説明

排ガスを用いた発電方法および発電装置、ならびに排ガスの酸化処理方法および酸化処理装置

【課題】転炉やコークス炉で発生する高温の排ガス中のHまたはCOを少ないコストで活用または酸化処理できる新規な排ガスを用いた発電方法および発電装置、ならびに排ガスの酸化処理方法および酸化処理装置の提供。
【解決手段】所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方を含む排ガスを用いた発電方法であって、前記排ガスが通過する煙道Sに、イオン導電性酸化物を固体電解質とした燃料電池100の燃料極43を位置させて当該煙道S内を通過する前記排ガスと接触させると共に、当該燃料電池100の酸素極43側に酸素を供給して発電を行う。これによって、転炉やコークス炉で発生する高温の排ガスをそのまま直接処理可能となるため、その排ガス中のHまたはCOを少ないコストで活用または酸化処理できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所の転炉ガスやコークス炉ガスなどの所定量以上のHまたはCOを含む排ガスを用いた発電方法および発電装置、ならびに当該排ガスの酸化処理方法および酸化処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、製鉄所の転炉やコークス炉からは、所定濃度以上のHまたはCOを含む高温の排ガスが大量に発生するが、従来このような排ガスは、その後酸素付加によりHまたはCOを燃焼(酸化)処理して無害化してから大気に排出している(2H+O→2HO、2CO+O→2CO
そして、このような所定濃度以上のHまたはCOを含む排ガスの燃焼処理に際しては、その燃焼熱を有効利用することが試みられているが、その燃焼熱の発生箇所は転炉やコークス炉などの炉尻や煙道であるため、利用し難くかつ回収効率も芳しくない。
【0003】
すなわち、燃焼処理時に発生する熱エネルギーを有効に活用できない原因の1つとして、熱エネルギーは移送に伴いロスが多く、発生源の近くで使用する以外はそのエネルギー形態を変化させる必要があることが挙げられる。さらに、その熱エネルギー形態を電気エネルギーなどに変換させる設備には膨大な投資を要するといった問題がある。さらに、燃焼処理することによって大量のCOを発生してしまう結果となる。
【0004】
そのため、例えば、以下の特許文献1および2などでは、転炉やコークス炉などで発生するHまたはCOを含む高温の排ガスを高温燃料電池の燃料ガスとして用い、電気エネルギーとして回収するような方法を提案している。
【特許文献1】特開昭60−177571号公報
【特許文献2】特開昭63−62160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1および2では、転炉やコークス炉で発生した高温の排ガスを一旦ガスホルダーなどに溜めておき、精製処理や余熱処理などを行ってからこれを燃料電池に供給して発電に用いるようにしているため、そのための専用の設備が新たに必要となり、その建設や処理に膨大な費用を要するといった問題がある。
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は、転炉やコークス炉で発生する高温の排ガス中のHまたはCOを少ないコストで活用または酸化処理できる新規な排ガスを用いた発電方法および発電装置、ならびに排ガスの酸化処理方法および酸化処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、
所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方を含む排ガスを用いた発電方法であって、前記排ガスが通過する煙道または炉内に、イオン導電性酸化物を固体電解質とした燃料電池の燃料極を位置させて当該煙道または炉内を通過する前記排ガスと接触させると共に、当該燃料電池の酸素極側に酸素を供給して発電を行うようにしたことを特徴とする排ガスを用いた発電方法である。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、
所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方を含む排ガスを用いた発電装置であって、前記排ガスが通過する煙道または炉内に設けられ、当該煙道または炉内を通過する前記排ガスと接触するようにイオン導電性酸化物を固体電解質とした燃料電池の燃料極を位置させると共に、当該燃料電池の酸素極側に酸素を供給する酸素供給手段を備えたことを特徴とする排ガスを用いた発電装置である。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、
