抄網a上に湿紙Aを形成し、次に前記湿紙Aの上方から前記湿紙Aの表面にICタグを設置した後、前記抄網aとは異なる抄網bの上に形成した湿紙Bと前記湿紙Aとを抄き合わせる工程を含むICタグ抄き込み用紙の製造方法を提案するものである。
【0011】
従ってこの特許文献5の例によれば、挿入するICタグを前記湿紙Aの上面上に配置することができるため、前記湿紙Bとで抄き合わせるまでの間にその状態を保持するための特別の手段を必要としない。もっとも、ICタグを該湿紙Aの上面に配置するための方法乃至装置に関しては、いかなる手段の採用も可能であることや、抄網と抄網との間に、上方からICタグを湿紙上へ一つずつ置くことができる装置を配し、該装置によってICタグを一定間隔或いは規則性ある間隔で自動的に挿入できるようにすることが好ましい等の記述はあるが、それ以上の具体的な記述はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−171396号公報
【特許文献2】特開2004−139405号公報
【特許文献3】特開2002−298118号公報
【特許文献4】特開2004−102353号公報
【特許文献5】特開2007−122222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、以上の従来技術の中では提案されていない、抄き合わせられる複数の紙層の内の最上部以外の紙層上に、または単層の紙層上に、ICタグインレット又はICタグ等の挿入物を連続的に投入する挿入物の投入装置を提供することを解決の課題とするものであり、特に、該紙層上に、正確な姿勢で、正確に位置決めしながら、正確な投入間隔で挿入物を連続的に投入することができる挿入物の投入装置を提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1は、挿入物を複数の紙層の間に抄き込んだ挿入物抄込紙又は単層の紙層に抄き込む挿入物抄込紙を作成するために、複数の紙層の内のその間に抄き込む上下二層の紙層の内の下方の紙層上に、または抄き込む単層の紙層の上に、抄込操作に先立って挿入物を投入することとした挿入物抄込紙の抄造装置において、該挿入物の投入のために使用する挿入物の投入装置であって、
搬送される投入対象紙層上への挿入物の投入を、該紙層上に姿勢の乱れを生じさせずに行うことを可能にすべく、該挿入物を該紙層の搬送速度に実質的に等しい速度で移動させつつ行い、かつ、挿入物の湿紙上への投入設置間隔を、所望の間隔に設定すべく、前記投入時以外の該挿入物の搬送速度を、該所望の間隔を得るのに適する速度で行うこととした挿入物の連続投入手段で構成した挿入物の投入装置である。
【0015】
本発明の2は、本発明の1の挿入物の投入装置において、
前記連続投入手段を、
各々挿入物を収納する複数のポケットを長さ方向に沿って定間隔で形成したエンボステープ及び該ポケットに収納した挿入物を該ポケット中に保持すべく、該エンボステープの該ポケットを形成した面に剥離可能に貼着したカバーテープからなるキャリヤテープと、
前記キャリヤテープを、これを巻回した供給用リールから前記紙層の直上の投入位置まで、前記カバーテープ側を下向きにして、引き出すキャリヤテープ搬送手段と、
前記紙層の直上の投入位置に引き出されたキャリヤテープのカバーテープを剥離する剥離位置決め部及び該カバーテープを剥離すべく巻き取るカバーテープ巻取リールからなる剥離手段と、
前記キャリヤテープ搬送手段の搬送速度を、前記投入位置直前で前記剥離手段によりカバーテープを剥離し、該投入位置で前記エンボステープのポケットからの挿入物の投入を開始する時点から前記紙層上への投入を完了させる時点までは、該キャリヤテープの速度と該紙層の搬送速度とが実質的に等速度となるように、制御し、かつ該挿入物を該紙層上に投入する時点以外の時点では、該紙層への挿入物の投入間隔を所望のそれに設定するのに適するようにすべく、制御する制御手段と、
で構成したものである。
【0016】
本発明の3は、本発明の2の挿入物の投入装置において、
前記キャリヤテープのエンボステープを、前記ポケットを定間隔で形成したキャリヤ部に加えて、その側方に長さ方向に沿ってガイド穴を定間隔で開口した被駆動部を付設したものに構成し、
前記キャリヤテープ搬送手段を、該キャリヤテープを、該エンボステープの被駆動部のガイド穴を利用して、その下方側に引き込み、前記紙層の直上の投入位置直前で前記剥離手段によりカバーテープが剥離され、該投入位置をそれのみとなって通過したエンボステープをその直下に通過させ、反転させてその上方側からエンボステープ巻取リール側に折り返すスプロケット及び該スプロケットを回転駆動する回転駆動手段で構成したものである。
【0017】
本発明の4は、本発明の2又は3の挿入物の投入装置において、
前記剥離手段を、前記紙層の直上の投入位置直前で、前記キャリヤテープの搬送方向に剥離用先端を向け、かつ該キャリヤテープのカバーテープ側の面に沿って搬送上流側に延長状態に配した剥離ナイフ及び該キャリヤテープのカバーテープを該剥離ナイフの剥離用先端で剥離して折り返した上で該キャリヤテープの搬送速さと同一速さで巻き取るカバーテープ巻取リールで構成したものである。
【0018】
本発明の5は、本発明の2、3又は4の挿入物の投入装置において、
前記マインテープのポケットを、その深さが挿入物の最大厚さの200%以内となるように設定したものである。
【0019】
本発明の6は、本発明の、請求項2、3、4又は5の挿入物の投入装置において、
前記エンボステープのポケットの該エンボステープの長手方向に沿った寸法を、収納する挿入物のその方向の寸法に対して0.5mm以内の拡張寸法に設定したものである。
【0020】
本発明の7は、本発明の2、3、4、5又は6の挿入物の投入装置において、
前記キャリヤテープ搬送手段を、前記紙層の直上の投入位置に搬送される前記エンボステープと該紙層表面との間の角度が20度以内の角度となるように構成したものである。
【0021】
本発明の8は、本発明の2、3、4、5、6又は7の挿入物の投入装置において、
