説明

捨石投下システム、及び、捨石投下方法

【課題】 捨石マウンドを効率良く構築して工期の短縮化が図れる捨石投下システム及び捨石投下方法を提供する。
【解決手段】 捨石31を水底へと投下可能な大型捨石投下開口10aと、大型捨石投下開口10aよりも小さい小型捨石投下開口12aを形成されたトレミー管12とを備えた捨石投下システム1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防波堤や護岸の基礎となる捨石マウンドを、捨石の投下によって水底に構築するための捨石投下システム及び捨石投下方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水底にマウンドを構築する場合には、捨石を積んだ作業船を、目的の位置に運航又は曳航した後、バケットで捨石を水面から落とし、水底上に沈下されていた。
【0003】
そして、特に水深が深いときには、海流等によって捨石が散乱し、必要な箇所に対して、所望の量の捨石を沈降させることが困難であり、又、そのような捨石を沈下させるときに、広範囲の海洋汚濁を生じるという問題があった。
【0004】
このような捨石の散乱を防止し、又、必要箇所に迅速に捨石を沈設することができる発明として、特許文献1に記載されたようなものがある。特許文献1には、「水中に沈設されたり水面に浮上することが可能な浮力調整手段を備えた捨石等の投入用シュートであり、使用時には捨石等の投入口が水面に開口された状態で該投入口に接続される筒状の投入体が水中にて略鉛直状に沈設され、曳航等の際には横方向に寝かせた状態で浮上可能としたことを特徴とするシュート。」が記載されている。
【0005】
これによれば、「水中に沈設されたり水面に浮上することが可能な浮力調整手段を備えた捨石等の投入用シュートであり、使用時には捨石等の投入口が水面に開口された状態で該投入口に接続される筒状の投入体が水中にて略鉛直状に沈設され、曳航等の際には横方向に寝かせた状態で浮上可能としたことにより、前記シュートによって捨石等の周囲散乱を防止しつつ必要箇所に迅速に捨石等を沈設することができる。また、マウンド施工時等にはシュートを水中にて略鉛直状に沈設させて捨石等の投入を行い、一方、作業終了時等にはシュートを横方向に寝かせた状態で浮上させることができるので、シュートの取扱いおよびその移動が極めて容易である。更に、シュートは横方向に寝かせた状態で浮上可能であって作業船の底部からシュートが水底方向に突出していないため、浅瀬を運行等させる場合であってもシュートが邪魔にならず、容易に運行等させることができる。」旨記載されている。
【特許文献1】特許2689271号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、作業船によって水面上でシュート(トレミー管)を捨石投下地点まで引張って行き、又、捨石投下地点でシュート(トレミー管)を垂直に配置し、捨石を投下する初期段階から完成までにかけて、シュート(トレミー管)によって比較的少量の捨石を投下していくことで捨石マウンドを構築する必要があり、作業効率が悪くて捨石マウンドの構築に時間のかかる虞があった。特に、構築しようとする捨石マウンドが大きくなればなる程、そのような虞があった。
【0007】
そこで、この発明は、捨石を投下する初期段階から完成までの間にシュート(トレミー管)を用いて捨石マウンドを構築する場合と比較して、捨石マウンドを効率良く構築して工期の短縮化が図れる捨石投下システム及び捨石投下方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、捨石投下用浮体に形成されて捨石を水底へと投下可能な大型捨石投下開口と、該大型捨石投下開口よりも小さい小型捨石投下開口が形成されたトレミー管とを備えた捨石投下システムとしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記トレミー管が、前記大型捨石投下開口に着脱自在であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記大型捨石投下開口の周囲に沿ってレールが配設され、前記トレミー管が、前記レールに沿って移動することによって前記大型捨石投下開口上を移動可能であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記大型捨石投下開口及び/又は前記小型捨石投下開口から投下された捨石が、水底に堆積する状況を検知する音波送受信装置を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、捨石投下用浮体に形成されて捨石を水底へと投下する大型捨石投下開口から、前記捨石を投下して、該捨石によって前記水底に互いに隣接する略山形の複数の堆積部を形成し、前記捨石投下用浮体に設けられ、前記大型捨石投下開口よりも小さい小型捨石投下開口から、前記隣接する堆積部の山形と山形との間の谷部に、前記捨石を投下して前記谷部を埋めるようにした捨石投下方法としたことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の工程に加え、前記大型捨石投下開口から前記捨石を投下して山形の前記堆積部を形成しながら、前記小型捨石投下開口から前記捨石を投下して前記谷部を埋めるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、捨石投下用浮体に形成されて捨石投下システムが、捨石を水底へと投下可能な大型捨石投下開口と、大型捨石投下開口よりも小さい小型捨石投下開口が形成されたトレミー管とを備えている。そのため、大型捨石投下開口から、大量の捨石を水底に投下して捨石マウンドの基礎を速く構築することができると共に、この大型捨石投下開口に小型捨石投下開口を設けることによって小型捨石投下開口から投下量を調節しながら捨石を投下することができる。従って、1つの大型捨石投下開口を、大量の捨石投下と少量の捨石投下との何れにも使用することができるので、一つで二役の役割を果たせるようにすることができる。また、このために、場所を取らずに、大型捨石投下開口と小型捨石投下開口を取扱うことができて捨石投下機構を大型化する必要がない。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、トレミー管が、大型捨石投下開口に着脱自在である。そのため、捨石を水底へと投下する初期段階では、大型捨石投下開口にトレミー管を配置することなく、大型捨石投下開口から捨石を水底へと投下して大量の捨石を速く水底に堆積させることができ、捨石を水底へと投下する仕上げ段階では、大型捨石投下開口にトレミー管を配置して、小型捨石投下開口から捨石を水底へと投下して高精度に堆積した捨石の上面を平坦化することができる。従って、従来に比較して、トレミー管を本当に必要となるときにのみ使用することができ、トレミー管を効果的に使用できる。また、トレミー管は着脱自在であるから、設置位置の自由度がある。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、大型捨石投下開口の周囲に沿ってレールが配設され、トレミー管が、レールに沿って移動することによって大型捨石投下開口上を移動可能である。従って、少数のトレミー管しかない場合であっても、多数のトレミー管を大型捨石投下開口に設置したのと同等以上に高精度に捨石を水底へと投下することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、大型捨石投下開口や小型捨石投下開口から投下された捨石が、水底に堆積する状況を検知する音波送受信装置を備えた。そのため、音波送受信装置によって、音源からマウンドまでの水深を正確に検出することができる。従って、マウンドの高さを正確に把握することができる。また、大型捨石投下開口から捨石を投下することによって形成された堆積部、及び、堆積部の山形と山形との間の谷部の状態を正確に把握することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、捨石投下用浮体に形成されて捨石を水底へと投下する大型捨石投下開口から、捨石を投下して、捨石によって水底に互いに隣接する略山形の複数の堆積部を形成し、捨石投下用浮体に設けられ、大型捨石投下開口よりも小さい小型捨石投下開口から、隣接する堆積部の山形と山形との間の谷部に、捨石を投下して谷部を埋めるようにした。そのため、捨石マウンドを形成する場合に、複数の堆積部を形成するには、大型捨石投下開口から大量に捨石を投下して、堆積部の山形と山形との間の谷部には、小型捨石投下開口から量を調節しながら高精度な捨石の水底への投下をすることができる。従って、従来のように、捨石投下の初期段階から仕上げ段階までの間の全ての段階に渡ってトレミー管を用いて捨石を投下する場合に比較して、工期を大幅に短縮することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、大型捨石投下開口から捨石を投下して山形の堆積部を形成しながら、小型捨石投下開口から捨石を投下して谷部を埋めるようにした。そのため、従来よりも速く捨石を水底に大量に投下することができると共に、従来よりも速く水底に堆積した捨石の上面を平坦化することができる。従って、捨石マウンドを完成させる工期を、更に短縮化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[発明の実施の形態1]
