説明

捕球具

【課題】使用者の中指、薬指、小指および親指からの力によって直ぐに所望の形状に変形すると共に、ポケット部を早期に形成することができる捕球具を提供する。
【解決手段】捕球具は、ポケット部が形成される受球面7、および受球面と反対側に位置する背面を含む受球面革4と、受球面革に逢着された手掌革5と、手掌革に逢着された手甲革6と、受球面革および手掌革の間に設けられた芯材3と備える。上記芯材は、受球面革の背面を覆うように配置された土台芯12と、土台芯に形成され、外力が加えられたときに土台芯よりも伸び難い伸止部19とを含み、伸止部は、土台芯のうち、ポケット部8上に位置するポケット対応部20を含むポケット領域22の外周の少なくとも一部に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕球具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ミットなどの捕球具は、外革と、外革内に配置された芯材とを含む。このような捕球具においては、受球面の特定の部分でボールを繰り返し捕球することで、当該部分が窪み、所謂ポケット部が形成される。この際、芯材の一部も外革と同様に窪むように変形する。そして、従来から、ポケットを形成し易くして、それでいてポケットが形成される部位の補強を図る捕球具が提案されている。
【0003】
たとえば、特開2007−228996号公報に記載された捕球具は、甲側外皮と掌側外皮のそれぞれに甲側内皮と掌側内皮が固着される捕球具本体を有する。甲側内皮と掌側内皮の間に手を挿入可能になっていて、掌側外皮と掌側内皮の間に、これら掌側外皮または掌側内皮のいずれか一方又は双方に固定される中間層が設けられている。この中間層には、その外周部から内側に向けて、切れ目が形成されている。
【0004】
なお、外革内に設けられた芯材を備えていないが、捕球時にポケット部の形状が湾曲にへこんだ形状となるようにするために、補強部材を内皮に設けた捕球具が特開2006−34738号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−228996号公報
【特許文献2】特開2006−34738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外革と、外革内に配置された芯材とを含む捕球具において、捕球を繰り返すことで、芯材のうち、ポケット部に対応する部分が窪むように変形すると共に、厚さが薄くなる。芯材のうち、ポケット部に対応する部分が窪むことで、その周囲に位置する部分も伸ばされ、厚さが薄くなる。
【0007】
また、外革と、外革内に配置された芯材とを備えた捕球具においては、捕球を繰り返すことで、芯材が揉み解され、芯材の剛性が低下する。このように、芯材の厚さが薄くなったり、芯材の剛性が低下すると、捕球具全体の形状が崩れたり、指が芯材を押さえたとしても、芯材が局部的に変形してしまい、指の力が芯材全体に伝わり難くなる。この結果、捕球する際に捕球具が所定の捕球形状になり難く、捕球しにくくなる。
【0008】
上記特開2007−228996号公報に記載された捕球具は、中間層に切れ目を入れることで、中間層のうち、使用者が中指、薬指、小指および親指で押さえる部分も変形し易くなる。この結果、使用者が中指、薬指、小指および親指に力を加えて捕球具を変形させようとしても、中間層のみが変形し、捕球具全体としては、所望の捕球形状とならず、上手くボールを捕球できなくなるという問題が生じる。
【0009】
さらに、捕球具は、各使用者の手に早期に馴染むように、ポケット部が早期に形成されることが望まれている。このように、捕球具は、中指、薬指、小指および親指からの力によって、直ぐに捕球形状に変形可能であることと、ポケット部が早期に形成されることとが求められている。なお、特開2006−34738号公報に記載された野球用グラブは、補強部材が設けられた内革は外革と同様の材料から形成されており、芯材が外革内に設けられた捕球具とは、全く異なるタイプの捕球具である。このため、特開2006−34738号公報には、捕球を繰り返し行うことで、芯材が薄くなることにより生じる弊害を抑制するための手段については記載も示唆もされていない。
【0010】