前記投入位置におけるエンボステープのポケット開口部の搬送方向先端側の部位と前記紙層表面との間隔を10mm以下に設定したものである。
【0022】
本発明の9は、本発明の4、5、6、7又は8の挿入物の投入装置において、
前記剥離ナイフの剥離用先端から後端側への厚さの拡大角度を10度以下に設定したものである。
【0023】
本発明の10は、本発明の1、2、3、4、5、6、7、8又は9の挿入物の投入装置において、
前記挿入物を、ICタグインレット又はICタグとしたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の1の挿入物の投入装置によれば、紙層への挿入物の投入が正しい姿勢で、かつ任意の間隔で行われ得るため、性能の良好な所望の挿入物抄込紙を能率的に製造することができる。
【0025】
本発明の1は、前記のように、単層の紙層に挿入物を抄き込んで挿入物抄込紙を作成する抄造装置又は複数の紙層の内のいずれかの間に挿入物を抄き込んで挿入物抄込紙を作成する抄造装置のいずれにも使用する挿入物投入装置である。前者の場合は、長網又は円網シリンダを用いて抄き取られた湿紙上に挿入物を投入載置することになり、後者の場合は、同様に長網又は円網シリンダを用いて抄き取られた二以上の湿紙の内、挿入物の抄込対象である上下隣接する二つの湿紙の下方のそれの上に挿入物を投入載置することになる。
【0026】
前記挿入物は、湿紙等の紙層上に投入する際に、該挿入物の搬送速度を該紙層の搬送速度と実質的に等速度とすることにより、該挿入物を該紙層上に姿勢を崩すことなく、かつ該紙層に無用の外力を加えることなく投入することが可能となる。そのため挿入物は、紙層上に正確な姿勢で投入載置され、かつ投入位置から前後及び左右方向のいずれにも動くことがない。また紙層にダメージを与えることもない。投入される挿入物は紙層上の適切な位置に適切な姿勢で配置されることになり、安定した品質の挿入物抄込紙を得ることができることになる。
【0027】
なお、前記挿入物の前記紙層上への投入は、該挿入物を、該紙層に向かって、その上方から斜め下向きに搬送し、できるだけ該紙層の上面に接近したところで行うのが適当である。そして、前記のように、挿入物の紙層上への投入時の搬送速度は、紙層の搬送速度と実質的に等速度とするべきものである。即ち、挿入物は、以上のように、斜め下向きで搬送されるものであるが、その水平方向の速度成分を水平に搬送される該紙層の搬送速度と殆ど同一とし、一方で挿入物の垂直方向の速度成分をできるだけ少なくすることである。これによって前記のような効果が得られる。
【0028】
更に、投入時以外には、該挿入物を、投入時の搬送速度より高速度で搬送すること、投入時の搬送速度と同一速度で搬送すること、投入時の搬送速度より低速度で搬送すること及びそれらの間に一時停止することも含めて、適切な速度で搬送することにより、該挿入物の紙層上の載置間隔を所望のそれに設定できるようにしたため、特別な装置を必要とせずに、容易に湿紙上への挿入物の設置間隔を自由に設定できることになる。
【0029】
本発明の2の挿入物の投入装置によれば、前記のように、挿入物を、対象の紙層上の投入位置まで、該挿入物をポケットに所定の姿勢で収納したキャリヤテープによって、前記カバーテープ側を下向状態として、搬送し、該投入位置直前で、該カバーテープを剥離することにより、該挿入物をその姿勢のままで該紙層上に投入するものであり、更にこのとき、前記制御手段により、その挿入物の投入時(投入開始時から投入完了時の間)のキャリヤテープの搬送速度を、実質的に投入対象の紙層の搬送速度と等速度に制御するものであるため、該挿入物は姿勢を崩すことなくそのまま正確に、かつその位置から移動することなく、紙層上に投入配置することができる。また挿入物の投入によって無用の外力を加えることがないので、該紙層にダメージを与える等の問題も生じさせない。
【0030】
また、該制御手段による以上の挿入物の投入時以外のキャリヤテープの搬送速度の制御は自由であり、該紙層上への挿入物の投入間隔を所望のそれに対応させるべく、その搬送速度を自由に制御することができる。こうして該紙層上への挿入物の投入間隔は自由に設定することが可能であり、そのように自由な間隔で投入配置することができる。
【0031】
本発明の3の挿入物の投入装置によれば、前記エンボステープに定間隔でガイド穴を開口した被駆動部を付設し、この被駆動部を利用してキャリヤテープ搬送手段のスプロケットで搬送駆動するようにしたため、容易に正確な搬送速度で該キャリヤテープを搬送することが可能になり、ひいては挿入物の搬送速度が正確になり、挿入物の紙層の投入位置への正確な姿勢での搬送、その位置での投入及び正確な間隔での投入が容易に実行できるようになるものである。
【0032】
本発明の4の挿入物の投入装置によれば、剥離手段の内、キャリヤテープからカバーテープを剥離する位置の位置決め及び剥離補助をする剥離ナイフを非常に薄い構成とすることができるため、キャリヤテープからカバーテープを剥離してエンボステープのポケットから挿入物を落下させる部位(ポケットの開口部)と、落下する挿入物を載置する前記対象の紙層の投入位置直下の部分との間の間隔を一層狭くすることが可能になり、それ故、該ポケットから投入される挿入物の落下距離が短くなり、より一層その姿勢の乱れや紙層に対する無用の外力の付加が回避し易くなるものである。
【0033】
本発明の5の挿入物の投入装置によれば、エンボステープのポケットの深さを搬送対象の挿入物の最大厚さの200%以内に設定したため、該ポケット内での挿入物のガタツキが少なくなり、前記紙層への挿入物の投入の際の落下距離のバラツキを減少させることができる。その結果、挿入物の紙層上への投入位置を殆ど一定に保持することができる。またポケット内での挿入物のガタツキが無くなるので、投入時の姿勢の乱れを減少させることもできることになる。なお、該ポケットの深さを、挿入物の最大厚さの200%以内に設定する趣旨は以上のとおりであるから、その深さを該挿入物の最大厚さの150%以内にすれば、一層好ましい。120%以内にするならば更に好ましい。
【0034】
