説明

捺印装置、捺印システム、捺印装置の制御方法、捺印プログラム、記録媒体

【課題】指認証専用スキャナが無くても指認証を行った上で電子捺印を行えるシステムを構築する。
【解決手段】管理サーバ1は表示読取装置2aに電子文書を表示させる。そして、管理サーバ1は記憶部11および制御部12を有している。記憶部11は、表示読取装置2aの利用者の有する右手中指の指紋を示した第1指紋情報と当該利用者の有する印影とを対応付けて記憶している。制御部12は、電子文書の表示中の表示読取装置2aに読み取られた被写体画像中の指紋が前記右手中指の指紋であるか否かを前記第1指紋情報に基づいて判定する指判定部12cと、前記被写体画像中の指紋が前記右手中指の指紋である場合に前記第1指紋情報に対応付けられている印影を前記電子文書に捺印する捺印部12dとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に表示されている電子文書に対して利用者の印影を電子捺印する捺印システムに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ(以下「PC」と称す)に表示されている電子文書に対して捺印を行う場合、電子文書に係る書類を一旦プリントアウトし、当該書類に対して捺印し、その後、捺印された書類をスキャナによって再度電子文書化する必要があった。ところが、PCに表示中の電子文書に対して利用者の印影を付加する処理を実行可能なソフトウェア(電子印鑑ソフト)が開発されてからは、捺印のためにプリントアウトを行うことなく、PCのキーボードやマウスを操作することによって表示中の電子文書に対して予め登録されている印影を直接付加できるようになった。
【特許文献1】特開2006−209713号公報(平成18年08月10日公開)
【特許文献2】特開2006−179977号公報(平成18年07月06日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電子印鑑ソフトを用いたシステムにおいては、当然であるが、不正者にシステムが操作されることによって当該不正者以外の者の印影が勝手に電子文書に付加されるという不正行為が行われる事を防止する必要がある。そのためには、印影の付加処理が行われる前に利用者に対して認証を行うべきであり、利用者の指の特徴(指紋、静脈パターン等)を照合する指認証を行う事が効果的である。
【0004】
しかし、電子印鑑ソフトを用いたシステムにおいて指認証を行うためには、指画像を読み取るための指認証専用スキャナをPCに外付けするか、指認証専用スキャナが予め設けられているノートパソコンを用いる必要があった。そこで、指認証専用スキャナや前記ノートパソコンが無くても指認証を行った上で電子捺印を行えるシステムが要望されている。
【0005】
本発明は、電子文書に対して捺印を行う捺印システムにおいて、指認証専用スキャナが無くても捺印前の指認証を可能にする事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、面方向に配置された表示素子によって表示パネルに画像を表示する機能と面方向に配置された読取素子によって前記表示パネルに接している被写体の像を被写体画像として読み取る機能とを兼備する表示読取装置を制御し、前記表示パネルに表示されている電子文書に対して印影を捺印する捺印装置であって、前記表示読取装置の利用者の有する第1の指を識別するための第1識別情報と当該利用者の有する第1印影とが対応付けられて記憶されている記憶部と、前記電子文書の表示中に読み取られた前記被写体画像中の指が前記第1の指であるか否かを前記第1識別情報に基づいて判定する指判定部と、前記被写体画像中の指が前記第1の指であると前記指判定部に判定された場合に、前記第1識別情報に対応付けられている第1印影を前記表示パネルに表示されている電子文書に捺印する捺印部とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の構成によれば、表示読取装置にて利用者の指を示す情報(指紋像,静脈パターン像等)を入力することができるため、指認証専用スキャナが無くても指認証を行った上で電子捺印を行うことができるという効果を奏する。
【0008】
本発明の捺印装置は、前記構成に加えて、前記被写体画像に基づいて、前記表示パネルに表示されている電子文書と前記第1の指とが接している位置を示した位置情報を検知する位置検知部を有し、前記捺印部は、前記表示パネルに表示されている電子文書において前記位置情報に示される位置に前記第1印影を捺印する構成であってもよい。これにより、前記表示パネルに利用者が第1の指を接触させると、当該表示パネルに表示されている電子文書において前記第1の指と接している箇所(対向している箇所)に当該利用者の第1印影が捺印されることになる。したがって、本発明の構成によれば、表示パネルに指を接触させる行為が指の特徴を示す指情報(指紋等)を入力する作業と捺印位置指定作業とを兼ねることになり、指情報を入力しないと電子捺印が許可されないシステムにおいて指情報入力作業と捺印位置指定作業とを一括して行うことができる。つまり、本発明の構成では、生体認証専用スキャナの読取面に指を接触させる事によって指紋入力を行い且つキーボード(又はマウス)によって捺印位置指定を行うような捺印システムよりも手間がかからないという利点を有する。
【0009】
本発明の捺印装置は、前記構成に加えて、前記電子文書に捺印欄が示されていてもよい。これにより、利用者からすれば、電子捺印を行うために表示パネル上にて指を接触させなければいけない箇所を容易に認識できる。
【0010】
本発明の捺印装置は、前記構成に加えて、前記捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致するか否かを判定する位置判定部を有し、前記捺印部は、前記被写体画像中の指が前記第1の指であると前記指判定部に判定された場合、且つ、前記捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致すると前記位置判定部に判定された場合、前記捺印を行う構成であってもよい。これにより、必ず捺印欄内に印影が捺印されることになり、捺印欄外に印影が捺印されてしまうという事態を抑制できる。
【0011】
本発明の捺印装置は、前記構成に加えて、前記捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致しないと前記位置判定部に判定された場合、指の位置が誤っている旨を利用者に通知するエラー通知部を含む構成であってもよい。これにより、表示パネルに表示されている電子文書において捺印欄から外れた位置に指を接触させている利用者に対して、接触させるべき位置が誤っている故に捺印されない点を認識させる事が可能になる。
