説明

掃除用具

【課題】 清掃用具に付着したアレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化することができる掃除用具を提供する。
【解決手段】 ドライタイプの繊維状基材を有する室内用の清掃用具であって、前記繊維状基材には、アレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化する、抗原性低減化成分と、油剤と、界面活性剤と、を含む抗原性低減化組成物が付与されており、前記抗原性低減化成分がタンニン酸である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状基材を有する室内用の掃除用具に関し、更に詳しくは、アレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化することができる掃除用具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アレルギー性鼻炎や気管支喘息等のアレルギー性疾患を抱える人の数は増加の一途を辿っている。これらのアレルギー性疾患を引き起こす原因となる物質がいわゆるアレルゲンであり、現在確認されているものだけでその数は約200種類にも及ぶ。ダニ、ダニの死骸、ペットの毛、花粉等はその代表例であり、これらのアレルゲンが何らかの形で人体と接触、又は体内に入ることにより、種々のアレルギー症状が誘発される。
【0003】
この場合、仮にアレルギーの原因となるダニ等を薬剤などで死滅させても、その死虫も抗原性を有しているため、アレルギー疾患の根本的な解決には至らない。従って、アレルギー疾患の症状軽減あるいは新たな感作を防ぐためには、生活空間から完全にアレルゲンを取り除くか、アレルゲンを変性させるなどしてアレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化(不活性化)させることが必要となる。
【0004】
上記のアレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化する剤として、例えば、モクセイ科オリーブ属またはイボタノキ属から選ばれる少なくとも一種の植物からなるアレルゲン不活化剤が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、水溶液の状態で、畳、絨毯、床などに散布又は塗布可能な剤として、有効成分として硫酸アルミニウム及び硫酸ナトリウムを含有する水溶液からなるアレルゲン低減化剤が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−55122号公報
【特許文献2】特開2003−334240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
室内の塵や埃などを除去する目的で使用される、雑巾、モップ、ワイパーなどの掃除用具においては、掃除によって上記のアレルゲンが掃除用具に付着され、この状態で長期間保持されることになる。このため、上記のように、アレルギー疾患の症状軽減、あるいは新たなアレルギー疾患の発症を防ぐためには、掃除用具に保持されたアレルゲンの抗原性も低減化させることが必要となる。
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1、2の剤は、いずれも畳、絨毯、床、衣類など、人体に触れる恐れのある箇所に直接散布又は塗布して使用するものである。これらは、塗布した後に拭き取ったり、掃除機で吸い取ったりする必要があり、面倒である。しかし、日常、最も頻繁に清掃する床や家具の埃・ダストの掃除に関して、アレルギーを引き起こす物質を簡単に除去する方法は検討されていない。また、従来の方法は対象物を濡らすので、乾かす時間が必要であり、アレルギーを引き起こす物質を低減化できるドライタイプの掃除方法の提案はされていない。さらに、モップなどドライタイプの掃除用具に取り込んだ埃・ダストに含まれるアレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化する検討はされていない。
【0008】
特に、室内用の掃除用具においては、使い捨てや交換が可能であって、シート状や刷毛状の繊維状基材を有し、実質的に水分を含有しないドライタイプのものが市場にて好評を博している。このようなドライタイプの掃除用具の場合、付与される抗原性低減化組成物としては、当該組成物が繊維状基材への付着性又は含浸性に優れ、しかも、使用時には対象物への移行が少ないことが要求される。
【0009】
