説明

捲縮性複合繊維及びこれを用いた不織布

【課題】耐熱性に優れ、熱加工の際の嵩減少(へたり)が小さく、初期嵩および嵩回復性の大きい不織布が得られる捲縮性複合繊維を提供する。
【解決手段】捲縮性複合繊維は、第一成分1と第二成分2を含み、第一成分1は、ポリブテン−1を60〜95質量%とポリプロピレンを5〜40質量%含み、第二成分2は、ポリブテン−1の融点よりも20℃以上高い融点を有するポリマーであり、繊維断面において、第一成分1は複合繊維10表面の少なくとも20%を占めており、第一成分1は鞘、第二成分2は芯に配置されており、第二成分の重心位置3は複合繊維の重心位置4からずれており、複合繊維10は、波形状捲縮及び螺旋状捲縮から選ばれる少なくとも一種の捲縮を有しており、複合繊維のJIS L 1015に準じて、初荷重0.45mN/dtex(50mg/de)、温度120℃で15分間乾熱処理して測定した乾熱収縮率が5%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として嵩弾性に優れる不織布に適した捲縮性複合繊維及びこれを用いた不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生材料、包装材、ウェットティッシュ、フィルター、ワイパー等に用いられる不織布、或いは硬綿、椅子等に用いられる不織布、成形体など様々な用途において、低融点成分の少なくとも一部が繊維表面に露出し、低融点成分よりも融点が高い高融点成分からなる熱融着性複合繊維を用いた熱接着不織布が使用されており、特に、不織布の嵩弾性、すなわち厚み方向での嵩回復性に優れる繊維の要求が、発泡ウレタン代替として大きくなっている。発泡ウレタン代替として要求が大きい理由は、生産する際に使用する薬品の取り扱いが難しかったり、フロンが排出されたり、廃棄が難しい問題がある。また、得られた発泡ウレタンの特性として、圧縮の際、圧縮初期に硬く感じるという問題があったり、通気性が乏しく蒸れやすかったり、吸音性が十分でなかったり、黄変し易かったりするからである。従って、嵩回復性に優れる不織布について様々の検討がなされている。
【0003】
下記引用文献1〜2は、融点が200℃以上のポリエステル成分と、融点が180℃以下のポリエーテルエステルブロック共重合体成分、いわゆるエラストマー成分とからなる複合繊維を提案している。鞘成分にエラストマー成分を使用することによって、圧縮変形を受けた際に、接着部分の自由度、及び耐久性が向上するために、嵩回復性が優れる。
【0004】
下記引用文献3は、ポリトリメチレンテレフタレート系ポリマーを含有する第一成分と、ポリオレフィン系ポリマーを含有する第二成分から構成され、繊維断面において第一成分の重心位置が繊維の重心位置からずれている複合繊維を提案している。第一成分に、曲げ弾性が大きく、かつ曲げ硬さの小さいポリマーを使用し、更に、繊維断面を偏心とし、捲縮形状を波形状とすることによって、嵩回復性に優れ、柔軟な、更に初期嵩の大きい不織布が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−240219号公報
【特許文献2】特開平5−247724号公報
【特許文献3】特開2003−3334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記引用文献1〜2では、鞘成分にポリエステルエーテルエラストマーを使用しており、このポリマーがゴム状弾性を有し、接着点の変形に対する自由度が大きいため、嵩回復性に優れる不織布を得ようとしている。しかし、このポリエステルエーテルエラストマーは硬質なポリエステルと軟質なエーテルとの共重合体であり、軟質成分を含むため、熱により柔らかくなり易く(耐熱性が低いため)、熱加工時に不織布の嵩が減少してしまう、いわゆるへたりが生じる。その結果、鞘成分にポリエステルエーテルエラストマーを使用した複合繊維は、不織布にしたときの初期嵩が小さく、高密度な不織布しか得られず、用途が限定されるという問題があった。また、熱が加わった状態で圧縮された後、あるいは繰り返し圧縮された後の不織布は、繊維同士の接着点および繊維自体が破壊されたり、折れ曲がったり、繊維強度が低下するなど、元の不織布に比べて不織布硬さが大きく低下するという問題があった。
【0007】
前記引用文献3では、芯のポリマー、及び繊維断面を特定のものとし、且つ、捲縮状態を特定のものにすることによって、嵩回復性に優れる不織布を得ようとするものであるが、初期の不織布厚み(初期嵩)が大きいものの、嵩回復性、特に除重直後の初期嵩回復性が十分とはいえず、用途が限定されるという問題があった。
【0008】
したがって、従来技術では初期嵩が大きく(低密度な)、且つ、嵩回復性に優れる不織布用繊維は得られていなかった。