以下、この発明の実施の形態1について説明する。
【0021】
図1乃至図9は、この発明の実施の形態1を示す。
【0022】
まず構成を簡単に説明すると、図1で示すように、「捨石投下用浮体」である捨石投下台船10とガット船30とが、海Sの上に設けられている。捨石投下システム1は、捨石投下台船10に形成されて捨石31を水底へと投下可能な大型捨石投下開口10aと、大型捨石投下開口10aよりも小さい小型捨石投下開口12aが形成されたトレミー管12とを備えている。
【0023】
小型捨石投下開口12aが形成されたトレミー管12は、捨石投下台船10の大型捨石投下開口10aに対して着脱自在に構成されている。また、捨石投下台船10は、ウインチ室13が設けられていて、操船ワイヤ11の先端に設けられた図示しない錨が水底に降ろされて、水面上の所定位置に配置できるようになっている。そして、操船ワイヤ11が、捨石投下台船10の両端部に設けられたウインチ室13内のウインチ操作台13a(図2,図3参照)が作動して引張られることによって、捨石投下台船10が、水面上を移動できるようになっている。また、ウインチ室13の上には、捨石投下台船10の位置や捨石31の堆積具合を管理するコントロール室14が設けられている。
【0024】
一方、ガット船30には、図1で示すように、捨石31が積込まれており、クレーン32を備え、クレーン32に取付けられたクラムシェル33によって捨石31を移動できるようになっている。
【0025】
次に、捨石投下台船10の構成を更に詳しく説明する。
【0026】
捨石投下台船10は、図2(a)で示すように、2つの大型捨石投下開口10aを形成されており、端部中央には、2つのウインチ操作台13aを有するウインチ室13が設けられ、四隅には、フェアリーダ15が設けられ、中央部には、音響測深器16が装備されている。なお、図2(a)では、大型捨石投下開口10aが2つとなっているが、2つより多くても良い。また、捨石31(図2(b),図3(b)参照)の大きさは、直径で10cmから50cm程度でも良いし、これ以上のものを用いても構わない。
【0027】
大型捨石投下開口10aは、図2(a)で示すように、平面視で、長方形に形成され、隣接して2つ形成されており、各大型捨石投下開口10aの大きさは、例えば、長方形の長手方向の長さが、5m乃至10m程度であり、幅が、3m程度である。但し、この長さ及び幅は、この大きさに限定されるものではない。また、規模が大きくなれば、特に、長さ方向を長くすると良い。そうすると、ガット船30が、その大型捨石投下開口10aの長さ方向に沿って移動して、長い距離、捨石31を投下することができるからである。
【0028】
また、大型捨石投下開口10aは、図2(b)で示すように、断面視では、ホッパ型に形成され、傾斜面部10b及び鉛直面部10cが形成されている。ガット船30に積まれた捨石31は、図1で示すように、クレーン32に取付けられたクラムシェル33によって各大型捨石投下開口10aから水底へと投下される。投下された捨石31は、図2(b)で示すように、水底で堆積し、堆積部50a,50bを形成する。
【0029】
そして、堆積部50a,50bの高さが所望の高さになると、ウインチ操作台13aが駆動し、操船ワイヤ11がフェアリーダ15を介して引張られ、捨石投下台船10が、他の場所に移動されて固定できるようになっている(図7参照)。捨石投下台船10は、投錨船によって錨の上げ下ろしを行い、捨石投下区間を大きく移動させることもできる。
【0030】
トレミー管12は、図3(a)で示すように、平面視で方形に形成され、1つの大型捨石投下開口10aにつき、2つ挿嵌される。また、図3(b)で示すように、捨石投下開口10aに引掛けられるように、断面視で、ホッパ型をしており、傾斜面部12bと鉛直面部12cとが形成されている。従って、大型捨石投下開口10の傾斜面部10b上に、トレミー管12の傾斜面部12bで載置できるようになっている。トレミー管12の鉛直面部12cは、捨石投下台船10の鉛直面部10cよりも長く形成されているので、捨石31は、トレミー管12から水底に投下した方が、より確実に水底の所望の位置に誘導される。トレミー管12は、鉛直面部10cにおける穴の形状が円形でも矩形でもよく、円形では、径が2乃至3m程度である。また、トレミー管12の下端部に他のトレミー管を接続することによって長さを長くすることも可能である。水深が深い場合には、トレミー管12を付け足して伸ばすことができ、捨石31が落下する際に潮流によって流される影響を少なくすることができる。
