説明

排ガスの処理用触媒、その製造方法、及び排ガスの処理方法

【課題】 理論空燃比よりも燃料過多状態で副生するアンモニアのスリップを抑制し、窒素酸化物の低減を促進するようにした排ガスの処理用触媒、その製造方法、及び排ガスの処理方法を提供する。
【解決手段】 一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を含有する排ガスの処理用触媒であって、該触媒は無機化合物からなる担体成分に貴金属が担持されており、かつ固体酸量が0.1mmol/g以上の固体酸成分を、理論空燃比よりも燃料過多状態で副生するアンモニアのスリップを抑制し、窒素酸化物の低減を促進する成分として含むこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスの処理用触媒、その製造方法、及び排ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源・環境保護の観点から自動車用ガソリンエンジンをリーンバーン状態で駆動させるシステムの社会的要求がある。リーンバーン状態とは燃料消費率を下げるため、希薄燃料状態、つまり、燃料量に対して空気(酸素)量が過剰な状態である。このような酸素過剰雰囲気では、燃料の消費率は下がるものの、NOxを浄化する触媒を使用しても、その性能が経時的に劣化する。
そこで、酸素含有量の高い排ガスを流通させるリーン状態の処理工程と、酸素含有量の低い排ガスを流通させる燃料リッチ状態の処理工程とを交互に繰り返す排ガスの処理方法がある。
【0003】
しかし、このような処理方法では、理論空燃比よりも燃料過多状態ではアンモニアが副生する。これによって、排ガス中に硫黄酸化物が存在すると、硫安及び/又は酸性硫安が生成し、触媒性能を低下させるおそれがある。また、このアンモニアがスリップすると、後流機器内で硫安及び/又は酸性硫安が生成し、圧損上昇等の不具合を招くおそれがあった。
【特許文献1】特開平8-99034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、理論空燃比よりも燃料過多(リッチ)状態で副生するアンモニアのスリップを抑制し、窒素酸化物の低減を促進するようにした排ガスの処理用触媒、その製造方法、及び排ガスの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を含有する排ガスの処理用触媒であって、該触媒は無機化合物からなる担体成分に貴金属が担持されており、かつ固体酸量が0.1mmol/g以上の固体酸成分を、理論空燃比よりも燃料過多状態で副生するアンモニアのスリップを抑制し、窒素酸化物の低減を促進する成分として含むことを特徴とする。
【0006】
上記固体酸成分は、バナジウム、タングステン、硫黄及びこれらの化合物から成る群から選ばれる少なくとも一種を、TiO2、Al23、ZrO2、SiO2−Al23、TiO2−SiO2、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2、TiO2−CeO2、La23−ZrO2−Al23から成る群から選ばれる少なくとも一種に担持したものであることが好ましい。
上記貴金属は、Pt、Rh、Ir、Ru、Pd及びそれらの酸化物から成る群より選ばれる少なくとも一種であることが好適である。
【0007】
本発明は、別の側面で、一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を含有する排ガスの処理用触媒の製造方法であり、該製造方法は、固体酸成分を調製する工程と、上記固体酸成分を整粒する工程と、整粒後の固体酸成分に、貴金属、並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を担持させて、触媒担持成分を調製する工程と、触媒担持成分を無機バインダー及び水と混合した後、粉砕してスラリーを調製する工程と、該スラリーを基材にウォッシュコートする工程とを含むことを特徴とする。
上記固体酸成分を整粒する工程では、上記固体酸成分にさらに別の担体成分を加えた後、整粒するようにすることができる。
【0008】
本発明に係る製造方法は、別の形態で、固体酸成分を調製する工程と、上記固体酸成分を整粒する工程と、固体酸成分を無機バインダー及び水と混合した後、粉砕してスラリーを調製する工程と、該スラリーを基材にウォッシュコートする工程と、コートした基材に、貴金属、並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を担持させる工程を含むことを特徴とする。
上記固体酸成分を整粒する工程では、上記固体酸成分にさらに別の担体成分を加えた後、整粒するようにすることができる。
【0009】
