説明

授乳服

【課題】着用時の身頃幅を調節可能とすることによって、内部に授乳空間を確保し良好な授乳を行うことができる授乳服を提供する。
【解決手段】前身頃11と、後身頃21とを備えた授乳服10において、後身頃21には、着用時に後身頃21の右側に配設される右後身頃22と、後身頃21の左側に配設される左後身頃26とを備え、前身頃11の右側端13と右後身頃22の右側端24とが接続され、前身頃11の左側端14と左後身頃26の左側端29とが接続されており、後身頃21には、右後身頃22と、左後身頃26とがその上端23,27で前後に重ね合わされた重なり部30を備え、少なくとも重なり部30における右後身頃22の左上端32と左後身頃26の右上端33とが留められ、右後身頃22の左側端25と左後身頃26の右側端28は開放されており、胸元を覆った状態で身頃幅を調節可能としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、授乳服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、外出先において乳児に授乳する際、人目を気にせず、かつ円滑に授乳を行うために使用する授乳服に関する提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4199877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1においては、前身頃を2枚仕立てとし、それぞれの身頃の相反する片脇を後身頃から分離させることによって、布の重なりを利用して容易に乳房を出し入れすることができる開口部を設けるとともに肌の露出を抑えた衣服が提案されている。しかしながら、上記の布の重なりは、授乳服内部に設けられる授乳のための空間、いわゆる授乳空間の大きさを布の重なりの開閉によって調節するために設けられたものではなく、また、布の重なりの上端が肩の位置にあるため胸元に対して布の開き幅が大きく、布の重なりの開閉の度合いによっては授乳状態を露出させる恐れがあり、着用者及び/又は乳児の体格や授乳の仕方等によっては、授乳服内部に必要な授乳空間を確保できずにいた。
【0005】
本願発明はこのことに鑑み、授乳服において、後身頃を2枚仕立てとし、その2枚の身頃の重なり部分を利用して着用時の身頃幅を調節可能とすることによって、内部に十分な授乳空間を確保するとともに、外出先でも安心して良好な授乳を行うことができる授乳服を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に係る発明は、前身頃と、後身頃とを備えた授乳服において、上記後身頃には、着用時に上記後身頃の右側に配設される右後身頃と、上記後身頃の左側に配設される左後身頃とを備え、上記前身頃の右側端と上記右後身頃の右側端とが接続され、上記前身頃の左側端と上記左後身頃の左側端とが接続されたものであり、上記後身頃には、上記右後身頃と、上記左後身頃とがその上端で前後に重ね合わされた重なり部を備え、少なくとも上記重なり部における上記右後身頃の左上端と上記左後身頃の右上端とが留められ、上記右後身頃の左側端と上記左後身頃の右側端は開放されているものであり、上記前身頃の胸元を覆った状態で身頃幅を調節可能としたことを特徴とする授乳服を提供する。
【0007】
また、本願の請求項2に係る発明は、上記重なり部の上端が、着用時に少なくとも肩部より下の上胸部または上背部に配設されており、前後を変更して着用可能としたことを特徴とする請求項1に記載の授乳服を提供する。
【0008】
また、本願の請求項3に係る発明は、上記重なり部には、上記重なり部の左右方向の長さを調節する調節具を備え、上記重なり部の左右方向の長さを上記調節具によって縮めると上記身頃幅の調節量が小さくなり、上記縮めた重なり部の左右方向の長さを上記調節具によって伸ばすと上記身頃幅の調節量が大きくなることを特徴とする請求項1または2に記載の授乳服を提供する。
【0009】
