捕集装置、バイオ濃縮装置及びバイオ濃縮方法
【課題】バイオ濃縮に利用できる、新規かつ改良された装置、およびこれに関する方法を提供する。
【解決方法】本装置200は、入口212と、出口214と、相対向して設けられた底部壁222と頂部壁220とを規定するボディから成る。底部壁222と頂部壁220とは、入口212と出口214との間に少なくとも部分的に延びる、拡大空洞部216を規定している。加えて本装置は、進行波(TW)グリッド240を備えており、進行波グリッド240は、底部壁222に沿って配置され、当該グリッド240に近接した粒子を捕集壁250に輸送するように設けられている。これにより、流れている媒体に分散している試料を捕集し濃縮する。捕集された試料は、一基または複数基の進行波グリッドを使用してセル内で選択的に処理することができる。本装置200は、特に、バイオ濃縮装置として有用であり、従来の分析装置また検出装置の上流で採用し得る。
【解決方法】本装置200は、入口212と、出口214と、相対向して設けられた底部壁222と頂部壁220とを規定するボディから成る。底部壁222と頂部壁220とは、入口212と出口214との間に少なくとも部分的に延びる、拡大空洞部216を規定している。加えて本装置は、進行波(TW)グリッド240を備えており、進行波グリッド240は、底部壁222に沿って配置され、当該グリッド240に近接した粒子を捕集壁250に輸送するように設けられている。これにより、流れている媒体に分散している試料を捕集し濃縮する。捕集された試料は、一基または複数基の進行波グリッドを使用してセル内で選択的に処理することができる。本装置200は、特に、バイオ濃縮装置として有用であり、従来の分析装置また検出装置の上流で採用し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子または試料(sample)を、流れている流体から採取する計器または装置に関し、特に、生物因子(biological agent)の検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エーロゾル(aerosol)形式または水中に分散された生物因子(biological agent)は、普通、極めて低濃度であるので、最も感度の良い検出方法を使用しても検出限界(LOD;limit of detection)以下になることが多い。その上、バクテリアが一個でも混入すれば、重大な結果が生じる可能性がある。従って、試料がエーロゾルから、または水から捕集されて得られたものであるとにかかわらず、検出の前に試料をさらに濃縮しなければならない必要性がある。
【0003】
エーロゾル捕集方法では、普通、高流量(最高150kL/分)で大量の空気を採取し、サイクロン式またはバーチャル式のインパクタ(浮遊物を押込みにより採取する装置)を用いて、問題の対象範囲サイズの粒子を集め、5〜10mLの容量の湿潤した試料に捕集する。次いで、このヒドロゾル(hydrosol)が生物因子検出用の試験試料として使われる。現在入手可能な通常の検出法を有効利用するには、当該ヒドロゾルをさらに2桁ほど濃縮することが望ましい。例えば、これは、試料の容積中のバイオ粒子全部を、50〜100μLの極めて小さな容積に捕集することによって可能である。
【0004】
水中の汚染物質は、普通、数段の濾過工程で処理され、生物因子試験に使用される試料が回収される。大きいサイズの植物性物質を最初の前濾過で除去した後、試料は、限外濾過を用いて、さらに2〜3桁濃縮される。このタンジェンシャル・フロー・フィルトレーション(TFF;tangential flow filtration)法は極めて面倒なもので、TFFを順次、多数回の工程で行い、各工程で低分子量(MW)遮断濾過膜を用い、膜上の被保持物質を再循環させる必要がある。TFFの制限要因は、システムロスで、それ以上は濃縮が行われ得ない限界点が存在することである。最終的な上清液容積は50mLで、これが検出者に提供される。このヒドロゾルをさらに最大3桁ほど一層濃縮することが特に望ましい。
【0005】
フィールド・フロー・フラクショネーション(FFF;field flow fractionation)は、流れチャネルの中で異なる電荷/直径比(以下、q/dと記す)を有する粒子を分離する技術である。この技術は、印刷から生医学や生化学に至る範囲の多くの分野に適用するのに有用である。分離が達成されるのは、異なるq/d比を有する粒子は、流れチャネルを通過するのに異なる時間がかかり、従って、流れチャネルに沿って異なる距離を走行して、始めて捕集壁面(collection wall)に到達するからである。異なるq/d値をもって粒子の種類を明快に規定し、分離した帯域(粒子の一群)を得るために、粒子は、普通、チャネルの上部から狭い入口部分を通して注入される。全処理量は、入口の幾何学的形状と流量に依存しており、これはさらにシステムのq/d分解能に影響する。
【0006】
FFFは、分離方向に直角な流れ場の存在に依存しており、流れ場に注入された粒子の移動を制御して分離が行われる。分離された成分は、保持する時間(retention time)に基づいてシステムから一度に一成分ずつ溶出され、順次、捕集される。分離は、一般には、低粘度の液体や、一般に、緩衝水溶液中で行われる。この液体は、分離チャネルにポンプで送入され、ポアズイユ流れに典型的な放物線状の速度分布を形成する。この処理工程は、注入された粒子の相対速度の制御に依存し、粒子の、側壁からの間隔を調節することによって行われる。より高い電気泳動移動度、またはゼータ電位を有する粒子は、側壁の方により近く集まり、従ってチャネルの中央部近くにある粒子よりも緩やかに移動する。その結果、粒子は、システムを通じゼータ電位とサイズに基づいて異なる速度で移動する。熱、磁気、誘電泳動、遠心分離、沈殿、立体効果、直交流などに基づく異なる分離メカニズムを用いることにより、FFF分離技術には多彩な種類が挙げられる。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6180956号明細書
【特許文献2】米国特許第6136171号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、FFF分離技術には更なる改良が要望されている。
【0009】
そこで、本発明は、上記と他の問題を克服する新規、かつ改良された、バイオ濃縮(bio-enrichment)に利用できる装置、およびこれに関する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態の一つに基づき、流れている媒体から粒子を捕集するよう適応した装置が提供される。本装置は、入口と、出口と、相対向して設けられた底部壁と頂部壁とを規定するボディから成る。底部壁と頂部壁とは、入口と出口との間に少なくとも部分的に延びて、拡大空洞部を規定している。加えて本装置は、進行波グリッドを備えており、進行波グリッドは、底部壁に沿って配置され、当該グリッドに近接した粒子を捕集壁に輸送するように設けられている。
【0011】
本発明の実施の形態の別の一つに基づき、バイオ濃縮装置が提供さる。本バイオ濃縮装置は、入口と、出口と、入口壁と、入口壁の反対側に位置する捕集壁と、入口壁と捕集壁との間に延びる底部壁と、入口壁と捕集壁との間に延びて底部壁の反対側に位置する頂部壁とを規定するセルボディから成る。入口壁と、捕集壁と、底部壁と、頂部壁とは、拡大空洞部を規定する。本バイオ濃縮装置は、底部壁に配置された第1進行波グリッドをさらに備える。本バイオ濃縮装置は、また、捕集壁に配置された第2進行波グリッドをさらに備える。本セルボディは、第1進行波グリッドと第2進行波グリッドの一つに近接した領域に少なくとも1個の試料採取ポートをさらに備える。同装置を操作し、生物因子を分散して含む媒体の流れをボディに規定された入口に流入させると、生物因子が1個または複数個の試料採取ポートに採取される。
【0012】
本発明の実施の形態のさらに別の一つに基づき、流れている媒体から生物因子を捕集し、濃縮する方法が提供される。本方法は、(i)入口と、出口と、相対して設けられた底部壁と頂部壁であって入口と出口との間に少なくとも部分的に延びて拡大空洞部を規定する底部壁と頂部壁とを備えるボディであって、拡大空洞部が底部壁の下流領域から延びる捕集壁を備えるボディと(ii)底部壁に沿って設けられた進行波グリッドであって当該グリッドに近接した粒子を最終到達位置に輸送するように適応している進行波グリッドとを備えるハイブリッドフローセルを設けるステップを有し、さらに本方法は、また、生物因子を含む媒体流れを前記フローセルの入口に導入するステップと、さらに、底部壁に設けられた進行波グリッドを作動させることによって、媒体流れから生物因子を捕集し、捕集された生物因子を最終到達位置に輸送するステップとを含む。最終到達位置で測定される生物因子の濃度は、入口で測定の生物因子の濃度よりも大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態は、バイオ濃縮のシステム、装置、セル、および方法に関し、試料混合物の初期分離を電荷/直径(本明細書では略称q/d)で行い、その後に濃縮工程を行うことが可能である。実施の形態は、捕集を目的とする場合のバックエンドとして、あるいは検出を目的とする場合のフロントエンドとしての機能を果たし得る。特に、実施の形態では、図1に示されるシステム100が試料濃縮用に提供される。システム100は被保持物をさらに二桁〜三桁、すなわち100倍〜1000倍に濃縮する。システム100は、検出すべき試料を含有する流れが、その内部を移動する流れ導管110を備える。この流れから試料が採取され、その試料部分が前濾過(pre-filtration)ユニット120に導かれ、ここで比較的大きな粒子、汚染物、または他の望ましくない物質が除去される。濾過された試料は、次いで、限外濾過(ultra-filtration)ユニット130に導かれ、ここでさらなる濾過動作が行われる。限外濾過ユニット130から得られる被保持物は、本実施形態のバイオ濃縮セル140に導かれる。次いで、バイオ濃縮セル140からのアウトプットは、検出装置150に入力される。この試料採取の構成によって得られる容積縮小と、これに基づく濃縮の度合いの例を挙げると、以下の通りである。ユニット120からユニット130に50Lの容積が流れる場合、ユニット130からセル140に行く被保持物は約50mLであり、セル140からの検出装置150に行く上清液容積は、約50μL〜100μLである。
【0014】
前術のように、本実施形態は、また、エーロゾル試料を濃縮するシステムを提供する。この方法は、また、図1に示すように、試料源からエーロゾル採取装置160に試料が送られる。エーロゾル採取装置160のアウトプットは、次いで、バイオ濃縮セル140に導かれ、そのアウトプットは、次いで、前術のように検出装置150に導かれる。この試料抽出構成によって得られる容積縮小と、これに基づく濃縮の度合いの例は以下の通りである。エーロゾル採取装置160から出ていくヒドロゾルが5mL〜10mLの容積の場合、バイオ濃縮セルのアウトプットは約50μL〜100μLである。
【0015】
本実施形態のバイオ濃縮装置は、フィールド・フロー・フラクショネーション(FFF)を用いて、生物因子を、q/dの関数として、平面配列の進行波(traveling wave)の櫛型(inter-digitated)電極グリッドがパターン化して形成された下部表面上に、堆積させる。配列された電極は、電圧パルスの進行波(TW)を用いて4相(またはn相、n>2)で駆動され、堆積された生物因子をグリッドの端又は端部領域に移動させる。別の直交TWアレイは、この端部から試料用の穴に落し込む。目的とする濃縮は、極めて少量の流体内に同じq/d範囲の粒子を捕集することによって達成される。この技術は、正味の電荷またはゼータ電位を有する物質すべてに有効である。検出のフロントエンドとして用いると、分離機能としては選択性が向上し、一方、濃縮機能としては感度が向上する。濃縮された試料は、免疫学的検定に供するためマイクロピペットで取り出すことができる。コンパクトにし、自動運転も可能なようにするには、このバイオ濃縮セルをマイクロ流体チャネルに直接に接続すれば、対象分析物を、選択的に計量し、分類し、油圧および電気浸透流(EOF)ポンプで輸送し、分析と物質の同定を行い得る。