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、外革および芯材を備えた捕球具において、使用者の中指、薬指、小指および親指からの力によって直ぐに所望の形状に変形すると共に、ポケット部を早期に形成することができる捕球具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る捕球具は、ポケット部が形成される受球面、および受球面と反対側に位置する背面を含む受球面革と、受球面革に逢着された手掌革と、手掌革に逢着された手甲革と、受球面革および手掌革の間に設けられた芯材とを備える。
【0012】
上記芯材は、受球面革の背面を覆うように配置された土台芯と、土台芯に形成され、外力が加えられたときに土台芯よりも伸び難い伸止部とを含む。上記伸止部は、土台芯のうち、ポケット部上に位置するポケット対応部の外周側に位置するポケット領域の外周の少なくとも一部に形成される。
【0013】
好ましくは、上記芯材は、土台芯の外周縁部に沿って延びる第1指芯と、ポケット領域に対して第1指芯と反対側に位置する部分に形成され、土台芯の外周縁部に沿って延びる第2指芯とを含む。上記受球面革は、第1指芯を覆い、帯状に延びる第1被覆部と、第2指芯を覆い帯状に延びる第2被覆部とを含む。捕球具は、上記第1被覆部の一端部と第2被覆部の一端部の間に設けられたウエブ部をさらに備える。上記ポケット領域は、使用者の中指の末節骨、中節骨、基節骨、および中手指節関節と、親指の基節骨および末節骨とを滑らかに結ぶ仮想線を含み、仮想線よりもウエブ部側に位置する。
【0014】
好ましくは、上記ポケット領域は、ウエブ部側に位置する土台芯の外周縁部と、第1指芯と、伸止部とによって囲まれる。
【0015】
好ましくは、上記伸止部は、土台芯に逢着され、土台芯を構成する材料よりも伸び難い繊維部材である。好ましくは、上記伸止部は、土台芯に含浸された樹脂部である。好ましくは、伸止部は、ポケット領域の外周に沿って間隔をあけて設けられた複数の伸止片を含む。好ましくは、上記伸止部は、ポケット領域の外周に沿って延びる第1伸止片と、第1伸止片の外側に設けられ、第1伸止片に沿って延びる第2伸止片とを含む。好ましくは、上記伸止部は、ポケット領域を取り囲むように環状に形成される。
【0016】
好ましくは、上記芯材は、土台芯の受球面側の表面うち、ポケット領域と隣り合い、土台芯の外周縁部に沿って延びる第1指芯と、ポケット領域に対して第1指芯と反対側に位置する部分に形成され、土台芯の外周縁部に沿って延びる第2指芯とを含む。上記伸止部の少なくとも一部は、第1指芯側から第2指芯に向けて延びる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る捕球具によれば、使用者の中指、薬指、小指および親指からの力によって直ぐに所望の形状に変形すると共に、ポケット部を早期に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態1に係る捕球具1を受球面側から見た正面図である。
【図2】図1に示す捕球具1の分解斜視図である。
【図3】捕球具1の断面図を模式的に示した断面図である。
【図4】芯材3を受球面側から見た斜視図である。
【図5】手掌側から見た芯材3の斜視図である。
【図6】ボールの捕球時における芯材3の形状を模式的に示す芯材3の正面図である。
【図7】捕球時における芯材3の形状を模式的に示す側面図である。
【図8】図7に示す矢印Aから芯材3を見たときの平面図である。
【図9】図7の矢印Bから芯材3を見たときの平面図である。
【図10】図7のように、使用者の指からの力によって、芯材3が曲げられた状態から芯材3を広げたときに、芯材3と使用者の指の位置とを示す平面図である。
【図11】使用者の左手の骨を示す平面図である。
【図12】本実施の形態に係る捕球具1の第1変形例を示す捕球具1の正面図である。
【図13】図12に示す捕球具1に設けられた芯材3の平面図である。
【図14】捕球具1の第2変形例を示す正面図である。
【図15】図14に示す捕球具1に設けられた芯材3の平面図である。
【図16】図14に示す捕球具1の変形例を示す正面図である。
【図17】捕球具1の第3変形例を示す正面図である。
【図18】図17に設けられた芯材3の平面図である。
【図19】捕球具1の第4変形例を示す正面図である。