本発明の6の挿入物の投入装置によれば、エンボステープのポケットにその長さ方向のガタツキの殆どない状態で挿入物を収納保持することができるので、紙層上に該挿入物を投入する際に、予定の投入位置に対して長さ方向のバラツキをより少なくすることが可能になる。そのため、紙層上に順次載置する挿入物の間隔をより正確なものとすることができる。
【0035】
本発明の7の挿入物の投入装置によれば、前記キャリヤテープの搬送方向と前記紙層の搬送方向とは平行ではないが、それに近い状態であるので、挿入物の紙層上への投入時のキャリヤテープの搬送速度を該紙層の搬送速度と実質的に同一といって良い程度に近似するものに制御可能である。即ち、キャリヤテープの、紙層の搬送方向と平行な速度成分を該紙層の搬送速度と殆ど同一とし、他方、紙層の搬送方向と垂直の方向の速度成分を極めて小さくすることができる。そのため、前記したように、挿入物を該紙層上の正しい位置に姿勢の乱れなく載置することができることになる。また挿入物の投入によって紙層にダメージを与えることも回避できる。なお、前記キャリヤテープと該紙層表面との間の角度は、以上のような趣旨で決定すべきものであるので、15度以内に設定できれば、より好ましい。
【0036】
本発明の8の挿入物の投入装置によれば、挿入物の投入の際の落下距離が短くなるので、その姿勢の乱れを極力少なくすることが可能であり、紙層に対するダメージも殆ど生じないようにすることができる。従って挿入物の紙層上への投入が正確に行い得られることになる。
【0037】
本発明の9の挿入物の投入装置によれば、剥離ナイフの剥離用先端から折り返すカバーテープのテンションを保持するためのテンションプーリ等を設置する余裕を確保することができることになる。また、これを通じて、挿入物の投入の際の落下距離を短くすべく、前記投入位置におけるキャリヤテープのポケット開口部の搬送方向先端側の部位と前記紙層表面との間隔を狭く設定することが可能になる。
【0038】
本発明の10の挿入物の投入装置によれば、挿入物としてICタグインレット又はICタグを採用したので、ICタグインレット又はICタグを抄き込んだICタグ抄込紙を容易かつ正確に作成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】二層式円網抄紙機で抄き合わせられる下方側の湿紙上にこの実施例の挿入物の投入装置でICタグインレットを投入する状態を示す概略説明図。
【図2】(a)は実施例の挿入物の投入装置で湿紙上にICタグインレットを投入する状態を示した一部切欠断面説明図、(b)は実施例の挿入物の投入装置で湿紙上にICタグインレットを投入する状態を示す全体概略説明図。
【図3】(a)はキャリヤテープの一部切欠概略縦断面図、(b)はキャリヤテープの一部切欠平面説明図、(c)はICタグインレットの平面説明図、(d)はICタグインレットの側面説明図。
【図4】円網・長網コンビネーション抄紙機で抄き合わせられる下方側の湿紙上にこの実施例の挿入物の投入装置でICタグインレットを投入する状態を示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明を実施するための形態を、実施例に基づき、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0041】
この実施例の挿入物の投入装置Sは、図2(a)、(b)及び図3(a)、(b)に示すように、基本的に、ICタグインレット1を収納する多数のポケット2a、2a…を長さ方向に沿って定間隔で配したエンボステープ2b及び該エンボステープ2bのポケット2a、2a…の開口部を閉じるべくキャリヤ部側の該当する面に剥離自在に貼着したカバーテープ2cからなるキャリヤテープ2と、キャリヤテープ2を巻回しておく供給用リール3aと、該供給用リール3aに巻回してあるキャリヤテープ2を下方の湿紙4aのICタグインレット1の投入位置まで搬送し、ICタグインレット1を放出したキャリヤテープ2のエンボステープ2bを該投入位置の直後で折り返してエンボステープ巻取リール3bまで搬送するスプロケット3c及びその回転駆動手段を含むキャリヤテープ搬送手段と、該エンボステープ2bを巻き取るエンボステープ巻取リール3bと、前記投入位置の直前でキャリヤテープ2のカバーテープ2cを剥離する剥離ナイフ(剥離位置決め部)5a及び剥離したカバーテープ2cを巻き取るカバーテープ巻取リール5bからなる剥離手段と、キャリヤテープ搬送手段の搬送動作を制御する図示しない制御手段とで構成したものである。
【0042】
この実施例の挿入物の投入装置Sは、以上に述べたように、挿入物としてのICタグインレット1を前記湿紙4a上に投入する手段として用いるものである。
ICタグインレットは、通常、ICチップ、信号の送受信のためのアンテナコイル及びこれらを支持するフィルム支持体で構成されるが、この実施例では、フィルム支持体を用いないものを採用した。フィルム支持体を用いないことによって、湿紙4a、4b中に抄き込んだ際に空気の泡がその周囲に残ることを回避でき、更に湿紙4a上に投入する際に風圧の影響を受けにくくし、これによる姿勢の乱れを回避できる利点がある。ICタグインレット1中のICチップは、該アンテナコイルを介して外部のリーダとの間で電力の授受及び情報の交換を行う通信機能、交換した情報その他の情報及びプログラムを格納保持する記憶手段、並びに保持するプログラムに従ってデータの処理その他の演算処理を行うマイクロプロセッサを備えた要素である。このICタグインレットの場合は、保持され、或いは処理される情報は、主として、これを付する対象物を特定するための情報である。
【0043】
なお、この実施例で投入対象となっているICタグインレット1は、図3(c)、(d)に示すように、平面から見て長方形状のアンテナコイル1bとその内側に配したICチップ1aとからなり、その最長部分の長さLtは24.5mmであり、最大幅部分の幅Wtは14.8mmであり、かつ最大厚さ部分の厚さTtは0.3mmである。
【0044】