この点、特許文献1においては、上記の付着性や含浸性を考慮した組成物としての検討は行われていない。また、特許文献2のアレルゲン低減化剤は、水溶液の状態でいわゆるウエット状態で使用するものであり、実質的に水分を含有しないようなドライタイプの掃除用具への適用は困難である。
【0010】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、掃除用具に付着したアレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化することができる掃除用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、抗原性低減化成分を、油剤と界面活性剤とを含む特定の組成物として掃除用具に付与することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0012】
(1)ドライタイプの繊維状基材を有する室内用の清掃拭き取り具であって、前記繊維状基材には、アレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化する、抗原性低減化成分と、油剤と、界面活性剤と、を含む抗原性低減化組成物が付与されており、前記抗原性低減化成分がタンニン酸である掃除用具。
【0013】
本発明の掃除用具によれば、抗原性低減化成分と、油剤と、界面活性剤と、を含む抗原性低減化組成物を用いたので、この組成物を、ドライタイプの繊維状基材に容易に付与可能である。また、このような組成物状態で付与することにより、長期間安定した状態で抗原性低減化の効果を維持できる。また、組成物付与量が少ない場合には、使用中に繊維状基材側から掃除対象側への組成物の移行を防止できる。タンニン酸は、ポリフェノールの水酸基がアレルゲン蛋白のアミノ基やペプチド部分と結合することにより抗原性の低減化を行うものと考えられる。また、タンニン酸は安価であり、容易に入手可能である。更に、植物由来であるため、人体への安全性が高い。
【0014】
なお、本発明において、「ドライタイプ」とは、掃除用具に付与する抗原性低減化組成物に含まれる油剤と水分の重量比率において、油の方が多いことを意味し、水分量は5.0%以下が適当である。油剤に水分が可溶化している必要があり、油剤が乳化している場合、ダスト捕集力が低下するため好ましくない。
【0015】
(2)前記界面活性剤は、非イオン系界面活性剤である(1)記載の掃除用具。
【0016】
この態様によれば、抗原性低減化成分と油剤を安定的に混合することができる。
【0017】
(3)前記油剤は、着塵油剤である(1)又は(2)記載の掃除用具であり、また、(4)前記油剤は、鉱物油である(1)から(3)いずれか記載の掃除用具。
【0018】
この態様によれば、油剤として着塵油材、鉱物油を用いることにより、繊維状基材への抗原性低減化組成物の付着を容易にし、更に、一旦繊維状基材へ付与された抗原性低減化組成物が脱離して、掃除対象側へ移行してしまうのを効果的に防止できる。また、埃の捕集力が高まり、再脱落を防ぐことができる。
【0019】
(5)前記鉱物油は、30℃における粘度が10〜200mm/sである(4)記載の掃除用具。
【0020】
鉱物油の30℃での粘度は、10〜200mm/sであることが好ましい。より好ましくは、15〜120mm/sである。粘度が10mm/s未満の場合は,清掃対象面に多量に移行したり、手に付着してベタツキを感じることがある。200mm/sを超えると、ダストの吸着性が不良となる。
【0021】
(6)前記抗原性低減化組成物全体に対し、前記抗原性低減化成分を0.01〜10質量%、前記油剤を50〜95質量%、前記界面活性剤を1〜50質量%含有する(1)から(5)記載の掃除用具。
【0022】
この態様によれば、上記範囲の配合割合とすることで、繊維状基材自身および油剤の着塵力によって、埃を捕集する。更に、抗原性低減化組成物によって捕集物に含まれるアレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化できる
【0023】
(7)前記抗原性低減化組成物は、前記抗原性低減化組成物が付与された繊維状基材全体に対して1〜15質量%となるように付与されている(6)記載の掃除用具。
【0024】
この態様によれば、抗原性低減化組成物を繊維状基材全体に対して1質量%以上付与することで、充分な抗原性の低減化効果を得ることができる。なお、この場合の抗原性低減化成分の添加割合は0.01〜10質量%となるので、ごく微量の抗原性低減化成分の付与で効果を充分に発揮できる。
【0025】
