説明

挿通孔の閉塞率評価システム、閉塞率評価方法及び閉塞率評価プログラム

【課題】蒸気発生器の挿通孔の閉塞率を容易に把握することができる閉塞率評価システム、閉塞率評価方法及び閉塞率評価プログラムを提供する。
【解決手段】本発明の挿通孔の閉塞率評価システムは、伝熱管と、伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、挿通孔が伝熱管が挿入された際にその周方向に形成される複数の隙間部を有する熱交換器に適用され、管支持板は長軸と短軸との比率が1.0以上2.0以下となる範囲内で3次元で楕円形状の模式図で表示され、各々の管支持板は重ならないように直列に配置され、3次元の楕円形状で表示した模式図を挿通孔の閉塞率を調査して得られた挿通孔の閉塞率の値に応じて色分けして表示する可視化処理を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿通孔の閉塞率評価システム、閉塞率評価方法及び閉塞率評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子炉プラントに用いられる蒸気発生器は、数1000本の伝熱管と、それを束ねると共に、伝熱管を通すための挿通孔が形成された複数の管支持板とを含む熱交換器である。伝熱管内を流れる原子炉からの高温高圧の一次冷却水と、伝熱管の外を流れる二次系の給水とで熱交換し、熱交換により高温になった給水は、蒸気発生器上部で蒸気となって、発電用の蒸気タービンへ送られる。
【0003】
管支持板には、伝熱管を支持すると共に給水を通流させるために、伝熱管毎に、例えば四葉型の挿通孔(BEC(Broached Egg Crater)穴)が設けられていることがある。給水には水質調整の為の薬品類が投入されており、四三酸化鉄等薬品類に含まれる成分及び水垢がBEC穴の隙間部(伝熱管の外面とBEC穴の内面とが離れている箇所)に付着し、給水の流れを阻害することもある。そこで、BEC穴の隙間部に存在するスケールにより閉塞されている割合(閉塞率)を評価し、必要に応じて洗浄等の対処を行うことが望ましい。
【0004】
従来より、BEC穴の隙間部の閉塞率は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等を用いてBEC穴を撮影して録画した画像に基づいて算出する方法(例えば、特許文献1、参照)、渦電流探傷法(ECT:Eddy Current Testing)を用いて得られる渦流探傷(ECT)信号により推定する方法が知られている。ECT信号により閉塞率を推定する方法を用いる場合、一般的にボビンコイル型の渦電流探傷プローブなどが用いられる。ボビンコイル型の渦電流探傷プローブにより検出された渦電流探傷信号から特定方向の振幅を計測し、計測した振幅に相当する推定閉塞率を評価カーブから取得する。
【0005】
蒸気発生器のBEC穴の閉塞率を評価する方法としては、まず、目視点検で実閉塞率を求めると共に、その目視点検に対応する位置(アドレス)のBEC穴の隙間部のECT波形を採取し、このECT波形から閉塞評価値を求める。なお、ここで目視点検とは、CCDカメラ等にて撮影し録画した画像を用いての点検である。本明細書では、以下同様の点検を全て目視点検と記載する。また、撮影した画像から読み取った実際の閉塞率を、以下、実閉塞率と記載している。この目視点検で計測される実閉塞率と、ECT波形による閉塞評価値とから評価カーブを予め作成する。その後、管支持板全域から任意に選択した複数のBEC穴のECT波形から閉塞評価値を算出し、さらに評価カーブを参照してBEC穴の推定閉塞率を求めている。
【0006】
また、伝熱管表面に堆積した堆積物の堆積位置とその堆積量を把握するため、伝熱管表面を模式的に可視化処理して伝熱管表面の堆積物の堆積状況を視覚的に把握する方法が提案されている(例えば、特許文献2、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4279287号公報
【特許文献2】特表2009−543094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
評価カーブを作成する際、ECT波形による閉塞評価値と目視点検による実閉塞率との関係は、BEC穴へのスケールの付き方によって異なってくることがあり、それが誤差原因となりうる虞がある。そのため、より精度の高い閉塞率の評価を行うためには、蒸気発生器の調査毎に毎回目視点検を行い、評価カーブを作り直して評価カーブの誤差を低減することが望ましい。
【0009】
しかしながら、目視点検では蒸気発生器の2次側器内の適切な位置にビデオカメラ等の点検機材を送り込む必要があるが、外部からのアクセスはマンホール等に限定され、また内部は支持板や伝熱管などにより狭隘であり、作業性が悪い。上述した従来の閉塞率を評価する方法を用いて、蒸気発生器の調査毎に毎回目視点検を行い、評価カーブを作り直す場合には、そのため多大な時間と手間を要することになる。
【0010】
また、管支持板に形成されるBEC穴の隙間部の閉塞率を評価する際に、伝熱管の軸方向に設けられる複数の管支持板毎にその平面方向におけるBEC穴の隙間部の閉塞率を表示している。そのため、各管支持板の平面方向におけるBEC穴の隙間部の閉塞率の状態と、伝熱管の軸方向に設けられる複数の各管支持板のBEC穴の隙間部の閉塞率の状態とを容易に把握することができるBEC穴の隙間部の閉塞率評価方法が求められている。
【0011】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、蒸気発生器の挿通孔の閉塞率を容易に把握することができる閉塞率評価システム、閉塞率評価方法及び閉塞率評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、伝熱管と、前記伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、前記挿通孔が前記伝熱管が挿入された際にその周方向に形成される複数の隙間部を有する熱交換器に適用され、前記管支持板は長軸と短軸との比率が1.0以上2.0以下となる範囲内で3次元で楕円形状の模式図で表示され、各々の前記管支持板は重ならないように直列に配置され、前記模式図を前記挿通孔の閉塞率を調査して得られた前記挿通孔の閉塞率の値に応じて色分けして表示する可視化処理を有することを特徴とする閉塞率評価システムである。
【0013】
第2の発明は、伝熱管と、前記伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、前記挿通孔が前記伝熱管が挿入された際にその周方向に形成される複数の隙間部を有する熱交換器に適用され、前記挿通孔を点検して求められる前記隙間部の閉塞率と、点検箇所に対応した前記隙間部の閉塞評価値とから評価カーブを作成する挿通孔の閉塞率評価システムであり、前記挿通孔の閉塞率を調査する際に、前回の前記挿通孔の閉塞率の調査時に作成した前記評価カーブを、今回の調査時の前記隙間部の閉塞率に近いものに更新する評価カーブ更新手段と、前記管支持板の前記隙間部の閉塞評価値を算出する閉塞評価値の算出手段と、更新評価カーブと算出した前記閉塞評価値とに基づいて、前記隙間部の推定閉塞率を算出する推定閉塞率の算出手段と、算出した推定閉塞率に基づいて、前記隙間部の平均閉塞率の算出と閉塞状況の可視化処理との何れか一方又は両方を行う閉塞状態把握手段と、を含むことを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システムである。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、前記隙間部の閉塞率を求めるための点検は、目視点検であることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システムである。
【0015】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、前記隙間部の閉塞評価値の算出にECT波形を用いることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システムである。
【0016】
第5の発明は、第2乃至第4の何れか1つの発明において、前記評価カーブ更新手段は、元となる評価カーブ、またはその評価カーブの算出に用いた前記隙間部の閉塞率および前記隙間部の閉塞評価値に、補足情報を追加して更新されることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システムである。
【0017】
第6の発明は、第2乃至第5の何れか1つの発明において、前記評価カーブは1個以上のパラメータを持ち、閉塞評価値を変数、推定閉塞率を出力とする1変数関数であり、
