排インク消泡装置
【課題】排インクを周囲に飛散させることなく、排インク受け部から排インクタンクへと排インクを滴下させることが可能な排インク処理装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッドのノズルから排出された排インクは、排インク流路20を経て排インク受け部10の排インク受容室CH内に流入し、排インク受け部の排出口11Aに排インクによる膜Mを形成することがある。この場合、排インク受け部内の圧力P1が大気圧P2より大きければ膜は膨張して破裂するが、排インク受容室CHは大気連通孔17Aによって大気と連通しているため、膜の内外の圧力はいずれも大気圧となる。このため、膜Mが膨張、破裂を起こすことはなく、膜は静かに消失し、排インクの外部への飛散は防止される。
【解決手段】記録ヘッドのノズルから排出された排インクは、排インク流路20を経て排インク受け部10の排インク受容室CH内に流入し、排インク受け部の排出口11Aに排インクによる膜Mを形成することがある。この場合、排インク受け部内の圧力P1が大気圧P2より大きければ膜は膨張して破裂するが、排インク受容室CHは大気連通孔17Aによって大気と連通しているため、膜の内外の圧力はいずれも大気圧となる。このため、膜Mが膨張、破裂を起こすことはなく、膜は静かに消失し、排インクの外部への飛散は防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に対して交換可能に設けられた排インクタンクの排インク導入口に対し、インクジェット記録ヘッドから排出された排インクを排出・落下させる排インク処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)では、記録ヘッドに設けられているノズルの吐出性能の回復・維持のため、経時変化などにより吐出に適さなくなったインクをノズル内から排出させてリフレッシュさせる回復処理が行なわれる。この回復処理によって排出された排インクは、通常、インクジェット記録装置に備えられたインクタンクへと送られ、ここに収納される。排インクタンクは、内部に収納されたインクが満杯状態になった場合には、新たな排インクタンクに交換できるよう、インクジェット記録装置の本体部に対して着脱可能に構成されている。こうした排インクタンクとして、特許文献1には排インクタンクの蓋部に、弾性体がはめ込まれたものが開示されている。この弾性体には、回復処理によって排出された排インクの案内筒の一端部が密着し、これによって案内筒と蓋部との間のインクの漏洩あるいは案内筒から排出されたインクの飛散を防止している。但し、特許文献1に開示の排インクタンクでは、排インク案内筒が弾性体に圧着される構成となっているため、排インクタンクの交換時には、排インク案内筒に対する弾性体の圧着を解除する機構が必要となり、構成が複雑化するという問題がある。
【0003】
そこで、図9に示すように、排インク受け部Rと排インクタンクTとを上下に離間させて配置したものも提案されている。すなわち、図9に示すものでは、排インク受け部Rに圧送されてきた排インクを、排インク受け部Rの排インク排出口RAから排インクタンクTの排インク導入口TAへと滴下させるように構成されている。これによれば、排インクタンクと排インク受け部との連結、解除を行う機構を省略でき、単純かつ安価に構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−025807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、排インク受け部Rと排インクタンクTとを分離させた構成にあっては、排インク受け部Rと排インクタンクTの間から外部へとインクが飛散することがあるという問題が生じる。すなわち、図10に示すように、排インク排出口RAには排インク受け部Rに流入する排インクによって膜Mが形成されることがある。この膜Mは、排インク受け部R内の気圧P1が大気圧より大きくなることによって、外部に向けて膨張し手行き、最終的には図11に示すようにインク排出口から大きくせり出して気泡状態となった後、破裂する。この場合、気泡を形成していた排インクは排インク受け部Rと排インクタンクTとの間から広範囲に飛散し、周囲を汚損するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、排インクを周囲に飛散させることなく、排インク受け部から排インクタンクへと排インクを滴下させることが可能な排インク処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を備える。
【0008】