また、本願の請求項4に係る発明は、上記前身頃と上記後身頃とを繋ぐ肩ひもを備え、上記前身頃には、その上端を折り返して形成された前挿通部を備え、上記後身頃には、その上端を折り返して形成された後挿通部を備え、上記肩ひもは、上記前挿通部と、上記後挿通部とに挿通されており、上記前挿通部と、上記後挿通部の何れか一方には、調節孔が備えられ、上記肩ひもを上記調節孔から外方へ引き絞るまたは内方へ緩めることによって、着丈と、上記前身頃と上記後身頃の襟ぐりの長さと、上記身頃幅の調節量とを調節可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の授乳服を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本願の請求項1の発明では、授乳服において、後身頃を右後身頃と左後身頃との2枚仕立てとし、前身頃の右側端と右後身頃の右側端、前身頃の左側端と左後身頃の左側端とをそれぞれ接続し、右後身頃と左後身頃とをその上端で前後に重ね合わせた重なり部の少なくとも左右の上端を留めるとともに右後身頃の左側端と左後身頃の右側端とを開放することによって、開放されている右後身頃の左側端と左後身頃の右側端とが左右方向に開くことを利用して、前身頃の胸元を覆った状態で前後方向及び/又は左右方向の身頃幅を調節可能な授乳服を提供することができたものである。身頃幅を調節することによって、授乳服内部に授乳に十分な空間を設けることができるとともに、着用者は肌を露出することなく、乳児を授乳服で覆った状態で乳児に授乳を行うことができる。また、重なり部が後身頃に設けられたことにより、開放されている右後身頃の左側端と左後身頃の右側端との左右方向への開き幅を気にせず外出先でも安心して授乳を行うことができ、着用者及び/または乳児の体格による個人差等にも対応可能な授乳服を提供することができたものである。
本願の請求項2の発明では、請求項1の発明の効果に加え、重なり部の上端が、着用時に少なくとも肩部より下の上胸部または上背部に配設されることによって、首周りを確保し、前後を変更して着用することができる授乳服を提供することができたものである。また、重なり部の上端が肩部に配設される場合と比較して、上背部における開放されている右後身頃の左側端と左後身頃の右側端との左右方向への開き幅、または、上胸部における開放されている右前身頃の左側端と左前身頃の右側端との左右方向への開き幅を抑えることができたため、特に、重なり部が前身頃に設けられた場合には、胸元に対してその開き幅を気にせずに授乳を行うことができる授乳服を提供することができたものである。
本願の請求項3又は4の発明では、請求項1または2の発明の効果に加え、重なり部の左右方向の長さを調節するための調節具を重なり部に備えることにより、前身頃と後身頃との身頃幅の調節量を調節することができる授乳服を提供することができたものである。特に、請求項4においては、調節具として肩ひもを用い、前身頃と後身頃の上端に設けられた前挿通部及び後挿通部に肩ひもを挿通し、その長さを調節することによって、着丈と、前身頃と後身頃の襟ぐりの長さと、身頃幅の調節量とを調節することができ、授乳服内部の授乳空間の大きさを微調節することができるだけでなく、着用者及び/または乳児の体格による個人差等にも柔軟に対応可能な授乳服を提供できたものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願発明の第1実施形態に係る授乳服全体を示す(A)正面図、及び(B)背面図である。
【図2】本願発明の第1実施形態に係る授乳服を示すもので、(A)は展開状態を示す説明図、(B)は部品図である。
【図3】本願発明の第1実施形態に係る授乳服の右後身頃と左後身頃とを左右方向へ開いた状態を示す説明図である。
【図4】本願発明の第1実施形態に係る授乳服の使用状態の一例を示す説明図である。
【図5】本願発明の第2実施形態に係る授乳服を示すもので、(A)は授乳服全体を示す説明図であり、(B)は第2実施形態に係る授乳服の使用状態の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態の一例を取りあげてを説明する。なお、本願の各請求項及び明細書の記載における上下前後左右の表現は、相対的な位置関係を示すに止まり、絶対的な位置を特定するものではない。