【0009】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、耐熱性に優れ、熱加工の際の嵩減少(へたり)が小さく、初期嵩の大きい不織布が得られる捲縮性複合繊維及びこれを用いた不織布を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の捲縮性複合繊維は、第一成分と第二成分を含む複合繊維であって、前記第一成分は、ポリブテン−1を60〜95質量%とポリプロピレンを5〜40質量%とを含み、前記第二成分は、ポリブテン−1の融点よりも20℃以上高い融点を有するポリマーであり、繊維断面から見たとき、前記第一成分は前記複合繊維表面の少なくとも20%を占めており、前記第一成分は、前記複合繊維の鞘に配置され、前記第二成分は前記複合繊維の芯に配置されており、前記第二成分の重心位置は前記複合繊維の重心位置からずれており、前記複合繊維は、波形状捲縮及び螺旋状捲縮から選ばれる少なくとも一種の捲縮を有しており、前記複合繊維のJIS L 1015に準じて、初荷重0.45mN/dtex(50mg/de)、温度120℃で15分間乾熱処理して測定した乾熱収縮率は、5%以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の不織布は、前記の捲縮性複合繊維を少なくとも30質量%含有させていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の捲縮性複合繊維は、第一成分にポリブテン−1を選択し、さらにポリブテン−1(PB−1)との相溶性が高いポリプロピレン(PP)をブレンドすることにより、紡糸性及び延伸性が良好となり、特に単繊維熱収縮を小さくすることができ、初期嵩および嵩回復性に優れた不織布を得ることができる。
【0013】
本発明の捲縮性複合繊維を用いた不織布は、従来のエラストマーを用いた複合繊維からなる不織布に比べて初期嵩と嵩回復性共に優れており、クッション材等の硬綿、衛生材料、包装材、フィルター、化粧品用材料、女性のブラジャーのパッド、肩パッド等の低密度の不織布製品にも使用することができる。さらに、本発明の捲縮性複合繊維を用いた不織布は、高温(例えば60〜90℃程度)での嵩回復性にも優れており、耐熱性が要求される分野、例えば車両用クッション材、床暖房用フローリングの裏打ち材等に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の一実施形態における捲縮性複合繊維の繊維断面を示す。
【図2】図2A〜Cは、本発明の一実施形態における捲縮性複合繊維の捲縮形態を示す。
【図3】図3は従来の機械捲縮の形態を示す。
【図4】図4は本発明の別の実施形態における捲縮性複合繊維の捲縮形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の捲縮性複合繊維は、第一成分(例えば、鞘の接着成分)としてポリブテン−1(PB−1)を用いる。このポリマーは比較的柔軟であるが、エラストマーのように軟質成分を含まず、耐熱性に優れるため、熱加工の際の嵩減少(へたり)が小さく、初期嵩の大きい不織布が得られる。また、PB−1は、エラストマー同様、ある程度の柔軟性、及び形状維持性(変形に対するもどり)を有するため、圧縮の際の接着点が変形し、更に変形に対する回復性に優れ、嵩回復性に優れる不織布が得られる。
【0016】
ところがPB−1は、高分子量であるというポリマー特性を有し、分子鎖の自由度が乏しいため、延伸で延びにくく、延伸トラブルを引き起こしやすい。また、熱収縮性が非常に大きいため、熱加工の際に繊維が収縮し、良好な不織布が得られにくい。更に、温度に対する粘度の低下の割合が、他のポリマーに比べ大きいため、特に芯ポリマーに融点の高い(例えば、ポリエステル)を使用した場合、紡糸温度を上げる必要があり、その際のノズル吐出ポリマーの粘度が安定しにくく、均一な繊維を得にくいという問題があった。また、PB−1の融点は120℃程度と比較的低いため、70℃程度の高温下で使用される場合の嵩回復性に問題があった。
【0017】
そこで、種々検討の結果、PB−1に少量のポリプロピレン(PP)を添加することによって、前記延伸性、熱収縮性、溶融粘度不安定の全てを解決することができることが判明した。
【0018】
具体的には、複合繊維の第一成分として、ポリブテン−1を60〜95質量%と、ポリプロピレンを5〜40質量%とを混合して使用する。前記第一成分は例えば複合繊維の鞘に配置する。
【0019】
複合繊維の第二成分としては、融点が鞘よりも高いポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリプロピレン(PP)等を使用する。前記第二成分は例えば複合繊維の芯に配置する。
【0020】
繊維断面形状は、第二成分の重心位置が繊維の重心位置からずれている、偏心断面とし、波形状及び/又は螺旋状捲縮とする。これにより、不織布の初期嵩を大きくすることが容易となり、さらに圧縮の際スプリング効果を発揮し、嵩回復性に優れる不織布を得ることができる。
【0021】
以下さらに好ましい例を説明する。まず、本発明に用いられるPB−1は、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求められる融解ピーク温度が115〜130℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、120〜130℃である。融解ピーク温度が115〜130℃の範囲であると、耐熱性が高く、高温下での嵩回復性が良好である。
【0022】
前記PB−1のJIS−K−7210に準ずるメルトインデックス(MI;測定温度190℃、荷重2.16kgf(21.18N))は、1〜30g/10分の範囲であることが好ましい。より好ましいMIは3〜25g/10分であり、さらにより好ましくは3〜20g/10分である。MIが1〜30g/10分の範囲であると、PB−1の高分子量となるため、耐熱性が良好であり、温度がかかったときの嵩回復性が高く、好ましい。また、紡糸引き取り性、および延伸性が良好となる。
【0023】