【0031】
音響測深器16は、図2(b)で示すように、水底に向けて超音波を発信し、水底面で反射して返る超音波を受信して水面と水底との距離を検知し、その情報から水底に堆積する捨石31の堆積状況が、コントロール室14の計器によって監視できるようになっている。音響測深器16には、潮位の変動データが、事前に入力されており、捨石投下台船10から、堆積部50a〜50e、後述する谷部53a〜53dやマウンド52までの水深を計測することで、マウンド52の高さを把握する(図2(b)参照)。これらのデータをリアルタイムで得ることで、各々の位置での捨石31の量を的確に演算できる。
【0032】
また、捨石投下台船10の周囲には、図2(b)で示すように、汚濁防止フェンス17が設けられており、大型捨石投下開口10aから投下された捨石31が潮流によって流されて水質汚濁されるのを防止している。
【0033】
捨石投下台船10の大型捨石投下開口10aには、トレミー管12を着脱できるようになっており、図3(a)(b)で示すように、1つの各大型捨石投下開口10aには、2つのトレミー管12を取付けることができるようになっている。
【0034】
次に、この発明の実施の形態1に係る捨石投下システム1による捨石マウンド52の構築手順を述べる。
【0035】
捨石マウンド52の構築は、まず、予定されたマウンド52の高さに近い小山状に形成する初期投下と、これに次いで、投下量が不足している箇所に必要量の捨石31を投下する仕上げ投下によって、捨石マウンド52を構築すると共に、その頂部を均等に敷き詰めることによって行う。
【0036】
まず、捨石投下台船10を、図4(a),(b)で示すように、GPSを用いて捨石マウンド52の位置計測を行って位置を正確に把握しながら所望の位置に曳航し、図示しない投錨船によって錨を下ろして操船ワイヤ11を操ることで捨石投下台船10を海面上で捨石投下を予定している箇所に誘導して係船する。錨によって支持された操船ワイヤ11を、ウインチ室13から操り、捨石投下台船10を自在に位置決めする。
【0037】
次に、捨石31を積載したガット船30を、図5(a),(b)で示すように、捨石投下台船10に接舷する。このとき、各々の大型捨石投下開口10aにつき、ガット船30が一隻づつ接舷する。
【0038】
各ガット船30では、捨石投下台船10に装備しているGPSと音響測深機16のデータから所定位置での捨石投下量を演算して算出し、その場所での捨石投下量が決定される。この時、音響測深機16には、潮位の変動がインプットされており、投下時間に対応できるようになっている。また、海底の高さは、事前に計測されている。
【0039】
各ガット船30では、図6(a),(b)で示すように、クレーン32が、クレーン32の先端に装備されたクラムシェル33によって捨石31を掴み取り、積込まれていた捨石31を算出された量になるまで、次々と、一つあるいは複数の大型捨石投下開口10aから捨石31を投下して、図6(b)で示すように、堆積部50aが形成される。捨石31を海底へと投下する時、及び、投下後に、所定位置で捨石マウンド52の形成状況を音響測深機16で確認する。
【0040】
計画所要量の捨石31を投下して堆積部50aの形成が完了すると、捨石投下台船10では、GPSを用いて、図7(a),(b)で示すように、ウインチ室13の指令によって操船ワイヤ11が引張られ、堆積部50aに隣接する次に捨石31の投下を予定している箇所へと誘導されて設置される。そして、同様に捨石31を投下して堆積部50bを構築し、その後も同様に、順次、堆積部50c,50d,50eが形成される。大型捨石投下開口10aから投下された捨石31は、小山状になり捨石投下台船10の移動に伴って、小山が重なり合った状態の小山群が形成される(初期投下工程)。このとき、計画された捨石マウンド52の幅を確保するように捨石31を投下する。
【0041】
なお、捨石31の投下時には、随時、音響測深器16によって、堆積する堆積部50a〜50eの高さを正確に把握する。
【0042】
