説明

授乳用ブラジャー

【課題】カップの外側縁から素早く乳房を露出して容易に授乳することができると共に、授乳時においては、カップや係止具など異物が当たらない安全で安定した自然体での授乳を可能にした授乳用ブラジャーを提供する。
【解決手段】ブラジャー本体1の前中心部に、左カップ2Lの内側下端部6aと右カップ2Rの内側下端部7aがクロスするフロントクロス部5を設ける。ブラジャー本体1の両側部に、左カップ2Lの外側下端部9aと左後布4Lの一側端部11aおよび右カップ2Rの外側下端部10aと右後布4Rの一側端部12aがクロスするサイドクロス部8を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、授乳用ブラジャーに関するものであり、カップの外側縁(脇側)から乳房を露出して授乳する授乳用ブラジャーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、授乳用ブラジャーは種々のものが提案されている。その一つとして、左右カップの中央部に着脱自在に係止する係止具を設け、その係止具の係止を解くことにより、カップが左右に開き乳房を露出して授乳するものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、別なものとして、左右カップの上端部と、左右ストラップの上方部に着脱自在に係止する係止具を設け、その係止具の係止を解くことにより、カップの上部が開いて乳房を露出して授乳するものが提案されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【0004】
さらに、別なものとして、前記特許文献1〜4のような係止具を用いることなく、左右カップを上カップと下カップに分けると共に、上カップを上前側布と上脇側布の2枚の分離布で形成し、授乳時に上前側布をめくると上脇側布もめくれて乳頭およびその周囲を露出して授乳するものが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−6217号公報
【特許文献2】特開平8−127904号公報
【特許文献3】実開平4−106303号公報
【特許文献4】特開平9−3706号公報
【特許文献5】特開平7−42002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜2および特許文献3〜4の授乳用ブラジャーは、乳児を抱きかかえながら授乳の度に係止具の係止を解いたり、係止したりしなければならず、その操作が非常にやり難いと共に、手間がかかるといった問題点があった。また、授乳時にカップが邪魔になったり、係止具が乳児の肌に当たったりする虞があり、安全で安定した自然体での授乳が困難であった。さらに、係止具を解くことによりカップが乳房全体から外れて、必要以上に乳房を露出することになり、外出先などでは授乳し難いと言った問題点があった。
【0007】
特許文献5は、カップ部の上前側布をめくるだけで乳頭およびその周囲を露出することができ、極めて簡単に授乳を行うことができると共に、授乳後は上記上前側布を元に戻すだけで簡単に身づくろいができる利点はあるものの、繰り返し授乳することによって、上前側布および上脇側布に折れ曲がり癖がつき、ブラジャーの使用時にバストにフィットしなくなり、バストを補整するというブラジャーの機能を果たせないといった問題点があった。
【0008】
また、上記特許文献1〜5の授乳用ブラジャーは、いずれも伸縮性の少ない布地を用いてバスト形状に適合する左右カップ部と、締め付け力の強い編地からなるバック布と、伸縮性良好な細いストラップなどの各部材をそれぞれ縫製して出来上がったハードブラジャーであり、バストの補整効果は高いが、バストが大きくなる授乳時には胸周りを強く圧迫するため、着用感がよくなく、かつ前述のように係止具を解くことによりフロント部から乳房を露出して授乳できても、その構造上、カップの外側縁から乳房を露出することができなかった。
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決することを課題として研究開発されたもので、カップの外側縁から素早く乳房を露出して容易に授乳することができると共に、授乳時においては、カップや係止具など異物が当たらない安全で安定した自然体での授乳を可能にした授乳用ブラジャーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決し、その目的を達成する手段として、本発明は、ブラジャー本体の前中心部に、左カップの内側下端部と右カップの内側下端部がクロスするフロントクロス部を設けると共に、ブラジャー本体の両側部に、左カップの外側下端部と左後布の一側端部および右カップの外側下端部と右後布の一側端部がクロスするサイドクロス部を設けたことを特徴とする授乳用ブラジャーを開発し、採用した。