前記PPの添加量の上限は、添加量が増えるにつれ、延伸性がよくなり、熱収縮性が小さく、および溶融粘度の安定性は良くなるが、入れすぎると得られる不織布が硬くなる傾向がある。また、PP添加量が多いと、ポリマーの柔軟性が悪くなり、接着点の変形自由度が小さくなるため、嵩回復性が悪くなる。また、PP添加量が増えるに従って、PB−1の結晶化速度を阻害するため、紡糸引き取り時冷却しきれず、融着糸が発生しやすくなる。従って、40質量%以下にすることが必要である。PPの添加量の下限は、5質量%である。5質量%未満であると、溶融温度に対するポリマー粘度低下防止の効果がない。また、熱収縮率防止効果も小さい。従って、ポリプロピレンの添加量は、5質量%以上40質量%以下、好ましくは、7質量%以上30質量%以下、最も好ましくは10質量%以上25質量%以下である。PB−1とPPを溶融ブレンドさせると、両ポリマーは相溶化しやすい。また、ポリブテン−1(PB−1)との相溶性が高いポリプロピレン(PP)をブレンドすることにより、紡糸性及び延伸性が良好となり、単繊維熱収縮が小さくなる。すなわち、PB−1のみでは溶融粘度が低く流動性が高すぎるため、溶融紡糸の安定性が悪いが、PPをブレンドすることにより流動特性を向上し、安定して均一な紡糸ができる。また、PB−1のみでは熱収縮が大きいため、機械捲縮付与後の110℃前後の乾燥処理時に捲縮が細かくなりすぎたり、不織布加工の際に面積収縮率が大きすぎたりし、地合いが悪く、初期嵩、および嵩回復性も悪い不織布になってしまう場合があるが、PPをブレンドすることによりこれを防止できる。また、ポリブテン−1のみでは延伸性が悪いが、PPをブレンドすることにより延伸性も改善される。これは、前述したようにポリブテン−1は分子量が大きく(つまり、分子鎖が長い)、分子同士の絡み合いが大きいため、延伸しにくいといった問題があるが、PPをブレンドすることによって、PPが高分子量のポリブテン−1分子鎖間へ入り込み、ポリブテン−1分子鎖の絡み合いを適度に抑制しているためと推定される。
【0024】
前記PPは、ホモポリマー、ランダム共重合体、あるいはブロック共重合体のいずれであっても構わないが、熱収縮性を考慮すると、ホモポリマー又はブロック共重合体であることが好ましい。特に、ホモポリマーは若干風合いが硬くなる傾向にあるが、嵩回復性に有利であり、好ましい。
【0025】
前記PPにおける重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)は、6以下であることが好ましい。より好ましいQ値は、2〜5である。Q値を6以下、つまり分子量分布が小さいと、高分子量のPPの含有量が少なくなるため、PPがPB−1の分子鎖間に入り込み易くなり、その結果熱収縮を小さくすることができる。
【0026】
前記PPの添加量と、PPのQ値とは、添加量/Q値比が2.3以上であることが好ましい。より好ましくは2.4以上であり、最も好ましくは2.5以上である。PP添加量/Q値比は、PPがPB−1の分子鎖間への入り込みやすさを示す指標であり、繊維の収縮性に影響を及ぼす指標である。PP添加量/Q値が2.3以上であると、PPの添加量が大きいか、Q値が小さいということを意味し、嵩回復性はPB−1の添加量に依存するので、その双方の値のバランスを調整することにより、繊維の収縮を抑制するとともに、嵩回復性を高くすることができる。例えば、PPの添加量が少ない場合はPB−1分子鎖間へ十分な量のPPが入り込むので、繊維の収縮が小さくなる傾向にある。また、PPのQ値が小さい場合もPB−1の分子鎖間に入り込み易くなり、やはり繊維の収縮が小さくなる傾向にある。一方、添加量/Q値比の上限は特に限定されないが、繊維の収縮抑制と嵩回復性を考慮すると、10以下であることが好ましい。
【0027】
前記PPにおけるJIS−K−7210に準ずるメルトフローレート(MFR;測定温度230℃、荷重2.16kgf(21.18N))は、5〜30g/10分の範囲であることが好ましい。より好ましいMFRは、6〜25g/10分の範囲である。MFRが5〜30g/10分の範囲であると、PB−1の溶融粘度の低下を抑制することができ、PPがPB−1の分子鎖間に入り込むのに適度な分子量であるので、その結果均一な繊維が得られ、熱収縮を小さくすることができる。
【0028】
第一成分にさらにブレンドできるポリマーとしては、嵩高性及び嵩回復性を阻害しない範囲で、例えば、ビニル基、カルボシキル基、無水マレイン酸等極性基を持つオレフィン等との共重合ポリマー、スチレン系等のエラストマーなどが挙げられる。
【0029】
第二成分は、曲げ強さ、曲げ弾性に優れるポリマーが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66,ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレンなどが挙げられる。特に、ポリエステルが好ましい。最も好ましくは、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)である。
【0030】
本発明で好ましく用いられるPTTは、PTTホモ樹脂、下記に示すPTT共重合樹脂、あるいはPTTと他のポリエステル系樹脂とのブレンドであってもよく、捲縮性複合繊維としたときの乾熱収縮率を低く抑えて、所望の波形状捲縮及び/又は螺旋状捲縮を得られる範囲で、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸等の酸成分や、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール等のグリコール成分、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール等が10質量%以下共重合されていてもよいし、PET、PBTなど他のポリエステル系樹脂を50質量%以下でブレンドしてもよい。前記共重合成分は、10質量%を超えると、曲げ弾性率が小さくなるため好ましくない。一方、他のポリエステル系樹脂のブレンド率が50質量%を超えると、ブレンドした他のポリエステル系樹脂の性質に近づくため好ましくない。