【0012】
本発明の捺印装置は、前記構成に加えて、前記電子文書には、特定グループに属する利用者専用の特定捺印欄が示されており、前記記憶部には、前記第1識別情報と前記第1印影と前記利用者の属するグループを示すグループ情報とが対応付けられて記憶され、前記被写体画像中の指が前記第1の指であると前記指判定部に判定された場合、前記第1識別情報に対応付けられているグループ情報に基づいて前記利用者が特定グループに属するか否かを判定するグループ判定部を有し、前記位置判定部は、前記利用者が特定グループに属すると前記グループ判定部に判定された場合、前記特定捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致するか否かを判定し、前記捺印部は、前記被写体画像中の指が前記第1の指であると前記指判定部に判定され、前記利用者が特定グループに属すると前記グループ判定部に判定され、前記特定捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致すると前記位置判定部に判定された場合に限り前記特定捺印欄に対して前記捺印を行う構成であってもよい。これにより、特定グループに属する利用者専用の特定捺印欄には特定グループの利用者の印影のみが捺印され、当該特定捺印欄に特定グループ以外の利用者の印影が誤って捺印されるという事態を防止できる。
【0013】
本発明の捺印装置は、前記構成に加えて、前記利用者が特定グループに属しないと前記グループ判定部に判定され、且つ、前記特定捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致すると前記位置判定部に判定された場合、利用者に警告を通知する警告部を含む構成であってもよい。この構成によれば、例えば、特定グループに属さない利用者が特定捺印欄に指を接触させた場合に、特定グループに属さない者であるために特定捺印欄に捺印できない事を当該利用者に認識させる事ができる。
【0014】
本発明の捺印装置は、前記構成に加えて、前記特定捺印欄には、第1特定グループに属する利用者専用の第1特定捺印欄と第2特定グループに属する利用者専用の第2特定捺印欄とが含まれており、前記第1特定捺印欄に対して捺印がなされるまでは前記第2特定捺印欄に対して捺印を行う事を前記捺印部に禁止する捺印禁止部を有する構成であってもよい。これにより、各利用者に対する捺印の順序を設定することができるというメリットを有する。例えば、前記電子文書が社内決裁書である場合に、上級職の者が誤って下級職の者よりも先に捺印してしまうという不都合を回避できる(通常、社内決裁においては、上級職の者は下級職の者よりも後に決裁書に捺印する)。
【0015】
本発明の捺印装置は、前記構成に加えて、前記捺印装置は複数の表示読取装置を制御するものであり、複数の表示読取装置には、前記第1特定グループに属する利用者専用の第1表示読取装置と前記第2特定グループに属する利用者専用の第2表示読取装置とが含まれており、第1表示読取装置の表示パネルに表示されている電子文書の第1特定捺印欄に対して前記捺印が行われた後に、前記第2表示読取装置の表示パネルにおいて前記第1特定捺印欄に前記捺印が行われた前記電子文書の表示を開始する表示制御部を含む構成であってもよい。これにより、各利用者に対して設定されている捺印の順序と同じ順序で各利用者に電子文書を表示させることができる。
【0016】
本発明の捺印装置は、前記構成に加えて、前記記憶部には、前記第1の指を有する利用者の第2の指を識別するための第2識別情報が記憶されており、前記指判定部は、前記電子文書の表示中に読み取られた前記被写体画像中の指が前記第2の指であるか否かを前記第2識別情報に基づいて判定し、前記被写体画像中の指が前記第2の指であると前記指判定部に判定された場合、前記電子文書の起案者に対して前記電子文書が却下された旨を通知する却下通知部を有する構成であってもよい。これにより、決裁者(利用者)は、表示読取装置の表示パネルに接触させる指の種類(第1の指/第2の指)を変更するだけで、決裁承認のための捺印実行命令の入力と決裁却下通知処理の実行命令の入力とを切り替えることができ、これら命令の入力のためにキーボードを操作しなければならない構成よりも手間を軽減できる。
【0017】
本発明の捺印装置は、前記構成に加えて、前記捺印部が、前記第1印影に対して回転処理を施してから前記電子文書に対して前記第1印影を捺印する回転捺印部であり、前記回転捺印部が、前記被写体画像内の指の指し示している方向に応じて前記回転処理の回転角度を変更する構成であってもよい。この構成によれば、電子文書に捺印される第1印影の形態に利用者の癖を反映させることができる。例えば、利用者が指を右斜め向きにして表示パネルに接触させると右斜め向きの印影を捺印し、利用者が指を左斜め向きにして表示パネルに接触させると左斜め向きの印影を捺印するといった事を実現できる。
【0018】
本発明の捺印装置は、前記構成に加えて、前記記憶部には、前記第1の指を有する利用者の第3の指を識別するための第3識別情報と当該利用者の有する第2印影とが対応付けられて記憶されており、前記指判定部は、前記電子文書の表示中に読み取られた前記被写体画像中の指が前記第3の指であるか否かを前記第3識別情報に基づいて判定し、前記捺印部は、前記被写体画像中の指が前記第3の指であると前記指判定部に判定された場合に、前記第3識別情報に対応付けられている第2印影を前記表示パネルに表示されている電子文書に捺印する構成であってもよい。この構成によれば、利用者は、表示読取装置の表示パネルに接触させる指の種類(第1の指/第3の指)を変更するだけで、電子文書に捺印される印影の種類(第1印影/第2印影)を変更することができる。例えば、中指を表示パネルに接触させると認印が捺印され、親指を表示パネルに接触させると実印が捺印されるといった事を実現することが可能になる。
【0019】
本発明の捺印装置は、前記構成に加えて、前記被写体画像中の指が前記第1の指であると前記指判定部に判定された場合は前記第1印影のプレビューを前記表示パネルに表示させ、前記被写体画像中の指が前記第3の指であると前記指判定部に判定された場合は前記第2印影のプレビューを前記表示パネルに表示させるプレビュー制御部を有し、前記捺印部は、前記第1印影のプレビューが所定時間以上表示され続ける場合に前記第1印影を前記電子文書に捺印し、前記第2印影のプレビューが所定時間以上表示され続ける場合に前記第2印影を前記電子文書に捺印する構成であってもよい。この構成によれば、利用者は、「どの指を画面に接触させればどの印影が捺印されるのか」を捺印前に確認することができ、捺印すべき印影を誤ってしまうという事態を抑制することができる。