一方、抗原性低減化組成物を繊維状基材全体に対して15質量%以下付与することで、過剰の抗原性低減化組成物の付着による、掃除対象への抗原性低減化組成物の移行を防止できるようになっている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、掃除用具に付着したアレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化する掃除用具を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<抗原性低減化組成物>
本発明の清掃用具に付与される抗原性低減化組成物は、(a)アレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化する抗原性低減化成分と、(b)油剤と、(c)界面活性剤と、を含んでいる。以下、それぞれの構成成分について説明する。
【0028】
[抗原性低減化成分]
本発明で用いられる「抗原性低減化成分」は、アレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化してアレルギー症状を抑制するものであり、植物由来の成分である。ここで、アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)とは、例えば、ダニ、ハウスダスト、動物、真菌(カビ)、昆虫等の吸入性アレルゲンや、スギ、イネ科花粉等である。
【0029】
本発明においては、抗原性低減化成分として、タンニン酸を用いる。このようなタンニン酸としては特公平2−16731号に記載されているタンニン酸を用いることができる。タンニン酸は、ポリフェノールの水酸基がアレルゲン蛋白のアミノ基やペプチド部分と結合することにより抗原性の低減化を行うものと考えられる。
【0030】
上記の抗原性低減化成分は、単独成分として抗原性低減化組成物に配合されてもよく、有効成分及びその抽出液などを含んだ溶液などの状態(以下、抗原性低減化剤という)で配合されてもよい。
【0031】
[油剤]
本発明で用いられる「油剤」は、塵埃やダストの吸着保持能力を高めるために添加される。このような油剤としては特に限定されないが、鉱物油、合成油、シリコーン油、植物油のうち少なくとも1種以上含むことが好ましい。鉱物油としてはパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族炭化水素等が例示できる。これらの油剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
なかでも、油剤の主成分が流動パラフィンである場合、繊維状基材への抗原性低減化組成物の付着を容易にし、更に、一旦繊維状基材へ付与された抗原性低減化組成物が脱離して、掃除対象側へ移行してしまうのを効果的に防止できるので好ましい。
【0033】
[界面活性剤]
本発明で用いられる「界面活性剤」は、掃除用具への付与を容易にし、また、組成物を均一化するために添加される。界面活性剤の種類としては、非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。このような非イオン活性剤としては特に限定されないが、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどが好ましい。ソルビタンエステルとしてはソルビタンラウリン酸モノエステル、ソルビタンパルチミン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンオレイン酸モノエステルなどが好ましい。グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリルなどが好ましい。植物油としては、ホホバ油、アボカド油、オリーブ油、杏仁油、グレープシード油、サフラワー油、ヒマワリ油などが好ましい。ソルビタントリオレエートとしては、ソルビタンステアリン酸トリエステル、ソルビタンオレイン酸トリエステルなどが好ましい。ヒマシ油もしくは硬化ヒマシ油のEO付加物としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが好ましい。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
[その他の成分]
本発明に用いられる抗原性低減化組成物には、その性状を大きく変動させない範囲内において、上記の植物由来の抗原性低減化成分、油剤、界面活性剤以外の各種の成分が配合されていてもよい。
【0035】
[抗原性低減化組成物の配合]
