説明

授乳用衣服

【課題】着用者が着衣のまま屋内外で容易にかつ乳房をあまり露出することなく授乳が可能で、通常の着衣状態では外観上何ら授乳用の上衣であることを感じさせないデザインとし、乳児が乳離れした後においても、違和感なくカジュアルウェアとして着用することができる授乳用衣服を提供する。
【解決手段】
身丈が少なくとも胸部又は/及び膝上までの長さを有する前身頃2と後身頃3からなる衣服本体1と、衣服本体1の内側に配置され、両袖ぐり8、9又は/及び両肩線6、7、両脇下線10、11に縫着される授乳口カバー体2とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、授乳用衣服に係り、より詳しくは、着用者が着衣のまま随時授乳が可能な授乳用衣服で、かつ通常の着衣状態では外観上何ら授乳用の上衣であることを感じさせないで、乳児が乳離れした後においても、違和感を感じることなくカジュアルウェアとして着用することができる授乳用衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、母親が乳児に授乳する際に、衣服を着用したまま授乳できるような授乳用衣服の提案が若干なされている。このような授乳用衣服は、衣服を着用したまま、乳房が出し易く、かつ、露出部を少なくするように、隠蔽機能のあるものが提案されている。また、近年では、カジュアルウェアのデザインに近い授乳服の提案もなされている。
【0003】
例えば、乳房の全体を含む領域である胸部を覆う比較的大きい覆い布と、その覆い布の下にカシュクール状とした布を設けた授乳服が開示されている(例えば、特許文献1、図2参照)。
【0004】
また、襟ぐりの開口部が乳房位置まで達するような授乳服の本体と、その本体の内部に配置される比較的長くて大きい内側前身頃を有しており、授乳時にはその内側前身頃を授乳服本体の前に引き出して、授乳服本体の開口部から出された乳房を比較的長く大きい内側前身頃で隠して授乳できる授乳服も開示されている(例えば、特許文献2、図3及び図4参照)。
【0005】
授乳を行う母親は、乳房の保護や保形、あるいは母乳漏れを防止するための母乳パッドを装着するため、通常、ブラジャーを着用している。従って、従来の授乳服の場合は、授乳に際して、授乳服を着用したまま、乳房を露出させるには以下の手順が必要であり、時間を要するものであった。つまり、例えば、特許文献1の授乳服の場合は、先ず、乳房を含む領域である胸部を覆うように比較的大きく形成された覆い布をめくり、その状態で覆い布の内側に配置されるカシュクール状の布である衣服の襟ぐり部を開いてブラジャーを装着している胸部を露出する。そして、その状態でブラジャーをめくる。従って、片手で比較的大きく設けられている覆い布や衣服及びブラジャーのカップを抑えつつ、乳児をもう一方の手で抱え、授乳する必要がある。
【0006】
また、特許文献2の授乳服の場合は、授乳服本体の内部に配置される比較的長く大きい内側前身頃を有しており、このような授乳服の場合は、授乳時に本体の前側に比較的長く大きい内側前身頃を引き出して、授乳服本体の開口部から出された乳房をこの内側前身頃で隠して授乳するものである。このため、何れの授乳服も着用したまま授乳はできるが、手軽に素早く授乳することが困難である。
【0007】
一方、前身頃の裏側に、前方の肩部分と乳房の下部分であるアンダーバストの位置の部分とで比較的長く大きい内側前身頃を固定するようにした授乳服も開示されている(例えば、特許文献3、図1参照)。
【0008】
しかしながら、この授乳服の場合も、内側前身頃が前方の肩部分とアンダーバストの部分とで固定され、かつ、内側前身頃が比較的長く大きい略長方形形状をしているものであるため、襟ぐりとの距離が離れてしまい、授乳に際し、着用しているブラジャーのカップの開閉が困難であるという問題がある。そして、襟ぐりやカップを抑えながら授乳する必要もあり、面倒であるとの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−131868号公報
【特許文献2】特許第3694694号公報
【特許文献3】実用新案登録第3110811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明の課題は、着用者が着衣のまま屋内外で容易にかつ乳房をあまり露出することなく授乳が可能で、通常の着衣状態では外観上何ら授乳用の上衣であることを感じさせないデザインとし、乳児が乳離れした後においても、違和感なくカジュアルウェアとして着用することができる授乳用衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、上記従来技術が有する各種問題点に鑑み鋭意検討を重ね、課題を解決するために、当該業界では想到不可能な解決手段を完成したものである。