【0013】
本願発明に係る授乳服10は、図1(A)及び図1(B)に示すように、前身頃11と、後身頃21と、前身頃11と後身頃21とを繋ぐ肩ひも41とから構成された、いわゆるキャミソールタイプの授乳服である。
【0014】
前身頃11は、図1(A)に示すように、1枚の身頃から構成され、その上端12には、前身頃11と後身頃21とを繋ぐ肩ひもを挿通するための前挿通部15が備えられている。前挿通部15は、前身頃11の上端12を内側に折り返し、折り返し下端を縫着して筒状に形成されたものあり、中央には、調節孔16,16が2つ設けられている。また、前見頃11は、本実施形態では1枚の身頃から構成されているが、複数の身頃を縫着して構成したり、複数の身頃をボタン等の係止具を用いて係止して構成してもよく、衿がついていてもよい。
【0015】
後身頃21は、図1(B)に示すように、着用時に、後身頃21の右側に配設される右後身頃22と、後身頃21の左側に配設される左後身頃26との2枚の身頃から構成され、前身頃11の右側端13と右後身頃22の右側端24とが接続され、前身頃11の左側端14と左後身頃26の左側端29とが接続されている。本実施形態においては、右後身頃22と左後身頃26とは、その形状が左右対称となっている。また、本実施形態においては、図2(A)に示すように、展開状態において、前身頃11と、右後身頃22と、左後身頃26とが1枚のシート材から形成されているが、図2(B)に示すように、前身頃11と、右後身頃22と、左後身頃26とを、別々の部品から形成し、それぞれの側端(13と24,14と29)を縫着や接着等により接続してもよい。
【0016】
また、図1(B)に示すように、後身頃21を構成する右後身頃22と左後身頃26とは、その上端23,27を基準として前後に重ね合わされた重なり部30を備えている。重なり部30は、本実施形態のように、右後身頃22の一部と左後身頃26の一部とを、その上端23,27を基準として前後に重ね合わせて形成してもよいし、右後身頃22と左後身頃26とをその上端23,27を基準として前後に完全に重ね合わせて形成してもよい。前後の重ね合わせは、右後身頃22と左後身頃26とのどちらが前方になってもよい。
【0017】
さらに、本実施形態では、重なり部30の上端31を全体に渡って縫着することによって、右後身頃22と左後身頃26とを接続している。より詳しくは、前身頃11と後身頃21とを繋ぐ肩ひも41を挿通する後挿通部34として、重なり部30の上端31を含めた後身頃21を構成する右後身頃22と左後身頃26の上端23,27を内側に折り返し、その折り返し下端を縫着して筒状に形成することによって、右後身頃22と左後身頃26とを接続している。また、右後身頃22の左側端25と左後身頃26の右側端28は、それぞれ開放されている。重なり部30の上端31は、少なくとも重なり部30において右後身頃の左上端32と左後身頃の右上端33の2箇所を留めて、右後身頃22と左後身頃26とが接続されていればよい。また、重なり部30の上端31は、着用時、つまり、後述する肩ひも41の長さを調節した後に、肩部より下の上背部に配設されるものとする。本願における上背部とは、肩部を除く肩甲骨周辺を指し、着用者の体格にもよるが、中肉中背の成人女性においては、左または右の首の付け根から鉛直方向に10cm〜30cmの範囲に、重なり部30の上端31が配設されるものとする。
【0018】