【0020】
また、本発明は、前記捺印装置と前記表示読取装置とを含むことを特徴とする捺印システムであってもよい。
【0021】
さらに、本発明は、面方向に配置された表示素子によって表示パネルに画像を表示する機能と面方向に配置された読取素子によって前記表示パネルに接している被写体の像を被写体画像として読み取る機能とを兼備する表示読取装置を制御し、前記表示パネルに表示されている電子文書に対して印影を捺印する捺印装置の制御方法であって、前記捺印装置に備えられている制御部が、前記表示読取装置の利用者の有する第1の指を識別するための第1識別情報と当該利用者の有する第1印影とが対応付けられて記憶されている記憶部を参照して、前記電子文書の表示中に読み取られた前記被写体画像中の指が前記第1の指であるか否かを前記第1識別情報に基づいて判定する工程と、前記被写体画像中の指が前記第1の指である場合に、前記第1識別情報に対応付けられている第1印影を前記表示パネルに表示されている電子文書に捺印する工程とを実行するようにしてもよい。
【0022】
また、本発明は、前記捺印装置の制御方法を実行するための捺印プログラムであって、前記制御部に前記各工程を実行させる捺印プログラムであってもよいし、前記捺印プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明は、面方向に配置された表示素子によって表示パネルに画像を表示する機能と面方向に配置された読取素子によって前記表示パネルに接している被写体の像を被写体画像として読み取る機能とを兼備する表示読取装置を制御し、前記表示パネルに表示されている電子文書に対して印影を捺印する捺印装置であって、前記表示読取装置の利用者の有する第1の指を識別するための第1識別情報と当該利用者の有する第1印影とが対応付けられて記憶されている記憶部と、前記電子文書の表示中に読み取られた前記被写体画像中の指が前記第1の指であるか否かを前記第1識別情報に基づいて判定する指判定部と、前記被写体画像中の指が前記第1の指であると前記指判定部に判定された場合に、前記第1識別情報に対応付けられている第1印影を前記表示パネルに表示されている電子文書に捺印する捺印部とを有する構成である。それゆえ、表示読取装置にて利用者の指を示す情報(指紋像,静脈パターン像等)を入力することができるため、指認証専用スキャナが無くても指認証を行った上で電子捺印を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る捺印システムを図に基づいて以下説明する。図1は本実施形態の捺印システムの概略構成を示した説明図である。
【0025】
捺印システム10は、オフィス内において従業員が決裁書(電子文書)を作成し且つ該決裁書に電子捺印を行う事の可能なネットワークシステムであり、図1に示すように、管理サーバ1と端末装置2・3・4と通信ネットワーク5とを有する構成である。また、図1に示されているように、管理サーバ1と端末装置2・3・4とは、通信ネットワーク5に接続されており、通信ネットワーク5を介して互いに通信可能である。
【0026】
端末装置2・3・4は、OS(Operating System)、文書作成ソフト、表計算ソフト、作図ソフト、画像編集ソフト等の各種ソフトウェアがインストールされているパーソナルコンピュータである。ここで、本実施形態では、各利用者は、担当者、課長、部長の3つの職位群(役職)のうちのいずれかの職位群(グループ)に属しており、端末装置2の利用者は担当者(平社員)に属し、端末装置3の利用者は課長に属し、端末装置4の利用者は部長に属するものとする。
【0027】
端末装置2・3・4の各々には、利用者に対して画像を表示する表示手段として、特許文献2に示されているインプットディスプレイ(以下「表示読取装置」と称す)が備えられている。なお、図1では、端末装置2の表示読取装置の符号を2aとし、端末装置3の表示読取装置の符号を3aとし、端末装置4の表示読取装置の符号を4aとしている。
【0028】
表示読取装置2a〜4aの各々は、液晶表示パネル(画面)と、液晶表示パネルの内部において2次元状に(面方向に)配列されている複数の表示素子(TFTまたはFET)と、表示パネルの内部において2次元状に(面方向に)配列されている複数の読取素子(フォトダイオード)とを有する。そして、表示読取装置2a〜4aの各々は、表示素子によって前記液晶表示パネルに画像を表示する機能と、前記液晶表示パネルの外側から前記液晶表示パネルに接触している被写体の像を前記読取素子によって読み取る機能とを有している。なお、以下では、表示読取装置2a〜4aによって読み取られた被写体の像を「被写体画像」と称することにする。
【0029】
管理サーバ1は、本発明の認証装置の一実施形態である。この管理サーバ1は、端末装置2〜4を統括制御するコンピュータ、つまり表示読取装置2a〜4aの各々を制御可能なコンピュータである。以下では、管理サーバ1の詳細を説明する。
【0030】
図2は、管理サーバ1を示したブロック図である。なお、図2に示されるように、管理サーバ1は記憶部11と制御部12とを有する。
【0031】
記憶部11には、端末装置2〜4の利用者毎に、利用者の右手中指の指紋を示す第1指紋情報(第1識別情報)と、当該利用者の有する印影と、当該利用者の属する職位群(グループ)を示した職位情報(グループ情報)とが対応付けられて記憶されている。また、記憶部11には、端末装置2〜4の利用者毎に、利用者の右手薬指の指紋を示す第2指紋情報も記憶されている。
【0032】
制御部12は、主として、(a)表示読取装置2a・3a・4aに電子文書を表示する表示制御部12aとしての機能、(b)表示読取装置2a・3a・4aから前記被写体画像が読み取られ続けるように表示読取装置2a・3a・4aを制御する読取制御部12bとしての機能、(c)利用者が表示読取装置2a・3a・4aの画面に指の指紋を接触させているときに読み取られた被写体画像(指紋が示された画像)と記憶部11の第1指紋情報とが一致するか否かを判断する指判定部12cとしての機能、(d)被写体画像に示されている指紋と第1指紋情報とが一致する場合は電子文書に印影を捺印する捺印部12dとしての機能、を有している。
【0033】
つぎに、制御部12の実行する処理の詳細について図3のフローチャートに基づいて以下詳細に説明する。図3のフローチャートは、担当者用の端末装置2にて決裁書(電子文書)が作成される際の制御部12の処理の流れを示したフローチャートである。
【0034】
