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捲縮糸
説明

捲縮糸

【課題】
本発明は、環境対応型で耐摩耗性に優れたポリアミド捲縮糸を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明のセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミド捲縮糸は、放射性炭素(炭素14)測定によるバイオマス由来炭素の存在割合が45%以上であることを特徴とするものである。本発明の捲縮糸は、カーボンニュートラルへの寄与が高く、環境対応型の捲縮糸として、カーマット、タイルカーペット、ロールカーペット、ラグマット、ダスコンマットといったカーペット用途を中心に好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捲縮糸に関する。更に詳しくは、環境対応型で耐摩耗性に優れたポリアミド捲縮糸に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン6やナイロン66に代表されるポリアミドからなる捲縮糸は、ポリエステルやポリオレフィンからなる捲縮糸に比べて、風合いが柔らかく、耐摩耗性や耐ヘタリ性といった耐久性に優れるため、カーマット、タイルカーペット、ロールカーペット、ラグマット、ダスコンマットといったカーペット用途を中心に幅広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、十分な反発弾性、嵩高性、耐久性を有し、かつソフトタッチな風合いとスパンライクな表面外観を得るために、捲縮伸長率と交絡数を規定し、かつ単糸断面の外接円直径と単糸繊度の関係を規定したナイロン6捲縮糸やナイロン66捲縮糸が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1を含め、これまで一般的に使用されているポリアミドからなる捲縮糸は、石油由来原料を使用しているため、原油価格の変動により原料価格が不安定になりやすく、また将来的には、石油の枯渇により原料調達が困難になることが予想される。加えて、該捲縮糸で構成されるカーペット製品は、使用後廃棄処理にあたって、焼却処分されることが主流であるが、その際に発生する二酸化炭素は、石油由来の炭素であるため、結果として大気中の二酸化炭素の量を増加させる要因となり得る。
【0005】
一方で、バイオマス由来原料を使用したポリアミドは、原料がバイオマスであるため、原料価格や原料ソースが安定することが期待される。また、前記ポリアミドに使用されるバイオマス由来原料は、太陽エネルギーと水、及び大気中に存在する二酸化炭素から光合成によって成長するバイオマスを起源とするため、製品の焼却時に発生する二酸化炭素は、元の大気に戻るだけで、大気中の二酸化炭素の量は増減しない。即ち、バイオマス由来原料を使用したポリアミドは、カーボンニュートラルな原料であることから、地球環境に優しい次世代の環境対応型原料として、近年大きな注目を集めている。
【0006】
バイオマス由来原料を使用したポリアミド繊維としては、例えば、特許文献2や特許文献3に開示されているようにジカルボン酸成分として、ひまし油由来のセバシン酸を使用したナイロン610繊維が挙げられる。これらの特許文献では、ナイロン610の低吸湿性や形状安定性、屈曲回復率といったポリマー特性を生かし、特許文献2では導電ブラシ用に、特許文献3ではディスプレイ用パネル洗浄ブラシ用に、それぞれ設計したポリアミド繊維についての技術開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−193344号公報
【特許文献2】特開2010−255158号公報
【特許文献3】特開2011−1635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、バイオマス由来原料を使用したポリアミドからなる捲縮糸は、環境志向の高いカーペット業界において、強く要望されているにも関わらず、これまで検討されていないのが実状である。
【0009】
また、ナイロン6やナイロン66に代表されるポリアミドからなる捲縮糸は、ポリエステルやポリオレフィンからなる捲縮糸に比べて、耐摩耗性に優れてはいるものの、長期間の使用でも摩耗が少なく、外観品位が損なわれない上級グレートのカーペット用途においては、更なる耐摩耗性の向上が求められることがあった。
【0010】
このように、耐摩耗性に優れたポリアミドからなる捲縮糸は、幅広く用途展開する上で、強く要望されているにも関わらず、これまで検討されていないのが実状である。
【0011】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として鋭意検討した結果、達成されたものである。
【0012】
即ち、本発明は、バイオマス由来原料を使用したポリアミドからなる環境対応型で耐摩耗性に優れた捲縮糸を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
1.セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸であって、前記捲縮糸における放射性炭素(炭素14)測定によるバイオマス由来炭素の存在割合が45%以上であることを特徴とする捲縮糸。
2.ポリアミドがナイロン610又はナイロン510からなることを特徴とする1項に記載の捲縮糸。