前記湿紙4aは、抄造装置の二つのワイヤーパートの一方で形成されたそれであり、その上に、この実施例の挿入物の投入装置Sで、ICタグインレット1を投入載置し、該抄造装置の他方のワイヤーパートで形成された湿紙4bをその上に重ねて抄き合わせることにより、ICタグインレット1を抄き込んだICタグインレット抄込紙を抄造しようとするものである。以上のように、この実施例の挿入物の投入装置Sは、この抄造装置内の一部で使用するものであるから、初めに、この抄造装置の概要を動作と共に説明する。
【0045】
この抄造装置では、図1に示すように、紙料が、一方及び他方の槽11a、11bの中でそれぞれ対応する一方及び他方の円網シリンダ12a、12bに供給され、それぞれの上で地合いが整えられ、脱水されて湿紙4a、4bが形成される。各湿紙4a、4bは、対応するフェルト(乃至メッシュベルト、所謂ワイヤ)13a、13bにピックアップされて搬送され、その途中で、同図に示すように、抄き合わせられ、一枚となって更に搬送される。その後は、順次、図示しないプレスパートでプレス搾水され、ドライパートで加熱乾燥され、この後、場合によっては、サイズプレスパートやキャレンダーパートを経た上で、リール類に巻き取られ、抄き合わせ紙の製造は完了となる。この実施例の挿入物の投入装置Sは、前記したように、この抄造装置で製造され、前記フェルト13aで搬送される湿紙4aの上方に配して使用されるものである。
【0046】
前記キャリヤテープ2は、図2(a)及び図3(a)、(b)に示し、更に前記したように、エンボステープ2bとそのキャリヤ部側に剥離自在に貼り合わせたカバーテープ2cとからなり、先に述べたように、該キャリヤテープ2は該キャリヤ部の側部に被駆動部を付設したものである。また該キャリヤ部は、該エンボステープ2bの長さ方向に沿って多数のポケット2a、2a…を定間隔で形成した部位であり、各ポケット2aは、この実施例では、その深さDcを0.4mmに、幅Wcを15.0mmに、キャリヤテープ2の長さ方向に沿った長さLcを24.7mmに、それぞれ設定したものである。なお、各ポケット2aは、基本的に、収納対象のICタグインレット1の形状に対応する、直方体状の空間である。また前後に隣接するポケット2a、2a間の間隔は、この実施例では、28.0mmに設定したものである。
【0047】
従って、該各ポケット2aの深さDcは、前記ICタグインレット1の厚さTtに対して150%未満の深さであり、該各ポケット2aの長さLcは、該ICタグインレット1の長さLtに対して0.5mmを越えない拡張寸法である。
【0048】
またエンボステープ2bには、前記したように、多数のポケット2a、2a…を配列したキャリヤ部の側方に被駆動部が付設してある。この被駆動部は、特に図3(b)に示すように、該キャリヤ部の側方に同様に長さ方向に沿って多数のガイド穴2d、2d…を定間隔で開口したものである。前記カバーテープ2cは、前記したように、エンボステープ2bのキャリア部側のみをカバーすべく剥離自在に貼り合わせたものである。
【0049】
また、該キャリヤテープ2を構成するエンボステープ2b及びカバーテープ2cの内、前者は導電性、後者は非導電性プラスチックフィルムで構成したものである。勿論、両者とも導電性プラスチックで構成しても良い。ICタグインレット1の静電気による損傷を回避する趣旨である。
【0050】
前記キャリヤテープ搬送手段は、前記し、かつ図2(a)、(b)に示すように、前記スプロケット3c及びこれを回転駆動する回転駆動手段を主たる構成要素としてなるものであり、前記供給用リール3a及び前記エンボステープ巻取リール3bを補助手段として用いるものである。
【0051】
前記供給用リール3aは、図2(b)に示すように、文字どおり、供給するキャリヤテープ2を巻回しておくリールであり、投入装置Sのフレームに回転自在に、かつその中心軸を水平になるように配したものである。また該供給用リール3aは交換可能にセットされるものでもある。これは、該供給用リール3aを、キャリヤテープ2を全て巻き出した後には、巻回してある他のそれと交換し、キャリヤテープ2のセットをスピーディに行えるようにする趣旨である。当然、該供給用リール3aはキャリヤテープ2を巻回するのに適する径及び周端幅を備えたものである。この実施例では、以上のように構成したが、供給用リール3aの交換を容易にし、かつ交換時間を短くする趣旨で、該供給用リール3aを二個以上並列に備える構成としても良い。
【0052】
前記エンボステープ巻取リール3bは、前記のように、カバーテープ2cを剥離し、ICタグインレット1、1…をそのポケット2a、2a…から放出した後のエンボステープ2bのみを巻き取るリールであり、前記供給用リール3aの属する、その厚さに相当する厚さの直立する板状の空間内に位置する。該エンボステープ巻取リール3bと該供給用リール3aの相互の中心軸は平行になるようにする。また該エンボステープ巻取リール3bも、該供給用リール3aと同様に、交換可能であり、エンボステープ2bをいっぱいに巻き取った後には、他の空のそれと交換できるようにしてある。当然、該エンボステープ巻取リール3bはエンボステープ2bを巻回するのに適する径及び周端幅を備えたものである。
【0053】
また該エンボステープ巻取リール3bは、図示しない回転駆動手段によって巻き取り回転動するようになっている。回転駆動手段としては、この実施例では、電動モータ、なかでも精密制御の可能なパルスモータを採用し、前記制御手段によってその回転速度を制御する。この巻取速度は、前記スプロケット3cによるキャリヤテープ2の搬送速度に対応するものとする。なお、該エンボステープ巻取リール3bと該スプロケット3cとの間には、エンボステープ2bのテンションを適切に保持するための1以上のテンションプーリ3dを配しておくものとする。
【0054】
前記スプロケット3cは、この実施例では、挿入物であるICタグインレット1の投入位置直上付近にセットして使用するものであり、前記供給用リール3a、前記エンボステープ巻取リール3b及び前記テンションプーリ3dの位置する、直立する板状空間内に位置し、かつそれらのいずれの中心軸とも平行となる中心軸を有する構成とする。該スプロケット3cの周端には、前記キャリヤテープ2のエンボステープ2bに構成した被駆動部のガイド穴2d、2d…に嵌合する駆動ピン3e、3e…が対応する角度間隔で突設してある。
