説明

捺染用白色インクジェットインク

【課題】白色顔料の平均粒径とウレタン樹脂の平均粒径とを制御することで、沈降した白色顔料が底面で固化せず、再分散に優れた捺染用白色インクを提供する。
【解決手段】白色顔料と、ウレタン樹脂と、を含有する捺染用白色インクジェットインクあって、前記白色顔料の平均粒径と、前記ウレタン樹脂の平均粒径と、が下記式を満たす捺染用白色インクジェットインク。
2≦白色顔料の平均粒径/ウレタン樹脂の平均粒径≦12

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捺染用白色インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等は、インクに含有される白色顔料として、様々な印刷方式に用いられており、特に、安価な点から二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物が多く用いられている。しかしながら、金属酸化物顔料は、溶媒との比重差が大きいため、沈降しやすいという課題がある。特に、高い隠蔽性および発色性を得ることを目的として、白色顔料の粒径および濃度を大きくする場合には、一層沈降しやすくなってしまう。また、白色顔料は、凝集の進行により固化しやすいという課題がある。
【0003】
このような課題の解決方法として、例えば、特許文献1〜3における印刷装置では、撹拌機構や循環機構等を用いることが開示されている。
【0004】
また、金属酸化物を含有するインクによって得られる捺染物は、十分な摩擦堅牢性を得られないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−20119号公報
【特許文献2】特開2003−39690号公報
【特許文献3】特開2006−15267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、撹拌機構等を用いた場合であっても、顔料が沈降し、凝集・固化した白色顔料を再分散させることが難しい場合がある。
【0007】
したがって、本発明は、顔料が沈降した場合でも、再分散性に優れ、摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られる捺染用白色インクジェットインクを提供することを目的としている。
【0008】
また、本発明は、顔料が沈降した場合でも再分散性に優れ、摩擦堅牢性及び白色度に優れた捺染物が得られる捺染用白色インクジェットインクを提供することをさらなる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、形態A又はBに係る捺染用白色インクジェットインクによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
上記形態Aに係る捺染用白色インクジェットインクは、白色顔料と、ウレタン樹脂と、を含有する捺染用白色インクジェットインクあって、前記白色顔料の平均粒径と、前記ウレタン樹脂の平均粒径と、が下記式を満たす捺染用インクジェットインクである。
2≦白色顔料の平均粒径/ウレタン樹脂の平均粒径≦12
【0011】
上記形態Bに係る捺染用白色インクジェットインクは、平均粒径が300〜400nmである二酸化チタンと、ウレタン樹脂と、を含有する捺染用白色インクジェットインクあって、前記前記二酸化チタンの含有量がインク総質量に対して、5〜15質量%であり、前記二酸化チタンの平均粒径と、前記ウレタン樹脂の平均粒径と、が下記式を満たす捺染用インクジェットインクである。
2≦白色顔料の平均粒径/ウレタン樹脂の平均粒径≦12
【0012】
すなわち、本発明は、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0013】
[適用例1]白色顔料と、ウレタン樹脂と、を含有する捺染用白色インクジェットインクあって、前記白色顔料の平均粒径と、前記ウレタン樹脂の平均粒径と、が下記式を満たす捺染用インクジェットインクである。
2≦白色顔料の平均粒径/ウレタン樹脂の平均粒径≦12
【0014】
適用例1に記載の発明によれば、白色顔料の平均粒径と、ウレタン樹脂の平均粒径と、を上記式を満たすように制御することで、白色インクの再分散性を向上させることができる。
【0015】
[適用例2]前記白色顔料が、平均粒径300nm以上400nm以下である二酸化チタンであり、前記二酸化チタンの含有量がインク総質量に対して、5〜15質量%である、適用例1に記載の捺染用白色インクジェットインクである。
【0016】
適用例2に記載の発明によれば、白色度の優れたインクを得ることができる。
【0017】
[適用例3]前記ウレタン樹脂は、酸価が10〜25mgKOH/gである、適用例1または2に記載の捺染用白色インクジェットインクである。
【0018】
適用例3に記載の発明によれば、優れた白色度を得ることができる。
【0019】
[適用例4]前記ウレタン樹脂の含有量がインク総質量に対して、5〜10質量%である、適用例1〜3のいずれか一項に記載の捺染用白色インクジェットインクである。
【0020】
適用例4に記載の発明によれば、ウレタン樹脂が白色顔料と布帛とのバインダーとして作用し、印捺物の摩擦堅牢度を向上させることができる。