評価カーブ更新手段は下記式(1)で示される誤差量が最小になるように前記関数のパラメータを最適化計算により求めることで前回の評価カーブを更新することを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システムである。
誤差量=Σ(Y(i)−f(E(i)))2 + α・Σ(Y(j)−f(E(j)))2 ・・・(1)
Y:点検による閉塞率
E:閉塞評価値
i:前回の評価カーブの元になったデータ
f:評価カーブであり、閉塞評価値を入力変数、推定閉塞率を出力とする一変数関数
α:誤差への重み付け
j:今回の新たに得られたデータ
【0018】
第7の発明は、第1乃至第6の何れか1つの発明において、前記可視化処理は、前記隙間部の推定閉塞率の値として、前記隙間部の近傍に位置する1つ以上の前記隙間部の推定閉塞率の平均値を用いることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システムである。
【0019】
第8の発明は、第1乃至第7の何れか1つの発明において、前記可視化処理は、前記管支持板に設けられている前記隙間部の前記推定閉塞率の情報に抜けがある場合には、情報に抜けがある隙間部の近傍に位置する1つ以上の前記隙間部の推定閉塞率の値を用いて補間することを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システムである。
【0020】
第9の発明は、第1乃至第8の何れか1つの発明において、前記可視化処理は、今回までの点検から求められた前記隙間部の推定閉塞率の推移から予想される前記挿通孔の推定閉塞速度を求めることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システムである。
【0021】
第10の発明は、第9の発明において、前記推定閉塞速度と任意の点検時までの運転時間から予想される前記隙間部の閉塞率は、今回の前記隙間部の推定閉塞率に加算することで、その点検時における前記隙間部の推定閉塞率が求められることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システムである。
【0022】
第11の発明は、伝熱管と、前記伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、前記挿通孔が前記伝熱管が挿入された際にその周方向に形成される複数の隙間部を有する熱交換器に適用され、前記管支持板を長軸と短軸との比率が1.0以上2.0以下となる範囲内で楕円形状の模式図で示し、各々の前記管支持板が重ならないように直列に配置し、前記模式図を前記挿通孔の閉塞率を調査して得られた前記挿通孔の閉塞率の値に応じて色分けして表示する可視化処理を含むことを特徴とする閉塞率評価方法である。
【0023】
第12の発明は、伝熱管と、前記伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、前記挿通孔が前記伝熱管が挿入された際にその周方向に形成される複数の隙間部を有する熱交換器に適用され、前記挿通孔を点検して求められる前記隙間部の閉塞率と、点検箇所に対応した前記隙間部の閉塞評価値とから評価カーブを作成し、前記評価カーブを用いて前記隙間部の閉塞具合を評価する挿通孔の閉塞率評価方法であり、前記挿通孔の閉塞率を調査する際に、前回の前記挿通孔の閉塞率の調査時に作成した前記評価カーブを、今回の調査時の前記隙間部の閉塞率に近いものに更新する評価カーブ更新工程と、前記管支持板の前記隙間部の閉塞評価値を算出する閉塞評価値の算出工程と、算出した前記閉塞評価値と前記評価カーブとに基づいて、前記隙間部の推定閉塞率を算出する推定閉塞率の算出工程と、算出した推定閉塞率に基づいて、前記隙間部の平均閉塞率の算出と閉塞状況の可視化処理との何れか一方又は両方を行う閉塞状態把握工程と、を含むことを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法である。
【0024】
第13の発明は、第12の発明において、前記隙間部の閉塞率を求めるための点検として目視点検を用いて行うことを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法である。
【0025】
第14の発明は、第12又は第13の発明において、前記隙間部の閉塞評価値の算出にECT波形を用いることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法である。
【0026】
第15の発明は、第12乃至第14の何れか1つの発明において、前記評価カーブ更新手段は、元となる評価カーブ、またはその評価カーブの算出に用いた前記隙間部の閉塞率および前記隙間部の閉塞評価値に、補足情報を追加して更新することを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法である。
【0027】
第16の発明は、第12乃至第15の何れか1つの発明において、前記評価カーブは1個以上のパラメータを持ち、閉塞評価値を変数、推定閉塞率を出力とする1変数関数であり、評価カーブ更新手段は下記式(1)で示される誤差量が最小になるように前記関数のパラメータを最適化計算により求めることで前回の評価カーブを更新することを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法である。
誤差量=Σ(Y(i)−f(E(i)))2 + α・Σ(Y(j)−f(E(j)))2 ・・・(1)
Y:点検による閉塞率
E:閉塞評価値
i:前回の評価カーブの元になったデータ
f:評価カーブであり、閉塞評価値を入力変数、推定閉塞率を出力とする一変数関数
α:誤差への重み付け
j:今回の新たに得られたデータ
【0028】
第17の発明は、第11乃至第16の何れか1つの発明において、前記可視化処理は、前記隙間部の推定閉塞率の値として、前記隙間部の近傍に位置する1つ以上の前記隙間部の推定閉塞率の平均値を用いることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法である。
【0029】
第18の発明は、第11乃至第17の何れか1つの発明において、前記可視化処理は、前記管支持板に設けられている前記隙間部の前記推定閉塞率の情報に抜けがある場合には、情報に抜けがある隙間部の近傍に位置する1つ以上の前記隙間部の推定閉塞率の値を用いて補間することを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法である。
【0030】
第19の発明は、第11乃至第18の何れか1つの発明において、前記可視化処理は、今回までの検査から求められた推定閉塞率の推移から予想される前記挿通孔の閉塞速度を求めることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法である。
【0031】
第20の発明は、第19の発明において、前記推定閉塞速度と任意の点検時までの運転時間から予想される前記隙間部の閉塞率を、今回の前記隙間部の推定閉塞率に加算することで、その点検時における前記隙間部の推定閉塞率を求めることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法である。
【0032】
第21の発明は、伝熱管が挿入された際にその周方向に複数の隙間部が形成される挿通孔を点検して求められる前記隙間部の閉塞率を用いて前記隙間部の閉塞具合を評価する挿通孔の閉塞率評価プログラムであり、前記管支持板を長軸と短軸との比率が1.0以上2.0以下となる範囲内で楕円形状の模式図で示し、各々の前記管支持板が重ならないように直列に配置し、前記模式図を前記挿通孔の閉塞率を調査して得られた前記挿通孔の閉塞率の値に応じて色分けして表示するコンピュータに実行させることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価プログラムである。
【0033】
第22の発明は、伝熱管が挿入された際にその周方向に複数の隙間部が形成される挿通孔を点検して求められる前記隙間部の閉塞率と、点検箇所に対応した前記隙間部の閉塞評価値とから評価カーブを作成し、前記評価カーブを用いて前記隙間部の閉塞具合を評価する挿通孔の閉塞率評価プログラムであり、前記挿通孔の閉塞率を調査する際に、前回の前記挿通孔の閉塞率の調査時に作成した前記評価カーブを、今回の調査時の前記隙間部の閉塞率に近いものに更新する評価カーブ更新手段と、前記管支持板の前記隙間部の閉塞評価値を算出する閉塞評価値の算出処理と、算出した前記閉塞評価値と前記評価カーブとに基づいて、前記隙間部の推定閉塞率を算出する推定閉塞率の算出処理と、算出した推定閉塞率に基づいて、前記隙間部の平均閉塞率の算出と閉塞状況の可視化処理との何れか一方又は両方を行う閉塞状態把握処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価プログラムである。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、蒸気発生器の挿通孔の閉塞率を容易に把握することができる。