【図20】図19に設けられた捕球具1の芯材3の平面図である。
【図21】捕球具1の第5変形例を示す正面図である。
【図22】図21に示された捕球具1に設けられた芯材3の平面図である。
【図23】捕球具1の第6変形例を示す正面図である。
【図24】図23に示された捕球具1に設けられた芯材3の平面図である。
【図25】捕球具1の第7変形例を示す正面図である。
【図26】図25に示す捕球具に設けられた芯材3の平面図である。
【図27】捕球具1の第8変形例を示す正面図である。
【図28】図27に示された捕球具1に設けられた芯材3の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から図22を用いて、本発明に係る捕球具について説明する。なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、各実施の形態に示された構成は互いに組み合わせることは、当初から予定されている。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る捕球具1を受球面側から見た正面図であり、図2は、図1に示す捕球具1の分解斜視図である。なお、本実施の形態に係る捕球具1は、典型的には、ソフトボール用のキャッチャーミットまたは野球用のキャッチャーミットに適用される。捕球具1は、キャッチャーの利き手と反対の手に装着して使用され、図1に示す破線は、捕球具1に挿入された使用者の手を示す。
【0021】
図1および図2において、捕球具1は、外革2と、図2に示す芯材3とを含む。外革2は、受球面革4と、受球面革4に縫着された手掌革5と、手掌革5に縫着された手甲革6とを含む。受球面革4、手掌革5および手甲革6は、たとえば、天然皮革、合成皮革、その他これらと同材質の材質から形成されている。受球面革4は、図1に示すポケット部8(図1の網掛けで示された領域)が形成される受球面7を有する。ポケット部8は、使用者が繰り返しボールを捕球することで、受球面革4の一部が窪むように凹むことで形成される。手掌革5および手甲革6は、互いに逢着されることで、使用者の手首が挿入される手首挿入口9と、使用者の親指を受け入れる親指用袋10と、使用者の人差し指、中指、薬指および小指を受け入れる指用袋11とが形成される。
【0022】
図3は、捕球具1の断面図を模式的に示した断面図である。芯材3は、手掌革5と受球面革4との間に設けられ、革紐15aなどによって受球面革4および手掌革5に逢着される。なお、受球面革4、手掌革5および手甲革6は、革紐15bによって互いに逢着されている。
【0023】
芯材3は、受球面7と反対側に位置する受球面革4の背面を覆うように配置される土台芯12と、土台芯12に形成された第1指芯13および第2指芯14とを含む。
【0024】
土台芯12は、平坦面状に形成されている。第1指芯13および第2指芯14は、土台芯12の表面のうち、受球面7側に位置する主表面上に互いに間隔をあけて設けられている。
【0025】
土台芯12は、ニードルフェルトなどから形成されており、第2指芯14は、複数のニードルフェルトを積層することで構成されている。第1指芯13は、高密度ポリエチレン層(たとえば、昭和電工(株)製 商品名「ショウレックス」)やニードルフェルト層および羊毛層などを複数積層することで形成されている。このように、芯材3は、受球面革4、手掌革5および手甲革6よりも硬く、変形し難い材料から形成されている。
【0026】
図2に示すように、第1指芯13は、土台芯12の外周縁部に沿って延びており、手首挿入口9上から親指用袋10上を通るように形成されている。第2指芯14は、土台芯12の外周縁部に沿って延びており、手首挿入口9から指用袋11上を通るように形成されている。
【0027】
図3において、受球面革4は、第1指芯13を覆う第1指芯被覆部16と、第2指芯14を覆う第2指芯被覆部17とを含む。なお、第2指芯被覆部17は、第2指芯14の形状に沿って膨らむように湾曲し、第1指芯被覆部16も、第1指芯13の形状に沿って膨らむように形成されている。そして、図1に示すように、第1指芯被覆部16の一端と、第2指芯被覆部17の一端との間にウエブ部18が設けられている。
【0028】