【0021】
[適用例5]さらに、分散樹脂を含み、前記白色顔料の含有質量に対する前記分散樹脂の含有質量比が、3〜30質量%である、適用例1〜4のいずれか一項に記載の捺染用白色インクジェットインクである。
【0022】
適用例5に記載の発明によれば、白色顔料の分散性に優れたインクが得られ、また、白色顔料が凝集したとしても再分散性に優れたインクを得ることができる。
【0023】
[適用例6]インク総質量に対する水分量が、50〜90質量%である、適用例1〜5のいずれか一項に記載の捺染用白色インクジェットインクである。
【0024】
適用例6に記載の発明によれば、白色顔料の分散性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0026】
本明細書において、「平均粒径」とは、「光散乱法による体積基準の累積50%平均粒径(d50)」を意味し、以下のようにして得られる値である。分散媒中の粒子に光を照射し、当該分散媒の前方・側方・後方に配置されたディテクターによって、発生する回折散乱光を測定する。前記測定値を利用して、本来は不定形である粒子を球形であるものと仮定し、当該粒子の体積と等しい球に換算された粒子集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その際の累積値が50%となる点を上記50%平均粒子径(d50)とする。
【0027】
また、本明細書において、ウレタン樹脂の平均粒径は、インク中の状態を意味するものとする。したがって、ウレタン樹脂は、インクジェット捺染の過程において、インクが乾燥して被記録媒体上に固着した状態で、粒子形状を保持してもよいし、被膜を形成してもよい。
【0028】
1.インクジェットインク
本発明の一実施形態に係る捺染用白色インクジェットインクは、白色顔料と、ウレタン樹脂と、を含有し、前記白色顔料の平均粒径と、前記ウレタン樹脂の平均粒径と、が下記式(1)を満たす捺染用インクジェットインクである。
2≦白色顔料の平均粒径/ウレタン樹脂の平均粒径≦12…(1)
以下、本実施の形態に係るインクジェットインクに含まれる各成分について詳細に説明する。
【0029】
1.1.白色顔料
本実施の形態に係るインクジェットインクは、白色顔料を含有する。前記白色顔料としては、例えば、金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、白色度に優れているという観点から、二酸化チタンが好ましい。
【0030】
前記白色顔料の平均粒径は、上記式を満たす限りにおいて特に限定されないが、例えば、300nm〜400nmであることが好ましい。前記平均粒径が400nmを超えると、白色インクの吐出性が悪化するといった信頼性の低下を招く場合がある。一方、前記平均粒径が、300nm未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向がある。本明細書において、平均粒径とは、体積基準とした場合の、累積50%粒子径を意味し、光散乱法によって測定される。平均粒径の測定は、例えば、マイクロトラックUPA150(Microtrac Inc.社)を使用して測定することができる。
【0031】
前記白色顔料の含有量は、インクジェットインクの総質量に対して、5〜15質量%であることが好ましい。白色顔料の含有量が15質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まり等の信頼性を損なうことがある。一方、含有量が5質量%未満であると、白色度等の色濃度が不足する場合がある。
【0032】
1.2.ウレタン樹脂
本実施の形態に係るインクジェットインクは、ウレタン樹脂を含む。ウレタン樹脂としては、特に制限なく使用することができる。ウレタン樹脂としては、特に限定されず、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂、などを使用できる。なかでも、ポリカーボネート型ウレタン樹脂およびポリエステル型ウレタン樹脂を好ましく使用できる。
【0033】
前記ウレタン樹脂の平均粒径は、上記式を満たす限りにおいて特に限定されないが、例えば、25〜180nmであることが好ましい。上記範囲とすることで、白色インクが沈降した際に凝集・固化が抑制され、再分散性が向上するという有利な効果が得られる。一方、前記平均粒径が180nmを超えると、白色インクの吐出性が悪化するといった信頼性の低下を招く場合があり、前記平均粒径が25nm未満であると、印捺物の定着性が低下し、摩擦堅牢性が悪化する恐れがある。また、インク中のウレタン樹脂の形態としては、特に限定されないが、エマルジョンであることが好ましい。
【0034】
前記ウレタン樹脂の酸価は、特に限定されないが、好ましくは10〜25mgKOH/gである。上記範囲とすることで、布帛上に印捺した場合に、白色インクの裏抜けを抑制し、高い色濃度を実現できるという有利な効果が得られる。前記酸価が25mgKOH/gを超えるとウレタン樹脂の水溶性が増し、摩擦堅牢性の悪化を招く恐れがある。また、前記酸価が10mgKOH/g未満では、前記ウレタン樹脂と捺染用前処理剤中に存在する多価金属イオンとの反応性が低く、白色インクが裏抜けする傾向がある。ここで、本明細書における酸価は、滴定法により測定するものとする。