即ち、本発明は、挿通孔の長軸と短軸との比率を所定の範囲内として管支持板を楕円形状の図に模式的に示して各々の管支持板が重ならないように直列に配置し、管支持板には挿通孔の閉塞率を調査して得られた挿通孔の閉塞率の閉塞値に応じて色分けして管支持板の楕円形の図を可視化して表示するため、伝熱管の軸方向に設けられる複数の管支持板の平面方向における挿通孔の隙間部の閉塞率の状態を同時に容易に把握することができる。
また、本発明は、挿通孔の隙間部の推定閉塞率を評価する際に、前回以前の挿通孔の隙間部の推定閉塞率を評価する際に求めた評価カーブをベースに、補間情報を追加することで最新の状態に近い状態に予め評価カーブを更新してから、検査対象とする挿通孔の推定閉塞率を算出することため、評価カーブ更新のためのデータの採取に要する工程を少なくすることができ、少ない手間で容易に蒸気発生器の挿通孔の閉塞率評価を実施することができる。このため、挿通孔の隙間部の閉塞評価に要する費用を軽減することができると共に、閉塞評価の頻度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、原子力プラントの蒸気発生器の構成を示す説明図である。
【図2】図2は、伝熱管の軸方向から見た時の管支持板の孔の断面図である。
【図3】図3は、伝熱管を挿入した時の管支持板の孔の断面図である。
【図4】図4は、処理装置が備える機能を展開して示したブロック図である。
【図5】図5は、本実施例に係るBEC穴の閉塞率評価方法の一例を示す図である。
【図6】図6は、N回目におけるBEC穴の隙間部の閉塞率を評価する説明図である。
【図7】図7は、撮影録画の一例を示す図である。
【図8】図8は、ECT波形の一例を示す図である。
【図9】図9は、ECT波形の振幅の求め方の説明図である。
【図10】図10は、ECT波形の振幅の求め方の説明図である。
【図11】図11は、評価カーブの一例を示す図である。
【図12】図12は、目視点検及びECT波形を組み合わせて評価カーブを構成する一例を示す説明図である。
【図13】図13は、BEC穴の隙間部をECT検査した各位置のECT信号の一例を示す図である。
【図14】図14は、運転時間と閉塞率との関係を示す図である。
【図15】図15は、各管支持板を3次元表示した一例を示す図である。
【図16】図16は、軸比率を変換して各管支持板を3次元表示した一例を示す図である。
【図17】図17は、軸比率を変換して各管支持板を3次元表示した一例を示す図である。
【図18】図18は、軸比率を変換して各管支持板を3次元表示した一例を示す図である。
【図19】図19は、各管支持板のBEC穴の閉塞割合を3次元表示した他の一例を示す図である。
【図20】図20は、ドロネー三角形分割手法を用いた推定閉塞率の補間方法を示す図である。
【図21】図21は、図19の部分拡大図である。
【図22】図22は、色素を加えた図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0037】
本発明による実施例1に係る挿通孔(BEC穴)の閉塞率評価システムについて、図面を参照しつつ説明する。本実施例は、原子力発電プラントに適用される蒸気発生器の管支持板の伝熱管を挿通させるBEC穴に伝熱管が挿入された際にBEC穴の周方向に形成される複数の隙間部の閉塞率を評価するものである。図1は、原子力プラントの蒸気発生器の構成を示す説明図であり、図2は、伝熱管の軸方向から見た時の管支持板の断面図であり、図3は、伝熱管を挿入した時の管支持板の断面図である。
【0038】
<蒸気発生器>
蒸気発生器10は、胴部11と、複数の伝熱管12と、気水分離器13と、湿分分離器14とを有する。胴部11は、密閉された中空の略円筒形状であり、長手方向を鉛直方向に向けて配置される。胴部11は、上部胴11aに対して下部胴11bが若干小径とされている。胴部11の下部胴11b内には、胴部11の内壁面と所定間隔をもって配置された円筒形状を成す管群外筒15が設けられている。この管群外筒15は、その下端部が、胴部11の下部胴11b内の下方に配置された管板16まで延設されている。管群外筒15内には、複数の伝熱管12からなる伝熱管群が設けられている。
【0039】
各伝熱管12は逆U字形状をなし、U字形状の円弧部を上方に向けて配置され、下方に向く両端部が管板16に支持されると共に、中間部が複数の管支持板17により支持されている。伝熱管12は各層の管支持板17(17A〜17G)を挿通して、上方に逆U字状に湾曲して配設されている。
【0040】
管群外筒15内には、複数の管支持板17が所定間隔を隔てて配列される。これらの管支持板17は伝熱管12を挿通する複数のBEC穴21を有する多孔板となっている。BEC穴21は四つ葉形状であり、管支持板17に穿設されている。各伝熱管12は管支持板17のBEC穴21を貫通している。管支持板17A〜17GのBEC穴21に伝熱管12を挿通させることでBEC穴21の外周面には、図3に示すような隙間部22が形成され、給水を通流させる。最上段の管支持板17Gを検査する際、例えば、検査装置に備えられる目視点検用カメラなどは気水分離器13の上側のマンホール側から搬入される。また、管支持板17の中央部には各層の管支持板17の上下方向の同位置に、胴部11の直径方向に長円形の1連のフロースロットが穿設されている。また、胴部11には下層の管支持板17の直上に直径方向に対峙して1対のハンドホール25が設けられている。検査装置に備えられる目視点検用カメラなどはこのハンドホール25から蒸気発生器10内に搬入するようにしてもよい。
【0041】
また、胴部11は、その下端部に水室27を有する。水室27は、内部に管板16及び仕切り板30により区画されてなる一対の入室31と出室32を有する。入室31には、各伝熱管12の一端部が連通され、出室32には、各伝熱管12の他端部が連通されている。また、入室31には、胴部11の外部に通じる入口ノズル33が形成され、出室32には、胴部11の外部に通じる出口ノズル34が形成されている。そして、入口ノズル33には、加圧水型原子炉側から一次冷却材(水)35が送られる冷却水配管が連結される。出口ノズル34には、熱交換された後の一次冷却材35を加圧水型原子炉側に送る冷却水配管が連結される。一次冷却材35は入口ノズル33(出口ノズル34)を介して加圧水型原子炉側に供給される。
【0042】
気水分離器13、湿分分離器14は、胴部11の上部胴11a内に設けられている。気水分離器13は、給水を蒸気と熱水とに分離する装置である。この熱水は、管板16方向へ回流し再循環する二次冷却材(水)37となる。湿分分離器14は、分離された蒸気の湿分を除去して乾き蒸気に近い状態とする装置である。
【0043】
気水分離器13と伝熱管群との間には、外部から胴部11内に二次冷却材(水)37の給水を行う給水管38が挿入されている。さらに、胴部11の上部胴11aには、蒸気排出口41が形成されている。また、胴部11の下部胴11b内には、給水管38からこの胴部11内に給水された二次冷却材37を、胴部11と管群外筒15との間を流下させて管板16にて折り返させ、伝熱管群に沿って上昇させる給水路42が設けられている。なお、蒸気排出口41には、タービンに蒸気を送る冷却水配管が連結され、給水管38には、タービンで使用された蒸気が復水器で冷却された二次冷却材37を供給するための冷却水配管が連結される。
【0044】
この蒸気発生器10では、加圧水型原子炉で加熱された一次冷却材35が入口ノズル33から入室31に流入し、多数の伝熱管12内を通って循環して出室32に入り、出口ノズル34から外部に排出される。また、復水器23で冷却された二次冷却材37は、給水管38に送られ、管群外筒15内の給水路42を通って伝熱管群に沿って上昇する。このとき、管群外筒15内で、高圧高温の一次冷却材35と二次冷却材37との間で熱交換が行われて、二次冷却材37が加熱される。そして、冷やされた一次冷却材35は出室32から加圧水型原子炉に戻される。また、高圧高温の一次冷却材35と熱交換を行った二次冷却材37は、胴部11内を上昇し、気水分離器13で蒸気と熱水とに分離される。そして、分離された蒸気は、湿分分離器14で湿分を除去されてからタービンに供給される。
【0045】
蒸気発生器10のBEC穴21の隙間部22の閉塞率を評価する際、目視点検を行う場合には検査装置43に備えられる目視点検用カメラなどが気水分離器13の上側のマンホール側、すなわち2次冷却材(水)37の供給側から搬入される。また、ECT検査を行う場合には案内装置、挿入装置に備えられる渦電流探傷(ECT)プローブが管板16の底部、すなわち1次冷却材(水)35の供給側から挿入搬入される。また、目視点検用カメラなどにより撮影されたBEC穴21の隙間部22の画像は処理装置50に転送されて処理される。また、ECT検査により得られた渦電流探傷信号(ECT信号)は他の処理装置に転送されて処理され、ECT波形を得る。