3.総繊度が500〜3000dtex、単糸繊度が5〜50dtex、捲縮伸長率が5〜30%であることを特徴とする1項又は2項に記載の捲縮糸。
4.単糸の断面形状が変形度1.5〜5.0の多葉断面であることを特徴とする1〜3項のいずれか1項に記載の捲縮糸。
5.単糸の断面形状が中空率5〜25%の中空断面であることを特徴とする1〜3項のいずれか1項に記載の捲縮糸。
6.アミノ末端基濃度が20〜100eq/tonであることを特徴とする1〜5項のいずれか1項に記載の捲縮糸。
7.1〜6項のいずれか1項に記載の捲縮糸(A)を少なくとも一部に用いて、混繊又は交撚した捲縮糸。
8.捲縮糸(A)以外の捲縮糸(B)が、ナイロン6からなる捲縮糸及び/又はナイロン66からなる捲縮糸であることを特徴とする7項に記載の捲縮糸。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バイオマス由来原料を使用したポリアミドからなる環境対応型で耐摩耗性に優れた捲縮糸を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のポリアミド捲縮糸の耐摩耗性(糸切断回転数)を評価するための摩耗試験機のモデル図である。
【図2】本発明のポリアミド捲縮糸の製造に用いる3葉断面(Y型)用口金の吐出孔断面図の具体例の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明について更に詳細に説明する。
【0017】
まず、本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドについて説明する。セバシン酸は、例えば、ひまし油の種子から精製することにより製造することで、植物由来原料と位置付けられる。セバシン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲でこれらを配合することができる。また、これらのジカルボン酸についても、植物由来であることが好ましい。上記セバシン酸単位以外のジカルボン酸単位の共重合量としては、全ジカルボン酸単位中0〜40モル%以下が好ましく、0〜20モル%がより好ましく、0〜10モル%がさらに好ましい。
ジアミン単位を構成するジアミンとしては、炭素数2以上のジアミン、好ましくは炭素数4〜12のジアミンが挙げられ、具体的には、プトレシン、1,5−ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルペンタンジアミン、フェニレンジアミン、エタンブトールなどが挙げられる。また、これらのジアミンについても、植物由来であることが好ましい。
【0018】
本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドは、セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位と上記ジアミン単位の組み合わせにより、ナイロン210、ナイロン310、ナイロン410、ナイロン510、ナイロン610、ナイロン710、ナイロン810、ナイロン910、ナイロン1010、ナイロン1110、ナイロン1210などが挙げられ、ナイロン410、ナイロン510、ナイロン610、ナイロン710、ナイロン810、ナイロン910、ナイロン1010、ナイロン1110、ナイロン1210がさらに好ましく挙げられる。この中でも、重合性が安定し、捲縮糸の黄化が少なく、染色性が良好なナイロン510、ナイロン610が最も好ましい。
【0019】
本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸は、捲縮糸に含まれる炭素全体に対してバイオマス由来炭素の存在割合が45%以上であることが必要であり、好ましくは55%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは100%である。バイオマス由来炭素の存在割合が45%未満の場合は、カーボンニュートラルへの寄与が下がり、環境対応型の捲縮糸を提供しようとする本発明の主旨にそぐわないものとなる。
【0020】
本発明におけるバイオマス由来炭素とは、大気中に二酸化炭素として存在していた炭素が植物中に取り込まれ、これを原料として合成されたポリアミドに存在する炭素を示すものであり、放射性炭素(炭素14)の測定により同定することができる。その理由は次の通りである。大気中の高層部においては、窒素原子に宇宙線(中性子)が衝突して炭素14原子が生成される反応が継続して起こっており、これが大気中全体へと循環しているため、大気中のニ酸化炭素には、炭素14が一定割合(平均として107.5pMC(percent modern carbon))で含まれていることがわかっている。一方、地中に閉じ込められた炭素14原子は、上記の循環からは隔離されているため、放射線を出しながら半減期5730年で窒素原子に戻っていく反応のみが起こり、現在の石油などの化石原料中には炭素14原子が殆ど残っていない。したがって、対象となる試料中における炭素14の濃度を測定し、大気中の炭素14の含有割合(107.5pMC)を指標として逆算することで、試料中に含まれる炭素のうちのバイオマス由来炭素の割合を求めることができる。本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドとしては、バイオマス由来原料を重合して新たに得られたポリアミドのみならず、バイオマス由来炭素が含有されてなるリサイクルポリアミドも包含するものである。