所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方を含む排ガスを酸化処理する方法であって、前記排ガスが通過する煙道または炉内に、イオン導電性酸化物を固体電解質とした燃料電池の燃料極を位置させて当該煙道または炉内を通過する前記排ガスと接触させると共に、当該燃料電池の酸素極側に酸素を供給して前記排ガス中のHを酸化処理するようにした排ガスの酸化処理方法である。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、
所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方を含む排ガスを酸化処理する装置であって、前記排ガスが通過する煙道または炉内に設けられ、当該煙道または炉内を通過する前記排ガスと接触するようにイオン導電性酸化物を固体電解質とした燃料電池の燃料極を位置させると共に、当該燃料電池の酸素極側に酸素を供給する酸素供給手段を備えたことを特徴とする排ガスの酸化処理装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1および2の発明によれば、燃料電池をその排ガスが通過する煙道または炉内に設置したため、その排ガス中に含まれている所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方と空気(酸素)とをその排ガスの高温を利用して効率的に反応させて発電することができる。また、その排ガスを利用するための大がかりな専用設備も不要となるため、その排ガス中のHまたはCOを少ないコストで有効活用できる。
【0011】
また、請求項3および4の発明によれば、前記請求項1または2と同様に、燃料電池をその排ガスが通過する煙道または炉内に設置したため、その排ガス中に含まれている所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方と空気(酸素)とをその排ガスの高温を利用して効率的に反応させて排ガス中から除去することができる。また、その排ガス中のHまたはCOを除去するための大がかりな専用設備も不要となるため、その排ガス中のHまたはCOを少ないコストで酸化処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明に係る発電装置100の実施の一形態を示したものである。
図示するようにこの発電装置100は、所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方を含む高温(例えば700〜1000℃)の排ガスが通過する煙道S内に設けられた燃料電池ユニット10と、当該燃料電池ユニット10に空気(酸素)を供給する酸素供給ファン20と、この燃料電池ユニット10で発電された電気を利用または蓄電する負荷部30とから主に構成されている。
【0013】
この燃料電池ユニット10は、図2に示すように公知のそれと同様の構成となっており、発電機能を有するセル40を複数積層したセルスタック50にガスを案内するためのヘッダ(図示せず)を取り付けてなるものであり、各セル40間を仕切る各セパレータ41のスリット状の流路にそれぞれ前記排ガスと大気中の空気を交互に通過させることで発電を行うようになっている。
【0014】
すなわち、このセルスタック50を構成する各セル40は、図3に示すように高温下で活性な固体電解質、例えばイオン導電性酸化物として代表的なイットリア安定化ジルコニア(Yttria Stabilized Zirconia:YSZ)を電解質として用いた固体電解質層42を、気体が通過可能なシートまたは板状の燃料極(カソード:例えばNi−YSZサーメットなど)43と、同じく気体が通過可能なシートまたは板状の酸素極(カソード:例えばLa(Sr)MnOなど)44で挟むと共に、その上下をそれぞれ一対のセパレータ41a,41bで挟んで積層した構造としたものである。なお、これら燃料極43および酸素極44の固体電解質層42にはこの固体電解質層42における反応(発電)を促進するための触媒層45、45がそれぞれ形成されいる。
【0015】
そして、図示するように一方のセパレータ41a側に、前述したように所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方を含む高温の排ガスを通過させると共に、他方のセパレータ41b側に空気(酸素)を通過させると、図4に示すように燃料極43側では、燃料が水素(H)である場合は、このHが燃料極43側の触媒45の働きによって電子を切り離して水素イオン(2H)となる(H→2H+2e)。この固体電解質層42はイオンしか通さないという性質を持っているため、切り離された電子は電線30aから外に出て負荷部30側に流れる。
【0016】
その後、この水素イオン(2H)は、固体電解質層42内を移動して反対側の酸素極44に到達し、ここで酸素極44に浸入してきた酸素(O)と負荷部30を通じて戻ってきた電子と反応(酸化)して水(HO)になり(1/2O+2H+2e→HO)、残りの空気と共に外部に排出されることになる。