すなわち、本発明は、インクジェット記録装置に対して交換可能に設けられた排インクタンクの排インク導入用の開口内に、インクジェット記録ヘッドから排出された排インクを滴下させる排インク処理装置であって、前記ノズルから排出された排インクを前記排インクタンクの上方へと導く排インク流路と、前記排インク流路から排出されたインクを受ける排インク受容空間を有すると共に前記排インク受容空間に流入した排インクを滴下させる排出口を備えた前記排インク受け部と、前記排インクタンクを取り外し可能に収納すると共に、前記排出口が前記開口部の上方に位置するように前記排インク受け部を保持する排インクタンク収納部と、を備え、前記排インク受け部は、前記排出口の外に前記排インク受容空間と大気とを連通させる大気連通孔を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、排インク管に連結されたインク受け部の内部空間が大気連通孔で大気と連通しているため、排インク排出口が排インク膜に覆われたとしても、液膜が外方へと膨張して破裂することはなく、静かに消失する。このため、排インクが周囲に飛散するとはなく、排インクによって排インク排出口の周囲の部分が排インクによって汚れるのを抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における排インク処理装置およびこれに取り付けられた排インクタンクなどを示す斜視図である。
【図2】図1に示す排インクタンクを示す斜視図である。
【図3】図1に示す排インク処理装置から排インクタンクを取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】本実施形態における排インク受け部を示す斜視図である。
【図5】図4に示す排インク受け部の内部構造を示す斜視図である。
【図6】図4に示す排インク受け部の縦断側面図である。
【図7】図4に示す排インク受け部の排インク排出口に排インク膜が形成された状態を示す縦断側面図である。
【図8】図7に示す排インク膜から排インクが滴下して膜厚が減少する状態を示す図である。
【図9】従来の排インク処理装置の排インク受け部を示す縦断側面図である。
【図10】図9に示す排インク受け部の排出口に排インク膜が形成された状態を示す縦断側面図である。
【図11】図11は図10に示す膜が破裂直前まで膨張した状態を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態における排インク処理装置および排インクタンクを示す図である。図1において、本実施形態における排インク処理装置100は、排インク受け部10と、この排インク受け部10に連結された排インク流路を形成する排インク導入管20と、排インク受け部10を保持する排インクタンク収納部30と、を備える。
【0012】
排インク受け部10は、底部11および周壁部12を有する容器状の受け部本体13と、周壁部12の上部に形成された開口部を閉塞する蓋17とを有している。また、受け部本体13の周壁部12には、排インク導入口15Aを有する連結部15が形成されており、この連結部15に可撓性を有する排インク導入管20が連結されている。受け部本体13の底部11の中央に形成された筒状の蓋固定部16にはその内面に螺合するねじによって蓋17が固定されており、この蓋17と受け部本体13とによりインク導出管20から送られてくる排インクを受け取る排インクチャンバーCHが形成されている。また、蓋17には排インクチャンバーCHの内部空間(排インク受容空間)を大気に連通させる大気連通孔17Aが形成されている。
【0013】
一方、受け部本体13の底部11には、排インクチャンバーCH内に導入されたインクを排出するための排出口11Aが形成されている。排出口11Aは、図4に示すように、水平方向(H方向)に対して傾斜する斜面に位置している。さらに、この排出口11Aを囲むように下方に突出する筒状部14が設けられている。この筒状部14は排インクタンク収納部30の上壁部31に形成された貫通孔32に挿通され、その下端に形成される開口部14Aは、排インクタンク収納部30内に収納された排インクタンク200の上板部220より上方に離間した位置に設けられている。
【0014】
排インクタンク200は、インクタンク収納部30に対して交換可能に収納され得るものであり、上端が開口した容器本体210と、容器本体210の開口部を覆う上面部220とを有し、図2に示すように箱状に形成されている。容器本体210には、外側に突出する把持可能な把持部211が形成されており、この把持部211を把持して、ユーザが排インクタンク200をインクジェット記録装置の外側へと容易に引き出すことができるようになっている。また、排インクタンク200の上面部220には排インク導入用の開口部221が形成されている。
【0015】