捨石マウンド52を形成する予定地全体に渡って堆積部50a〜50eを形成した後に、捨石マウンド52の高さを仕上げるために、ガット船30に積まれているトレミー管12をクレーン32の操作によって、大型捨石投下開口10aに設置する。そして、捨石投下台船10をウインチ室13による操船によって移動させ、捨石マウンド52が小山群として形成された各堆積部50a〜50eの山形と山形の間の谷部53a〜53dに対して、図8(a),(b)で示すように、トレミー管12から必要量の捨石31を正確に投下して堆積部間堆積部51a〜51dを築いていく。そして、図8(b)の2点鎖線で示すように、正確かつ効率的な捨石マウンド52が形成されるように、捨石31が高精度に投下される。この際に、GPSと音響測深機16のデータから、所定位置での捨石31の投下量を演算して算出し、一つあるいは複数のトレミー管12から、算出された所定の捨石量を投下する。また、捨石31の投入時には、捨石31の量が過不足とならないように、図示しないGPSによって捨石投下台船10の位置計測を行うと共に、音響測深機16によって堆積部50a〜50dの高さを確認する。捨石31の投下後にも、所定位置で、捨石マウンド52の形成状況をGPSと音響測深機16で確認し、所定位置での捨石31の投下を終了する。最終的には、図9(a),(b)で示すように、捨石マウンド52が形成される。これによって計画幅を確保して、均一な高さの捨石マウンド52を正確に効率よく構築することができる(仕上げ投下工程)。
【0043】
このような捨石投下システム1によれば、捨石投下台船10が、捨石31を水底へと投下可能な複数の大型捨石投下開口10aと、大型捨石投下開口10aよりも小さい小型捨石投下開口12aが形成された複数のトレミー管12とを備えている。そのため、大型捨石投下開口10aから、大量の捨石31を水底に投下して捨石マウンド52の基礎を速く構築することができると共に、この大型捨石投下開口10aに小型捨石投下開口12aを設けることによって小型捨石投下開口12aから投下量を調節しながら捨石31を投下することができる。従って、1つの大型捨石投下開口10aを、大量の捨石31投下と少量の捨石31投下との何れにも使用することができるので、一つで二役の役割を果たせるようにすることができる。また、このために、場所を取らずに、大型捨石投下開口10aと小型捨石投下開口12aを取扱うことができて捨石投下機構を大型化する必要がない。さらに、従来のように捨石31を投下する初期投下から仕上げ投下を経過して完成までの間にトレミー管12を用いて捨石マウンド52を構築する場合と比較して、捨石マウンド52を効率良く正確に構築して工期の短縮化が図れる。
【0044】
また、トレミー管12が、大型捨石投下開口10aに着脱自在である。そのため、捨石31を水底へと投下する初期段階では、大型捨石投下開口10aにトレミー管12を配置することなく、大型捨石投下開口10aから捨石31を水底へと投下して大量の捨石31を速く水底に堆積させることができ、捨石31を水底へと投下する仕上げ段階では、大型捨石投下開口10aにトレミー管12を配置して、小型捨石投下開口12aから捨石31を水底へと投下して高精度に堆積した捨石31の上面を平坦化することができる。従って、従来に比較して、トレミー管12を本当に必要となるときにのみ使用することができ、トレミー管12を効果的に使用することができる。
【0045】
さらに、大型捨石投下開口10aや小型捨石投下開口12aから投下された捨石31が、水底に堆積する状況を検知する音波送受信装置16を備えた。そのため、音波送受信装置16によって、音源から堆積部50a〜50e又は谷部53a〜53dまでの水深を正確に検出することができる。従って、捨石マウンド52の高さを正確に把握することができる。また、大型捨石投下開口10aから捨石31を投下することによって形成された堆積部50a〜50e、及び、堆積部50a〜50eの山形と山形との間の谷部53a〜53dの状態を正確に把握することができる。
【0046】
また、捨石投下用浮体10に形成されて捨石31を水底へと投下する大型捨石投下開口10aから、捨石31を投下して、捨石31によって水底に互いに隣接する略山形の複数の堆積部を形成し、捨石投下用浮体10に設けられ、大型捨石投下開口10aよりも小さい小型捨石投下開口12aから、隣接する堆積部の山形と山形との間の谷部に、捨石31を投下して谷部を埋めるようにした。そのため、捨石マウンド52を形成する場合に、複数の堆積部を形成するには、大型捨石投下開口10aから大量に捨石を投下して、堆積部の山形と山形との間の谷部には、小型捨石投下開口12aから量を調節しながら高精度な捨石31の水底への投下をすることができる。従って、従来のように、捨石31投下の初期段階から仕上げ段階までの全ての段階に渡ってトレミー管12を用いて捨石を投下していた場合に比較して、工期を大幅に短縮することができる。
【0047】
本捨石投下台船10は、複数の大型捨石投下開口10aを備え、大型捨石投下開口10aに着脱可能な複数のトレミー管12を設置して、計測データを下に、捨石投下方法を組合わせることで、正確に効率的に捨石マウンド52を構築することができる。正確かつ効率良く、均一な高さの捨石マウンド52を構築することができるので、手戻りが少なく、工期が短縮でき、これによる工費削減が可能となることで、経済的な効果を得ることができる。
[発明の実施の形態2]