図4は、芯材3を受球面側から見た斜視図であり、図5は、手掌側から見た芯材3の斜視図である。この図4および図5に示すように、芯材3の土台芯12には、伸止部19が形成されている。この図4および図5に示す例においては、伸止部19は、土台芯12の表面のうち、使用者の手掌側の表面に形成されている。この伸止部19は、外力が加えられたときに、土台芯12よりも延びにくい材料から形成されている。伸止部19は、たとえば、ケブラ(デュポン社の商標:ポリパラフェニレンテレフタルアミド)繊維などから構成された繊維材料を土台芯12に逢着することで形成されている。
【0029】
なお、ケブラに代えて、棉、麻、絹またはこれらを混合した繊維材料によって構成された布帛を土台芯12に逢着することで伸止部19を形成してもよい。
【0030】
また、熱硬化性樹脂(ユリア樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等)を土台芯12に含浸し、その後、加熱することで伸止部19を形成するようにしてもよい。さらには、土台芯12に直接ステッチを入れることで伸止部19を形成してもよい。
【0031】
図4に示すように、伸止部19は、ポケット領域22(ポケット周囲領域21)の外周に沿ってのびている。ポケット領域22は、伸止部19と、第1指芯13と、ウエブ側外周縁部25とによって囲まれている。
【0032】
図1および図4において、ポケット対応領域20は、土台芯12のうち、ポケット部8上に位置する部分である。ポケット部8は、ウエブ稜線部24と、第1指芯被覆部16の内周縁部23とのいずれにも接触する仮想円8aによって囲まれる領域と、仮想円8a、ウエブ稜線部24、および第1指芯被覆部16によって囲まれる領域とを含む領域である。なお、仮想円8aの直径は、5cmである。
【0033】
ポケット周囲領域21は、外革2の受球面のうち、ポケット部8の周囲に位置する部分を覆う部分であり、図4に示すポケット対応領域20の外周側に位置している。なお、図4に示すウエブ側外周縁部25は、図1に示すウエブ稜線部24に対応する。ポケット領域22は、ポケット対応領域20を含む領域であって、この図4に示す例においては、ポケット領域22は、ケット対応領域20とポケット対応領域20の周囲に位置するポケット周囲領域21とを含む領域である。第1指芯13は、ポケット領域22と隣り合う位置に設けられており、第2指芯14は、ポケット領域22に対して第1指芯13と反対側に設けられている。
【0034】
ここで、図1において、使用者は、ポケット部8にボールが位置するようにボールを捕球する。繰り返しポケット部8でボールを捕球することで、受球面7のうち、ポケット部8が位置する部分が窪むように変形する。これに伴い、図4に示すポケット対応領域20も、窪むように変形する。
【0035】
図6は、ボールの捕球時における芯材3の形状を模式的に示す芯材3の正面図であり、図7は、捕球時における芯材3の形状を模式的に示す側面図である。この図6および図7に示すように、芯材3は湾曲した状態となっている。
【0036】
図8は、図7に示す矢印Aから芯材3を見たときの平面図であり、図9は、図7の矢印Bから芯材3を見たときの平面図である。これら、図7から図9に示すように、使用者の中指31、薬指32、小指33および親指34によって芯材3は、曲げられている。
【0037】
図10は、図7のように、使用者の指からの力によって、芯材3が曲げられた状態から芯材3を広げたときに、芯材3と使用者の指の位置とを示す平面図である。
【0038】
この図10に示すように、中指31、薬指32、小指33および親指34は、ポケット領域22よりも外側に位置している。
【0039】
芯材3のうち、ポケット領域22が位置する部分は、捕球動作を繰り返すことで、頻繁にボールから外力を受ける領域である。このため、芯材3のうち、ポケット領域22が位置する部分は、ボールから力によって変形する。
【0040】
伸止部19は、芯材3よりも伸びにくい材料から形成されているため、芯材3のうち、ポケット領域22が位置する部分が変形したとしても、伸止部19は殆ど変形しない。さらに、第1指芯13は、積層されたニードルフェルトなどを土台芯12に逢着されており、土台芯12のうち、第1指芯13が位置する部分も変形し難くなっている。
【0041】