【0046】
蒸気発生器10のBEC穴21の隙間部22の閉塞率を評価する際には、処理装置50を用いて制御される。処理装置50は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、BEC穴21の隙間部22の推定閉塞率を評価するための本実施例に係るBEC穴21の閉塞率評価プログラムを記憶した記録媒体(記録部)から、プログラムを読み取り、本発明に係るBEC穴21の閉塞率評価システムの算出装置として作動する。図4は、処理装置50が備える機能を展開して示したブロック図である。図4に示すように、処理装置50は、制御部51と、記憶部52と、表示部53と、入力部54と、出力部55と、を有する。
【0047】
制御部51は、CPU(中央演算処理装置)であり、上記各部と接続され、処理装置50全体を制御する。例えば、BEC穴21の隙間部22を目視点検する際、目視点検用カメラを蒸気発生器10の外部から遠隔操作して、目視点検用カメラで撮像する。制御部51は、目視点検用カメラにより撮像した画像を検査装置43から取得して記録部52に記録する。
【0048】
また、BEC穴21の閉塞評価値としてECT検査して得られるECT波形を用いる場合、蒸気発生器10の外部からECTプローブを遠隔操作してECTプローブで得られたECT信号を他の処理装置に伝達し、ECT波形を算出する。
【0049】
制御部51は、ECT検査により得られたECT波形を他の処理装置から取得して記録部52に記録する。また、制御部51は、記憶部52に記録された所定のプログラムを読み込んで、目視点検用カメラで撮像した画像とECT検査により得られたECT波形とに基づいて評価カーブを作成したり、BEC穴21の推定閉塞率算出、平均閉塞率の算出を実行する。
【0050】
記録部52は、目視点検用カメラで撮像した画像、ECT検査で得られるECT波形を記録すると共に、撮像した画像を記憶する。記録部52は、後述する本実施例に係るBEC穴21の閉塞率評価システムを用いてBEC穴21の閉塞率評価方法に用いられるプログラムを記憶している。記録部52は、検査処理プログラム61と、評価カーブの作成プログラム62と、評価カーブの更新プログラム63と、閉塞評価値の算出プログラム64と、推定閉塞率の算出プログラム65と、閉塞状態の把握プログラム66とを収納している。また、閉塞状態の把握プログラム66には、平均閉塞率の算出プログラム66−1、閉塞状況の可視化プログラム66−2とが収納されている。
【0051】
表示部53は、目視点検用カメラで撮像している画像、作成した評価カーブ、算出された推定閉塞率、平均閉塞率などを表示する。また、表示部53は、画像処理部で画像処理した後の画像や各種の情報データなどを表示する。
【0052】
入力部54は、目視点検用カメラを操作するための検査装置43を制御するための各種情報データを入力する。入力部54は、目視点検用カメラで取得した画像データ、ECT検査で取得したECT波形などのデータ、画像処理部で画像処理した後の画像データなどを読み取る。
【0053】
出力部55は、記録部52や目視点検用カメラを制御する検査装置43を制御するための各種情報データの出力を行う。出力部55は、BEC穴21の隙間部22の閉塞率の算出結果を、記録媒体又はプリンタに出力したり、目視点検用カメラで取得した画像データ、ECT検査で得られたECT波形などのデータ、画像処理部で画像処理した後の画像データなどを外部の装置に送信したりする。
【0054】
<BEC穴の閉塞率評価方法>
本実施例に係るBEC穴の閉塞率評価システムを用いてBEC穴の閉塞率評価方法について、図面を参照しつつ説明する。図5は、本実施例に係るBEC穴の閉塞率評価方法の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、本実施例に係るBEC穴の閉塞率評価方法は、以下の工程を含む。なお、本実施例において、Nは1以上の整数を表す。
(A) N回目の目視点検を行うと共に、ECT信号採取を行う検査工程(ステップS11)
(B) 目視点検して求められるBEC穴21の隙間部22の実閉塞率と、目視点検箇所に対応した隙間部22のECT信号から閉塞評価値を求め、実閉塞率と閉塞評価値とから評価カーブ(ベース評価カーブ)を作製するベース評価カーブの作成工程(ステップS12)
(C) 所定の位置のBEC穴21のECT波形から隙間部22の閉塞評価値を算出する閉塞評価値の算出工程(ステップS13)
(D) ベース評価カーブと算出した閉塞評価値に基づいて、隙間部22の推定閉塞率を算出する推定閉塞率の算出工程(ステップS14)
(E) 算出した推定閉塞率に基づいて、BEC穴21の閉塞状態を把握する閉塞状態把握工程(ステップS15)
(F) N+1回目以降にBEC穴21の閉塞率を調査する際に、N回目のBEC穴21の閉塞率の調査時に作成したベース評価カーブを、N+1回目以降の調査時の検査対象の隙間部22の閉塞率に近いものに更新する評価カーブ更新工程(ステップS16)
(G) 管支持板17(17A〜17G)のBEC穴21のECT波形から隙間部22の閉塞評価値を算出する閉塞評価値の算出工程(ステップS17)
(H) 更新評価カーブと算出した閉塞評価値に基づいて、隙間部22の推定閉塞率を算出する推定閉塞率の算出工程(ステップS18)
(I) 算出した推定閉塞率に基づいて、BEC穴21の閉塞状態を把握する閉塞状態把握工程(ステップS19)
【0055】
[N回目の検査]
(検査工程:ステップS11)
図6は、N回目におけるBEC穴21の隙間部22の閉塞率を評価する説明図である。図5、6に示すように、N回目の検査の際には、まず目視点検を行うと共に、ECT検査を行う(ステップS11)。目視点検は、気水分離器13の上側のマンホール側、すなわち2次冷却材(水)37の供給側から目視点検用カメラを挿入し、最上段の管支持板17Gの所定範囲の任意に選択したBEC穴21の隙間部22を撮影して録画し、録画した画像に基づき隙間部22の閉塞率を求める。具体的には、制御部51が記録部52の検査処理プログラム61を読み込んで実行することにより実現される。
【0056】
隙間部22の閉塞率は、BEC穴21を伝熱管12の軸方向から見たときの管支持板17(17A〜17G)と伝熱管12の外面との間に形成される隙間部22のうち、付着物がついている面積と隙間部22全体の面積の面積比である。図7は、撮影録画の一例を示す図である。図7に示すように、運転初期の初期開口面積S1と、運転開始から所定期間経過後の検査時の閉塞部開口面積S2とを求め、下記式(1)のように、初期開口面積S1と閉塞部開口面積S2との差を初期開口面積S1で除した値を閉塞率として求める。
閉塞率(%)=((初期開口面積S1−閉塞部開口面積S2)/初期開口面積S1)×100
【0057】
目視点検時における隙間部22の閉塞率とは、伝熱管12が挿入されたBEC穴21内に形成される4つの隙間部22の各々の隙間部22の閉塞率をいう。但し、本実施例のように、BEC穴21の隙間部22をECT検査した場合に、BEC穴21内に形成される4つの隙間部22の閉塞割合をBEC穴21の隙間部22の閉塞率としている場合には、目視点検時により得られる隙間部22の閉塞率も同様にBEC穴21内に形成される4つの隙間部22の閉塞割合を隙間部22の閉塞率とする。
【0058】
渦電流探傷法(ECT)を用いてECT波形を採取するECT検査では、一般的にボビンコイル型のECTプローブなどが用いられる。図8は、ECT波形の一例を示す図である。ボビンコイル型のECTプローブによりBEC穴21の隙間部22のECT信号を検出し、図8に示すようなECT波形を得る。この得られたECT波形から閉塞評価値を求める。例えば特定方向の振幅αを計測し、計測した振幅αに相当するECT電圧を閉塞評価値とする。BEC穴21の隙間部22が導電性物質であるスケールにより塞がれると、渦電流が伝熱管だけでなくスケールにも流れることで渦電流の流れが変化し、ECT信号から得られるECT波形の振幅などが変化する。本実施例では、このECT波形の振幅からECT電圧を取得している。
【0059】
ECT検査時における隙間部22の閉塞率とは、伝熱管12が挿入されたBEC穴21内に形成される4つの隙間部22の隙間割合を隙間部22の閉塞率をいう。
【0060】
閉塞評価値の求め方としては、図8のように特定方向の振幅を計測する方法の他に、例えば、図9に示すように、リサージュ波形(計測信号の実数成分を横軸、虚数成分を縦軸として計測信号を表示した波形)の最も遠い2点間の距離を振幅とする方法、図10に示すように、計測したくない要因(例えば、管支持板)の信号の方向を求め、その方向に直交する方向の振輻を採用する方法、基本信号を減算した信号における振幅を採用する方法などが挙げられる。またECT波形から読み取れる複数の振幅値を加重平均等で組み合わせて閉塞評価値とする方法も挙げられる。