【0035】
前記ウレタン樹脂の例としては、市販品を用いてもよく、例えば、第一工業製薬(株)製のスーパーフレックス(SF)シリーズの中の、SF150(平均粒径70nm)、SF150HS(平均粒径110nm)、SF210(平均粒径50nm)、SF800(平均粒径30nm)、SF870(平均粒径30nm)、SF460(平均粒径30nm)、SF470(平均粒径50nm)、三井化学(株)製のタケラックシリーズの中の、WS−5000(平均粒径90nm)、WS6021(平均粒径70nm)、W6010(平均粒径60nm)、W6020(平均粒径80nm)、W6061(平均粒径100nm)、W605(平均粒径80nm)、などが挙げられる。これらのウレタン樹脂の中でも、樹脂酸価が10〜25mgKOH/gを満たす第一工業製薬(株)製のSF150、SF470等がより好ましい。
【0036】
また、前記ウレタン樹脂としては公知の方法により合成されたポリウレタン樹脂も用いることができる。以下に合成時にモノマーとして用いることのできる、ポリオール、鎖延長剤、ポリイソシアネート、および有機酸について説明する。
【0037】
(ポリオール)
ポリオールとして、ヒドロキシル基を2個以上含有する化合物であって、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の直鎖脂肪族グリコール;ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の脂肪族分岐グリコール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能グリコール;が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができ、さらに2種以上の共重合体として使用することもできる。
【0038】
また、本発明においてはポリエステルポリオールを用いることもできる。例えば以下に挙げるグリコール類やエーテル類と2価のカルボン酸やカルボン酸無水物とを脱水縮合させる等公知の方法により得ることができる。ここでは、本発明に使用可能なポリエステルポリオールの作製に使用される具体的な化合物を挙げる。飽和もしくは不飽和のグリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の直鎖脂肪族グリコール;ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の脂肪族分岐グリコール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能グリコール等の各種グリコール類が挙げられる。
【0039】
また、エーテル類としては、例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類が挙げられる。
【0040】
また、2価のカルボン酸や酸無水物としては、例えば、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸またはこれらに対応する酸無水物やダイマー酸、ひまし油およびその脂肪酸等が挙げられる。これらを用いて脱水縮合により得られるポリエステルポリオール類の他に、環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類も挙げられる。
【0041】
本発明に使用し得るポリエステルポリオールは、例えば、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とを脱水縮合させたポリ[3−メチル−1,5−ペンタンジオール]−alt−(アジピン酸)](クラレポリオールP2010、クラレ社製)等が市販されている。
【0042】
さらに、本発明で用いることのできるポリカーボネートポリオールは、一般に多価アルコールとジメチルカーボネートとの脱メタノール縮合反応、多価アルコールとジフェニルカーボネートの脱フェノール縮合反応、または、多価アルコールとエチレンカーボネートの脱エチレングリコール縮合反応などの反応を経て生成される。これらの反応で使用される多価アルコールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の飽和もしくは不飽和の各種グリコール類、1,4−シクロヘキサンジグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール等が挙げられる。
【0043】
本発明に使用し得るポリカーボネートポリオールは例えば、1,6−ヘキサンジオールを主成分とした共重合体(PES−EXP815、日本ポリウレタン工業社製)等が市販されている。
【0044】
また、ポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールの1種又は2種以上にテトラヒドロフランを開環重合により付加して得られるものが挙げられる。これらの環状エーテルは単独で又は2種以上を併用して使用することができ、さらに上記環状エーテルを2種以上使用した共重合体も使用可能である。例えば、テトラヒドロフランとネオペンチルグリコールの共重合体(PTXG−1800、旭化成社製)等が市販されている。
【0045】