排インクタンク200が、排インクタンク収納部30内に収納された状態で開口部221は、排インク受け部10の筒状部14の開口部14Aより下方に所定の間隔を介して対向する。そして、筒状部14に囲まれた排出口11Aは、平面視において、排インクタンク200の上面に形成された開口部211の形成範囲内に位置しており、排出口11Aから滴下されたインクは、開口部210を通過して確実に廃インクタンク200内に収容される。なお、図3は、図1に示す排インク処理装置から排インクタンク200を取り外した状態を示している。図示のように、排インク収納部30の底部には、排インク吸収体31が設けられている。
【0016】
また、受け部本体13に連結されるインク導出管20の一端部は、インクジェット記録装置に設けられた回復装置に連結されており、排出装置から排出された排インクを排インク受け部10の排インクチャンバーCHへと送る。なお、回復装置は、インクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドと称す)に設けられているインク吐出用のノズル内のインクを排出させることによって、ノズル内のインクを常に吐出に適した状態に維持するものである。すなわち、回復装置は、ノズル内でのインクの乾燥やノズルの目詰まり等を解消するものである。
【0017】
上記のように構成された本実施形態の排インク処理装置100において、回復装置から排インク導入管20を経てインク導入口15Aへと給送された排インクは、排インク受け部10の排インクチャンバーCH内に流入する。排インクチャンバーCH内に流入した排インクは、排インクチャンバーCHの底部に形成された排出口11Aへと流下して行き、排出口11Aを塞ぐ排インク膜Mを形成することがある。この場合、排インク受け部10において排インク膜Mより内側に位置する空間、すなわち排インクチャンバーCH内の空間は、大気連通口を介して外部の空間と連通している。従って、排インク膜Mより内側の空間の圧力P1と外側の空間の圧力P2はいずれも大気圧Pとなり、膜Mに対する圧力差は生じない。このため、図9および図10に示した従来のように、膜Mが外側へと膨張することはない。
【0018】
本実施形態では、排出口11Aに膜Mが形成されると、重力によって膜表面から液体が流れ、下方へと落下する。特に本実施形態では、排出口11Aが水平面に対して傾斜した面に沿って形成されているため、膜Mも同様に傾斜面を形成することとなり、排インクは膜表面の傾斜に沿って膜Mの下端、つまり排出口11Aの下端へと流れ、ここから下方―へと滴下される。液が流れ続けると、膜Mの厚さが薄くなって表面張力が低下する。そして、最終的には膜は維持できなくなり、静かに消失する。このため、排インクが外方へと飛散することはない。このように本実施形態では、排インク受け部10へと送られて来たインクは全て排出口11Aから廃インクタンク200内へと滴下されるため、排インクタンク200の上板部220や排インクタンク収納部30が排インクで汚れるのを大幅に低減することができる。
【0019】
また、本実施形態では、排インク受け部10と排インクタンク200との間に何ら係合構造はなく、両者が互いに離間した状態を保つ構成となっている。このため、構造が単純化されると共に、排インクタンク200の交換に際して、排インク受け部10との係合を解除する必要もなく、ユーザが把持部211を把持して容易に排インクタンクの着脱、交換を行うことが可能になる。さらに排インクタンク200を取り外した後、排インク消泡部1に溜まった排インクが予期せず落下してくる虞がある。しかし、本実施形態では、排インクタンク収納部30の底部に配置された排インク吸収体31が排インクの落滴を吸収するため排インクが外部へ漏出するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0020】
10 排インク受け部
13 受け部本体
14A 排出口
17 蓋
20 排インク導入管(排インク流路)
31 排インク吸収体
100 排インク処理装置
200 排インクタンク
211 把持部
CH 排インクチャンバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に対して交換可能に設けられた排インクタンクの排インク導入口に対し、インクジェット記録ヘッドから排出された排インクを排出・落下させる排インク処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)では、記録ヘッドに設けられているノズルの吐出性能の回復・維持のため、経時変化などにより吐出に適さなくなったインクをノズル内から排出させてリフレッシュさせる回復処理が行なわれる。この回復処理によって排出された排インクは、通常、インクジェット記録装置に備えられたインクタンクへと送られ、ここに収納される。排インクタンクは、内部に収納されたインクが満杯状態になった場合には、新たな排インクタンクに交換できるよう、インクジェット記録装置の本体部に対して着脱可能に構成されている。こうした排インクタンクとして、特許文献1には排インクタンクの蓋部に、弾性体がはめ込まれたものが開示されている。この弾性体には、回復処理によって排出された排インクの案内筒の一端部が密着し、これによって案内筒と蓋部との間のインクの漏洩あるいは案内筒から排出されたインクの飛散を防止している。但し、特許文献1に開示の排インクタンクでは、排インク案内筒が弾性体に圧着される構成となっているため、排インクタンクの交換時には、排インク案内筒に対する弾性体の圧着を解除する機構が必要となり、構成が複雑化するという問題がある。