【0016】
ここで、「進行波グリッド」という術語は、進行波(複数を含む)を形成するために電圧波形が印加される複数の電極及び基板と、電気信号(または電位)をグリッド全体に分散するための一基または複数基のバス、電路、電気接触パッドを集合的に称する。この術語は、また、グリッドを作動させるための多相電気信号を発生する一基または複数基の電源をも集合的に称する。進行波グリッドはどんな形のものでも差し支えない。例えば、フラットな平面形状でもよく、非平面形状でもよい。非平面形状の場合は、例えば、シリンダの外壁に沿って延びる弓状の領域を有する形でもよい。非平面のグリッドは、管の内部の領域内に規定された円環状グリッド形状であってもよい。
【0017】
本実施形態のバイオ濃縮セルは、フィールド・フロー・フラクショネーション(FFF)と進行波(TW)メカニズムとを用いる。本実施形態のバイオ濃縮セルの態様を、図2〜図4に示す。バイオ濃縮セルは、薄い構造の入口及び出口のチャネルと、凹構造の拡大空洞部を備える。この空洞部の屋根は、連続するインジウム錫酸化物(ITO)の面で構成されており、一方、底部にはTW電極が配列されている。DCバイアスを維持し、流体の流れの方向に直角な電界Eを形成させる。均一な分離を行うには、空洞部に純粋な層流を形成することが必要である。FFFでは、バイオ粒子は、自己が保有するq/dまたはゼータ電位のため下方に屈折して流れる(質量分析計で起こる作用と同様)。これは、q/dが、より高い値の粒子が、最初に、つまり、空洞部の前縁に最も近くに堆積する。入口では90度またはそれ以下の角度の屈曲を生じさせ、流れを拡散し、完全に近い層流フィールドを拡大空洞部領域に生じさせる。拡大空洞部領域では、角度のある流れの衝突は望ましくない。空洞部に流れが拡大すると、流れが遅くなるので、屈曲に要するバイアス電圧要求値が下がり、従って必要なTW寸法も短くなる。バイオ粒子が印加電界に応答する時間を長くすることも可能になる。凹構造の空洞は、また、バイオ粒子を、特に、フローセル(flow cell )の底の直角状の隅部に形成される渦領域または循環領域に捕捉する作用があるので、バイオ粒子はここにしっかりと捕集される。次いで、TW電圧を用い、堆積したバイオ粒子を、所望のように移動させる。本実施形態の一つでは、TWにより、バイオ粒子は捕集壁に移動される。捕集壁では、図5に示すように、直交TWグリッドにより、さらにバイオ粒子は一方の隅に再び導かれ、従って、さらにバイオ粒子は濃縮される。
【0018】
特に、図2〜図4には、本実施形態のバイオ濃縮セル200を示す。セル200は、入口212と、出口214と、これらの間に幅広く延びる内部中空領域216とを規定するボディ210を備える。内部流空領域216の入口212側には、角のある領域または屈曲を有しており、、理想的には、屈曲213のように、90°に曲がっている屈曲を備えることが好ましい。セルボディ210は、また、試料排出ポート215を備える。内部中空領域216、すなわち、拡大空洞部は、上部壁220と下部壁222との間で規定される。上部壁220に設置され、内部中空領域216に面しているのは、平面電極230で、前記のように、ITOの薄膜層から形成し得る。複数の密間隔のTW電極は、一次グリッド240を形成し、下部壁222に設置される。セル200は、また、セル内の流れに対して一般に直角に延び、TWグリッド240の下流側に沿って設置される捕集壁250を備える。捕集壁250は、複数の密間隔のTW電極252の形である。捕集壁250から見て領域216の反対側に規定されるのは、入口壁217である。
【0019】
さらに図2〜図4を参照すると、採取すべき試料を含有する流れストリームは、矢印Aで示されるように、入口212からセル200に入る。流れストリームは、セルの内部中空領域216、すなわち、拡大空洞部に入る。流れストリームが拡大領域216に入ると、入口212の近くまたは内部の屈曲213の作用によって層流形成が促進される。流れストリームが拡大領域216に入ると、ストリーム速度は減少する。同時並行的に、TWグリッド240は、屈曲作用を行うバイアス電圧または電界を印加して、流れストリーム中の試料の流れを誘引したり、または屈曲したりする。例示の流れラインa1,a2,a3は、異なるq/d比を有する3個の粒子の流れラインを示す。相対的に高いq/d比を有する粒子が、より顕著な屈曲を示し、従って、より早くグリッド240に向かって曲がって行く。対照的に、低いq/d比を有する粒子は、捕集壁250に近接した箇所でグリッド240向けて曲がって行く。TWグリッドは、捕集された粒子または試料を矢印Cの方向に輸送するように操作される。捕集された試料は、捕集壁250に沿って試料排出ポート215の方向に輸送される。排出される流れは、出口214を通り、矢印Bで示されるようにセル200から外に流れる。
【0020】
本実施形態のセル200の構成は、幾つかの重要な利点を提供する。前述のセルを通過する流れを有する特徴により、TWグリッド240と試料との衝突は、直角または垂直とを問わず回避される。セル200内部では、一般に層流状態が達成され、TWグリッド240上の面内速度は無視できる。入口212に関して、拡大領域216の凹構造の特徴の作用により、試料の速度が減少し、試料の捕集が促進される。さらに、セル200は、流れAが発生するような大量の流れの中の部分的容積を、順次細かく処理することが可能である。
【0021】
拡大領域に分散されたバイオ粒子は、表面、例えば、捕集壁に順次押し込まれ、端部に落とし込まれ、試料の採取のため、最終的に極めて小さい容積に濃縮される。粒子がこれらの操作を受けるときの濃縮率の推定値は、初期容積とバイオ粒子ほとんどすべてが捕集されている最終容積との比である。典型的な初期容積は50〜100mLであるので、最終容積が5〜50μLならば、濃縮率は100X〜1000X(X=倍率)が理論上可能である。容積次元のリニア変化の限界は、電気力学ドリフトに対向して作用する逆拡散である。簡単な推定式は、E(w/2)=kT/qであり、E、w、k、T、qは、それぞれ電界、最終試料容積の幅、ボルツマン(Boltzmann)定数、温度、および粒子電荷を示す。ローカル電界Eを1桁大きくすれば、帯域は、最高10Xまで圧縮可能である。時間tの間の拡散長さRは、R2=(kT/phr)tで与えられ、hは粘度、rは粒子半径である。1〜10μm範囲のバイオ粒子に対しては、拡散距離は数μm/秒にすぎない。より小さなタンパク質サイズの粒子は、拡散を受けやすいので、拡散を抑えるために連続的TW操作とTWピッチの最適選択が必要である。別法としては、小さいバイオ粒子は、拡散を減らすために、より高粘度の媒体、例えば、ゲル中に濃縮することができる。
【0022】
他の実施の形態のバイオ濃縮セル300では、TWグリッドにより、バイオ粒子は、捕集壁に移動させられ、捕集壁では図5に示される別の直交TWグリッドにより、バイオ粒子はさらに方向が変えられてコーナーの一つに送られ、従って濃縮される。操作は順次的に行われ、帯域に分離した後、各帯域は今度は並行している端部に移動し得る。端部では、粒子は濃縮されて試料穴に入って検出に供されたり、進行波の方向を逆にすることによってパージされたりする。従って、関心ある特定の帯域(または、関心あるq/dの範囲)だけが、検出ゾーンに移動させられる。他の関心のない帯域は所望に応じてパージされる。
【0023】
具体的には、セル300は、セルボディ310を備える。ボディ内には拡大領域が、入口壁317と、TWグリッド352の形である捕集壁350と、下部壁322に沿って延びるTWグリッド340との間に規定される。前述の実施形態と同様に、ボディ310は、適切な入口と出口を有する上部壁(図示せず)を備える。流入する流れストリームDが、拡大領域に入ると、ストリーム中の粒子はグリッド340の方向に引き付けられ、ここに捕集される。グリッド340は、粒子を第2のTWグリッド350の方向に輸送するように操作される。第2のTWグリッド350は、グリッド340に対して直交する方向に配置され、拡大空洞内のうち、さらに下流位置に配置されるのが好ましい。粒子が、二次グリッド350上で、またはその近くで捕集されると、グリッド350に沿う所望の位置、例えば、位置Eに粒子を輸送するようにグリッドは操作される。位置Eでは、補集された粒子を輸送して以降の検出または分析に供し得る。セル200に関して前に記載したように、セル300では、比較的高いq/d比を有する粒子が、壁317により近いグリッド340上に堆積する。
【0024】
実施の形態の他の態様のバイオ濃縮セル400が図6に示される。バイオ濃縮セル400では、分離された粒子帯域(粒子の一群)は側壁に対して平行方向に濃縮可能である。TWグリッドの配置方向は、図5に図示の前記の実施形態のものとは直角で、分離効果は殆ど存在しない。電極間ピッチ40mmが、典型的なセル高さ1.5mmよりはるかに小さいからである。異なる粒子帯域が濃縮される側壁の箇所にもう一組の別のTWグリッドを追加することによって、個々の帯域をコーナーの一つに順次動かすことができる。このコーナーでは、粒子は濃縮されて試料穴に入って検出に供されたり、進行波の方向を逆にすることによってパージされたりする。
【0025】
具体的には、セル400は、セルボディ410を備える。ボディ内には拡大領域が、入口壁417と、捕集壁450と、下部壁422に沿って延びるTWグリッド440との間に規定される。前述の実施形態と同様に、ボディ410は、適切な入口と出口を有する上部壁(図示せず)を備える。流入する流れストリームEが、拡大領域に入ると、ストリーム中の粒子はグリッド440の方向に引き付けられ、ここに捕集される。グリッドの電極は、図5のセル300の構成とは対照的にストリームEの流れ方向に平行に延びる。セル400のグリッド440の上に粒子が捕集または堆積すると、グリッド440は、グリッド440の上、またはグリッド440に関連する所望の位置の方向へ粒子帯域(粒子の一群)を輸送するように操作される。特に、離散的な捕集箇所または排出ポートを、グリッド440の側面に沿って備え得る。複数の試料採取ポートをセルボディの一つまたは複数の側壁に備え得る。グリッド440に捕集された粒子帯域は、一つまたは複数の所望の位置に輸送し得る。一方、粒子は、様々に分離されたポピュレーション(粒子の一群)のままに維持される。例えば、入口壁417の最も近くで捕集された粒子帯域は、相対的に高いq/d比を有する粒子を示すものであるが、グリッド440を適切に操作することによって、位置Fに輸送できる。逆に、相対的に低いq/d比を有する粒子帯域は、位置Iに輸送し、これを捕集できる。高いq/d比と低いq/d比を有するこれらの粒子ポピュレーションの間の中間のq/d比を有する粒子の同様帯域は、位置Gと位置Hに捕集できる。
【0026】
理解されるように、捕集壁に沿って延びるTWグリッドは、一般に、セルボディの底部壁に設置されるTWグリッドに対して直角となるように配置される。しかし、実施の形態には、前記TWグリッドが直角には配置されない他の構成も含まれる。さらに、実施の形態には、片方または双方のグリッドに対して、特に、底部壁に沿って設けられるTWグリッドとして、ポイント型電極TWグリッドを用いることが含まれる。ポイント型電極グリッドを用いると、グリッドに沿った実質的にすべての方向またはパスに進行波を通過させるのが容易になる。
【0027】