【0011】
上記のように構成した授乳用ブラジャーにおいて、前記フロントクロス部は、左カップの内側下端部を右カップの内側下端部の内面に重ね、その下端部同士を縫着せず遊離していると共に、前記サイドクロス部は、左後布の一側端部と左カップの外側下端部および右後布の一側端部と右カップの外側下端を、左右後布の一側端部を内面にして重ねてあり、その下端部同士を縫着せず遊離していることを特徴とする授乳用ブラジャー、および前記左右カップの内側縁と外側縁に伸縮テープを取り付けてあることを特徴とする授乳用ブラジャーを開発し、採用した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1によれば、ブラジャー本体の前中心部にフロントクロス部を設けてあるから、左カップもしくは右カップの内側縁を持って脇方向に引き寄せればカップ内側縁から乳房が露出してフロントオープン授乳が可能になり、またブラジャー本体の両側部にサイドクロス部を設けてあるから、左カップもしくは右カップの外側縁を持ってフロント方向に引き寄せることにより、カップ外側縁から乳房が露出してサイドオープン授乳が可能になる。
【0013】
本発明の請求項2によれば、前記フロントクロス部は、左カップの内側下端部を右カップの内側下端部の内面にクロスし、その下端部同士を縫着せず遊離しているから、左カップもしくは右カップを脇方向に引っ張ればスムーズに伸びてカップ内側縁から乳房を露出することができフロントオープン授乳が可能になる。また、前記サイドクロス部は、後布の一側端部を左右カップの外側下端部の内面に配し、その下端部同士を縫着せず遊離しているから、左右カップの外側縁をフロント方向に大きく引き寄せることができて、カップ外側縁から容易に乳房が露出し、従来不可能であったサイドオープン授乳が可能になる。特にカップ外側縁のサイドオープン授乳によれば、カップ布など邪魔になるものがなくスムーズに授乳できる。
【0014】
本発明の請求項3によれば、左右カップの内縁と外縁に伸縮テープを取り付けてあるから、左右カップをカップ内側縁方向およびカップ外側縁方向の両方に大きく伸縮し、左右カップの引き寄せをスムーズに行うことができ、素早く乳房を露出でき容易に授乳できる。また、ブラジャー装着時には身体にぴったりとフィットしてズレなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の授乳用ブラジャーの正面斜視図である。
【図2】本発明の授乳用ブラジャーの背面斜視図である。
【図3】フロントクロス部の拡大正面図である。
【図4】サイドクロス部の拡大正面図である。
【図5】カップ布の外側縁から乳房を露出した状態の正面図である。
【図6】カップ布の内側縁から乳房を露出した状態の正面図である。
【図7】カップ布の外側縁での普通抱きによる授乳の説明図である。
【図8】カップ布の外側縁でのフットボール抱きによる授乳の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を添付の図1〜図8に基づいて説明すれば、1は伸縮性と柔軟性に富むベアー天竺によって形成された授乳用ブラジャー本体である。このブラジャー本体1は、乳房を覆う略三角形状の左右カップ2L,2Rと、その左右カップ2L,2Rの上端部から後方部に延びる細帯状の左右肩紐布3L,3Rと、その左右肩紐布3L,3Rと縫着して連設する下方に行くに従って幅広になる背中の一部を覆う左右後布4L,4Rとで構成されており、これらが全てベアー天竺によって形成されている。
【0017】
5はブラジャー本体1の前中心部に設けたフロントクロス部であり、左カップ2Lの内側縁6の下端部6aと右カップ2Rの内側縁7の下端部7aがクロスしており、その重なった部分の形状は図3に示すような底辺と斜辺の長さが等しい略正三角形状に形成されている。すなわち、左カップ2Lの内側縁6の下端部6aが右カップ2Rの内側縁7の下端部7aの内面に重なっている。下端部6aと下端部7aは、その下辺部のみ後述の幅広テープ17に縫着されており、他の重合部は遊離した状態になっている。
【0018】
8はブラジャー本体1の両側部に設けたサイドクロス部であり、左カップ2Lの外側縁9の下端部9aと右カップ2Rの外側縁10の下端部10aと、左後布4Lの一側縁11の端部11aと右後布4Rの一側縁12の端部12aがクロスしており、その重なった部分の形状は図4に示すような底辺が長く斜辺が短い二等辺三角形状に形成されている。すなわち、左後布4Lの一側縁11の端部11a,および右後布4Rの一側縁12の端部12aが左カップ2Lの外側縁9の下端部9aおよび右カップ2Rの外側縁10の下端部10aの内面に重なっており、下端部9a,11aはその下辺部のみ後述の幅広テープ16と縫着されており、他の重合部は遊離された状態になっている。
【0019】
