説明

捕集管及びそれに用いられるフィルタ

【課題】溶媒を高速で注入した場合であっても、吸着剤に吸着された被捕集剤を十分に回収することができる捕集管及びそれに用いられるフィルタを提供する
【解決手段】吸着剤16が収容される吸着剤収容室10bと、吸着剤収容室10bに気体が流入可能な流入孔22と、流入孔22と対向する位置に形成され、吸着剤収容室10b内の気体が流出可能な流出孔20と、吸着剤収容室10b内の流出孔20の位置に設けられ、吸着剤16が通過不能なフィルタ14と、を備えた捕集管において、フィルタ14の流出孔20の位置が流入孔22に向かって突出していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中のホルムアルデヒドやベンゼンなどの被捕集物質を捕集する捕集管及びそれに用いられるフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から大気中のホルムアルデヒドやベンゼンなどの被捕集物質を捕集するものとして、様々なものが用いられており、例えば、シリカゲルや活性炭などの吸着剤が収容された吸着剤収容室内に大気を吸引することによって、大気中の被捕集物質を捕集する捕集管がある。この種の捕集管28は、図5に示すように、吸着剤30が収容される吸着剤収容室32と、吸着剤収容室32に気体が流入可能な流入孔34と、流入孔34と対向する位置に形成され、吸着剤収容室32内の気体が流出可能な流出孔36と、吸着剤収容室32内の流出孔36の位置に設けられ、吸着剤30が通過不能なフィルタ38と、を備えており、図6に示すように流出孔36側に吸引ポンプ40を接続し、流入孔34から吸着剤収容室32内に大気を吸引して、大気中の被捕集物質を捕集するよう構成されている(非特許文献1参照)。
【0003】
このように吸着剤に捕集された被捕集物質は、注射器によって吸引孔から吸着剤収容室内に溶媒を注入して、溶媒とともに流出孔から被捕集物質を流し出すことによって、回収している。
【0004】
【非特許文献1】2004〜05年 柴田科学総合カタログ 第447頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吸着剤に吸着された被捕集剤を溶媒によって流し出す場合、吸着剤全域に溶媒を流し込む必要があるため、溶媒を一定の低速、例えば1ml/minで5分間注射器によって注入を続けなければならない。このため、回収に時間を要するとともに、分析者によって回収率が異なるという問題が生じることになる。
【0006】
そこで、本発明は、溶媒を高速で注入した場合であっても、吸着剤に吸着された被捕集剤を十分に回収することができる捕集管及びそれに用いられるフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するため、本発明は、吸着剤が収容される吸着剤収容室と、該吸着剤収容室に気体が流入可能な流入孔と、該流入孔と対向する位置に形成され、前記吸着剤収容室内の気体が流出可能な流出孔と、前記吸着剤収容室内の前記流出孔の位置に設けられ、前記吸着剤が通過不能なフィルタと、を備えた捕集管において、前記フィルタの前記流出孔の位置が流入孔に向かって突出していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、吸着剤が収容される吸着剤収容室と、該吸着剤収容室に気体が流入可能な流入孔と、該流入孔と対向する位置に形成され、前記吸着剤収容室内の気体が流出可能な流出孔と、を備えた捕集管の前記吸着剤収容室内の前記流出孔の位置に設けられ、前記吸着剤が通過不能なフィルタにおいて、前記フィルタの前記流出孔の位置が流入孔に向かって突出していることを特徴とする。
【0009】
以上のように、本発明に係る捕集管及びそれに用いられるフィルタにおいては、流入孔から流入された溶媒がフィルタの突出部に当たり、その一部が吸着剤収容室の周囲まで至るので、低速で注入しなくても被吸着物質の回収を十分に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、溶媒を高速で注入した場合であっても、吸着剤に吸着された被捕集剤を十分に回収することができる捕集管及びそれに用いられるフィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明に係る捕集管の実施例について図面に基づいて説明する。図1は、本実施例に係る捕集管の側面断面図である。本実施例に係る捕集管は、図1に示すように、有底円筒状に形成された捕集管本体10と、捕集管本体10の開口部10aを塞ぐ蓋部材12と、捕集管本体10の内部底面に設けられたフィルタ14と、捕集管本体10内に収容された吸着剤16と、を備えている。
【0012】