本発明に係る製造方法は、さらに別の形態で、固体酸成分を調製する工程と、上記固体酸成分を整粒する工程と、整粒後の固体酸成分に、貴金属、並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を担持させ、触媒担持成分を調製する工程と、触媒担持成分を成型助剤と混合後、押し出し成型する工程とを含むことを特徴とする。
上記固体酸成分を整粒する工程では、上記固体酸成分にさらに別の担体成分を加えた後、整粒するようにすることができる。
本発明には、上記いずれかの製造方法で製造した排ガスの処理用触媒が含まれる。
【0010】
本発明は、さらに別の側面で、一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を含有する排ガスの処理方法であって、上記排ガスの処理用触媒に100〜750℃の排ガスを流通させ、酸素含有量の高い排ガスを流通させるリーン状態の処理工程と、酸素含有量の低い排ガスを流通させるリッチ状態の処理工程とを交互に繰り返すことを特徴とする、
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、理論空燃比よりも燃料過多状態で副生するアンモニアのスリップを抑制し、窒素酸化物の低減を促進するようにした排ガスの処理用触媒、その製造方法、及び排ガスの処理方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係る排ガスの処理用触媒、その製造方法、及び排ガスの処理方法について、その実施の形態を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0013】
まず、本発明に係る排ガスの処理用触媒は、一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を含有する排ガスの処理用触媒であり、固体酸量が0.1mmol/g以上の固体酸成分を含む。
本発明に係る排ガスの処理用触媒では、固体酸量を確保することにより、リッチ状態で、副生したアンモニアをトラップすることができる。トラップしたアンモニアは、リーン状態で主としてNOxと反応できる。これによって、窒素酸化物の低減自体も促進される。
【0014】
上記固体酸成分は、バナジウム、タングステン、硫黄及びこれらの化合物から成る群から選ばれる少なくとも一種を、TiO2、Al23、ZrO2、SiO2− Al23、TiO2−SiO2、TiO2− Al23、TiO2−ZrO2、TiO2−CeO2、La23− ZrO2− Al23から成る群から選ばれる少なくとも一種に担持したものであることが好適である。
【0015】
「固体酸成分」とは、固体酸点を含む成分のことである。固体酸成分は、一般的に無機化合物から成り、脱硝性能等の触媒活性を持つ活性金属を担持するための担体成分(担体)としての役割を果たす成分でもある。
【0016】
バナジウム、タングステン、硫黄は、固体酸成分中に一般的には酸化物の形態で担持されている。これらを、TiO2、Al23、ZrO2、SiO2−Al23、TiO2−SiO2、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2、TiO2−CeO2、La23−ZrO2−Al23から成る群から選ばれる少なくとも一種に担持した固体酸成分は、シンタリングも起こしにくい。
【0017】
また、本発明に係る排ガスの処理用触媒には、上記固体酸成分(第1の担体成分)以外に、第2の担体成分として、例えば酸化セリウム(CeO2,Ce23)や酸化ジルコニウム(ZrO2)などの無機酸化物を含むことができる。第2の担体成分の量比は限定されるものではないが、固体酸成分と併せた全体に通常10〜99重量%、好ましくは50〜95重量%である。このような第2の担体成分は、貴金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を高分散に存在させるという機能を果たす。
【0018】
上記担体成分に担持される活性成分である貴金属としては、Pt、Rh、Ir、Ru、Pd及びそれらの酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好適に用いられる。これらを2種以上任意に組み合わせて用いることも可能である。例えば、PtとRh、PtとRu、PtとPdなどの組み合わせが用いられる。
本発明の触媒における貴金属の担持量は、担体成分を含む触媒全体に対して、金属元素換算で通常0.1〜3重量%、好ましくは0.3〜2重量%程度であるが、これらに限定されるものではなく、上記した貴金属の組み合わせからなる場合等には、その範囲を超える量であっても差し支えない。
【0019】
上記担体成分に担持される成分としては、貴金属以外に、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を用いることができる。アルカリ金属としては、Na,K,Rb等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、Mg,Ca,Ba等が挙げられる。
このようなアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属は、リーン状態で、窒素酸化物との親和力によって、その吸着に寄与する。ここで、触媒の繰り返し使用によって、シンタリングを起こすこともある。しかし、本発明に係る触媒では、固体酸の働きによって、シンタリング及び他の物質との複合化が抑制され、劣化が防止される。
本発明の触媒におけるアルカリ金属等の添加量は、担体成分を含む触媒全体に対して、金属元素換算で通常1〜20重量%程度であるが、これらに限定されるものではなく、上記貴金属との組み合わせ等に応じて、その範囲外の量であっても差し支えない。
本発明の排ガス処理触媒の形状は何ら限定されるものではないが、例えばハニカム形状の触媒に成形することが好適である。
【0020】
本発明に係る排ガスの処理用触媒は、含浸法,混練法,共沈法,ゾルゲル法,イオン交換法,蒸着法等の物理的調製方法や化学反応を利用した調製方法などいずれも適用可能であり、限定されるものではないが、以下、排ガスの処理用触媒の製造方法として、最適な製造方法について幾つかの形態を説明する。
【0021】
排ガスの処理用触媒の製造方法(その1)
この形態では、上記した排ガス処理触媒の製造方法であって、順に、固体酸成分を調製する工程と、上記固体酸成分を整粒する工程と、整粒後の固体酸成分に、貴金属、並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有する原料液に浸漬させ焼成して、触媒担持成分を調製する工程と、触媒担持成分を無機バインダー及び水と混合した後、粉砕してスラリーを調製する工程と、該スラリーを基材にウォッシュコートする工程とを実施する。
【0022】
固体酸成分を調製する工程では、TiO2、Al23、ZrO2、SiO2−Al23、TiO2−SiO2、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2、TiO2−CeO2、La23−ZrO2−Al23から成る群から選ばれる少なくとも一種を、バナジウム、タングステン、硫黄及びこれらの化合物から成る群から選ばれる少なくとも一種のものの原料液に浸漬させた後、焼成する。
バナジウム、タングステン、硫黄及びこれらの化合物から成る群から選ばれる少なくとも一種のものの原料液としては、硫酸塩あるいは硫酸、塩化物、アンモニウム塩、ヘテロポリ酸等の水溶液を挙げることができる。
【0023】
上記無機バインダーとしては、ジルコニアゾル、シリカゾル、アルミナゾルを挙げることができる。
触媒担持成分とは、活性成分である貴金属を担持しているためこのように称呼している。
【0024】
上記固体酸成分を整粒する工程で、上記固体酸成分にさらに別の担体成分、すなわち、第2の担体成分として、例えば酸化セリウム(CeO2,Ce23)や酸化ジルコニウム(ZrO2)などの無機酸化物を加えた後、整粒するようにすることもできる。
なお、本実施の形態では、基材として、コージェライト及びムライト等のハニカム状、セラミックスのコルゲート状を採用することができる。これは、他の実施の形態でも同様である。
【0025】
排ガスの処理用触媒の製造方法(その2)
この形態では、上記した排ガス処理触媒の製造方法であって、順に、固体酸成分を調製する工程と、上記固体酸成分を整粒する工程と、固体酸成分を無機バインダー及び水と混合した後、粉砕してスラリーを調製する工程と、該スラリーを基材にウォッシュコートする工程と、コートした基材を貴金属、並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有する原料液に浸漬し、焼成する工程とを実施する。
【0026】
貴金属及びアルカリ金属等の活性成分については、幾つかの担持方法がある。
例えば、上記その1の製造方法で、整粒する工程の後に、該整粒後の担体成分を、貴金属とアルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含有する原料液に浸漬させ焼成して、担持触媒成分を調製する工程を加えて、該担持触媒成分を無機バインダーおよび水と混合した後、粉砕してスラリーを調製する態様が可能である。また、貴金属を含有する原料液と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含有する原料液とを別々に準備し、各々に整粒後の担体成分を浸漬させることもできる。この場合、いずれの原料液をも最初に浸漬する原料液として選択できる。
また、上記その2の製造方法で、前記ウォッシュコート工程の後に、該コートした基材を貴金属とアルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含有する原料液に浸漬し、焼成する工程を加える態様とすることができる。