まず、端末装置2の利用者が決裁書を表示するための表示コマンドを端末装置2に入力すると、この表示コマンドは端末装置2から管理サーバ1の制御部12に伝送される。そして、制御部12は、この表示コマンドを入力すると(S1にてYES)、端末装置2の表示読取装置2aの画面に決裁書を表示する(S2)。なお、本実施形態の決裁書は、電子文書であり、図5(a)に示されるように、担当者用の捺印欄と課長用の捺印欄と部長用の捺印欄とが示されている。
【0035】
その後、端末装置2の利用者は、端末装置2を操作することによって表示読取装置2aに表示されている決裁書に文字等を記入して決裁書を完成させる。
【0036】
さらにその後、端末装置2の利用者が、制御部12を捺印モード(電子捺印を行うモード)に移行させるための捺印モード移行コマンドを端末装置2に入力すると、この捺印モード移行コマンドが端末装置2から制御部12に伝送される。制御部12は、捺印モード移行コマンドを入力すると、捺印モードに移行する(S3にてYES)。
【0037】
制御部12は、捺印モードに移行すると、表示読取装置2aの画面に接触している物体を示した被写体画像が読み取られ続けるように表示読取装置2aを制御し、被写体画像に指紋が示されるようになるまで表示読取装置2aに被写体画像の読取を続行させる(S4においてNO)。
【0038】
利用者は、制御部12を捺印モードに移行させると、表示読取装置2aの画面に表示されている決裁書における自己の職位の捺印欄に対して右手中指を接触(対向)させる。なお、端末装置2の利用者の職位は担当者であるため、図5(b)に示されるように、担当者用の捺印欄に右手中指を接触させる。
【0039】
これにより、制御部12は、被写体画像に指紋が含まれていることを検知でき(S4においてYES)、記憶部11に記憶されている第1指紋情報毎に、第1指紋情報と被写体画像に示されている指紋とが一致するか否かを判定し(S5)、一致する場合は処理をS7に移行し、一致しない場合は処理をS6に移行させる。つまり、制御部12は、被写体画像中の指紋が第1指紋情報に示される指紋(真正利用者の指紋)であるか否かを判定している。
【0040】
本実施形態では、被写体画像に示されている指紋は端末装置2の利用者の右手中指の指紋であり、記憶部11には端末装置2の利用者の右手中指の指紋を示す第1指紋情報が記憶されている。それゆえ、制御部12は、第1指紋情報と被写体画像に示されている指紋とが一致すると判定し、処理をS7に移行させることになる。
【0041】
なお、仮に、第1識別情報と被写体画像に示されている指紋とが一致しない場合(S5においてNO)、制御部12は、端末装置2を使用している利用者を不正な者として認識し、表示読取装置2aにおいて警告表示を行う(S6)。また、制御部12は、S7の警告表示後、処理をS3の状態に戻す(つまり捺印モード移行前の状態に戻る)。
【0042】
制御部12は、第1指紋情報と被写体画像に示されている指紋とが一致すると判定した後(S5においてYES)、端末装置2の利用者の職位を示した職位情報を記憶部11から読み出す(S7)。具体的に、制御部12は、被写体画像に示されている指紋と一致する第1指紋情報に対応付けられている職位情報を記憶部11から読み出す。
【0043】
つぎに、制御部12は、被写体画像に基づいて、表示読取装置2aの画面に表示されている決裁書と利用者の指とが接触(対向)している位置を示した位置情報を検出する(S8)。
【0044】
その後、制御部12は、S7にて読み出した職位情報とS8にて検出した位置情報とに基づき、端末装置2の利用者の指が当該利用者の職位専用の捺印欄に接触(対向)しているか否かを判定し(S9)、接触していると判定する場合は処理をS11に移行し、接触していないと判定する場合は処理をS10に移行する。つまり、S9では、利用者の指の位置が正しいか否かについて判定している。
【0045】
本実施形態では、端末装置2の利用者の職位は担当者であり、図5(b)に示されるように、端末装置2の利用者の指は決裁書に示されている担当者専用の捺印欄に接触している。それゆえ、制御部12は、端末装置2の利用者の指が当該利用者の職位専用の捺印欄に接触していると判定し(S9においてYES)、処理をS9へ移行させる。
【0046】
また、仮に、端末装置2の利用者の指が当該利用者の職位専用の捺印欄に接触していない場合(S9においてNO)、制御部12は、捺印位置が誤っている旨の表示を表示読取装置2aにて行う(S10)。そして、制御部12は、S10の表示後、処理をS3に戻す(つまり捺印モード移行前の状態に戻る)。
【0047】
制御部12は、端末装置2の利用者の指が当該利用者の職位専用の捺印欄に接触していると判定した後(S9においてYES)、端末装置2の利用者の有する印影を記憶部11から読み出す(S11)。具体的に、制御部12は、被写体画像に示されている指紋と一致する第1指紋情報に対応付けられている印影を記憶部11から読み出す。
【0048】
S11の後、制御部12は、表示読取装置2aに表示されている決裁書に対して、S11にて読み出した印影を捺印する処理(電子捺印)を行う(S12)。これにより、図5(b)および図5(c)に示すように、利用者が指を接触させた捺印欄に対して当該利用者の印影が示されることになる。
【0049】
その後、制御部12は、以上のようにして作成された決裁書の決裁者である課長の端末装置3に対して、「決裁書有」を示す電子メールを送信し(S13)、処理を一旦終了する。
【0050】
以上にて示した捺印システム10によれば、表示読取装置2aに表示されている決裁書(電子文書)の捺印欄に利用者の右手中指を接触(対向)させると、当該利用者の印影が前記捺印欄に捺印されることになる。それゆえ、利用者からすれば、自己の指紋を入力しないと電子捺印が許可されないシステムにおいて、指紋入力作業と捺印位置指定作業とを一括して行うことができる。つまり、本実施形態のシステムでは、スキャナの読取面に指を接触させる事によって指紋入力を行い且つキーボード(又はマウス)によって捺印位置指定を行う従来の捺印システムよりも手間がかからないという利点を有する。
【0051】
つぎに、「決裁書有」を示す電子メールを受信した端末装置3(課長の端末装置)において決裁が行われる際の処理の流れを説明する。図4のフローチャートは、課長用の端末装置3において決裁が行われる際の処理を示したフローチャートである。なお、図4のフローチャートにおいては、図3にて示したステップと同じステップが多数あるため、このようなステップについては説明を省略し、図3にて示したステップとは異なるステップのみ説明する。
【0052】