さらに、本発明においては使用できるポリオールとして例えば、アクトコールEP3033(三井化学ウレタン社製)、PREMINOL7003(旭硝子社製)、PREMINOL7001(旭硝子社製)、アデカポリエーテルAM302(旭電化社製)等が市販されている。
【0046】
(鎖延長剤)
本発明においては鎖延長剤として、以下のものを使用することができる。例えば、ポリオールとして、ヒドロキシル基を2個以上含有する化合物であって、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の直鎖脂肪族グリコール;ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の脂肪族分岐グリコール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能グリコール;が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができ、さらに2種以上の共重合体として使用することもできる。
【0047】
(ポリイソシアネート)
本発明で使用することができるポリイソシアネートとして、イソシアネート基を2個以上含有する化合物であって、以下のようなものである。例えば、ジエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,6−ビス(イソシアナトメチル)デカヒドロナフタレン、リジントリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、3−(2’−イソシアネートシクロヘキシル)プロピルイソシアネート、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,2’−ビス(4−イソシアネートエニル)プロパン、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビス(ジイソシアネートトリル)フェニルメタン、4,4’,4”−トリイソシアネート−2,5−ジメトキシフェニルアミン、3,3’−ジメトキシベンジジン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトベンゼン)、1,1’−メチレンビス(3−メチル−4−イソシアナトベンゼン)、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス((2−イソシアナト−2−プロピル)ベンゼン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロジシクロペンタジエン、ビス(イソシアナトメチル)ジシクロペンタジエン、ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5−ジイソシアネートメチルノルボルネン、ビス(イソシアナトメチル)アダマンタン、3,4−ジイソシアネートセレノファン、2,6−ジイソシアネート−9−セレナビシクロノナン、ビス(イソシアナトメチル)セレノファン、3,4−ジイソシアネート、−2,5−ジセレノラン、ダイマー酸ジイソシアネート、1,3,5−トリ(1−イソシアナトヘキシル)イソシアヌル酸、2,5−ジイソシアナトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル−4−イソシアネート−2−チアブチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(3−イソシアネート−2−チアプロピル)1,4−ジチアン、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、1,5−ジイソシアネート−2−イソシアナトメチル−3−チアペンタン、1,2,3−トリス(イソシアナトエチルチオ)プロパン、1,2,3−(イソシアナトメチルチオ)プロパン、1,1,6,6−テトラキス(イソシアナトメチル)−2,5−ジチアヘキサン、1,1,5,5−テトラキス(イソシアナトメチル)−2,4−ジチアペンタン、1,2−ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアネート−3−イソシアナトメチル−2,4−ジチアペンタン等があげられる。これらポリイソシアネート類のビュレット型反応による2量体、これらポリイソシアヌレート類の環化3量体およびこれらのポリイソシアネート類とアルコールもしくはチオールの付加物等が挙げられる。さらには、上記ポリイソシアネート類のイソシアネート基の一部又は全部をイソチオシアネート基に変えた化合物をあげることができる。これらは単独でも2種類以上を混合して用いることができる。
【0048】
(有機酸)
ウレタン樹脂の酸価導入用に使用できる有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、スルファミン酸、ケイ酸、メタケイ酸、リン酸、メタリン酸、ホウ酸、チオ硫酸等を有し、イソシアネートと反応可能なヒドロキシル基を2個以上有する有機酸を用いることができる。特に、捺染用前処理剤中に存在する多価金属イオンとの反応性の観点から、ジメチロールプロピオン酸などのカルボキシル基を含む有機酸が好ましい。
【0049】