13は左カップ2L,右カップ2Rの裏面側に縫い付けてある非伸縮性生地からなるパッド収納袋であり、内側の下方部に設けた開口部14からパッド15を着脱自在にしてある。
【0020】
16は左カップ2Lの内側縁6と外側縁9および右カップ2Rの内側縁6と外側縁9および左右肩紐布3L,3Rの両側縁、左右バック布4L,4Rの両側縁に縫着した細幅の伸縮テープであり、左右カップ2L,2Rと左右肩紐布3L,3Rと左右バック布4L,4Rのそれぞれの生地の伸縮性と相俟って大きく伸縮するようになっている。17は左右カップ2L,2Rの下端部と左右後布4L,4Rの下端部に縫着されている幅広の伸縮帯であり、ブラジャー本体1のずり上がりやずり下がりを防止している。
【0021】
このように構成した本発明の使用状態を説明すると、図7に示す普通抱きによる授乳では、授乳させる方の乳房を被覆している右カップ2Rの外側縁10を、授乳させる方の乳房と反対側の手でフロント側に引き寄せれば、サイドクロス部8で重合しているカップ外側縁10の下端部10aと右後布4Rの一側縁12の端部12aが縫着されることなく、遊離されていると共に、カップ生地の伸縮性とカップの外側縁10に縫着した伸縮細テープ16との伸縮性が相俟って大きく伸縮することになり、カップ外側縁から極めて容易に乳房を露出して授乳させることができる。また、授乳を終えれば、右カップ2Rの外側縁10を引き寄せていた手を放せば、その伸縮力によって右カップ2Rは自動的に復元して乳房を被覆することができ、乳房の露出、被覆を速やかに行うことができる。また、カップ外側縁からの授乳においては、カップが乳房を塞がないように手を添えることができるので、赤ちゃんの飲み口を邪魔することなく授乳させることができる。
【0022】
また、図8に示すようなフットボール抱きで授乳させる時においても、上記と同様にカップが乳房を塞がないように手を添えることができるので、赤ちゃんの飲み口を邪魔することなく授乳できるものである。さらに、脇側からの授乳は、添い乳の場合でも、無理のない自然体での授乳を可能にするから、脇のリンパを阻害せず母乳をサラサラの出やすい環境にできる。
【0023】
また、場合によっては、図6に示すように、左カップ2Lの内側縁6を脇側に引き寄せれば、フロント側からでも乳房を露出でき授乳が可能になり、アウターの形状や構造によって、授乳スタイルを使い分けることができて便利になる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態においては、フロントクロス部の重なった形状を正三角形、サイドクロス部の重なった形状を二等辺三角形の例で説明したが、それらに限定されるものではなく、例えば、フロントクロス部の重なった形状を二等辺三角形に、サイドクロス部の重なった形状を正三角形にすることもあり、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、従来のようなフロント側での授乳は勿論のこと、従来の授乳ブラジャーでは不可能であったカップ外側縁からの授乳が可能な授乳用ブラジャーとして好適に利用できるものである。
【符号の説明】
【0026】
1 ブラジャー本体
2L 左カップ
2R 右カップ
3L 左肩紐布
3R 右肩紐布
4L 左後布
4R 右後布
5 フロントクロス部
6,7 内側縁
6a,7a 下端部
8 サイドクロス部
9,10 外側縁
9a,10a 下端部
11 一側縁
11a 端部
16 伸縮細テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラジャー本体の前中心部に、左カップの内側下端部と右カップの内側下端部がクロスするフロントクロス部を設けると共に、ブラジャー本体の両側部に、左カップの外側下端部と左後布の一側端部および右カップの外側下端部と右後布の一側端部がクロスするサイドクロス部を設けたことを特徴とする授乳用ブラジャー。
【請求項2】
前記フロントクロス部は、左カップの内側下端部を右カップの内側下端部の内面に重ね、その下端部同士を縫着せず遊離していると共に、前記サイドクロス部は、左後布の一側端部を左カップの外側下端部および右後布の一側端部を右カップの外側下端部の内面に重ね、その下端部同士を縫着せず遊離していることを特徴とする請求項1に記載の授乳用ブラジャー。
【請求項3】
前記左右カップの内側縁と外側縁に伸縮テープを取り付けてあることを特徴とする請求項1または2に記載の授乳用ブラジャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−17094(P2011−17094A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161625(P2009−161625)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(591042414)株式会社ルシアン (9)
【Fターム(参考)】