【0021】
本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドは、硫酸相対粘度(ηr)が2.5〜3.5であることが好ましく、2.6〜3.0であることがより好ましい。ηrが3.5以下であると、溶融紡糸する際に十分な製糸性を確保するために紡糸温度を高く設定する必要がなく、ポリマー自体、或いはポリマーに配合する着色剤や添加剤等が変質し着色又は変色するといった不都合も生じにくい。一方、ηrが2.5以上であると、適正な粘度で安定的に紡出でき、或いは単糸繊度斑も発生しにくい。
【0022】
本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸は、着色剤によって原着化されていても良く、着色剤による原着化によって、カーペットなど製品の柄出しに際し意匠性を付与することが可能となる。また、バイオマス由来原料を使用したポリアミドが、その製造過程において変性や精製不良により着色した場合においても、着色剤による原着化によって、所望の色相に適宜調整することが可能となる。着色剤としては、カーボンブラック、酸化チタン、アントラキノン系着色剤、フタロシアニン系着色剤、アゾ系着色剤及び酸化鉄系着色剤などが挙げられ、要求される色相に応じて適宜使用することができる。捲縮糸への着色剤の添加率は、特に限定されず、カーペットの柄出しに際して所望の意匠性を付与できるように適宜設定すれば良いが、通常は捲縮糸を構成する成分全体に対して、0.01〜3質量%である。
【0023】
また、本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸は、着色剤以外にも、耐光剤、耐候剤、紫外線吸収剤、耐熱剤、熱劣化防止剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、分散剤、安定剤、難燃剤、抗菌剤、防汚剤など、従来公知の添加剤を適宜使用することができる。
【0024】
本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸は、総繊度が500〜3000dtexであることが好ましく、700〜2500dtexがより好ましい。総繊度が500dtex未満の場合は、捲縮糸の製造コストが高くなり、またカーペットの嵩高性が低下しやすくなる傾向にある。総繊度が3000dtexを超えると、カーペット加工におけるタフト工程通過性が低下しやすく、またカーペットの風合いが硬くなりやすくなる傾向にある。
【0025】
本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸は、単糸繊度が5〜50dtexであることが好ましく、10〜40dtexがより好ましい。単糸繊度が5dtex未満の場合は、カーペットの嵩高性や耐摩耗性が低下しやすく、耐久性不良に繋がることがある。単糸繊度が50dtexを超えると、カーペットの風合いが硬くなる傾向にある。
【0026】
本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸は、捲縮伸長率が5〜30%であることが好ましく、15〜30%がより好ましい。捲縮伸長率が5%未満であると、カーペットの嵩高性や風合いが低下すると共に、耐摩耗性の低下により耐久性不良に繋がることがある。また、捲縮伸長率が30%を超える捲縮糸を通常の製造方法で製造することは技術的に困難である。
【0027】
さらに、本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸は、単糸の断面形状が、変形度1.5〜5.0の多葉断面であることが好ましい。さらに好ましくは、2.5〜5.0である。変形度が1.5未満であるとマルチフィラメントにおいて単糸間の空隙が少なくなり、カーペットの嵩高性や風合いが低下すると共に、耐摩耗性の低下により耐久性不良に繋がることがある。また、変形度が5.0を超える断面形状を通常の製造方法で製造することは技術的に困難である。
【0028】
多葉断面としては、2葉(扁平、繭型、眼鏡型など)、3葉、4葉、5葉、6葉などが例示できるが、3葉、4葉が単糸間の空隙をより形成しやすく好ましい。ここで言う変形度とは、単糸横断面の外接円の直径Dと、単糸横断面の内接円の直径dの比(D/d)で表される。
【0029】
また、カーペットに嵩高性を付与するための上記以外の断面形状としては、中空断面が挙げられる。中空断面の場合、中空率が5〜25%であることが好ましく、10〜20%であることがより好ましい。中空率が5%未満であると、カーペットの嵩高性や風合いが低下すると共に、耐摩耗性の低下により耐久性不良に繋がることがある。また、中空率が25%を超える断面形状を通常の製造方法で製造することは技術的に困難である。中空部は、1つでも複数(田型断面など)でも良い。複数の場合、それらの中空部の合計の中空率が5〜25%であれば良い。
【0030】