【0061】
また、本実施例では、閉塞評価値の算出にECT検査により得られるECT波形を用いているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、BEC穴21の閉塞評価値となるものであればよく、例えば、垂直探傷の超音波検査でスケール厚さを計測する方法などが挙げられる。
【0062】
また、目視点検は上記のように装置搬入・アクセス性等の制約が大きい上、作業の手間がかかることから、実閉塞率と相関が高くより作業性が良い手法があれば目視点検の代替として閉塞率の算出方法として利用することができる。
【0063】
(ベース評価カーブの作成工程:ステップS12)
目視点検して求められるBEC穴21の隙間部22の実閉塞率と、目視点検に対応した箇所のECT波形から求められた閉塞評価値とに基づいて評価カーブ(ベース評価カーブ)を作製する(ステップS12)。具体的には、制御部51が記録部52の評価カーブの作成プログラム62を読み込んで実行することにより実現される。
【0064】
なお、本実施例では、評価カーブは、目視点検により求められるBEC穴21の隙間部22の実閉塞率と、目視点検に対応した箇所のECT波形から求められた閉塞評価値とに基づいて作成されているため、目視点検時により得られる隙間部22の実閉塞率は、BEC穴21内に形成される4つの隙間部22の閉塞割合を隙間部22の閉塞率としている。
【0065】
図11は、評価カーブの一例を示す図であり、図12は、目視点検及びECT波形から求められる閉塞評価値を組み合わせて評価カーブを構成する一例を示す説明図である。図11、12に示すように、目視点検及び目視点検に対応したECT波形により得られた閉塞評価値から評価カーブを作成する。評価カーブ(ベース評価カーブ)は、例えば下記式のように表すことができる。
【0066】
Z(i)=f(E(i))=a・E(i)+b ・・・(1)
Z(i):隙間部の推定閉塞率
f:評価カーブであり、閉塞評価値を入力変数、推定閉塞率を出力とする一変数関数
a:評価カーブの傾き
E(i):ECT波形から求められた閉塞評価値
b:評価カーブの切片
【0067】
本実施例では、閉塞評価値の算出にECT波形から算出した値を用いているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、BEC穴21の閉塞評価値となるものであればよい。
【0068】
(閉塞評価値の算出工程:ステップS13)
所定の位置のBEC穴21の隙間部22の閉塞評価値を算出する(ステップS13)。本実施例では、閉塞評価値としてECT波形の振幅(例えば、図8中の振幅α)の値を用いる。定期検査の際、伝熱管の健全性確認のため、全伝熱管のECT波形を採取している。このECT波形の中から必要な箇所のECT波形をそのまま閉塞評価値に利用することで、改めてECT波形を採取する手間を削減できる。評価に利用する位置(アドレス)は蒸気発生器全体の閉塞状況が把握しやすいように管支持板17G全域から適宜選定される。
【0069】
また、本実施例では、閉塞評価値の算出にECT波形から算出した値を用いているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、BEC穴21の閉塞評価値となるものであればよい。
【0070】
(推定閉塞率の算出工程:ステップS14)
閉塞評価値の算出工程(ステップS13)でECT波形に基づいて算出した閉塞評価値から、図11に示すようなベース評価カーブを用いて、各位置(アドレス)のBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率を算出する(ステップS14)。具体的には、制御部51が記録部52の推定閉塞率の算出プログラム65を読み込んで実行することにより実現される。各位置(アドレス)の隙間部22の推定閉塞率は、メモリやファイル等に保存しておく。なお、図6に示すように、ステップS13から出力される閉塞評価値は一旦ファイルやメモリ等に保存されるようになっている。これによりステップS11で目視点検及びECT波形データの追加や、あるいは不適切なデータの除去等の理由で評価カーブが再計算され変更になった際にも、閉塞評価値を再計算することなく推定閉塞率を算出することができる。
【0071】
(閉塞状態把握工程:ステップS15)
算出した推定閉塞率に基づいて、ECT検査した各位置(アドレス)のBEC穴21の隙間部22の閉塞状態を把握する(ステップS15)。BEC穴21の閉塞状態として、本実施例では、BEC穴21の平均閉塞率の算出(ステップS15−1)、又はBEC穴21の閉塞状況を可視化する可視化処理(ステップS15−2)を行う。
【0072】
(平均閉塞率の算出:ステップS15−1)
ステップS14で算出された推定閉塞率の値を平均して平均閉塞率を求める。平均閉塞率は、各伝熱管のBEC穴21の4つの隙間部22の推定閉塞率の値の平均でもよいし、BEC穴21の4つの隙間部22のうちの複数の推定閉塞率の値の平均でもよい。また、ステップS14で算出した全ての推定閉塞率の値を用いて複数の管支持板17の平均閉塞率を求めてもよい、あるいは各管支持板17毎に推定閉塞率の値の平均を求め、各管支持板17毎の平均閉塞率を求めてもよい。具体的には、制御部51が記録部52の閉塞状態の把握プログラム66の平均閉塞率の算出プログラム66−1を読み込んで実行することにより実現される。
【0073】
(閉塞状況の可視化処理:ステップS15−2)
可視化処理は、各管支持板17A〜17GのBEC穴21の推定閉塞率に応じて色分けして表示する。具体的には、制御部51が記録部52の閉塞状態の把握プログラム66の閉塞状況の可視化プログラム66−2を読み込んで実行することにより実現される。
【0074】
(3次元可視化)
可視化処理は、各管支持板17A〜17Gを3次元に変換して3次元的な可視化を行うことができる。各管支持板17A〜17Gを支持板の長軸と短軸との比率を所定の範囲内として楕円形状の模式図として、各管支持板17A〜17Gが重ならないように直列に配置して表示する。この3次元表示した模式図を、各管支持板17A〜17GのBEC穴21の推定閉塞率に応じて色分けして表示することにより、管支持板17A〜17Gにおける各BEC穴21の閉塞具合を3次元表示できる。
【0075】
各管支持板17A〜17Gを3次元表示した一例を図15に示す。図15に示すように、3次元表示した模式図は各々の管支持板17が重ならないように直列に配置され、各管支持板17A〜17GのBEC穴21の推定閉塞率は、そのBEC穴21の推定閉塞率の値に応じて色分けして表示される。これにより、各管支持板17A〜17GのBEC穴21の推定閉塞率の分布を容易に把握できるため、蒸気発生器10全体の状況を容易に把握することができる。
【0076】
各管支持板17A〜17Gを3次元表示する際には、BEC穴21の長軸と短軸との比率は1.0以上2.0以下の範囲内とし、特に黄金比(1.62)であることが好ましい。図15は、楕円の長軸と短軸の軸比率を1.62:1として3次元表示したものである。楕円の長軸と短軸の軸比率がこの軸比率の場合は、蒸気発生器10の管支持板17A〜17Gにおける3次元の空間関係を維持したまま、管支持板17A〜17G全面の状態を確認できる。
【0077】
図16〜図18は、各管支持板のBEC穴の閉塞割合を3次元表示した他の一例を示す図である。図16に示すように楕円の長軸と短軸の軸比率が1.2:1の場合、図17に示すように楕円の長軸と短軸の軸比率が2:1の場合には、直列に配置した各管支持板17A〜17GのBEC穴21の推定閉塞率の分布を容易に把握でき、蒸気発生器10全体の状況を容易に把握することができる。一方、図18に示すように楕円の長軸と短軸の軸比率は3:1の場合には、楕円の面積が小さくなり、各管支持板17A〜17Gの各BEC穴21の表示が過密になるため、直列に配置した各管支持板17A〜17GのBEC穴21の推定閉塞率の分布は把握しにくく、蒸気発生器10全体の状況を容易に把握することは困難である。よって、楕円の長軸と短軸の軸比率が2.0より大きいと、楕円の面積が小さくなり、各管支持板17A〜17Gの各BEC穴21の表示が過密になる。また、軸比率が1.0より小さいと、縦の楕円となるため管支持板17A〜17Gとして認識し難くなり、各管支持板17A〜17GのBEC穴21を把握しにくくなる。
【0078】
また、3次元的な可視化を行う場合、図15〜図18に示すように、各管支持板17A〜17Gを縦に複数配列する方法に限定されるものではないが、各管支持板17A〜17Gを3次元表示してBEC穴21の推定閉塞率の分布を把握し、蒸気発生器10全体の状況を容易に把握するためには、各管支持板17A〜17Gが重ならないように直列に配置するのが好ましい。図19は、各管支持板17A〜17GのBEC穴21の閉塞割合を3次元表示した他の一例を示す図である。図19に示すように、各管支持板17A〜17GでECT検査した各位置(アドレス)におけるBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率に基づいて、管支持板17A〜17GのBEC穴21の隙間部22の閉塞具合を3次元表示した図を斜めに表示すると、図17のように、各管支持板17A〜17Gの断面における閉塞状況を視覚的に容易に把握するのは困難である。