前記ウレタン樹脂の含有量は、特に限定されないが、インクジェットインクの総質量に対して、5〜10質量%であることが好ましい。ウレタン樹脂の含有量が10質量%を超えると、インク粘度が高くなり印字性を阻害する場合がある。一方、5質量%未満であると、捺染物の摩擦堅牢度が著しく低下する恐れがある。
【0050】
1.3.その他の成分
本実施の形態に係る捺染用白色インクジェットインクは、前記成分に加えて、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を添加してもよい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体等の被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0051】
アルカンジオールとしては、1,2―ブタンジオール、1,2―ペンタンジオール、1,2―ヘキサンジオール、1,2―ヘプタンジオール、1,2―オクタンジオール等の炭素数が4〜8の1,2―アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2―ヘキサンジオール、1,2―ヘプタンジオール、1,2―オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
【0052】
グリコールエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが挙げられる。これらの中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
【0053】
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、インクジェットインクの全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは3〜10質量%である。
【0054】
本実施の形態に係る捺染用白色インクジェットインクは、分散剤を含むことができる。前記分散剤は、例えば、アニオン性高分子分散剤、ノニオン性高分子分散剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等を特に制限なく用いることができる。アニオン性高分子分散剤の例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸―アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル―アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸―アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン―アクリル酸共重合体、スチレンーメタクリル酸共重合体、スチレン―アクリル酸―アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン―メタクリル酸―アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン―α―メチルスチレン―アクリル酸共重合体、スチレン―α―メチルスチレン―アクリル酸一アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン―マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン―マレイン酸共重合体、酢酸ビニル―エチレン共重合体、酢酸ビニル―脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル―マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル―クロトン酸共重合体、酢酸ビニル―アクリル酸共重合体等が挙げられる。ノニオン性高分子分散剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール、ビニルピロリドンー酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が挙げられる。これらのなかでも、顔料の分散安定性を高める観点からアニオン性高分子分散剤が好ましく、特にスチレン―アクリル酸共重合体を用いることがより好ましい。
【0055】
分散剤の含有量は、白色顔料の含有量に対して、3〜30質量%であることが好ましい。分散剤及び白色顔料の含有量を上記範囲とすることにより、白色顔料の分散性に優れたインクが得られ、また、白色顔料が凝集したとしても再分散性に優れたインクを得ることができる。
【0056】