【0055】
該スプロケット3cは、前記したように、図示しない回転駆動手段によって回転駆動されるようになっている。この回転駆動手段としては、この実施例では、パルスモータを採用し、前記制御手段、この実施例では、シーケンサーからなる制御回路で構成される制御手段によってその回転速度を制御する。この回転速度は、ICタグインレット1、1…の投入対象の湿紙4aの搬送速度及び該湿紙4a上へのICタグインレット1、1…の投入設置間隔と関連づけて制御する。即ち、該スプロケット3cの回転速度を、ICタグインレット1を投入する時点、より詳細には、キャリヤテープ2のいずれかのポケット2aが投入位置に進入し、該ポケット2aからの挿入物であるICタグインレット1の投入が開始する時点から投入が完了する時点(ポケット2aからのICタグインレット1の放出が開始する時点から完了する時点)までは、キャリヤテープ2の、該湿紙4aの搬送方向と平行な速度成分を該湿紙4aの搬送速度と殆ど同一となるように制御し(キャリヤテープ2の搬送速度を該湿紙4aの搬送速度と実質的に等しい速度になるように制御し)、それ以外の搬送行程では、該湿紙4a上に前記投入設置間隔でICタグインレット1、1…を投入できるように制御する。言い換えれば、直前のポケット2aのICタグインレット1の投入が完了した時点から、投入設置間隔だけ湿紙4aが搬送される間に次のポケット2aが投入位置に搬送されるように制御する。
【0056】
なお、前者の制御(キャリヤテープ2のICタグインレット1の投入時における速度制御)に関して、更に述べると、該湿紙4aと該湿紙4a直上の投入位置に向かうキャリヤテープ2との間の角度θ(図2(a)参照)をできるだけ小さく、例えば、20度以内に設定し、該湿紙4aの搬送方向と垂直方向の速度成分はできるだけ小さくするべきである。この実施例では、この角度θを15度に設定した。
【0057】
また該スプロケット3cは、図2(a)に示すように、投入対象となる湿紙4a上に、この挿入物の投入装置Sをセットした場合に、該湿紙4aの上面と、投入位置まで引き出されたキャリヤテープ2のエンボステープ2bにおけるポケット2aの開口部先端側との間隔Cを10mm以下に保持するのが好ましい。この実施例では、この間隔Cを5mmに設定した。
【0058】
前記剥離手段は、前記のように、剥離ナイフ5a及びカバーテープ巻取リール5bからなるものである。該剥離ナイフ5aは、図2(a)、(b)に示すように、先端エッジ部5cから後端に向かって僅かに厚くなる断面が三角形状で、前記キャリヤテープ2の幅を越える幅の板状部材であり、その先端エッジ部5cがICタグインレット1の投入位置直前に位置する位置関係になるように配置する。該剥離ナイフ5aは、以上の先端エッジ部5cの位置関係で、前記スプロケット3cで前記供給用リール3aから巻き出され、その間を搬送するキャリヤテープ2のカバーテープ2cに下方側から接し、かつ後端が前記カバーテープ巻取リール5b側に延長する状態に配する。また、前記先端エッジ部5cは、該カバーテープ2cをこの部位で反転させ、前記カバーテープ巻取リール5bで巻取ながら引っ張ることにより、その部位で剥離させるための手段であり、剥離位置の位置決めを行うものであるが、その位置で該カバーテープ2cをスムーズに反転させ得るように、適切な曲率半径Rを付すものとする。この実施例では、該先端エッジ部5cは、その曲率半径Rを1.5mmとしたものである。また前記三角形を形成する剥離ナイフ5aの上下の面の間の角度αは、この実施例では10度に設定した。
【0059】
前記カバーテープ巻取リール5bは、付設した回転駆動手段により、上記のように、前記キャリヤテープ2のカバーテープ2cを該剥離ナイフ5aの先端エッジ部5cで剥離反転させるべく引っ張り、これを巻き取るべく動作するものである。該カバーテープ巻取リール5bは、しかして、前記供給用リール3a、前記エンボステープ巻取リール3b及び前記スプロケット3c等の属する直立する板状空間内に位置し、それらの中心軸と平行の中心軸を有するものである。この実施例では、このように構成したが、投入装置を設置するための設置空間に制限がある場合には、供給用リール3aから巻出されるキャリヤテープ2をガイドロール等を用いて、一旦、漸進的に90度進行方向を変え、同様にガイドロール等を用いて最終的には湿紙の上方でその搬送方向に平行な搬送方向成分を有するようにキャリヤテープを搬送することとしても良い。
【0060】
また該カバーテープ巻取リール5bは、以上のように、カバーテープ2cを剥離巻取するものであり、前記スプロケット3cによって搬送されるキャリヤテープ2の搬送速度に対応して常に緩み無く、かつ該キャリヤテープ2の速さ以上の速さで、無理にカバーテープ2cを引っ張るようなことのない状態で、該カバーテープ2cの巻取動作が行われうるように、その回転駆動手段を制御する。この制御は、前記スプロケット3c及び前記エンボステープ巻取リール3bの回転駆動手段である各パルスモータの動作を制御する制御手段で行う。該カバーテープ巻取リール5bの回転駆動手段も、この実施例では、同様なパルスモータを採用した。
【0061】
なお、カバーテープ2cの途中には、カバーテープ巻取リール5bとの間で、そのテンションを維持すべく、1以上のテンションプーリ5dを配してある。
【0062】
また、水平な湿紙4aの表面と前記剥離ナイフ5aの下面との間の角度βと該剥離ナイフ5aの上下の面の間の角度αとを加えた値が、前記キャリヤテープ2と前記湿紙4aとの間の角度θである。該角度θの値が小さくなると徐々に該剥離ナイフ5aの下方を通過するカバーテープ2cが湿紙4aと平行となり、前記キャリヤテープ2のエンボステープ2bにおけるポケット2aの開口部の先端側と湿紙4aとの間の間隔Cを小さく設定するのが困難になる。この実施例では、該角度βを5度に設定した。
【0063】
前記制御手段は、既に述べたように、前記スプロケット3cの回転駆動手段であるパルスモータ、前記エンボステープ巻取リール3bの回転駆動手段であるパルスモータ及び前記カバーテープ巻取リール5bの回転駆動手段であるパルスモータを、前記のように、制御する手段である。一般に用いられるマイクロコンピュータを用いてシーケンサ回路を構成した手段である。