この場合も、貴金属を含有する原料液と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含有する原料液とを別々に準備し、各々に基材を浸漬させることもできる。この場合、いずれの原料液をも最初に浸漬する原料液として選択できる。
【0027】
排ガスの処理用触媒の製造方法(その3)
この形態は、固体酸成分を調製する工程と、 上記固体酸成分を整粒する工程と、触媒担持成分を調製する工程と、触媒担持成分を成型助剤と混合後、押し出し成型する工程とをこの順で実施する製造方法である。
【0028】
成型助剤としては、ジルコニアゾル、シリカゾル、アルミナゾルを挙げることができる。
【0029】
排ガス処理方法
上記した本発明の排ガスの処理用触媒及びその製造方法による触媒はいずれも、一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を含有する排ガスの処理方法において、100〜600℃の該排ガスを流通させ、酸素含有量の高い排ガスを流通させるリーン状態の処理工程と、酸素含有量の低い排ガスを流通させる燃料過多(リッチ)状態の処理工程と、を交互に繰り返すことによる処理方法に好適に用いられる。
【0030】
ここで、酸素含有量の高い排ガスとは、理論空燃比の場合よりも多量の酸素を含んだ酸素過剰の混合気を燃焼させた場合に生じる排ガスであり、酸素含有量の低い排ガスとは、理論空燃比の場合よりも少量の酸素を含んだ燃料過剰の混合気を燃焼させた場合に生じる排ガスを意味する。また、理論空燃比とは、混合気中の燃料を完全酸化させるのに必要な酸素量を過不足なく含んだ酸素過剰の混合気の空燃比である。
先ず、酸素含有量の高いリーン状態の処理工程では、窒素酸化物の浄化反応として、下記の式(1)の反応が起こり、排ガス中のNOが排ガス処理触媒に蓄積される。
4NO+3O3+2BaCO3→2Ba(NO32+2CO2 (1)
【0031】
次いで、酸素含有量の低いリッチ状態の処理工程では、窒素酸化物の浄化反応として、下記の式(2)の反応が起こり、排ガス処理触媒に蓄積した窒素酸化物がN2として排出されて、排ガス中から窒素酸化物が浄化される。
Ba(NO32+CO→BaCO3+N2+2O2 (2)
【0032】
なお、既に述べたように、リッチ状態で蓄積したアンモニアは、リーン状態で下記の式(3)及び(4)にて分解される。
4NH3 + 4NO + O2 → 4N2 + 6H2O (3)
4NH3 + 3O2 → 2N2 + 6H2O (4)
【0033】
本処理方法では、リーン状態の処理工程とリッチ状態の処理工程とを交互に繰り返すが、この間の切り替える時間は特に限定されるものではなく、内燃機関等の運転状況や運転環境(温度や湿度等)によって任意に定められる。具体的には、例えばリーン状態の処理工程を1分間の内50〜58秒間行った後、リッチ状態の処理工程を2〜10秒間行い、再び、リーン状態の処理工程に移行する態様が挙げられる。
また、リーン状態の処理工程およびリッチ状態の処理工程における好ましい温度域は、通常100〜750℃、好ましくは150〜500℃程度である。従って、触媒と排ガス流とを接触させる温度いわゆる反応ガス温度は、前記温度範囲に設定することが望ましい。
本排ガス処理方法は、上記のようなリーン状態の処理工程およびリッチ状態の処理工程を含んでおり、それぞれの工程を連続して複数回繰り返して行う。
【0034】
本発明の排ガス処理方法には、上記排ガス処理触媒を用いるものであれば、それに加えて他の触媒を任意に組み合わせて処理する方法も含まれる。
本発明の触媒は、NOx及び炭化水素の浄化能力が高いが、例えば、さらに高い炭化水素浄化能力を得るために、炭化水素燃焼触媒と組み合せることもできる。組合せ方法としては、排ガス流路において本発明に係る排ガス浄化触媒の後段に炭化水素燃焼触媒を配置することができる。
【0035】
本発明で処理できる排ガスは特に限定されず、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)を含有する排気ガスの処理に適用できるが、例えば内燃機関から排出されるガス、工場等のボイラ排ガス、加熱炉排ガス等の処理に好適に用いられる。
特に、本発明の触媒を希薄燃焼方式の内燃機関エンジンの排気系統に搭載することにより、窒素酸化物が車外へ排出されるのを著しく抑制することができる。本発明の触媒は、ディーゼル自動車のディーゼルエンジンから排出される排ガスの処理にも効果を発揮する。ディーゼルエンジンは、酸素過剰の高空燃比で運転されており、本発明の触媒は酸素含有下においても優れた活性を示すので、ディーゼルエンジンから排出される排ガスであっても窒素酸化物を効率良く浄化することができる。