【0048】
以下、この発明の実施の形態2について説明する。
【0049】
図10は、この発明の実施の形態2を示す。図10(a),(b)において、この発明の実施の形態1と同一部材については、同一符号を付して、以下の説明を省略する。
【0050】
この発明の実施の形態2における捨石投下システム100が、この発明の実施の形態1における捨石投下システム1と異なるのは、この発明の実施の形態1における捨石投下システム1によると、2つの大型捨石投下開口10aの各々に対してトレミー管12を取付ける構成であったが、捨石マウンド52の工期を更に短縮化できるようにするために、図10(a),(b)で示すように、2つある大型捨石投下開口10aの一つにのみトレミー管12を取付けるようにしている点である。図示では、トレミー管12は、2つになっているが、1つでも良い。また、小型のトレミー管12が2つ以上になっても効果的である。
【0051】
このような捨石投下システム100によれば、大型捨石投下開口10aから捨石31を投下して山形の堆積部50を形成しながら、小型捨石投下開口12aから捨石31を投下して谷部53a〜53dを埋めるようにすることができる。そのため、従来よりも速く捨石31を水底に大量に投下することができると共に、従来よりも速く水底に堆積した捨石31の上面を平坦化することができる。従って、捨石マウンド52を完成させる工期を、更に短縮化することができる。
[発明の実施の形態3]
【0052】
以下、この発明の実施の形態3について説明する。
【0053】
図11及び図12は、この発明の実施の形態3を示す。図11及び図12において、この発明の実施の形態1と同一部材については、同一符号を付して、以下の説明を省略する。
【0054】
この発明の実施の形態3における捨石投下システムが、この発明の実施の形態2における捨石投下システム100と異なるのは、図11及び図12で示すように、捨石投下台船10の大型捨石投下開口10aの近傍に沿って走行レール201を配設している点と、図12で示すように、この走行レール201上で車輪203を備えた走行台車202を移動できるようにしている点と、この走行台車202に、一つあるいは複数のトレミー管12を乗せて、トレミー管12に形成された小型捨石投下開口12aが、大型捨石投下開口10a上の所望の位置に移動できるようにした点である。
【0055】
すなわち、「捨石投下用浮体」である捨石投下台船200は、図11及び図12で示すように、四角に形成された大型捨石投下開口10aにおける対向する2辺に沿って、その大型捨石投下開口10aの近傍に走行レール201が配設されている。この走行レール201には、走行台車202にトレミー管12を載置し、トレミー管12を所定位置へ移動可能となっている。そして、その大型捨石投下開口10a上に走行台車202を介して載置されるトレミー管12は、この発明の実施の形態1と異なり、小型捨石投下開口12aが、大型捨石開口10aの範囲内を微小移動可能となっている。
【0056】
走行台車202には、車輪203を駆動させる図示しない駆動モータが装備されている。図示しない駆動モータは、手元操作盤、及び、遠隔操作盤で走行又は停止することができる。
【0057】
このような捨石投下システムによれば、大型捨石投下開口10aの周囲に沿って走行レール201が配設され、トレミー管12が、走行レール201に沿って移動することによって大型捨石投下開口10a上を移動可能である。従って、少数のトレミー管12しかない場合であっても、多数のトレミー管12を大型捨石投下開口10aに設置したのと同等以上に高精度に捨石31を水底へと投下することができる。
【0058】
なお、この発明の実施の形態3では、トレミー管13を走行台車202に対して着脱する形態であったが、上記実施の形態に限定されない。すなわち、トレミー管12を走行台車202に固定して一体で走行レール201に着脱することも可能である。
【0059】
また、この発明の実施の形態1、2、3において、大型捨石投下開口10aは、2つ設置しているが、もちろん、捨石マウンド52の規模によって2つ以上となる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の実施の形態1に係る捨石投下システムの構成を示す斜視図である。
【図2】同実施の形態に係る捨石投下用浮体を示し、(a)は、捨石投下用浮体の構成を示す平面図であり、(b)は、捨石投下用浮体による捨石の投下状況を示す説明図である。
【図3】同実施の形態に係る捨石投下用浮体にトレミー管を取付けた状態を示し、(a)は、トレミー管を取付けられた捨石投下用浮体の構成を示す平面図であり、(b)は、トレミー管を取付けられた捨石投下用浮体による捨石の投下状況を示す説明図である。