本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸は、ポリアミドとポリアミド以外のポリマーを用いて複合繊維とすることは好ましくない。ここで、複合繊維とは、複数のポリマーを使用して複合紡糸口金によって製造されるもので、単糸の断面形状としては芯鞘型、並列型、海島型などが例示される。複合繊維の場合、複合紡糸口金の設計上、高変形度の多葉断面糸や高中空率の中空断面糸を得ることができず、このようにして得られた捲縮糸では、カーペットの嵩高性や風合いが低下すると共に、耐摩耗性の低下により耐久性不良に繋がることがある。ポリアミド以外のポリマーを用いる場合は、ポリアミドとチップブレンドして紡糸機に投入する方法でポリマーブレンドすれば良く、この場合においては、ポリアミド単一ポリマーと同様に高変形度の多葉断面糸や高中空率の中空断面糸を得ることができる。この場合、ポリマー全体に対するポリアミド以外のポリマーのブレンド率は、35質量%未満であることが、捲縮糸の物性(強度、伸度、捲縮伸長率)や耐摩耗性を維持させる点で好ましい。より好ましいブレンド率は20質量%未満であり、更に好ましいブレンド率は5質量%未満である。好ましい下限としては特に制限はなく、0質量%以上であればよい。
【0031】
本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸は、アミノ末端基濃度が、20〜100eq/tonであることが好ましい。より好ましくは、30〜90eq/ton、さらに好ましくは、40〜80eq/tonである。アミノ末端基は、ポリアミドを染色するための染料である酸性染料や含金染料の染着部位となるが、セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有する本発明のポリアミドにおいては、メチレン比率が高く、ナイロン6やナイロン66に比べて、アミノ末端基濃度が低くなることが一般的であり、このことが本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸の染色性を低下させる要因であると発明者らは考えている。そこで、染色性を確保するために、アミノ末端基濃度は20eq/ton以上であることが好ましい。一方で、アミノ末端基濃度が高すぎると、溶融紡糸工程において、アミノ末端基起因のポリマー変性により捲縮糸が黄化したり、製糸性が悪化する場合があり、また、捲縮糸あるいはカーペット製品の保管中や使用時において、アミノ末端基起因の光や熱でのポリマー変性や排気ガス成分の付着により捲縮糸が黄化する場合があるため、アミノ末端基濃度は100eq/ton以下であることが好ましい。
【0032】
本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸は、カーペット用途に好適に使用することができる。カーペットとしては、カーマット、タイルカーペット、ロールカーペット、ラグマット、ダスコンマットなど、幅広い分野で使用することができる。特に、本発明の主旨に合った環境を重視した分野において、好適に使用することができる。カーペットの形態は、カットパイル、ループパイル、それらの組合せなど、所望のカーペット製品となるように適宜選択することができる。
【0033】
本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸は、石油由来のポリアミドからなる捲縮糸に比べて、優れた耐摩耗性を有している。
【0034】
この効果を発揮するメカニズムは、必ずしも明確ではないが、ポリアミド中に存在するバイオマス由来炭素中の微量の炭素14原子が寄与しているものと考えている。一般的に、ある元素の同位体は、電子状態がほぼ同じであり、化学的な性質も極めて近い性質を示すとされる。しかし、質量数が異なることにより、ポリマーの物性が異なる例が知られている。例えば、重水素を含有するポリエチレンナフタレートの場合、密度が異なる例として、J.MACROMOL.SCI.−PHYS.B36(2),205−219(1999)を挙げることが出来る。即ち、放射性同位体の含有量の違いによって、密度に違いが生じ、そのことによりポリマーの物性に違いが生じることが考えられるのである。本発明においては、ポリアミド中に存在する微量の炭素14原子が、捲縮糸の製造工程において、ポリマーの結晶成長を抑制することで、粗大結晶を減少させ、結晶と非晶の構造差が小さく、欠陥の少ない、均一な繊維構造の形成に寄与しているものと考えられる。
【0035】
本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸の製造方法は、基本工程としては通常の溶融紡糸、冷却、給油、延伸、および捲縮処理からなる捲縮糸製造工程によって製造される。本発明に用いる溶融紡糸装置はエクストルーダー型紡糸機でもプレッシャーメルター型紡糸機でも使用可能であるが、製品の均一性、製糸収率等の点でエクストルーダー型紡糸機が好ましい。着色剤を添加する場合は、着色剤を高濃度で添加したマスターチップをポリアミドチップとブレンドしたチップを紡糸機に投入しても良いし、それぞれのチップを紡糸機直上で計量しながら投入しても良い。また、着色剤を粉体或いは液体の状態で直接紡糸機に投入しても良い。
【0036】
かかる捲縮糸の特定の総繊度、単糸繊度及び断面形状などを満足させるには、ポリアミドの粘度、紡糸温度、口金孔形状、吐出量、冷却等の紡糸条件を適切に設定して溶融紡糸する。
【0037】
溶融紡糸された糸条は、冷風によって冷却固化され、次いで油剤を付与された後、所定の引き取り速度で回転する引き取りローラに捲回して引き取られる。引き取り速度は300〜1500m/分が好ましい。引き取った糸条は、通常、引き続き延伸および捲縮加工を連続して行う。別の方法として、未延伸糸で一旦巻き取った後、別工程で延伸および捲縮加工を行う方法、あるいは延伸糸を一旦巻き取った後、別工程で捲縮加工を行う方法も可能である。