【0036】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものでない。
【実施例】
【0037】
〔触媒1〜13の調製〕
TiO2、Al23、ZrO2、SiO2− Al23、TiO2−SiO2、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2、TiO2−CeO2、La23−ZrO2− Al23を、WO3、V25、SO4の原料液(表1中の成分Aに対応して、それぞれ、アンモニウム塩水溶液、アンモニウム塩水溶液、硫酸)に浸漬させて混合した後、これを焼成して、固体酸酸化物を得た。固体酸酸化物が10重量部、CeO2が75重量部となるような割合で混合した後、これら無機化合物を平均粒径5μm以下に整粒した。該整粒後の担体成分を、貴金属Pt,Rhとアルカリ土類金属であるBaを含有する原料液(Pt、Rhは硝酸塩水溶液、Baは酢酸塩水溶液)に浸漬した。
原料液に浸漬させ焼成して、触媒担持成分を調製した。その後、触媒担持成分をジルコニアゾル1重量%及び適量の水と混合した後、粉砕して該無機化合物を含むスラリーを調製した。このスラリーを基材にウォッシュコートした後焼成して、触媒1〜13が得られた。
【0038】
〔触媒14〜16の調製〕
触媒1〜13と同様の要領にて得られた触媒担持成分を成型助剤と混合後、加熱ニーダを用いて水を蒸発させながら混練し、触媒ペーストを得た。これを押出成型機にて、外形50mm角、長さ100mmのハニカム状に成型した。次に、80℃で乾燥した後、500℃で5時間空気雰囲気中にて焼成して触媒14〜16を得た。
【0039】
〔比較触媒1の調製〕
固体酸量が0.06mmol/gであるAl23が10重量部、CeO2が75重量部の割合となるように混合した後、これら無機化合物を平均粒径5μm以下に整粒した。該整粒後の担体成分を、貴金属Pt,Rhとアルカリ土類金属であるBaを含有する原料液(Pt、Rhは硝酸塩水溶液、Baは酢酸塩水溶液)に浸漬させ焼成して、触媒成分を調製した。その後、触媒成分をジルコニアゾル1重量%および適量の水と混合した後、粉砕して該無機化合物を含むスラリーを調製した。このスラリーを基材にウォッシュコートした後焼成して、比較触媒が得られた。
【0040】
〔排ガス処理試験〕
脱硝活性の評価条件は、以下の通りとした。
リーン状態:
NOx: 500ppm、O2:10%、CO2:6%、H2O:6%、N2:バランス、
リッチ状態:
NOx: 500ppm、CO:4%、O2:0%、CO2:6%、H2O:6%、N2:バランス、
ガス量: 300NL/h、GHSV: 40,000h-1
触媒層温度:約300℃
なお、NOxに対する反応率(%)は、上記ガス条件をリーン57秒、リッチ3秒の切り替えを行ったときの平均とした。反応率は下記式(5)にて表される。
NOxに対する反応率(%)=[(入口NOx濃度−1分間の平均出口NOx濃度)/入口NOx濃度]×100・・・・・(5)
【0041】
また、触媒をエージングする際の条件は、以下の通りとした。
エージング温度:700℃、 エージング時間:50時間
【0042】
【表1】

【表2】

【表3】

【0043】
比較触媒1のように固体酸量が0.06mmol/gのアルミナを含む固体酸酸化物を混合した場合、初期性能が若干低く、かつ、スリップアンモニアが多いことが了解される。また、エージング後の触媒の反応率が著しく低下し、初期性能の3分の2になった。これに対して、本発明の触媒1〜16はいずれも、初期性能として一定以上(初期脱硝率60%以上)のレベルを維持しつつ、エージング後の触媒の反応率がほとんど低下しなかった。このことから、固体酸量が0.1mmol/g以上の固体酸酸化物を混合する本発明の触媒は、長時間使用に耐えられることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を含有する排ガスの処理用触媒であって、該触媒は無機化合物からなる担体成分に貴金属が担持されており、かつ固体酸量が0.1mmol/g以上の固体酸成分を、理論空燃比よりも燃料過多状態で副生するアンモニアのスリップを抑制し、窒素酸化物の低減を促進する成分として含むことを特徴とする排ガスの処理用触媒。
【請求項2】
上記固体酸成分が、バナジウム、タングステン、硫黄及びこれらの化合物から成る群から選ばれる少なくとも一種を、TiO2、Al23、ZrO2、SiO2−Al23、TiO2−SiO2、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2、TiO2−CeO2、La23−ZrO2−Al23から成る群から選ばれる少なくとも一種に担持したものであることを特徴とする請求項1の排ガスの処理用触媒。
【請求項3】
上記貴金属が、Pt、Rh、Ir、Ru、Pd及びそれらの酸化物から成る群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の排ガスの処理用触媒。