ポケット領域22は、伸び難い伸止部19および第1指芯13によって囲まれているため、ボールからポケット領域22に外力が加えられて、ポケット領域22が位置する部分が変形したとしても、土台芯12のうち、ポケット領域22の外側に位置する部分が変形することは抑制されている。
【0042】
具体的には、土台芯12のうち、ポケット領域22より外側に位置する部分が伸びたり、薄くなり、土台芯12が柔らかくなることを抑制することができ、土台芯12全体の変形を抑制することができる。土台芯12全体の変形を抑制することができるので、芯材3および外革2を含む捕球具1全体の形状が崩れることを抑制することができる。このように、芯材3の剛性を確保し、捕球具1の形状の崩れを抑制することができるので、捕球を繰り返したとしても、ボールの捕球のし易さを維持することができる。
【0043】
捕球動作を行うときには、使用者の中指31、薬指32、小指33、および親指34は、土台芯12のうち、ポケット領域22より外側の部分を押圧する。このため、使用者の各指からの力が芯材3および外革2に良好に伝達され、捕球具1は、捕球時の所望の形状に直ぐに変形する。
【0044】
このように、本実施の形態に係る捕球具1によれば、捕球動作を繰り返すことで、ポケット部8が直ぐに形成される一方で、捕球を繰り返したとしても、捕球具1の操作性を維持することができる。
【0045】
ここで、図10に示すように、伸止部19は、第1指芯13側から第2指芯14に向けて延びる第1直線部19aと、第2指芯14に沿って延びる第2直線部19bと、第1直線部19aおよび第2直線部19bを接続する湾曲部19cとを含む。第1直線部19aは、第1指芯13側から第2指芯14に向けて延びており、中指と小指との間隔が大きくなるように土台芯12が変形することを抑制する。
【0046】
第2直線部19bは、第2指芯14に沿って延びると共に、第2指芯14から間隔をあけて延びている。このため、土台芯12のうち、第2指芯14の周囲に位置する部分の剛性が維持され、当該部分が薄くなったり、揉み解されることを抑制することができる。これにより、土台芯12のうち、第2指芯14の周囲に位置する部分の形状が崩れたり、図7において、ボールを捕球するときに、土台芯12が変形し、第2指芯14が矢印Cに示す方向に捲り上がることを抑制することができる。この結果、ボールを良好に捕球することができる。
【0047】
ここで、ポケット領域22は、仮想線35よりも、ウエブ側外周縁部25側に位置しており、仮想線35は、使用者の中指31の先端部、中指31の付根部、親指34の付根部および親指34の先端部を滑らかに結ぶ仮想線である。
【0048】
図11は、使用者の左手の骨を示す平面図である。この図11に示すように、中指31は、先端部側から末節骨40と、中節骨41と、基節骨42と、中手骨43とを含む。末節骨40と中節骨41とは第1指関節44によって接続されており、中節骨41と基節骨42とは、指節間関節45によって接続されている。基節骨42と中手骨43とは、中手指節関節46によって接続されている。
【0049】
親指34は、先端部側から末節骨47と、基節骨48と、中手骨49とを含む。末節骨47と基節骨48とは指節間関節50によって接続されており、基節骨48と中手骨49とは、中手指節関節51によって接続されている。
【0050】
そして、仮想線35は、中指31の末節骨40、第1指関節44、中節骨41、指節間関節45、基節骨42、および中手指節関節46をとおり、さらに、親指34の基節骨48、指節間関節50および末節骨47を滑らかに結ぶ仮想線である。
【0051】
図10において、ポケット領域22は、仮想線35よりもウエブ側外周縁部25側に位置しているため、親指34、中指31、薬指32、および小指33はポケット領域22上に位置しておらず、各指は、土台芯12のうち変形が抑制された部分に位置する。
【0052】
これにより、親指34、中指31、薬指32、および小指33からの力は、土台芯12に良好に伝達され、芯材3および外革2を瞬時に所望の捕球形状に変形することができる。
【0053】
図12は、本実施の形態に係る捕球具1の第1変形例を示す捕球具1の正面図であり、図13は、図12に示す捕球具1に設けられた芯材3の平面図である。この図12および図13に示す例においても、ポケット領域22は、ポケット対応領域20およびポケット対応領域20の周囲に位置するポケット周囲領域21とを含む領域であり、伸止部60は、間隔をあけて設けられた複数の伸止片61を含む。この伸止部60も、ポケット領域22の外周に沿って延びている。なお、図13に示す外縁ラインOLは、ポケット周囲領域21の外周縁縁部を示す仮想線である。