【0038】
本発明にかかるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸は5〜30%の捲縮伸長率を有するが、そのためには延伸工程で十分に分子鎖の配向を高めてから捲縮加工するのが好ましい。延伸倍率は2.0〜4.0倍の範囲で行い、伸度が30〜100%となるよう延伸することが好ましい。次いで、延伸された糸条は捲縮付与装置を通して捲縮加工処理する。捲縮は飽和蒸気、過熱蒸気または加熱空気等の加熱流体加工処理によって行われる。捲縮加工装置は、例えば、特開2004−84080号公報で開示された捲縮加工ノズル装置などを使用することができる。通常は、該捲縮加工ノズルを有するジェットノズル方式で捲縮加工され、ニードル内を通過する糸条に周囲から過熱蒸気や加熱空気等の高圧の高温流体を接触させ、大気中に放出し冷却することで捲縮を付与する。更に、捲縮を固定する目的で、捲縮ノズルを通過した捲縮糸に冷風を吹きつけたり、内部に吸引するロータリーフィルターの表面に捲縮糸を堆積させて冷却する方法等も採用することができる。
【0039】
捲縮加工する際の捲縮ノズルの温度は190〜250℃が好ましく、210〜240℃がさらに好ましい。捲縮ノズルの温度が190℃未満であると、熱処理が不十分なため捲縮を十分に付与できない。また、250℃を超えると、熱処理が過多となり、ポリマーの融着や劣化が起こり、捲縮糸の物性(強度、伸度、捲縮伸長率)や耐摩耗性が低下することがある。
【0040】
本発明にかかるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸は、前述した通り、捲縮糸の製造工程において、ポリマーの結晶成長を抑制することで、粗大結晶を減少させ、結晶と非晶の構造差が小さく、欠陥の少ない、均一な繊維構造を形成する傾向にあるものと推定しているが、このことにより、石油由来のポリアミドに比べて、物性(強度、伸度、捲縮伸長率)低下を伴わずに、高温の加熱流体加工が可能である。そればかりか、高温の加熱流体加工により、捲縮伸長率は大きくなり、これによっても捲縮糸の耐摩耗性を向上させることが可能となる。一方で、石油由来のポリアミドの場合、加熱流体加工の処理温度が高すぎると、繊維構造中に発生する欠陥部分によって、物性(強度、伸度、捲縮伸長率)低下が生じ、このことにより、捲縮糸の耐摩耗性がさらに低下するのである。
【0041】
捲縮加工された捲縮糸は適度なストレッチを与えて、捲縮を一部潜在化させた後、巻取り機で巻き取る。捲縮糸は巻取り前に集束性を付与するため交絡処理を与えることもある。
【0042】
かくして、本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸が得られる。
【0043】
さらに、上記で説明した本発明におけるセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸(以下捲縮糸(A)と称する場合もある)は、混繊又は交撚されていても良く、混繊又は交撚した捲縮糸を構成する捲縮糸は、捲縮糸(A)を少なくとも一部に用いていれば良く、捲縮糸(A)のみを用いてもよい。
【0044】
混繊又は交撚した捲縮糸を構成する捲縮糸の内、捲縮糸(A)以外の捲縮糸(以下捲縮糸(B)と称する場合もある)を用いる場合、捲縮糸(B)としては、特に限定されず、捲縮糸(A)以外のポリアミドからなる捲縮糸(ナイロン6からなる捲縮糸、ナイロン66からなる捲縮糸等)、ポリエステルからなる捲縮糸、ポリオレフィンからなる捲縮糸などの従来公知の捲縮糸を1種または複数種用いることができるが、混繊又は交撚した捲縮糸の染色の簡便性や、風合い、耐摩耗性の観点では、ナイロン6からなる捲縮糸及び/又はナイロン66からなる捲縮糸が好ましい。
【0045】
混繊又は交撚した捲縮糸を構成する捲縮糸の混繊率や交撚率は、特に限定されないが、環境対応及び耐摩耗性の観点では、繊度換算で、捲縮糸(A):捲縮糸(B)が、30:70〜100:0の範囲が好ましく、45:55〜100:0の範囲がより好ましい。
【0046】
混繊や交撚の方法は、特に限定されず従来公知の方法を使用できる。例えば、混繊は、混繊させる複数の捲縮糸を引き揃えて、交絡ノズルに通し、エアーなどの流体によって交絡を付与することによって混繊させる方法などが挙げられる。交絡数は特に限定されないが、捲縮糸の捲縮伸長率などの物性を損なわずに均一に混繊させる観点では、5〜100個/mが好ましく、20〜50個/mがより好ましい。また、交撚は、交撚させる複数の捲縮糸のそれぞれに、下撚りとしてS撚り又はZ撚りを施し、それら複数の捲縮糸を撚り合わせる際に、上撚りとして下撚りとは逆の撚りを施す方法などが例示される。撚り数は特に限定されないが、捲縮糸の捲縮伸長率などの物性を損なわずに均一に交撚させる観点では、50〜2500T/mが好ましく、100〜500T/mがより好ましい。さらに、交撚の後に、セット性を高めるために、蒸気や乾熱処理などを施しても良い。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の各測定値の測定方法は以下の通りである。
【0048】
(1)硫酸相対粘度(ηr):ポリマーチップを試料として、試料0.25gを98%硫酸25mlに溶解し、オストワルド粘度計を用いていて25℃で測定し、以下の式から求めた。5サンプルの平均値から求めた。