【0079】
よって、各管支持板17A〜17Gを3次元に変換した図で表示する場合、各管支持板17A〜17Gの断面をBEC穴21の長軸と短軸との比率を所定の範囲内として楕円形状の模式図として、各管支持板17A〜17Gが重ならないように直列に配置し、この管支持板17A〜17Gを各管支持板17A〜17GのBEC穴21の推定閉塞率に応じて色分けして表示することで、直感的なイメージが蒸気発生器の実際の設置状況に近づくことから、各管支持板17A〜17Gの断面における閉塞状況を同時に容易に把握することができる。
【0080】
(推定閉塞率の平滑処理)
可視化処理(S15−2)する際には、管支持板17A〜17Gの各位置(アドレス)の各BEC穴21の隙間部22の推定閉塞率として、同じ管支持板内の近傍に位置(アドレス)する隙間部22の推定閉塞率の平均値で用いて、表示するようにしてもよい。各管支持板17A〜17GでECT検査した各位置(アドレス)におけるBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率のばらつきが大きい場合でも、平均値を用いることでムラを小さく抑えられるため、各管支持板17A〜17Gでの閉塞具合の傾向が把握しやすくなる。
【0081】
(推定閉塞率の補間)
可視化処理(S15−2)する際には、推定閉塞率が算出されていない位置(アドレス)におけるBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率の値を、同じ管支持板の推定閉塞率が算出されている近傍のBEC穴21の隙間部22の位置(アドレス)の推定閉塞率の値を利用して補間して算出し、可視化して表示するようにしてもよい。これにより、処理時間を短縮するためにBEC穴21の隙間部22の限定的な位置(アドレス)のみの推定閉塞率を算出している場合、あるいは何らかの制約によるBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率の算出ができない位置(アドレス)がある場合、すなわちBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率の値の抜けがある場合でも、管支持板17A〜17GのBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率の連続的に可視化して表示することが可能となり、管支持板17A〜17G全体のBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率の全体の傾向を容易に把握することができる。
【0082】
補間手法としては、例えば、ドロネー三角形分割(Delaunay Triangulation)手法を用いる方法などが挙げられる。ドロネー三角形分割手法とは、ポリゴンをその構成点を頂点とする複数の三角形に分割する手法である。BEC穴21の隙間部22の推定閉塞率を算出した各伝熱管の位置を各頂点とする。三角形に分割した後、各頂点の推定閉塞率の値を用いて、三角形内部及び各辺の値を線形補間等により算出する。図19は、ドロネー三角形分割を示す図であり、図20は、図19の部分拡大図であり、図21は、図19を色素化した図である。図19〜図21に示すように、管支持板17A〜17Gの各位置(アドレス)におけるBEC穴21の推定閉塞率の傾向を容易に把握することができる。
【0083】
(閉塞速度分布マップ)
可視化処理(S15−2)する際には、管支持板17A〜17Gにおける各管位置(アドレス)におけるBEC穴21の隙間部22のN回目までの推定閉塞率の値から最小二乗法の近似直線を導き、近似直線の傾きをBEC穴21の隙間部22が閉塞する推定閉塞速度とみなす。近似直線の傾きから推定閉塞速度を求めることで、BEC穴21の隙間部22の推定閉塞率の傾向を求めることができる。なお、この場合、少なくとも2回は定期検査していることが必要である。
【0084】
また、可視化処理する際に、最小二乗法による近似直線の傾きから任意の点検時までの運転時間から予想されるBEC穴21の隙間部22の閉塞速度を推定し、このBEC穴21の隙間部22の閉塞速度を現在のBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率に加算することで、その点検時におけるBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率を求めることができる。これにより、管支持板17A〜17Gの各位置(アドレス)におけるBEC穴21の推定閉塞率の傾向を容易に把握することができる。
【0085】
この求められたBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率をカラー化して表示することでカラー管支持板を提示することができる。これにより、管支持板17A〜17Gの各位置(アドレス)におけるBEC穴21の推定閉塞率の傾向を視覚的に更に容易に把握することができる。
【0086】
また、管支持板17A〜17Gの各位置(アドレス)ごとのBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率の近似直線による傾きを導出した後、蒸気発生器10ごとに平均することで、各蒸気発生器10毎の閉塞速度を求めることができる。
【0087】
また、BEC穴21の閉塞の進展速度をより容易に把握し易くするため、推定閉塞率の可視化処理と共に、管支持板17A〜17Gの各位置におけるBEC穴21の隙間部22の閉塞速度の分布マップを表示するようにしてもよい。これにより、閉塞具合の進展速度の分布を容易に把握することができるため、洗浄などの実施時期の一指標として提示するために用いることができる。
【0088】
[N+1回目以降の検査]
N+1回目以降の検査において、N回目の検査に用いた評価カーブを再利用して最新の状態に更新する。
【0089】
(評価カーブ更新工程:ステップS16)
N+1回目以降にBEC穴21の閉塞率を検査する際に、評価カーブを最新の状態に近いものに更新する(ステップS16)。上述の検査工程(ステップS11)と同様、隙間部22の閉塞率を評価する。N+1回目の検査においては、管支持板17A〜17Gの特定の領域のBEC穴21のみを目視点検を行うと共にECT波形採取を行い、目視点検した領域の隙間部22の実閉塞率を算出すると共に、ECT波形より閉塞評価値を算出する。具体的には、制御部51が記録部52の評価カーブの更新プログラム63を読み込んで実行することにより実現される。
【0090】
目視点検により得られた特定の領域の隙間部22の実閉塞率と、目視点検に対応する位置(アドレス)のECT波形から閉塞評価値を求め、下記式(2)の誤差量が最小になるように最小二乗法を用いて評価式のパラメータ値を算出することで評価カーブを更新する。N回目の検査で得られた実閉塞率と閉塞評価値の組み合わせのデータに対して、補間情報としてN+1回目以降に新たに得た実閉塞率と閉塞評価値の組み合わせのデータの誤差量を重く見るように最小二乗法を行うことで、ベースとなる評価カーブの基本的な情報は維持しつつ、新しいデータを反映して評価カーブを更新する。評価カーブを新たに更新する際には、新たに得られた目視点検での実閉塞率、ECT波形から得られた閉塞評価値の組み合わせデータの影響が大きくなればよいため、下記式(2)のαは、1よりも大きければよいが、新たに得られたデータの影響が大きすぎると、ベースとなる評価カーブの影響が小さくなる。αの値は、過去の複数回の目視点検と閉塞評価値データを用いて模擬的に計算し、妥当な値を適宜決定する。また、更新した評価カーブ(更新評価カーブ)は、メモリやファイル等に保存しておく。
【0091】
なお、評価カーブの更新を行う方法としては、上述のような統計的な手法の他に、ニューラルネットや遺伝子アルゴリズムなどの各種の最適化アルゴリズムが利用できる。
【0092】
誤差量=Σ(Y(i)−f(E(i)))2 + α・Σ(Y(j)−f(E(j)))2 ・・・(2)
Y:目視点検による閉塞率
E:ECT波形から得られた閉塞評価値
i:前回の評価カーブの元になったデータ
f:評価カーブであり、閉塞評価値を入力変数、推定閉塞率を出力とする一変数関数
α:誤差への重み付け
j:今回の新たに得られたデータ
【0093】
評価カーブの更新は、N回目までの検査において目視点検による隙間部22の閉塞率とECT波形から得られた閉塞評価値との相関に基づいて作成されたベース評価カーブの傾きa、切片bを、N+1回目以降の検査において目視点検して得られた隙間部22の実閉塞率と、ECT波形から得られた閉塞評価値とに基づいて補正を行う。これにより、評価カーブを最新の状態に更新することができるため、評価カーブの評価誤差を小さくすることができる。