捕集管本体10は、内部に円柱状の空間10bが形成されており、この空間10bは、吸着剤16の収容室として機能する。また、捕集管本体10の底面10cの中央には、約円筒状の突出部18が形成されており、この突出部18には、その先端の中心から捕集管本体10内まで貫通する流出孔20が形成されている。この突出部18は、先端方向に向かって若干先細りとなっており、吸引ポンプ(図示省略)の吸引チューブに挿入して接続することができる。
【0013】
蓋部材12は、捕集管本体10よりも大径な円柱状に形成され、裏面12aには、円筒状の突出部12bが突出している。この円筒状の突出部12bは、捕集管本体10の開口10aに嵌合されるように、その外径が捕集管本体10の内径と同径に形成されている。また蓋部材、中心には、表面から裏面に亘って貫通する流入孔22が形成されており、この流入孔22から捕集管本体10の吸着剤収容室10b内に大気を流入することができる。
【0014】
フィルタ14は、図2に示すようにポリエチレンから成り、捕集管本体10の吸着剤収容室10bの形状に合わせて形成された円盤状の基台部14aと、基台部14aの表面中心から突出する円柱状の突出部14bと、から構成されている。この突出部14bの外径は、流入孔22及び流出孔20よりも大径に形成されている。
【0015】
吸着剤収容室10bに充填される吸着剤16としては、シリカゲル、活性炭及びスチレンジビニルベンゼン共重合体などの合成吸着剤などを用いることができる。シリカゲルを用いた場合は、回収の際に純水やエタノールなどの極性溶媒を用い、活性炭や合成吸着剤を用いた場合は、回収の際にトルエンや二硫化炭素などの無極性溶媒を用いる。
【0016】
本実施例に係る捕集管は、捕集管本体10の突出部18を吸引ポンプの吸引チューブに接続して、吸引ポンプによって吸引を行なうことによって、流入孔22から大気を吸着剤収容室10bに吸引して、ホルムアルデヒドなどの被吸着物質を吸着させて、流出孔20から大気を流出させることによって、被吸着物質のサンプリングを行なうことができる。吸着剤に吸着された被吸着物質の回収は、従来と同様に注射器によって溶媒を流入孔22から吸着剤収容室10b内に注入することによって行なわれるが、本実施例に係る捕集管においては、流入孔22から流入された溶媒がフィルタ14の突出部14bに当たり、その一部が吸着剤収容室10bの周囲まで至るので、低速で注入しなくても被吸着物質の回収を十分に行うことができる。
【0017】
本実施例に係る捕集管に用いられるフィルタの第2の態様を図3に示す。この第2の態様のフィルタ24は、円錐状に形成されている。さらに、フィルタの第3の態様を捕集管に設置した状態の側面断面図を図4に示す。この第3の態様のフィルタ26は、吸着剤収容室10bよりも小径で、かつ流出孔20よりも大径な円柱状に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る捕集管の実施例の側面断面図である。
【図2】本実施例に係る捕集管に用いられるフィルタの第1の形態の斜視図である。
【図3】本実施例に係る捕集管に用いられるフィルタの第2の形態の斜視図である。
【図4】本実施例に係る捕集管に用いられるフィルタの第3の形態が捕集管に設置された状態の側面断面図である。
【図5】従来の捕集管の側面断面図である。
【図6】従来の捕集管よって大気の吸引を行なう状態を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
10b 吸着剤収容室
14 フィルタ
16 吸着剤
20 流出孔
22 流入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤が収容される吸着剤収容室と、
該吸着剤収容室に気体が流入可能な流入孔と、
該流入孔と対向する位置に形成され、前記吸着剤収容室内の気体が流出可能な流出孔と、
前記吸着剤収容室内の前記流出孔の位置に設けられ、前記吸着剤が通過不能なフィルタと、
を備えた捕集管において、
前記フィルタの前記流出孔の位置が流入孔に向かって突出していることを特徴とする捕集管。
【請求項2】
吸着剤が収容される吸着剤収容室と、該吸着剤収容室に気体が流入可能な流入孔と、該流入孔と対向する位置に形成され、前記吸着剤収容室内の気体が流出可能な流出孔と、を備えた捕集管の前記吸着剤収容室内の前記流出孔の位置に設けられ、前記吸着剤が通過不能なフィルタにおいて、
前記フィルタの前記流出孔の位置が流入孔に向かって突出していることを特徴とするフィルタ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−26130(P2008−26130A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198544(P2006−198544)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000181767)柴田科学株式会社 (32)
【Fターム(参考)】