端末装置3の利用者は、図3のS13の電子メールによって、決裁しなければならない決裁書の存在を認識し、決裁書を呼び出すための決裁書呼出コマンドを端末装置3に入力する。この決裁書呼出コマンドは端末装置3から管理サーバ1の制御部12に伝送される。そして、制御部12は、この決裁書呼出コマンドを入力すると(S21にてYES)、端末装置3の表示読取装置3aの画面に、S12にて捺印の行われた後の決裁書を表示する(S22)。つまり、担当者用の捺印欄に捺印が行われた後の決裁書(図5(c)の決裁書)が表示読取装置3aに表示される。
【0053】
S22の後、S23〜S25が行われるが、S23〜S25の処理は図3のS3〜S5の処理と同様である。また、S25にてYESである場合にはS27〜S33が行われるが、S27〜S33の処理は図3のS7〜S13の処理と同様である。それゆえ、ここではS23〜S25の処理の説明とS27〜S33の処理の説明とを省略する。
【0054】
図4において、図3と異なる点は、S25(図3ではS5)の処理においてNOの場合に図4ではS40の処理が行われる点である。したがって、以下では、図4のS25においてNOの場合について詳細に説明する。
【0055】
S25において第1識別情報と被写体画像に示されている指紋とが一致しない場合、制御部12は、記憶部11に記憶されている第2指紋情報毎に、第2指紋情報と被写体画像に示されている指紋とが一致するか否かを判定し(S40)、一致する場合は処理をS41に移行し、一致しない場合は処理をS26に移行させる。
【0056】
ここで、第2指紋情報とは利用者の右手薬指の指紋を示したものであるため、利用者が表示読取装置3aの画面に右手薬指を接触させている場合に、第2指紋情報と被写体画像に示されている指紋とが一致することになる。
【0057】
そして、第2指紋情報と被写体画像に示されている指紋とが一致する場合(S40においてYES)、制御部12は、「決裁を却下する」旨を示した電子メールを担当者の端末装置2に送信する(S41)。これにより、担当者は決裁が却下された事を認識する。
【0058】
なお、S40において、第2指紋情報と被写体画像に示されている指紋とが一致しないと判定される場合、制御部12は、端末装置3を使用している利用者を不正な者として認識し、表示読取装置3aにおいて警告表示を行う(S26)。また、制御部12は、S26の警告表示後、処理をS23に戻す(つまり捺印モード移行前の状態に戻る)。
【0059】
図4に示す処理によれば、決裁者たる課長(端末装置3の利用者)は、表示読取装置3aに表示されている決裁書(電子文書)の課長用捺印欄に自己の右手中指を接触(対向)させると、課長用捺印欄に自己の印影を捺印することができ(S32)、決裁の承認を行うことができる。これに対し、課長は、表示読取装置3aに表示されている決裁書に自己の右手薬指を接触(対向)させると、担当者に決裁却下を通知することができる(S41)。それゆえ、決裁者は、表示読取装置3aの画面に接触させる指の種類(中指/薬指)を変更するだけで、決裁承認のための捺印実行命令の入力と決裁却下通知処理の実行命令の入力とを切り替えることになり、これら命令の入力のためにキーボードを操作しなければならない構成よりも本実施形態の方が手間を軽減できる。
【0060】
以上のように、本実施形態の管理サーバ(捺印装置)1は、利用者の右手中指(第1の指)の指紋を識別するための第1指紋情報(第1識別情報)と利用者の有する印影(第1印影)とが対応付けられて予め記憶されている記憶部11を有している。そして、管理サーバ1に含まれる制御部12は、表示読取装置2aの表示パネルに電子文書を表示する表示制御部12aとしての機能と、前記電子文書の表示中に読み取られた前記被写体画像に指紋が示されている場合において前記第1指紋情報に基づいて前記被写体画像の指紋が利用者の右手中指の指紋であるか否かを判定する指判定部12cとしての機能と、前記被写体画像の指紋が利用者の右手中指の指紋である場合において前記第1指紋情報に対応付けられている第1印影を前記電子文書に捺印する捺印部12dとしての機能とを有している。このような管理サーバ1によれば、表示読取装置2aにて利用者の指紋を入力することができるため、指認証専用スキャナが無くても指認証を行った上で電子捺印を行うことができるという効果を奏する。
【0061】
また、以上示した実施形態によれば、図2に示すように、制御部12は、前記被写体画像に指紋が示されている場合は表示読取装置2aの画面に表示されている決裁書と利用者の指とが接触している位置を示した位置情報を検知する位置検知部12eとしての機能と、前記画面に表示されている電子文書において前記位置情報に示される位置に印影を捺印する捺印部12dとしての機能とを有していることになる。それゆえ、図5(b)(c)に示すように、表示読取装置2aの画面に利用者が右手中指を接触(対向)させると、当該画面に表示されている電子文書において前記右手中指と接している箇所(対向している箇所)に当該利用者の第1印影が捺印されることになる。したがって、本実施形態によれば、画面に指を接触させる行為が指紋入力作業と捺印位置指定作業とを兼ねることになり、自己の指紋を入力しないと電子捺印が許可されないシステムにおいて指紋入力作業と捺印位置指定作業とを一括して行うことができる。つまり、本実施形態のシステムでは、スキャナの読取面に指を接触させる事によって指紋入力を行い且つキーボード(又はマウス)によって捺印位置指定を行う従来の捺印システムよりも手間がかからないという利点を有する。
【0062】
さらに、以上示した実施形態によれば、図2に示すように、制御部12は、画面に表示されている決裁書の捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致するか否かを判定する位置判定部12fとしての機能と、捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致する場合に前記捺印を行う捺印部12dとしての機能を有していることになる。それゆえ、本実施形態の構成によれば、印影は必ず捺印欄内に捺印されることになり、捺印欄外に印影が捺印されてしまうという事態を抑制できる。
【0063】
また、以上示した実施形態によれば、図2に示すように、制御部12は、前記捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致しないと判定した場合は捺印位置が誤っている旨を利用者に通知するエラー通知部12gとしての機能を有することになる。それゆえ、表示読取装置の画面において捺印欄から外れた位置に指を接触させている利用者に対して、接触させるべき位置が誤っている故に捺印されない点を認識させる事が可能になる。
【0064】