【図4】同実施の形態に係る捨石投下用浮体を、捨石投下箇所に設置する捨石マウンドの施工手順を示す説明図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、側面図である。
【図5】同実施の形態に係る捨石投下用浮体に、ガット船を接舷する施工手順を示す説明図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、側面図である。
【図6】同実施の形態に係る捨石投下用浮体の大型捨石投下開口から捨石を投下する施工手順を示す説明図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、側面図である。
【図7】同実施の形態に係る捨石投下用浮体を、海面上で移動する状況を示す説明図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、側面図である。
【図8】同実施の形態に係る捨石投下用浮体の大型捨石投下開口に、トレミー管を取付けて捨石を水底に投下する状況を示す説明図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、側面図である。
【図9】同実施の形態に係る捨石マウンドが完成した状態を示す説明図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、側面図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係る捨石投下システムを示し、(a)は、平面図であり、(b)は、側面図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係る捨石投下システムを示す平面図である。
【図12】同実施の形態に係る捨石投下システムを示し、(a)は、断面図であり、(b)は、(a)の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1,100 捨石投下システム
10,200 捨石投下台船(捨石投下用浮体)
12 トレミー管
16 音響測深器
30 ガット船
31 捨石
50a〜50e 堆積部
50a-1〜50e-1 堆積部間堆積部
53a〜53d 谷部
52 捨石マウンド
201 走行レール
202 走行台車
203 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
捨石投下用浮体に形成されて捨石を水底へと投下可能な大型捨石投下開口と、
該大型捨石投下開口よりも小さい小型捨石投下開口が形成されたトレミー管とを備えたことを特徴とする捨石投下システム。
【請求項2】
前記トレミー管が、前記大型捨石投下開口に着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載の捨石投下システム。
【請求項3】
前記大型捨石投下開口の周囲に沿ってレールが配設され、前記トレミー管が、前記レールに沿って移動することによって前記大型捨石投下開口上を移動可能であることを特徴とする請求項2に記載の捨石投下システム。
【請求項4】
前記大型捨石投下開口及び/又は前記小型捨石投下開口から投下された捨石が、水底に堆積する状況を検知する音波送受信装置を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の捨石投下システム。
【請求項5】
捨石投下用浮体に形成されて捨石を水底へと投下する大型捨石投下開口から、前記捨石を投下して、該捨石によって前記水底に互いに隣接する略山形の複数の堆積部を形成し、
前記捨石投下用浮体に設けられ、前記大型捨石投下開口よりも小さい小型捨石投下開口から、前記隣接する堆積部の山形と山形との間の谷部に、前記捨石を投下して前記谷部を埋めるようにしたことを特徴とする捨石投下方法。
【請求項6】
前記大型捨石投下開口から前記捨石を投下して山形の前記堆積部を形成しながら、前記小型捨石投下開口から前記捨石を投下して前記谷部を埋めるようにしたことを特徴とする請求項5に記載の捨石投下方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−63959(P2007−63959A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255233(P2005−255233)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000207780)大豊建設株式会社 (77)
【Fターム(参考)】