課題を解決するための手段は、本願、特許請求の範囲の各請求項に記載の発明であり、その具体的な解決手段は、以下の通りである。
【0012】
課題を解決するための第1の発明は、請求項1に記載の発明であり、
着用者が着衣のまま屋内外で容易に授乳できる授乳用衣服であって、
身丈が少なくとも胸部又は/及び膝上までの長さを有する前身頃と後身頃からなる衣服本体と、
前記衣服本体の内側に配置され、両袖ぐり又は/及び両肩線、両脇下線に縫着される授乳口カバー体とから構成されている、
ことを特徴としている。
【0013】
課題を解決するための第2の発明は、請求項2に記載の発明であり、
請求項1に記載する授乳用衣服において、
前記衣服本体の前襟ぐり部が、ほぼ半円状、U字状又はV字状に大きく形成されている、
ことを特徴としている。
【0014】
課題を解決するための第3の発明は、請求項3に記載の発明であり、
請求項1〜2に記載する授乳用衣服において、
前記授乳口カバー体の前襟ぐり部が、ほぼ半円状、U字状又はV字状に大きく形成されている、
ことを特徴としている。
【0015】
課題を解決するための第4の発明は、請求項4に記載の発明であり、
請求項1〜3に記載する授乳用衣服において、
前記衣服本体が、長袖又は短袖のワンピース又はスウェットシャツである、
ことを特徴としている。
【0016】
課題を解決するための第5の発明は、請求項5に記載の発明であり、
請求項1〜3に記載する授乳用衣服において、
前記衣服本体が、タンクトップである、
ことを特徴としている。
【0017】
課題を解決するための第6の発明は、請求項6に記載の発明であり、
請求項1〜5に記載する授乳用衣服において、
前記衣服本体又は前記授乳口カバー体が、左前身頃と右前身頃が突き合わせ部で交叉し中央領域で重ね合わせられている、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本願発明に係る、授乳用衣服は、上記の構成になるから以下の効果を奏する。
第1の発明(請求項1)によれば、
「着用者が着衣のまま屋内外で容易に授乳できる授乳用衣服であって、身丈が少なくとも胸部又は/及び膝上までの長さを有する前身頃と後身頃からなる衣服本体と、前記衣服本体の内側に配置され、両袖ぐり又は/及び両肩線、両脇下線に縫着される授乳口カバー体とから構成されている」という、当業界においては想到不可能な特徴的な構成により、特徴的構成要件に応じた以下のような顕著な効果を奏することができた。
即ち、着用者が着衣のまま屋内外で容易にかつ乳房をあまり露出することなく授乳が可能で、通常の着衣状態では外観上何ら授乳用の上衣であることを感じさせないデザインとし、乳児が乳離れした後においても、違和感なくカジュアルウェアとして着用することができる授乳用衣服の提供という、本願発明の課題を解決することができた。
【0019】
第2の発明(請求項2)によれば、
「前記衣服本体の前襟ぐり部が、ほぼ半円状、U字状又はV字状に大きく形成されている」という特徴的な構成により、着用者は授乳に際し、左右いずれかの乳房を簡単に取り出し授乳することができる。
【0020】
第3の発明(請求項3)によれば、
「前記授乳口カバー体の前襟ぐり部が、ほぼ半円状、U字状又はV字状に大きく形成されている」という特徴的な構成により、着用者は授乳に際し、左右いずれかの乳房を簡単に取り出し授乳することができると共に、露出された乳房の露出度を少なくすることができる。
【0021】
第4の発明(請求項4)によれば、
「前記衣服本体が、長袖又は短袖のワンピース又はスウェットシャツである」という特徴的な構成により、通常の着衣状態では外観上何ら授乳用の上衣であることを感じさせないデザインとしているので、着用者は、乳児が乳離れした後においても、違和感なくカジュアルウェアとして着用することができる。
【0022】
第5の発明(請求項5)によれば、
「前記衣服本体が、タンクトップである」という特徴的な構成により、第4の発明と同様に、通常の着衣状態では外観上何ら授乳用の上衣であることを感じさせないデザインとしているので、着用者は、乳児が乳離れした後においても、違和感なくカジュアルウェアとして着用することができる。
【0023】
第6の発明(請求項6)によれば、