また、制御部12は、S9において、S7にて読み出した職位情報とS8にて検出した位置情報とに基づいて端末装置2の利用者の指が当該利用者の職位専用の捺印欄に接触(対向)しているか否かを判定する処理を行っているが、以下ではこの判定の手順についてより詳細に説明する。まず、制御部12(グループ判定部)は、S7にて読み出した職位情報(グループ情報)に基づいて前記利用者が担当者に属するか否かを判定する(S9a)。そして、制御部12(位置判定部)は、前記利用者が担当者に属すると判定した場合、担当者専用の捺印欄(特定捺印欄)の位置と前記位置情報に示される位置とが一致するか否かを判定する(S9b)。このようにしてS9が行われる。そして、S9にて一致すると判定された場合のみ担当者専用の捺印欄に対して捺印が行われる(S10)。以上の手順によれば、担当者専用の捺印欄(特定捺印欄)には、担当者の印影のみが捺印され、担当者以外の者(課長等)の印影が誤って捺印されることがない。
【0065】
また、以上の実施形態では示さなかったが、制御部12は、S9aにて前記利用者が担当者に属しないと判定し、且つ、S10にて前記担当者用捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致すると判定した場合、利用者に警告を通知してもよい(警告部)。この構成によれば、例えば、担当者ではない利用者が担当者用捺印欄に指を接触させた場合に、担当者ではないために担当者用捺印欄に捺印できない事を当該利用者に認識させる事ができる。なお、警告の通知は利用者の使用している表示読取装置2aに対して警告表示を行うことによって実現できる。
【0066】
また、本実施形態の決裁書には、担当者用捺印欄(第1特定捺印欄)の他に課長用捺印欄(第2特定捺印欄)が示されている。そこで、担当者用捺印欄に対して印影の捺印がなされるまでは課長用捺印欄に対して印影の捺印を行う事を禁止する捺印禁止部としての機能を制御部12にもたせてもよい。このようにすれば、担当者用捺印欄に対して捺印されていなければ、課長が電子捺印を試みても課長用捺印欄に捺印されることはない。それゆえ、上級職の者(課長)が誤って下級職の者(担当者)よりも先に捺印してしまうという不都合を回避できる(通常、社内決裁においては、下級職の者は上級職の者より先に決裁書に捺印する)。
【0067】
さらに、制御部12(表示制御部)は、担当者のグループ(第1特定グループ)に属する利用者専用の表示読取装置2a(第1表示読取装置)に表示されている決裁書の担当者捺印欄に対して捺印が行われた後に、課長のグループ(第2特定グループ)に属する利用者専用の表示読取装置3a(第2表示読取装置)において担当者捺印欄に捺印が行われた後の当該決裁書の表示を開始してもよい。これにより、各利用者に対して設定されている捺印の順序と同じ順序で各利用者に電子文書を表示させることができる。
【0068】
また、記憶部11には、利用者の右手薬指(第2の指)の指紋を識別するための第2指紋情報(第2識別情報)が記憶されている。そして、制御部12は、図2に示すように、前記被写体画像に指紋が示されている場合に前記被写体画像の指紋が前記利用者の右手薬指の指紋であるか否かを前記第2指紋情報に基づいて判定する指判定部12cとしての機能と、前記被写体画像の指紋が前記利用者の右手薬指の指紋である場合は前記電子文書の起案者に対して前記電子文書が却下された旨を電子メールにて通知する却下通知部12hとしての機能とを有している。これにより、決裁者は、表示読取装置3aの画面に接触させる指の種類(中指/薬指)を変更するだけで、決裁承認のための捺印実行命令の入力と決裁却下通知処理の実行命令の入力とを切り替えることになり、これら命令の入力のためにキーボードを操作しなければならない従来システムよりも本実施形態の捺印システム10の方が手間を軽減できる。
【0069】
また、以上の実施形態では示さなかったが、制御部12は、記憶部11から読み出した印影に対して回転処理を施してから前記決裁書に対して当該印影を捺印する回転捺印部として機能してもよく、この場合、制御部12は、前記被写体画像に示される指が指し示している方向に応じて前記回転処理の回転角度を変更してもよい。このようにすれば、決裁書に対して捺印される印影の形態に利用者の癖を反映させることができる。例えば、図6(a)に示すように利用者が指を右斜め向きにして表示パネルに接触させると、図6(b)に示すように右斜め向きの印影が捺印され、図6(c)に示すように利用者が指を左斜め向きにして表示パネルに接触させると図6(d)に示すように左斜め向きの印影が捺印される、といった事を実現できる。
【0070】
さらに、以上の実施形態では示さなかったが、記憶部11には、利用者の右手中指(第1の指)の指紋を識別するための第1指紋情報と当該利用者の有する第1印影とが対応付けられ、当該利用者の右手親指(第3の指)の指紋を識別するための第3指紋情報と当該利用者の有する第2印影(第1印影とは異なる印影)とが対応付けられて記憶されていてもよい。この場合、制御部12は、第1指紋情報に基づいて前記被写体画像の指紋が前記右手中指の指紋であるか否かを判定し、第3指紋情報に基づいて前記被写体画像の指紋が前記右手親指の指紋であるか否かを判定する指判定部12cとしての機能を有することになる。そして、制御部12は、前記被写体画像の指紋が前記右手中指であると判定した場合は前記第1指紋情報に対応付けられている第1印影を決裁書に捺印し、前記被写体画像の指紋が前記右手親指であると判定した場合は前記第3指紋情報に対応付けられている第2印影を決裁書に捺印する捺印部12dとしての機能を有することとなる。この構成によれば、利用者は、表示読取装置2aの画面に接触させる指の種類(右手中指/右手親指)を変更するだけで、電子文書に捺印される印影の種類(第1印影/第2印影)を変更することができる。例えば、中指を画面に接触させると認印が捺印され、親指を画面に接触させると実印が捺印されるといった事を実現することが可能になる。
【0071】
また、制御部12は、被写体画像の指紋が利用者の右手中指の指紋であると判定した場合は前記第1印影のプレビューを表示読取装置2aに表示させ、被写体画像の指紋が利用者の右手親指であると判定した場合は前記第2印影のプレビューを表示読取装置2aに表示させるプレビュー制御部としての機能を有してもよい。また、この場合、制御部12は、第1印影のプレビューが所定時間以上表示され続ける場合に前記第1印影を決裁書に捺印し、第2印影のプレビューが所定時間以上表示され続ける場合に前記第2印影を決裁書に捺印するような制御を行う。この構成によれば、利用者は、「どの指を画面に接触させればどの印影が捺印されるのか」を捺印前に確認することができ、捺印すべき印影を誤ってしまうという事態を抑制することができる。
【0072】