【0003】
そこで、図9に示すように、排インク受け部Rと排インクタンクTとを上下に離間させて配置したものも提案されている。すなわち、図9に示すものでは、排インク受け部Rに圧送されてきた排インクを、排インク受け部Rの排インク排出口RAから排インクタンクTの排インク導入口TAへと滴下させるように構成されている。これによれば、排インクタンクと排インク受け部との連結、解除を行う機構を省略でき、単純かつ安価に構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−025807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、排インク受け部Rと排インクタンクTとを分離させた構成にあっては、排インク受け部Rと排インクタンクTの間から外部へとインクが飛散することがあるという問題が生じる。すなわち、図10に示すように、排インク排出口RAには排インク受け部Rに流入する排インクによって膜Mが形成されることがある。この膜Mは、排インク受け部R内の気圧P1が大気圧より大きくなることによって、外部に向けて膨張し手行き、最終的には図11に示すようにインク排出口から大きくせり出して気泡状態となった後、破裂する。この場合、気泡を形成していた排インクは排インク受け部Rと排インクタンクTとの間から広範囲に飛散し、周囲を汚損するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、排インクを周囲に飛散させることなく、排インク受け部から排インクタンクへと排インクを滴下させることが可能な排インク処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を備える。
【0008】
すなわち、本発明は、インクジェット記録装置に対して交換可能に設けられた排インクタンクの排インク導入用の開口内に、インクジェット記録ヘッドから排出された排インクを滴下させる排インク処理装置であって、前記ノズルから排出された排インクを前記排インクタンクの上方へと導く排インク流路と、前記排インク流路から排出されたインクを受ける排インク受容空間を有すると共に前記排インク受容空間に流入した排インクを滴下させる排出口を備えた前記排インク受け部と、前記排インクタンクを取り外し可能に収納すると共に、前記排出口が前記開口部の上方に位置するように前記排インク受け部を保持する排インクタンク収納部と、を備え、前記排インク受け部は、前記排出口の外に前記排インク受容空間と大気とを連通させる大気連通孔を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、排インク管に連結されたインク受け部の内部空間が大気連通孔で大気と連通しているため、排インク排出口が排インク膜に覆われたとしても、液膜が外方へと膨張して破裂することはなく、静かに消失する。このため、排インクが周囲に飛散するとはなく、排インクによって排インク排出口の周囲の部分が排インクによって汚れるのを抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における排インク処理装置およびこれに取り付けられた排インクタンクなどを示す斜視図である。
【図2】図1に示す排インクタンクを示す斜視図である。
【図3】図1に示す排インク処理装置から排インクタンクを取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】本実施形態における排インク受け部を示す斜視図である。
【図5】図4に示す排インク受け部の内部構造を示す斜視図である。
【図6】図4に示す排インク受け部の縦断側面図である。
【図7】図4に示す排インク受け部の排インク排出口に排インク膜が形成された状態を示す縦断側面図である。
【図8】図7に示す排インク膜から排インクが滴下して膜厚が減少する状態を示す図である。
【図9】従来の排インク処理装置の排インク受け部を示す縦断側面図である。
【図10】図9に示す排インク受け部の排出口に排インク膜が形成された状態を示す縦断側面図である。
【図11】図11は図10に示す膜が破裂直前まで膨張した状態を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態における排インク処理装置および排インクタンクを示す図である。図1において、本実施形態における排インク処理装置100は、排インク受け部10と、この排インク受け部10に連結された排インク流路を形成する排インク導入管20と、排インク受け部10を保持する排インクタンク収納部30と、を備える。