肩ひも41は、前身頃11と後身頃21とを繋ぐもので、1本の紐状体から形成される。前身頃11に備えられた前挿通部15の中央に設けられた2つの調節孔16,16のうちの一方の調節孔16から肩ひも41の一端が通され、後身頃21に備えられた後挿通部34を通って、前挿通部15の他方の調節孔16から肩ひも41の一端が出されることによって、前挿通部15と後挿通部34とに肩ひも41が挿通される。挿通された肩ひも41の一端は、図1(A)に示すように、2つの調節孔16,16のうちの一方の調節孔16付近に、挿通された肩ひも41の他端は、他方の調節孔16付近に突出して備えられ、その両端を結ぶことによって、前身頃11と後身頃21とが肩ひも41によって繋がれる。また、肩ひも41の両端には調節孔16からの抜けを防止する抜け止め42,42が設けられている。本実施形態においては、肩ひも41の両端にそれぞれ結び目を用意することによって調節孔16,16からの抜けを防止している。さらに、肩ひも41を調節孔16,16から外方へ引き絞るまたは内方へ緩めることによって肩ひも41の長さを調節することができる。なお、図1(A)では、肩ひも41と調節孔16,16との関係をわかりやすくするために、肩ひも41の結び位置を調節孔16,16よりも下方とした。
前挿通部15を形成するための前身頃11の上端12の折り返し及び後挿通部34を形成するための後身頃21を構成する右後身頃22と左後身頃26の上端23,27の折り返しは、内側または外側のどちらでもよいが、内側に折り返すと授乳服10の見栄えが良い。また、前挿通部15は前身頃11の上端12全体に、後挿通部34は後身頃21を構成する右後身頃22と左後身頃26の上端23,27全体に渡ってそれぞれ連続的に設けられているが、断続的に設けてもよく、これに制限されるものではない。さらに、本実施形態においては、調節孔16,16を前挿通部15に設けたが、調節孔16,16は、前挿通部15と後挿通部34の何れか一方に設けられていればよい。
【0019】
前身頃11と、後身頃21と、肩ひも41の素材には特に制限はなく、着用するための一定強度や耐久性、柔軟性、通気性、耐洗濯性等に優れた素材であればよく、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿、毛、ヤシ繊維、ジュート等の天然繊維や、2種以上の異なる繊維を混紡した混紡糸からなる織編布、不織布等の種々の素材の布を縫製して使用することができる。また、前身頃11と、後身頃21と、肩ひも41とは、同素材の布を用いて形成してもよいし、別素材の布を用いて形成してもよい。さらに、布製以外の、例えば、編製されたニット製であってもよい。
【0020】
また、前身頃11及び後身頃21の形状、つまり、前身頃11、右後身頃22及び左後身頃26の形状については特に制限はなく、図1(B)に示すように、右後身頃22の左側端25から下端にかけての形状や左後身頃26の右側端28から下端にかけての形状を曲線状を有する形状にするほか、側端及び下端を平坦な形状としてもよく、本願発明の目的を逸脱しない範囲において適宜調整すればよい。さらに、前身頃11、後身頃21及び肩ひも41の大きさや縦横の比率は、任意に選択することができる。
【0021】
上述のように、後身頃21を構成する右後身頃22と左後身頃26とをその上端23,27を基準として前後に重ね合わせた重なり部30を設け、その重なり部30の上端31を折り返しその折り返し下端を縫着するとともに右後身頃22の左側端25と左後身頃26の右側端28とを開放することにより、開放されている右後身頃22の左側端25と左後身頃26の右側端28とが左右方向に開くことを利用して、前身頃11の胸元を覆った状態で前後方向及び/又は左右方向の身頃幅を調節することができる。よって、授乳服10内部に十分な授乳空間J1を設け、その空間の大きさを調節することができるとともに、着用者は肌を露出することなく、乳児を授乳服で覆った状態で安心して乳児に授乳を行うことができる。また、重なり部30が後身頃21に設けられたことにより、開放されている右後身頃22の左側端25と左後身頃26の右側端28との左右方向への開き幅を気にせず授乳を行うことができ、着用者及び/または乳児の体格による個人差等にも対応することができる。図3に、右後身頃22と左後身頃26とを左右方向へ開いた状態を示す。図3では、開く前の状態を実線で、左右方向へ開いた状態を二点鎖線で示し、開く前の状態及び左右方向へ開いた状態の右後身頃22の右側端24の下端と左後身頃26の左側端29との下端との距離を身頃幅M1,M2とした。また、図4に、本実施形態の使用状態の一例を示す。なお、本願において、身頃幅とは、身頃の左右の幅のほかに、身頃の前後の幅も含まれるものとする。