ηr=試料溶液の流下秒数/硫酸のみの流下秒数
【0049】
(2)バイオマス由来炭素の存在割合:捲縮糸を試料として、ASTM D6866 B法(加速器質量分析法)により測定・算出した。
【0050】
(3)総繊度:JIS L1013(2010) 8.3.1 b)B法により、正量繊度を測定して総繊度とした。
【0051】
(4)単糸繊度:総繊度をフィラメント数で除して求めた。
【0052】
(5)強度、伸度: JIS L1013(2010) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。試料をオリエンテック社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100を用い、掴み間隔は25cm、引張り速度は30cm/分で行った。なお、伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
【0053】
(6)捲縮伸長率:捲縮糸をかせ状にとり、20℃、65%RHの室内に3時間放置して放縮させた。次いで、沸騰水中に20分間浸漬して沸騰水処理を行った。沸騰水処理したかせ状の糸条を12時間前記室内で放置乾燥させた。次に、該糸条を1m程度の長さに切り取り、糸条の総繊度をA(dtex)とすると17.7A(μN)(1.8A(mg))の初荷重を30秒間加えた後の糸条の長さL1を先ず測定した。
【0054】
次に、883A(μN)(90A(mg))の定荷重を30秒間加えた後の糸条の長さL2を測定した。本発明における捲縮伸長率G(%)はL1,L2より、以下の式から求めた。5サンプルの平均値から求めた。
G=((L2−L1)/L1)×100(%)。
【0055】
(7)変形度:レーヨンステープルで包んだ捲縮糸の糸端を、厚さ0.5mmのステンレス製プレパラートに設けた穴(穴径1.0mm)に通し、安全カミソリでプレパラートの両面に沿って平行にカットしたものを断面観察用の試料とした。この試料をKEYENCE社製デジタルマイクロスコープ「VHX−500」を用いて500倍で観察し、単糸横断面の外接円の直径Dと、単糸横断面の内接円の直径dから下記式により求めた。10サンプルの平均値から求めた。
変形度=D/d
【0056】
(8)中空率:レーヨンステープルで包んだ捲縮糸の糸端を、厚さ0.5mmのステンレス製プレパラートに設けた穴(穴径1.0mm)に通し、安全カミソリでプレパラートの両面に沿って平行にカットしたものを断面観察用の試料とした。この試料をKEYENCE社製デジタルマイクロスコープ「VHX−500」を用いて500倍で観察し、面積計測機能により、中空部を含む繊維の断面積Sと中空部の面積sから次式により求めた。10サンプルの平均値から求めた。
中空率=(s/S)×100(%)
【0057】
(9)アミノ末端基濃度:ポリマーチップ、或いはトリクロロエチレンに10分間浸漬・振とうして油剤を落とした後、25℃で1時間風乾し、15時間真空乾燥した捲縮糸を試料とした。試料1gを50mlのフェノール/エタノール混合溶液(フェノール/エタノール=83.5/16.5)に、25℃で振とう溶解させて試料溶液とし、この溶液を0.02Nの塩酸で中和滴定する際に要した0.02N塩酸量を求めた。また、上記フェノール/エタノール混合溶液のみを0.02Nの塩酸で中和滴定する際に要した0.02N塩酸量を求めた。それらの差から、試料1tonあたりのアミノ末端基量を求めた。5サンプルの平均値から求めた。
【0058】
(10)耐摩耗性(糸切断回転数):安藤鉄工所製のトワイン摩耗試験機を用い、図1に示すように、P600番サンドペーパー2を直径40mmのローラー3に巻き付け、糸の接触長:31mm、ローラー回転速度:200rpm、測定荷重:0.4cN/dtexの条件にて、試料(捲縮糸)1を固定し、ローラー3にかけ、他端に荷重4をつるした。矢印で示されるローラーの回転方向hにローラーを回転させ、糸切断までのローラー回転数を測定した。図1は、本発明のポリアミド捲縮糸の耐摩耗性(糸切断回転数)を評価するための摩耗試験機のモデル図である。
【0059】
(11)染色性(筒編地のL値):捲縮糸からなる筒編地を試料とした。試料を酸性染料(日本化薬社製 Kayanol Navy Blue R)0.5%owf、浴比1:100、pH=7、98℃、30分の条件で染色した後、水洗し、65℃で1時間熱風乾燥し、25℃で12時間風乾した。得られた筒編地をスガ試験機社製SMカラーコンピューター(型式:SM−P)を用い、C光2°視野、8°照明・拡散光受光(正反射光除く)、測定孔径30mmの条件で測色し、明度(L値)を求めた。筒編地の5箇所の平均値から求めた。なお、L値が小さい程、試料は濃色に染色されている、即ち染色性が良いことを示し、逆に、L値が大きい程、試料は淡色、即ち染色性が悪いことを示す。
【0060】
[実施例1]
ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸(植物由来)との塩の80質量%水溶液を重合缶に投入し、重合缶内を十分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力を最大1.7MPaに調整しながら最終到達温度を270℃とした。目的の相対粘度になるように重合時間を調整した後、溶融ポリマーを水浴中に吐出し、ストランドカッターでチップ化することで、ナイロン610チップ(硫酸相対粘度2.7、アミノ末端基濃度33eq/ton)を得た。得られたナイロン610チップを100℃、12時間の条件で真空乾燥した後、エクストルーダー型紡糸機に投入し、溶融紡糸した。紡糸温度260℃、3葉断面(Y型)用の孔スペック(スリット長/スリット幅=6.5)を有する口金を用いて、捲縮糸の総繊度が1170dtex、フィラメント数54、単糸繊度が21.7dtexとなるように製糸した。ここで、スリット長とスリット幅は、図2に示す通りである。すなわち、図2は、3葉断面(Y型)用口金の吐出孔断面図の具体例であり、吐出孔断面は、吐出孔のスリット長iと吐出孔のスリット幅kを有する3葉のスリットから構成される。
【0061】
引取速度は1000m/分、トータル延伸倍率3.0倍(1段目延伸倍率2.6倍、2段目延伸倍率1.15倍)、1段目延伸温度50℃、2段目延伸温度140℃、セット温度195℃で熱延伸した。次いで延伸糸条は連続して、特開2004−84080号公報中の図6で示される捲縮ノズルで0.9MPaの過熱蒸気により、捲縮ノズル温度225℃にて捲縮処理した後、冷却ロールで冷却した後、0.12cN/dtexをかけてストレッチし、捲縮を潜在化した後、交絡ノズルを通して、10個/mの交絡を付与して、2700m/分で巻き取った。
【0062】
得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
【0063】
[実施例2]
捲縮ノズル温度を235℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
【0064】
[実施例3]
捲縮ノズル温度を200℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
【0065】
[実施例4]
3葉断面(Y型)用の孔スペックをスリット長/スリット幅=3.0に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
【0066】
[実施例5]
重合工程でヘキサメチレンジアミンの添加量を調整することによりアミノ末端基濃度を17eq/tonに調整したN610チップを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
【0067】
[実施例6]
重合工程でヘキサメチレンジアミンの添加量を調整することによりアミノ末端基濃度を52eq/tonに調整したN610チップを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
【0068】
[実施例7]
重合工程でヘキサメチレンジアミンの添加量を調整することによりアミノ末端基濃度を65eq/tonに調整したN610チップを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
【0069】
[実施例8]
田型中空断面用の口金に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
【0070】
[実施例9]
1,5−ペンタンジアミンとセバシン酸(植物由来)との塩を重合缶に投入し、投入した全原料と同質量の純水を加え、重合缶内を十分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力を最大2MPaに調整しながら最終到達温度を270℃とした。目的の相対粘度になるように重合時間を調整した後、溶融ポリマーを水浴中に吐出し、ストランドカッターでチップ化することで、ナイロン510チップ(硫酸相対粘度2.7、アミノ末端基濃度35eq/ton)を得た。使用チップを上記ナイロン510チップに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
【0071】
[実施例10]
重合工程で1,5−ペンタンジアミンの添加量を調整することによりアミノ末端基濃度を57eq/tonに調整したN510チップを使用したこと以外は、実施例9と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
【0072】
[比較例1]
ε−カプロラクタムの85質量%水溶液を重合缶に投入し、重合缶内を十分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力を最大1.5MPaに調整しながら最終到達温度を255℃とした。目的の相対粘度になるように重合時間を調整した後、溶融ポリマーを水浴中に吐出し、ストランドカッターでチップ化することで、ナイロン6チップ(硫酸相対粘度2.7、アミノ末端基濃度45eq/ton)を得た。使用チップを上記ナイロン6チップに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
【0073】
[比較例2]
捲縮ノズル温度を235℃に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
【0074】
[比較例3]
口金を田型中空断面用の口金に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から明らかなように、実施例1〜10の捲縮糸は、バイオマス由来炭素の存在割合が45%以上であり、カーボンニュートラルへの寄与が高いだけでなく、耐摩耗性に優れ、実用的かつ環境対応型の捲縮糸であると言える。
【0077】