【0031】
前記PTTの極限粘度[η]は、0.4〜1.2が好ましい。より好ましくは、0.5〜1.1である。極限粘度[η]を上記範囲とすることにより、生産性に優れ、嵩弾性に優れた複合繊維を得ることができる。ここでいう極限粘度[η]とは、35℃のo−クロロフェノール溶液として、オストワルド粘度計により測定した、下記式(数1)に基づいて求められる値である。
【0032】
【数1】

【0033】
(ただし、ηr:純度98%以上のo−クロロフェノールで溶解した試料の希釈溶液における35℃での粘度を同一温度で測定した上記溶剤全体の濃度で除した値。C:上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値。)
極限粘度が0.4未満であると、樹脂の分子量が低すぎるため、紡糸性に劣るだけでなく、繊維強度も低く、実用性に乏しい。極限粘度が1.2を超えると、樹脂の分子量が大きくなって溶融粘度が高くなりすぎるため、単糸切れ等が発生し良好な紡糸が難しくなり好ましくない。
【0034】
前記PTTのJIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求められる融解ピーク温度は180℃〜240℃であることが好ましい。より好ましくは200℃〜235℃である。融解ピーク温度が180〜240℃の範囲であると、耐候性が高く、得られる複合繊維の曲げ弾性率を高くすることができる。
【0035】
また、前記PTTには、必要に応じて各種の添加剤、例えば、帯電防止剤、顔料、艶消し剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、抗菌剤、滑剤、可塑剤、柔軟剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤などを本発明の目的及び効果を損なわない範囲で用途等に応じて混合することができる。
【0036】
複合比(芯/鞘)は、8/2〜4/6(容積比)が好ましい。より好ましくは7/3〜45/55、最も好ましくは6/4〜5/5である。芯成分は、主として嵩回復性に寄与し、鞘成分は、主として不織布強力および不織布の硬さに寄与する。その複合比が8/2〜4/6であると、不織布強力および硬さと、嵩回復性を両立することができる。複合比は、鞘リッチになると、不織布強力は上がるが、得られる不織布が硬くなったり、嵩回復も悪くなる傾向になる。一方、芯リッチになりすぎると接着点が少なくなりすぎ、不織布強力が小さくなったり、これも嵩回復性も悪くなる傾向となる。
【0037】
本発明においては、第二成分の重心位置は複合繊維の重心位置からずれている。図1に本発明の一実施形態における捲縮性複合繊維の繊維断面を示す。第二成分(2)の周囲に第一成分(1)が配置され、第一成分(1)が複合繊維(10)表面の少なくとも20%を占めている。これにより第一成分(1)は熱接着時に表面が溶融する。第二成分(2)の重心位置(3)は複合繊維(10)の重心位置(4)からずれており、ずれの割合(以下、偏心率と記載する場合がある。)は、複合繊維の繊維断面を電子顕微鏡などで拡大撮影し、第二成分(2)の重心位置(3)をC1とし、複合繊維(10)の重心位置(4)をCfとし、複合繊維(10)の半径(5)をrfとしたとき、下記式(数2)で示す数値をいう。
【0038】
【数2】

【0039】
第二成分(2)の重心位置(3)が繊維の重心位置(4)からずれている繊維断面としては、図1に示す偏心芯鞘型、あるいは並列型であることが好ましい形態である。場合によっては、多芯型であっても多芯部分が集合して繊維の重心位置からずれて存在しているものでも可能である。特に、偏心芯鞘型の繊維断面であると、容易に所望の波形状捲縮及び/又は螺旋状捲縮を発現させることができる点で好ましい。偏心芯鞘型複合繊維の偏心率は、5〜50%であることが好ましい。より好ましい偏心率は、7〜30%である。また、第二成分の繊維断面における形態は、円形以外に、楕円形、Y形、X形、井形、多角形、星形などの異形であってもよく、複合繊維(10)の繊維断面における形態は、円形以外に、楕円形、Y形、X形、井形、多角形、星形などの異形、あるいは中空形であってもよい。
【0040】
図2に本発明の一実施形態における捲縮性複合繊維の捲縮形態を示す。本発明でいう波形状捲縮とは、図2Aに示すような捲縮の山部が湾曲したものを示す。螺旋状捲縮とは、図2Bに示すような捲縮の山部が螺旋状に湾曲したものを示す。図2Cに示すような波形状捲縮と螺旋状捲縮とが混在した捲縮も本発明に含まれる。図3に示すような通常の機械捲縮の場合は、捲縮の山が鋭角である、いわゆる鋸歯状捲縮のままであると、不織布としたときの初期嵩を大きくすることができない。さらに、圧縮に対する面弾性、いわゆるスプリング効果に劣り、特に十分な初期嵩回復性が得られない。また、図4に示すように機械捲縮の鋭角な捲縮と、図2Aに示す波形状捲縮が混在した捲縮も本発明に含まれる。
【0041】
本発明においては、特に図2Cに示す波形状捲縮と螺旋状捲縮とが混在した捲縮であることが、カード通過性と初期嵩および嵩回復性を両立できる点で好ましい。