上記の各成分は、従来公知の方法で混合・攪拌され、抗原性低減化組成物とすることができる。ここで、上記の必須3成分である抗原性低減化成分、油剤、界面活性剤の配合割合としては、抗原性低減化組成物全体に対し、抗原性低減化成分を0.01〜10質量%、油剤を50〜95質量%、界面活性剤を1〜50質量%含有することが好ましい。より好ましくは、抗原性低減化成分が0.02〜1質量%、油剤が60〜80質量%、界面活性剤が20〜40質量%である。
【0036】
抗原性低減化成分が0.01質量%未満であると、捕集した埃に対する抗原性低減化率が充分とはいえず好ましくなく、10質量%を超えると、抗原性低減化組成物の経日安定性が不良になり、また高価となるので好ましくない。
【0037】
油剤が50質量%未満であると、油剤成分付与によるダスト類の吸着量の向上は充分とはいえず好ましくなく、95質量%を超えると、抗原性低減化組成物において経日安定性が不良になり好ましくない。
【0038】
界面活性剤が1質量%未満であると、抗原性低減化組成物の経日安定性が不良になりやすいので好ましくなく、50質量%を超えると、添加できる油剤量が減る為ダスト類の吸着量が減るので好ましくない。
【0039】
<掃除用具>
次に、上記の抗原性低減化組成物を付与する掃除用具について説明する。掃除用具は、実質的に水分を含有しない繊維状基材を有する室内用の清掃用具、いわゆるドライタイプの清掃用具であれば特に限定されない。例えば、シート状であってもよく、シートを切断した短冊状であってもよく、モップのように多数の紐状体で構成されていてもよく、トウファイバー(繊維の集合体)で形成されていてもよい。繊維状基材の種類も特に限定されず、天然繊維、合成繊維、半合成繊維のいずれでもよい。また、繊維形態は織物、編物、不織布のいずれであってもよく特に限定されない。
【0040】
<掃除用具の例>
図1、2には、このような掃除用具の一例が示されている。図1は掃除用具の斜視図、図2は図1における掃除用シートの分解斜視図である。図1に示すように、この掃除用具10はいわゆるハンディタイプであり、本発明における繊維状基材に相当する掃除用シート11と、把持具12とから構成されている。なお、把持具12は適宜交換可能であり、例えば、図3に示すような把持具22を装着することで、図1の掃除用具では手の届かない高所や狭い場所においても使用することができる。
【0041】
図2に示すように、掃除用シート11は、上側から順番に、不織布からなり多数の短冊片が形成された保持シート1、同じく不織布からなり多数の短冊片が形成された基材シート2、トウファイバーからなる第1の繊維束3a、トウファイバーからなる第2の繊維束3b、トウファイバーからなる第3の繊維束3c、トウファイバーからなる第4の繊維束3d、複数の短冊片が形成された短冊シート5の順に積層されている。そして、この実施形態においては、第1の繊維束3a、第2の繊維束3b、第3の繊維束3c及び第4の繊維束3dとが、本発明における刷毛部を構成している。したがって、この刷毛部によって掃除がより効果的に行える。そして、この刷毛部のみに抗原性低減化組成物を付与すればよいので、より効果的に抗原性低減化組成物を付与できる。ここで「刷毛部」とは、本発明に係る掃除用具において、主として掃除機能を発揮する部分であり、繊維状基材の一部であっても良く、全部であっても良い。各層は全層接合線6において保持シート1、基材シート2、第1の繊維束3a、第2の繊維束3b、第3の繊維束3c、第4の繊維束3d及び短冊シート5が接合され、接合線7において保持シート1、基材シート2、第1の繊維束3a及び第2の繊維束3bのみが接合されている。これにより、保持シート1と基材シート2との間で保持空間13が形成され、把持具12を挿入して装着することができる。このようなハンディタイプの掃除用具10、20においては、第1の繊維束3a、第2の繊維束3b、第3の繊維束3c及び第4の繊維束3dとで構成される刷毛部にのみ、抗原性低減化組成物を付与することが好ましい。
【0042】
<掃除用具の他の例>
図4には、掃除用具の他の例として、床面を掃除するのに好適なフロアタイプの掃除用具30が示されている。図4に示すように、この掃除用具30では、本発明における繊維状基材に相当する掃除用シート31を、把持具32の先端部32aに巻きつけて使用する。なお、掃除用シート31の表裏にはトウからなる凸部33が形成されており、溝部分など、平面状のものでは掃除しにくい箇所の掃除が行ない易くなっている。この掃除用具30で床面などに触れさせるだけで、掃除用シート31によって埃などが捕集できる。このようなフロアタイプの掃除用具30においては、掃除用シート31の全体に抗原性低減化組成物を付与することが好ましい。
【0043】
<抗原性低減化組成物の付与方法>