【0054】
ポケット領域22の外周上に配列する伸止片61は、互いに間隔をあけて設けられているため、土台芯12のうち、ポケット領域22に対して伸止片61の外側に位置する部分も、捕球時におけるボールからの衝撃力によって変形する。このため、土台芯12のうち、ポケット領域22が位置する部分の変形量(伸び量)と、伸止部60の外側に位置する部分の変形量とに大きな差が生じることを抑制することができる。
【0055】
このように、土台芯12のうち、使用者の掌と接触する部分も変形させることで、捕球具1が使用者の手に馴染むように変形しやすくなる。
【0056】
図14は、捕球具1の第2変形例を示す正面図であり、図15は、図14に示す捕球具1に設けられた芯材3の平面図である。図14および図15に示す例においては、伸止部65は、ポケット領域22の外周縁部から、土台芯12のうち使用者の中指31、薬指32および親指34によって押圧される部分に亘って延びている。
【0057】
このように、伸止部65が広い面積に亘って形成されることで、土台芯12のうち、使用者の中指31、薬指32および親指34が押圧する部分が、ボールからの衝撃力によって変形することをさらに抑制することができる。これにより、中指31、薬指32および親指34の力が土台芯12に良好に伝達され、捕球時に瞬時に土台芯12および外革2を所望の捕球形状に変形させることができる。
【0058】
図16は、上記図14に示す捕球具1の変形例を示す正面図である。この図16に示す例においては、伸止部65は、土台芯12のうち、ポケット領域22の外周縁部から使用者の中指および小指が押圧する部分に亘って延びるように形成されている。これにより、特に、中指および小指からの力が土台芯12に伝達されやすくなり、芯材3および外革2を所望の捕球形状に瞬時に変形させることができる。
【0059】
図17は、捕球具1の第3変形例を示す正面図であり、図18は、図17に設けられた芯材3の平面図である。図17および図18に示すように、伸止部72は、ポケット領域22の外周縁部に沿って延びる伸止片70と、伸止片70の外側に設けられ、伸止片70に沿って延びる伸止片71とを含む。
【0060】
このように、ポケット領域22の周囲を複数の伸止片70,71で取り囲むことで、土台芯12のうち、使用者の中指31、薬指32、小指33および親指34によって押圧される部分が、捕球時にボールから加えられる衝撃力によって変形することを抑制することができる。
【0061】
ここで、伸止片70を構成する材料と、伸止片71を構成する材料とを異ならせて、伸止片70の伸び易さと、伸止片71の伸び易さとに差を設けてもよい。
【0062】
たとえば、内側に位置する伸止片70を構成する材料として、外側に位置する伸止片71を構成する材料よりも伸び難い材料を選択することで、ポケット対応領域20が深く窪みやすくなる。これにより、図17の受球面7に形成されるポケット部も深く窪むことになる。
【0063】
また、外側に位置する伸止片71を構成する材料として、内側に位置する伸止片70を構成する材料よりも伸び難い材料を選択することで、ポケット対応領域20は広く浅く窪むことになる。これにより、図17に示す受球面7に形成されるポケット部も広く浅く窪むことになる。このように伸止片71および伸止部72を構成する材料を適宜選択することで、使用者の好みに合わせて、形成されるポケット部の形状を適宜変更することができる。
【0064】
図19は、捕球具1の第4変形例を示す正面図であり、図20は、図19に示された捕球具1に設けられた芯材3の平面図である。伸止部75は、ポケット領域22を取り囲むように環状に形成されている。
【0065】
このように、伸止部75を環状に形成することで、上記図5に示す伸止部19よりも伸止部75自体がさらに伸び難くなる。これにより、土台芯12のうち、伸止部75よりも外側に位置する部分が変形し難くなり、使用者の指からの力が土台芯12に伝達されやすくなる。これに伴い、芯材3および外革2が瞬時に所望の捕球形状に変形し、ボールの落球を抑制することができる。
【0066】