なお、燃料極43側に供給される燃料が一酸化炭素(CO)である場合は、酸素極44側の酸素(O)と反応(酸化)して二酸化炭素(CO)となって残りの空気と共に外部に排出されることになる。
【0017】
従って、本発明は図1に示すようにこの発電装置100の燃料電池ユニット10をそのセルスタック50の燃料極43側を、所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方を含む高温の排ガスと常に接するようにその煙道S内に設置すると共に、そのセルスタック50の酸素極44に、酸素供給ファン20によって常に十分な空気を供給するようにしたものであり、これにより、その煙道Sを通過する排ガス中のHやCOを確実に酸化除去すると共に十分な電気を供給することが可能となる。
【0018】
また、この固体電解質層42は、1000℃付近で最も高い活性を示すイットリア安定化ジルコニアなどのイオン導電性酸化物からなるため、高温下でも使用可能であり、製鉄所の転炉やコークス炉で発生した直後の高温の排ガスをそのまま直接処理することができるため、専用の処理設備やハンドリングが不要となり、少ないコストで本発明を実現することが可能となる。
【0019】
なお、本実施の形態では、この発電装置100の燃料電池ユニット10を、所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方を含む高温の排ガスが流れる煙道Sに設けた例で説明したが、例えばその排ガス中の熱を回収した後(冷却後)に煙道Sに流すようなケース(設備)では、その排ガス温度が低くて反応が芳しくない。そのため、このようなケースでは、煙道Sではなく、高温の排ガスが発生する炉内に直接この発電装置100の燃料電池ユニット10を設けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る発電装置100の実施の一形態を示す説明図である。
【図2】本発明に係る発電装置100の一部を構成する燃料電池ユニット10を示す斜視図である。
【図3】燃料電池ユニット10を構成するセル40の構造を示す分解斜視図である。
【図4】セル40による発電の原理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
100…発電装置(酸化処理装置)
10…燃料電池ユニット
20…酸素供給ファン(酸素供給手段)
30…負荷部
30a…電線
40…セル
41…セパレータ
42…固体電解質層
43…燃料極
44…酸素極
45…触媒
50…セルスタック
S…煙道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方を含む排ガスを用いた発電方法であって、
前記排ガスが通過する煙道または炉内に、イオン導電性酸化物を固体電解質とした燃料電池の燃料極を位置させて当該煙道または炉内を通過する前記排ガスと接触させると共に、当該燃料電池の酸素極側に酸素を供給して発電を行うようにしたことを特徴とする排ガスを用いた発電方法。
【請求項2】
所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方を含む排ガスを用いた発電装置であって、
前記排ガスが通過する煙道または炉内に設けられ、当該煙道または炉内を通過する前記排ガスと接触するようにイオン導電性酸化物を固体電解質とした燃料電池の燃料極を位置させると共に、当該燃料電池の酸素極側に酸素を供給する酸素供給手段を備えたことを特徴とする排ガスを用いた発電装置。
【請求項3】
所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方を含む排ガスを酸化処理する方法であって、
前記排ガスが通過する煙道または炉内に、イオン導電性酸化物を固体電解質とした燃料電池の燃料極を位置させて当該煙道または炉内を通過する前記排ガスと接触させると共に、当該燃料電池の酸素極側に酸素を供給して前記排ガス中のHおよびCOまたはいずれか一方を酸化処理するようにした排ガスの酸化処理方法。
【請求項4】
所定濃度以上のHおよびCOまたはいずれか一方を含む排ガスを酸化処理する装置であって、
前記排ガスが通過する煙道または炉内に設けられ、当該煙道または炉内を通過する前記排ガスと接触するようにイオン導電性酸化物を固体電解質とした燃料電池の燃料極を位置させると共に、当該燃料電池の酸素極側に酸素を供給する酸素供給手段を備えたことを特徴とする排ガスの酸化処理装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−10276(P2008−10276A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178527(P2006−178527)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】