【0064】
従ってこの実施例の挿入物の投入装置Sによれば、これを、以上に述べたように、前記抄造装置のワイヤーパートで製造され、フェルト13aで搬送される湿紙4aの上方に配して使用すれば、該湿紙4a上へのICタグインレット1の投入が正しい姿勢で、かつ任意の間隔で行われ得るため、性能の良好な所望のICタグ抄込紙を能率的に製造することができる。
【0065】
初めに、図2(b)に示すように、ポケット2a、2a…に所定のICタグインレット1を収納したキャリヤテープ2を巻回した供給用リール3aを投入装置Sにセットし、該キャリヤテープ2の先端を引き出し、剥離ナイフ5aの上をスライドさせながら更に引き出して、スプロケット3cに掛け渡して反転させ、前記テンションプーリ3dの下を通過させて、新たにセットした空のエンボステープ巻取リール3bの巻胴に結合する。なお、該キャリヤテープ2は、該スプロケット3cに、前者のガイド穴2d、2d…を、後者の周端の駆動ピン3e、3e…に嵌合させた状態で掛け渡すものである。
【0066】
また以上のキャリヤテープ2等のセット操作の途中で、図2(a)、(b)に示すように、該キャリヤテープ2の先端が前記剥離ナイフ5aの先端エッジ部5cより前記スプロケット3c側に若干進んだところで、該キャリヤテープ2の先端側からカバーテープ2cを剥離し、該先端エッジ部5cで折り返して該剥離ナイフ5aの下を通過させ、更に前記テンションプーリ5dの上を通過させて、新たにセットしたカバーテープ巻取リール5bの巻胴に結合する。
【0067】
この後、抄造装置の動作に連動させて、この挿入物の投入装置Sの動作を開始させる。このとき、該抄造装置で製造される湿紙4aの搬送速度、該湿紙4a上へのICタグインレット1の設置間隔、キャリヤテープ2のポケット2a、2a…の隣接する前後間の間隔を前提として、前記のように、前記スプロケット3cを回転駆動するパルスモータ、前記エンボステープ巻取リール3bを回転駆動するパルスモータ及びカバーテープ巻取リール5bを回転駆動するパルスモータの回転動作を制御する。この制御は、前記した制御手段によって行う。
【0068】
前記スプロケット3cの回転動作によってキャリヤテープ2が前記供給用リール3aから巻き出され、そのポケット2aの一つが、該スプロケット3cの直下で、その搬送方向の観点で、前記剥離ナイフ5aの直後の位置である投入位置に到達すると、該剥離ナイフ5aの先端エッジ部5cでそのカバーテープ2cが剥離され、該ポケット2aに収納されているICタグインレット1が該ポケット2aから進出しつつ落下してその直下の湿紙4a上に投入載置状態となる。
【0069】
該キャリヤテープ2は、前記したように、そのポケット2aの一つが前記投入位置(前記剥離ナイフ5aの先端エッジ部5cの直後の位置)に進入し、該ポケット2aからのICタグインレット1の放出が開始した時点からその放出が完了する時点までは、その湿紙4aの搬送方向と平行な方向の速度成分が該湿紙4aの搬送速度と殆ど同一になるように制御されているため、以上のように、投入位置に進入したポケット2aから落下するICタグインレット1は、該湿紙4aと同速度で移動しながら該湿紙4a上に落下する。そのため、該湿紙4aとの間に実質的に相互に影響を与え合う力が加わらず、その姿勢を保持しつつ予定の位置に投入載置状態になることができる。
【0070】
また、このとき、前記したように、前記キャリヤテープ2は、これと湿紙4aの上面との間の角度θを15度に設定したものであるから、該ポケット2aから放出されるICタグインレット1に加わる垂直方向下向きの速度成分は微小であり、ICタグインレット1の微小重量と相まって、このときICタグインレット1を通じて湿紙4aに加わる荷重はその損傷の観点からは殆ど無視できるほどである。前記したように、該投入位置に位置するポケット2aの開口部先端側の部位と湿紙4aの上面との間の間隔Cを5mmに設定したため、該ICタグインレット1の垂直落下距離が短く、このことも同じ結果を導く理由となっている。またこのように落下距離が短いことは、ICタグインレット1の姿勢を湿紙4a上まで保持するためにも好都合となっている。
【0071】
更に、前記したように、このとき、該ICタグインレット1を収納しているポケット2aの深さは0.4mmに、幅Wcは15.0mmに、その長さLcは24.7mmに、それぞれ設定したものであり、ICタグインレット1の長さLtは24.5mmに、幅Wtは14.8mmに、厚さTtは0.3mmに構成したものであるから、該ICタグインレット1は、キャリヤテープ2のポケット2a内で、前後方向にも、幅方向にも、かつ深さ方向にも殆どガタツキが生じないため、投入位置での該ポケット2aからのICタグインレット1の放出は、該ポケット2aの位置する特定の位置から収納状態の特定の姿勢を確実に保持しつつ行われるため、前記の正確な姿勢を保持しつつ正確な位置に行われるICタグインレット1の投入は間違いなく確保されることになるものである。
【0072】
また、キャリヤテープ2は、ICタグインレット1の投入時以外の搬送行程、即ち、ポケット2aが、前記剥離ナイフ5aの先端エッジ部5cの直後の位置である投入位置に到達した後の前記一定時点間(ICタグインレット1の投入時)以外の行程では、湿紙4aへのICタグインレット1、1…の投入設置間隔に応じてその搬送速度が制御される。
【0073】
例えば、キャリヤテープ2の前後隣接するポケット2a、2a間の間隔より湿紙4aへのICタグインレット1、1…の投入設置間隔の方が広い場合は、該キャリヤテープ2は、ICタグインレット1の投入時以外の搬送行程では、該投入時より適切な低速度(一時停止も含む)で搬送されるべく制御され、逆の場合は、ICタグインレット1の投入時より適切な高速度で搬送されるべく制御される。また湿紙4aへのICタグインレット1、1…の投入間隔とキャリヤテープ2のポケット2a、2a…の間隔とが一致している場合は、ICタグインレット1の投入時のキャリヤテープ2の搬送速度と、それ以外の搬送行程の搬送速度とを同一のそれとすべく制御する。即ち、この場合は、常時、キャリヤテープ2の搬送速度を、その湿紙4aの搬送方向と同一方向の速度成分を、該湿紙4aの搬送速度とほぼ一致する速度とすべく制御する訳である。