【0042】
次に、本発明の捲縮性複合繊維の製造方法について説明する。前記捲縮性複合繊維は、以下のように製造することができる。まず、ポリブテン−1を60〜95質量%とポリプロピレンを5〜40質量%とを含む第一成分と、ポリブテン−1の融点よりも20℃以上高い融点を有するポリマーである第二成分として、繊維断面において第一成分が繊維表面の少なくとも20%を占め、第二成分の重心位置が繊維の重心位置からずれるように配置された複合型ノズル、例えば偏心芯鞘型複合ノズルを用いて、第二成分を紡糸温度240〜330℃、第一成分を紡糸温度200〜300℃で溶融紡糸し、引取速度100〜1500m/minで引き取り、紡糸フィラメントを得る。次いで、延伸温度を第二成分のガラス転移点以上、第一成分の融点未満の温度で、延伸倍率1.8倍以上で延伸処理を施す。より好ましい延伸温度の下限は、第二成分のガラス転移点より10℃高い温度である。より好ましい延伸温度の上限は、90℃である。延伸温度が第二成分のガラス転移点未満であると、第一成分の結晶化が進みにくいため、熱収縮が大きくなったり、嵩回復性が小さくなる傾向がある。延伸温度が第一成分の融点以上であると、繊維同士が融着するからである。より好ましい延伸倍率の下限は、2倍である。より好ましい延伸倍率の上限は、4倍である。延伸倍率が1.8倍未満であると、延伸倍率が低すぎるため、波形状捲縮および/または螺旋状捲縮が発現した繊維を得ることが難しく、初期嵩が小さくなるだけでなく、繊維自体の剛性も小さくなりため、カード通過性などの不織布工程性に劣ったり、嵩回復性も劣る傾向がある。また、このとき前記延伸時の前後において必要に応じて90〜115℃の乾熱、湿熱、蒸熱等の雰囲気下でアニーリング処理を施してもよい。
【0043】
次いで、必要に応じて繊維処理剤を付与する前または後に、スタッファボックス式捲縮機など公知の捲縮機を用いて捲縮数5個/25mm以上、25個/25mm以下の捲縮を付与する。捲縮機を通過した後の捲縮形状は、鋸歯状捲縮及び/又は波形状捲縮であるとよい。捲縮数が5個/25mm未満であると、カード通過性が低下すると共に、不織布の初期嵩や嵩回復性が悪くなる傾向がある。一方、捲縮数が25個/25mmを超えると、捲縮数が多すぎるためにカード通過性が低下し、不織布の地合が悪くなるだけでなく、不織布の初期嵩も小さくなる恐れがある。
【0044】
さらに、前記捲縮機にて捲縮を付与した後、90〜115℃の乾熱、湿熱、あるいは蒸熱の雰囲気下でアニーリング処理を施すとよい。具体的には、繊維処理剤を付与した後に捲縮機にて捲縮を付与し、90〜115℃の乾熱雰囲気下でアニーリング処理と同時に乾燥処理を施すことが、工程を簡略化することができ、好ましい。アニーリング処理が90℃未満であると、乾熱収縮率が大きくなる傾向であり、得られる不織布の地合が乱れたり、生産性が低下したりする恐れがある。
【0045】
上記方法により得られた複合繊維は、主として、図2に示すような捲縮数5個/25mm以上、25個/25mm以下の波形状捲縮と螺旋状捲縮から選ばれる少なくとも一種の捲縮を有するので、後述するカード工程性を低下させることなく、嵩高な不織布を得ることができ、好ましい。そして、所望の繊維長に切断されて、捲縮性複合繊維が得られる。より好ましい捲縮数は、10〜20個/25mmである。
【0046】
また、本発明の捲縮性複合繊維は、波形状捲縮と螺旋状捲縮から選ばれる少なくとも一種の捲縮を有しており、言い換えれば複合繊維に捲縮が発現して顕在捲縮をなしている。繊維の状態では、完全に捲縮が発現して顕在捲縮としてもよいし、少し捲縮の発現しろ(繊維に熱を加えたときに捲縮発現を生じる)を残した顕在捲縮であってもよい。ただし、繊維に熱を加えたとき(例えば、後述する不織布に加工する温度を加えたとき)に捲縮数が25個/25mmを超えるほど捲縮が発現すると、初期嵩及び嵩回復性が低下するため、好ましくない。
【0047】
本発明の捲縮性複合繊維におけるJIS L 1015に準じて下記の条件で測定される乾熱収縮率は、5%以下であることが好ましい。より好ましい乾熱収縮率は、3%以下である。乾熱収縮率が5%を超えると、熱処理して不織布とする際に、収縮を伴って不織布自体が収縮を引き起こし、不織布工程性および不織布の地合いの悪化を引き起こす。また、熱収縮に伴って捲縮が過剰に発現する恐れがあり、捲縮数が多くなりすぎたりして、不織布の初期嵩や、嵩回復性が悪くなる傾向がある。なお、本発明の捲縮性複合繊維の乾熱収縮率は、JIS L 1015に準じて、初荷重0.45mN/dtex(50mg/de)、温度120℃で15分間乾熱処理して収縮率を測定した。
【0048】
本発明の不織布を構成する繊維ウェブ形態としては、パラレルウェブ、セミランダムウェブ、ランダムウェブ、クロスレイウェブ、クリスクロスウェブ、エアレイウェブなどが挙げられる。前記繊維ウェブは、熱処理により第一成分が接着することにより、さらに高い効果を発揮する。そして、前記繊維ウェブは熱処理前に必要に応じて、ニードルパンチ処理あるいは水流交絡処理が施されてもよい。熱処理の手段としては、特に限定はされないが、本発明の捲縮性複合繊維の機能を十分に発揮させるのであれば、熱風貫通式熱処理機、熱風上下吹き付け式熱処理機、赤外線式熱処理機など風圧など圧力のあまりかからない熱処理機を用いることが好ましい。また、熱処理温度としては、捲縮性複合繊維の波形状捲縮及び/又は螺旋状捲縮が下記の形状となる温度範囲に設定すればよく、例えば、PB−1の融解ピーク温度をTmとしたとき、Tm−10(℃)〜PPの融解ピーク温度+10(℃)の範囲で設定することが好ましい。特に、前記捲縮性複合繊維の少なくともPB−1を溶融させて、構成する繊維同士を熱融着させると、より強固な繊維同士の交点を形成することができ、嵩回復性が高くなり好ましい。さらには、PPの融解ピーク温度±5℃の温度で熱融着させることが最も好ましい。