【0022】
また、前挿通部15と後挿通部34とに挿通された肩ひも41を調節孔16,16から外方へ引き絞ると、肩ひも41全体のうち、肩への懸架部分43,43が短くなるため着丈が短くなるほか、前挿通部15及び/又は後挿通部34とが左右方向に縮められるため、前身頃11と後身頃21の襟ぐり17,35の長さが短くなる。さらに、後挿通部34の左右方向の収縮に連動して重なり部30の上端31も左右方向に縮められ、重なり部30の左右方向の長さが短くなるため、開放されている右後身頃22の左側端25と左後身頃26の右側端28とが左右方向に開くことを利用した右後身頃22と左後身頃26との左右方向への開き幅が狭くなり、前身頃11と後身頃21の身頃幅の調節量が小さくなる。一方、前挿通部15と後挿通部34とに挿通され、外方へ引き絞られたた肩ひも41を内方へ緩めることによって、短くなった着丈や前身頃11と後身頃21の襟ぐり17,35の長さが元の長さに戻るとともに、前身頃11と後身頃21の身頃幅の調節量が元の量に戻る。したがって、前挿通部15と後挿通部34とに挿通された肩ひも41を、調節孔16,16から外方へ引き絞るまたは内方へ緩めることによって、着丈と、前身頃11と後身頃21の襟ぐり17,35の長さと、身頃幅の調節量とを調節することができ、授乳服10内部の授乳空間J1の大きさを微調節することができるだけでなく、着用者及び/または乳児の体格による個人差等にも柔軟に対応することができる。
【0023】
本願発明に係る授乳服10は、前身頃11と後身頃21の前後方向及び/又は左右方向の身頃幅及び/又は肩ひも41の長さを調節することによって、授乳の仕方を問わず授乳服10内部に十分な授乳空間J1を容易に設けることができるほか、授乳中の乳児の様子を前身頃11の襟ぐり17から確認することもできる。また、着用者が乳児を抱きかかえていても、乳児を背負っていても着用することができ、妊娠・出産により体型が変化しやすいマタニティの方や産後体型が戻った方も着用することができ、女性のライフサイクルに応じた体型の変化に柔軟に対応することができる。さらに、普段は、肩ひも41を調節孔16,16からある程度外方へ引き絞っておき、授乳時にある程度外方へ引き絞った肩ひも41を内方へ緩めるとともに身頃幅を調節して授乳服10内部に十分な授乳空間J1を確保することによって、授乳時のみならず普段から授乳服10を着用することができる。その他、携行するために折りたたむこともできる。
本願発明に係る授乳服10は、通常の衣服と同等のデザインが可能である。また、着衣の有無を問わず着用することができる。着衣の上に重ねて着用した場合は、着衣との組み合わせによりバリエーションに富んだ良好なデザインを実現できる。上述のように、本願発明に係る授乳服10は、授乳のための機能性、デザイン性及び女性のライフサイクルに対応したユニバーサルデザインを兼ね備えている。
【0024】
図5(A)は、本願発明に係る授乳服10の第2実施形態を示す説明図である。本実施形態においては、第1実施形態と比較して、第1実施形態における前身頃11を後身頃(図示省略)とし、第1実施形態における後身頃21を前身頃51として構成するとともに、肩ひも81の取り付け方法及び重なり部60の左右方向の長さを調節する調節具64が異なっている。
【0025】
前身頃51は、図5(A)に示すように、着用時に、前身頃51の右側に配設される右前身頃52と、前身頃51の左側に配設される左前身頃56との2枚の身頃から構成され、後身頃は、第1実施形態の前身頃11と同様、1枚の身頃から構成され、右前身頃52の右側端54と後身頃の右側端71とが接続され、左前身頃56の左側端59と後身頃の左側端72とが接続されている。