実施の形態のバイオ濃縮装置は、生物因子の光学式検出に対して優れたフロントエンド処理を提供する。試料濃縮装置としての機能を拡張し、本明細書に記載の濃縮能力を組み込むと、生物因子の無試薬式(例えば、特殊結合、タグ、標識付、染色またはステン各方式)識別を可能とする重要なステップが提供される。実施の形態のバイオ濃縮セルを用いると、q/dに基づく粒子帯域への試料分離は選択性が向上し、さらに、試料穴への粒子帯域濃縮は感度が向上する。試料穴をマイクロ流体チャネルとインタフェースさせると、ハイブリッド捕集式検出方法によって試料分析物のシーケンス的検出がさらに可能となる。図7は、一連のシーケンス的検出方法を接続する単一マイクロ流体チャネルを用いる実施の形態の一つのセルを示す。この方法に含まれる個々の機能としては、クールターカウンタ(Coulter counter)またはMIE散乱、幾つかの励起波長(例えば、280nmと350nm)の固有のUV蛍光源から得られるスペクトル、UV、可視光、および遠赤外吸収、ラマン分光の各分析法が挙げられる。
【0028】
具体的には、図7と図8は、流れストリームKを受容する入口512と、出口514と、内部中空拡大領域516とを有するセルボディ510から成る別の実施の形態のバイオ濃縮セル500を示す。内部中空拡大領域516は、一般に、上部壁520と、下部壁522と、入口壁517と、これと反対側に設けられた捕集壁550との間に延びる。一次TWグリッド540は下部壁522上に設けられ、二次TWグリッド552は捕集壁550に沿って延びる。試料排出ポートJは、グリッドに対して横位置に備えられる。図示のように、セルの操作に当たって、粒子または試料は、グリッド540上に捕集され、二次グリッド552に向かって矢印Mの方向に輸送される。出口流れストリームLは出口514を通過して行く。排出ポートJに近接して設置されているのは、検出装置560である。検出装置560は、捕集されてポートJに輸送された粒子または試料を検出、または分析するように適応されている。広範囲の検出装置560を用いることができるけれども、一般に、使用検出装置は、パージ管562を備え、1基または複数基の検出装置アレイ564、565、566、および567を備える。検出装置アレイとしては、適切ならばどのような技術を用いても差し支えないが、通常は、ラマン、IR吸収、UV蛍光、MIE散乱、コールターカウンタおよび/またはこれらの技術の組合せを用いることが想定されている。ある種の適用では、検出ユニット560を構成するマルチ検出装置アレイを備える蛇管状構成のマイクロ流体チャネルを用いるのが好まれることが多い。
【0029】
図7と図8に示される実施形態のバイオ濃縮セルを操作することにより、試料または粒子の特別に分離された帯域を捕集し、その帯域を粒子捕集ポートに輸送することによって、捕集された試料または粒子帯域を大幅に濃縮し、次いで、捕集された帯域について1回または複数回の分析操作を行うことができる。図7では、グリッド540に堆積したNと記された粒子帯域が、二次TWグリッド550に輸送される。理解されるように、帯域Nは、例えば、狭い範囲のq/d比を有する粒子を示すもと考えられる。まず、帯域Nを構成していた粒子が、グリッド550に輸送されて、捕集ポートJに輸送され、捕集ポートJからマルチ検出装置アレイ560に導入される。
【0030】
最大1Lの試料容量を取り扱うように設計された4.5mL容量のハイブリッドフローセルは、垂直スタック構造を用いて製作されている。低濃度、かつ低流速領域であるため、ナビエ・ストークス(Navier-Stokes)方程式は、ポアズイユ流で定められる速度分布を有する流体システムに対しては、より取り扱い易い粘性ストークスモデルに簡略化し得る。流体力と電気力双方の場に置かれた、バイオ粒子の軌跡は、このモデルで予測される。遅い速度を維持するには、重力で十分であると考えられるので、ポンプは不要である。図9は、層流のストリームを示し、図10は、そのようなフローセルの出入口と、チャネルの中間位置のポアズイユ速度分布を示す。
【0031】
以下に示す表1は、1L試料容積と4.5mL処理能力とを仮定した多種多様のパラメータを示す。パラメータは、試料容積と処理時間に対しては初期仕様値に基づいて最適化し得るのは明白である。相互依存パラメータ、例えば、電圧、生物因子の範囲、q/dまたはゼータ電位、セル寸法などは、所望の仕様を満たすように選択される。全処理時間は、フロー分離時間(tFFF)と濃縮時間(tTW)との合計であり、それぞれ次式で与えられる。
(数1)
tFFF = h2/μVFFF
(数2)
tTW = Ls/αμVTW
式中、mは、電気泳動移動度(electrophoretic mobility)、hはFFFセル高さ、LはFFFセル長さ、sはTWトレース間の間隔、VFFFは分離電圧、VTWはTW電圧、α(〜0.25)は、TWトレース面の上の間隔厚さ内の有効電界接線を示す係数である。
【0032】
【表1】
【0033】
3層集積TWモジュールを設計・製作し、水道水中に「バチルス=チューレンギエンシス菌」(Bacillus thurengiensis)を移動させることによって、概念の実証テストを行った。電気流体力学的粒子モデルにより、装置の性能をシミュレーションし、予測した。
【0034】
多くの実施の形態のバイオ濃縮装置は、試料混合物の初期分離を(電荷/直径、すなわちq/dに基づいて)を行い、引き続いて濃縮操作を行うのに使用できる。これらの多くの装置は捕集方法に対するバックエンド装置または検出法のフロントエンド装置としての役割を果たすことができる。これらの装置は、現在、限外濾過で処理されている試料濃縮のニッチ技術を満たすものであるが、加えて被保持物をさらに100X〜1000X濃縮することによって技術の拡大を図るものである。
【0035】
多くの実施の形態のバイオ濃縮セルは、流体力学的力と電気的力との組合せで生物因子(または、帯電粒子)を連続流の流体から小さな容積に分離して、濃縮するのに用いられている。ある種の実施の形態では、TWグリッドを用いてバイオ粒子を捕集壁に移動させ、図2、図3、図5、図7に示されるようにさらに別の直交TWグリッドを用いてバイオ粒子をコーナーの一つにさらに再導入させることによってバイオ粒子の濃縮が行われる。これらの操作は順次、連続的に行えるので、帯域に分離した後、各帯域は、今度は捕集壁に移動させられ、粒子は濃縮されて試料穴に入り検出に供されたり、進行波の方向を逆にすることによってパージされたりされる。従って、関心ある特定の帯域(または、関心あるq/dの範囲)だけが、検出ゾーンに移動させられる。他の関心のない帯域は所望に応じてパージされる。前述のように、実施の形態のセルは、マイクロ流体インタフェース(micro-fludic interface)を統合することによって行われる検出システムのフロントエンドとしてのバイオ濃縮装置として使用され、図5に示されるように制御された方法で試料を輸送することができる。
【0036】
実施の形態のバイオ濃縮セルは、極めて多くの便益、機能、および利点を備える。セルは、ステップ的分離・濃縮操作を採用しているので、試料調製におけるフレキシビリティが向上する。実施の形態のバイオ濃縮セルは、1段または複数段の捕集ステップを統合可能なので、選択性を100X〜1000X向上させられる。実施の形態のバイオ濃縮セルは、検出ステップを統合可能なので、感度が向上し、100X〜1000Xに感度が向上した試料が調製される。実施の形態のバイオ濃縮セルは、機械的可動部がなく、低電圧・低電力操作であり、携帯性に優れ、規定された試料容積と処理時間に関して容易に最適化できるという特徴がある。実施の形態の装置またはセルは、バイオ濃縮に用いられるコンパクト、低電力、ポータブル装置という形で使用し得る。実施の形態の装置またはセルは、q/d範囲に基づく帯域への初期分離による選択性の向上に加えて以前に分離された帯域の次の濃縮による感度向上をも提供する。本装置またはセルは、検出システムのフロントエンドとして統合し、感度を100X〜1000X向上可能である。本装置またはセルは、捕集システムのバックエンドとして統合し、選択性を100X〜1000X向上可能である。本装置またはセルは、流れなしで操作して空洞サイズに等しい試料容積に濃縮する(分離なしで)ことが可能である。本装置またはセルは、様々な範囲の試料容積に対応する大きさに製作可能で、さらに生物因子すべてを下部捕集板に堆積する再循環操作に拡張可能である。連続TW操作は、試料穴の捕集壁に圧縮力を加え、濃縮物の逆拡散を防止し、粒子帯域の拡大を防止する。
【0037】
多岐にわたる実施の形態は、FFF/TWセルの設計のフレキシビリティを向上する新しい構成とレイアウトを提供するものであり、生物因子帯域の平行輸送を行わせ、その後に検出と識別を行い得るようにするものである。この点において、実施の形態は、従来のFFF使用法をさらに以下のように修正するものである。すなわち、(i)分離された帯域を側壁に堆積可能とする。(ii)流体/ドリフト速度の比を小さくするため拡大チャンバを導入し、大容量試料の処理を可能とする。(iii)入口の下部の狭い箇所に電極を設けてフィールド調整を行い、同じ様なq/dを有する物質の狭い帯域を高分解能で分離・堆積可能とするに加えて、拡大分離チャンバ内にフィン構造の使用を可能とする。静電気の屈曲力により、粒子は、大部分の拡大流とともに下部領域から上部領域の方へと押し出される。設置されるフィン板の後縁は、また、放物線状流れが完全に形成されるとともに後縁の拡大流が最小限に抑えられるように設計される。以下の実施の形態の装置は上記(iii)の機能を例示するものである。
【0038】
実施の形態は、フローセルの幾何学的形状に幾つかの部分的修正を加えることによって、FFFシステムの特有の別の分離・濃縮戦略を提供する。既存技術のFFFのように試料を溶出する代わりに、本発明の試料は、チャネル内の側壁近くに堆積され、その後さらに処理される。達成しようとする目的は、q/dに基づいて粒子を分離し、これらをチャネル壁の長さに沿って分布する狭い帯域に堆積することである。質量分析法に類似なように、より高いq/d比を有する粒子が、より短い飛行時間を有し、より早く、すなわち、より近くの入口に堆積する。より狭い帯域が得られれば、より容易にΔq/dを識別することが可能であり、従って、検出または粒子同定の分解能が向上する。導電性基板の上に堆積した粒子は、表面強化ラマン散乱(SERS; surface enhanced Raman scattering)などの検出方法の使用に供することができる。流体速度が最小である壁の近くの粒子は、また、他の技術でさらに輸送し得る。さらなる新規なものは、拡大チャンバを新しく備えることであり、これにより、大量の試料が処理され、対流/電気泳動流の比が小さくなり、従って、また、低電圧の使用も可能となる。典型的なFFF幾何学的形状は直線的チャネルである。この拡張チャンバを設けることによって、入口の箇所で流れストリームの拡大が生じ、濃度分散が増大する。フィン構造を導入することにより、静電成分と流れ成分とにフィールド調整を行い、この初期粒子分散を減少するものである。
【0039】
直線的チャネルでは、流れ場と電界とは、互いに直角が常であり、または一般にそうなるので、粒子には電気泳動とドリフト速度とが直角に生じる。電気浸透の流れでは、これらの両速度は一定であるので、個々の粒子は、側壁に衝突するまで直線的に移動する。より複雑な流れ、例えば、圧力で駆動される流れでは、粒子軌道は、より複雑である。分離を達成するためには、チャネル内のある高さΔyで放出された異なる電荷/直径の比、q/dの粒子は、水平方向距離Δxで側壁に接触する必要がある。流体の流れが常に電界と直角で、チャネルの断面が変化しないシステムでは、分離能(すなわち、異なるq/dを有する2種の物質を分離する能力)は、印加された電界と流量に依存せず、粒子がチャネルに入る相対高さ、y0/Hにのみ依存する。しかし、解析計算によれば、粒子がチャネルの頂部壁の近くに放出される場合、圧力で駆動される流れでは、分離能力は、プラグ流れより優れる可能性が示されている。
【0040】