さらに、伸止部75がポケット領域22を取り囲むことで、図19に示す受球面7に形成されるポケット部が深く形成されやすくなる。
【0067】
図21は、捕球具1の第5変形例を示す正面図であり、図22は、図21に示された捕球具1に設けられた芯材3の平面図である。伸止部76は、第1指芯13側から第2指芯14に向けて延びている。具体的には、伸止部76は、直線状に形成されており、伸止部76の一端は、土台芯12の外周縁部のうち、第1指芯13が位置する部分に位置している。そして、伸止部76は、上記一端部からポケット領域22の外周縁部に沿って延び、他端が土台芯12の中央部に位置している。
【0068】
このように、土台芯12に第1指芯13側から第2指芯14に向けて延びる伸止部76を形成することで、中指と小指との間隔が大きくなるように土台芯12が変形することを抑制することができる。
【0069】
中指と小指との間隔が大きくなるように土台芯12が変形することを抑制することで、捕球を繰り返したとしても、土台芯12にたるみが生じることを抑制することができる。このように、土台芯12に弛みが生じることを抑制することで、使用者の指が土台芯12を押圧したときに、指からの力が芯材3に良好に伝達され、芯材3は、所望の捕球形状となるように変形する。
【0070】
図23は、捕球具1の第6変形例を示す正面図であり、図24は、図23に示された捕球具1に設けられた芯材3の平面図である。この図23および図24に示す例においては、ポケット領域22は、ポケット対応領域20である。伸止部77は、ポケット対応領域20の外周に沿って延びている。これにより、捕球を繰り返すことで、ポケット対応領域20が窪みやすくなり、早期にポケット部8が形成される。土台芯12のうち、ポケット対応領域20よりも外側に位置する部分が薄くなったり、柔らかくなったりすることを抑制することができる。
【0071】
土台芯12のうち、ポケット対応領域20より外側に位置する部分は、土台芯12の大部分を占めている。この広い領域に亘って、土台芯12が薄くなったり、柔らかくなることを抑制することで、捕球動作を繰り返したとしても、捕球具1の形状が崩れることを抑制することができる。
【0072】
図25は、捕球具1の第7変形例を示す正面図であり、図26は、図25に示す捕球具に設けられた芯材3の平面図である。この図25および図26に示す例においては、ポケット領域22は、ポケット対応領域20およびポケット対応領域20の周囲に位置するポケット周囲領域21とを含む領域である。
【0073】
伸止部78は、ポケット周囲領域21の外縁ラインOLに沿って間隔をあけて設けられた複数の伸止片79を含む。伸止片79は、ポケット対応領域20を中心に放射状に配置されており、伸止片79の内端部は、外縁ラインOL上に位置している。伸止片79は、ポケット領域22から離れる方向に長尺に形成されている。
【0074】
ボールを捕球したときに、伸止片79に加えられる引張力は、伸止片79の長手方向に加えられる。伸止片79の伸びしろは、長手方向の方が短手方向よりも長いため、伸止片79が破断することを抑制することができ、伸止片79を長持ちさせることができる。
【0075】
図27は、捕球具1の第8変形例を示し、図28は、図27に示された捕球具1に設けられた芯材3の平面図である。なお、この図27および図28に示す例においては、ポケット領域22は、ポケット対応領域20およびポケット対応領域20の周囲に位置するポケット周囲領域21とを含む領域である。なお、この図27および図28に示す伸止部80は、図10に示す伸止部19と、上記図25に示す伸止部78とを含む。
【0076】
このため、土台芯12のうち、ポケット領域22よりも外側に位置する部分が薄くなったり、柔らかくなったり、変形しやすくなることを抑制することができると共に、伸止部80を長持ちさせることができる。