また、前身頃51には、前身頃51を構成する右前身頃52の一部と左前身頃56の一部とを、その上端53,57を基準として前後に重ね合わせた重なり部60を備え、重なり部60の上端61のうち、重なり部60における右前身頃52の左上端62と左前身頃56の右上端63の少なくとも2箇所を縫着して、右後身頃52と左後身頃56とが接続されている。また、右前身頃52の左側端55と左前身頃56の右側端58は、それぞれ開放されている。また、重なり部60の上端61は、着用時、つまり、後述する調節具64により重なり部60の左右方向の長さを調節した後に、肩部より下の上胸部に配設されるものとする。本願における上胸部とは、鎖骨から胸元にまで至る範囲を指し、着用者の体格にもよるが、中肉中背の成人女性においては、左または右の首の付け根から鉛直方向に10cm〜25cmの範囲に、重なり部60の上端61が配設されるものとする。
【0026】
さらに、図5(A)に示すように、重なり部60には、重なり部60の左右方向の長さを調節する調節具64が備えられている。本実施形態においては、重なり部60の上端61にボタン65とボタン65を係止する複数のボタンホール66,66,66とを備え、ボタン65を係止する係止位置を変えることによって、重なり部60の左右方向の長さを調節する。重なり部60の左右方向の長さを調節するための調節具64には特に制限はなく、ボタン65とボタンホール66のほかに、ホックや面ファスナー、スナップ、ゴムやひも等であってもよい。
【0027】
肩ひも81、81は、前身頃51と後身頃とを繋ぐもので、2本の紐状体から形成される。2本の肩ひも81,81の一端は、前身頃51の上端、すなわち、右前身頃52の上端53または左前身頃56の上端57に取り付けられ、2本の肩ひもの他端は後身頃の左または右の上端に取り付けられている。また、前挿通部15と後挿通部34は設けられていない。
【0028】
上述のように、前身頃51に重なり部60を設け、重なり部60における右前身頃52の左上端62と左前身頃56の右上端63を縫着し右前身頃52と左前身頃56とを接続するとともに、右前身頃52の左側端55と左前身頃56の右側端58とを開放することによって、開放された右前身頃52の左側端55と左前身頃56の右側端58とを左右方向に開くことができ、また、重なり部60の上端61を、着用時に、肩部より下の上胸部に配設することによって、重なり部60の上端61が肩部にあるのと比較して、胸元と重なり部60の上端61との距離が近いことから、上胸部における開放されている右前身頃52の左側端55と左前身頃56の右側端58との左右方向への開き幅が抑えられるため、前身頃51の胸元を覆った状態で前身頃51と後身頃の前後方向及び/又は左右方向の身頃幅を調節することができ、胸元に対してその開き幅を気にせずに授乳を行うことができる。よって、授乳服10内部に十分な授乳空間J2を設け、その空間の大きさを調節することができるとともに、着用者は肌の露出を抑えた状態で、乳児に授乳を行うことができる。図5(B)に、本実施形態の使用状態の一例を示す。また、着用者及び/または乳児の体格による個人差等にも対応することができる。
【0029】
また、重なり部60に備えられたボタン65の係止位置を変えることによって、重なり部60の左右方向の長さを調節できるため、開放されている右前身頃52の左側端55と左前身頃56の右側端58とが左右方向に開くことを利用した右前身頃52と左後身頃56との前後方向及び/又は左右方向への開き幅が調節でき、前後方向及び/又は左右方向の身頃幅の調節量を調節することができる。よって、授乳服10内部の授乳空間J2の大きさを微調節することができるだけではなく、着用者及び/または乳児の体格による個人差等に柔軟に対応することができる。また、普段時は、ボタン65を複数のボタンホール66,66,66の何れかに係止しておき、授乳時に係止されたボタン65をはずすとともに、身頃幅を調節し授乳服10内部に十分な授乳空間J2を確保することによって、授乳時のみならず普段から授乳服10を着用することができる。
【0030】
本願発明に係る授乳服は、重なり部30が後身頃21に設けられた場合には、着用時にその上端31が肩部より下の上背部に配設され、重なり部60が前身頃51に設けられた場合には、着用時にその上端61が肩部より下の上胸部に配設される。よって、重なり部の上端31,61が肩部よりも下方に配設されるために、首周りを確保し、授乳のための機能性を損なうことなく容易に前後を変更して着用することができる。本願発明に係る授乳服10を前後を変更して着用可能としたことによって、上述したように授乳のための機能を向上させるだけでなく、よりバリエーションに富んだ良好なデザインを実現できる。