上記の掃除用具に抗原性低減化組成物を付与する方法としては、繊維状基材に抗原性低減化組成物を噴霧法やローラーコート法、浸漬法などにより付与する方法が挙げられるがこれに限定されない。
【0044】
抗原性低減化組成物の付与量は、図1のようなハンディタイプの掃除用具においては、繊維状基材全体に対して1〜10質量%が好ましい。1質量%以下では、粉末状のダストをとりきれず、10質量%以上では、被清掃物に多量に移行したり、手に付着してベタツキを感じることがある。一方、図4のようなフロアタイプの掃除用具においては、ハンディタイプよりやや多く、繊維状基材全体に対して3〜15質量%付与することが好ましい。3質量%以下では、粉末状のダストをとりきれず、15質量%以上では、被清掃物に多量に移行したり、手に付着してベタツキを感じることがあるので好ましくない。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
<抗原性低減化成分を含む抗原性低減化剤の製造>
(タンニン酸)
タンニン酸(和光純薬製)を水およびエタノールに溶解し、タンニン酸15%になるよう調整した液である。
【0047】
<抗原性低減化組成物の製造>
タンニン酸を抗原性低減化成分とする抗原性低減化剤を用い、表1に示す配合割合で、製造例1〜3の抗原性低減化組成物を得た。
【0048】
油剤としては、流動パラフィン、サフラワー油から選ばれる1種以上を用いた。また、界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンオレイン酸モノエステル、モノイソステアリン酸グリセリル、ソルビタンオレイン酸トリエステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種以上を用い、その他、水を混合・攪拌し、抗原性低減化組成物を調整した。
【0049】
【表1】

【0050】
注1)(タンニン酸):タンニン酸(和光純薬製)を水およびエタノールに溶解し、タンニン酸15%になるよう調整した液である。
注2)ポリオキシエチレンアルキルエーテルのEO付加モル数は5モル、構成するアルキル基の炭素数12〜14。
注3)30℃での粘度は50mm/s。
注4)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のEO付加モル数は60モル。
注5)ポリオキシエチレンアルキルエーテルのEO付加モル数は3モル、構成するアルキル基の炭素数12〜14。
【0051】
<掃除用具への抗原性低減化組成物の付与>
次に、上記の製造例1、2の抗原性低減化組成物、及び製造例3の組成物を、図1に示すような掃除用具(以下ハンディタイプという)、及び、図4に示すような掃除用具(以下フロアタイプという)にスプレーで付与し、それぞれのタイプについて、実施例1、2(製造例1、2を付与したもの)、及び比較例1(製造例3を付与したもの)の掃除用具を得た。
【0052】
なお、ハンディタイプにおいては、繊維状基材(図1における、シート11)全体に対して5質量%となるように付与した。また、フロアタイプにおいては、繊維状基材(図4における、シート31)全体に対して7.5質量%となるように抗原性低減化組成物を付与した。
【0053】
<試験例>
〔試験例1:抗原性低減化性能の評価〕
実施例1、3、及び比較例1の掃除用具について、以下の手順で、スギ花粉及びヒョウヒダニ類に対する抗原性低減化の評価を行った。その結果をまとめて表2、3に示す。なお、表中の「低減化率」は、100−100×(抗原性低減化剤を付与した掃除用具のELISAによるアレルゲン量)/(抗原性低減化剤を付与しない掃除用具のELISAによるアレルゲン量)によって求めた値であり、表中の記号は下記の低減化率を示す。
○・・・良好 低減化率 50%以上
△・・・劣る 低減化率 10〜50%
×・・・不良 低減化率 0〜10%
【0054】
ハンディタイプ:約0.05gのダニアレルゲン(ヒョウヒダニ類)を含むゴミ、及び約0.01gのスギ花粉を、各々直径9cm高さ17cmのガラス瓶に入れ、フタをして瓶内壁全体にゴミ及びスギ花粉を分散させた。フタをはずし、ハンディタイプの掃除用具で瓶内のゴミ及びスギ花粉を拭き取った。この掃除用具から抽出液でアレルゲンを抽出し、ELISA法により定量的にアレルゲンを測定した。
【0055】
フロアタイプ:約0.05gのダニアレルゲン(ヒョウヒダニ類)を含むゴミ、及び約0.01gのスギ花粉を、各々30×30cmのフロアパネルの上に分散させた。そのゴミ及びスギ花粉をフロアタイプの掃除用具で拭き取った。この掃除用具から抽出液でアレルゲンを抽出し、ELISA法により定量的にアレルゲンを測定した。