【0049】
前記不織布は、25℃において、下記の測定により得られる初期嵩回復率が60%以上、かつ長期嵩回復率が85%以上を満たすことが好ましい。より好ましい初期嵩回復率は、65%以上、かつ長期嵩回復率は85%以上である。
【0050】
[嵩回復率]
合計の目付が約1000g/m2となるように10cm角に切断した不織布を必要枚数重ね合わせて初期合計厚み(T0)を測定し、重ね合わせた不織布の上に10cm角で9.8kPa荷重の重りを載せて25℃雰囲気下で24時間荷重を掛け、24時間後荷重を取り除き、除重直後の重ね合わせた不織布の合計厚み(T1)、及び除重24時間後の合計厚み(T2)を測定し、不織布の嵩回復率を下記式にて算出し、それぞれ初期嵩回復率、長期嵩回復率とする。
【0051】
初期嵩回復率(%)=(T1/T0)×100
長期嵩回復率(%)=(T2/T0)×100
【0052】
初期嵩回復率が60%以上、および長期嵩回復率が85%以上を満たす不織布は、クッション材、車両用等の内装材、ブラジャー等のパッド材などの繰り返し厚み方向に圧力の加わる用途、ウレタン発泡体に置き換わる用途に好適である。
【0053】
前記不織布は、ニードルパンチにより交絡されている不織布であり、JIS−K−6401−5.4(硬さ試験)に準じて測定される不織布の硬さH0(N)とし、JIS−K−6401−5.5(圧縮残留ひずみ試験)に準じて測定される圧縮残留ひずみ試験をした後の前記硬さ試験での不織布の硬さH1(N)としたとき、下記式で示される加熱硬さ保持率は、90%以上であることが好ましい。より好ましい加熱硬さ保持率は、100%以上であり、さらにより好ましくは105%以上である。前記加熱硬さ保持率は、70℃に加熱される前後で不織布の硬さが変化する度合いを示す指標であり、この値が大きいほど、熱による繊維あるいは不織布自体の劣化が抑制されていることを示す。
【0054】
加熱硬さ保持率(%)=(H1/H0)×100
【0055】
前記不織布は、ニードルパンチにより交絡されている不織布であり、JIS−K−6401−5.4(硬さ試験)に準じて測定される不織布の硬さH0(N)とし、JIS−K−6401−5.6(繰り返し圧縮残留ひずみ試験)に準じて測定される繰り返し圧縮残留ひずみ試験をした後の前記硬さ試験での不織布の硬さH2(N)としたとき、下記式で示される耐久硬さ保持率は、90%以上であることが好ましい。より好ましい耐久硬さ保持率は、100%以上である。前記耐久硬さ保持率は、50%圧縮を8万回繰り返す前後で不織布の硬さが変化する度合いを示す指標であり、この値が大きいほど、圧縮による繊維あるいは不織布自体の劣化が抑制されていることを示す。
【0056】
耐久硬さ保持率(%)=(H2/H0)×100
【0057】
前記加熱硬さ保持率及び/又は前記耐久硬さ保持率を満足するニードルパンチ不織布としては、前記捲縮性複合繊維の少なくともPB−1を溶融させて、好ましくはPB−1及びPPを溶融させて繊維交点を接着させることにより得ることができる。
【実施例】
【0058】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
(1)ポリマー
PTT(シェル社製「CORTERRA9200」融解ピーク温度(mp)228℃、IV値0.92)
PET(東レ社製「T200E」、mp255℃、IV値0.64)
PP−1(日本ポリプロ社製「SA03E」、mp160℃、MFR20、Q値5.6)
PP−2(日本ポリプロ社製「SA03B」、mp160℃、MFR30、Q値3.6)
PP−3(日本ポリプロ社製「SA01A」、mp160℃、MFR9、Q値3.2)
PP−4(プライムポリマー社製「CJ700」、mp160℃、MFR7、Q値6.5)
PB−1a(サンアロマー社製「PB0400」、mp123℃、MI20)
PB−1b(サンアロマー社製「DP0401M」、mp123℃、MI15)
PBTエラストマー(東レ・デュポン社製「ハイトレル4047H-36」、mp160℃)
HDPE(日本ポリエチレン社製「HE481」、mp130℃、MI12)
鞘成分のブレンド比は、表に記載した。
【0059】
前記において、IVは前記極限粘度である。MFRはJIS K 7210に準じて、230℃、21.18N(2.16kgf)で測定されるメルトフローレートである。また、MIはJIS K 7210に準じて、190℃、21.18N(2.16kgf)で測定されるポリマーのメルトインデックスである。
【0060】
なおQ値は、次の条件で測定した。
【0061】
I.使用する分析装置
(i)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(CFCと略す)
(ii)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは光路長1mm、光路直径5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFC後段部分のGPCカラムは、昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
【0062】
II.CFCの測定条件