【0094】
補間情報として、目視点検して隙間部22の閉塞率を求める際には、ハンドホール25近傍など目視点検用カメラの挿入などが容易な部分に限定した特定の領域に限定した小規模の目視点検などでもよい。
【0095】
また、本実施例では、閉塞評価値の算出にECT波形から算出した値を用いているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、BEC穴21の閉塞評価値となるものであればよい。
【0096】
また、本実施例では、補間情報としてN+1回目以降の各位置(アドレス)の閉塞率及び閉塞評価値を用いたが、N+1回目以降の時点の運転時の水位や熱効率等の情報に基づいて別の考え方から全体としての推定閉塞率を求め、これとECT波形に基づく閉塞評価値と評価カーブから求められる推定閉塞率の平均値とが整合するように評価カーブのパラメータを更新する方法もある。
【0097】
(閉塞評価値の算出工程:ステップS17)
所定の位置のBEC穴21の隙間部22のECT波形より閉塞評価値を算出する。閉塞評価値の算出工程(ステップS17)は、上述の閉塞評価値の算出工程(ステップS13)と同様であるため、ここでは説明は省略する。
【0098】
(推定閉塞率の算出工程:ステップS18)
閉塞評価値の算出工程(ステップS17)で得られた閉塞評価値と更新評価カーブに基づいて、各位置(アドレス)のBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率を算出する(ステップS18)。推定閉塞率の算出工程(ステップS18)は、上述の推定閉塞率の算出工程(ステップS14)と同様であるため、ここでは説明は省略する。
【0099】
(閉塞傾向把握工程:ステップS19)
算出した推定閉塞率に基づいて、各位置(アドレス)のBEC穴21の隙間部22の閉塞状態を把握する(ステップS19)。閉塞傾向把握工程(ステップS19)は、上述の閉塞傾向把握工程(ステップS15)と同様であるため、ここでは説明は省略する。
【0100】
このように、本実施例によれば、新たに隙間部22の推定閉塞率を評価する際に、前回以前の隙間部22の推定閉塞率を評価する際に求めた評価カーブに経年変化による変更が生じても、改めて従来のように大規模な目視点検を実施した上で評価カーブを作成し直しなくても、当該評価カーブをベースに、少量短期間の手間で採取できる補間情報を追加することで最新の状態に近い状態に予め評価カーブを更新してから、検査対象とするBEC穴21の隙間部22の推定閉塞率を算出することができる。評価カーブの更新のためのデータの採取に要する工程を少なくすることで、少ない手間で容易に蒸気発生器10のBEC穴21の隙間部22の閉塞率の評価を実施することができる。このため、BEC穴21の隙間部22の閉塞評価に要する費用を軽減することができると共に、閉塞評価の頻度を上げることができる。この結果、蒸気発生器10の閉塞状況をより正確に把握できるようになり、蒸気発生器10の洗浄をより適切なタイミングで実施できるようになる。これにより、原子力プラントの運転効率を向上させることができる。
【0101】
また、本実施例によれば、BEC穴21の推定閉塞率を各管支持板17A〜17Gを3次元の図で表示する場合、各管支持板17A〜17Gの断面をBEC穴21の長軸と短軸との比率を所定の範囲内として楕円形状の模式図として、各管支持板17A〜17Gが重ならないように直列に配置し、この管支持板17A〜17Gを各管支持板17A〜17GのBEC穴21の推定閉塞率に応じて色分けして表示することで、直感的なイメージが蒸気発生器の実際の設置状況に近づくことから、各管支持板17A〜17Gの断面における閉塞状況を同時に容易に把握することができるため、蒸気発生器10全体の状況を容易に把握することができる。
【0102】
なお、本実施例においては、原子力発電プラントに適用される蒸気発生器の管支持板17A〜17Gの伝熱管12を挿通させる隙間部22の閉塞率を評価する場合について説明しているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、熱交換器に用いる伝熱管を支持するために用いる管支持板の挿通孔の閉塞率を評価するために用いることもできる。
【符号の説明】
【0103】
10 蒸気発生器
11 胴部
11a 上部胴
11b 下部胴
12 伝熱管
13 気水分離器
14 湿分分離器
15 管群外筒
16 管板
17A〜17G 管支持板
21 BEC穴
22 隙間部
25 ハンドホール
27 水室
30 仕切り板
31 入室
32 出室
33 入口ノズル
34 出口ノズル
35 一次冷却材(水)
37 二次冷却材(水)
38 給水管
41 蒸気排出口
42 給水路
43 検査装置
50 処理装置
51 制御部
52 記録部
53 表示部
54 入力部
55 出力部
61 検査処理プログラム
62 評価カーブの作成プログラム
63 評価カーブの更新プログラム
64 閉塞評価値の算出プログラム
65 推定閉塞率の算出プログラム
66 閉塞状態の把握プログラム
66−1 平均閉塞率の算出プログラム
66−2 閉塞状況の可視化プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管と、前記伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、前記挿通孔が前記伝熱管が挿入された際にその周方向に形成される複数の隙間部を有する熱交換器に適用され、
前記管支持板は長軸と短軸との比率が1.0以上2.0以下となる範囲内で3次元で楕円形状の模式図で表示され、
各々の前記管支持板は重ならないように直列に配置され、
前記模式図を前記挿通孔の閉塞率を調査して得られた前記挿通孔の閉塞率の値に応じて色分けして表示する可視化処理を有することを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システム。
【請求項2】
伝熱管と、前記伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、前記挿通孔が前記伝熱管が挿入された際にその周方向に形成される複数の隙間部を有する熱交換器に適用され、
前記挿通孔を点検して求められる前記隙間部の閉塞率と、点検箇所に対応した前記隙間部の閉塞評価値とから評価カーブを作成する挿通孔の閉塞率評価システムであり、
前記挿通孔の閉塞率を調査する際に、前回の前記挿通孔の閉塞率の調査時に作成した前記評価カーブを、今回の調査時の前記隙間部の閉塞率に近いものに更新する評価カーブ更新手段と、
前記管支持板の前記隙間部の閉塞評価値を算出する閉塞評価値の算出手段と、
更新評価カーブと算出した前記閉塞評価値とに基づいて、前記隙間部の推定閉塞率を算出する推定閉塞率の算出手段と、
算出した推定閉塞率に基づいて、前記隙間部の平均閉塞率の算出と閉塞状況の可視化処理との何れか一方又は両方を行う閉塞状態把握手段と、
を含むことを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記隙間部の閉塞率を求めるための点検は、目視点検であることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システム。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記隙間部の閉塞評価値の算出にECT波形を用いることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システム。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか1つにおいて、
前記評価カーブ更新手段は、元となる評価カーブ、またはその評価カーブの算出に用いた前記隙間部の閉塞率および前記隙間部の閉塞評価値に、補足情報を追加して更新されることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システム。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか1つにおいて、
前記評価カーブは1個以上のパラメータを持ち、閉塞評価値を変数、推定閉塞率を出力とする1変数関数であり、
評価カーブ更新手段は下記式(1)で示される誤差量が最小になるように前記関数のパラメータを最適化計算により求めることで前回の評価カーブを更新することを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システム。
誤差量=Σ(Y(i)−f(E(i)))2 + α・Σ(Y(j)−f(E(j)))2 ・・・(1)
Y:点検による閉塞率
E:閉塞評価値
i:前回の評価カーブの元になったデータ