【0056】
なお、抽出液としてはリン酸緩衝液(pH7)を用いた。また、ELISA法(enzyme-linked immunosorbent assay:固相酵素免疫検定法)とは、抗原抗体反応において酵素の発色を利用して物質を定量する方法(EIA法(enzyme immunoassay:酵素免疫抗体法)の一種であり、検出したい物質を2種類の抗体で挟み込み定量するサンドイッチ法である。
【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
表2、3の結果より、フロアタイプの掃除用具は、いずれの抗原性低減化組成物においても低減化効果が確認された。なお、実施例1のハンディタイプの掃除用具においては抗原性低減化成分の付与量が少なく、効果がやや不十分であった。
【0060】
〔試験例2:加温、光照射後の低減化効果の評価〕
加温試験:実施例2の掃除用具の繊維状基材のみを、ハンディタイプの掃除用具は紙容器に収容して包装し、フロアタイプの掃除用具はフィルムでピロー包装した。この包装体を、室内の日陰、40℃恒温槽、50℃恒温槽にそれぞれ放置した。そして、放置直後、1ヶ月経過後に、上記の試験例1と同様の方法でアレルゲンを測定した。
光照射試験:ハンディタイプ、フロアタイプの掃除用具の繊維状基材ともに包装せず、シートのまま放置した。キセノンランプウェザーメーターにて太陽光1ヶ月相当、6ヶ月相当を照射し、上記の試験例1と同様の方法でアレルゲンを測定した。
【0061】
結果を表4に示す。表中の低減化率および記号は表2、3と同様の意味を示す。実施例2の掃除用具は、加温1ヶ月放置後においても低減化効果が維持されており、また、光照射後においても、低減化効果が維持されることが確認できた。
【0062】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、繊維状基材を有する室内用の掃除用具として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の掃除用具の一例を示す斜視図である。
【図2】図1における繊維状基材の分解斜視図である。
【図3】本発明の掃除用具の他の例を示す斜視図である。
【図4】本発明の掃除用具の更に他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1 保持シート
2 基材シート
3 繊維束(刷毛部)
3a 第1の繊維束
3b 第2の繊維束
3c 第3の繊維束
3d 第4の繊維束
5 短冊シート
6 全層接合線
7 接合線
10、20、30 掃除用具
11、31 掃除用シート(繊維状基材)
12、22、32 把持具
13 保持空間
32a 先端部
33 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライタイプの繊維状基材を有する室内用の清掃拭き取り具であって、
前記繊維状基材には、アレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化する、抗原性低減化成分と、油剤と、界面活性剤と、を含む抗原性低減化組成物が付与されており、前記抗原性低減化成分がタンニン酸である掃除用具。
【請求項2】
前記界面活性剤は、非イオン系界面活性剤である請求項1記載の掃除用具。
【請求項3】
前記油剤は、着塵油剤である請求項1又は2記載の掃除用具。
【請求項4】
前記油剤は、鉱物油である請求項1から3いずれか記載の掃除用具。
【請求項5】
前記鉱物油は、30℃における粘度が10〜200mm/sである請求項4記載の掃除用具。
【請求項6】
前記抗原性低減化組成物全体に対し、前記抗原性低減化成分を0.01〜10質量%、前記油剤を50〜95質量%、前記界面活性剤を1〜50質量%含有する請求項1から5記載の掃除用具。
【請求項7】
前記抗原性低減化組成物は、前記抗原性低減化組成物が付与された繊維状基材全体に対して1〜15質量%となるように付与されている請求項6記載の掃除用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−19994(P2011−19994A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247791(P2010−247791)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【分割の表示】特願2004−262897(P2004−262897)の分割
【原出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】