(i)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ii)サンプル濃度:1mg/mL
(iii)注入量:0.4mL
(iv)カラム温度:140℃
(v)溶媒流速:1mL/分
【0063】
III.FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、GPC−IRデータを採取する。
(i)検出器:MCT
(ii)分解能:8cm-1
(iii)測定間隔:0.2分(12秒)
(iv)一測定当たりの積算回数:15回
【0064】
IV.測定結果の後処理と解析
分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm-1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([η]=K×Mα)には以下の数値を用いる。
(i)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時
K=0.000138、α=0.70
(ii)ポリプロピレンのサンプル測定時
K=0.000103、α=0.78
なお、上記GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定するが、別の機種により測定したとき、2005年度プラスチック成形材料商取引便覧(化学工業日報社、2004年8月30日発行)に記載の、日本ポリプロ社製「MG03B」と同時に測定し、MG03Bが3.5を示すときの値をブランク条件とし、条件を調整して測定することもできる。
(2)押し出し温度:芯成分ポリマー(PTT)を280℃、鞘成分ポリマーを250℃、ノズル口金温度を270℃とした。
(3)ノズル孔数:600ホール
(4)複合比:芯/鞘=55/45(容積比)
(5)未延伸繊度:8dtex
(6)延伸温度:湿式70℃
(7)延伸倍率:2.3倍
(8)捲縮:12〜15個/25mm
(9)アニーリング温度(乾燥温度):110℃×15分
(10)製品繊度×繊維長:4.4dtex×51mm
(11)不織布製造条件
【0065】
各捲縮性複合繊維100質量%をパラレルカードに掛けウェブを採取し、熱風循環式の熱処理機を用い、表1〜3に示す加工温度で30秒間熱処理して鞘成分を熱融着させ、目付約100g/m2の不織布とした。
【0066】
(12)各測定方法
[乾熱収縮率]JIS L 1015に準じて測定する。初荷重0.45mN/dtex(50mg/de)、温度120℃で15分間乾熱処理して収縮率を測定する。
[面積収縮率]熱加工前のカードウェブを縦:100mm、横:100mmに切断し、所定の温度にて熱加工した際の、面積減少率を測定する。
[25℃嵩回復率]合計の目付が約1000g/m2となるように100mm角に切断した不織布を必要枚数準備し、重ね合わせて無荷重下で初期厚み(T0)を測定する。重ね合わせた不織布の上に100mm角、9.8kPa荷重の重りを乗せて、25℃で24時間荷重を掛け、24時間後荷重を取り除き、除重直後の重ね合わせた不織布の厚み(T1)、及び除重24時間後の厚み(T2)を測定し、不織布の嵩回復率を下記式により算出する。
【0067】
初期嵩回復率(%)=(T1/T0)×100
長期嵩回復率(%)=(T2/T0)×100
【0068】
厚みの測定は、何れも無荷重下とする。
[70℃嵩回復率]温度を70℃とし、荷重を掛ける時間を4時間とした以外は上記と同じとした。
[見掛け密度]JIS K 6401 5.3(見掛け密度試験)に準じて測定した。
[硬さ]JIS K 6401 5.4(硬さ試験)に準じて測定した。
[圧縮残留ひずみ]JIS−K−6401−5.5(圧縮残留ひずみ試験)に準じて測定した。
[繰り返し圧縮残留ひずみ]JIS−K−6401−5.6(繰り返し圧縮残留ひずみ試験)に準じて測定した。
【0069】
[実施例1〜7、比較例1〜7]
各条件と得られた結果を表1〜3に示す。なお、実施例2,4,6及び比較例6については、比較例7の初期厚みに合わせるために、厚みが10枚重ねて30mmとなるように1枚1枚をネットで厚みを調整しながら熱風加工した。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
以上の結果から明らかなとおり、本発明の実施例1〜7は比較例5〜7に比べて、同一目付けで初期厚みが厚く、初期嵩回復率も長期嵩回復率も高かった。実施例3〜7は、波形状捲縮と螺旋状捲縮が混在しており、実施例1〜2に比べて、単繊維乾熱収縮率及び不織布面積収縮率が低く、不織布の初期厚みが厚く、初期嵩回復率及長期嵩回復率が高かった。これは、第二成分(芯成分)にポリトリメチレンテレフタレートを使用したからと推定される。
【0074】
一方、比較例1〜4は、ポリブテン−1が95質量%を超えるため、捲縮数が25個/25mmを超えて顕在捲縮化していた。その結果、単繊維乾熱収縮率及び不織布面積収縮率が大きく、安定して不織布を作製することができなかった。また、比較例1〜4は、ポリプロピレンが5質量%未満であったため、溶融紡糸時の樹脂粘度が小さくなりすぎて均一な偏心芯鞘断面の繊維が得られなかった。さらに、延伸可能最大倍率がいずれも2.7倍以下であり、延伸性に劣っていた。
【0075】
比較例5〜6は、実施例に比べて初期厚みは高いものの、初期嵩回復率が低くなった。
【0076】
比較例7は、鞘成分にPBTエラストマーを使用しているため、捲縮発現が小さく、また、実施例に比べて単繊維乾熱収縮率及び不織布面積収縮率が若干大きいため、不織布にしたときの初期厚みが30mmまでしか上がらず、厚みが低い不織布であった。