「前記衣服本体又は前記授乳口カバー体が、左前身頃と右前身頃が突き合わせ部で交叉し中央領域で重ね合わせられている」という特徴的な構成により、着用者は授乳に際し、左右いずれかの乳房を簡単に取り出し授乳することができると共に、露出された乳房の露出度を少なくすることができる。また通常の着衣状態では外観上何ら授乳用の上衣であることを感じさせないデザインとしているので、着用者は、乳児が乳離れした後においても、違和感なくカジュアルウェアとして着用できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】は、本発明に係る、授乳用衣服の第1実施形態を示す正面図である。
【図2】は、同上における衣服本体の正面図である。
【図3】(a)は、同上における授乳口カバー体の正面図、(b)は、授乳口カバー体の背面図である。
【図4】(a)は、本発明に係る、授乳用衣服の第2実施形態を示す正面図、(b)は、同授乳口カバー体の正面図である。
【図5】(a)は、本発明に係る、授乳用衣服の第3実施形態を示す正面図、(b)は、同授乳口カバー体の正面図である。
【図6】(a)は、本発明に係る、授乳用衣服の第4実施形態を示す正面図、(b)は、同授乳口カバー体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る、授乳用衣服に関する実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1〜図3は、本発明に係る第1の実施形態を示し、長袖ワンピース型の授乳用衣服(以下、衣服W1という)で、身丈を膝上までの長さとしたものであり、1は衣服本体で、2は前身頃、3は後身頃、4は前襟ぐり部で、図示するようにほぼU字状に大きく形成されている。5は後襟ぐり部、6は左肩線、7は右肩線、8は左袖ぐり、9は右袖ぐり、10は左脇下、11は右脇下である。
図3は、衣服本体1の内側に配置される授乳口カバー体(以下、カバー体C1という)を示し、C2は前身頃、C3は後身頃、C4は襟部、C5は後身頃C3の下端縁、C6は左肩線、C7は右肩線、C8は左袖ぐり、C9は右袖ぐり、C10は左脇下、C11は右脇下である。
【0026】
図1に示す長袖ワンピース型の衣服W1の制作手順について説明する。まず、カバー体C1の後身頃C3における下端縁C5を衣服本体1の後襟ぐり部5に縫着する。次に、カバー体C1の左肩線C6を衣服W1の左肩線6に縫着し、右肩線C7を衣服W1の右肩線7に縫着する。続いて左袖ぐりC8を衣服W1の左袖ぐり8に縫着し、右袖ぐりC9を衣服W1の右袖ぐり9に縫着する。そして左脇下C10を衣服W1の左脇下10に縫着し、右脇下C11を衣服W1の左脇下11に縫着して、長袖ワンピース型の授乳用衣服W1の制作は完了する。授乳に際し、着用者は、カバー体C1の前身頃C2を指先で摘んで衣服W1の前襟ぐり部4の上方に引き上げて授乳することができる。
【0027】
図4(a)、(b)は、本発明に係る第2実施形態を示し、短袖付きスウェットシャツ型の授乳用衣服(以下、衣服W2という)である。21は衣服本体で、22は前身頃、23は後身頃、24は前襟ぐり部で、25は後襟ぐり部、26は左肩線、27は右肩線、28は左袖ぐり、29は右袖ぐり、210は左脇下、211は右脇下である。
図4(b)は、衣服W2の内側に配置される授乳口カバー体(以下、カバー体C2という)を示し、C22は前身頃、C23は後身頃、C24は前襟ぐり部で、図示するようにほぼU字状に大きく形成されている。C26は左肩線、C27は右肩線、C28は左袖ぐり、C29は右袖ぐり、C210は左脇下、C211は右脇下である。
【0028】
図4に示す短袖付きスウェットシャツの衣服W2の制作手順について説明する。まず、カバー体C2の左肩線C26を衣服W2の左肩線26に縫着し、右肩線C27を衣服W2の右肩線27に縫着する。次に左袖ぐりC28の左脇下C210を衣服W2の左脇下210に縫着し、右脇下C211を衣服W2の左脇下211に縫着して、短袖付きスウェットシャツ型の授乳用衣服W2の制作は完了する。授乳に際し、着用者は、衣服W2の前身頃22を指先で摘んでカバー体C2の前襟ぐり部C24の上方に引き上げて授乳することができる。
【0029】
図5(a)、(b)は、本発明に係る第3実施形態を示し、タンクトップ型の授乳用衣服(以下、衣服W3という)である。31は衣服本体で、32は前身頃、33は後身頃、34は前襟ぐり部で、左前身頃32aと右前身頃32bが突き合わせ部32cで交叉し中央領域32dで重ね合わせられている。35は後襟ぐり部、36は左肩紐、37は右肩紐、38は左脇腹線、39は右脇腹線である。