【0012】
排インク受け部10は、底部11および周壁部12を有する容器状の受け部本体13と、周壁部12の上部に形成された開口部を閉塞する蓋17とを有している。また、受け部本体13の周壁部12には、排インク導入口15Aを有する連結部15が形成されており、この連結部15に可撓性を有する排インク導入管20が連結されている。受け部本体13の底部11の中央に形成された筒状の蓋固定部16にはその内面に螺合するねじによって蓋17が固定されており、この蓋17と受け部本体13とによりインク導出管20から送られてくる排インクを受け取る排インクチャンバーCHが形成されている。また、蓋17には排インクチャンバーCHの内部空間(排インク受容空間)を大気に連通させる大気連通孔17Aが形成されている。
【0013】
一方、受け部本体13の底部11には、排インクチャンバーCH内に導入されたインクを排出するための排出口11Aが形成されている。排出口11Aは、図4に示すように、水平方向(H方向)に対して傾斜する斜面に位置している。さらに、この排出口11Aを囲むように下方に突出する筒状部14が設けられている。この筒状部14は排インクタンク収納部30の上壁部31に形成された貫通孔32に挿通され、その下端に形成される開口部14Aは、排インクタンク収納部30内に収納された排インクタンク200の上板部220より上方に離間した位置に設けられている。
【0014】
排インクタンク200は、インクタンク収納部30に対して交換可能に収納され得るものであり、上端が開口した容器本体210と、容器本体210の開口部を覆う上面部220とを有し、図2に示すように箱状に形成されている。容器本体210には、外側に突出する把持可能な把持部211が形成されており、この把持部211を把持して、ユーザが排インクタンク200をインクジェット記録装置の外側へと容易に引き出すことができるようになっている。また、排インクタンク200の上面部220には排インク導入用の開口部221が形成されている。
【0015】
排インクタンク200が、排インクタンク収納部30内に収納された状態で開口部221は、排インク受け部10の筒状部14の開口部14Aより下方に所定の間隔を介して対向する。そして、筒状部14に囲まれた排出口11Aは、平面視において、排インクタンク200の上面に形成された開口部211の形成範囲内に位置しており、排出口11Aから滴下されたインクは、開口部210を通過して確実に廃インクタンク200内に収容される。なお、図3は、図1に示す排インク処理装置から排インクタンク200を取り外した状態を示している。図示のように、排インク収納部30の底部には、排インク吸収体31が設けられている。
【0016】
また、受け部本体13に連結されるインク導出管20の一端部は、インクジェット記録装置に設けられた回復装置に連結されており、排出装置から排出された排インクを排インク受け部10の排インクチャンバーCHへと送る。なお、回復装置は、インクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドと称す)に設けられているインク吐出用のノズル内のインクを排出させることによって、ノズル内のインクを常に吐出に適した状態に維持するものである。すなわち、回復装置は、ノズル内でのインクの乾燥やノズルの目詰まり等を解消するものである。
【0017】
上記のように構成された本実施形態の排インク処理装置100において、回復装置から排インク導入管20を経てインク導入口15Aへと給送された排インクは、排インク受け部10の排インクチャンバーCH内に流入する。排インクチャンバーCH内に流入した排インクは、排インクチャンバーCHの底部に形成された排出口11Aへと流下して行き、排出口11Aを塞ぐ排インク膜Mを形成することがある。この場合、排インク受け部10において排インク膜Mより内側に位置する空間、すなわち排インクチャンバーCH内の空間は、大気連通口を介して外部の空間と連通している。従って、排インク膜Mより内側の空間の圧力P1と外側の空間の圧力P2はいずれも大気圧Pとなり、膜Mに対する圧力差は生じない。このため、図9および図10に示した従来のように、膜Mが外側へと膨張することはない。
【0018】
本実施形態では、排出口11Aに膜Mが形成されると、重力によって膜表面から液体が流れ、下方へと落下する。特に本実施形態では、排出口11Aが水平面に対して傾斜した面に沿って形成されているため、膜Mも同様に傾斜面を形成することとなり、排インクは膜表面の傾斜に沿って膜Mの下端、つまり排出口11Aの下端へと流れ、ここから下方―へと滴下される。液が流れ続けると、膜Mの厚さが薄くなって表面張力が低下する。そして、最終的には膜は維持できなくなり、静かに消失する。このため、排インクが外方へと飛散することはない。このように本実施形態では、排インク受け部10へと送られて来たインクは全て排出口11Aから廃インクタンク200内へと滴下されるため、排インクタンク200の上板部220や排インクタンク収納部30が排インクで汚れるのを大幅に低減することができる。