一方、比較例1〜3の捲縮糸は、バイオマス由来炭素の存在割合が0%であり、カーボンニュートラルへの寄与がなく、本発明の主旨に則さないものである。
【0078】
また、実施例1の捲縮糸は、比較例1の捲縮糸に比べて、耐摩耗性に優れていることがわかる。同様に、実施例8の捲縮糸は、比較例3の捲縮糸に比べて、耐摩耗性に優れていることがわかる。
【0079】
さらに、実施例2及び比較例2は、捲縮ノズル温度が235℃と、実施例1及び比較例1対比、高温での加熱流体加工を行っているが、実施例2の捲縮糸では、実施例1の捲縮糸対比、捲縮伸長率が大きくなり、また、強度、伸度の低下がほとんどないため、耐摩耗性も高い値で維持されていることがわかる。一方で、比較例2の捲縮糸は、比較例1の捲縮糸対比、物性(強度、伸度、捲縮伸長率)が低下し、それにより耐摩耗性が低下していることがわかる。
【0080】
加えて、実施例6と実施例7の捲縮糸は、実施例1の捲縮糸対比、アミノ末端基濃度を高くすることにより、染色性が向上していることがわかる。
【0081】
[実施例11]
実施例1の捲縮糸を2本を引き揃え、交絡ノズルにて35個/mの交絡を付与することにより混繊された捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表2に示す。
【0082】
[実施例12]
実施例1の捲縮糸1本と比較例1の捲縮糸1本を引き揃えたこと以外は、実施例11と同様にして、混繊された捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表2に示す。
【0083】
[比較例4]
比較例1の捲縮糸を2本を引き揃えたこと以外は、実施例11と同様にして、混繊された捲縮糸を得た。得られた捲縮糸の特性を表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
表2から明らかなように、実施例11、12の捲縮糸は、バイオマス由来炭素の存在割合が45%以上の捲縮糸を含んでおり、カーボンニュートラルへの寄与が高いだけでなく、耐摩耗性に優れ、実用的かつ環境対応型の捲縮糸であると言える。
【0086】
一方、比較例4の捲縮糸は、バイオマス由来炭素の存在割合が0%であり、カーボンニュートラルへの寄与がなく、本発明の主旨に則さないものである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のセバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミド捲縮糸は、バイオマス由来炭素の存在割合が45%以上であることから、カーボンニュートラルへの寄与が高く、環境対応型の捲縮糸として、カーマット、タイルカーペット、ロールカーペット、ラグマット、ダスコンマットといったカーペット用途を中心に好適に使用されるものである。また、石油由来のポリアミド捲縮糸に比べて、耐摩耗性に優れることから、耐摩耗性の要求が高い上級グレートのカーペット用途にも好適に使用されるものである。
【符号の説明】
【0088】
1 試料(捲縮糸)
2 サンドペーパー
3 ローラー
h ローラーの回転方向
4 荷重
5 吐出孔断面
j 吐出孔のスリット長
k 吐出孔のスリット幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セバシン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位を有するポリアミドからなる捲縮糸であって、前記捲縮糸における放射性炭素(炭素14)測定によるバイオマス由来炭素の存在割合が45%以上であることを特徴とする捲縮糸。
【請求項2】
ポリアミドがナイロン610又はナイロン510からなることを特徴とする請求項1に記載の捲縮糸。
【請求項3】
総繊度が500〜3000dtex、単糸繊度が5〜50dtex、捲縮伸長率が5〜30%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の捲縮糸。
【請求項4】
単糸の断面形状が変形度1.5〜5.0の多葉断面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の捲縮糸。
【請求項5】
単糸の断面形状が中空率5〜25%の中空断面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の捲縮糸。
【請求項6】
アミノ末端基濃度が20〜100eq/tonであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の捲縮糸。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の捲縮糸(A)を少なくとも一部に用いて、混繊又は交撚した捲縮糸。
【請求項8】
捲縮糸(A)以外の捲縮糸(B)が、ナイロン6からなる捲縮糸及び/又はナイロン66からなる捲縮糸であることを特徴とする請求項7に記載の捲縮糸。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−64217(P2013−64217A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−188448(P2012−188448)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】