図5(b)は、衣服W3の内側に配置される授乳口カバー体(以下、カバー体C3という)を示し、C32は前身頃、C34は前襟ぐり部で、図示するようにフリル等の装飾片が縫着されている。C36は左脇下線、C37は右脇下線、C38は左脇腹線、C39は右脇腹線である。
【0030】
図5に示すタンクトップ型の衣服W3の制作手順について説明する。まず、カバー体C3の左脇下線C36を衣服W3の左肩紐36の下方部に縫着し、右脇下線C37を衣服W3の右肩紐36の下方部に縫着する。次に左脇腹線C38を衣服W3の左脇腹線38に縫着し、右脇腹線C39を右脇腹線39に縫着して、タンクトップ型の授乳用衣服W3の制作は完了する。授乳に際し、着用者は、カバー体C3の前身頃C32を指先で摘んで衣服W3の前襟ぐり部34の上方に引き上げて授乳することができる。
【0031】
図6(a)、(b)は、本発明に係る第4実施形態を示し、タンクトップ型の授乳用衣服(以下、衣服W4という)である。41は衣服本体で、42は前身頃、43は後身頃、44は前襟ぐり部で、図示するようにフリル等の装飾片44aが縫着されている。45は後襟ぐり部、46は左肩紐、47は右肩紐、48は左脇腹線、49は右脇腹線である。
図6(b)は、衣服W4の内側に配置される授乳口カバー体(以下、カバー体C4という)を示し、C42は前身頃、C44は前襟ぐり部で、左前身頃C42aと右前身頃C42bが突き合わせ部C42cで交叉し中央領域C42dで重ね合わせられている。C46は左脇下線、C47は右脇下線、C48は左脇腹線、C49は右脇腹線である。
【0032】
図6に示すタンクトップ型の衣服W4の制作手順について説明する。まず、カバー体C4の左脇下線C46を衣服W4の左肩紐46の下方部に縫着し、右脇下線C47を衣服W4の右肩紐46の下方部に縫着する。次に左脇腹線C48を衣服W4の左脇腹線48に縫着し、右脇腹線C49を右脇腹線49に縫着して、タンクトップ型の授乳用衣服W4の制作は完了する。授乳に際し、着用者は、衣服W4の前身頃42を指先で摘んでカバー体C4の前襟ぐり部C44の上方に引き上げて授乳することができる。
【符号の説明】
【0033】
W1 授乳用衣服
C1 授乳口カバー体
1 衣服本体
2 前身頃
3 後身頃
4 前襟ぐり部
5 後襟ぐり部
6 左肩線
7 右肩線
8 左袖ぐり
9 右袖ぐり
10 左脇下
11 右脇下
C2 前身頃
C3 後身頃
C4 襟部
C5 下端縁、
C6 左肩線
C7 右肩線
C8 左袖ぐり
C9 右袖ぐり
C10 左脇下
C11 右脇下

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者が着衣のまま屋内外で容易に授乳できる授乳用衣服であって、
身丈が少なくとも胸部又は/及び膝上までの長さを有する前身頃と後身頃からなる衣服本体と、
前記衣服本体の内側に配置され、両袖ぐり又は/及び両肩線、両脇下線に縫着される授乳口カバー体とから構成されている、
ことを特徴とする授乳用衣服。
【請求項2】
前記衣服本体の前襟ぐり部が、ほぼ半円状、U字状又はV字状に大きく形成されている、
ことを特徴と請求項1に記載する授乳用衣服。
【請求項3】
前記授乳口カバー体の前襟ぐり部が、ほぼ半円状、U字状又はV字状に大きく形成されている、
ことを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載する授乳用衣服。
【請求項4】
前記衣服本体が、長袖又は短袖のワンピース又はスウェットシャツである、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載する授乳用衣服。
【請求項5】
前記衣服本体が、タンクトップである、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載する授乳用衣服。
【請求項6】
前記衣服本体又は前記授乳口カバー体が、左前身頃と右前身頃が突き合わせ部で交叉し中央領域で重ね合わせられている、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載する授乳用上衣。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−47095(P2011−47095A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216192(P2009−216192)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(500423190)株式会社ステップ ワン (3)