実施の形態のセルを用いてシミュレーションを行った。入口は高さ100μmで、FFFセルは、高さ1mm、長さ2〜4mmであった。印加されたバイアス電圧は1Vであり、それは、q/d < 1pC/cmを有する粒子がチャネル長さ内でセル底部に到着するのが確実なものであった。入口流れ速度1mm/秒では、流れは層流で、流線は直ちにフローセル中に拡大した。FFFセルの入口底部コーナーでは小さな渦流が形成され、入口の流体速度が増大するとともに渦サイズも増大した。流線に沿って動く微視的粒子は、この拡大に追従し、電界に曝された後、チャネル床に少し広い帯域を形成して堆積した。この様子は、セル入口から下向きに延びてハイライトされている円錐形で図11に示されている。
【0041】
直線的チャネルのFFFで得られた結果から、狭い帯域を達成するにはどうすべきかが分かる。粒子をセルの頂部壁近くに注入すれば、非常に狭い帯域が達成され得るということである。図11に示されるフローセルでは、確かに粒子は、最初、頂部壁に近いけれども、この有利さは、関心あるミクロンサイズの粒子が流線に追従してしまうので、失われてしまう。理想的なシナリオは、放物線状の流れ分布がフローセルに確立された後まで、かつ粒子をフラクショネーションフィールドに曝す前までは、粒子が頂部壁近くに留まっているケースである。
【0042】
図12〜図15は、流れを修正するのにフィン構造を使用するのを特徴とする別の実施の形態のセルを示す。FFFセルに設置される薄いフィン板は流れが拡大する点から少し離れた短い距離の箇所に置かれる。流入する液体は、図16と図17に示されるように、セルの下の部分にさらに拡大しながら、フィン板の後縁では、ほとんど完全な放物線状流速分布がセル内に確立される。フィン板は、より堅固なアセンブリが可能ならば、チャンバの側壁に支持することができる。フィン板は、また、図18〜図20に示されるように、有限の数のSU−8サポートポストで、「スポイラ(spoiler)」のように、頂部蓋に取り付けることもできる。
【0043】
具体的には、図12〜図14は、実施の形態の他の一つのバイオ濃縮セル600を示す。バイオ濃縮セル600は、入口612と、出口614と、上部壁620と、下部壁622とを備えるセルボディ610から成っている。拡大領域616は、これらの間に規定されている。平面電極630が上部壁620の下側に沿って配置されている。一次TWグリッド(図示せず)は、下部壁622の上表面に沿って配置し得る。別の実施の形態のセルの説明から理解されるように、流入する流れO中に分散された試料または粒子は、下部壁622上に堆積し、一般に入口壁617の反対側にある捕集壁650に輸送される。粒子は矢印Qの方向に輸送される。排出する流れは、矢印Pで示されるようにセルを出る。セル600は、フィン部材670の使用を特徴とするもので、放物線状の流れ分布がフローセル600に確立された後まで、かつ試料または粒子を拡大領域616に生じるフラクショネーションフィールド(分離場)に曝す前までは、フィン部材670の促進作用により、流れストリームは、十分な距離または十分な時間だけ上部壁620と平行な方向に進む。
【0044】
流入する粒子または試料をフィン板の上に保持するため、小さな力をかけ、フィン板の下の部分に連なる流線から、粒子または試料を離すようにすることができる。これを達成する方法の一つは、FFFセルの入口壁と頂部壁との間に小さなバイアスフィールド(図15のV1)を印加することである。この例では、頂部壁は接地されており、入口壁のバイアス電圧V1は、正電位のq/d値の粒子を分離するのが望まれる場合には正電圧とし、一方、底部壁は負の電圧V3を有する。見出されたことによると、フィン板を接地した場合に、最高の性能が得られる。これは、フィン板を接地した場合、フィン板と頂部壁の間の容積に印加された電界に変化がないので(図16と図17を参照)、粒子が邪魔されることなく流体に追従することができるという事実に起因するようである。図16は、接地されたフィン板の周りの電位を示す。そして、図17は、絶縁されたフィン板の周りの電位を示す。
【0045】
ただし、より高いバイアス電圧を使用すると、粒子は頂部壁の方へ押しやられるので、粒子が頂部壁に付着するのを防止するため、優れた付着防止制御法が必要である。一方、バイアス電圧が低すぎる場合は、粒子が部分的、あるいは全面的にフィン板の下に移動し、底部壁に広いピークを作って堆積してしまう難点がある。
【0046】
図18〜図20は、実施の形態のさらなる他の一つのバイオ濃縮セル700を示す。セル700は、入口712と、出口714と、上部壁720と、下部壁722とを備えるセルボディ710から成る。拡大領域716は、これらの間に規定される。平面電極730が上部壁720の上側に沿って配置される。一次TWグリッド(図示せず)は、下部壁722の上表面に沿って配置し得る。別の実施の形態のセルの前記説明から理解されるように、流入する流れR中に分散された試料または粒子は、下部壁722上に堆積し、一般に入口壁717の反対側にある捕集壁750に輸送される。輸送は矢印Tの方向に行われる。排出する流れは流れSのようにセルを出る。セル700は、フィン部材770の使用を特徴とするもので、放物線状の流速分布がセル700に確立される後まで、かつ試料または粒子を拡大領域716に生じるフラクショネーションフィールド(分離場)に曝す前までは、フィン部材770の促進作用により、流れストリームは、十分な距離または十分な時間だけ上部壁720と平行な方向に延びる。フィン部材770は、一以上の柱状部材724により上部壁720に固定される。
【0047】
最大入口速度1mm/秒で、粒子q/d範囲約1.6pC/cmの場合は、図21と図22から分かるように、バイアス電圧V1=0.5Vが最適である。粒子は、フィン板を通過する後までは、頂部壁の近くに留まる。一旦粒子がバイアス電界の到達範囲に入ると、粒子は底部壁の方向に移動し、明確、かつ狭い帯域のピークで、底部壁に堆積する(図22を参照)。
【0048】
これら改善を加えたFFF幾何学的形状を用いることで、拡大チャネルを用いる閉鎖システムにおいて、狭いq/d帯域でチャネル中からの分離と堆積を行うことができる。拡大チャンバを用いると、処理量を犠牲にすることなく、より短いチャネル長さ内で、より大きい容積を処理する能力を獲得し得る。フィン構造は、分散流の拡大を最小限に抑える。分離されたq/d帯域は、フィン構造を使用することによって狭いものとなり、より高い分離能が得られる。堆積した粒子は、SERS検出に直ちに供することが可能な形になっている。別法としては、堆積した粒子を流体流が遅い領域に移動し、他の力を用いてさらに試料操作を行うことも可能である。フィン構造は少なくとも2つの目的を達成する。すなわち、(1)フィン構造は、分散流の拡大を最小限に抑える。そして、(2)図15のV1のようなバイアス電界と組み合わせて、フィン構造は、粒子を最も拡大している流れ領域から上部流領域に逸らし、次いでこれらの粒子をFFFのために十分に発達した流れの断面形状を有する流れと再合流させる。
【0049】
フィンの形は、製作を容易にするためさらに最適化することが可能である。例えば、既存の流線は、好適なフィン幾何学的形状の可能性のある断面積を近似する形状となっている。従って、後縁の近くで所望の十分に発達した放物線状断面形状を有する流れを顕著には変えない、大きな断面形状を考慮することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施の形態のバイオ濃縮システムに係わる概略図である。
【図2】実施の形態のフィールドフローフラクショネーションと進行波アセンブリとを備えるハイブリッド・バイオ濃縮セルの概略平面図である。
【図3】図2のライン3−3に沿って切断されたセルの概略側立面図である。
【図4】図2のライン4−4に沿って切断されたセルの概略端面図である。
【図5】実施の形態の別の一つのバイオ濃縮セル中の流れを示す概略斜視図である。
【図6】実施の形態のさらに別の一つのバイオ濃縮セル中の流れを示す概略斜視図である。
【図7】実施の形態の別の一つのバイオ濃縮セルの概略図である。
【図8】図7のライン3−3に沿って切断された概要側面図で、セルを通過する流れを示す図である。
【図9】図7と図8のセルを通過する層流を示す図である。
【図10】典型的な実施の形態のセルにおけるフィールドフローフラクショネーションに係わる流速分布を示すグラフである。
【図11】模擬された実施の形態のセルを通過する典型的な流れのラインを示す側面図である。
【図12】実施の形態の別の一つのセルの概略側断面図で、同セルを通過する流れを示す図である。
【図13】図12に示されるフローセルの概略上平面図である。
【図14】図12と図13に示されるフローセルの端面図である。
【図15】実施の形態の別の一つのフローセルの概略側面図で、バイアスフィールドの使用を示す図である。
【図16】実施の形態のさらに別の一つのフローセルを通過する流れのラインを示す側面図である。
【図17】実施の形態の別の一つのフローセルを通過する流れのラインを示す側面図である。
【図18】図20に示される実施の形態の別の一つのフローセルの概略側立面図で、セルを通過する流れを示す図である。
【図19】図20に示されるフローセルの端面図である。
【図20】図18と図19に示される実施の形態のフローセルの上平面図である。
【図21】実施の形態の別の一つのフローセルを通過する流れのラインを示す側面図である。
【図22】図21に示されるセル中の流れのセル底部濃度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
100 システム、110 流れ導管、120 前濾過ユニット、130 限外濾過ユニット、140 バイオ濃縮セル、150 検出装置ユニット、160 エーロゾル採取装置、200,300,400,500,600,700 バイオ濃縮セル、210,310,410,510,610,710 セルボディ、212,512,612,712 入口、213 ベンド部、214,514,614,714 出口、215 試料排出ポート、216,516,616,716 内部中空領域、217,317,417,517,617,717 入口壁、220,520,620,720 上部壁、222,322,422,522,622,722 下部壁、230,630,730 平面電極、240,340,440,540 TWグリッド、250,350、450,550,650,750 捕集壁、252、352,552 直交TWグリッド、560 検出装置、562 パージ管、564,565,566,567 検出装置アレイ、670,770 フィン板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子または試料(sample)を、流れている流体から採取する計器または装置に関し、特に、生物因子(biological agent)の検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エーロゾル(aerosol)形式または水中に分散された生物因子(biological agent)は、普通、極めて低濃度であるので、最も感度の良い検出方法を使用しても検出限界(LOD;limit of detection)以下になることが多い。その上、バクテリアが一個でも混入すれば、重大な結果が生じる可能性がある。従って、試料がエーロゾルから、または水から捕集されて得られたものであるとにかかわらず、検出の前に試料をさらに濃縮しなければならない必要性がある。
【0003】
エーロゾル捕集方法では、普通、高流量(最高150kL/分)で大量の空気を採取し、サイクロン式またはバーチャル式のインパクタ(浮遊物を押込みにより採取する装置)を用いて、問題の対象範囲サイズの粒子を集め、5〜10mLの容量の湿潤した試料に捕集する。次いで、このヒドロゾル(hydrosol)が生物因子検出用の試験試料として使われる。現在入手可能な通常の検出法を有効利用するには、当該ヒドロゾルをさらに2桁ほど濃縮することが望ましい。例えば、これは、試料の容積中のバイオ粒子全部を、50〜100μLの極めて小さな容積に捕集することによって可能である。