【0019】
また、本実施形態では、排インク受け部10と排インクタンク200との間に何ら係合構造はなく、両者が互いに離間した状態を保つ構成となっている。このため、構造が単純化されると共に、排インクタンク200の交換に際して、排インク受け部10との係合を解除する必要もなく、ユーザが把持部211を把持して容易に排インクタンクの着脱、交換を行うことが可能になる。さらに排インクタンク200を取り外した後、排インク消泡部1に溜まった排インクが予期せず落下してくる虞がある。しかし、本実施形態では、排インクタンク収納部30の底部に配置された排インク吸収体31が排インクの落滴を吸収するため排インクが外部へ漏出するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0020】
10 排インク受け部
13 受け部本体
14A 排出口
17 蓋
20 排インク導入管(排インク流路)
31 排インク吸収体
100 排インク処理装置
200 排インクタンク
211 把持部
CH 排インクチャンバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録装置に対して交換可能に設けられた排インクタンクの排インク導入用の開口部に、インクジェット記録ヘッドから排出された排インクを滴下させる排インク処理装置であって、
前記ノズルから排出された排インクを前記排インクタンクの上方へと導く排インク流路と、
前記排インク流路から排出されたインクを受ける排インク受容空間を有すると共に前記排インク受容空間に流入した排インクを滴下させる排出口を備えた前記排インク受け部と、
前記排インクタンクを取り外し可能に収納すると共に、前記排出口が前記開口部の上方に位置するように前記排インク受け部を保持する排インクタンク収納部と、を備え、
前記排インク受け部は、前記排出口の外に前記排インク受容空間と大気とを連通させる大気連通孔を備えたことを特徴とする排インク処理装置。
【請求項2】
前記排インクタンク収納部の底部には、前記排インクタンクが前記排インク収納部から取り外されたときに、前記排出口から滴下された排インクを受ける排インク吸収体が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の排インク処理装置。
【請求項3】
前記排インク受け部は、容器状の受け部本体と、該受け部本体の上部に形成される開口部を閉塞する蓋とを有することを特徴とする請求項1に記載の排インク処理装置。
【請求項4】
前記排インクタンクは、排インク収納部への着脱に際して把持可能な把持部を備えることを特徴とする請求項1に記載の排インク処理装置。
【請求項1】
インクジェット記録装置に対して交換可能に設けられた排インクタンクの排インク導入用の開口部に、インクジェット記録ヘッドから排出された排インクを滴下させる排インク処理装置であって、
前記ノズルから排出された排インクを前記排インクタンクの上方へと導く排インク流路と、
前記排インク流路から排出されたインクを受ける排インク受容空間を有すると共に前記排インク受容空間に流入した排インクを滴下させる排出口を備えた前記排インク受け部と、
前記排インクタンクを取り外し可能に収納すると共に、前記排出口が前記開口部の上方に位置するように前記排インク受け部を保持する排インクタンク収納部と、を備え、
前記排インク受け部は、前記排出口の外に前記排インク受容空間と大気とを連通させる大気連通孔を備えたことを特徴とする排インク処理装置。
【請求項2】
前記排インクタンク収納部の底部には、前記排インクタンクが前記排インク収納部から取り外されたときに、前記排出口から滴下された排インクを受ける排インク吸収体が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の排インク処理装置。
【請求項3】
前記排インク受け部は、容器状の受け部本体と、該受け部本体の上部に形成される開口部を閉塞する蓋とを有することを特徴とする請求項1に記載の排インク処理装置。
【請求項4】
前記排インクタンクは、排インク収納部への着脱に際して把持可能な把持部を備えることを特徴とする請求項1に記載の排インク処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−107319(P2013−107319A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254891(P2011−254891)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
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