本実施の形態に係るインクジェットインクは、前記成分に加えて、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を添加してもよい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0057】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば2,4,7,9―テトラメチル―5―デシン―4,7―ジオール、3,6―ジメチル―4―オクチン―3,6―ジオール、3,5―ジメチル―1―ヘキシン―3オール、2,4―ジメチル―5―ヘキシン―3―オール等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィン(登録商標)E1010、STG、Y(以上、日信化学株式会社製)、サーフィノール(登録商標)104、104PG50、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0058】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK―347、BYK―348(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0059】
さらに、本実施の形態に係るインクジェットインクは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のその他の界面活性剤を添加してもよい。
【0060】
界面活性剤の含有量は、インクジェットインクの総質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0061】
本実施の形態に係るインクジェットインクは、前記成分に加えて、多価アルコールを添加してもよい。多価アルコールは、インクの乾燥を防止し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止することができる。
【0062】
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6―ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0063】
多価アルコールの含有量は、インクジェットインクの全質量に対して、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%である。
【0064】
本実施形態に係るインクジェットインクは、水を50質量%以上含有する、いわゆる水系インクであってもよい。水系インクは、非水系(溶剤系)インクに比べて、記録ヘッドに用いられているピエゾ素子等や、記録媒体に含まれる有機バインダー等への反応性が弱く、溶かしてしまう、腐食するといった不具合が少ない。また、非水系(溶剤系)インクでは、用いた溶剤が高沸点・低粘度であると、乾燥時間が非常にかかるという問題も生ずる。さらに、溶剤系インクに比べて水系インクは臭いも非常に抑えられており、半分以上が水であるので環境にも良いという利点がある。なお、水としては、イオン交換水、逆浸透水、蒸留水、超純水等が挙げられ、水の含有量は50〜90質量%が好ましい。
【0065】
本実施形態に係るインクジェットインクは、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルター等を用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【0066】
3.実施例
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0067】
実施例A
3.1.白色インク組成物の調製
下記表1及び表2の組成に従い各成分を混合し、各インクを調製した。各インクは、白色顔料分散液、顔料分散樹脂、ウレタン樹脂、有機溶媒、多価アルコール、界面活性剤およびイオン交換水を混合撹拌し、孔径5μmの金属フィルターにてろ過、真空ポンプを用いて脱気処理をして、実施例A1〜A7および比較例A1〜A5の各白色インク組成物を得た。表中に記載されている濃度の単位は、質量%であり、白色顔料分散液、顔料分散樹脂、ウレタン樹脂についてはいずれも固形分換算濃度である。
【0068】
白色顔料分散液は、市販品「NanoTek(R) Slurry」(シーアイ化成株式会社製)を用いた。NanoTek(R) Slurryは、平均粒子径360nmの二酸化チタン粒子を固形分濃度15%の割合で含むスラリーである。
【0069】
界面活性剤には、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール104と、サーフィノール465(Air Products and Chemicals Inc.製)と、を使用した。
【0070】
顔料分散樹脂には、スチレンアクリル系樹脂「YS―1274」(星光PMC株式会社製)を使用した。
【0071】
ウレタン樹脂は、平均粒径が異なるウレタン樹脂A1〜A11を使用した。なお、ウレタン樹脂A1、A2、A6、A7、A9及びA10は定法により合成した。ウレタン樹脂A3、A4、A5、A8、A11は、それぞれ、スーパーフレックス460、470、150、420、740(いずれも第一工業製薬社製)を使用した。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
3.2.再分散性評価
実施例A1〜A7および比較例A1〜A5の各インクについて、再分散性の評価を行った。まず、100mLスクリュー管瓶(AS ONE製)に、各インクを100mLずつ入れ、25℃、50%RHの環境下で半年間の密栓保管を行った。次いで、上下に30cmの幅で10往復振った後、スクリュー管瓶内のインクを1g採取し、体積基準で1000倍となるように、蒸留水を用いて希釈を行った。得られた希釈液について、分光光度計(製品名「Spectrophotometer U―3300」、株式会社日立製作所製)を用いて、希釈液の波長500nmにおける吸光度(Abs−b)を測定した。