【符号の説明】
【0031】
10 授乳服
11 前身頃
12 前身頃の上端
13 前身頃の右側端
14 前身頃の左側端
15 前挿通部
16 調節孔
17 前身頃の襟ぐり
21 後身頃
22 右後身頃
23 右後身頃の上端
24 右後身頃の右側端
25 右後身頃の左側端
26 左後身頃
27 左後身頃の上端
28 右後身頃の右側端
29 右後身頃の左側端
30 重なり部
31 重なり部の上端
32 重なり部における右後身頃の左上端
33 重なり部における左後身頃の右上端
34 後挿通部
35 後身頃の襟ぐり
41 肩ひも
51 前身頃
52 右前身頃
53 右前身頃の上端
54 右前身頃の右側端
55 右前身頃の左側端
56 左前身頃
57 左前身頃の上端
58 左前身頃の右側端
59 左前身頃の左側端
60 重なり部
61 重なり部の上端
62 重なり部における右前身頃の左上端
63 重なり部における左前身頃の右上端
64 調節具
71 後身頃の右側端
72 後身頃の左側端
81 肩ひも

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と、後身頃とを備えた授乳服において、
上記後身頃には、着用時に上記後身頃の右側に配設される右後身頃と、上記後身頃の左側に配設される左後身頃とを備え、
上記前身頃の右側端と上記右後身頃の右側端とが接続され、上記前身頃の左側端と上記左後身頃の左側端とが接続されたものであり、
上記後身頃には、上記右後身頃と、上記左後身頃とがその上端で前後に重ね合わされた重なり部を備え、
少なくとも上記重なり部における上記右後身頃の左上端と上記左後身頃の右上端とが留められ、上記右後身頃の左側端と上記左後身頃の右側端は開放されているものであり、
上記前身頃の胸元を覆った状態で身頃幅を調節可能としたことを特徴とする授乳服。
【請求項2】
上記重なり部の上端が、着用時に少なくとも肩部より下の上胸部または上背部に配設されており、前後を変更して着用可能としたことを特徴とする請求項1に記載の授乳服。
【請求項3】
上記重なり部には、上記重なり部の左右方向の長さを調節する調節具を備え、
上記重なり部の左右方向の長さを上記調節具によって縮めると上記身頃幅の調節量が小さくなり、上記縮めた重なり部の左右方向の長さを上記調節具によって伸ばすと上記身頃幅の調節量が大きくなることを特徴とする請求項1または2に記載の授乳服。
【請求項4】
上記前身頃と上記後身頃とを繋ぐ肩ひもを備え、
上記前身頃には、その上端を折り返して形成された前挿通部を備え、
上記後身頃には、その上端を折り返して形成された後挿通部を備え、
上記肩ひもは、上記前挿通部と、上記後挿通部とに挿通されており、
上記前挿通部と、上記後挿通部の何れか一方には、調節孔が備えられ、上記肩ひもを上記調節孔から外方へ引き絞るまたは内方へ緩めることによって、着丈と、上記前身頃と上記後身頃の襟ぐりの長さと、上記身頃幅の調節量とを調節可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の授乳服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−77429(P2012−77429A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63461(P2011−63461)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【分割の表示】特願2010−223870(P2010−223870)の分割
【原出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(308001983)有限会社シーエスピー (2)