【0074】
なお、キャリヤテープ2のポケット2a、2a間の間隔より湿紙4aへのICタグインレット1、1…の投入設置間隔の方が広い場合であっても、キャリヤテープ2の搬送速度に関して、ICタグインレット1の投入時の搬送速度とそれ以外の搬送行程における搬送速度とを、基本的に、等速度とし、次のポケット2aが投入位置に到達し、ICタグインレット1の投入直前に至ったところで、一時停止し、湿紙4aが所定の間隔分進行するのを待って再度搬送動作を開始するという態様の制御をすることも可能である。
【0075】
こうして湿紙4aへのICタグインレット1、1…の所望間隔での投入配置を正確に行うことができる。
【0076】
このとき、前記したように、キャリヤテープ2のポケット2aの長さLcをICタグインレット1の長さLtに対して0.5mmを越えない拡張寸法である24.7mmに設定したため、ポケット2aからのICタグインレット1の放出の際のその前後方向のずれを殆ど生じないようにし、湿紙4aへのICタグインレット1、1…の投入設置間隔の正確性を確保することができたものである。
【0077】
またキャリヤテープ2のポケット2aの深さDcは0.4mmであるが、これは、ICタグインレット1の厚さTtに対して150%未満の深さであり、該ポケット2aの中でのICタグインレット1の上下のガタツキが殆ど生じない。そのため、ポケット2aからのICタグインレット1の放出の際の、ICタグインレット1、1…毎の落下距離の変動が殆ど生じない。それ故、これを通じて、湿紙4aへのICタグインレット1、1…の投入設置間隔の正確性(±1mm以下)を確保することができたものである。
【0078】
こうしてこの実施例の挿入物の投入装置Sによれば、湿紙4a上へのICタグインレット1、1…の投入が、正確な姿勢で、正確な位置に行い得られ、抄造装置の引き続く動作により、ICタグインレット1、1…を抄き込んだ品質の良いICタグインレット抄込紙を製造することができることになる。
【0079】
なお、以上の実施例は、以下の抄紙条件の抄造工程中で行った。
・原料 LBKP単独 AKD 0.1%、湿潤紙力剤 0.2%、カチオン化澱粉 0.2%
・目標坪量 170g/m2 (抄速15m/min)、100g/m2 (抄速20m/min)
・抄速 20m/min、15m/min
・抄幅 1125mm
【0080】
前記実施例において、以上の目標坪量100g/m 、抄速20m/minの抄紙条件の場合に、それぞれICタグインレット1、1…の投入間隔を10cm又は35cmで行った結果、並びに目標坪量170g/m 、抄速15m/minの抄紙条件の場合に、ICタグインレット1、1…の投入間隔を35cmで行った結果を以下の表1に具体的に示す。なお、他の抄紙条件は、いずれも上記したとおりである。投入個数、抄込時間も表1に記載のとおりである。



【0081】
【表1】

【0082】
表1中の「結果」を見ると、設定投入間隔が10cmで、抄速が20m/minの場合には、投入誤差が±1mmを越えるものが一つもないことが分かる。極めて良好な投入が行われているといえる。同一抄速の20m/minで、設定投入間隔が35cmの場合はとなると、400個を投入した場合に、10個程度が±1mmの投入誤差を越えているが、±2mm以上の誤差を生じた例は2個しかない。十分有用であり、実用レベルの投入精度を有しているということができる。抄速が15m/minと少し低速になると、設定投入間隔が35cmの場合であっても、投入数400個で、3個程度が±1mmの投入誤差を越える程度となり、投入誤差±2mm以上の例は皆無である。十分高精度であるということができる。
【0083】
なお、この実施例では、ICタグインレット1、1…を湿紙4aに抄き込む例を説明したが、キャリヤテープ2のポケット2aにICタグを収納して、これを湿紙4aに抄き込む場合であっても同様に有効に行うことができる。
【0084】
図4は、上記実施例の挿入物の投入装置Sを他の例の抄造装置中に配して使用する例を示したものである。
この抄造装置では、同図に示すように、紙料が、一方では、図示しないヘッドボックスから長網21上に供給され、他方では、槽22の中で円網シリンダ23に供給され、それぞれの上で地合いが整えられ、脱水されて湿紙24a、24bが形成される。前者は長網21上を、後者は対応するフェルトにピックアップされて搬送され、その途中で、同図に示すように、抄き合わせられ、一枚となって更に搬送される。その後は、順次、図示しないプレスパートでプレス搾水され、ドライパートで加熱乾燥され、この後は、場合によっては、サイズプレスパートやキャレンダーパートを経た上で、リール類に巻き取られ、抄き合わせ紙の製造は完了となる。この実施例の挿入物の投入装置Sは、前記したように、この抄造装置で製造され、長網21上を搬送される湿紙24aの上方に配して使用され、その上にICタグインレット1、1…を所定の間隔で投入設置するものである。その動作は、先に説明したのと全く同様であるのでこれ以上の説明は省略する。
【0085】
なお、前記実施例を含めた本発明の挿入物の投入装置は、以上に例示した円網や長網を用いた抄造装置に加えて、短網や傾斜などの抄紙方式を単独で又は組み合わせた種々の構成のそれにも適用できる。紙層上に投入する態様での挿入物の投入を可能とする全ての抄造装置に於いて使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の挿入物の投入装置Sは、製紙業において、ICタグインレットその他の挿入物の抄込紙の製造の分野で有効に利用できる。
【符号の説明】
【0087】
1 ICタグインレット
1a ICチップ
1b アンテナコイル
2 キャリヤテープ
2a ポケット
2b エンボステープ
2c カバーテープ
2d ガイド穴
3a 供給用リール
3b エンボステープ巻取リール
3c スプロケット
3d エンボステープ用のテンションプーリ
3e 駆動ピン
4a、4b 湿紙
5a 剥離ナイフ(剥離位置決め部)