また、実施例A1〜A7および比較例A1〜A5の各インクについて、調整直後で希釈液としたほかは、上記と同様にして、希釈液の波長500nmにおける吸光度(ABs−a)を測定した。
【0075】
再分散性の評価の指標として、下記式(2)によって吸光度の回復率を算出した。
吸光度の回復率(%)=100×(Abs−b)/(Abs−a)…(2)
【0076】
得られた結果を以下の基準を用いて評価した。
A:回復率が90%以上
B:回復率が80%以上90%未満
C:回復率が70%以上80%未満
D:回復率が70%未満
【0077】
3.3.摩擦堅牢性評価
綿100%の黒色綿ブロード(210mm×297mm)全面に、霧吹きを用いてマスターマインド社製前処理剤「MMP−813BT−T用ベースコート ホワイトベース」を均一に塗布した。塗布後、160℃で2分間熱処理し、布帛の前処理を行った。
【0078】
マスターマインド社製テキスタイルプリンタ「MMP813BT」に実施例A1〜A7、および比較例A1〜A5のインクを導入し、前処理済みの布帛に対して、1440dpi×1440dpi、120mm×120mmのベタ印捺を行いた。その後、160℃で5分間、熱処理することで、印捺物を作製した。
【0079】
印捺物の摩擦堅牢性試験を、JISL0849摩擦試験機II型に準じ、学振式摩擦試験機AB−301(テスター産業製)により実施した(荷重200g、100往復)。なお摩擦布は、白インクの印捺に用いた黒色綿ブロードを用いた。摩擦堅牢性試験の評価は、摩擦試験前後の印捺物に波長457nmの光を照射した際の光の反射率をGretag Macbeth TM SPM50を用いて測定し(測色点は30点)、下記式(3)から算出される白色度減少率により評価した。
白色度減少率(%)=100−(試験後反射率)/(試験前反射率)×100…(3)
【0080】
得られた結果の評価基準は以下の通りである。
A:白色度減少率が10%未満
B:白色度減少率が10%以上15%未満
C:白色度減少率が15%以上20%未満
D:白色度減少率が20%以上
【0081】
4.評価結果
4.1.再分散性評価の結果
表1は再分散性評価の結果を示すものである。表1の結果から、白色顔料の平均粒径/ウレタン樹脂の平均粒径の値が2以上12以下であると再分散性が良好となる。
【0082】
4.2.摩擦堅牢性の結果
表1は摩擦堅牢性評価の結果を示すものである。これより、ウレタン樹脂を添加することで、良好な結果が得られることが分かる。
【0083】
実施例B
5.1.白色インク組成物の調製
下記表3及び表4の組成に従い各成分を混合し、各インクを調製した。各インクは、白色顔料分散液、顔料分散樹脂、ウレタン樹脂、有機溶媒、多価アルコール、界面活性剤およびイオン交換水を混合撹拌し、孔径5μmの金属フィルターにてろ過、真空ポンプを用いて脱気処理をして、実施例B1〜B4および比較例B1〜B5の各白色インク組成物を得た。表中に記載されている濃度の単位は、質量%であり、白色顔料分散液、顔料分散樹脂、ウレタン樹脂についてはいずれも固形分換算濃度である。
【0084】
白色顔料分散液は、市販品「NanoTek(R) Slurry」(シーアイ化成株式会社製)を用いた。NanoTek(R) Slurryは、平均粒子径360nmの二酸化チタン粒子を固形分濃度15%の割合で含むスラリーである。
【0085】
界面活性剤には、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフェノール104と、サーフェノール465(Air Products and Chemicals Inc.製)と、を使用した。
【0086】
顔料分散樹脂には、スチレンアクリル系樹脂「YS―1274」(星光PMC株式会社製)を使用した。
【0087】
ウレタン樹脂は、酸価(mgKOH/g)が異なるウレタン樹脂B1〜B9を使用した。なお、ウレタン樹脂B1、B2及びB9は定法により合成した。ウレタン樹脂B3、B4、B5、B6、B7、B8は、それぞれ、スーパーフレックス470、150、740、800、870、210(いずれも第一工業製薬社製)を使用した。
【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
5.2.再分散性評価
実施例B1〜B4および比較例B1〜B5の各インクについて、再分散性の評価を行った。まず、100mLスクリュー管瓶(AS ONE製)に、各インクを100mLずつ入れ、25℃、50%RHの環境下で半年間の密栓保管を行った。次いで、上下に30cmの幅で10往復振った後、スクリュー管瓶内のインクを1g採取し、体積基準で1000倍となるように、蒸留水を用いて希釈を行った。得られた希釈液について、分光光度計(製品名「Spectrophotometer U―3300」、株式会社日立製作所製)を用いて、希釈液の波長500nmにおける吸光度(Abs−b)を測定した。
また、実施例B1〜B4および比較例B1〜B5の各インクについて、調整直後で希釈液としたほかは、上記と同様にして、希釈液の波長500nmにおける吸光度(ABs−a)を測定した。