【0077】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、各実施の形態の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、捕球具に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 捕球具、2 外革、3 芯材、4 受球面革、5 手掌革、6 手甲革、7 受球面、8 ポケット部、8a 仮想円、9 手首挿入口、10 親指用袋、11 指用袋、12 土台芯、13 指芯、14 指芯、15a,15b 革紐、16,17 指芯被覆部、18 ウエブ部、19 伸止部、20 ポケット対応領域、21 ポケット周囲領域、22 ポケット領域、23 内周縁部、24 ウエブ稜線部、25 ウエブ側外周縁部、30 人差指、31 中指、32 薬指、33 小指、34 親指、35 仮想線、40,47 末節骨、41 中節骨、42,48 基節骨、43,49 中手骨、44 指関節、45,50 指節間関節、46,51 中手指節関節、60,65,72,75,76 伸止部、61,70,71 伸止片、72 伸止部、75 伸止部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポケット部が形成される受球面(7)、および前記受球面と反対側に位置する背面を含む受球面革(4)と、
前記受球面革に逢着された手掌革(5)と、
前記手掌革に逢着された手甲革(6)と、
前記受球面革および前記手掌革の間に設けられた芯材(3)と、
を備え、
前記芯材は、前記受球面革の前記背面を覆うように配置された土台芯(12)と、前記土台芯に形成され、外力が加えられたときに前記土台芯よりも伸び難い伸止部(19)とを含み、
前記伸止部は、前記土台芯のうち、前記ポケット部(8)上に位置するポケット対応部(20)を含むポケット領域(22)の外周の少なくとも一部に形成された、捕球具。
【請求項2】
前記芯材は、前記土台芯の外周縁部に沿って延びる第1指芯(13)と、前記ポケット領域に対して前記第1指芯と反対側に位置し、前記土台芯の外周縁部に沿って延びる第2指芯(14)とを含み、
前記受球面革は、前記第1指芯を覆い、帯状に延びる第1被覆部(16)と、前記第2指芯を覆い帯状に延びる第2被覆部(17)とを含み、
前記第1被覆部の一端部と前記第2被覆部の一端部の間に設けられたウエブ部(18)をさらに備え、
前記ポケット領域は、使用者の中指(31)の末節骨(40)、中節骨(41)、基節骨(42)、および中手指節関節(46)と、親指(34)の基節骨(48)および末節骨(47)とを滑らかに結ぶ仮想線(35)を含み、仮想線(35)よりも前記ウエブ部側に位置する、請求項1に記載の捕球具。
【請求項3】
前記ポケット領域は、前記ウエブ部側に位置する前記土台芯の外周縁部(25)と、前記第1指芯(13)と、前記伸止部(19)とによって囲まれた、請求項2に記載の捕球具。
【請求項4】
前記伸止部は、前記土台芯に逢着され、前記土台芯を構成する材料よりも伸び難い繊維部材である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の捕球具。
【請求項5】
前記伸止部は、前記土台芯に含浸された樹脂部である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の捕球具。
【請求項6】
前記伸止部は、前記ポケット領域の外周に沿って間隔をあけて設けられた複数の伸止片(61)を含む、請求項1から請求項5のいずれかに記載の捕球具。
【請求項7】
前記伸止部は、前記ポケット領域の外周に沿って延びる第1伸止片(70)と、前記第1伸止片の外側に設けられ、前記第1伸止片に沿って延びる第2伸止片(71)とを含む、請求項1から請求項5のいずれかに記載の捕球具。
【請求項8】
前記伸止部は、前記ポケット領域を取り囲むように環状に形成された、請求項1または請求項2に記載の捕球具。
【請求項9】
前記芯材は、前記土台芯の前記受球面側の表面うち、前記ポケット領域と隣り合い、前記土台芯の外周縁部に沿って延びる第1指芯と、前記ポケット領域に対して前記第1指芯と反対側に位置する部分に形成され、前記土台芯の外周縁部に沿って延びる第2指芯とを含み、
前記伸止部の少なくとも一部は、前記第1指芯側から前記第2指芯に向けて延びる、請求項1に記載の捕球具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−134(P2012−134A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135015(P2010−135015)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)