【0004】
水中の汚染物質は、普通、数段の濾過工程で処理され、生物因子試験に使用される試料が回収される。大きいサイズの植物性物質を最初の前濾過で除去した後、試料は、限外濾過を用いて、さらに2〜3桁濃縮される。このタンジェンシャル・フロー・フィルトレーション(TFF;tangential flow filtration)法は極めて面倒なもので、TFFを順次、多数回の工程で行い、各工程で低分子量(MW)遮断濾過膜を用い、膜上の被保持物質を再循環させる必要がある。TFFの制限要因は、システムロスで、それ以上は濃縮が行われ得ない限界点が存在することである。最終的な上清液容積は50mLで、これが検出者に提供される。このヒドロゾルをさらに最大3桁ほど一層濃縮することが特に望ましい。
【0005】
フィールド・フロー・フラクショネーション(FFF;field flow fractionation)は、流れチャネルの中で異なる電荷/直径比(以下、q/dと記す)を有する粒子を分離する技術である。この技術は、印刷から生医学や生化学に至る範囲の多くの分野に適用するのに有用である。分離が達成されるのは、異なるq/d比を有する粒子は、流れチャネルを通過するのに異なる時間がかかり、従って、流れチャネルに沿って異なる距離を走行して、始めて捕集壁面(collection wall)に到達するからである。異なるq/d値をもって粒子の種類を明快に規定し、分離した帯域(粒子の一群)を得るために、粒子は、普通、チャネルの上部から狭い入口部分を通して注入される。全処理量は、入口の幾何学的形状と流量に依存しており、これはさらにシステムのq/d分解能に影響する。
【0006】
FFFは、分離方向に直角な流れ場の存在に依存しており、流れ場に注入された粒子の移動を制御して分離が行われる。分離された成分は、保持する時間(retention time)に基づいてシステムから一度に一成分ずつ溶出され、順次、捕集される。分離は、一般には、低粘度の液体や、一般に、緩衝水溶液中で行われる。この液体は、分離チャネルにポンプで送入され、ポアズイユ流れに典型的な放物線状の速度分布を形成する。この処理工程は、注入された粒子の相対速度の制御に依存し、粒子の、側壁からの間隔を調節することによって行われる。より高い電気泳動移動度、またはゼータ電位を有する粒子は、側壁の方により近く集まり、従ってチャネルの中央部近くにある粒子よりも緩やかに移動する。その結果、粒子は、システムを通じゼータ電位とサイズに基づいて異なる速度で移動する。熱、磁気、誘電泳動、遠心分離、沈殿、立体効果、直交流などに基づく異なる分離メカニズムを用いることにより、FFF分離技術には多彩な種類が挙げられる。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6180956号明細書
【特許文献2】米国特許第6136171号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、FFF分離技術には更なる改良が要望されている。
【0009】
そこで、本発明は、上記と他の問題を克服する新規、かつ改良された、バイオ濃縮(bio-enrichment)に利用できる装置、およびこれに関する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態の一つに基づき、流れている媒体から粒子を捕集するよう適応した装置が提供される。本装置は、入口と、出口と、相対向して設けられた底部壁と頂部壁とを規定するボディから成る。底部壁と頂部壁とは、入口と出口との間に少なくとも部分的に延びて、拡大空洞部を規定している。加えて本装置は、進行波グリッドを備えており、進行波グリッドは、底部壁に沿って配置され、当該グリッドに近接した粒子を捕集壁に輸送するように設けられている。
【0011】
本発明の実施の形態の別の一つに基づき、バイオ濃縮装置が提供さる。本バイオ濃縮装置は、入口と、出口と、入口壁と、入口壁の反対側に位置する捕集壁と、入口壁と捕集壁との間に延びる底部壁と、入口壁と捕集壁との間に延びて底部壁の反対側に位置する頂部壁とを規定するセルボディから成る。入口壁と、捕集壁と、底部壁と、頂部壁とは、拡大空洞部を規定する。本バイオ濃縮装置は、底部壁に配置された第1進行波グリッドをさらに備える。本バイオ濃縮装置は、また、捕集壁に配置された第2進行波グリッドをさらに備える。本セルボディは、第1進行波グリッドと第2進行波グリッドの一つに近接した領域に少なくとも1個の試料採取ポートをさらに備える。同装置を操作し、生物因子を分散して含む媒体の流れをボディに規定された入口に流入させると、生物因子が1個または複数個の試料採取ポートに採取される。
【0012】
本発明の実施の形態のさらに別の一つに基づき、流れている媒体から生物因子を捕集し、濃縮する方法が提供される。本方法は、(i)入口と、出口と、相対して設けられた底部壁と頂部壁であって入口と出口との間に少なくとも部分的に延びて拡大空洞部を規定する底部壁と頂部壁とを備えるボディであって、拡大空洞部が底部壁の下流領域から延びる捕集壁を備えるボディと(ii)底部壁に沿って設けられた進行波グリッドであって当該グリッドに近接した粒子を最終到達位置に輸送するように適応している進行波グリッドとを備えるハイブリッドフローセルを設けるステップを有し、さらに本方法は、また、生物因子を含む媒体流れを前記フローセルの入口に導入するステップと、さらに、底部壁に設けられた進行波グリッドを作動させることによって、媒体流れから生物因子を捕集し、捕集された生物因子を最終到達位置に輸送するステップとを含む。最終到達位置で測定される生物因子の濃度は、入口で測定の生物因子の濃度よりも大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態は、バイオ濃縮のシステム、装置、セル、および方法に関し、試料混合物の初期分離を電荷/直径(本明細書では略称q/d)で行い、その後に濃縮工程を行うことが可能である。実施の形態は、捕集を目的とする場合のバックエンドとして、あるいは検出を目的とする場合のフロントエンドとしての機能を果たし得る。特に、実施の形態では、図1に示されるシステム100が試料濃縮用に提供される。システム100は被保持物をさらに二桁〜三桁、すなわち100倍〜1000倍に濃縮する。システム100は、検出すべき試料を含有する流れが、その内部を移動する流れ導管110を備える。この流れから試料が採取され、その試料部分が前濾過(pre-filtration)ユニット120に導かれ、ここで比較的大きな粒子、汚染物、または他の望ましくない物質が除去される。濾過された試料は、次いで、限外濾過(ultra-filtration)ユニット130に導かれ、ここでさらなる濾過動作が行われる。限外濾過ユニット130から得られる被保持物は、本実施形態のバイオ濃縮セル140に導かれる。次いで、バイオ濃縮セル140からのアウトプットは、検出装置150に入力される。この試料採取の構成によって得られる容積縮小と、これに基づく濃縮の度合いの例を挙げると、以下の通りである。ユニット120からユニット130に50Lの容積が流れる場合、ユニット130からセル140に行く被保持物は約50mLであり、セル140からの検出装置150に行く上清液容積は、約50μL〜100μLである。
【0014】
前術のように、本実施形態は、また、エーロゾル試料を濃縮するシステムを提供する。この方法は、また、図1に示すように、試料源からエーロゾル採取装置160に試料が送られる。エーロゾル採取装置160のアウトプットは、次いで、バイオ濃縮セル140に導かれ、そのアウトプットは、次いで、前術のように検出装置150に導かれる。この試料抽出構成によって得られる容積縮小と、これに基づく濃縮の度合いの例は以下の通りである。エーロゾル採取装置160から出ていくヒドロゾルが5mL〜10mLの容積の場合、バイオ濃縮セルのアウトプットは約50μL〜100μLである。
【0015】
本実施形態のバイオ濃縮装置は、フィールド・フロー・フラクショネーション(FFF)を用いて、生物因子を、q/dの関数として、平面配列の進行波(traveling wave)の櫛型(inter-digitated)電極グリッドがパターン化して形成された下部表面上に、堆積させる。配列された電極は、電圧パルスの進行波(TW)を用いて4相(またはn相、n>2)で駆動され、堆積された生物因子をグリッドの端又は端部領域に移動させる。別の直交TWアレイは、この端部から試料用の穴に落し込む。目的とする濃縮は、極めて少量の流体内に同じq/d範囲の粒子を捕集することによって達成される。この技術は、正味の電荷またはゼータ電位を有する物質すべてに有効である。検出のフロントエンドとして用いると、分離機能としては選択性が向上し、一方、濃縮機能としては感度が向上する。濃縮された試料は、免疫学的検定に供するためマイクロピペットで取り出すことができる。コンパクトにし、自動運転も可能なようにするには、このバイオ濃縮セルをマイクロ流体チャネルに直接に接続すれば、対象分析物を、選択的に計量し、分類し、油圧および電気浸透流(EOF)ポンプで輸送し、分析と物質の同定を行い得る。
【0016】
ここで、「進行波グリッド」という術語は、進行波(複数を含む)を形成するために電圧波形が印加される複数の電極及び基板と、電気信号(または電位)をグリッド全体に分散するための一基または複数基のバス、電路、電気接触パッドを集合的に称する。この術語は、また、グリッドを作動させるための多相電気信号を発生する一基または複数基の電源をも集合的に称する。進行波グリッドはどんな形のものでも差し支えない。例えば、フラットな平面形状でもよく、非平面形状でもよい。非平面形状の場合は、例えば、シリンダの外壁に沿って延びる弓状の領域を有する形でもよい。非平面のグリッドは、管の内部の領域内に規定された円環状グリッド形状であってもよい。
【0017】
本実施形態のバイオ濃縮セルは、フィールド・フロー・フラクショネーション(FFF)と進行波(TW)メカニズムとを用いる。本実施形態のバイオ濃縮セルの態様を、図2〜図4に示す。バイオ濃縮セルは、薄い構造の入口及び出口のチャネルと、凹構造の拡大空洞部を備える。この空洞部の屋根は、連続するインジウム錫酸化物(ITO)の面で構成されており、一方、底部にはTW電極が配列されている。DCバイアスを維持し、流体の流れの方向に直角な電界Eを形成させる。均一な分離を行うには、空洞部に純粋な層流を形成することが必要である。FFFでは、バイオ粒子は、自己が保有するq/dまたはゼータ電位のため下方に屈折して流れる(質量分析計で起こる作用と同様)。これは、q/dが、より高い値の粒子が、最初に、つまり、空洞部の前縁に最も近くに堆積する。入口では90度またはそれ以下の角度の屈曲を生じさせ、流れを拡散し、完全に近い層流フィールドを拡大空洞部領域に生じさせる。拡大空洞部領域では、角度のある流れの衝突は望ましくない。空洞部に流れが拡大すると、流れが遅くなるので、屈曲に要するバイアス電圧要求値が下がり、従って必要なTW寸法も短くなる。バイオ粒子が印加電界に応答する時間を長くすることも可能になる。凹構造の空洞は、また、バイオ粒子を、特に、フローセル(flow cell )の底の直角状の隅部に形成される渦領域または循環領域に捕捉する作用があるので、バイオ粒子はここにしっかりと捕集される。次いで、TW電圧を用い、堆積したバイオ粒子を、所望のように移動させる。本実施形態の一つでは、TWにより、バイオ粒子は捕集壁に移動される。捕集壁では、図5に示すように、直交TWグリッドにより、さらにバイオ粒子は一方の隅に再び導かれ、従って、さらにバイオ粒子は濃縮される。
【0018】