さらに、本実施形態の捺印システム10によれば、担当者(起案者)が作成した決裁書は、まず課長の端末装置3に回送され(S22)、その後、部長の端末装置4に回送されることになるが、制御部12は、回送の度に、決裁書の回送先を示した電子メールを担当者(起案者)の端末装置2に送信するようにしてもよい。このようにすれば、担当者は、自己の作成した決裁書の現在の所在を常に把握することが可能になる。
【0073】
なお、本実施形態では、第1〜第3指紋情報を記憶部11に記憶しておき、被写体画像に示される指の指紋と第1〜第3指紋情報とを対比させる形態を採用しているが、対比させるものは利用者の指を識別できるものであればよく指紋以外のものでも構わない。例えば、利用者の指の静脈パターンを示す静脈情報を記憶部11に記憶しておき、被写体画像に示される利用者の指の静脈パターンと前記静脈情報とを対比する形態であってもよいし、利用者の指の掌形を示した掌形情報を記憶部11に記憶しておき、被写体画像に示される利用者の指の掌形と前記掌形情報とを対比する形態であってもよい。つまり、制御部12は、利用者の指を識別するための識別情報(本実施形態では指紋情報)に基づいて被写体画像に示される指(または指の一部)と利用者の指とが一致するか否かを判定する指判定部としての機能を有していればよく、指紋を対比する形態に限定されるものではない。
【0074】
なお、本実施形態において、管理サーバ1の有する記憶部11としては、外付け型または内蔵ハードディスク装置、ROMを用いることができる。また、記憶部11は、管理サーバ1の制御部12がアクセス可能な位置に備えられていれば、管理サーバ1に内蔵されている必要はない。例えば、記憶部11は、制御部12がアクセス可能である端末装置2〜4のいずれかに内蔵されていてもよいし、通信ネットワーク5に直接接続されているハードディスク装置であってもよい。
【0075】
また、管理サーバ1の制御部12はPCベースのコンピュータ(CPU,RAM,ROM等の組み合わせ)によって構成される。そして、制御部12における各種処理は、プログラムをコンピュータに実行させることによって行われる。このプログラムは、例えばCD−ROMなどのリムーバブルメディア(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に記録されているものを読み出して使用する形態であってもよいし、ハードディスクなどにインストールされたものを読み出して使用する形態であってもよい。また、制御部12がインターネットなどの通信ネットワークに接続された構成とする場合、この通信ネットワークを介して上記プログラムをダウンロードしてハードディスクなどにインストールして実行する形態なども考えられる。
【0076】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態において開示された各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、表示パネルに表示されている電子文書に対して印影の付加を行うコンピュータに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る捺印システムの全体構成を示した図である。
【図2】図1の捺印システムの構成要素である管理サーバ(捺印装置)の構成の詳細を示したブロック図である。
【図3】担当者用の端末装置にて決裁書が作成される際の制御部の処理の流れを示したフローチャートである。
【図4】課長用の端末装置にて決裁される際の制御部の処理の流れを示したフローチャートである。
【図5】(a)は本実施形態の決裁書(電子文書)を示した模式図であり、(b)は、決裁書の捺印欄に対して利用者が指を対向させている様子を示した模式図であり、(c)は、捺印欄に対して捺印がなされた決裁書を示した模式図である。
【図6】(a)は、利用者が指を右斜め向きにして表示パネルに接触させている様子を説明した図であり、(b)は、捺印された印影が右斜めに向いている様子を説明した図であり、(c)は、利用者が指を左斜め向きにして表示パネルに接触させている様子を説明した図であり、(b)は、捺印された印影が左斜めに向いている様子を説明した図である。
【符号の説明】
【0079】
1 管理サーバ(認証装置)
2 端末装置
3 端末装置
4 端末装置
2a 表示読取装置
3a 表示読取装置
4a 表示読取装置
5 通信ネットワーク
10 捺印システム
11 記憶部
12 制御部
12a 表示制御部
12b 読取制御部
12c 指判定部
12d 捺印部
12e 位置検知部
12f 位置判定部
12g エラー通知部
12h 却下通知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面方向に配置された表示素子によって表示パネルに画像を表示する機能と面方向に配置された読取素子によって前記表示パネルに接している被写体の像を被写体画像として読み取る機能とを兼備する表示読取装置を制御し、前記表示パネルに表示されている電子文書に対して印影を捺印する捺印装置であって、
前記表示読取装置の利用者の有する第1の指を識別するための第1識別情報と当該利用者の有する第1印影とが対応付けられて記憶されている記憶部と、
前記電子文書の表示中に読み取られた前記被写体画像中の指が前記第1の指であるか否かを前記第1識別情報に基づいて判定する指判定部と、
前記被写体画像中の指が前記第1の指であると前記指判定部に判定された場合に、前記第1識別情報に対応付けられている第1印影を前記表示パネルに表示されている電子文書に捺印する捺印部とを有することを特徴とする捺印装置。
【請求項2】
前記被写体画像に基づいて、前記表示パネルに表示されている電子文書と前記第1の指とが接している位置を示した位置情報を検知する位置検知部を有し、
前記捺印部は、前記表示パネルに表示されている電子文書において前記位置情報に示される位置に前記第1印影を捺印することを特徴とする請求項1に記載の捺印装置。
【請求項3】
前記電子文書に捺印欄が示されていることを特徴とする請求項2に記載の捺印装置。
【請求項4】
前記捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致するか否かを判定する位置判定部を有し、
前記捺印部は、前記被写体画像中の指が前記第1の指であると前記指判定部に判定された場合、且つ、前記捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致すると前記位置判定部に判定された場合、前記捺印を行うことを特徴とする請求項3に記載の捺印装置。
【請求項5】