【請求項4】
一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を含有する排ガスの処理用触媒の製造方法であって、
TiO2、Al23、ZrO2、SiO2−Al23、TiO2−SiO2、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2、TiO2−CeO2、La23−ZrO2−Al23から成る群から選ばれる少なくとも一種を、バナジウム、タングステン、硫黄及びこれらの化合物から成る群から選ばれる少なくとも一種のものの原料液に浸漬させた後、焼成し、固体酸成分を調製する工程と、
上記固体酸成分を整粒する工程と、
整粒後の固体酸成分に、貴金属、並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を担持させて、触媒担持成分を調製する工程と、
触媒担持成分を無機バインダー及び水と混合した後、粉砕してスラリーを調製する工程と、該スラリーを基材にウォッシュコートする工程と
を含むことを特徴とする排ガスの処理用触媒の製造方法。
【請求項5】
上記固体酸成分を整粒する工程で、上記固体酸成分にさらに別の担体成分を加えた後、整粒するようにしたことを特徴とする請求項4の排ガスの処理用触媒の製造方法。
【請求項6】
一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を含有する排ガスの処理用触媒の製造方法であって、
TiO2、Al23、ZrO2、SiO2−Al23、TiO2−SiO2、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2、TiO2−CeO2、La23−ZrO2−Al23から成る群から選ばれる少なくとも一種を、バナジウム、タングステン、硫黄及びこれらの化合物から成る群から選ばれる少なくとも一種のものの原料液に浸漬させた後、焼成し、固体酸成分を調製する工程と、
上記固体酸成分を整粒する工程と、
固体酸成分を無機バインダー及び水と混合した後、粉砕してスラリーを調製する工程と、該スラリーを基材にウォッシュコートする工程と
コートした基材に貴金属、並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を担持する工程を含むことを特徴とする排ガスの処理用触媒の製造方法。
【請求項7】
上記固体酸成分を整粒する工程で、上記固体酸成分にさらに別の担体成分を加えた後、整粒するようにしたことを特徴とする請求項6の排ガスの処理用触媒の製造方法。
【請求項8】
一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を含有する排ガスの処理用触媒の製造方法であって、
TiO2、Al23、ZrO2、SiO2−Al23、TiO2−SiO2、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2、TiO2−CeO2、La23−ZrO2−Al23から成る群から選ばれる少なくとも一種を、バナジウム、タングステン、硫黄及びこれらの化合物から成る群から選ばれる少なくとも一種のものの原料液に浸漬させた後、焼成し、固体酸成分を調製する工程と、
上記固体酸成分を整粒する工程と、
整粒後の固体酸成分に、貴金属、並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を担持させて、触媒担持成分を調製する工程と、
触媒担持成分を成型助剤と混合後、押し出し成型する工程と
を含むことを特徴とする排ガスの処理用触媒の製造方法。
【請求項9】
上記固体酸成分を整粒する工程で、上記固体酸成分にさらに別の担体成分を加えた後、整粒するようにしたことを特徴とする請求項8の排ガスの処理用触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項4から9のいずれかの製造方法によって製造された排ガスの処理用触媒。
【請求項11】
一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を含有する排ガスの処理方法であって、請求項1〜3及び10のいずれかに記載の排ガスの処理用触媒に100〜750℃の排ガスを流通させ、酸素含有量の高い排ガスを流通させるリーン状態の処理工程と、酸素含有量の低い排ガスを流通させるリッチ状態の処理工程とを交互に繰り返すことを特徴とする排ガスの処理方法。

【公開番号】特開2006−231281(P2006−231281A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53161(P2005−53161)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】