特に、図2〜図4には、本実施形態のバイオ濃縮セル200を示す。セル200は、入口212と、出口214と、これらの間に幅広く延びる内部中空領域216とを規定するボディ210を備える。内部流空領域216の入口212側には、角のある領域または屈曲を有しており、、理想的には、屈曲213のように、90°に曲がっている屈曲を備えることが好ましい。セルボディ210は、また、試料排出ポート215を備える。内部中空領域216、すなわち、拡大空洞部は、上部壁220と下部壁222との間で規定される。上部壁220に設置され、内部中空領域216に面しているのは、平面電極230で、前記のように、ITOの薄膜層から形成し得る。複数の密間隔のTW電極は、一次グリッド240を形成し、下部壁222に設置される。セル200は、また、セル内の流れに対して一般に直角に延び、TWグリッド240の下流側に沿って設置される捕集壁250を備える。捕集壁250は、複数の密間隔のTW電極252の形である。捕集壁250から見て領域216の反対側に規定されるのは、入口壁217である。
【0019】
さらに図2〜図4を参照すると、採取すべき試料を含有する流れストリームは、矢印Aで示されるように、入口212からセル200に入る。流れストリームは、セルの内部中空領域216、すなわち、拡大空洞部に入る。流れストリームが拡大領域216に入ると、入口212の近くまたは内部の屈曲213の作用によって層流形成が促進される。流れストリームが拡大領域216に入ると、ストリーム速度は減少する。同時並行的に、TWグリッド240は、屈曲作用を行うバイアス電圧または電界を印加して、流れストリーム中の試料の流れを誘引したり、または屈曲したりする。例示の流れラインa1,a2,a3は、異なるq/d比を有する3個の粒子の流れラインを示す。相対的に高いq/d比を有する粒子が、より顕著な屈曲を示し、従って、より早くグリッド240に向かって曲がって行く。対照的に、低いq/d比を有する粒子は、捕集壁250に近接した箇所でグリッド240向けて曲がって行く。TWグリッドは、捕集された粒子または試料を矢印Cの方向に輸送するように操作される。捕集された試料は、捕集壁250に沿って試料排出ポート215の方向に輸送される。排出される流れは、出口214を通り、矢印Bで示されるようにセル200から外に流れる。
【0020】
本実施形態のセル200の構成は、幾つかの重要な利点を提供する。前述のセルを通過する流れを有する特徴により、TWグリッド240と試料との衝突は、直角または垂直とを問わず回避される。セル200内部では、一般に層流状態が達成され、TWグリッド240上の面内速度は無視できる。入口212に関して、拡大領域216の凹構造の特徴の作用により、試料の速度が減少し、試料の捕集が促進される。さらに、セル200は、流れAが発生するような大量の流れの中の部分的容積を、順次細かく処理することが可能である。
【0021】
拡大領域に分散されたバイオ粒子は、表面、例えば、捕集壁に順次押し込まれ、端部に落とし込まれ、試料の採取のため、最終的に極めて小さい容積に濃縮される。粒子がこれらの操作を受けるときの濃縮率の推定値は、初期容積とバイオ粒子ほとんどすべてが捕集されている最終容積との比である。典型的な初期容積は50〜100mLであるので、最終容積が5〜50μLならば、濃縮率は100X〜1000X(X=倍率)が理論上可能である。容積次元のリニア変化の限界は、電気力学ドリフトに対向して作用する逆拡散である。簡単な推定式は、E(w/2)=kT/qであり、E、w、k、T、qは、それぞれ電界、最終試料容積の幅、ボルツマン(Boltzmann)定数、温度、および粒子電荷を示す。ローカル電界Eを1桁大きくすれば、帯域は、最高10Xまで圧縮可能である。時間tの間の拡散長さRは、R2=(kT/phr)tで与えられ、hは粘度、rは粒子半径である。1〜10μm範囲のバイオ粒子に対しては、拡散距離は数μm/秒にすぎない。より小さなタンパク質サイズの粒子は、拡散を受けやすいので、拡散を抑えるために連続的TW操作とTWピッチの最適選択が必要である。別法としては、小さいバイオ粒子は、拡散を減らすために、より高粘度の媒体、例えば、ゲル中に濃縮することができる。
【0022】
他の実施の形態のバイオ濃縮セル300では、TWグリッドにより、バイオ粒子は、捕集壁に移動させられ、捕集壁では図5に示される別の直交TWグリッドにより、バイオ粒子はさらに方向が変えられてコーナーの一つに送られ、従って濃縮される。操作は順次的に行われ、帯域に分離した後、各帯域は今度は並行している端部に移動し得る。端部では、粒子は濃縮されて試料穴に入って検出に供されたり、進行波の方向を逆にすることによってパージされたりする。従って、関心ある特定の帯域(または、関心あるq/dの範囲)だけが、検出ゾーンに移動させられる。他の関心のない帯域は所望に応じてパージされる。
【0023】
具体的には、セル300は、セルボディ310を備える。ボディ内には拡大領域が、入口壁317と、TWグリッド352の形である捕集壁350と、下部壁322に沿って延びるTWグリッド340との間に規定される。前述の実施形態と同様に、ボディ310は、適切な入口と出口を有する上部壁(図示せず)を備える。流入する流れストリームDが、拡大領域に入ると、ストリーム中の粒子はグリッド340の方向に引き付けられ、ここに捕集される。グリッド340は、粒子を第2のTWグリッド350の方向に輸送するように操作される。第2のTWグリッド350は、グリッド340に対して直交する方向に配置され、拡大空洞内のうち、さらに下流位置に配置されるのが好ましい。粒子が、二次グリッド350上で、またはその近くで捕集されると、グリッド350に沿う所望の位置、例えば、位置Eに粒子を輸送するようにグリッドは操作される。位置Eでは、補集された粒子を輸送して以降の検出または分析に供し得る。セル200に関して前に記載したように、セル300では、比較的高いq/d比を有する粒子が、壁317により近いグリッド340上に堆積する。
【0024】
実施の形態の他の態様のバイオ濃縮セル400が図6に示される。バイオ濃縮セル400では、分離された粒子帯域(粒子の一群)は側壁に対して平行方向に濃縮可能である。TWグリッドの配置方向は、図5に図示の前記の実施形態のものとは直角で、分離効果は殆ど存在しない。電極間ピッチ40mmが、典型的なセル高さ1.5mmよりはるかに小さいからである。異なる粒子帯域が濃縮される側壁の箇所にもう一組の別のTWグリッドを追加することによって、個々の帯域をコーナーの一つに順次動かすことができる。このコーナーでは、粒子は濃縮されて試料穴に入って検出に供されたり、進行波の方向を逆にすることによってパージされたりする。
【0025】
具体的には、セル400は、セルボディ410を備える。ボディ内には拡大領域が、入口壁417と、捕集壁450と、下部壁422に沿って延びるTWグリッド440との間に規定される。前述の実施形態と同様に、ボディ410は、適切な入口と出口を有する上部壁(図示せず)を備える。流入する流れストリームEが、拡大領域に入ると、ストリーム中の粒子はグリッド440の方向に引き付けられ、ここに捕集される。グリッドの電極は、図5のセル300の構成とは対照的にストリームEの流れ方向に平行に延びる。セル400のグリッド440の上に粒子が捕集または堆積すると、グリッド440は、グリッド440の上、またはグリッド440に関連する所望の位置の方向へ粒子帯域(粒子の一群)を輸送するように操作される。特に、離散的な捕集箇所または排出ポートを、グリッド440の側面に沿って備え得る。複数の試料採取ポートをセルボディの一つまたは複数の側壁に備え得る。グリッド440に捕集された粒子帯域は、一つまたは複数の所望の位置に輸送し得る。一方、粒子は、様々に分離されたポピュレーション(粒子の一群)のままに維持される。例えば、入口壁417の最も近くで捕集された粒子帯域は、相対的に高いq/d比を有する粒子を示すものであるが、グリッド440を適切に操作することによって、位置Fに輸送できる。逆に、相対的に低いq/d比を有する粒子帯域は、位置Iに輸送し、これを捕集できる。高いq/d比と低いq/d比を有するこれらの粒子ポピュレーションの間の中間のq/d比を有する粒子の同様帯域は、位置Gと位置Hに捕集できる。
【0026】
理解されるように、捕集壁に沿って延びるTWグリッドは、一般に、セルボディの底部壁に設置されるTWグリッドに対して直角となるように配置される。しかし、実施の形態には、前記TWグリッドが直角には配置されない他の構成も含まれる。さらに、実施の形態には、片方または双方のグリッドに対して、特に、底部壁に沿って設けられるTWグリッドとして、ポイント型電極TWグリッドを用いることが含まれる。ポイント型電極グリッドを用いると、グリッドに沿った実質的にすべての方向またはパスに進行波を通過させるのが容易になる。
【0027】
実施の形態のバイオ濃縮装置は、生物因子の光学式検出に対して優れたフロントエンド処理を提供する。試料濃縮装置としての機能を拡張し、本明細書に記載の濃縮能力を組み込むと、生物因子の無試薬式(例えば、特殊結合、タグ、標識付、染色またはステン各方式)識別を可能とする重要なステップが提供される。実施の形態のバイオ濃縮セルを用いると、q/dに基づく粒子帯域への試料分離は選択性が向上し、さらに、試料穴への粒子帯域濃縮は感度が向上する。試料穴をマイクロ流体チャネルとインタフェースさせると、ハイブリッド捕集式検出方法によって試料分析物のシーケンス的検出がさらに可能となる。図7は、一連のシーケンス的検出方法を接続する単一マイクロ流体チャネルを用いる実施の形態の一つのセルを示す。この方法に含まれる個々の機能としては、クールターカウンタ(Coulter counter)またはMIE散乱、幾つかの励起波長(例えば、280nmと350nm)の固有のUV蛍光源から得られるスペクトル、UV、可視光、および遠赤外吸収、ラマン分光の各分析法が挙げられる。
【0028】
具体的には、図7と図8は、流れストリームKを受容する入口512と、出口514と、内部中空拡大領域516とを有するセルボディ510から成る別の実施の形態のバイオ濃縮セル500を示す。内部中空拡大領域516は、一般に、上部壁520と、下部壁522と、入口壁517と、これと反対側に設けられた捕集壁550との間に延びる。一次TWグリッド540は下部壁522上に設けられ、二次TWグリッド552は捕集壁550に沿って延びる。試料排出ポートJは、グリッドに対して横位置に備えられる。図示のように、セルの操作に当たって、粒子または試料は、グリッド540上に捕集され、二次グリッド552に向かって矢印Mの方向に輸送される。出口流れストリームLは出口514を通過して行く。排出ポートJに近接して設置されているのは、検出装置560である。検出装置560は、捕集されてポートJに輸送された粒子または試料を検出、または分析するように適応されている。広範囲の検出装置560を用いることができるけれども、一般に、使用検出装置は、パージ管562を備え、1基または複数基の検出装置アレイ564、565、566、および567を備える。検出装置アレイとしては、適切ならばどのような技術を用いても差し支えないが、通常は、ラマン、IR吸収、UV蛍光、MIE散乱、コールターカウンタおよび/またはこれらの技術の組合せを用いることが想定されている。ある種の適用では、検出ユニット560を構成するマルチ検出装置アレイを備える蛇管状構成のマイクロ流体チャネルを用いるのが好まれることが多い。
【0029】
図7と図8に示される実施形態のバイオ濃縮セルを操作することにより、試料または粒子の特別に分離された帯域を捕集し、その帯域を粒子捕集ポートに輸送することによって、捕集された試料または粒子帯域を大幅に濃縮し、次いで、捕集された帯域について1回または複数回の分析操作を行うことができる。図7では、グリッド540に堆積したNと記された粒子帯域が、二次TWグリッド550に輸送される。理解されるように、帯域Nは、例えば、狭い範囲のq/d比を有する粒子を示すもと考えられる。まず、帯域Nを構成していた粒子が、グリッド550に輸送されて、捕集ポートJに輸送され、捕集ポートJからマルチ検出装置アレイ560に導入される。
【0030】