5b カバーテープ巻取リール
5c 先端エッジ部
5d カバーテープ用のテンションプーリ
11a 一方の槽
11b 他方の槽
12a 一方円網シリンダ
12b 他方の円網シリンダ
13a 一方のフェルト
13b 他方のフェルト
21 長網
22 槽
23 円網シリンダ
24a、24b 湿紙
S 挿入物の投入装置
Dc ポケットの深さ
Wc ポケットの幅
Lc ポケットの長さ
Lt ICタグインレットの最長部分の長さ
Wt ICタグインレットの最大幅部分の幅
Tt ICタグインレットの最大厚さ部分の厚さ
C 湿紙の上面と投入位置におけるポケット開口部の先端側との間の間隔
R 先端エッジ部の曲率半径
θ 湿紙とその直上の投入位置に向かうキャリヤテープとの間の角度
α 剥離ナイフの上下の面の間の角度
β 剥離ナイフの下面と湿紙表面との間の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入物を複数の紙層の間に抄き込んだ挿入物抄込紙又は単層の紙層に抄き込む挿入物抄込紙を作成するために、複数の紙層の内のその間に抄き込む上下二層の紙層の内の下方の紙層上に、または抄き込む単層の紙層の上に、抄込操作に先立って挿入物を投入することとした挿入物抄込紙の抄造装置において、該挿入物の投入のために使用する挿入物の投入装置であって、
搬送される投入対象紙層上への挿入物の投入を、該紙層上に姿勢の乱れを生じさせずに行うことを可能にすべく、該挿入物を該紙層の搬送速度に実質的に等しい速度で移動させつつ行い、かつ、挿入物の湿紙上への投入設置間隔を、所望の間隔に設定すべく、前記投入時以外の該挿入物の搬送速度を、該所望の間隔を得るのに適する速度で行うこととした挿入物の連続投入手段で構成した挿入物の投入装置。
【請求項2】
前記連続投入手段を、
各々挿入物を収納する複数のポケットを長さ方向に沿って定間隔で形成したエンボステープ及び該ポケットに収納した挿入物を該ポケット中に保持すべく、該エンボステープの該ポケットを形成した面に剥離可能に貼着したカバーテープからなるキャリヤテープと、
前記キャリヤテープを、これを巻回した供給用リールから前記紙層の直上の投入位置まで、前記カバーテープ側を下向きにして、引き出すキャリヤテープ搬送手段と、
前記紙層の直上の投入位置に引き出されたキャリヤテープのカバーテープを剥離する剥離位置決め部及び該カバーテープを剥離すべく巻き取るカバーテープ巻取リールからなる剥離手段と、
前記キャリヤテープ搬送手段の搬送速度を、前記投入位置直前で前記剥離手段によりカバーテープを剥離し、該投入位置で前記エンボステープのポケットからの挿入物の投入を開始する時点から前記紙層上への投入を完了させる時点までは、該キャリヤテープの速度と該紙層の搬送速度とが実質的に等速度となるように、制御し、かつ該挿入物を該紙層上に投入する時点以外の時点では、該紙層への挿入物の投入間隔を所望のそれに設定するのに適するようにすべく、制御する制御手段と、
で構成した請求項1の挿入物の投入装置。
【請求項3】
前記キャリヤテープのエンボステープを、前記ポケットを定間隔で形成したキャリヤ部に加えて、その側方に長さ方向に沿ってガイド穴を定間隔で開口した被駆動部を付設したものに構成し、
前記キャリヤテープ搬送手段を、該キャリヤテープを、該エンボステープの被駆動部のガイド穴を利用して、その下方側に引き込み、前記紙層の直上の投入位置直前で前記剥離手段によりカバーテープが剥離され、該投入位置をそれのみとなって通過したエンボステープをその直下に通過させ、反転させてその上方側からエンボステープ巻取リール側に折り返すスプロケット及び該スプロケットを回転駆動する回転駆動手段で構成した、請求項2の挿入物の投入装置。
【請求項4】
前記剥離手段を、前記紙層の直上の投入位置直前で、前記キャリヤテープの搬送方向に剥離用先端を向け、かつ該キャリヤテープのカバーテープ側の面に沿って搬送上流側に延長状態に配した剥離ナイフ及び該キャリヤテープのカバーテープを該剥離ナイフの剥離用先端で剥離して折り返した上で該キャリヤテープの搬送速さと同一速さで巻き取るカバーテープ巻取リールで構成した、請求項2又は3の挿入物の投入装置。
【請求項5】
前記エンボステープのポケットを、その深さが挿入物の最大厚さの200%以内となるように設定した、請求項2、3又は4の挿入物の投入装置。
【請求項6】
前記エンボステープのポケットの該エンボステープの長手方向に沿った寸法を、収納する挿入物のその方向の寸法に対して0.5mm以内の拡張寸法に設定した、請求項2、3、4又は5の挿入物の投入装置。
【請求項7】
前記キャリヤテープ搬送手段を、前記紙層の直上の投入位置に搬送される前記エンボステープと該紙層表面との間の角度が20度以内の角度となるように、構成した、請求項2、3、4、5又は6の挿入物の投入装置。
【請求項8】
前記投入位置におけるエンボステープのポケット開口部の搬送方向先端側の部位と前記紙層表面との間隔を10mm以下に設定した、請求項2、3、4、5、6又は7の挿入物の投入装置。
【請求項9】
前記剥離ナイフの剥離用先端から後端側への厚さの拡大角度を10度以下に設定した、請求項4、5、6、7又は8の挿入物の投入装置。
【請求項10】
前記挿入物が、ICタグインレット又はICタグである、請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9の挿入物の投入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−162884(P2011−162884A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23039(P2010−23039)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(594133858)スターエンジニアリング株式会社 (20)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【出願人】(391022382)日本通信紙株式会社 (9)
【Fターム(参考)】