前記捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致しないと前記位置判定部に判定された場合、指の位置が誤っている旨を利用者に通知するエラー通知部を含むことを特徴とする請求項4に記載の捺印装置。
【請求項6】
前記電子文書には、特定グループに属する利用者専用の特定捺印欄が示されており、
前記記憶部には、前記第1識別情報と前記第1印影と前記利用者の属するグループを示すグループ情報とが対応付けられて記憶され、
前記被写体画像中の指が前記第1の指であると前記指判定部に判定された場合、前記第1識別情報に対応付けられているグループ情報に基づいて前記利用者が特定グループに属するか否かを判定するグループ判定部を有し、
前記位置判定部は、前記利用者が特定グループに属すると前記グループ判定部に判定された場合、前記特定捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致するか否かを判定し、
前記捺印部は、前記被写体画像中の指が前記第1の指であると前記指判定部に判定され、前記利用者が特定グループに属すると前記グループ判定部に判定され、前記特定捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致すると前記位置判定部に判定された場合に限り前記特定捺印欄に対して前記捺印を行うことを特徴とする請求項4または5に記載の捺印装置。
【請求項7】
前記利用者が特定グループに属しないと前記グループ判定部に判定され、且つ、前記特定捺印欄の位置と前記位置情報に示される位置とが一致すると前記位置判定部に判定された場合、利用者に警告を通知する警告部を含むことを特徴とする請求項6に記載の捺印装置。
【請求項8】
前記特定捺印欄には、第1特定グループに属する利用者専用の第1特定捺印欄と第2特定グループに属する利用者専用の第2特定捺印欄とが含まれており、
前記第1特定捺印欄に対して捺印がなされるまでは前記第2特定捺印欄に対して捺印を行う事を前記捺印部に禁止する捺印禁止部を有することを特徴とする請求項6または7に記載の捺印装置。
【請求項9】
前記捺印装置は複数の表示読取装置を制御するものであり、
複数の表示読取装置には、前記第1特定グループに属する利用者専用の第1表示読取装置と前記第2特定グループに属する利用者専用の第2表示読取装置とが含まれており、
第1表示読取装置の表示パネルに表示されている電子文書の第1特定捺印欄に対して前記捺印が行われた後に、前記第2表示読取装置の表示パネルにおいて前記第1特定捺印欄に前記捺印が行われた前記電子文書の表示を開始する表示制御部を含むことを特徴とする請求項8に記載の捺印装置。
【請求項10】
前記記憶部には、前記第1の指を有する利用者の第2の指を識別するための第2識別情報が記憶されており、
前記指判定部は、前記電子文書の表示中に読み取られた前記被写体画像中の指が前記第2の指であるか否かを前記第2識別情報に基づいて判定し、
前記被写体画像中の指が前記第2の指であると前記指判定部に判定された場合、前記電子文書の起案者に対して前記電子文書が却下された旨を通知する却下通知部を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の捺印装置。
【請求項11】
前記捺印部は、前記第1印影に対して回転処理を施してから前記電子文書に対して前記第1印影を捺印する回転捺印部であり、
前記回転捺印部は、前記被写体画像内の指の指し示している方向に応じて前記回転処理の回転角度を変更することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の捺印装置。
【請求項12】
前記記憶部には、前記第1の指を有する利用者の第3の指を識別するための第3識別情報と当該利用者の有する第2印影とが対応付けられて記憶されており、
前記指判定部は、前記電子文書の表示中に読み取られた前記被写体画像中の指が前記第3の指であるか否かを前記第3識別情報に基づいて判定し、
前記捺印部は、前記被写体画像中の指が前記第3の指であると前記指判定部に判定された場合に、前記第3識別情報に対応付けられている第2印影を前記表示パネルに表示されている電子文書に捺印することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の捺印装置。
【請求項13】
前記被写体画像中の指が前記第1の指であると前記指判定部に判定された場合は前記第1印影のプレビューを前記表示パネルに表示させ、前記被写体画像中の指が前記第3の指であると前記指判定部に判定された場合は前記第2印影のプレビューを前記表示パネルに表示させるプレビュー制御部を有し、
前記捺印部は、前記第1印影のプレビューが所定時間以上表示され続ける場合に前記第1印影を前記電子文書に捺印し、前記第2印影のプレビューが所定時間以上表示され続ける場合に前記第2印影を前記電子文書に捺印することを特徴とする請求項12に記載の捺印装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の捺印装置と前記表示読取装置とを含むことを特徴とする捺印システム。
【請求項15】
面方向に配置された表示素子によって表示パネルに画像を表示する機能と面方向に配置された読取素子によって前記表示パネルに接している被写体の像を被写体画像として読み取る機能とを兼備する表示読取装置を制御し、前記表示パネルに表示されている電子文書に対して印影を捺印する捺印装置の制御方法であって、
前記捺印装置に備えられている制御部が、
前記表示読取装置の利用者の有する第1の指を識別するための第1識別情報と当該利用者の有する第1印影とが対応付けられて記憶されている記憶部を参照して、前記電子文書の表示中に読み取られた前記被写体画像中の指が前記第1の指であるか否かを前記第1識別情報に基づいて判定する工程と、
前記被写体画像中の指が前記第1の指である場合に、前記第1識別情報に対応付けられている第1印影を前記表示パネルに表示されている電子文書に捺印する工程とを実行することを特徴とする捺印装置の制御方法。
【請求項16】
請求項15に記載の捺印装置の制御方法を実行するための捺印プログラムであって、前記制御部に前記各工程を実行させる捺印プログラム。
【請求項17】
請求項16に記載の捺印プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−140024(P2009−140024A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312766(P2007−312766)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】