最大1Lの試料容量を取り扱うように設計された4.5mL容量のハイブリッドフローセルは、垂直スタック構造を用いて製作されている。低濃度、かつ低流速領域であるため、ナビエ・ストークス(Navier-Stokes)方程式は、ポアズイユ流で定められる速度分布を有する流体システムに対しては、より取り扱い易い粘性ストークスモデルに簡略化し得る。流体力と電気力双方の場に置かれた、バイオ粒子の軌跡は、このモデルで予測される。遅い速度を維持するには、重力で十分であると考えられるので、ポンプは不要である。図9は、層流のストリームを示し、図10は、そのようなフローセルの出入口と、チャネルの中間位置のポアズイユ速度分布を示す。
【0031】
以下に示す表1は、1L試料容積と4.5mL処理能力とを仮定した多種多様のパラメータを示す。パラメータは、試料容積と処理時間に対しては初期仕様値に基づいて最適化し得るのは明白である。相互依存パラメータ、例えば、電圧、生物因子の範囲、q/dまたはゼータ電位、セル寸法などは、所望の仕様を満たすように選択される。全処理時間は、フロー分離時間(tFFF)と濃縮時間(tTW)との合計であり、それぞれ次式で与えられる。
(数1)
tFFF = h2/μVFFF
(数2)
tTW = Ls/αμVTW
式中、mは、電気泳動移動度(electrophoretic mobility)、hはFFFセル高さ、LはFFFセル長さ、sはTWトレース間の間隔、VFFFは分離電圧、VTWはTW電圧、α(〜0.25)は、TWトレース面の上の間隔厚さ内の有効電界接線を示す係数である。
【0032】
【表1】
【0033】
3層集積TWモジュールを設計・製作し、水道水中に「バチルス=チューレンギエンシス菌」(Bacillus thurengiensis)を移動させることによって、概念の実証テストを行った。電気流体力学的粒子モデルにより、装置の性能をシミュレーションし、予測した。
【0034】
多くの実施の形態のバイオ濃縮装置は、試料混合物の初期分離を(電荷/直径、すなわちq/dに基づいて)を行い、引き続いて濃縮操作を行うのに使用できる。これらの多くの装置は捕集方法に対するバックエンド装置または検出法のフロントエンド装置としての役割を果たすことができる。これらの装置は、現在、限外濾過で処理されている試料濃縮のニッチ技術を満たすものであるが、加えて被保持物をさらに100X〜1000X濃縮することによって技術の拡大を図るものである。
【0035】
多くの実施の形態のバイオ濃縮セルは、流体力学的力と電気的力との組合せで生物因子(または、帯電粒子)を連続流の流体から小さな容積に分離して、濃縮するのに用いられている。ある種の実施の形態では、TWグリッドを用いてバイオ粒子を捕集壁に移動させ、図2、図3、図5、図7に示されるようにさらに別の直交TWグリッドを用いてバイオ粒子をコーナーの一つにさらに再導入させることによってバイオ粒子の濃縮が行われる。これらの操作は順次、連続的に行えるので、帯域に分離した後、各帯域は、今度は捕集壁に移動させられ、粒子は濃縮されて試料穴に入り検出に供されたり、進行波の方向を逆にすることによってパージされたりされる。従って、関心ある特定の帯域(または、関心あるq/dの範囲)だけが、検出ゾーンに移動させられる。他の関心のない帯域は所望に応じてパージされる。前述のように、実施の形態のセルは、マイクロ流体インタフェース(micro-fludic interface)を統合することによって行われる検出システムのフロントエンドとしてのバイオ濃縮装置として使用され、図5に示されるように制御された方法で試料を輸送することができる。
【0036】
実施の形態のバイオ濃縮セルは、極めて多くの便益、機能、および利点を備える。セルは、ステップ的分離・濃縮操作を採用しているので、試料調製におけるフレキシビリティが向上する。実施の形態のバイオ濃縮セルは、1段または複数段の捕集ステップを統合可能なので、選択性を100X〜1000X向上させられる。実施の形態のバイオ濃縮セルは、検出ステップを統合可能なので、感度が向上し、100X〜1000Xに感度が向上した試料が調製される。実施の形態のバイオ濃縮セルは、機械的可動部がなく、低電圧・低電力操作であり、携帯性に優れ、規定された試料容積と処理時間に関して容易に最適化できるという特徴がある。実施の形態の装置またはセルは、バイオ濃縮に用いられるコンパクト、低電力、ポータブル装置という形で使用し得る。実施の形態の装置またはセルは、q/d範囲に基づく帯域への初期分離による選択性の向上に加えて以前に分離された帯域の次の濃縮による感度向上をも提供する。本装置またはセルは、検出システムのフロントエンドとして統合し、感度を100X〜1000X向上可能である。本装置またはセルは、捕集システムのバックエンドとして統合し、選択性を100X〜1000X向上可能である。本装置またはセルは、流れなしで操作して空洞サイズに等しい試料容積に濃縮する(分離なしで)ことが可能である。本装置またはセルは、様々な範囲の試料容積に対応する大きさに製作可能で、さらに生物因子すべてを下部捕集板に堆積する再循環操作に拡張可能である。連続TW操作は、試料穴の捕集壁に圧縮力を加え、濃縮物の逆拡散を防止し、粒子帯域の拡大を防止する。
【0037】
多岐にわたる実施の形態は、FFF/TWセルの設計のフレキシビリティを向上する新しい構成とレイアウトを提供するものであり、生物因子帯域の平行輸送を行わせ、その後に検出と識別を行い得るようにするものである。この点において、実施の形態は、従来のFFF使用法をさらに以下のように修正するものである。すなわち、(i)分離された帯域を側壁に堆積可能とする。(ii)流体/ドリフト速度の比を小さくするため拡大チャンバを導入し、大容量試料の処理を可能とする。(iii)入口の下部の狭い箇所に電極を設けてフィールド調整を行い、同じ様なq/dを有する物質の狭い帯域を高分解能で分離・堆積可能とするに加えて、拡大分離チャンバ内にフィン構造の使用を可能とする。静電気の屈曲力により、粒子は、大部分の拡大流とともに下部領域から上部領域の方へと押し出される。設置されるフィン板の後縁は、また、放物線状流れが完全に形成されるとともに後縁の拡大流が最小限に抑えられるように設計される。以下の実施の形態の装置は上記(iii)の機能を例示するものである。
【0038】
実施の形態は、フローセルの幾何学的形状に幾つかの部分的修正を加えることによって、FFFシステムの特有の別の分離・濃縮戦略を提供する。既存技術のFFFのように試料を溶出する代わりに、本発明の試料は、チャネル内の側壁近くに堆積され、その後さらに処理される。達成しようとする目的は、q/dに基づいて粒子を分離し、これらをチャネル壁の長さに沿って分布する狭い帯域に堆積することである。質量分析法に類似なように、より高いq/d比を有する粒子が、より短い飛行時間を有し、より早く、すなわち、より近くの入口に堆積する。より狭い帯域が得られれば、より容易にΔq/dを識別することが可能であり、従って、検出または粒子同定の分解能が向上する。導電性基板の上に堆積した粒子は、表面強化ラマン散乱(SERS; surface enhanced Raman scattering)などの検出方法の使用に供することができる。流体速度が最小である壁の近くの粒子は、また、他の技術でさらに輸送し得る。さらなる新規なものは、拡大チャンバを新しく備えることであり、これにより、大量の試料が処理され、対流/電気泳動流の比が小さくなり、従って、また、低電圧の使用も可能となる。典型的なFFF幾何学的形状は直線的チャネルである。この拡張チャンバを設けることによって、入口の箇所で流れストリームの拡大が生じ、濃度分散が増大する。フィン構造を導入することにより、静電成分と流れ成分とにフィールド調整を行い、この初期粒子分散を減少するものである。
【0039】
直線的チャネルでは、流れ場と電界とは、互いに直角が常であり、または一般にそうなるので、粒子には電気泳動とドリフト速度とが直角に生じる。電気浸透の流れでは、これらの両速度は一定であるので、個々の粒子は、側壁に衝突するまで直線的に移動する。より複雑な流れ、例えば、圧力で駆動される流れでは、粒子軌道は、より複雑である。分離を達成するためには、チャネル内のある高さΔyで放出された異なる電荷/直径の比、q/dの粒子は、水平方向距離Δxで側壁に接触する必要がある。流体の流れが常に電界と直角で、チャネルの断面が変化しないシステムでは、分離能(すなわち、異なるq/dを有する2種の物質を分離する能力)は、印加された電界と流量に依存せず、粒子がチャネルに入る相対高さ、y0/Hにのみ依存する。しかし、解析計算によれば、粒子がチャネルの頂部壁の近くに放出される場合、圧力で駆動される流れでは、分離能力は、プラグ流れより優れる可能性が示されている。
【0040】
実施の形態のセルを用いてシミュレーションを行った。入口は高さ100μmで、FFFセルは、高さ1mm、長さ2〜4mmであった。印加されたバイアス電圧は1Vであり、それは、q/d < 1pC/cmを有する粒子がチャネル長さ内でセル底部に到着するのが確実なものであった。入口流れ速度1mm/秒では、流れは層流で、流線は直ちにフローセル中に拡大した。FFFセルの入口底部コーナーでは小さな渦流が形成され、入口の流体速度が増大するとともに渦サイズも増大した。流線に沿って動く微視的粒子は、この拡大に追従し、電界に曝された後、チャネル床に少し広い帯域を形成して堆積した。この様子は、セル入口から下向きに延びてハイライトされている円錐形で図11に示されている。
【0041】
直線的チャネルのFFFで得られた結果から、狭い帯域を達成するにはどうすべきかが分かる。粒子をセルの頂部壁近くに注入すれば、非常に狭い帯域が達成され得るということである。図11に示されるフローセルでは、確かに粒子は、最初、頂部壁に近いけれども、この有利さは、関心あるミクロンサイズの粒子が流線に追従してしまうので、失われてしまう。理想的なシナリオは、放物線状の流れ分布がフローセルに確立された後まで、かつ粒子をフラクショネーションフィールドに曝す前までは、粒子が頂部壁近くに留まっているケースである。
【0042】
図12〜図15は、流れを修正するのにフィン構造を使用するのを特徴とする別の実施の形態のセルを示す。FFFセルに設置される薄いフィン板は流れが拡大する点から少し離れた短い距離の箇所に置かれる。流入する液体は、図16と図17に示されるように、セルの下の部分にさらに拡大しながら、フィン板の後縁では、ほとんど完全な放物線状流速分布がセル内に確立される。フィン板は、より堅固なアセンブリが可能ならば、チャンバの側壁に支持することができる。フィン板は、また、図18〜図20に示されるように、有限の数のSU−8サポートポストで、「スポイラ(spoiler)」のように、頂部蓋に取り付けることもできる。
【0043】
具体的には、図12〜図14は、実施の形態の他の一つのバイオ濃縮セル600を示す。バイオ濃縮セル600は、入口612と、出口614と、上部壁620と、下部壁622とを備えるセルボディ610から成っている。拡大領域616は、これらの間に規定されている。平面電極630が上部壁620の下側に沿って配置されている。一次TWグリッド(図示せず)は、下部壁622の上表面に沿って配置し得る。別の実施の形態のセルの説明から理解されるように、流入する流れO中に分散された試料または粒子は、下部壁622上に堆積し、一般に入口壁617の反対側にある捕集壁650に輸送される。粒子は矢印Qの方向に輸送される。排出する流れは、矢印Pで示されるようにセルを出る。セル600は、フィン部材670の使用を特徴とするもので、放物線状の流れ分布がフローセル600に確立された後まで、かつ試料または粒子を拡大領域616に生じるフラクショネーションフィールド(分離場)に曝す前までは、フィン部材670の促進作用により、流れストリームは、十分な距離または十分な時間だけ上部壁620と平行な方向に進む。
【0044】