f:評価カーブであり、閉塞評価値を入力変数、推定閉塞率を出力とする一変数関数
α:誤差への重み付け
j:今回の新たに得られたデータ
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つにおいて、
前記可視化処理は、前記隙間部の推定閉塞率の値として、前記隙間部の近傍に位置する1つ以上の前記隙間部の推定閉塞率の平均値を用いることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システム。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1つにおいて、
前記可視化処理は、前記管支持板に設けられている前記隙間部の前記推定閉塞率の情報に抜けがある場合には、情報に抜けがある隙間部の近傍に位置する1つ以上の前記隙間部の推定閉塞率の値を用いて補間することを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システム。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1つにおいて、
前記可視化処理は、今回までの点検から求められた前記隙間部の推定閉塞率の推移から予想される前記挿通孔の推定閉塞速度を求めることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システム。
【請求項10】
請求項9において、
前記推定閉塞速度と任意の点検時までの運転時間から予想される前記隙間部の閉塞率は、今回の前記隙間部の推定閉塞率に加算することで、その点検時における前記隙間部の推定閉塞率が求められることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価システム。
【請求項11】
伝熱管と、前記伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、前記挿通孔が前記伝熱管が挿入された際にその周方向に形成される複数の隙間部を有する熱交換器に適用され、
前記管支持板を長軸と短軸との比率が1.0以上2.0以下となる範囲内で楕円形状の模式図で示し、
各々の前記管支持板が重ならないように直列に配置し、
前記模式図を前記挿通孔の閉塞率を調査して得られた前記挿通孔の閉塞率の値に応じて色分けして表示する可視化処理を含むことを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法。
【請求項12】
伝熱管と、前記伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、前記挿通孔が前記伝熱管が挿入された際にその周方向に形成される複数の隙間部を有する熱交換器に適用され、
前記挿通孔を点検して求められる前記隙間部の閉塞率と、点検箇所に対応した前記隙間部の閉塞評価値とから評価カーブを作成し、前記評価カーブを用いて前記隙間部の閉塞具合を評価する挿通孔の閉塞率評価方法であり、
前記挿通孔の閉塞率を調査する際に、前回の前記挿通孔の閉塞率の調査時に作成した前記評価カーブを、今回の調査時の前記隙間部の閉塞率に近いものに更新する評価カーブ更新工程と、
前記管支持板の前記隙間部の閉塞評価値を算出する閉塞評価値の算出工程と、
算出した前記閉塞評価値と前記評価カーブとに基づいて、前記隙間部の推定閉塞率を算出する推定閉塞率の算出工程と、
算出した推定閉塞率に基づいて、前記隙間部の平均閉塞率の算出と閉塞状況の可視化処理との何れか一方又は両方を行う閉塞状態把握工程と、
を含むことを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記隙間部の閉塞率を求めるための点検として目視点検を用いて行うことを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法。
【請求項14】
請求項12又は13において、
前記隙間部の閉塞評価値の算出にECT波形を用いることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法。
【請求項15】
請求項12乃至14の何れか1つにおいて、
前記評価カーブ更新手段は、元となる評価カーブ、またはその評価カーブの算出に用いた前記隙間部の閉塞率および前記隙間部の閉塞評価値に、補足情報を追加して更新することを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法。
【請求項16】
請求項12乃至15の何れか1つにおいて、
前記評価カーブは1個以上のパラメータを持ち、閉塞評価値を変数、推定閉塞率を出力とする1変数関数であり、
評価カーブ更新手段は下記式(1)で示される誤差量が最小になるように前記関数のパラメータを最適化計算により求めることで前回の評価カーブを更新することを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法。
誤差量=Σ(Y(i)−f(E(i)))2 + α・Σ(Y(j)−f(E(j)))2 ・・・(1)
Y:点検による閉塞率
E:閉塞評価値
i:前回の評価カーブの元になったデータ
f:評価カーブであり、閉塞評価値を入力変数、推定閉塞率を出力とする一変数関数
α:誤差への重み付け
j:今回の新たに得られたデータ
【請求項17】
請求項11乃至16の何れか1つにおいて、
前記可視化処理は、前記隙間部の推定閉塞率の値として、前記隙間部の近傍に位置する1つ以上の前記隙間部の推定閉塞率の平均値を用いることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法。
【請求項18】
請求項11乃至17の何れか1つにおいて、
前記可視化処理は、前記管支持板に設けられている前記隙間部の前記推定閉塞率の情報に抜けがある場合には、情報に抜けがある隙間部の近傍に位置する1つ以上の前記隙間部の推定閉塞率の値を用いて補間することを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法。
【請求項19】
請求項11乃至18の何れか1つにおいて、
前記可視化処理は、今回までの検査から求められた推定閉塞率の推移から予想される前記挿通孔の閉塞速度を求めることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法。
【請求項20】
請求項19において、
前記推定閉塞速度と任意の点検時までの運転時間から予想される前記隙間部の閉塞率を、今回の前記隙間部の推定閉塞率に加算することで、その点検時における前記隙間部の推定閉塞率を求めることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価方法。
【請求項21】
伝熱管が挿入された際にその周方向に複数の隙間部が形成される挿通孔を点検して求められる前記隙間部の閉塞率を用いて前記隙間部の閉塞具合を評価する挿通孔の閉塞率評価プログラムであり、
前記管支持板を長軸と短軸との比率が1.0以上2.0以下となる範囲内で楕円形状の模式図で示し、
各々の前記管支持板が重ならないように直列に配置し、
前記模式図を前記挿通孔の閉塞率を調査して得られた前記挿通孔の閉塞率の値に応じて色分けして表示するコンピュータに実行させることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価プログラム。
【請求項22】
伝熱管が挿入された際にその周方向に複数の隙間部が形成される挿通孔を点検して求められる前記隙間部の閉塞率と、点検箇所に対応した前記隙間部の閉塞評価値とから評価カーブを作成し、前記評価カーブを用いて前記隙間部の閉塞具合を評価する挿通孔の閉塞率評価プログラムであり、
前記挿通孔の閉塞率を調査する際に、前回の前記挿通孔の閉塞率の調査時に作成した前記評価カーブを、今回の調査時の前記隙間部の閉塞率に近いものに更新する評価カーブ更新手段と、
前記管支持板の前記隙間部の閉塞評価値を算出する閉塞評価値の算出処理と、
算出した前記閉塞評価値と前記評価カーブとに基づいて、前記隙間部の推定閉塞率を算出する推定閉塞率の算出処理と、
算出した推定閉塞率に基づいて、前記隙間部の平均閉塞率の算出と閉塞状況の可視化処理との何れか一方又は両方を行う閉塞状態把握処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする挿通孔の閉塞率評価プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−88332(P2013−88332A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230336(P2011−230336)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】