【0077】
[実施例8〜15]
表4に記載の条件で、実施例8〜11の捲縮性複合繊維を作製した。得られた結果を表4に示す。また、実施例10および比較例7で得られた捲縮性複合繊維100質量%をパラレルカードに掛け、クロスレイヤーを用いてクロスレイウェブを作製した。次いで、クロスレイウェブに、フォスターニードル社製円錐ブレードを用いて、針深度5mm、表5に示すペネ数(表裏とも)でニードルパンチ処理を施した。得られたニードルパンチ不織布を熱風循環式の熱処理機を用い、表5に示す加工温度で30秒間熱処理して鞘成分を熱融着させ、不織布とした。得られた不織布の硬さ、圧縮残留ひずみ、加熱硬さ保持率、繰り返し圧縮残留ひずみ、および耐久硬さ保持率を測定した結果を表5に示す。
【0078】
【表4】

【0079】
表4の結果から明らかなように、本発明の実施例8〜15はいずれも同一目付で初期厚みが大きく、初期嵩回復率も長期嵩回復率も高かった。中でも、実施例12、13は樹脂2に添加したPPのQ値、MFRが小さく、及びPP添加量/Q値比が大きかったため、単繊維の乾熱収縮率および不織布面積収縮率ともに極めて小さいものであった。
【0080】
【表5】

【0081】
表5の結果から明らかなように本発明のニードルパンチ不織布は、加熱硬さ保持率、耐久硬さ保持率共に90%以上という結果であった。これは加熱圧縮、繰り返し圧縮の何れにおいても、繊維同士の接着点および繊維自体が破壊されたり、折れ曲がったり、繊維強度が低下していないと推定できる。一方、比較例7の不織布は、加熱硬さ保持率が84%、耐久硬さ保持率が74%と低く、70℃の加熱時の圧縮、および80000回の繰り返し圧縮により不織布硬さが減少しており、耐熱性および耐久性に劣るものであった。
【符号の説明】
【0082】
1 第一成分
2 第二成分
3 第二成分の重心位置
4 複合繊維の重心位置
5 複合繊維の半径
10 複合繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分と第二成分を含む複合繊維であって、
前記第一成分は、ポリブテン−1を60〜95質量%とポリプロピレンを5〜40質量%とを含み、
前記第二成分は、ポリブテン−1の融点よりも20℃以上高い融点を有するポリマーであり、
前記第一成分は、前記複合繊維の鞘に配置され、前記第二成分は前記複合繊維の芯に配置されており、
繊維断面から見たとき、前記第一成分は前記複合繊維表面の少なくとも20%を占めており、前記第二成分の重心位置は前記複合繊維の重心位置からずれており、
前記複合繊維は、波形状捲縮及び螺旋状捲縮から選ばれる少なくとも一種の捲縮を有しており、
前記複合繊維のJIS L 1015に準じて、初荷重0.45mN/dtex(50mg/de)、温度120℃で15分間乾熱処理して測定した乾熱収縮率は、5%以下であることを特徴とする捲縮性複合繊維。
【請求項2】
前記ポリブテン−1は、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求められる融解ピーク温度が115〜130℃であり、JIS−K−7210に準ずるメルトインデックス(MI;測定温度190℃、荷重2.16kgf(21.18N))が1〜30g/10分の範囲である請求項1に記載の捲縮性複合繊維。
【請求項3】
前記ポリプロピレンは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が6以下である請求項1又は2に記載の捲縮性複合繊維。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の捲縮性複合繊維を少なくとも30質量%含有する不織布。
【請求項5】
前記捲縮性複合繊維の少なくともポリブテン−1が溶融して、構成する繊維同士が熱融着されている請求項4に記載の不織布。
【請求項6】
前記不織布は、25℃において、下記の測定により得られる初期嵩回復率が60%以上、かつ長期嵩回復率が85%以上を満たす請求項4または5に記載の不織布。
[嵩回復率]
合計の目付が約1000g/m2となるように10cm角に切断した不織布を必要枚数重ね合わせて初期合計厚み(T0)を測定し、重ね合わせた不織布の上に10cm角で9.8kPa荷重の重りを載せて25℃雰囲気下で24時間荷重を掛け、24時間後荷重を取り除き、除重直後の重ね合わせた不織布の合計厚み(T1)、及び除重24時間後の合計厚み(T2)を測定し、不織布の嵩回復率を下記式にて算出し、それぞれ初期嵩回復率、長期嵩回復率とする。
初期嵩回復率(%)=(T1/T0)×100
長期嵩回復率(%)=(T2/T0)×100

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−107373(P2012−107373A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−276845(P2011−276845)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【分割の表示】特願2006−272180(P2006−272180)の分割
【原出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000002923)ダイワボウホールディングス株式会社 (173)
【出願人】(300049578)ダイワボウポリテック株式会社 (120)
【Fターム(参考)】