流入する粒子または試料をフィン板の上に保持するため、小さな力をかけ、フィン板の下の部分に連なる流線から、粒子または試料を離すようにすることができる。これを達成する方法の一つは、FFFセルの入口壁と頂部壁との間に小さなバイアスフィールド(図15のV1)を印加することである。この例では、頂部壁は接地されており、入口壁のバイアス電圧V1は、正電位のq/d値の粒子を分離するのが望まれる場合には正電圧とし、一方、底部壁は負の電圧V3を有する。見出されたことによると、フィン板を接地した場合に、最高の性能が得られる。これは、フィン板を接地した場合、フィン板と頂部壁の間の容積に印加された電界に変化がないので(図16と図17を参照)、粒子が邪魔されることなく流体に追従することができるという事実に起因するようである。図16は、接地されたフィン板の周りの電位を示す。そして、図17は、絶縁されたフィン板の周りの電位を示す。
【0045】
ただし、より高いバイアス電圧を使用すると、粒子は頂部壁の方へ押しやられるので、粒子が頂部壁に付着するのを防止するため、優れた付着防止制御法が必要である。一方、バイアス電圧が低すぎる場合は、粒子が部分的、あるいは全面的にフィン板の下に移動し、底部壁に広いピークを作って堆積してしまう難点がある。
【0046】
図18〜図20は、実施の形態のさらなる他の一つのバイオ濃縮セル700を示す。セル700は、入口712と、出口714と、上部壁720と、下部壁722とを備えるセルボディ710から成る。拡大領域716は、これらの間に規定される。平面電極730が上部壁720の上側に沿って配置される。一次TWグリッド(図示せず)は、下部壁722の上表面に沿って配置し得る。別の実施の形態のセルの前記説明から理解されるように、流入する流れR中に分散された試料または粒子は、下部壁722上に堆積し、一般に入口壁717の反対側にある捕集壁750に輸送される。輸送は矢印Tの方向に行われる。排出する流れは流れSのようにセルを出る。セル700は、フィン部材770の使用を特徴とするもので、放物線状の流速分布がセル700に確立される後まで、かつ試料または粒子を拡大領域716に生じるフラクショネーションフィールド(分離場)に曝す前までは、フィン部材770の促進作用により、流れストリームは、十分な距離または十分な時間だけ上部壁720と平行な方向に延びる。フィン部材770は、一以上の柱状部材724により上部壁720に固定される。
【0047】
最大入口速度1mm/秒で、粒子q/d範囲約1.6pC/cmの場合は、図21と図22から分かるように、バイアス電圧V1=0.5Vが最適である。粒子は、フィン板を通過する後までは、頂部壁の近くに留まる。一旦粒子がバイアス電界の到達範囲に入ると、粒子は底部壁の方向に移動し、明確、かつ狭い帯域のピークで、底部壁に堆積する(図22を参照)。
【0048】
これら改善を加えたFFF幾何学的形状を用いることで、拡大チャネルを用いる閉鎖システムにおいて、狭いq/d帯域でチャネル中からの分離と堆積を行うことができる。拡大チャンバを用いると、処理量を犠牲にすることなく、より短いチャネル長さ内で、より大きい容積を処理する能力を獲得し得る。フィン構造は、分散流の拡大を最小限に抑える。分離されたq/d帯域は、フィン構造を使用することによって狭いものとなり、より高い分離能が得られる。堆積した粒子は、SERS検出に直ちに供することが可能な形になっている。別法としては、堆積した粒子を流体流が遅い領域に移動し、他の力を用いてさらに試料操作を行うことも可能である。フィン構造は少なくとも2つの目的を達成する。すなわち、(1)フィン構造は、分散流の拡大を最小限に抑える。そして、(2)図15のV1のようなバイアス電界と組み合わせて、フィン構造は、粒子を最も拡大している流れ領域から上部流領域に逸らし、次いでこれらの粒子をFFFのために十分に発達した流れの断面形状を有する流れと再合流させる。
【0049】
フィンの形は、製作を容易にするためさらに最適化することが可能である。例えば、既存の流線は、好適なフィン幾何学的形状の可能性のある断面積を近似する形状となっている。従って、後縁の近くで所望の十分に発達した放物線状断面形状を有する流れを顕著には変えない、大きな断面形状を考慮することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施の形態のバイオ濃縮システムに係わる概略図である。
【図2】実施の形態のフィールドフローフラクショネーションと進行波アセンブリとを備えるハイブリッド・バイオ濃縮セルの概略平面図である。
【図3】図2のライン3−3に沿って切断されたセルの概略側立面図である。
【図4】図2のライン4−4に沿って切断されたセルの概略端面図である。
【図5】実施の形態の別の一つのバイオ濃縮セル中の流れを示す概略斜視図である。
【図6】実施の形態のさらに別の一つのバイオ濃縮セル中の流れを示す概略斜視図である。
【図7】実施の形態の別の一つのバイオ濃縮セルの概略図である。
【図8】図7のライン3−3に沿って切断された概要側面図で、セルを通過する流れを示す図である。
【図9】図7と図8のセルを通過する層流を示す図である。
【図10】典型的な実施の形態のセルにおけるフィールドフローフラクショネーションに係わる流速分布を示すグラフである。
【図11】模擬された実施の形態のセルを通過する典型的な流れのラインを示す側面図である。
【図12】実施の形態の別の一つのセルの概略側断面図で、同セルを通過する流れを示す図である。
【図13】図12に示されるフローセルの概略上平面図である。
【図14】図12と図13に示されるフローセルの端面図である。
【図15】実施の形態の別の一つのフローセルの概略側面図で、バイアスフィールドの使用を示す図である。
【図16】実施の形態のさらに別の一つのフローセルを通過する流れのラインを示す側面図である。
【図17】実施の形態の別の一つのフローセルを通過する流れのラインを示す側面図である。
【図18】図20に示される実施の形態の別の一つのフローセルの概略側立面図で、セルを通過する流れを示す図である。
【図19】図20に示されるフローセルの端面図である。
【図20】図18と図19に示される実施の形態のフローセルの上平面図である。
【図21】実施の形態の別の一つのフローセルを通過する流れのラインを示す側面図である。
【図22】図21に示されるセル中の流れのセル底部濃度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
100 システム、110 流れ導管、120 前濾過ユニット、130 限外濾過ユニット、140 バイオ濃縮セル、150 検出装置ユニット、160 エーロゾル採取装置、200,300,400,500,600,700 バイオ濃縮セル、210,310,410,510,610,710 セルボディ、212,512,612,712 入口、213 ベンド部、214,514,614,714 出口、215 試料排出ポート、216,516,616,716 内部中空領域、217,317,417,517,617,717 入口壁、220,520,620,720 上部壁、222,322,422,522,622,722 下部壁、230,630,730 平面電極、240,340,440,540 TWグリッド、250,350、450,550,650,750 捕集壁、252、352,552 直交TWグリッド、560 検出装置、562 パージ管、564,565,566,567 検出装置アレイ、670,770 フィン板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れている媒体から粒子を捕集するよう設けられた装置において、
入口と、出口と、少なくとも部分的に出入口間に延びて相対向する底部と頂部とを備え、さらに底部壁の下流域から延びる捕集壁とを備える拡大空洞部を備えるボディと、
底部壁に沿って配置された進行波グリッドであって、このグリッドに近接した粒子を捕集壁に輸送するよう設けられている進行波グリッドと、
を備えることを特徴とする捕集装置。
【請求項2】
入口と、出口と、入口壁と、入口壁の反対側の捕集壁と、入口壁と捕集壁との間に延びる底部壁と、入口と出口の間に延びて底部壁の反対にある頂部壁と、入口壁と捕集壁と底部壁と頂部壁とから規定される拡大空洞部とを備えるセルボディと、
底部壁に配置された一次進行波グリッドと、
捕集壁に沿って延びる二次進行波グリッドと、
を備えるバイオ濃縮装置であって、
セルボディがさらに一次進行波グリッドと二次進行波グリッドのうちの一つに近接した領域に少なくとも一個の試料採取ポートを備え、
分散した生物因子を含有して流れている媒体を、前記捕集装置を操作して、前記ボディに備えられる入口に導入するにあたって、生物因子が前記少なくとも一個の試料採取ポートで採取されることを特徴とするバイオ濃縮装置。
【請求項3】
流れている媒体から生物因子を捕集し濃縮する方法において、
入口と、出口と、少なくとも部分的に出入口間に延びて相対する底部と頂部とを備え、さらに底部壁の下流域から延びる捕集壁を備える拡大空洞部を備えるボディと、底部壁に沿って配置された進行波グリッドであり、このグリッドに近接した粒子を捕集壁に輸送するよう設けられた進行波グリッドと、を備えるフローセルを設けるステップと、
生物因子を含有して流れている媒体を、前記フローセルの入口に導入するステップと、
底部壁に設置された進行波グリッドを作動させることによって、流れている媒体から生物因子を捕集し、捕集された生物因子を到達箇所に輸送するステップと、
を含み、
前記到達箇所で測定された生物因子の濃度が、入口で測定された生物因子の濃度より大きいことを特徴とする方法。
【請求項1】
流れている媒体から粒子を捕集するよう設けられた装置において、
入口と、出口と、少なくとも部分的に出入口間に延びて相対向する底部と頂部とを備え、さらに底部壁の下流域から延びる捕集壁とを備える拡大空洞部を備えるボディと、
底部壁に沿って配置された進行波グリッドであって、このグリッドに近接した粒子を捕集壁に輸送するよう設けられている進行波グリッドと、
を備えることを特徴とする捕集装置。
【請求項2】
入口と、出口と、入口壁と、入口壁の反対側の捕集壁と、入口壁と捕集壁との間に延びる底部壁と、入口と出口の間に延びて底部壁の反対にある頂部壁と、入口壁と捕集壁と底部壁と頂部壁とから規定される拡大空洞部とを備えるセルボディと、
底部壁に配置された一次進行波グリッドと、
捕集壁に沿って延びる二次進行波グリッドと、
を備えるバイオ濃縮装置であって、
セルボディがさらに一次進行波グリッドと二次進行波グリッドのうちの一つに近接した領域に少なくとも一個の試料採取ポートを備え、
分散した生物因子を含有して流れている媒体を、前記捕集装置を操作して、前記ボディに備えられる入口に導入するにあたって、生物因子が前記少なくとも一個の試料採取ポートで採取されることを特徴とするバイオ濃縮装置。
【請求項3】
流れている媒体から生物因子を捕集し濃縮する方法において、
入口と、出口と、少なくとも部分的に出入口間に延びて相対する底部と頂部とを備え、さらに底部壁の下流域から延びる捕集壁を備える拡大空洞部を備えるボディと、底部壁に沿って配置された進行波グリッドであり、このグリッドに近接した粒子を捕集壁に輸送するよう設けられた進行波グリッドと、を備えるフローセルを設けるステップと、
生物因子を含有して流れている媒体を、前記フローセルの入口に導入するステップと、
底部壁に設置された進行波グリッドを作動させることによって、流れている媒体から生物因子を捕集し、捕集された生物因子を到達箇所に輸送するステップと、
を含み、
前記到達箇所で測定された生物因子の濃度が、入口で測定された生物因子の濃度より大きいことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2006−181572(P2006−181572A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352901(P2005−352901)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
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