【0091】
再分散性の評価の指標として、下記式(2)によって吸光度の回復率を算出した。
吸光度の回復率(%)=100×(Abs−b)/(Abs−a)…(2)
【0092】
得られた結果を以下の基準を用いて評価した。
A:回復率が90%以上
B:回復率が80%以上90%未満
C:回復率が70%以上80%未満
D:回復率が70%未満
【0093】
5.3.摩擦堅牢性評価
綿100%の黒色綿ブロード(210mm×297mm)全面に、霧吹きを用いてマスターマインド社製前処理剤「MMP‐813BT‐T用ベースコート ホワイトベース」を均一に塗布した。塗布後、160℃で2分間熱処理し、布帛の前処理を行った。
【0094】
マスターマインド社製テキスタイルプリンタ「MMP813BT」に実施例B1〜B4、および比較例B1〜B5のインクを導入し、前処理済みの布帛に対して、1440dpi×1440dpi、120mm×120mmのベタ印捺を行いた。その後、160℃で5分間、熱処理することで、印捺物を作製した。
【0095】
印捺物の摩擦堅牢性試験を、JISL0849摩擦試験機II型に準じ、学振式摩擦試験機AB‐301(テスター産業製)により実施した(荷重200g、100往復)。なお摩擦布は、白インクの印捺に用いた黒色綿ブロードを用いた。摩擦堅牢性試験の評価は、摩擦試験前後の印捺物に波長457nmの光を照射した際の光の反射率をGretag Macbeth TM SPM50を用いて測定し(測色点は30点)、下記式(3)から算出される白色度減少率により評価した。
白色度減少率(%)=100−(試験後反射率)/(試験前反射率)×100…(3)
【0096】
得られた結果の評価基準は以下の通りである。
A:白色度減少率が10%未満
B:白色度減少率が10%以上15%未満
C:白色度減少率が15%以上20%未満
D:白色度減少率が20%以上
E:評価不能
【0097】
5.4.白色度評価
印捺物に波長457nmの光を照射した際の光の反射率をGretag Macbeth TM SPM50を用いて30点の測定を行い、算出した平均値で評価した。
【0098】
得られた結果の評価基準は以下の通りである。
表面の白色度
A:反射率が0.77以上
B:反射率が0.7以上0.77未満
C:反射率が0.6以上0.7未満
D:反射率が0.6未満
【0099】
裏面の白色度
A:反射率が0.005未満
B:反射率が0.005以上0.015未満
C:反射率が0.015以上0.025未満
D:反射率が0.025以上
【0100】
6.評価結果
6.1.再分散性評価の結果
表3は再分散性評価の結果を示すものである。表1の結果から、白色顔料の平均粒径/ウレタン樹脂の平均粒径の値が2以上12以下であると再分散性が良好となる。
【0101】
6.2.摩擦堅牢性の結果
表3は摩擦堅牢性評価の結果を示すものである。これより、ウレタン樹脂を添加することで、良好な結果が得られることが分かる。
【0102】
6.3.白色度の結果
表3は白色度の評価結果を示すものである。これより、白色顔料の平均粒径/ウレタン樹脂の平均粒径の値が2以上12以下であって、ウレタン樹脂の酸価が10〜25mgKOH/gである場合に、再分散性に優れ、裏抜けのない良好な発色を実現できることが分かる。
【0103】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色顔料と、ウレタン樹脂と、を含有する捺染用白色インクジェットインクあって、前記白色顔料の平均粒径と、前記ウレタン樹脂の平均粒径と、が下記式を満たす捺染用白色インクジェットインク。
2≦白色顔料の平均粒径/ウレタン樹脂の平均粒径≦12
【請求項2】
前記白色顔料が、平均粒径300nm以上400nm以下である二酸化チタンであり、前記二酸化チタンの含有量がインク総質量に対して、5〜15質量%である、請求項1に記載の捺染用白色インクジェットインク。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂は、酸価が10〜25mgKOH/gである、請求項1または2に記載の捺染用白色インクジェットインク。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂の含有量がインク総質量に対して、5〜10質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の捺染用白色インクジェットインク。
【請求項5】
さらに、分散樹脂を含み、前記白色顔料の含有質量に対する前記分散樹脂の含有質量比が、3〜30質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の捺染用白色インクジェットインク。
【請求項6】
インク総質量に対する水分量が、50〜90質量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の捺染用白色インクジェットインク。

【公開番号】特開2013−60513(P2013−60513A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199128(P2011−199128)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】